JP5191387B2 - 防水型押しボタンスイッチ - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、例えば洗濯機や食器洗い器等の水がかかるおそれのあるところで使用するのに好適な防水型押しボタンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の防水型押しボタンスイッチは、その底部から突出されている複数の端子部を回路基板の各スルーホールに通した状態で、これらの端子部を回路基板の配線パターンに半田付けして電気的に接続している。回路基板の板面には、その他の複数の電子部品も実装されている。これら防水型押しボタンスイッチ及びその他の複数の電子部品の回路基板に対する接続箇所に水が付着すると短絡事故等を起こすので、これを防水するために回路基板の板面を樹脂で被覆し、防水を図っている。この場合、防水型押しボタンスイッチはそのケースの高さ方向の途中に分割接続箇所が存在することが多く、この分割接続箇所からも水が侵入するおそれがあるので、ケースの分割接続箇所が隠れる高さまで樹脂を被覆している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】
特開2005−197045号公報 図4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような構造の防水型押しボタンスイッチでは、回路基板に取り付けた状態では、この防水型押しボタンスイッチのケースの高さ方向の途中の分割接続箇所が隠れる高さまで樹脂を被覆する必要があったので、樹脂の使用量が非常に多くなってコスト高になると共に電子部品を実装した回路基板の重量が重くなる問題点があった。
【0004】
本発明の目的は、防水型押しボタンスイッチのケースの高さ方向の途中の分割接続箇所が隠れる高さまで樹脂を被覆する必要がなく、しかもその分割接続箇所の防水を図ることができる防水型押しボタンスイッチを提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、ベースケースの周壁に沿った樹脂の吸い上げを良好に行わせることができ、しかもベースケースとカバーケースとの嵌め合わせ時に両者の連結を良好に行わせることができる防水型押しボタンスイッチを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ケースの高さ方向の途中の分割接続箇所に存在する防水シール部材の外周に対する樹脂の被覆も容易に行わせることができる防水型押しボタンスイッチを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、ベースケースとカバーケースとが相対的に周方向に回転するのを防止できる防水型押しボタンスイッチを提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、ベースケースとカバーケースとの分割接続箇所のシールが一層良好に行え、しかもベースケースの周壁に沿って上昇する樹脂がカバーケース内へ侵入するのを防止できる防水型押しボタンスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防水型押しボタンスイッチは、操作時に押圧を受ける押しボタン部材を有する。この押しボタン部材は、押圧力が加えられていないときには第1の位置にあり、押圧力が加えられると第1の位置から直線的に第2の位置に向かって移動させられるようになっている。また、この押しボタン部材で操作されるスイッチ機構を有する。このスイッチ機構は、押しボタン部材が第2の位置にあるときに、押しボタン部材から加えられる力によってオン状態になり、押しボタン部材が前記第2の位置にないときにオフ状態になるようになっている。また、スイッチ機構を収納するスイッチ機構収納室を備えたベースケースを有する。このベースケースは、底壁部と筒状の周壁部とから構成されていて、これら底壁部と筒状の周壁部とで囲まれた内部にスイッチ機構収納室が形成されている。このベースケース内のスイッチ機構収納室は、押しボタン部材が位置する方向に向かって開口する開口部を有している。また、ベースケースの開口部に被せられるカバーケースを有する。このカバーケースは、押しボタン部材の一部がスライド可能に貫通する貫通孔と、この貫通孔と連続して形成されて押しボタン部材がスライドすることを許容するように押しボタン部材の一部を収納する押しボタン収納室を備えた第1の筒状壁部と、この第1の筒状壁部と一体に形成され、押しボタン収納室と連続して形成されて貫通孔とは反対側に開口するベースケース嵌合室を有する第2の筒状壁部と、第1の筒状壁部と第2の筒状壁部との境界部に形成されてベースケースの周壁部の端面と対向する環状の対向面とを備えている。また、弾性を有する防水用シール部材を有する。この防水用シール部材は、ベースケースの開口部を塞ぐように、ベースケースの周壁部の端面とカバーケースの対向面との間に圧縮された状態で配置されている。また、ベースケースとカバーケースを連結する連結機構を有する。この連結機構は、カバーケースのベースケース嵌合室内にベースケースが嵌合された状態で、カバーケースの第2の筒状壁部とベースケースの周壁部とを連結する構造になっている。防水用シール部材の厚み及び連結機構の構造は、ベースケース嵌合室内にベースケースが嵌合された状態で、ベースケースの周壁部の端面とカバーケースの対向面との間で防水用シール部材を圧縮して環状の水密シール部を形成するように定められている。
【0010】
特に本発明の防水型押しボタンスイッチでは、ベースケースの周壁部とカバーケースの第2の筒状壁部との間及び対向面と防水用シール部材との間には、ベースケース嵌合室の開口部から環状の水密シール部まで延びて水密シール部の周囲を完全に囲む間隙が形成されている。間隙の厚み寸法は、ベースケース嵌合室の開口部から間隙内に入った樹脂が水密シール部まで表面張力により進入するように定められている。
【0011】
このような防水型押しボタンスイッチでは、ベースケースの周壁部とカバーケースの第2の筒状壁部との間、及び対向面と防水用シール部材との間に、ベースケース嵌合室の開口部から環状の水密シール部まで延びて水密シール部の周囲を完全に囲む間隙を設け、この間隙の厚み寸法を、ベースケース嵌合室の開口部から間隙内に入った樹脂が水密シール部まで表面張力により進入するように定めているので、この防水型押しボタンスイッチを他の電子部品と共に回路基板に実装し、しかる後に回路基板の表面を樹脂で被覆する際には、カバーケースの第2の筒状壁部の先端が樹脂の面の中に入ると、ベースケースの周壁部とカバーケースの第2の筒状壁部との間の間隙を通して樹脂が表面張力により上昇し、水密シール部の周囲を完全に囲むようになる。このため回路基板の表面を被覆する樹脂の被覆厚さは、カバーケースの第2の筒状壁部の先端部が埋まる深さでよく、防水型押しボタンスイッチのケースの高さ方向の途中の分割接続箇所が隠れる高さまで樹脂を被覆する必要がなくなり、樹脂の使用量が少なくなってコストを低減することができる。特にこの防水型押しボタンスイッチでは、カバーケースの環状の対向面と防水用シール部材との間に樹脂が入る間隙を設けているので、この間隙に入る樹脂により防水用シール部材の周囲がその下面から上面まで樹脂が被覆されてシールを確実に行うことができる。
【0012】
カバーケースの第2の筒状壁部に、ベースケース嵌合室と連通する複数の窓部を周方向に所定の間隔をあけて形成すると、これらの窓部が空気抜き孔となって、ベースケースの周壁に沿った樹脂の吸い上げを良好に行わせることができる。
【0013】
また、カバーケースを、可撓性を有する合成樹脂材料により一体に成形し、このカバーケースの周壁部の外壁部には、ベースケース嵌合室内にベースケースが嵌合されるときに第2の筒状壁部を径方向外側に向かって押し広げるように変形させ、ベースケース嵌合室内にベースケースが完全に嵌合された状態では、窓部の内部に位置して窓部の縁部と係合する複数の係合用突起を一体に形成し、複数の窓部の縁部と複数の係合用突起とにより連結機構を構成すると、ベースケースとカバーケースとの嵌め合わせ時に両者の連結を良好に行わせることができる。
【0014】
複数の窓部が、防水用シール部材の外周面の一部がこの窓部から露出するように形成されていると、ケースの高さ方向の途中の分割接続箇所に存在する防水シール部材の外周に対する樹脂の被覆も容易に行わせることができる。
【0015】
複数の窓部が、周方向に360°/n(nは2以上の整数)ずつ離れた位置に形成されたn個の窓部からなっていて、これらn個の窓部のうち径方向に対向する一対の窓部に対応する二つの位置に、ベースケースとカバーケースとの間に周方向への相対的な動きが発生することを防止する嵌合構造をそれぞれ形成すると、ベースケースとカバーケースとが相対的に周方向に回転するのを防止することができる。
【0016】
カバーケースの第2の筒状壁部に設けられているn個の窓部に対応させてベースケースの周壁部の外壁部にn個の係合用突起を一体に形成し、カバーケースの第2の筒状壁部の先端側に、n個の窓部の中間に位置させてn個の切り離しスリットをそれぞれの先端を開放させて設けると、n個の係合用突起が第2の筒状壁部内に入るとき、n個の切り離しスリットを境として第2の筒状壁部の先端側のn個の部分が外向きに広がり、n個の係合用突起の相対的な通過が容易になる。
【0017】
カバーケースの第1の筒状壁部と第2の筒状壁部との境界部で、防水用シール部材と対向する環状の対向面に、防水用シール部材を圧縮して窪ませる環状突部を設けると、ベースケースとカバーケースとの分割接続箇所のシールを良好に行うことができ、特にカバーケースの環状の対向面と防水用シール部材との間に樹脂が入る間隙の形成を容易に行うことができて、この間隙に入って環状突部の外周で止まる樹脂により防水用シール部材の箇所のシールを確実に行うことができる。
【0018】
なお、防水用シール部材の、ベースケースの周壁部の端面と対向する面を、樹脂フィルムで覆ってもよい。このようにすると、防水用シール部材の下面が樹脂フィルムによって保護されるため、環状の水密シール部の耐久性を高めることができる。また、この樹脂フィルムを防水用シール部材に接着等により接合すると組立が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る防水型押しボタンスイッチの実施の形態の一例を示した平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】図1の底面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】図1のVI−VI線断面図である。
【図7】(A),(B)及び(C)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いている押しボタン部材の平面図、正面図及び底面図である。
【図8】(A),(B),(C)及び(D)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いているベースケースの平面図、右側面図、底面図及び(A)のVIII−VIII線断面図である。
【図9】(A),(B),(C)及び(D)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いているカバーケースの平面図、右側面図、底面図及び(A)のIX−IX線断面図である。
【図10】(A),(B)及び(C)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いているプランジャの平面図、一部縦断正面図及び底面図である。
【図11】本例の防水型押しボタンスイッチを回路基板に取り付けて樹脂を被覆する過程を示す説明図である。
【図12】本発明に係る防水型押しボタンスイッチの実施の形態の他の例を示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明に係る防水型押しボタンスイッチの実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は本例の防水型押しボタンスイッチの平面図、図2は図1の正面図、図3は図1の右側面図、図4は図1の底面図、図5は図1のV−V線断面図、図6は図1のVI−VI線断面図、図7(A),(B)及び(C)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いている押しボタン部材の平面図、正面図及び底面図、図8(A),(B),(C)及び(D)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いているベースケースの平面図、右側面図、底面図及び(A)のVIII−VIII線断面図、図9(A),(B),(C)及び(D)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いているカバーケースの平面図、右側面図、底面図及び(A)のIX−IX線断面図、図10(A),(B)及び(C)は本例の防水型押しボタンスイッチで用いているプランジャの平面図、一部縦断正面図及び底面図である。
【0021】
本例の防水型押しボタンスイッチは、図1乃至図6に示すように、操作時に押圧を受ける押しボタン部材1と、この押しボタン部材1で操作されるスイッチ機構3と、このスイッチ機構3を収納するスイッチ機構収納室5を備えたベースケース7と、このベースケース7におけるスイッチ機構収納室5の開口部5aに被せられるカバーケース9と、このカバーケース9におけるスイッチ機構収納室5の開口部5aを水密に閉塞するための弾性を有する防水用シール部材11と、押しボタン部材1から押された力を防水用シール部材11を介してスイッチ機構3に伝えるプランジャ13と、ベースケース7とカバーケース9を連結する連結機構15とを備えて構成されている。
【0022】
押しボタン部材1は、合成樹脂で形成されたものであって、図5乃至図7に示すように、円柱状の小径部1aの下に円柱状の大径部1bが同心状に一体に設けられ、この大径部1bの下に円柱状の押圧部1cが同心状に一体に設けられた構造になっている。この押しボタン部材1は、押圧力が加えられていないときには第1の位置(図5や図6に示す上昇した位置)にあり、押圧力が加えられると第1の位置から直線的に第2の位置(第1の位置から下降した位置)に向かって移動させられるようになっている。
【0023】
この押しボタン部材1で操作されるスイッチ機構3は、図5及び図8に示すように、中央の1つの固定接点17と、この固定接点17を間にしてその両側に絶縁間隔をあけて1列に配置された1対の固定接点19a,19bと、これら固定接点19a,19bに常時接触させ、待機時に中央の固定接点17から離間させて、これら固定接点19a,19bと固定接点17の上に配置されたドーム状をなす可動接点21とを備えて構成されている。可動接点21は、例えば、ばね用リン青銅等の弾性金属板を切断し、プレス加工でドーム状に押し出して形成されている。ドーム状をなす可動接点21の頂部には、空気抜き孔21aが形成されている。押しボタン部材1の円柱状の押圧部1cの外径は、この空気抜き孔21aより太く形成されている。このようなドーム状をなす可動接点21は、その凸型の頂部が押されると中央部分が弾性的に撓んで中央の固定接点17に接触し、固定接点19a,19bと固定接点17とが可動接点21で短絡され、スイッチ機構3がオン状態となる。ドーム状をなす可動接点21の頂部に対する押圧がなくなると、可動接点21の中央部の弾性的な撓みが反転して元の姿に戻り、可動接点21の頂部が中央の固定接点17から離れ、スイッチ機構3がオフ状態となる。即ち、押しボタン部材1が第2の位置にあるときに、押しボタン部材1から加えられる力によってスイッチ機構3がオン状態になり、押しボタン部材1が第2の位置にないときにスイッチ機構3がオフ状態になるようになっている。このスイッチ機構3は、後述するベースケース7に組み込まれる。また、スイッチ機構3は、固定接点17につながる端子部23と、1対の固定接点19a,19bにつながる端子部25とを備えている。
【0024】
ベースケース7は、合成樹脂で形成されたものであって、特に図5、図6及び図8に示すように、円形の底壁部7aとその外周から起立された円筒状の周壁部7bとから構成されていて、これら底壁部7aと筒状の周壁部7bとで囲まれた内部にスイッチ機構収納室5が形成されている。このベースケース7内のスイッチ機構収納室5は、押しボタン部材1が位置する方向に向かって開口する開口部5aを有している。筒状の周壁部7bの端部には、防水用シール部材11を嵌める窪み部27が周方向に沿って環状に設けられている。筒状の周壁部7bの上部側外周には、周方向に沿って360°/n(nは2以上の整数)の間隔(本例では90°間隔)でn個(本例では4個)の係合用突起29が一体に突設されている。対向する1対の係合用突起29は、固定接点19a,19bと固定接点17との整列方向の両側に設けられている。これら整列方向の1対の係合用突起29の周方向の中間部には、カバーケース9との嵌め合わせ方向に沿って回り止め溝31が設けられている。各回り止め溝31は、筒状の周壁部7bの高さ方向の全長に設けられている。
【0025】
固定接点19a,19bと固定接点17とは、このようなベースケース7の底壁部7a上に下部を埋め込み、上部をスイッチ機構収納室5に露出させて配置されている。このような固定接点19a,19bと固定接点17とは、ベースケース7の成形時にインサート成形されるようになっている。
【0026】
カバーケース9は、可撓性を有する合成樹脂で形成されたものであって、特に図5、図6及び図9に示すように、押しボタン部材1の一部がスライド可能に貫通する貫通孔33と、この貫通孔33と連続して形成されて押しボタン部材1がスライドすることを許容するように押しボタン部材1の一部を収納する押しボタン収納室35を備えた第1の筒状壁部9aと、この第1の筒状壁部9aと一体に形成され、押しボタン収納室35と連続して形成されて貫通孔33とは反対側に開口するベースケース嵌合室37を有する第2の筒状壁部9bと、第1の筒状壁部9aと第2の筒状壁部9bとの境界部に形成されてベースケース7の周壁部7bの端面39と対向する環状の対向面41とを備えている。カバーケース9の第1の筒状壁部9aと第2の筒状壁部9bとの境界部で、防水用シール部材11と対向する環状の対向面41に、防水用シール部材11を圧縮して窪ませる環状突部43が一体に設けられている。カバーケース9の第2の筒状壁部9bの先端側内面には、ベースケース7の筒状の周壁部7bの外周の回り止め溝31に嵌る回り止め突条45が設けられている。カバーケース9の第2の筒状壁部9bの先端側には、周方向に沿って360°/n(nは2以上の整数)の間隔(本例では90°間隔)でn個(本例では4個)の切り離しスリット47が、後述するn個の窓部で隣接する窓部間の周方向の中間に位置させ且つそれぞれの先端を開放させて設けられている。本例では、各切り離しスリット47は、各回り止め突条45に対して周方向の左右45°の位置にそれぞれの先端を開放させて設けられている。カバーケース9の第2の筒状壁部9bの先端内面には、テーパ面49が周方向に沿って設けられている。テーパ面49は、第2の筒状壁部9bの先端で内径が最大で、それより内側に入るにつれて内径が漸減するようになっている。
【0027】
防水用シール部材11は、特に図5及び図6に示すように、弾性を有する円板状のゴム板により形成されていて、ベースケース7の上部の周方向に沿った窪み部27に嵌められ、ベースケース7の開口部5aを塞ぐようになっている。窪み部27の深さは、防水用シール部材11の厚みより小さく形成されていて、窪み部27に防水用シール部材11が嵌められた状態で、防水用シール部材11の上部が窪み部27の上に露出するようになっている。
【0028】
連結機構15は、特に図6、図8及び図9に示すように、カバーケース9のベースケース嵌合室37内にベースケース7が嵌合された状態で、カバーケース9の第2の筒状壁部9bとベースケース7の周壁部7bとを連結する構造になっている。防水用シール部材11の厚み及び連結機構15の構造は、ベースケース嵌合室37内にベースケース7が嵌合された状態で、ベースケース7の周壁部7bの端面39とカバーケース9の対向面41との間で防水用シール部材11を圧縮して環状の水密シール部51を形成するように定められている。連結機構15は、カバーケース9の第2の筒状壁部9bに、ベースケース嵌合室37と連通するようにして周方向に360°/n(nは2以上の整数)の間隔をあけて形成されたn個(本例では4個)の窓部53と、ベースケース7の周壁部7bの外壁部に一体に設けられて、ベースケース嵌合室37内にベースケース7が嵌合されるときに第2の筒状壁部9bを径方向外側に向かって押し広げるように変形させ、ベースケース嵌合室37内にベースケース7が完全に嵌合された状態では、各窓部53の内部に位置してこれら窓部53の縁部53aと係合する前述したn個(本例では4個)の係合用突起29とで構成されている。これら窓部53は、カバーケース9の第1の筒状壁部9aとそれより大径の第2の筒状壁部9bとをつないでいる段差部9cの上面から回り止め突条45の上端まで形成されている。また、これら窓部53は、防水用シール部材11の外周面の一部がこの窓部53から露出するように形成されている。本例では、各窓部53は、周方向に90度ずつ離れた位置に形成された4個の窓部53からなっていて、これら4個の窓部53は、ベースケース7の4個の係合用突起29に対応して設けられている。これら4個の窓部53のうち径方向に対向する一対の窓部53に対応する二つの位置の第2の筒状壁部9bの内面には、カバーケース9の周方向への相対的な動きが発生することを防止する前述した回り止め突条45が突設されている。
[0029]
押しボタン部材1から押された力を防水用シール部材11を介してスイッチ機構3のドーム状の可動接点21に伝えるプランジャ13は、合成樹脂製であって、特に図5、図6及び図10(A)〜(C)に示すように、円柱状の小径部13aの下に円柱状の大径部13bが同心状に一体に設けられ、この大径部13bの下に円錐台状の押圧部13cが同心状に一体に設けられた構造になっている。このプランジャ13は、円柱状の小径部13aの上面が防水用シール部材11の下面に接触され、円錐台状の押圧部13cの先端がドーム状の可動接点21の頂部に接触されて、押しボタン部材1からの押圧力を防水用シール部材11とこのプランジャ13を介してドーム状の可動接点21に伝えるようになっている。
[0030]
[0031]
特にこの防水型押しボタンスイッチでは、ベースケース7の周壁部7bとカバーケース9の第2の筒状壁部9bとの間及び対向面41と防水用シール部材11との間には、ベースケース嵌合室37の開口部37aから環状の水密シール部51まで延びて水密シール部51の周囲を完全に囲む間隙55(図3及び図4参照。)と間隙57(図2、図3、図5及び図6参照。)とが形成されている。間隙55,57の厚み寸法は、ベースケース嵌合室37の開口部37aから間隙55内に入った樹脂が水密シール部51の間隙57まで表面張力(または、毛細管現象)により進入するように定められている。
[0032]
このような防水型押しボタンスイッチは、図11に示すように、端子部23,25を回路基板59に通して先端が回路基板59の下面に所定寸法だけ露出する長さに切断した後、回路基板59の各スルーホール61に端子部23,25を通して、回路基板59の導電層63に半田65付けする。しかる後、回路基板59の両面に樹脂67を被覆する。防水型押しボタンスイッチが存在する方の樹脂67の被覆厚さは、カバーケース9の第2の筒状壁部9bの下端が樹脂67の層に隠れる厚さとする。このようにすると、ベースケース7の周壁部7bとカバーケース9の第2の筒状壁部9bとの間の間隙55を通して樹脂67が表面張力により上昇し、水密シール部51の周囲を完全に囲み、カバーケース9の対向面41と防水用シール部材11との間の間隙57に入り、カバーケース9の対向面41の環状突部43で止まる。水密シール部51の樹脂67で更にシールされ、確実にシールが行われる。シールが確実に行われた状態になると、各窓部53から樹脂67があふれ出し、樹脂あふれ部67aがそれぞれできる。これら樹脂あふれ部67aが形成されると、樹脂67の被覆を終了する。
【0033】
このため回路基板59の表面を被覆する樹脂67の被覆厚さは、カバーケース9の第2の筒状壁部9bの先端部が埋まる深さでよく、防水型押しボタンスイッチのケースの高さ方向の途中の分割接続箇所(本例では、ベースケース7とカバーケース9の接続箇所)が隠れる高さまで樹脂67を被覆する必要がなくなり、樹脂67の使用量が少なくなってコストを低減することができる。
【0034】
なお、窓部53や係合用突起29の数は、それぞれ4個に限定されるものではなく、2個以上であればよい。
【0035】
図12は、本発明に係る防水型押しボタンスイッチの実施の形態の他の例を説明する図である。図12において、図6で説明した構成要素と同一の構成要素については、図6で示した符号の数に100の数を加えた符号を付して説明を省略する。本実施の形態の他の例では、図12に示すように、防水用シール部材111の下面(ベースケース107の周壁部107bの端面139と対向する面)が樹脂フィルムで覆われている。樹脂フィルムとしては、環状の水密シール部151の耐久性が高くなるように防水用シール部材111を保護する材料を用いることができる。この例では樹脂フィルム112としてポリエステル系高分子フィルムが用いられている。なお、樹脂フィルム112(ポリエステル系高分子フィルム)は、接着剤により防水用シール部材111の下面全体を覆うように防水用シール部材111に接着されている。
【0036】
樹脂フィルム112の厚みは、防水用シール部材111の下面が樹脂フィルム112に覆われた状態で、間隙157等の厚み寸法がベースケース嵌合室の開口部から間隙内に入った樹脂が水密シール部151の間隙157まで表面張力(または毛細管現象)により進入するように定められている[図5の符号37,55,図9(D)の符号37a等参照]。この例では、樹脂フィルム112の厚みは、105μmとなっている。
【0037】
なお、樹脂フィルム112(ポリエステル系高分子フィルム)は、防水用シール部材111に接着しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る防水型押しボタンスイッチでは、ベースケースの周壁部とカバーケースの第2の筒状壁部との間、及び対向面と防水用シール部材との間に、ベースケース嵌合室の開口部から環状の水密シール部まで延びて水密シール部の周囲を完全に囲む間隙を設け、この間隙の厚み寸法を、ベースケース嵌合室の開口部から間隙内に入った樹脂が水密シール部まで表面張力により進入するように定めているので、この防水型押しボタンスイッチを他の電子部品と共に回路基板に実装し、しかる後に回路基板の表面を樹脂で被覆する際には、カバーケースの第2の筒状壁部の先端が樹脂の面の中に入ると、ベースケースの周壁部とカバーケースの第2の筒状壁部との間の間隙を通して樹脂が表面張力により上昇し、水密シール部の周囲を完全に囲むようになる。このため回路基板の表面を被覆する樹脂の被覆厚さは、カバーケースの第2の筒状壁部の先端部が埋まる深さでよく、防水型押しボタンスイッチのケースの高さ方向の途中の分割接続箇所が隠れる高さまで樹脂を被覆する必要がなくなり、樹脂の使用量が少なくなってコストを低減することができる。
Claims (6)
- 押圧力が加えられていないときには第1の位置にあり、押圧力が加えられると前記第1の位置から直線的に第2の位置に向かって移動させられる押しボタン部材と、
前記押しボタン部材が前記第2の位置にあるときに、前記押しボタン部材から加えられる力によってオン状態になり、前記押しボタン部材が前記第2の位置にないときにオフ状態になるスイッチ機構と、
底壁部と筒状の周壁部とから構成され、且つ前記押しボタン部材が位置する方向に向かって開口する開口部を有して前記スイッチ機構を収納するスイッチ機構収納室を備えたベースケースと、
前記押しボタン部材の一部がスライド可能に貫通する貫通孔と、前記貫通孔と連続して形成されて前記押しボタン部材がスライドすることを許容するように前記押しボタン部材の一部を収納する押しボタン収納室を備えた第1の筒状壁部と、前記第1の筒状壁部と一体に形成され、前記押しボタン収納室と連続して形成されて前記貫通孔とは反対側に開口するベースケース嵌合室を有する第2の筒状壁部と、前記第1の筒状壁部と前記第2の筒状壁部との境界部に形成されて前記ベースケースの前記周壁部の端面と対向する環状の対向面とを備えたカバーケースと、
前記ベースケースの前記開口部を塞ぐように、前記ベースケースの前記周壁部の前記端面と前記カバーケースの前記対向面との間に圧縮された状態で配置された弾性を有する防水用シール部材と、
前記カバーケースの前記ベースケース嵌合室内に前記ベースケースが嵌合された状態で、前記カバーケースの前記第2の筒状壁部と前記ベースケースの前記周壁部とを連結する連結機構とを有し、
前記ベースケース嵌合室内に前記ベースケースが嵌合された状態で、前記ベースケースの前記周壁部の前記端面と前記カバーケースの前記対向面との間で前記防水用シール部材を圧縮して環状の水密シール部を形成するように、前記防水用シール部材の厚み及び前記連結機構の構造が定められている防水型押しボタンスイッチであって、
前記ベースケースの前記周壁部と前記カバーケースの前記第2の筒状壁部との間及び前記対向面と前記防水用シール部材との間には、前記ベースケース嵌合室の開口部から前記環状の水密シール部まで延びて前記水密シール部の周囲を完全に囲む間隙が形成されており、
前記間隙の厚み寸法は、前記ベースケース嵌合室の前記開口部から前記間隙内に入った樹脂が前記水密シール部まで表面張力により進入するように定められており、
前記カバーケースは、可撓性を有する合成樹脂材料により一体に成形されており、
前記カバーケースの前記第2の筒状壁部には、前記ベースケース嵌合室と連通する複数の窓部が周方向に所定の間隔をあけて形成されており、
前記ベースケースの前記周壁部の外壁部には、前記ベースケース嵌合室内に前記ベースケースが嵌合されるときに前記第2の筒状壁部を径方向外側に向かって押し広げるように変形させ、前記ベースケース嵌合室内に前記ベースケースが完全に嵌合された状態では、前記窓部の内部に位置して前記窓部の縁部と係合する複数の係合用突起が一体に形成され、
前記複数の窓部の前記縁部と前記複数の係合用突起とにより前記連結機構が構成されており、
前記複数の窓部は、前記防水用シール部材の外周面の一部が前記窓部から露出するように形成されていることを特徴とする防水型押しボタンスイッチ。 - 前記複数の窓部は、前記周方向に360°/n(nは2以上の整数)ずつ離れた位置に形成されたn個の窓部からなり、
前記n個の窓部のうち径方向に対向する一対の窓部に対応する二つの位置には、前記ベースケースと前記カバーケースとの間に前記周方向への相対的な動きが発生することを防止する嵌合構造がそれぞれ形成されている請求項1に記載の防水型押しボタンスイッチ。 - 前記カバーケースの前記第2の筒状壁部に設けられている前記n個の窓部に対応させて前記ベースケースの前記周壁部の外壁部にはn個の前記係合用突起が一体に形成され、前記カバーケースの前記第2の筒状壁部の先端側には前記n個の窓部の中間に位置させてn個の切り離しスリットがそれぞれの先端を開放させて設けられている請求項2に記載の防水型押しボタンスイッチ。
- 前記カバーケースの前記第1の筒状壁部と前記第2の筒状壁部との境界部に形成されて前記防水用シール部材と対向する環状の前記対向面には、前記防水用シール部材を圧縮して窪ませる環状突部が設けられている請求項1に記載の防水型押しボタンスイッチ。
- 前記防水用シール部材の、前記ベースケースの前記周壁部の前記端面と対向する面が、樹脂フィルムで覆われている請求項1に記載の防水型押しボタンスイッチ。
- 前記樹脂フィルムは、前記防水用シール部材に接合されている請求項5に記載の防水型押しボタンスイッチ。
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