JP5198322B2 - Mems素子及びmems素子の製造方法 - Google Patents

Mems素子及びmems素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、MEMS素子及びMEMS素子の製造方法に関する。
近年、複雑な回路・システムをスリム化するための技術の1つとして、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)が、注目されている。MEMSとは、例えば、半導体プロセス技術を用いて、可動な3次元構造体を微細に作り込む技術である(例えば、特許文献1参照)。
MEMS素子は、例えば、可変容量素子やスイッチ素子として用いられる。
可変容量素子として用いられるMEMS素子(以下、MEMS可変容量素子)は、可動構造として、1組の信号電極を有している。一方の電極は、下部信号電極として、例えば、基板上に固定されて設けられる。他方の電極は、上部信号電極として、中空に支えられ、下部信号電極の上方に設けられる。2つの信号電極間には、空隙(キャビティ)が、設けられている。
上部信号電極は、例えば、上部信号電極に接続されたアクチュエータによって、上下方向に駆動される。これによって、上部信号電極と下部信号電極との間の距離が変化され、2つの電極間に生じる静電容量が変化される。
MEMS可変容量素子の駆動速度は、上部信号電極の物理的な駆動速度に依存する。その駆動速度は、例えば、共振周波数で示されるように、上部信号電極及びそれを支持する部材の形状・厚さ等と相関関係を有するため、十分な大きさの駆動速度が得られないことが問題となる。それゆえ、MEMS素子の使用範囲は、その動作特性の範囲内に限られてしまう。
また、電極、電極の支持部材及び接合部材に用いられる材料に内在する真性応力(膜応力)に起因して、特に、上部信号電極のように、駆動範囲を確保するために中空に支持されている電極に、たわみやひずみが生じる。このような電極の変形によって、2つの電極の間隔の不均一性や、2つの電極間の接触面積の低下が、生じてしまう。この場合、MEMS可変容量素子は、所定の静電容量が得られない。また、例えば、スイッチ素子として用いられるMEMS素子(以下、MEMSスイッチ素子)においては、スイッチ素子のオン時の接触面積が小さくなってしまう。それゆえ、所定の素子特性を得ることができない。
特開2006−263905
本発明は、MEMS素子の素子特性を向上する技術を提案する。
本発明の一態様のMEMS素子は、基板上に設けられ、前記基板表面に対して平行な第1の平行部と、前記基板側に後退した1以上の段差部とをその上面に有する第1の電極と、
前記第1の電極上方に設けられ、前記第1の平行部に対向し且つ前記基板表面に対して平行な第2の平行部と、前記段差部に対応する位置において前記第2の平行部に接続され且つ前記第1の電極側に突出する1以上の第1の突起部とをその底面に有し、前記第1の電極に向かって機械的に駆動される第2の電極と、前記基板上に設けられるアンカーと、前記第2の電極を中空に支え、その一端が前記アンカーに支持され、その幅方向の端部に前記基板側に突出する側壁部が設けられる梁と、を備える。
本発明の一態様のMEMS素子の製造方法は、基板上に、前記基板表面に対して平行な第1の平行部と前記基板側に後退した1以上の段差部とをその上面に有する第1の電極と、ダミー層とを形成する工程と、前記第1の電極上及び前記ダミー層上に、前記ダミー層の形状に依存して、上向きに凸部分を有する犠牲層を形成する工程と、前記第1の平行部に対向し且つ前記基板表面に対して平行な第2の平行部と前記第1の電極の前記段差部に対応する位置において前記第2の平行部に接続され且つ前記第1の電極側に突出する1以上の第1の突起部とをその底面に有する第2の電極を、前記第1の電極上方に形成し、前記犠牲層の凸部分に起因する梁及び前記梁の端部に設けられた側壁部を前記ダミー層上方に形成する工程と、前記犠牲層を除去し、前記ダミー層と前記梁の間、前記ダミー層と前記側壁部の間及び前記第1の電極と前記第2の電極の間に、空隙を形成する工程と、を備える。
本発明によれば、MEMS素子の素子特性を向上できる。
第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。 第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。 第1の実施形態に係るMEMS素子の製造方法を説明するための断面工程図。 第1の実施形態に係るMEMS素子の動作を説明するための図。 第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。 第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。 第2の実施形態に係るMEMS素子の製造方法を説明するための断面工程図。 第3の実施形態に係るMEMSの構造を示す断面図。 本発明の実施形態に係るMEMS素子の変形例の構造を示す断面図。 本発明の実施形態に係るMEMS素子の変形例の構造を示す断面図。
以下、図面を参照しながら、本発明の例を実施するための形態について詳細に説明する。
(1) 第1の実施形態
図1乃至図4を参照して、本発明の第1の実施形態について、説明する。
(a) 構造
図1乃至図3を用いて、本発明の実施形態に係るMEMS素子について、説明する。本実施形態において、可変容量として用いられるMEMS素子について、説明する。以下、本実施形態に係るMEMS素子のことを、MEMS可変容量素子と呼ぶ。
図1は、本実施形態に係るMEMS可変容量素子の平面図を示している。また、図2は、本実施形態に係るMEMS可変容量素子の断面図を示している。図2の(a)は、図1のA−A’線に沿う断面構造を示している。また、図2の(b)は図1のB−B’線に沿う断面構造を示し、図2の(c)は図1のC−C’線に沿う断面構造を示している。尚、図2の(a)において、A−A’線に沿う断面の手前方向又は奥行き方向に設けられた部材についても、必要に応じて図示している。
図1及び図2の(a)に示すように、本実施形態に係るMEMS可変容量素子は、基板1上に設けられる。基板1は、例えば、ガラスなどの絶縁性基板や、シリコン基板上に形成された絶縁層等である。
MEMS可変容量素子を構成している可動構造10は、下部信号電極(第1の電極)12と上部信号電極(第2の電極)16とを有している。下部信号電極12及び上部電極16は、例えば、アルミニウムなどの金属が用いられる。
下部信号電極12と上部信号電極16との間には、空隙(キャビティ)が設けられている。下部信号電極12は、Y方向に延在するように、基板1上に設けられている。下部信号電極12は、基板1上に固定されている。下部信号電極12表面は、例えば、絶縁膜13によって覆われている。下部信号電極12は、例えば、信号線として機能する。尚、下部信号電極12の下方の基板1又は基板1上の絶縁層の一部が犠牲層などを利用した技術を用いて除去され、下部信号電極12の下方に、空隙が設けられてもよい。
上部信号電極16は、下部信号電極12上方に設けられている。上部信号電極16は、下部信号電極12と上部信号電極16との間に空隙が設けられるように、梁21A,21B及びアンカー29A,29Bによって、中空に支持されている。上部信号電極16は、矩形上の平面形状を有し、X方向に延在している。尚、信号電極12,16は、矩形状の平面形状に限定されず、曲線を含む形状でもよい。また、信号電極12,16は、その上面から底面に向かって貫通する孔を有してもよい。
アンカー29A,29Bは、例えば、基板1上の配線層(導電層)上、又は、基板22上に、設けられる。
梁21A,21B,25A,25BはX方向に延在している。梁21A,21B,25A,25Bは、上部信号電極16のX方向における両端に接続されている。例えば、図1中の右側の梁21A,25Aは、上部信号電極16の他端から二手に分かれて引き出され、導電層28Aを介して、アンカー29Aに接続されている。また、図1中の左側の梁21B,25Bは、上部信号電極16の一端から二手に分かれて引き出され、導電層28Bを介して、アンカー29Bに接続されている。
梁21A,21B,25A,25Bは、アンカー29A,29Bによって、中空に支えられ、梁21A,21B,25A,25Bと基板1との間には、空隙(キャビティ)が設けられている。梁25A,25Bは、上部信号電極16と直接接合され、X−Y平面内において上部信号電極16の端部から斜め方向に引き出されている。以下、説明の明確化のため、斜め方向に引き出された梁25A,25Bのことを、接合部25A,25Bとよぶ。梁21A,21B及び接合部25A,25Bは、上部信号電極16と同じ材料を用いてもよいし、絶縁体などの異なる材料を用いてもよい。梁21A,21B及び接合部25A,25Bに絶縁体を用いた場合には、梁21A,21Bを構成する絶縁体の上面又は裏面上に、配線が適宜設けられてもよい。
尚、本実施形態においては、梁21A,21BはX方向に延在した平面形状を有し、接合部25A,25Bは斜め方向に引き出された平面形状を有するが、上部信号電極16を中空に支えることができれば、梁21A,21B及び接合部25A,25Bの平面形状は、上記の平面形状に限定されない。また、梁21A,21B及び接合部25A,25Bの数が、上述の例に限定されない。
図2の(b)及び(c)は、梁21A,21B,25A,25Bの断面構造を示している。図2の(b)は、図1中のB−B’線に沿う断面を示し、図2の(c)は、図1中のC−C’線に沿う断面を示している。
図2の(b)に示すように、梁21A,21Bは側壁部22を有している。側壁部22は、梁の延在方向(長手方向)と交差する方向(幅方向)において、梁21A,21Bの延在部分の一端及び他端に、設けられている。例えば、側壁部22は、梁21A,21Bの底面から基板1側に突出し、下向きの凸部を有する構造になっている。側壁部22は、梁21A,21Bの延在方向に沿って、延在している。梁21A,21Bの端部に側壁部22が設けられたことによって、梁21A,21Bの構造は、図2の(b)に示されるように、例えば、下向きの凹型構造になっている。
図2の(c)は、接合部25A,25Bの断面構造を示している。図2の(c)のように、例えば、接合部25A,25Bの端部には、側壁部は設けられず、平板構造になっている。尚、図2の(c)に示される接合部25A,25Bのように、側壁部を設けない梁の下方には、ダミー層12Xが設けられなくともよい。この場合、基板1上面と接合部25A,25B底面との間隔が、基板1上面と梁21A,21B底面との間隔とほぼ同じになるように、接合部25A,25Bの長さ及び幅が設計されることが、MEMS素子の動作の安定化及び信頼性の向上のために、好ましい。
図2の(b)及び(c)に示すように、側壁部22が設けられた梁21A,21Bの部分は幅W1を有し、接合部25A,25Bの部分は幅W1’を有する。梁21A,21Bは、膜厚t1を有し、接合部21A,21Bは、膜厚t1’を有している。また、側壁部22の膜厚は、基板1表面に対して平行方向の寸法とし、側壁部22は、膜厚t2を有する。
梁21A,21Bの幅W1は、例えば、接合部25A,25Bの幅W1’以上になっている。例えば、幅W1は、側壁部22の膜厚t2の2倍分、幅W1’よりも大きくなっている。例えば、膜厚t1と膜厚t1’は、ほぼ同じ厚さになっている。また、側壁部22の膜厚t2は、膜厚t1,t1’と同じ厚さでもよいし、異なる厚さでもよい。
図2の(b)及び(c)においては、梁21A,21B及び接合部25A,25Bの下方には、ダミー層12Xが基板1上に設けられている。梁21A,21Bとダミー層12Xとの間、接合部25A,25Bとダミー層12Xとの間には、それぞれ空隙が設けられている。ダミー層12Xの表面には、例えば、絶縁膜が設けられている。ダミー層12Xは、例えば、下部信号電極12と同じ材料を用いて、同時に形成される。ダミー層12Xは、引き出し配線の一部として用いてもよいし、配線としての機能を有しなくともよい。
例えば、梁21A,21Bの幅W1は、ダミー層12Xの幅W0よりも、側壁部22の膜厚t2の2倍分以上になっている。尚、ダミー層12Xは、下部信号電極12と同時に形成されなくともよいのはもちろんである。また、ダミー層12Xは、下部信号電極12と同じ材料でなくともよい。
尚、本実施形態においては、接合部25A,25Bには、側壁部が設けられていないが、梁21A,21Bと同様に、接合部25A,25Bの端部に側壁部を設けてもよいのは、もちろんである。また、図1においては、側壁部22は、梁21A,21Bの延在方向に沿って、1つに繋がっているが、所定の箇所で適宜分断されてもよい。
上部信号電極16のX方向の両側には、両持ち構造(ブリッジ構造)のアクチュエータ30A,30Bが設けられている。図1において、図中右側のアクチュエータ30Aは、二手に分かれて形成された梁21Aの間に位置し、図中左側のアクチュエータ30Bは、二手に分かれて形成された梁21Bの間に位置している。
図1及び図2の(a)において、右側のアクチュエータ30Aは、上部駆動電極33と下部駆動電極37とを有している。左側のアクチュエータ30Bも、右側のアクチュエータと同様に、上部駆動電極と下部駆動電極とを有している。2つのアクチュエータ30A,30Bは、ほぼ同じ構造を有しているので、以下では、アクチュエータ30Aの構造を中心に説明する。
下部駆動電極37は、基板1上に設けられている。下部信号電極37は、基板1上に固定されている。下部駆動電極37表面は、例えば、絶縁膜36によって覆われている。下部駆動電極37は、例えば、配線38に接続されている。下部駆動電極37は、例えば、矩形状の平面形状を有している。
上部駆動電極33は、下部駆動電極37上方に設けられている。上部駆動電極37は、矩形状の平面形状を有している。2つのアクチュエータ30A,30Bにおいて、各上部駆動電極33は、絶縁層32を経由して、可動構造10の上部信号電極16の一端及び他端にそれぞれ接続されている。絶縁層32は、例えば、窒化シリコンなどの絶縁体が用いられ、上部信号電極16及び上部駆動電極33は、電気的に絶縁されている。尚、信号電極16が駆動電極33と電気的に接続されていてもよい場合には、絶縁層の代わりに、導電体を用いてもよいし、絶縁層を用いずに、上部信号電極16と上部駆動電極33とが1つの繋がった導電層となってもよい。
上部信号電極側に対向する側の上部駆動電極33の端部には、バネ構造34がそれぞれ接続されている。バネ構造34の平面形状は、例えば、メアンダ状になっている。バネ構造34を構成している配線の太さは、例えば、梁21A,21B及び接合部25A,25Bを構成している配線の太さよりも細くされている。バネ構造34は、例えば、アンカー35に接続されている。アンカー35は、例えば、基板1上の配線(導電層)39上に設けられる。バネ構造34及びアンカー35は、例えば、導電体が用いられる。
配線39上に設けられたアンカー36、及びバネ構造34を経由して、上部駆動電極33に電位が印加される。また、下部駆動電極37には、配線39を経由して、電位が印加される。これによって、上部駆動電極33と下部駆動電極38との間に、電位差が設けられる。配線39上には、例えば、絶縁膜75が設けられている。
本実施形態におけるアクチュエータ30A,30Bは、例えば、静電駆動方式のアクチュエータである。つまり、アクチュエータ30A,30Bにおいて、上部駆動電極33と下部駆動電極37とに電位差を与えた場合に、それらの駆動電極33,37の間に発生する静電引力によって、上部駆動電極33が基板1表面に対して垂直方向に動く。その上部駆動電極33の動作に伴って、可動構造(可変容量)10を構成している上部信号電極12が駆動される。
MEMS可変容量素子の静電容量Cは、可動構造10を構成している下部信号電極12と上部信号電極16との間に発生する。そして、アクチュエータ30A,30Bによって、上部信号電極16が基板1表面に対して垂直方向に駆動されることによって、上部信号電極16と下部信号電極12との間の距離が変化し、可変容量素子の静電容量の値が変化する。
尚、本発明の実施形態においては、上部信号電極を駆動させるアクチュエータに、静電駆動型のアクチュエータを用いた例を示しているが、それに限定されず、例えば、熱駆動型、圧電駆動型或いは磁気駆動型のアクチュエータを用いてもよいのは、もちろんである。また、本実施形態に係るMEMS素子は、1つの可動構造(可変容量)に対して、2つのアクチュエータが設けられている。しかし、これに限定されず、1つの可動構造を、1つのアクチュエータを用いて、駆動させてもよいし、1つの可動構造を、3つ以上のアクチュエータで駆動させてもよい。図2の(a)においては、上部駆動電極33が、基板表面に対して傾斜した構造を示しているが、これに限定されず、上部駆動電極33が、基板表面に対して平行な構造を有しても良い。
尚、本実施形態の可動構造10及び静電アクチュエータ30A,30Bにおいて、下層の電極12,37上面に絶縁膜13,38が形成された構成が示されている。但し、これに限定されず、下層の信号/駆動電極12,37の上面に絶縁膜を形成せずに、上層の信号/駆動電極16,33の底面に絶縁膜が形成された構成であってもよい。また、可変容量MEMS素子を構成する部材は、必ずしも単層膜である必要はない。例えば、可動構造10の信号電極12,16やアクチュエータ30A,30Bの駆動電極33,37は、金属と絶縁体との積層膜、又は、金属と半導体との積層膜でもよい。
第1の実施形態に係るMEMS素子は、図2の(b)に示されるように、可動構造10を支える梁21A,21Bが、その端部に側壁部22を有することを特徴としている。
本実施形態のMEMS可変容量素子のように、梁21A,21Bの幅方向の端部に側壁部22を設けることによって、梁21A,21Bの端部の膜厚taが、梁21A,21Bの端部間の膜厚t1よりも厚くなる。その結果として、梁21A,21Bの基板1表面に対して垂直方向の剛性を大きくなる。これによって、梁21A,21Bの弾性係数(バネ定数)が向上し、MEMS可変容量素子の共振周波数が大きくなる。それゆえ、MEMS素子の機械的振動を高速化できる。
また、本実施形態のように、梁21A,21Bの端部に側壁部22を設け、梁の剛性を大きくすることで、梁21A,21Bの歪みや、梁21A,21Bによって中空に支えられている上部電極16の湾曲を抑制できる。それゆえ、MEMS素子の素子特性を改善できる。
したがって、本発明の第1の実施形態によれば、MEMS素子の素子特性を向上できる。
(b) 製造方法
図3を用いて、本発明の第1の実施形態に係るMEMS素子の製造方法について、説明する。尚、図3においては、例えば、梁21A,21Bのように、側壁部を設ける部分の断面構造と、信号電極16や接合部25A,25Bのように、側壁部を設けない部分の断面構造を、示している。ここでは、B−B’線に沿う断面とC−C’線に沿う断面を抽出して説明する。尚、C−C’線に沿う断面を用いて、各製造工程について説明するが、可動構造及びアクチュエータの電極の形成工程も、同じ工程で実行される。
図3の(a)に示すように、基板1上に、導電層12Yが、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法を用いて、堆積される。導電層12Yは、可動構造の下部信号電極、アクチュエータの下部駆動電極、基板上の配線及びダミー層に用いられる。
そして、図3の(b)に示すように、基板上の導電層は、例えば、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、所定のパターンに加工され、ダミー層12X,12Zが形成される。ダミー層12Xは、主に、上部電極を支持する梁の形成領域下方に形成される。加工されたダミー層12Xは、例えば、幅W0を有する。導電層12Zは、ダミー層としてだけでなく、例えば、可動構造の下部電極や配線にも用いられるが、説明の明確化のためダミー層12Zと呼ぶ。ここで、電極との接続部分近傍で剛性を大きくする必要が無い梁の部分や、積極的に剛性を大きくしない梁の部分において、それらの形成部分の領域内から、ダミー層12Zは、除去してもよい。尚、図3内において、ダミー層12X,12Zの平面形状、長さ及び幅は、同じである必要はなく、その形成箇所に応じて適宜変更できるのはもちろんである。
導電層の加工の後、加工された導電層12X表面に、例えば、熱酸化法やCVD法などの膜堆積技術を用いて、絶縁膜13Xが形成される。
続いて、導電層12X上及び基板1上に、犠牲層90が、例えば、CVD法や塗布法などを用いて、形成される。犠牲層90は、導電層12X、絶縁層13X及び後の工程で構成される部材と、エッチング選択比が確保できる材料であれば、金属、絶縁体、半導体、無機物又は有機物などいずれの材料を用いてもよい。犠牲層90が形成された後、例えば、基板上の所定の箇所において、アンカーが犠牲層90内に、埋め込まれる。
そして、犠牲層90上に、導電層21Xが、例えば、スパッタ法やCVD法を用いて、形成される。導電層21Xは、可動構造の上部信号電極、上部信号電極を支える梁、アクチュエータの上部駆動電極及びバネ構造などに用いられる。導電層21Xは、例えば、膜厚t1を有する。
ここで、ダミー層12Xが設けられている領域内において、基板1上面とダミー層12Y上面との間に段差Zが生じている。犠牲層90は、ダミー層12Xの上面上及び側面上に堆積されるため、段差Zに起因して、犠牲層90は上に凸部を有する形状になる。
これに伴って、導電層21Xは、段差Zに応じて基板1側へ落ち込み、その導電層21Xは、犠牲層90の凸部分の上面上及び側面上に形成される。導電層21Xは、例えば、犠牲層90を介して、ダミー層12Xの側面を覆う。
続いて、図3の(c)に示すように、レジスト91A,91Bが、犠牲層90上に形成され、そのレジスト91A,91Bは、フォトリソグラフィー技術を用いて、パターニングされる。例えば、C−C’線に沿う断面のように、剛性を高くしない箇所においては、所定の形状の梁や電極などが形成されるように、レジスト91Bがパターニングされる。一方で、例えば、B−B’線に沿う断面のように、導電層21A(梁)の剛性を高くする箇所において、犠牲層90の凸部分の上面上だけでなく、犠牲層90の凸部分の側面U上の導電層22上面が覆われるように、レジスト91Aがパターニングされる。
それらのパターニングされたレジスト91A,91Bをマスクとして、犠牲層90上の導電層は、エッチングによって、所定の形状に加工される。
このとき、梁の剛性を高くする箇所において、犠牲層90の凸部分の側面U上の導電層22が、レジスト21Aによって覆われている。そのため、導電層22が残存し、導電層21Aの端部に導電層22が設けられた構造になる。導電層22は、膜厚t2を有する。膜厚t2は、膜厚t1は同じ厚さでもよい。
他の箇所においては、例えば、犠牲層90の上面上に、所定の梁、バネ構造及び電極の形状を有する導電層25(16,33)が形成される。
続いて、一般的なMEMS素子の形成工程が用いられて、各構成部材が形成される。可動構造の上部駆動電極が、アクチュエータの上部駆動電極に接続されるように、犠牲層上の導電層の所定の位置に、絶縁層が形成される。
この後、犠牲層90が、例えば、ドライエッチング又はウェットエッチングを用いて、選択的に除去される。すると、図2の(a)〜(c)に示すように、梁21,25及び上部電極16,33が、中空に支えられて、形成される。そして、図2の(b)に示すように、梁の剛性を高くする箇所において、梁21Aの端部に、側壁部22が形成される。また、図2の(a)及び(c)に示すように、他の箇所においては、可動構造10の上部信号電極16、アクチュエータ30A,30Bの上部駆動電極33及び接合部25が、形成される。尚、犠牲層90を除去した後、又は、犠牲層90の除去と同時に、ダミー層12Xを除去してもよい。
上述の例では、犠牲層90と異なる材料をダミー層12Xに用いた例を用いているが、犠牲層90と同じ材料をダミー層12Xに用いることもできる。この場合、下部電極となる導電層及びその導電層上の絶縁膜を形成した後に、ダミー層を形成し、それに続いて、犠牲層が形成される。
以上のように、本実施形態に係る可変容量MEMS素子が完成する。図3の(a)〜(c)に示した製造工程によって、側壁部22を有する梁21が形成される。例えば、側壁部22は、下向きの凸部を有する構造になっている。尚、梁21A,21Bの端部に側壁部22を設ける箇所において、ダミー電極12Xの加工寸法(幅)W0は、例えば、側壁部22を含めた梁21A,21Bの幅W1から側壁部22の膜厚の2倍分を引いた寸法になるように、形成される。
尚、本例においては、ダミー層12Xと下部電極12,37とを同じ材料を用いて同時に形成する例について述べたが、これに限定されず、必要に応じて、材料及び形成工程を変更してもよい。例えば、互いに隣接するダミー層12X間に発生する寄生容量、又は、梁21,25とダミー層12X間に発生する寄生容量を考慮して、ダミー層12Xに絶縁膜又は半導体を用いて、下部電極となる導電層とは別途に形成してもよい。この場合、ダミー層の膜厚は、下部電極となる導電層の膜厚と同じにならなくともよい。このように、MEMS素子を構成する各部材に用いられる材料及びその寸法は、必要に応じて自由に設計してもよい。
このように、上記のMEMS素子の製造方法によれば、電極を支持する梁部分の剛性を構造的に大きくするための側壁部位を、梁の端部に形成できる。これによれば、MEMS素子の駆動速度を大きくすることができる。また、例えば、上部信号電極のように、中空に保持されるMEMS素子を構成する部材が湾曲するのを、低減できる。したがって、素子特性が向上するMEMS素子を、提供できる。
(c) 動作
図4を用いて、可変容量MEMS素子の動作について、説明する。
図4の(a)及び(b)は、可変容量MEMS素子の動作時の状態を示している。
図4の(a)は、アクチュエータの駆動前の状態を示し、図4の(b)は、アクチュエータの駆動後の状態を示している。
図4の(a)に示すように、アクチュエータ30A,30Bの上部駆動電極33と下部駆動電極37との間隔において、可動構造10側の間隔は、バネ構造34側の間隔よりも大きくなっている。この場合、可動構造10を構成する2つの電極12,16において、上部信号電極16は、下部信号電極12との間に間隔d1を有して、中空に支えられている。
そして、上部駆動電極33と下部駆動電極37との間に、電位差が与えられる。電位差は、上部及び下部駆動電極33,37がそれぞれ接続される配線に、異なる電位を供給することで、設けられる。例えば、一方の駆動電極には、グランド電位が供給され、他方の駆動電極には、プルイン電圧以上の電位を供給する。プルイン電圧とは、静電引力によって、バネ構造34に接続された駆動電極33が動き始める電圧のことである。
一方の駆動電極にプルイン電圧以上の電位を供給することによって、上部駆動電極33と下部駆動電極37との間に、静電引力が発生する。アクチュエータ30A,30Bの駆動電極33,37間に発生する静電引力は、駆動電極33,37間の間隔が小さいほど強くなる。よって、上部駆動電極33は、絶縁膜36を介して、バネ構造34側から下部駆動電極37に接触していく。駆動電極33,37に電位差を与えている期間中、バネ構造34側から可動構造10側の方向へ向かって、駆動電極33,37間の間隔は小さくなっていき、上部駆動電極33は、下部駆動電極37に、ジッパー状に順次接触していく。
このように、アクチュエータ30A,30Bが駆動し、このアクチュエータ30A,30Bの駆動に伴って、可動構造10が動く。
そして、図4の(b)に示すように、上部駆動電極33は、下部駆動電極37と絶縁膜38を介して、ほぼ全面で接触する。これによって、上部駆動電極33と接続されている可動構造10の上部信号電極16は、下部信号電極12に向かって基板1側に動き、上部信号電極16と下部信号電極12との間の間隔は小さくなる。例えば、図4の(b)ように、上部信号電極16が、絶縁膜13を介して下部信号電極(シグナル線)12と接触する場合、2つの信号電極12,16間の間隔は、絶縁膜13の膜厚と同じになる。
アクチュエータ30A,30Bの駆動電極33,37に与えられた電位差を0にすると、MEMS可変容量素子は、図4の(b)の状態から図4の(a)の状態に戻る。
よって、図4の(a)及び(b)に示すように、可動構造(可変容量)10を構成している下部信号電極12と上部信号電極16との間の間隔は、間隔d1から絶縁膜13の膜厚程度の間の大きさで変位する。尚、可変容量MEMS素子の駆動後の状態において、上部信号電極16は、絶縁膜13に直接接触せずともよい。
したがって、信号電極12,16間の間隔の変化に伴って、下部信号電極12と上部信号電極16とによって得られる静電容量の値は、変化する。静電容量は電極12,16間の間隔に反比例するので、下部信号電極12と上部信号電極16の間隔が大きい場合に、静電容量は小さくなり、下部信号電極12と上部信号電極16の間隔が小さい場合に、静電容量は大きくなる。
尚、ここでは、説明の簡単化のため、可動構造に接続される2つのアクチュエータ30A,30Bを同時に駆動させる例を説明したが、これに限定されず、2つのアクチュエータ30A,30Bを交互に駆動させてもよい。つまり、図中左側のアクチュエータ30Bを駆動後の状態としているときに、図中右側のアクチュエータ30Aを駆動前の状態とし、これとは反対に、図中右側のアクチュエータ30Aを駆動後の状態としているときに、図中左側のアクチュエータ30Bを駆動前の状態としてもよい。
上記の可変容量MEMS素子の動作において、例えば、可変容量MEMS素子の駆動速度は、梁及び梁に支えられる上部信号電極の共振周波数fで表すことができる。共振周波数fは、梁及び梁に支えられる上部信号電極の弾性係数を“k”、梁及び梁に支えられる上部信号電極の質量を“m”と示す場合、次式のように示される。
Figure 0005198322
(式1)に示されるように、共振周波数fは、弾性係数kに比例し、質量mに反比例する。
本実施形態のように、可動構造を支える梁21A,21Bの幅方向の端部に、側壁部22が設けられることで、梁21A,21Bの基板表面に対して垂直方向の剛性は、大きく向上する。構造的に梁21A,21Bの剛性を補強することで、弾性係数kの値は大きくなる。この場合、梁21A,21Bの端部に側壁部22を設けることで、梁21A,21Bの見かけ上の膜厚は厚くなるが、梁全体の膜厚を単純に大きくするのとは異なり、弾性係数(剛性)の増大に比較して、質量mの増加は小さい。
したがって、側壁部22を有する梁21A,21Bを用いることによって、共振周波数f、つまり、MEMS素子の駆動速度を向上できる。
また、梁21A,21Bの剛性が大きくなる結果として、例えば、上部信号電極16が湾曲するのを防止できる。よって、下部信号電極12と上部信号電極16との間の距離が、信号電極16の湾曲によって広くなるのを低減でき、静電容量が低下するのを防止できる。さらに、電極16の湾曲を防止できることによって、1組の信号電極12,16間の間隔のばらつきを抑制できる。つまり、静電容量が、電極の設計寸法に基づいた値からばらつくのを抑制できる。
以上のように、本発明の第1の実施形態に係るMEMS素子によれば、MEMS素子の素子特性を向上できる。
(2) 第2の実施形態
以下、図5乃至図7を用いて本発明の第2の実施形態について、説明する。尚、第2の実施形態において、第1の実施形態で述べた構成要素と同じ部材については、同じ符号を付し、その構成要素についての詳細な説明は、必要に応じて行う。
図5は、本実施形態に係るMEMS素子の平面構造を示し、図6は、図5のA−A線に沿う断面構造を示している。第2の実施形態に係るMEMS素子は、第1の実施形態と同様に、MEMS可変容量素子である。
図5及び図6に示すように、可動構造10Aの下部信号電極12A内に、スリット14が設けられている。このスリット14が設けられることによって、例えば、下部信号電極12下方の基板1表面の一部が、露出する。
下部信号電極12A上方に、上部信号電極16Aが設けられている。上部信号電極16Aは、接合部25A,25B、梁21A,21B及びアンカー29A,29Bによって、中空に支えられている。尚、本実施形態において、梁21A,21Bは、その幅方向の底面端部に側壁部22を有する構造でもよいし、側壁部22を有さない構造でもよい。
上部信号電極16Aは、下部信号電極12内のスリット14上方の位置に、凹部17を有している。凹部17の窪み(底面)は、下部信号電極(信号線)の延在方向(y方向)に沿って、延在している。例えば、上部信号電極16の端部又は底面に突起部(第1の突起部)18が設けられてもよい。また、可変容量MEMS素子の駆動後の状態において、凹部17の側面及び突起部18の側面は、下部信号電極12Aの側面と対向する。つまり、下部信号電極12Aの側面と上部信号電極16Aの側面とに対しても、静電容量が確保される。
図7を用いて、凹部17を有する上部信号電極16Aの形成方法について、説明する。尚、図7においては、図示の簡単化のため、アクチュエータの図示は省略し、可動構造10Aを構成している下部/上部信号電極12A,16Aの断面構造のみを図示する。図7の(a)〜(c)においては、X方向に沿う断面が示されている。
図7の(a)に示すように、導電層が、例えば、CVD法やスパッタ法を用いて、基板1上に堆積される。そして、導電層12A上に、レジスト92が塗布される。レジスト92は、フォトリソグラフィー技術によって、所定の形状の電極、配線及びダミー層が形成されるように、パターニングされる。パターニングされたレジスト92に基づいて、導電層12Aがエッチングされる。これによって、可動構造の下部信号電極12Aが形成される。信号電極12A内には、上記のパターニング及びエッチングによって、スリット14が形成される。スリット14は、そのX方向において、寸法(幅)Waを有する。
レジストが除去された後、図7の(b)に示すように、図4の(b)と同様の工程によって、信号電極12A表面に絶縁膜13が形成され、それに続いて、犠牲層90及び導電層16Xが、順次形成される。このとき、スリット14の形状に起因して、犠牲層90及び導電層16Xは基板1側に落ち込み、犠牲層90及び導電層16Xがスリット14内を埋め込む。この結果として、導電層16X内に、凹部17が形成される。尚、犠牲層90及び導電層16Xが均一に成膜され、犠牲層90が膜厚ta、導電層16Xが膜厚tbを有する場合、スリット14内に埋め込まれた導電層16Xの側面同士が接触しないように、スリット14の幅Waは、膜厚taと膜厚tbの和の2倍以上になるように形成される。
続いて、図7の(c)に示すように、レジスト93が導電層16A上に塗布され、可動構造の上部信号電極を形成するためのパターンが、レジスト91に転写される。そのレジスト91は、凹部17上を覆うように、パターニングされている。また、上部信号電極の端部となる箇所において、レジスト93は、例えば、犠牲層の上に凸の部分の側面を覆う導電層18上方を覆うように、パターニングされる。
そして、パターニングされたレジスト93をマスクとして、導電層16Aがエッチングされ、可動構造の上部信号電極16Aが形成される。これと同時に、アクチュエータの上部駆動電極及び梁が、形成される。これによって、上部信号電極16Aは、その内部に凹部17を有する構造になる。また、上部信号電極16Aは、その端部に突起部18を有する構造になる。
この後、レジスト93及び犠牲層90が除去され、上部信号電極16Aは、中空に支持される。
以上の工程によって、本実施形態に係る可変容量MEMS素子が完成する。このように、上部信号電極16が有する凹部17は、下部信号電極12内に形成されたスリット14に対して、自己整合的に形成される。
尚、図5及び図6に示す例では、スリット14のY方向の寸法は、上部信号電極16AのY方向の寸法より大きくなっている。しかし、スリット14のY方向の寸法は、上部信号電極16AのY方向の寸法より小さくなってもよいのは、もちろんである。また、本例では、スリット14が下部信号電極12A内に1つ設けられた例を示しているが、複数のスリット14が下部信号電極12A内に設けられてもよい。
本実施形態のように、上部信号電極16が、その内部に凹部17を有することによって、凹部17を設けた部分の上部信号電極16Aの見かけ上の膜厚は、大きくなる。その結果として、上部信号電極16Aの剛性が大きくなる。このように、上部信号電極16の剛性を大きくすることで、中空に支えられた電極の反りが低減され、上部信号電極の湾曲が抑制される。それゆえ、電極の湾曲に起因する上部電極と下部電極との間隔の拡大や、間隔の不均一は、抑制され、MEMS素子の素子特性は改善される。
したがって、本発明の第2の実施形態に係るMEMS素子によれば、素子特性を向上できる。
(3) 第3の実施形態
以下、図8を用いて本発明の第3の実施形態について、説明する。尚、第3の実施形態においては、第1及び第2の実施形態で述べた構成要素と同じ部材については、同じ符号を付し、その構成要素についての詳細な説明は、必要に応じて行う。
本実施形態に係るMEMS素子の平面構造は、図1に示される平面構造とほぼ同様である。そのため、本実施形態のMEMS素子の平面構造は、図1を用いて説明する。また、上部信号電極16を支える梁21A,21Bの構造は、図2の(b)に示される構造とほぼ同様であるため、ここでの説明は省略する。
第1及び第2の実施形態においては、MEMS可変容量素子について、説明した。但し、本実施形態に係るMEMS素子の構造は、他のMEMS素子に用いることができる。第3の実施形態においては、スイッチ素子として用いられるMEMS素子(以下、MEMSスイッチ素子とよぶ)を例に、その構造について、説明する。
図8は、本実施形態に係るMEMS素子の断面構造を示している。図8に示される断面構造は、図1のA−A’線に対応する断面を示している。
本実施形態に係るMEMSスイッチ素子においては、図2の(b)に示されるのと同様に、上部信号電極16を支持している梁21A,21Bは、その幅方向の端部に、側壁部22を有している。これによって、梁21A,21Bの剛性が向上される。
図8に示されるように、MEMSスイッチ素子の可動構造10Bは、下部信号電極12上に、絶縁膜は設けられず、下部信号電極12を構成する導電層表面が露出される。
図8に示されるように、上部信号電極16が、中空に支えられている場合には、MEMSスイッチ素子はオフ状態を示す。
そして、図4を用いて説明した可変容量MEMS素子の動作と同様に、上部信号電極16がアクチュエータ30A,30Bによって、下側(基板側)に駆動された場合、上部信号電極16底面が下部信号電極12上面と接触する。この場合、下部信号電極16上面上及び上部信号電極12底面上に絶縁膜が存在しないため、上部信号電極16は、下部信号電極12と電気的に導通する。このように、上部信号電極16が、下部信号電極12に直接接触することによって、MEMSスイッチ素子は、オン状態になる。
本実施形態に係るMEMSスイッチ素子の製造方法は、下部信号電極12表面の絶縁膜を、例えば、フォトリソグラフィー技術及びエッチングを用いて除去する工程が、犠牲層を形成する工程の前に加わるのみで、第1の実施形態での述べた製造方法と実質的に同じである。又は、絶縁膜が形成されないように、下部信号電極12表面を他の部材で覆う工程を追加してもよい。尚、図8においては、下部信号電極12表面上の絶縁膜を全て除去した構造を示しているが、下部信号電極12が上部信号電極16と電気的に導通するように、下部信号電極12表面上の絶縁膜の一部が除去されていればよい。
本実施形態に係るMEMSスイッチ素子においても、MEMS素子を構成する部材の剛性を向上できる。よって、MEMS素子の駆動速度を向上でき、梁や電極のたわみに起因して、素子特性が劣化するのを防止できる。
したがって、本発明の第3の実施形態に係るMEMS素子においても、第1及び第2の実施形態と同様に、MEMS素子の素子特性を向上できる。
尚、第3の実施形態においては、上部信号電極12の構造は、第2の実施形態と同様に、凹部或いは突起部を有する構造であってもよいのは、もちろんである。また、第1乃至第3の実施形態においては、MEMS可変容量素子及びMEMSスイッチを例に用いて説明したが、それに限定されない。例えば、加速度センサ、圧力センサ、RF(radio frequency)フィルタ、ジャイロスコープ、ミラーデバイスなどであっても、第1乃至第3の実施形態と同様の効果が得られるのは、もちろんである。
(4) 変形例
以下、図9及び図10を用いて、本発明の実施形態に係るMEMS素子の変形例について、説明する。尚、第1乃至第3の実施形態で述べた構成要素と同じ部材については、同じ符号を付し、その構成要素についての詳細な説明は、必要に応じて行う。
本発明の実施形態に係るMEMS素子の変形例の一例として、図9の(a)に示すように、側壁部22の側面に、基板1表面に対して平行方向に突出した部分23(第2の突起部)が設けられてもよい。突起部23は、ダミー層12X側の反対方向に向かって、水平に突出している。
この構造は、図9の(b)に示すように、レジスト91が、犠牲層90の側面上の側壁部22から水平方向に突出する部分23を覆うように、パターニングすることで、形成される。このように、側壁部22の側面に、基板1表面に対して平行方向(水平方向)に突出する突起部23を設けることで、側壁部22の剛性が向上する。それゆえ、側壁部22の膜厚が薄くなることに起因して、側壁部22がダミー層12X側に向かって湾曲して、側壁部22がダミー層12Xに接触するのを防止できる。
図9の(c)のように、梁21Aの幅方向の一端及び他端の間において、梁21Aの底面に、突起部(第3の突起部)24を設けてもよい。突起部24は、上述のMEMS素子の製造方法において、ダミー層12Xに、スリットを設けることで形成される。スリットの幅方向の寸法は、犠牲層90の膜厚の2倍より大きく、梁の膜厚の2倍以下になるように形成される。このように、梁21Aの底面に、突起部24を設けることによって、梁21Aの剛性をさらに向上できる。よって、第1の実施形態と同様に、MEMS素子の駆動速度を向上できる。
図10の(a)及び(b)は、第2の実施形態に係るMEMS素子の変形例を示している。
図10の(a)に示されるように、可動構造10Cの下部信号電極12B内にスリットを形成するのではなく、凹部17A下方の基板1表面が露出しないように、下部信号電極12B内に、溝15を設けた構造であってもよい。この構造においても、図7の(a)に示す工程と同様に、下部信号電極12Bを形成するための導電層上面が、エッチングによって基板側へ後退される。その際、基板1上面が露出しないように、下部信号電極12Bとなる導電層内に溝15が形成される。そして、図7の(b)及び(c)に示される工程において、溝15を有する導電層上に、犠牲層及び導電層が堆積されると、その溝に起因して、下部信号電極の除去された膜厚分に対応して、上部信号電極16Aに窪みが生じる。これによって、図10の(a)に示すように、上部信号電極16A内に、凹部17が形成される。
また、図10の(b)に示すように、上部信号電極16B底面に、突起部(第4の突起部)19が設けられた構造になってもよい。
突起部19は、凹部17と同様に、下部信号電極12A内に形成されたスリット(溝)の形状に依存して、形成される。突起部19は、図7の(a)に示されるスリット14の幅W2を、犠牲層の膜厚Taの2倍より大きく、導電層16Xの膜厚Tbの2倍以下にすることで、形成される。尚、突起部19は、Y方向に延在する形状を有してもよいし、下部信号電極12Aを分断しなければ、X方向に延在する形状を有してもよい。
図6の(a)のように、下部信号電極12内にスリットを形成した場合、下部信号電極12の上面と上部信号電極16の底面との対向面積が小さくなる。これに対して、図10の(a)及び(b)に示されるMEMS素子においては、下部信号電極12の上面と上部信号電極16の底面との対向面積が減少することはなく、2つの電極間に発生する静電容量が減少するのを防止できる。
図10の(a)及び(b)に示す上部信号電極16A,16Bの構造であっても、上部信号電極の剛性を向上でき、上部信号電極の湾曲を抑制できる。
図9及び図10に示す構造は、第2の実施形態で述べたMEMSスイッチに適用できる。
以上のように、図9及び図10に示されるように、本実施形態の変形例に係るMEMS素子においても、第1乃至第3の実施形態で述べたMEMS素子と同様の効果が得られる。
(5)その他
本発明の実施形態においては、可動する上層の電極と固定された下層の電極とから構成されるMEMS素子を例に用いて説明したが、それに限定されない。例えば、上層の電極と下層の電極の両方が可動する構成のMEMS素子であっても、本発明の実施形態で述べたMEMS素子と同様の効果が得られる。
また、本実施形態においては、2つの電極が対をなす構成を有するMEMS素子を例に用いて説明したが、それに限定されない。例えば、固定された上層の電極と固定された下層の電極との間に、中空に支えられ、且つ、可動な中間電極が設けられた構成されたMEMS素子であっても、本発明の実施形態で述べたMEMS素子と同様の効果が得られる。尚、この場合は、中間電極に突起部が設けられる。
本発明の例は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1:基板、10:可動構造、12,12A,12B:下部信号電極、16,16A,16B:上部信号電極、17:凹部、21A,21B:梁、25A,25B:梁(接合部)、22:側壁部、30A,30B:アクチュエータ、33:上部駆動電極、37:下部駆動電極、34:バネ構造、18,19,23:突起部、12X,12Y:ダミー層(導電層)、21A,21X:導電層、90:犠牲層。

Claims (5)

  1. 基板上に設けられ、前記基板表面に対して平行な第1の平行部と、前記基板側に後退した1以上の段差部とをその上面に有する第1の電極と、
    前記第1の電極上方に設けられ、前記第1の平行部に対向し且つ前記基板表面に対して平行な第2の平行部と、前記段差部に対応する位置において前記第2の平行部に接続され且つ前記第1の電極側に突出する1以上の第1の突起部とをその底面に有し、前記第1の電極に向かって機械的に駆動される第2の電極と、
    前記基板上に設けられるアンカーと、
    前記第2の電極を中空に支え、その一端が前記アンカーに支持され、その幅方向の端部に前記基板側に突出する側壁部が設けられる梁と、
    を具備することを特徴とするMEMS素子。
  2. 前記第2の電極の中央部に設けられた前記第1の突起部に対応する位置において、前記第2の電極の底面に対向する前記第2の電極の上面に凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
  3. 前記側壁部の側面上に設けられ、前記基板表面に対して平行方向に突出する第2の突起部を、さらに具備することを特徴とする請求項1又は2に記載のMEMS素子。
  4. 前記梁の底面に設けられ、前記基板側に突出する第3の突起部を、さらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のMEMS素子。
  5. 基板上に、前記基板表面に対して平行な第1の平行部と前記基板側に後退した1以上の段差部とをその上面に有する第1の電極と、ダミー層とを形成する工程と、
    前記第1の電極上及び前記ダミー層上に、前記ダミー層の形状に依存して、上向きに凸部分を有する犠牲層を形成する工程と、
    前記第1の平行部に対向し且つ前記基板表面に対して平行な第2の平行部と前記第1の電極の前記段差部に対応する位置において前記第2の平行部に接続され且つ前記第1の電極側に突出する1以上の第1の突起部とをその底面に有する第2の電極を、前記第1の電極上方に形成し、前記犠牲層の凸部分に起因する梁及び前記梁の端部に設けられた側壁部を前記ダミー層上方に形成する工程と、
    前記犠牲層を除去し、前記ダミー層と前記梁の間、前記ダミー層と前記側壁部の間及び前記第1の電極と前記第2の電極の間に、空隙を形成する工程と、
    を具備することを特徴とするMEMS素子の製造方法。
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