JP2009212887A - 静電振動子及びその使用方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動漏れを低減しつつ、設計時の寸法上の制約を緩和することの可能な振動子構造を実現する。
【解決手段】本発明の静電振動子は、支持体10、11と、該支持体に対して第1の弾性部13Bのみを介して接続された第1の剛性部13C、及び、該第1の剛性部に対して第2の弾性部13Dのみを介して接続された第2の剛性部13Eを有する可動電極13と、前記第1の剛性部に対向配置され、前記第1の剛性部に励振力を及ぼす駆動電極12Bと、前記第2の剛性部に対向配置され、前記第2の剛性部の振動変位を検出する検出電極12Aと、を具備し、前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部の前記駆動電極及び前記検出電極と対向する方向の撓み変形により前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部がそれぞれ振動変位可能とされた2自由度の弾性振動系を構成することを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】本発明の静電振動子は、支持体10、11と、該支持体に対して第1の弾性部13Bのみを介して接続された第1の剛性部13C、及び、該第1の剛性部に対して第2の弾性部13Dのみを介して接続された第2の剛性部13Eを有する可動電極13と、前記第1の剛性部に対向配置され、前記第1の剛性部に励振力を及ぼす駆動電極12Bと、前記第2の剛性部に対向配置され、前記第2の剛性部の振動変位を検出する検出電極12Aと、を具備し、前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部の前記駆動電極及び前記検出電極と対向する方向の撓み変形により前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部がそれぞれ振動変位可能とされた2自由度の弾性振動系を構成することを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は静電振動子及びその使用方法に係り、特に、MEMS(微小電子機械システム)として構成される場合に好適な静電振動子の構造、並びに、当該静電振動子を用いる使用方法に関する。
一般に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は微小構造体形成技術の一つで、ミクロンオーダーの微細な電子機械システムを作る技術やその製品のことを指す。半導体チップはシリコン基板上にシリコン薄膜を積み重ねて電子回路を作るため平面的であるが、同じ半導体技術を使いながらMEMSではシリコンを加工してミクロンサイズの板バネ、鏡、回転軸などが形成される。これらの構造は立体的であり、可動部分を備えている。
MEMSが注目されている分野として通信、特に携帯電話機の通信回路がある。携帯電話機にはLSIの他にフィルタ、アンテナスイッチ、送受信スイッチなど多くの部品が組み込まれている。近距離無線通信や無線LANを利用するマルチバンド化が進むことにより、アンテナの切り替えスイッチやバンド切り替えスイッチなどの受動部品が増加する。携帯電話機のような製品の小型化、省電力化を図るためにはこうした部品を1チップに納めて部品点数を減らすことが最も効率のよい方法である。また、配線が短くなり、メカニカルに動作することから信号ノイズが入りにくく、個別部品より10倍以上損失の少ないフィルタを実現することができるなどの性能向上も見込まれる。さらに、シリコンを使用することでLSIとの一体化、パッケージ化、各部材に対する貼り合わせなどが可能になる(例えば、以下の特許文献1参照)。
上記のように機械的に振動するMEMS振動子は小型であるとともに半導体回路との一体化が可能なことから新しい振動子デバイスとして期待されているが、反面、MEMS振動子には一般的な圧電素子を用いた水晶振動子やセラミック振動子に比べて等価回路の抵抗成分が大きいという欠点がある。この抵抗成分を低くするためには、振動子のエネルギー損失を低減する必要がある。
上記のMEMS振動子のエネルギー損失の原因としては、固定部への振動漏れ(Anchor loss)が挙げられる。この振動漏れの大きさは振動部と固定部の形状によって定まる。当該振動漏れを低減する従来方法としては、以下の非特許文献1のFig.1に記載されているように、平面視矩形状の振動体を4本の直線状の支持梁で両持ち梁状に支持してなる振動子構造において、振動体及び各支持梁は、各支持梁の両側の振動体に対する各接続部位及び基板に対する各固定部位がちょうど振動の節に相当する位置となる寸法に形成され、これにより固定部の振動変位が小さくなって上記振動漏れを抑制できるようになっている。
特表2007−533186号公報
Kun Wang,他3名 "VHF Free-Free Beam High-Q Micromechanical Resonators" Technical Digest, 12th International IEEE Micro Electro Mechanical Systems Conference, Orlando, Florida, Jan. 17-21, 1999, P.453-458
しかしながら、前述の非特許文献1に記載のMEMS振動子においては、駆動周波数が高くなるに従って振動体及び支持梁の寸法を小さくする必要があるので、電極や支持梁を設けるスペースが小さくなるなど、寸法に関して設計上の制約が大きいという問題点がある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、振動漏れを低減しつつ、設計時の寸法上の制約を緩和することの可能な振動子構造を実現することにある。
斯かる実情に鑑み、本発明の静電振動子は、支持体と、該支持体に対して第1の弾性部を介して接続された第1の剛性部、及び、該第1の剛性部に対して第2の弾性部を介して接続された第2の剛性部を有する可動電極と、前記第1の剛性部に対向配置され、前記第1の剛性部に励振力を及ぼす駆動電極と、前記第2の剛性部に対向配置され、前記第2の剛性部の振動変位を検出する検出電極と、を具備し、前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部の前記駆動電極及び前記検出電極と対向する方向の撓み変形により前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部がそれぞれ振動変位可能とされた2自由度の弾性振動系を構成することを特徴とする。
この発明によれば、駆動電極により第1の剛性部に励振力を与えると撓み変形による2自由度の弾性振動系が振動し、これによって生じた第2の剛性部の振動変位を検出電極により検出することで、電気的振動子を構成することができる。この場合、駆動電極により第1の剛性部に及ぼされる励振力の励振周波数を弾性振動系のうち第2の剛性部と第2の弾性部の固有振動数の近傍とすることにより、第1の剛性部の振幅を第2の剛性部の振幅より大幅に小さくすることができるので、支持体側への振動漏れを低減することができる。ここで、第1の弾性部及び第2の弾性部は、第1の剛性部及び第2の剛性部より弾性が高く剛性の低い部分として構成されていればよい。
本発明の一の態様においては、前記支持体は基板であり、前記第1の弾性部の一端が前記基板に固定され、前記第1の弾性部、前記第1の剛性部、前記第2の弾性部及び前記第2の剛性部を有する可動部分が前記基板との間に間隙を有した状態で前記基板に沿って延在し、前記駆動電極が前記第1の剛性部と対向する位置で前記基板上に形成され、前記検出電極が前記第2の剛性部と対向する位置で前記基板上に形成される。これによれば、上記可動部分が基板に沿って延在する構造とすることで当該可動部分を基板上の単一層で形成できる、上記駆動電極と検出電極を基板上に単一層で形成できるなど、振動子構造体を基板上にMEMS技術等を用いて容易に形成することができる。
この場合においては、前記可動部分が前記基板上において片持ち梁状に支持されることが好ましい。本発明において、第1の弾性部、第1の剛性部、第2の弾性部及び第2の剛性部を有する振動子構造体の可動部分は支持体に対して第1の弾性部の一端が固定されることで適宜の態様で支持されることができ、例えば、第2の剛性部が複数の第2の弾性部に接続され、これらの第2の弾性部のそれぞれが別々の第1の剛性部及び第1の弾性部に接続される態様で両持ち梁状に支持されていても構わないが、上記可動部分が基板上において片持ち梁状に支持されることで、振動子構造体を簡易に構成でき、全体として小型化を図ることが可能になる。
本発明の他の態様においては、前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部の前記駆動電極及び前記検出電極と対向する方向の厚みが前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部の同方向の厚みより小さい。本発明では、振動子構造体の可動部分において、第1の弾性部及び第2の弾性部は、第1の剛性部及び第2の剛性部のいずれよりも駆動電極及び検出電極と対向する方向に弾性変形しやすく構成する。この場合に、可動部分全体を同素材で構成し、第1の弾性部及び第2の弾性部の上記方向の厚みを第1の剛性部及び第2の剛性部の厚みより小さくすることで、可動部分を容易に製造することができる。
次に、本発明の静電振動子の使用方法は、上記いずれか一項に記載の静電振動子の使用方法であって、前記弾性振動系の一次の固有周波数と二次の固有周波数との間であって、前記第1の剛性部の振幅u1が前記第2の剛性部の振幅u2より小さくなる条件を満たす周波数範囲内の励振周波数で前記第1の剛性部に前記励振力を与えて前記静電振動子を動作させることを特徴とする。
この発明によれば、2自由度の弾性振動系の一次の固有周波数(一次の共振点)と二次の固有周波数(二次の共振点)の間においては、第1の剛性部の振幅が第2の剛体の振幅より小さくなる周波数範囲が存在するので、静電振動子の励振周波数を当該周波数範囲で周波数範囲内とすれば、第2の剛性部の振動を確保しつつ第1の剛性部の振動を抑制できるため、上記振動漏れを低減しつつ動作させることができる。上記周波数範囲内では、第2の剛性部と第2の弾性部からなる部分振動系の固有振動数の近傍において第1の剛性部の振幅が第2の剛性部の振幅より大幅に小さくなり、特に、当該部分振動系の固有振動数では0となる。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、本発明の静電振動子の動作原理について図1乃至図3を参照して説明する。
図1は本発明の原理を示す2自由度の弾性振動系の概念図(或いは、本実施形態の等価構成図)、図2は当該弾性振動系における第1の剛性部の振幅u1の励振周波数f=ω/2πに対する依存性を示すグラフ、図3は2自由度の弾性振動系を構成する本実施形態の静電振動子の構造を模式的に示す概念図である。
この弾性振動系は、図1に示すように、支持体1に対し、ばね定数k1の第1の弾性体2、質量m1の第1の剛性体3、ばね定数k2の第2の弾性体4、質量m2の第2の剛性体5が順次に連結された可動部分を有する。この弾性振動系は、第1の剛性体3及び第2の剛性体5がそれぞれ図示上下方向に振動変位x1、x2で振動可能な2自由度の弾性振動系を構成している。
ここで、上記第1の剛性体3に対して調和励振力F=F0・sinωtが作用する場合、第1の剛性体3の振動変位をx1=u1・sinωt、第2の剛性体5の振動変位をx2=u2・sinωtとすると、以下の式(1)及び(2)が成立する。
u1/Xst=(ω02 2−ω2)/[(ω02 2―ω2)・{1+(k2/k1)−(ω/ω01)2}−(ω02 2k2/k1)]…(1)
u2/Xst=ω02 2/[(ω02 2−ω2)・{1+(k2/k1)−(ω/ω01)2}−(ω02 2k2/k1)]…(2)
ここで、第1の剛性体3の静的変位Xst=F0/k1、第1の弾性部材2及び第1の剛性体3からなる支持体側(上部)振動系の固有角振動数ω01=(k1/m1)1/2、第2の弾性部材4及び第2の剛性体5からなる反支持体側(下部)振動系の固有角振動数ω02=(k2/m2)1/2である。
上記の振幅u1、u2と励振周波数f=ω/2πとの関係を示すものが図2である。図2からわかるように、第1の剛性体3は、一次の固有角振動数ω1と二次の固有角振動数ω2でそれぞれ共振し、その振幅u1は図示実線で示すように無限大になる。また、上記式(1)の分子によりω=ω02となるとき、すなわち、励振角振動数ω=2πf(fは励振周波数)が反支持体側振動系の固有角振動数ω02に一致するときには、第1の剛性体3の振幅u1は0(反共振)となるが、第2の剛性体5の振幅u2は図示破線で示すようにu2=−F0/k2となる。
また、上記の一次の固有角振動数ω1、二次の固有角振動数ω2(系の特性方程式の解、すなわち、1次の共振点及び二次の共振点)は以下の式(3)及び(4)で与えられる。なお、一次の共振点未満の励振周波数fでは第1の剛性体3と第2の剛性体5が同相で振動し、二次の共振点を越える励振周波数fでは第1の剛性体3と第2の剛性体3が逆相で振動する。
ω1 2=1/2{(m1・k1+m2・k1+m2・k2)/m1・m2}−1/2[{(m1・k2+m2・k1+m2・k2)/m1・m2}2−4(k1・k2)/(m1・m2)]1/2…(3)
ω2 2=1/2{(m1・k1+m2・k1+m2・k2)/m1・m2}+1/2[{(m1・k2+m2・k1+m2・k2)/m1・m2}2−4(k1・k2)/(m1・m2)]1/2…(4)
したがって、上記弾性振動系が一次の固有角振動数ω1と二次の固有角振動数ω2の間の周波数範囲f1(=ω1/2π)〜f2(=ω2/2π)の励振周波数で強制振動する場合、図示のようにほとんどの領域で第1の剛性体3の振幅u1は第2の剛性体5の振幅u2より小さくなる。そして、振幅u1が振幅u2より小さくなる周波数範囲P内では、第1の剛性体3及び第1の弾性体2を通して支持体1側へ漏出する振動エネルギーは抑制される。
図3には、上記の弾性振動系を撓み変形による振動子構造体で構成した場合の概略構成を示す。図示例では、上記振動子構造体の可動部分を支持体である基板1上に沿って配置した場合を示す。上記可動部分は基板1に固定された支持固定部1′によって支持されている。すなわち、この支持固定部1′に第1の弾性体2の基端が固定されている。そして、この第1の弾性体2、第1の剛性体3、第2の弾性体4及び第2の剛性体5は、基板1の表面との間に間隔を有する態様で、基板1に沿って延在している。したがって、当該弾性振動系の可動部分は、上記可動部分が基板1上において片持ち梁状に支持される。
上記第1の剛性体3の下方には駆動電極6が基板1上に形成されている。そして、第1の剛性体3と駆動電極6は上下方向に間隔を有して対向している。また、上記第2の剛性体5の下方には検出電極7が基板1上に形成されている。そして、第2の剛性体5と検出電極7は上下方向に間隔を有して対向している。
そして、第1の剛性体3と駆動電極6との間に交代的な励振信号を印加すると、第1の剛性体3との間に変動する静電力が働き、これによって第1の剛性体3に図示上下方向の交代的な励振力が及ぼされる。ここで、第1の剛性体3の上下方向の変位をx1、第2の剛性体5の上下方向の変位をx2とすると、図1に示される等価構成図と同様の2自由度の弾性振動系が構成されることがわかる。一方、上記の励振力に基づいて第2の剛性体5が上下に振動すると、第2の剛性体5と検出電極7の間隔の変動により両者間の静電容量が変動するので、検出電極7を介して当該変動を検出することが可能である。
図4(a)は本実施形態の静電振動子の構造を示す縦断面図、図4(b)は同構造の平面図である。本実施形態では、シリコン単結晶等よりなる半導体基板(GaAsやInP等の化合物半導体でもよい。)10の表面に窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等の絶縁体よりなる絶縁膜11が形成され、この絶縁膜11上に、アルミニウム、銅などの金属、或いは、導電性ポリシリコン等の低抵抗半導体よりなる検出電極12A、駆動電極12Bが形成されている。また、基板10若しくは上記絶縁膜11上には、一端が絶縁膜11上に固定された支持固定部13Aとされ、当該支持固定部13Aから第1の弾性部13B、第1の剛性部13C、第2の弾性部13D及び第2の剛性部13Eよりなる可動部分13Sが基板10の表面に沿って延在されてなる可動電極13が設けられている。可動電極13は基板10上において片持ち梁状に支持されている。
上記可動電極13では、第1の弾性部13B、第1の剛性部13C、第2の弾性部13D及び第2の剛性部13Eよりなる可動部分13Sの全体が等幅の帯状に構成されるとともに、第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dが第1の剛性部13C及び第2の剛性部13Eのいずれよりも薄く形成されている。具体的には、可動部分13Sの下面(基板10側の面)の第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dに対応する部分に凹部13b及び13dが形成され、これによって第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dの図示上下方向の厚みが第1の剛性部13C及び第2の剛性部13Eのいずれの図示上下方向の厚みよりも薄く構成される。これによって、第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dの図示上下方向の撓み変形に対する弾性が第1の剛性部13C及び第2の剛性部13Eのいずれの図示上下方向の撓み変形に対する弾性よりも大きく、同撓み変形に対する剛性が第1の剛性部及び第2の剛性部のいずれの同撓み変形よりも低くなっている。
上記構成により、可動部分13Sは、図3に示すものと同様の2自由度の弾性振動系を構成する。ここで、当該弾性振動系においても、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)に示す式が成立し、図2に示す特性を有する。ただし、この場合のばね定数k1、k2、質量m1、m2は、上記第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dのばね定数、並びに、上記第1の剛性部13C及び第2の剛性部13Eの質量と正確に一致するわけではなく、あくまでも、可動部分13Sにおける等価ばね定数、並びに、等価質量である。これは、可動部分13Sの各部13B〜13Eがそれぞれ独立に弾性変形し、独立の質量として存在するわけではなく、上記等価ばね定数及び等価質量は、可動部分13Sの全体の形状や他の部分の形状及び弾性に影響を受けるとともに、支持固定部13Aの形状や弾性の影響をも受けるからである。
したがって、本実施形態によれば、駆動電極12Bにより第1の剛性部13Cに静電励振力を与えると2自由度の弾性振動系が振動し、これによって生じた第2の剛性部13Eの振動変位を検出電極12Aにより静電的に検出することで、電気的振動子を構成することができる。この場合、駆動電極12Bにより第1の剛性部13Cに及ぼされる静電励振力の励振周波数f=ω/(2π)を弾性振動系のうち第2の剛性部13Eと第2の弾性部13Dの固有振動数の近傍とすることにより、第1の剛性部13Cの振幅u1を第2の剛性部13Eの振幅u2より大幅に小さくすることができる。通常、図2に示す周波数範囲P内であれば振幅u1が振幅u2より小さくなり、第1の剛性部13Cの振動が抑制されるので、支持体13A側への振動漏れを低減することができる。この場合、第1の剛性部は励振力を吸収する吸収部として機能し、第2の剛性部は上記励振力に起因して振動する振動部として機能する。なお、上記弾性振動系の特性上、等価質量m1をm2より大きくすると振動漏れの防止効果を高めることができる。
次に、図5及び図6を参照して、上記実施形態の製造方法について説明する。この実施形態では、図5(a)に示すように、半導体基板10の表面上に酸化シリコン等よりなる第1の絶縁膜11Sを熱酸化法等で形成し、その上に、窒化シリコン等よりなる第2の絶縁膜11NをプラズマCVD法等で形成する。当該第2の絶縁膜11Nは製造上の都合により形成するもので、本製造方法における後述するリリース工程のエッチング処理に耐性を有する素材で構成される。第2の絶縁膜11Nは、図示例の場合、基板10の表面上において後述する静電振動子の振動子構造体を形成する領域にのみ島状に形成される。なお、本製造方法の第1の絶縁膜11S及び第2の絶縁膜11Nは上記実施形態の絶縁膜11に相当する。
次に、図5(b)に示すように、第1の絶縁膜11S及び第2の絶縁膜11N上に導電性シリコン等の導電層12をCVD法等で成膜し、レジスト塗布・露光・現像によるパターニングマスクの形成工程、及び、当該パターニングマスクを用いたエッチング工程を含むパターニング処理でパターニングすることで、上記検出電極12A及び駆動電極12Bを形成する。
その後、図5(c)に示すように、PSG(リンドープガラス)等よりなる犠牲層14をCVD法等で成膜し、図5(d)に示すように、上記と同様のパターニング処理を施して、検出電極12A及び駆動電極12Bを覆う所定のパターン形状とし、また、当該犠牲層14の所定の表面部分に凸部14b及び14dを形成する。当該凸部14b及び14dの形成は、犠牲層14の表面に部分的にレジスト等のマスクを形成し、エッチング処理を所定時間施すことで形成できる。
さらに、図6(a)に示すように、上記犠牲層14上から第2の絶縁膜11N上にかけて導電性ポリシリコン等の導電体を成膜し、上記と同様のパターニング処理を施すことにより可動電極13を形成する。このとき、可動電極13の下面には、上記犠牲層14の凸部14b及び14dを反映した凹部13b及び13dが形成される。
また、可動電極13の表面(上面)を化学機械研摩(CMP;Chemical and Mechanical Polishing)等で平坦化する。この表面平坦化工程は、上記の凹部13b及び13dを設けることで可動部分13Sの厚みを第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dの部分で低減する効果を高める。ただし、当業者であれば明らかなように、上記可動電極13の表面平坦化工程を実施せず、可動部分13の図示上面に多少凹凸が形成されたとしても、当該凹凸の高低差が凸部14b及び14dの高低差を下回るように可動電極13を形成することで、厚みの低減効果を確保することが可能であるから、当該表面平坦化工程は必須工程ではない。
その後、図6(b)に示すように、上記犠牲層14をフッ酸系のエッチャントを用いたエッチング処理(例えば、緩衝フッ酸を用いたウエットエッチング)等でエッチングすることで、可動電極13の可動部分13Sを基板10上から分離するリリース工程を実施する。これにより、可動部分13Sと検査電極12A及び駆動電極12Bとが離間され、上述の静電振動子の振動子構造体が形成される。
上記実施形態では、可動部分13Sの下面が凹凸状に形成されることで剛性部13C、13Eと弾性部13B、13Dの厚みを異ならせているが、当該厚みを異ならせるために可動部分13Sの上面を凹凸状に形成してもよい。以下の第2実施形態の製造方法では、後者の構造を有する例の製造過程を示す。
図7及び図8には、第2実施形態の静電振動子の製造方法を示す工程断面図を示す。この第2実施形態では、図7(a)に示すように第1実施形態と同様の第1の絶縁膜11S及び第2の絶縁膜11Nを形成し、その後、図7(b)に示すように検査電極12A及び駆動電極12Bを形成する。次に、図7(c)に示すように犠牲層14を形成し、その後、図7(d)に示すように、当該犠牲層14の表面を化学機械研摩等により一旦平坦化する。この犠牲層14の表面平坦化工程は後述する効果をもたらすが、これも後述するように必ずしも実施しなくても構わない。
次に、図8(a)に示すように、上記の犠牲層14上に前述の可動電極13を形成する。その後、図8(b)に示すように、当該可動電極13の表面に部分的に凹部13b′及び13d′を形成する。当該凹部13b′及び13d′は、可動電極13上にパターニングマスクの形成を行い、所定時間のエッチング処理を施すことによって形成できる。凹部13b′及び13d′は、上述の第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dの形成領域に設けられ、これによって両弾性部の図示上下方向の厚みが他の部分より薄く構成される。
最後に、第1実施形態と同様にリリース工程を実施し、図8(c)に示すように、上記犠牲層14を除去して可動電極13の可動部分13Sを検査電極12A及び駆動電極12Bと離間させる。
本実施形態では、第1実施形態とは異なり、可動部分13Sの図示上面に凹部13b′及び13d′が形成されることで、第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dが薄く形成されている。このとき、可動部分13Sの図示下面が上記犠牲層14の平坦な表面を反映して平坦に構成されることで、凹部13b′及び13d′を形成することによる厚みの低減効果を高めることができる。ただし、当業者であれば明らかなように、上記犠牲層14の表面平坦化工程を実施せず、可動部分13の図示下面に多少凹凸が形成されたとしても、凹部13b′及び13d′を当該凹凸を補う深さ、範囲及び形状にすることで、厚みの低減効果を確保することが可能である。
尚、本発明の静電振動子は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、一体の可動電極13の可動部分13Sを局所的に薄く構成して弾性を高める方法で第1の弾性部13B及び第2の弾性部13Dを形成しているが、当該可動部分に開口領域を形成したり細幅の領域を形成したりすることで弾性部の弾性を高めてもよい。また、当然のことではあるが、剛性部13C、13Eと弾性部13B、13Dを別の素材で構成することにより、相互の弾性を異ならせるようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では半導体基板を用いることで、半導体回路と一体的に静電振動子を構成する場合に好適な構成となっているが、支持体である基板を、ガラス、石英、セラミックス、合成樹脂などの他の素材で構成しても構わない。また、絶縁膜11は、基板が半導体や導体である場合、或いは、基板は絶縁体であるが表面上に導体パターンなどの導電体が存在している場合には必要となるが、基板が絶縁体で導体パターンなども存在しない場合には不要である。
1…支持体(基板)、2…第1の弾性体、3…第1の剛性体、4…第2の弾性体、5…第2の剛性体、6…駆動電極、7…検出電極、10…半導体基板、11…絶縁膜、11S…第1の絶縁膜、11N…第2の絶縁膜、12…導体層、12A…検査電極、12B…駆動電極、13…可動電極、1′、13A…支持固定部、13B…第1の弾性部、13C…第1の剛性部、13D…第2の弾性部、13E…第2の剛性部、13b、13b′、13d、13d′…凹部、14…犠牲層
Claims (5)
- 支持体と、
該支持体に対して第1の弾性部を介して接続された第1の剛性部、及び、該第1の剛性部に対して第2の弾性部を介して接続された第2の剛性部を有する可動電極と、
前記第1の剛性部に対向配置され、前記第1の剛性部に励振力を及ぼす駆動電極と、
前記第2の剛性部に対向配置され、前記第2の剛性部の振動変位を検出する検出電極と、
を具備し、
前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部の前記駆動電極及び前記検出電極と対向する方向の撓み変形により前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部がそれぞれ振動変位可能とされた2自由度の弾性振動系を構成することを特徴とする静電振動子。 - 前記支持体は基板であり、前記第1の弾性部の一端が前記基板上で固定され、前記第1の弾性部、前記第1の剛性部、前記第2の弾性部及び前記第2の剛性部を有する可動部分が前記基板との間に間隙を有した状態で前記基板に沿って延在し、前記駆動電極が前記第1の剛性部と対向する位置で前記基板上に形成され、前記検出電極が前記第2の剛性部と対向する位置で前記基板上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の静電振動子。
- 前記可動部分が前記基板上において片持ち梁状に支持されることを特徴とする請求項2に記載の静電振動子。
- 前記第1の弾性部及び前記第2の弾性部の前記駆動電極及び前記検出電極と対向する方向の厚みが前記第1の剛性部及び前記第2の剛性部の同方向の厚みより小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電振動子。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の静電振動子の使用方法であって、
前記弾性振動系の一次の固有周波数と二次の固有周波数との間であって、前記第1の剛性部の振幅u1が前記第2の剛性部の振幅u2より小さくなる条件を満たす周波数範囲内の励振周波数で前記第1の剛性部に前記励振力を与えて前記静電振動子を動作させることを特徴とする静電振動子の使用方法。
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8305152B2 (en) | 2009-12-22 | 2012-11-06 | Seiko Epson Corporation | MEMS oscillator and method of manufacturing thereof |
JP2014204352A (ja) * | 2013-04-08 | 2014-10-27 | セイコーエプソン株式会社 | 振動素子、振動子、発振器、振動素子の製造方法、電子機器、及び移動体 |
JP2014212409A (ja) * | 2013-04-18 | 2014-11-13 | セイコーエプソン株式会社 | Mems振動子、電子機器、及び移動体 |
US9083309B2 (en) | 2010-11-30 | 2015-07-14 | Seiko Epson Corporation | Microelectronic device and electronic apparatus |
-
2008
- 2008-03-05 JP JP2008054455A patent/JP2009212887A/ja not_active Withdrawn
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