本発明で使用される(A)非晶性熱可塑性樹脂は、公知の非晶性熱可塑性樹脂が使用でき、例えばスチレン系樹脂(ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、ABS、MABS、MBSなど)、アクリル系樹脂といった汎用樹脂やポリエステル系樹脂(PETG樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、PPE系樹脂といったエンジニアリングプラスチックなどである。中でも、成形性や機械的特性からスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましい。
スチレン系樹脂とは、芳香族ビニル系単量体がその成分として含まれる重合体からなるものである。この芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレン及びo,p−ジクロロスチレンなどが挙げられるが、中でもスチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。芳香族ビニル系単量体は、1種の使用でも2種以上を併用しても良い。
また、スチレン系樹脂は、耐薬品性や耐熱性などの特性を付与する目的で、芳香族ビニル系単量体及びその芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を共重合したビニル系共重合体を含有していても良い。これらの他のビニル系単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、(メタ)アリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、及び2−スチリル−オキサゾリンなどが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルと(メタ)アクリル酸メチルが好ましく用いられる。
スチレン系樹脂に含有される芳香族ビニル系単量体の割合は、成形加工性の観点から10〜100重量部が好ましく、より好ましくは20〜90重量部である。
スチレン系樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、物性バランスを維持する上で、5万〜30万であることが好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による一般的に公知な手法で測定することができる。
スチレン系樹脂の製造方法には特に制限はなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法及び塊状−懸濁重合法など通常の製造方法を用いることができる。また、これらのいずれかの方法で得られた1種又は2種以上のスチレン系樹脂を溶融混練して製造しても良い。
スチレン系樹脂の耐衝撃性などの特性を飛躍的に向上させることを目的とする場合には、スチレン系樹脂として、芳香族ビニル系(共)重合体からなるマトリックス中に、ゴム質重合体が分散したゴム変性スチレン系樹脂を用いることが好ましい。すなわち、スチレン系樹脂として、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体及び該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有しているゴム変性スチレン系樹脂を好ましく用いることができる。また、芳香族ビニル系単量体及び該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体とが共重合したビニル系共重合体、並びにゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体及び該芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体をグラフト重合して得られたグラフト共重合体を含有しているゴム変性スチレン系樹脂も好ましく用いることができる。なお、本発明において、上記のように(共)重合体と表示するときは、重合体及び/又は共重合体を意味している。
ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体及びアクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、及びエチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられるが、中でもポリブタジエンとブタジエン共重合体が好ましく用いられる。
ゴム質重合体は、耐衝撃性に優れるという観点から、重量平均粒子径が0.15〜0.60μmの範囲のゴム粒子が好ましく、重量平均粒子径が0.2〜0.55μmの範囲のゴム粒子がより好ましい。
ここで、ゴム粒子の重量平均粒子径は、「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt,P.H.Biddison」に記載の、アルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
スチレン系樹脂として、上記のゴム変性スチレン系樹脂を用いる場合には、ゴム質重合体とマトリックスであるスチレン系樹脂とは非相溶であるため、ゴム質重合体にマトリックスと相溶する成分をグラフト重合させると、耐衝撃性をより一層向上させることができる。すなわち、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体又は単量体混合物をグラフト重合したグラフト共重合体を用いることが好ましい。グラフト重合に用いられる単量体としては、上記のマトリックスである芳香族ビニル系(共)重合体中の単量体成分と同様の単量体成分を同様の割合で使用することが好ましい。
組成とグラフト量については、ゴム質重合体の分散性を損なわないような組成とグラフト量に調整することが好ましい。グラフト率は5〜200%が好ましく、より好ましくは20〜100%である。ここでいうグラフト率とは、次の(式1)により算出される値である。
グラフト重合していない(共)重合体の特性については、優れた耐衝撃性を有する樹脂組成物が得られるという観点から、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、好ましくは0.25〜0.60dl/gの範囲であり、さらに好ましくは0.25〜0.50dl/gの範囲である。
ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法としては、具体的には、ゴム質重合体に、芳香族ビニル系単量体を含有する単量体又は単量体混合物をグラフト重合して得られるグラフト共重合体と、芳香族ビニル系単量体を含有する単量体又は単量体混合物を重合して得られるスチレン系(共)重合体とを溶融混練してゴム変性スチレン系樹脂を製造する方法が、工業的及び経済的に好適である。
上記のゴム変性スチレン系樹脂に含まれるグラフト共重合体は、乳化重合や塊状重合などの公知の重合法により得ることができる。中でも、ゴム質重合体ラテックスの存在下に、単量体又は単量体混合物、ラジカル発生剤及び連鎖移動剤の混合物を、連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法が、操業上好適である。
本発明で用いられるスチレン系樹脂の具体例としては、例えば、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、AS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ABS樹脂、MAS樹脂、MS樹脂、MABS樹脂及びMBS樹脂等があり、またこれらの樹脂と他の樹脂とのアロイなど挙げられる。
本発明で使用される(B)熱可塑性エラストマーは、公知のエラストマーが使用でき、例えばオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどであり、中でもスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーが、その硬度や機械的特性のバランスから好ましく、特にポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーがより好ましい。
ポリアミド系エラストマーは、主として結晶性脂肪族若しくは芳香族ポリアミド単位からなる高融点結晶性重合体セグメントと脂肪族若しくは芳香族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族若しくは芳香族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントの共重合体である。
ポリアミド系エラストマーの高融点結晶性重合体セグメントの主たる構成成分としては、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸、炭素原子数6以上のラクタム又は炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物が好ましい。
ポリアミド系エラストマーの高融点結晶性重合体セグメントを構成する炭素数が6以上のアミノカルボン酸としては、炭素数が6以上20以下のアミノカルボン酸が好ましく、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸がより好ましい例として挙げられる。また、炭素数が6以上のラクタムとしては、炭素数が6以上20以下のラクタムが好ましく、具体的には、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、及びラウロラクタムなどがより好ましい例として挙げられる。また、炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物としては、炭素原子数6以上20以下のジアミンと炭素原子数6以上20以下のジカルボン酸との反応物が好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、及びヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのジアミンとジカルボン酸との塩(ナイロン塩)の反応物が挙げられる。
ポリアミド系エラストマーの高融点結晶性重合体セグメントにおいて、炭素数が6以上のアミノカルボン酸、炭素数が6以上のラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との反応物と、低融点重合体セグメントとの結合は、エステル結合又はアミド結合であることが好ましい。
また、ポリアミド系エラストマーの高融点結晶性重合体セグメントとして、ジカルボン酸やジアミンなどの第三成分を反応成分としてさらに含有していてもよい。この場合のジカルボン酸成分としては、重合性、色調及び物性の点から、炭素数4〜20のカルボン酸が好ましく、その例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。一方、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族又は脂肪族のジアミンが用いられ、中でも脂肪族ジアミンであるヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
ポリエステル系エラストマーは、主として結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントと脂肪族若しくは芳香族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族若しくは芳香族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントのブロック又はグラフト共重合体、好ましくはブロック共重合体である。
ポリエステル系エラストマーの高融点結晶性重合体セグメントの主たる構成成分としては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、ジオール又はそのエステル形成性誘導体から重縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体であって、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニル−4,4−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。主として芳香族ジカルボン酸を用いるが、必要によっては、芳香族ジカルボン酸の一部を1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸及びダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸に置換しても良い。また、例えば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル及び酸ハロゲン化物等、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体を用いることもできる。
ジオールとしては、炭素数2〜20の脂肪族或いは脂環式グリコール、即ちエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、及び、キシレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等の芳香族ジオールが好ましく、これらのジオールは、例えばアセチル体、アルカリ金属塩等のエステル形成性誘導体としても用いることができる。
上記のジカルボン酸及びその誘導体、ジオール及びその誘導体は2種以上併用することができる。
ポリエステル系エラストマーの高融点結晶性重合体セグメントにおいては、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位と、テレフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位、又は、イソフタル酸及び/又はジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンイソフタレート単位からなるものが好ましく用いられる。
本発明で使用されるポリアミド系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーの低融点重合体セグメントは、脂肪族若しくは芳香族ポリエーテル単位及び/又は脂肪族若しくは芳香族ポリエステル単位からなる重合体である。
脂肪族若しくは芳香族ポリエーテルとしては、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール及び次の一般式(I)〜(III)
(ここで、一般式(I)〜(III)中、R7、R8はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基を表し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを表し、X1〜X12はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、SO3H又はその金属塩(SO3Na、SO3K等)を表す。)で示されるジオール化合物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の化合物を構成成分として含有する共重合体であることが好ましい。
上記の一般式(I)〜(III)中のm、nは、それぞれ「−(R7O)−」と「−(R8O)−」の重合度を表す。その和である(m+n)は、使用される一般式(I)〜(III)のジオール化合物に依存するが、8〜65の範囲となることが好ましい。(m+n)の平均値は、一般式(I)〜(III)のジオール化合物の構造(単量体の分子量)と数平均分子量から計算により求めることができるものである。
本発明において、数平均分子量は、試料1gを過剰なアセチル化剤、例えば、無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をG、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をHとしたときに、次の(式2)によって計算することができる。
上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物としては、R7、R8がそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であって、Yが炭素数2〜6のアルキリデン基、X1〜X12がそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基であるジオール化合物が好ましく、これらの中でも特にX1〜X12が水素であるジオール化合物が好ましい。
具体的なジオール化合物としては、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びジヒドロキシナフタレン等のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物又はそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
これらの中でさらに好ましいジオール化合物は、ヒドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物、及びそれらブロック共重合体である。特に、重合性と経済性の点で、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物又はそのブロック共重合体が好ましく用いられる。
上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるこれらジオール化合物の数平均分子量は、1,000〜3,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲にある場合には、得られるポリエステル共重合体及びポリアミド共重合体の帯電防止性の向上及び重合時間の短縮を図ることができる。
脂肪族若しくは芳香族ポリエステルとしては、炭素数3以上20以下のラクトンの開環重合反応により得られる重合体ないしは共重合体、あるいは脂肪族若しくは芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体から重縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である。
炭素数3以上20以下のラクトンとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、エナントラクトン、カプリルラクトン、ラウロラクトンなどが挙げられる。
ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸及びダイマー酸などが挙げられる。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸を用いることもできる。主として脂肪族ジカルボン酸を用いるが、必要によっては、脂肪族ジカルボン酸の一部をテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニル−4,4−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などに置換しても良い。例えば低級アルキルエステル、アリールエステル、炭酸エステル及び酸ハロゲン化物等、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体を用いることもできる。
ジオールとしては、炭素数2〜20の脂肪族或いは脂環式グリコール、即ちエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、及び、キシレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン、2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等の芳香族ジオールが挙げられる。これらのジオールは、例えばアセチル体、アルカリ金属塩等のエステル形成性誘導体としても用いることができる。
上記のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、ジオール又はそのエステル形成性誘導体は2種以上併用することができる。
ポリアミド系エラストマー及びポリエステル系エラストマーの低融点重合体セグメントとして、脂肪族若しくは芳香族ポリエーテル単位からなる共重合体であることが好ましく、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールであることがより好ましい。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック又はランダム共重合体、及びエチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロック又はランダム共重合体などが挙げられ、中でも、ポリエステル系エラストマーの低融点重合体セグメントの構成成分としては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール及び/又はポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物及び/又はエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体が好ましく、ポリアミド系エラストマーの低融点重合体セグメントの構成成分としては、ポリ(エチレンオキシド)グリコールを用いることが好ましい。
ポリアミド系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーの低融点重合体セグメントの数平均分子量は、好ましくは200〜6000の範囲であり、より好ましくは300〜4000の範囲である。また、必要に応じてポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の両末端は、アミノ化又はカルボキシ化されていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマーをそれぞれ単独で使用してもよく、或いはポリエステル系エラストマー及びポリアミド系エラストマーを混合して使用してもよい。本発明で使用されるポリアミド系エラストマーの製造方法については、特に限定されず、公知の製造方法を利用することができる。例えば、アミノカルボン酸、ラクタム又は炭素数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との塩と、上記の第三成分として含有可能なジカルボン酸とを反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、このプレポリマーにポリ(アルキレンオキシド)グリコール及び上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物を、真空下に反応させる方法を適用することができる。
また、アミノカルボン酸、ラクタム又は炭素数6以上のジアミンと炭素原子数6以上のジカルボン酸との塩、上記の第三成分として含有可能なジカルボン酸、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール及び上記の一般式(I)〜(III)からなる群から選ばれるジオール化合物の3つの化合物を反応槽に仕込み、水の存在下又は不存在下に、高温で加熱反応させることによりカルボン酸末端のポリアミドエラストマーを生成させ、その後、常圧又は減圧下で重合を進める方法も適用することができる。さらに、これら3つの化合物を同時に反応槽に仕込み、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法も適用できる。
本発明で使用されるポリエステル系エラストマーの製造方法については、特に限定されず、公知の製造方法を利用することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び、低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下、エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法及び、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及び、低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下、エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法などを適用することができる。
本発明で用いられる(A)非晶性熱可塑性樹脂の配合量は、90〜40重量部、好ましくは80〜50重量部、より好ましくは75〜55重量部である。(A)非晶性熱可塑性樹脂の配合量が90重量部を越えると、すなわち(B)熱可塑性エラストマーの配合量が10重量部未満であると後加工性が損なわれる傾向にあり好ましくない。また、(A)非晶性熱可塑性樹脂の配合量が40重量部未満であると、すなわち(B)熱可塑性エラストマーの配合量が60重量部を越えると機械的特性が低下傾向にあり好ましくない。
本発明で用いられる(C)非繊維状フィラーは、ガラスビーズ(球状ガラス)及びガラスバルーン(球状中空ガラス)から選択され、単独もしくは併用して使用される。好適なものとしては、寸法安定性等からガラスビーズ又はガラスバルーンであり、ガラスバルーンがより好ましい。
(C)非繊維状フィラーの配合量は(A)非晶性熱可塑性樹脂と(B)熱可塑性エラストマーの合計量を100重量部とした場合、5〜60重量部の範囲であり、好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部である。(C)非繊維状フィラーの配合量が(A)非晶性熱可塑性樹脂と(B)熱可塑性エラストマーの合計量100重量部に対して5重量部未満であると後加工性が見劣りする傾向にあり、また60重量部を越えると機械的特性や成形加工性が低下する傾向にあり好ましくない。本発明で用いられる(C)非繊維状フィラーは、配合される樹脂との密着性を向上させ機械的特性、長期耐久性を向上させるためにシラン系カップリング剤やその他の表面処理剤など公知の手法により表面処理を施すこともできる。また、(C)非繊維状フィラーであるガラスビーズ、ガラスバルーンの製造方法には特に限定は無く、公知の方法により製造されたものが使用できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の硬度は、特に限定されるものではないがロックウェル硬さ(ASTM D785、Rスケール)として60〜95の範囲にあると釘打ち性、機械的強度、セルフタップ強度等のバランスにより優れるものとなり、好ましく、より好ましくは60〜90の範囲であり、更に好ましい範囲としては65〜85である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン基から選ばれる少なくとも一種の官能基を含有する変性ビニル系(共)重合体(以下、変性ビニル系重合体と略称することがある。)を含有することもできる。この変性ビニル系重合体としては、一種又は二種以上のビニル系単量体と、上記の官能基(カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミノ基及びオキサゾリン基から選ばれる少なくとも一種の官能基)を導入するためのビニル系単量体とを重合又は共重合して得られる重合体を用いることができる。変性ビニル系重合体中におけるこれらの官能基を有する化合物の含有量は、変性ビニル系重合体100重量%当たり0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。
変性ビニル系重合体の製造で用いられる上記のビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレン、及びo,p−ジクロロスチレンなどの芳香族ビニル系単量体が挙げられる。また、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体を併用することも可能である。上記の他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミニプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、及び2−スチリル−オキサゾリンなどを用いることもできる。
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてカルボキシ基を導入するためのビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸、及びイタコン酸などの不飽和結合を有するカルボン酸又はカルボン酸無水物を用いることができる。
また、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸、及び過酸化サクシン酸などのカルボキシ基を有する重合発生剤及び/又はチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸、及び2,3又は4−メルカプト安息香酸などのカルボキシ基を有する重合度調節剤を用いて、これらに上記のビニル系単量体を(共)重合する方法も用いることができる。さらに、メタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量体の共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体の共重合体を、アルカリによってケン化する方法も用いることができる。
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてヒドロキシ基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、及び4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシ基を有するビニル系単量体を用いることができる。
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてエポキシ基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、及びp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を用いることができる。
変性ビニル系重合体に、上記官能基としてアミノ基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、及びp−アミノスチレンなどのアミノ基又はアミド基を有するビニル系単量体を用いることができる。
また、変性ビニル系重合体に、上記官能基としてオキサゾリン基を導入するためのビニル系単量体としては、例えば、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、及び2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を用いることができる。
変性ビニル系重合体としては、メチルエチルケトン溶媒中、30℃の温度で測定した極限粘度[η]が0.20〜0.65dl/gの範囲のものが好ましく、0.35〜0.60dl/gの範囲のものがより好ましい。また、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、30℃の温度で測定した場合には、極限粘度[η]が0.30〜0.90dl/gの範囲のものが好ましく、0.40〜0.75dl/gの範囲のものがより好ましい。これら範囲の極限粘度を有する変性ビニル系重合体を用いることにより、より優れた機械的特性及び成形加工性を有する本発明の熱可塑性樹脂組成物が得られる。
変性ビニル系重合体を配合する場合、その配合量は(A)非晶性熱可塑性樹脂と(B)熱可塑性エラストマーの合計量を100重量部とした場合、0.5〜30重量部の範囲であり、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。これらの範囲で配合することにより、より優れた機械的特性及び成形加工性を有する本発明の熱可塑性樹脂組成物が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、例えば、バンバリミキサー、ロール、エクストルーダー及びニーダー等で溶融混練することによって製造することができるが、配合成分の分散性の観点から単軸押出機や二軸押出機を用いることが好ましい。また、溶融混練時の温度は、配合成分にもよるが通常150〜260℃程度である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、各種結晶性熱可塑性樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン6,6等のポリアミド樹脂又は、ポリアセタール樹脂など)、ポリ乳酸等の植物性由来樹脂又は、これらの変性物を配合することにより、成形用樹脂組成物として性能をさらに改良することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系又は含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系又はサリシレート系などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類やリン酸エステル類などの可塑剤、各種難燃剤、難燃助剤、カーボンブラック、顔料、及び染料などを添加することができる。また、各種強化材、充填材、各成分が酸・塩基性であった場合の中和剤などを添加することができる。また、ガラス繊維、炭素繊維、極細炭素繊維(カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなど)、その他の繊維状無機フィラー(繊維状炭酸カルシウムなど)を機械的強度向上などの目的に併用することもできる。
上記によって得られた熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形及びガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法によって成形することができ、特に制限されるものではない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物をさらに具体的に説明するために、以下、実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。下記の実施例および比較例中、特にことわりのない限り「部」および「%」で表示したものは、それぞれ重量部および重量%を表す。まず、各種物性の評価方法を下記する。
(1)ロックウェル硬さ
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー設定温度230℃、金型温度60℃に設定した東芝機械(株)製IS−50A成形機で、射出成形により得た63.5×12.7×12.7mm厚みの成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、ASTM D785の規定(2003年)に準拠し、ロックウェル硬さ(Rスケール)を測定した。試験片数は3個とした。
(2)セルフタップ強度
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー設定温度230℃、金型温度60℃に設定した東芝機械(株)製IS−50A成形機で、射出成形により得た63.5×12.7×12.7mm厚みの成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、呼び径4mm、長さ10mmのタッピングねじを該成形品の中央部に直接トルクドライバーを使用してねじ込み、その際の最大締め付けトルクを測定した。試験数は3回とした。
(3)曲げ強度(MPa)
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー設定温度230℃、金型温度60℃に設定した東芝機械(株)製IS−50A成形機で、射出成形により得た127×12.7×6.4mm厚みの成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、ASTM D790の規定(2003年)に準拠し、曲げ強さを測定した。試験片数は3個とした。
(4)釘打ち性
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー設定温度230℃、金型温度60℃に設定した東芝機械(株)製IS−50A成形機で、射出成形により得た63.5×12.7×12.7mm厚みの成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した。次に真鍮製で直径1.8mm、長さ32mmの釘を内径2.3mm、長さ20mmの鉄製筒に通した後、その筒をペンチではさみ、該成形品の中央部に筒底があたるように置き、金槌にて真上から直接人力で打ち付けた。10mmの長さを釘が曲がることなく、かつ該成形品に亀裂が入ること無く打ち込めることを合格とした。
(5)比重
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー設定温度230℃、金型温度60℃に設定した東芝機械(株)製IS−50A成形機で、射出成形により得た63.5×12.7×6.4mm厚みの成形品について、温度23℃、湿度50%Rh環境下で24時間放置した後、ASTM D792の規定(2000年)に準拠し、比重を測定した。試験片数は3個とした。
[参考例1](A)非晶性熱可塑性樹脂の調製
(A−1)グラフト共重合体の調製
ポリブタジエンラテックス(重量平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)60部(固形分換算)に、スチレン70%とアクリロニトリル30%からなる単量体混合物40部を加えて乳化重合した。得られたグラフト共重合体を硫酸で凝固した後、水酸化ナトリウムで中和し、洗浄、濾過、乾燥することにより、パウダー状の(A−1)グラフト共重合体を得た。
得られた(A−1)グラフト共重合体のグラフト率は36%であった。この(A−1)グラフト共重合体は、スチレン構造単位70%およびアクリロニトリル構造単位30%からなる非グラフト性の共重合体を18.1%含有するものであった。また、N,N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘度は、0.48dl/gであった。
グラフト共重合体のグラフト率は、次の方法で求めた。グラフト共重合体の所定量(m)に、アセトンを加え4時間還流した。この溶液を8,000rpm(遠心力10,000G(約100×103m/s2))の回転で30分遠心分離した後、不溶分を濾過した。この不溶分を、70℃の温度で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、次式で求めた。
グラフト率(%)=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
(式中、Lはグラフト共重合体のゴム含有率である。)。
(A−2)ビニル系共重合体の調製
スチレン75%とアクリロニトリル25%からなる単量体混合物を懸濁重合して、(A−2)ビニル系共重合体を得た。得られた(A−2)ビニル系共重合体のN,N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘度は、0.73であった。
[参考例2](B)熱可塑性エラストマーの調製
(B−1)ポリアミド系エラストマーの調製
ε−カプロラクタム45部、数平均分子量1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800のポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、および“イルガノックス”(登録商標)1098(酸化防止剤)0.2部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状の(B−1)ポリアミド系エラストマーを得た。
(B−2)ポリエステル系エラストマー
東レ・デュポン(株)製熱可塑性エラストマー“ハイトレル”(登録商標)4047を使用した。
[参考例3](C)非繊維状フィラー
住友3M社製3MTMグラスバブルズS60HS(平均粒径27μm、真密度0.6g/cm3)を使用した。
[参考例4](D)変性ビニル系共重合体の調製
(D−1)カルボキシ基変性ビニル系共重合体の調製
スチレン70部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の(D−1)カルボキシ基変性ビニル系共重合体を得た。
(D−2)エポキシ基変性ビニル系共重合体の調製
スチレン71部、アクリロニトリル28部、グリシジルメタクリレート1部を懸濁重合して、ビーズ状の(D−2)エポキシ基変性ビニル系共重合体を得た。
[実施例1〜12、比較例1〜6]
上記の参考例1〜4に示した非晶性熱可塑性樹脂(A−1)〜(A−2)、熱可塑性エラストマー(B−1)〜(B−2)、非繊維状フィラー(C)、変性ビニル系共重合体(D−1)〜(D−2)を表1、2に示した配合比で配合し、ベント付40mmφ単軸押出機(田辺プラスチックス機械(株)製VS40、ダルメージスクリュー)を使用して溶融混練(バレル設定温度230℃)し、押出しを行うことによって、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を製造した。次いで、射出成形機を用い、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で射出成形し、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる試験片を成形した。試験片について、上記の条件で物性を測定し、結果を表1および2に併せて示した。
表1に示すように、本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜12)は、いずれも機械的特性、セルフタップ強度のバランスに優れ、かつ釘打ち性が良好であった。
一方、表2に示すように、非繊維状フィラーが5重量部未満(含まない)(比較例1と2)或いは熱可塑性エラストマーが10重量部未満、つまり非晶性熱可塑性樹脂が90重量部を越える(比較例2、3、5)熱可塑性樹脂組成物は、釘打ち性が劣った。また、非繊維状フィラーが60重量部を超える(比較例4)と、押出性に問題があり造粒することができなかった。熱可塑性エラストマーが60重量部を越える、つまり非晶性熱可塑性樹脂が40重量部未満(比較例6)の熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、セルフタップ強度のバランスが悪く、目的の用途には使いにくいものとなった。