JP5186036B2 - Ipmモータの回転子及びそれを用いたipmモータ - Google Patents
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Description
このように、IPMモータの小型化にあたり高速回転化してトルクを得ようとする場合、従来の電磁鋼板を素材とする回転子鉄心では、高速回転域では弱め界磁制御を行ってもトルクが減少してしまう問題と、永久磁石に作用する遠心力により回転子が破損する問題とがあり、高速回転化に限界があった。
また、本発明のIPMモータによれば、前述の回転子を用いているので、同様に、高回転域での出力トルクをより大きくでき、最大回転数をより高くできる。
さらに、本発明のIPMモータの回転子は、750N/mm2以上の降伏強度を有する素材鋼板が積層されることにより形成されているので、回転子を高速回転しても永久磁石に作用する遠心力により回転子が破損することがない。そのため、永久磁石挿入孔の周囲に設けられるブリッヂ部の幅を狭くすることができる。ブリッヂ幅を狭くできれば漏れ磁束を効果的に低減できるので、回転子の設計自由度が高まる。また、永久磁石を小型化してもよいので、モータのコストを大幅に低減できる。
図1は、本発明の実施の形態によるIPMモータの回転子を示す正面図である。図に示すように、IPMモータの回転子1には、後述の回転子用鋼板(素材鋼板)が積層されることにより形成された回転子鉄心10(回転子本体)と、回転子鉄心10の周方向に沿って互いに間隔を置いて回転子鉄心10に設けられた複数の永久磁石挿入孔11と、各永久磁石挿入孔11に埋め込まれた永久磁石12とが含まれている。なお、回転子1の外周に図示しない固定子が配置されることで、IPMモータが構成される。
図1の回転子1の各永久磁石挿入孔11に設けられたブリッヂ11cは、各永久磁石挿入孔11周辺の強度を確保するためのものである。素材鋼板自体に十分な強度を持たせることでブリッヂ11cの幅(第1及び第2挿入孔11a,11bの離間方向に沿うブリッヂ11cの幅)を小さくすることができ、それにより漏れ磁束を少なくできる。回転子鉄心の強度を高めることでブリッヂ11cの幅を小さくしても回転子が破損せず漏れ磁束も低減できるのであれば、回転子の設計自由度が高まる。また漏れ磁束の低減により永久磁石12を小型化してもよいので、モータのコストを大幅に低減できる。また永久磁石12を小さくせずに出力トルクの向上を図ることも可能となる。高速回転が可能になることによる高トルク化と永久磁石の小型化の両者を勘案してブリッヂ幅を設計してもよい。
なお、回転子鉄心10の素材鋼板の降伏強度の上限は、2000N/mm2である。これは、2000N/mm2を超える降伏強度を呈する材料では、磁界の強さが8000A/mである時の磁束密度B8000の値が1.65T以上得られないためである。
製造方法A
表1に示す成分組成を有する鋼を真空溶解し、これらの連鋳片を1250℃に加熱し、950℃で仕上げ圧延して560℃で巻取り、板厚1.8mmの熱間圧延鋼板を得た。これらの熱間圧延鋼板を酸洗した後、一回の冷間圧延にて板厚0.35mmの冷間圧延鋼帯を得た(最終圧延率:約81%)。得られた冷間圧延鋼帯を400℃に設定した連続炉に60秒通板してテンションアニーリング処理(引張張力100N/mm2)を施した。また、その後、Cr系酸化物及びMg系酸化物を含有する半有機組成の約1μmの厚さの絶縁皮膜を鋼板の両面に形成した。
得られた鋼帯からJIS5号試験片を切り出し、引張試験に供した。また、内径33mm及び外形45mmのリング状の試験片を打抜きにより作製し、磁化測定に供した。各サンプルの降伏強さ、引張強さ、降伏比(YR)、磁界の強さが8000A/mのときの磁束密度(B8000)と保磁力(Hc)を表2に示す。
製造方法B
表1に示す成分組成を有する鋼を溶解して、これらの連鋳片を1250℃に加熱し、850℃で仕上げ圧延して560℃で巻取り、板厚1.8mmの熱延鋼板を得た。この熱延鋼板を酸洗後、冷間圧延して板厚0.35mmの冷延鋼板を得た。得られた冷延鋼板を、900℃まで加熱し,250℃に設定したPb−Bi合金浴中へ通板して、100℃/sの平均冷却速度で250℃まで冷却し、引き続き400℃に設定した電気炉中に60s保持しつつ、プレステンパーを施した。その後、Cr系酸化物およびMg系酸化物を含有する半有機組成の約1μmの厚さの絶縁皮膜を鋼板の両面に塗布した。
製造方法Bで製造した素材鋼板に対して、上述の製造方法Aで製造した素材鋼板と同様の試験を行った。その結果を表3に示す。
製造方法C
表1に示す成分組成を有する鋼の内、No.1,2,3,4,5の連鋳片を製造方法Aと同様にして1250℃に加熱し、950℃で仕上げ圧延して560℃で巻取り、板厚1.8mmの熱間圧延鋼板を得た。これらの熱間圧延鋼板を酸洗した後、一回の冷間圧延にて板厚0.35mmの冷間圧延鋼帯を得た(最終圧延率:約81%)。得られた冷間圧延鋼帯を800℃に設定した連続炉に60秒通板する再結晶焼鈍を施した。なお、冷却は8℃/sで550℃まで冷却後、450℃に設定した連続炉中に120s以上保持する過時効処理を施した。その後、0.3%の伸び率の軽冷延を行い、更にCr系酸化物及びMg系酸化物を含有する半有機組成の約1μmの厚さの絶縁皮膜を鋼板の両面に形成した。
製造方法Cで製造した素材鋼板に対して、上述の製造方法A,Bで製造した素材鋼板と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
表5に示すように、製造方法Aで製造したNo.1鋼、No.3鋼、No.5鋼およびNo.9鋼、製造方法Bで製造したNo.1鋼、No.2鋼、No.4鋼、No.6鋼およびNo.7鋼、更には製造方法Cで製造したNo.1鋼、No.2鋼、No.4鋼およびNo.5鋼について、図3に示す8極(4極対)構造の第1回転子を打抜き加工により作製し、負荷トルクを付与したモータ性能評価試験に供した。なお、比較のため市販の電磁鋼板(35A300)を素材とした回転子も同時に作製し、同様の評価に供した。また、固定子は1ヶのみ製造し、製造した回転子を組替えてモータとしての性能評価に供した。モータの最大出力はいずれも4.5kwである。また、この性能評価では、10000rpm以上で弱め界磁制御を行った。
なお、市販の電磁鋼板(35A300)について、本発明の素材鋼板と同様の方法による機械的特性と磁気的特性を評価したところ、次のとおりであった。
板厚 0.35mm
降伏強さ 381N/mm2
引張強さ 511N/mm2
飽和磁束密度B8000 1.76T
保磁力 75A/m
◎第1回転子の仕様
外径:80.1mm、軸長50mm
・積層枚数:0.35mm/140枚
・センターブリッヂ、アウターブリッヂの幅:1.00mm
・永久磁石:ネオジム磁石(NEOMAX-38VH)、9.0mm幅×3.0mm厚×50mm長さ、合計16ヶ埋め込み
◎固定子の仕様
・ギャップ長:0.5mm
・外径:138.0mm、ヨーク厚:10mm、長さ:50mm
・鉄心素材:電磁鋼板(35A300)、板厚0.35mm
・積層枚数:140枚
・巻線方式:分布巻き
一方、高保磁力を有するものの磁束密度B8000が1.61Tと低い製造方法BによるNo.7鋼では、磁束密度が低いことに起因してトルク及び効率が低くなる。
本発明者らは、製造方法Bで製造したNo.4鋼(降伏強度が750N/mm2を超えるもの)及びNo.6鋼(最も降伏強度が高かったもの)(以下、これらを超高強度鋼板と呼ぶ)を用いて、図6に示す第2回転子をさらに作製した。図6の第2回転子は、図3の第1回転子と比べてブリッジ幅を1/2に狭くして漏れ磁束を低減させ、永久磁石の大きさを幅9.0mmから幅8.0mmとした(約11%小型化)したものである。また、10000rpm以上で弱め界磁制御を行った。
◎第2回転子の仕様
外径:80.1mm、軸長50mm
・積層枚数:0.35mm/140枚
・センターブリッヂ、アウターブリッヂの幅:0.5mm
・永久磁石:ネオジム磁石(NEOMAX-38VH)、8.0mm幅×3.0mm厚×50mm長さ、合計16ヶ埋め込み
なお、破壊した回転子を調べたところ、どの回転子もインナーブリッヂ部とアウターブリッヂ部がともに塑性変形しているか破断しており、永久磁石が脱落していた。アウターブリッヂ部とは、永久磁石挿入孔が回転子外周部と接近している梁部である。
本発明者らは、超高強度鋼板を用いて図2に示す回転子2(第3回転子)を作製し、モータ性能評価試験に供した。また、電磁鋼板を素材とした回転子も同時に作製し、同様の評価に供した。なお、IPMモータ2の最大出力は3.7kwである。
◎第3回転子の仕様
外径:80.0mm、軸長75mm
・積層枚数:0.35mm/210枚
・ブリッジの幅:3.0mm
・永久磁石:ネオジム磁石(NEOMAX-38VH)、40.0mm幅×2.0mm厚×75mm長さ、合計4ヶ埋め込み
◎固定子の仕様
・ギャップ長:0.5mm
・外径:160.0mm、ヨーク厚:17mm、長さ:75mm
・鉄心素材:電磁鋼板(35A300)、板厚0.35mm
・積層枚数:210枚
・巻線方式:分布巻き
10 回転子鉄心
10a 回転中心
11 永久磁石挿入孔
11a,11b 第1及び第2挿入孔
11c ブリッヂ
12 永久磁石
Claims (6)
- 回転速度が所定値を超えた際に弱め界磁制御が行われるIPMモータに組み込まれるIPMモータの回転子であって、
磁界の強さが8000A/mである時の磁束密度B8000の値が1.65T以上であるとともに、保磁力が100A/m以上の素材鋼板が積層されることにより形成された回転子鉄心と、
前記回転子鉄心の周方向に互いに間隔をおいて前記回転子鉄心に設けられた複数の永久磁石挿入孔と、
各永久磁石挿入孔に埋め込まれた永久磁石と
を備えていることを特徴とするIPMモータの回転子。 - 前記素材鋼板の保磁力は300A/m以上であることを特徴とする請求項1記載のIPMモータの回転子。
- 前記素材鋼板の降伏強度は750N/mm2以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のIPMモータの回転子。
- 前記素材鋼板の降伏強度は950N/mm2以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のIPMモータの回転子。
- 前記素材鋼板の降伏強度は1300N/mm2以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のIPMモータの回転子。
- 回転速度が所定値を超えた際に弱め界磁制御が行われるIPMモータであって、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の回転子が組み込まれていることを特徴とするIPMモータ。
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