JP4311127B2 - 高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば電気自動車、ハイブリッド自動車の駆動モータやロボット、工作機械等のサーボモータといった高効率モータに用いられる無方向性電磁鋼板であって、特に、高速回転する永久磁石埋め込み式モータの回転子として好適な優れた機械特性と磁気特性とを兼ね備えた高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年の地球環境問題の高まりから、多くの分野において省エネルギー、環境対策技術が進展している。自動車分野も例外ではなく、排ガス低減、燃費向上技術が急速に進歩している。電気自動車およびハイブリッド自動車はこれらの技術の集大成といっても過言ではなく、自動車駆動モータ(以下、駆動モータと称する)の性能が自動車性能を大きく左右する。
駆動モータの多くは永久磁石を用いており、巻き線を施した固定子(ステータ)部分および永久磁石を配置した回転子(ロータ)部分から構成される。最近では、駆動モータとして、永久磁石をロータ内部に埋め込んだ形状(永久磁石埋め込み型モータ;IPMモータ)が主流となっている。また、パワーエレクトロニクス技術の進展により、回転数は任意に制御可能であり、高速化傾向にある。したがって、鉄心素材は商用周波数(50〜60Hz)以上の高周波域で励磁される割合が高まっており、商用周波数での磁気特性のみではなく、400Hz〜数kHzでの磁気特性改善が要求されるようになっている。また、高速回転時の遠心力のみならず、回転数変動に伴う応力変動を常時うけており、鉄心素材には機械特性も要求されている。特に、IPMモータの場合には複雑なロータ形状を有することから、ロータ用の鉄心素材には応力集中を考慮しても遠心力ならびに応力変動に耐えうるだけの機械特性が必要となる。また、ロボット、工作機械用のサーボモータ分野でも、回転数変動に伴う応力変動を常時うけており、駆動モータと同様に回転数の高速化が今後進行していくと予測される。
従来、駆動モータのステータは、主に打ち抜き加工した無方向性電磁鋼板の積層により製造されていたが、ロータはロストワックス鋳造法あるいは焼結法などにより製造されることもあった。これは、ステータには優れた磁気特性が、ロータには堅牢な機械特性が要求されることによる。しかしながら、上記のロータでは渦電流損失が増大するため、モータ効率が大幅に低下するという本質的な問題がある。さらに、モータ性能はロータ−ステータ間のエアギャップに大きく影響されるため、上記のロータでは精密加工の必要性が生じ、鉄心製造コストが大幅に増加するという問題があった。コスト削減の観点からは、打ち抜き加工した電磁鋼板を使用すればよいが、ロータに必要な低渦電流損失と優れた機械特性とを兼備した電磁鋼板は見出されていないのが現状であった。
優れた機械特性を有する電磁鋼板としては、例えば特許文献1には、質量%で(以下、特に示さない限り「%」は「質量%」を示す。)3.5〜7%のSiに加えて、Ti、W、Mo、Mn、Ni、Co、Alのうち1種または2種以上を20%を超えない範囲で含有させる電磁鋼板の製造方法が提案されている。また、特許文献2には、2.0〜3.5%のSi、0.1〜6.0%のMnに加えて、Bおよび多量のNiを含有し、結晶粒径が30μm以下である電磁鋼板が提案されている。これらの技術は、鋼の強化機構として主に固溶強化を利用している。しかしながら、固溶強化の場合には冷間圧延母材も同時に高強度化されるため、冷間圧延時に割れが多発するという欠点がある。そのため、鋼板の歩留まりが極めて悪くなり、鉄心製造コスト削減という上述の課題を克服することはできない。
特許文献3および特許文献4には、2.0〜4.0%のSiに加えてNb、Zr、B、Ti、Vなどを含有する電磁鋼板が提案されている。これらの技術は、鋼の強化機構としてSiによる固溶強化に加えて析出硬化を利用している。しかしながら、本質的にSi含有量が高いために冷間圧延時の割れ発生を完全に回避するに至っておらず、板厚の薄肉化も困難である。
特許文献5および特許文献6には、Si、Alを0.03〜0.5%と制限した上でTi、Nb、VあるいはP、Niを含有する電磁鋼板がそれぞれ提案されている。これらの技術は、Siによる固溶強化よりも炭化物の析出硬化およびPの固溶強化を利用している。しかしながら、これらの技術では、後述する駆動モータのロータとして必要な強度レベルを必ずしも確保できず、実施例に示されているように2.0%以上のNi含有が必須であることから合金コストが高いという欠点がある。
特許文献7には、Si:1.6〜2.8%であって、結晶粒径、内部酸化層厚み、降伏点を限定した永久磁石埋め込み型モータ用無方向性電磁鋼板が提案されている。しかしながら、この技術による鋼板の降伏点では、高速回転する駆動モータのロータとしては強度不足である。
JIS C 2552に規定の無方向性電磁鋼板としては、いわゆる高グレード無方向性電磁鋼板(35A210、35A230など)が最も合金含有量が高く高強度である。しかしながら、機械特性レベルは高張力無方向性電磁鋼板を下回っており、高速回転する駆動モータのロータとしては強度不足である。
さらに、これら従来技術による無方向性電磁鋼板は、ステータへの使用も念頭においた材質設計となっているため、フェライト単相組織となっている。そのため、磁区幅は数μmから数十μm程度であり、渦電流損失低減を目的に高電気抵抗化および板厚薄肉化しても、異常渦電流損失により本質的に渦電流損失が大きいという欠点がある。
特開昭60-238421号公報 特開平1−162748号公報 特開平2−8346号公報 特開平6−330255号公報 特開2001−234302号公報 特開2002−146493号公報 特開2001−172752号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高速回転するモータのロータとして必要な、優れた機械特性と磁気特性とを兼備する高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することを主目的とするものである。
本発明で言及するロータとして必要な特性とは、第一に電磁鋼板の機械特性であり、降伏点および引張強度を意味するものである。これは、高速回転時のロータ変形抑制のみならず、応力変動に起因する疲労破壊抑制を目的としている。近年の電気自動車およびハイブリッド自動車の駆動モータでは、ロータは250MPa程度の平均応力下で150MPa程度の応力振幅を受ける。したがって、ロータ変形抑制の観点から、電磁鋼板の降伏点は400MPa以上、安全率を考慮すると500MPa以上を満たす必要があり、より好ましくは550MPa以上である。上述の応力状態での疲労破壊を抑制する観点から、電磁鋼板の引張強度は550MPa以上、好ましくは600MPa、さらに安全率を考慮すると700MPa以上必要である。
第二は電磁鋼板の打ち抜き端面の性状である。複雑なロータ形状への連続打ち抜き加工を前提としているため、端面性状が劣る場合には応力集中による破壊の起点となり得る。打ち抜き積層後に切削加工を施せば端面性状は改善されるが、コスト増大に繋がるのは言うまでもない。外周部に切削加工を施したとしても、ロータ内部の打ち抜き端面、例えば永久磁石埋め込み部分は打ち抜きままの使用となることが多く、応力集中などにより特に破壊の起点となりやすい。これらの理由により、端面性状は鋼板の機械特性とならんで極めて重要な特性である。
第三は電磁鋼板の渦電流損失である。鉄損は、不可逆な磁壁移動に起因するヒステリシス損失、および磁化変化に起因して発生する渦電流によるジュール熱(渦電流損失)から構成され、電磁鋼板の鉄損はこれらの総和であるトータルの鉄損で評価される。磁化変化の大きいステータでは、鉄心材料の鉄損としては、例えば+1.0Tから−1.0Tまで強制的に磁化変化させた場合のトータルの鉄損W10/400などで評価するのが妥当である。ところが、ロータにおいては、永久磁石により強制的に磁化された状態に外部からの磁束が出入りするのみであるため、磁化変化量はステータよりも小さい。さらに、永久磁石によって強制的に磁壁が移動した状態からの磁化変化であるため、ロータに使用中の磁化変化は各磁区内で磁化が回転(回転磁化)することにより達成される。回転磁化によるヒステリシス損失は小さく、発生する損失は渦電流損失のみといってよい。したがって、ヒステリシス損失の増大を許容しても、渦電流損失の低減を達成すればモータ効率改善に繋がると想起される。
本発明者らは、これらの着想をもとに無方向性電磁鋼板の諸特性に及ぼす合金元素の影響について種々検討を行った結果、従来の無方向性電磁鋼板の技術認識とは全く逆に、適量のCを含有させることにより、高速回転するモータのロータとして好適な機械特性を有する無方向性電磁鋼板を、冷間圧延時に破断を伴うことなく安定的に製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、質量%で、C:0.02%〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下、P:0.2%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなり、板厚が0.15mm〜1.0mmの範囲内であることを特徴とする高張力無方向性電磁鋼板を提供する。
本発明によれば、鋼成分としてCを所定量含有させることにより、従来技術のフェライト単相組織からフェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織へと鋼組織が制御されるため、鋼板が高強度化されるのである。また、上記の鋼組織は、最終の仕上げ連続焼鈍およびその冷却過程にて形成される。したがって、従来の固溶強化主体の電磁鋼板とは異なり、冷間圧延母材の高強度化(すなわち、冷間圧延時の鋼板の破断)を伴うことなく、電磁鋼板を高強度化することが可能となる。さらに、鋼成分としてCを所定量含有させることにより組織制御した電磁鋼板は、疲労破壊抑制の観点から好ましい端面性状を有しており、かつ渦電流損失を効果的に低減できる。
なお、本発明において、フェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織とは、(1)フェライトおよびマルテンサイトの複相組織、(2)フェライトおよびベイナイトの複相組織、(3)フェライト、マルテンサイトおよびベイナイトの複相組織、(4)マルテンサイト単相組織、および(5)ベイナイト単相組織の5つの組織を示すものである。
上記発明においては、Nb、Zr、Ti、Cr、MoおよびBからなる元素群から選択される少なくとも一種の元素を下記の質量%で含有することが好ましい。
Nb:0.001%以上0.2%未満、Zr:0.002以上0.2%未満、
Ti:0.001%以上0.2%未満、Cr:0.01%以上1.0%未満、
Mo:0.005%以上1.0%未満、B:0.0001%以上0.01%未満。
Nb、Zrおよびiを上記範囲で含有させることにより、微細な炭窒化物を形成して、鋼板の強度を高めることができるからである。また、Cr、MoおよびBを上記範囲で含有させることにより、パーライトの生成を抑制し、マルテンサイトの生成を促進するため、鋼板の強度を高め、渦電流損失を低減させることができるからである。
また、上記発明においては、質量%で、CuおよびNiの少なくともいずれか一方を0.01%〜0.5%の範囲内で含有することが好ましい。CuおよびNiを上記範囲で含有させることにより、降伏点および引張強度を高め、機械特性を向上させることができるからである。
さらに、上記発明においては、上記高張力無方向性電磁鋼板の少なくとも片方の表面に、有機成分の絶縁被膜、無機成分の絶縁被膜、および有機無機複合の絶縁被膜のいずれかを有することが好ましい。無機成分の絶縁被膜を有する場合は積層鋼板間の絶縁性が向上し、有機無機複合の絶縁被膜を有する場合は打抜性および積層鋼板間の絶縁性がともに向上し、また有機成分の絶縁被膜を有する場合は打抜性が向上するからである。
また、上記発明においては、上記高張力無方向性電磁鋼板の少なくとも片方の表面に、接着性絶縁被膜を有することが好ましい。接着性絶縁被膜は、打ち抜き等の加工後に加熱・加圧することにより接着性が発揮されるものであり、低振動、低騒音化に有効であるからである。また、カシメや溶接による磁気特性の劣化を伴わずに鋼板同士の固着力を高めることができるからである。
本発明はまた、質量%で、C:0.02%〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下、P:0.2%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなる鋼塊または鋼片に、熱間圧延を施し、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施すことにより、板厚を0.15mm〜1.0mmの範囲内とし、次いで均熱時の材料温度を700℃〜1100℃の範囲内で連続焼鈍することを特徴とする高張力無方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
本発明においては、鋼成分としてCを所定量含有させることにより、従来技術のフェライト単相組織から、フェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織へと鋼組織が制御される。従来の固溶強化主体の電磁鋼板とは異なり、本発明においては、上記の鋼組織が最終の仕上げ連続焼鈍およびその冷却過程にて形成されるものであるため、冷間圧延母材の高強度化に伴い冷間圧延時に鋼板が破断するという不具合が生じることなく、高強度化された高張力無方向性電磁鋼板を製造することが可能となる。さらに、上述したように組織制御された高張力無方向性電磁鋼板は、疲労破壊抑制の観点から良好な端面性状を有しており、かつ渦電流損失を効果的に低減できる。さらに、連続焼鈍の均熱時の材料温度を上記範囲とすることにより、十分な強度を有する高張力無方向性電磁鋼板を製造することができる。
上記発明においては、上記鋼塊または鋼片が、Nb、Zr、Ti、Cr、MoおよびBからなる元素群から選択される少なくとも一種の元素を下記の質量%で含有することが好ましい。
Nb:0.001%以上0.2%未満、Zr:0.002以上0.2%未満、
Ti:0.001%以上0.2%未満、Cr:0.01%以上1.0%未満、
Mo:0.005%以上1.0%未満、B:0.0001%以上0.01%未満。
上述したように、Nb、Zrおよびiを上記範囲で含有させることにより、微細な炭窒化物を形成して、鋼板の強度を高めることができるからである。また、Cr、MoおよびBを上記範囲で含有させることにより、パーライトの生成を抑制し、マルテンサイトの生成を促進するため、鋼板の強度を高め、渦電流損失を低減させることができるから
である。
また、上記発明においては、上記鋼塊または鋼片が、質量%で、CuおよびNiの少なくともいずれか一方を0.01%〜0.5%の範囲内で含有することが好ましい。CuおよびNiを上記範囲で含有させることにより、降伏点および引張強度を高め、機械特性を向上させることができるからである。
本発明によれば、高速回転するモータのロータとして必要な、優れた機械特性と磁気特性とを兼備した高張力無方向性電磁鋼板を、多大なコスト増加を招くことなく安定的に製造できる。したがって、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動モータ分野における回転数の高速化に十分対応でき、その工業的価値は極めて高いものである。
本発明は、高張力無方向性電磁鋼板およびその製造方法を含むものである。以下、それぞれについて詳細に説明する。なお、鋼中の各元素の含有量を示す「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味するものである。
A.高張力無方向性電磁鋼板
まず、本発明の高張力無方向性電磁鋼板について説明する。
本発明の高張力無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.02%〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下、P:0.2%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなり、板厚が0.15mm〜1.0mmの範囲内であることを特徴とするものである。
従来の電気自動車やハイブリッド自動車の駆動モータ等のロータに用いられている無方向性電磁鋼板はフェライト単相組織であるが、本発明においては、鋼成分としてCを所定量含有させることにより、フェライト単相組織ではなく、フェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織に鋼組織が制御される。この鋼組織は、最終の仕上げ連続焼鈍およびその冷却過程にて形成されるものである。よって、従来では固溶強化を用いて電磁鋼板を高強度化していたため、冷間圧延母材も同時に高強度化され、冷間圧延時に鋼板が割れてしまうという不具合が生じていたが、本発明においては、上述したように、鋼組織が最終の仕上げ連続焼鈍およびその冷却過程にて形成されるものであるため、冷間圧延母材の高強度化、すなわち冷間圧延時の鋼板の破断を伴うことなく、高張力無方向性電磁鋼板を高強度化することが可能となる。
また、ロータとして用いるために必要な特性として、電磁鋼板の打ち抜き端面の性状がある。通常、電磁鋼板は複雑なロータ形状への連続打ち抜き加工を前提としているため、端面性状が劣る場合には応力集中による破壊の起点となり得る。また、打ち抜き加工後に切削加工を施せば端面性状は改善されるが、コストが増大してしまう。さらに、打ち抜き加工後に電磁鋼板の外周部に切削加工を施したとしても、ロータ内部の打ち抜き端面、例えば永久磁石埋め込み部分は打ち抜きままの使用となることが多く、応力集中などにより特に破壊の起点となりやすい。
そこで、発明者らは、打ち抜き端面性状に及ぼす鋼組成の影響について調査した。図1は、本発明のC:0.09%、Si:0.9%、Mn:2.5%、Al:0.05%を含有するフェライト、マルテンサイトおよびベイナイト複相組織の高張力無方向性電磁鋼板(鋼板A)、および、JIS C 2552に規定された従来技術による35A230(鋼板B)の打ち抜き端面性状である。図1に示す剪断面と破断面との境界の形状などから明らかなように、本発明の鋼板Aの方が端面性状は良好である。
さらに、ロータとして用いるために必要な特性として、電磁鋼板の渦電流損失がある。鉄損は、不可逆な磁壁移動に起因するヒステリシス損失、および磁化変化に起因して発生する渦電流によるジュール熱(渦電流損失)から構成され、電磁鋼板の鉄損はこれらの総和であるトータルの鉄損で評価される。ロータは、永久磁石により強制的に磁化された状態に外部からの磁束が出入りするのみであるため、磁化変化量はステータよりも小さい。さらに、永久磁石によって強制的に磁壁が移動した状態からの磁化変化であるため、ロータに使用中の磁化変化は各磁区内で磁化が回転(回転磁化)することにより達成される。回転磁化によるヒステリシス損失は小さく、発生する損失は渦電流損失のみといってよい。したがって、ヒステリシス損失の増大を許容しても、渦電流損失の低減を達成すればモータ効率改善に繋がると想起される。
そこで、次に、本発明者らは渦電流損失に及ぼす鋼組成の影響について調査した。図2は、本発明のC:0.02〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下を含有するフェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織を有する板厚0.35mmの高張力無方向性電磁鋼板、および、C:0.002〜0.003%、Si:0.3〜3.2%、Mn:0.15〜0.9%、Al:0.2〜2.0%を含有するフェライト単相組織である板厚0.35mmの従来技術による無方向性電磁鋼板について、渦電流損失と電気抵抗の関係を示すグラフである。ここで、渦電流損失は、最大磁束密度:0.5T、励磁周波数:1500Hzでの値を用いている。図2より明らかなように、渦電流損失は、高電気抵抗化により低減されるが、同一の電気抵抗であっても、本発明の高張力無方向性電磁鋼板の方が、従来技術の無方向性電磁鋼板より低いものとなった。
また、図3は、本発明のC:0.09%、Si:0.9%、Mn:2.5%、Al:0.05%を含有するフェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織の高張力無方向性電磁鋼板、および、C:0.002%、Si:2.0%、Mn:0.2%、Al:0.3%を含有するフェライト単相組織である従来技術の無方向性電磁鋼板について、渦電流損失と板厚の関係を示すグラフである。なお、電気抵抗はいずれの鋼種とも約40Ωm×10−8でほぼ同一である。図3に示すように、同一の板厚であっても、本発明の高張力無方向性電磁鋼板の方が、従来技術の無方向性電磁鋼板より渦電流損失が低くなった。なお、図3(B)は板厚の薄い範囲を拡大して示している。
以上のことから、本発明においては、鋼成分としてCを所定量含有させることにより、上述したように組織制御された高張力無方向性電磁鋼板は、疲労破壊抑制の観点から良好な端面性状を有しており、かつ渦電流損失を効果的に低減できることがわかった。
このように、本発明においては、鋼成分としてCを所定量含有させることが特徴であるが、その効果を有効に引き出し、また電磁鋼板として必要な他の特性を満足させるためには、後述するように鋼成分、板厚等を限定する必要がある。以下、本発明の高張力無方向性電磁鋼板における鋼成分、板厚および絶縁被膜について説明する。
1.鋼成分
・C
Cは、組織制御により所望の強度、渦電流損失および打ち抜き端面性状を得るために必須の元素である。また、微細な炭化物を形成することにより、鋼板を高強度化する効果もある。Cの含有量は、目的とする強度レベルに応じて決定すればよいが、本発明の目的である高速回転するモータのロータとして必要な強度を達成するには、0.02%以上含有させる必要があり、好ましくは0.04%以上である。また、C含有量の上限値は、電磁鋼板製造時の連続焼鈍ラインでの溶接性劣化の観点から、0.3%とする。
・Si
Siは、電気抵抗を高め、渦電流損失を低減する効果を有する元素である。しかしながら、Siを多量に含有させた場合には冷間圧延時に鋼板の割れを誘発し、歩留まり低下により製造コストが増大する。したがって、Si含有量は2.0%以下とする。また、Siが脱酸剤として使用される場合は、0.01%以上含有させる必要があるが、Alを脱酸剤として使用する場合もあるため、Si含有量の下限値は特に定めないものとする。
・Mn
Mnは、Siと同様に電気抵抗を高め、渦電流損失を低減する効果を有する。Mnは、Siよりもその効果が小さいため、この効果を得るには1.0%以上含有させる必要がある。一方、Mnを多量に含有させると合金コストが増加するため、Mn含有量の上限値は3.0%とする。
・Al
Alは、Siと同様に電気抵抗を高め、渦電流損失を低減する効果を有する。しかしながら、Alを多量に含有させると合金コストが増加するため、Al含有量は1.5%以下とする。また、Alが脱酸剤として使用される場合は、0.01%以上含有させる必要があるが、Siを脱酸剤として使用する場合があるため、Al含有量の下限値は特に定めないものとする。
・P
Pは、固溶強化により鋼板の強度を高める効果を有する。しかしながら、Pを多量に含有する場合には、冷間圧延時に鋼板の割れを誘発する。したがって、P含有量は0.2%以下とする。
・S
Sは、鋼中に不可避的に混入する不純物であるが、製鋼段階でS含有量を低減するにはコストが増加するため、S含有量としては0.02%を上限値とする。
・N
Nは、微細な析出物を形成し、鋼板の硬度を高める効果を有する。しかしながら、Nを多量に含有する場合には冷間圧延時に鋼板の割れを誘発する。したがって、N含有量は0.02%以下とする。
・その他の成分
本発明においては、上記の鋼成分に加えて、Nb、Zr、Ti、Cr、MoおよびBからなる元素群から選択される少なくとも一種の元素を適宜含有させることができる。
Nb、ZrおよびTi:
Nb、Zrおよびiは、微細な炭窒化物を形成して鋼板の強度を増加させる元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。これらの元素を含有させる場合には、Nbおよびiの含有量は0.001%以上とすることが好ましく、またZr含有量は0.002%以上とすることが好ましい。一方、これらの元素を多量に含有する場合は、鋼板の強度を高める効果が飽和するばかりでなく、冷間圧延時に鋼板の割れを誘発することがあるため、Nb、ZrおよびTiの含有量は0.2%未満とすることが好ましい
Cr、MoおよびB:
Cr、MoおよびBは、パーライトの生成を抑制し、マルテンサイトの生成を促進することにより、鋼板の高強度化および渦電流損失低減に有効な元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。これらの元素を含有させる場合には、Cr含有量は0.01%以上、Mo含有量は0.005%以上、B含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。一方、これらの元素を多量に含有させても、鋼板の強度を高める効果が飽和し、コストが高くなる。したがって、Cr含有量は1.0%未満、Mo含有量は1.0%未満、B含有量は0.01%未満とすることが好ましい。
CuおよびNi:
CuおよびNiは、鋼板の降伏点および引張強度を上昇させる効果を有する元素であり、0.01%〜0.5%の範囲で含有させてもよい。
2.板厚
本発明においては、電磁鋼板をロータとして用いるために、渦電流損失を低減することが好ましい。渦電流損失を低減させるには、電磁鋼板の板厚薄肉化が極めて有効であることから、本発明においては、高張力無方向性電磁鋼板の板厚は1.0mm以下、好ましくは0.8mm以下とする。このように渦電流損失低減の観点からは板厚が薄い方が好ましいが、自動カシメが困難となるため、板厚の下限値は0.15mmとする。本発明では、フェライト単相組織ではなく、フェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織に鋼組織を制御することにより、渦電流損失を低減している。このような組織制御および上述した板厚の薄肉化により、効果的に渦電流損失が低減されるのである。この理由の詳細は明らかでないが、本発明による組織制御によって、従来技術による無方向性電磁鋼板と比較して磁区構造が微細化したことが要因であると推察される。
3.絶縁被膜
本発明においては、高張力無方向性電磁鋼板の少なくとも片方の表面に、有機成分の絶縁被膜、無機成分の絶縁被膜、および有機無機複合の絶縁被膜のいずれかを有することが好ましい。無機成分の絶縁被膜を有する場合は積層鋼板間の絶縁性が向上し、有機無機複合の絶縁被膜を有する場合は打抜性および積層鋼板間の絶縁性がともに向上し、また有機成分の絶縁被膜を有する場合は打抜性が向上するからである。
このような絶縁被膜に用いられる無機成分としては、例えば、通常用いられる重クロム酸塩とホウ酸の複合物、またはリン酸塩とシリカの複合物等を挙げることができる。
また、絶縁被膜に用いられる有機成分としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機無機複合の絶縁被膜としては、上記の無機成分と有機成分との混合物等を使用することができる。
また、本発明においては、高張力無方向性電磁鋼板の少なくとも片方の表面に、接着性絶縁被膜を有することが好ましい。接着性絶縁被膜は、打ち抜き等の加工後に加熱・加圧することにより接着性が発揮されるものであり、低振動、低騒音化に有効であるからである。また、カシメや溶接による磁気特性の劣化を伴わずに鋼板同士の固着力を高めることができるからである。
このような接着性絶縁被膜に用いられる材料としては、常温乾燥型または加熱硬化型の有機樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が好適である。これらの樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
B.高張力無方向性電磁鋼板の製造方法
次に、本発明の高張力無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高張力無方向性電磁鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.02%〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下、P:0.2%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなる鋼塊または鋼片に、熱間圧延を施し、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施すことにより、板厚を0.15mm〜1.0mmの範囲内とし、次いで均熱時の材料温度を700℃〜1100℃の範囲内で連続焼鈍することを特徴とするものである。
従来の電気自動車やハイブリッド自動車の駆動モータ等のロータに用いられている無方向性電磁鋼板はフェライト単相組織であるが、本発明においては、鋼成分としてCを所定量含有させることにより、フェライト単相組織ではなく、フェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織に鋼組織が制御される。この鋼組織は、最終の仕上げ連続焼鈍およびその冷却過程にて形成されるものである。したがって、従来では固溶強化を用いて電磁鋼板を高強度化していたため、冷間圧延母材も同時に高強度化され、冷間圧延時に鋼板が割れてしまうという不具合が生じていたが、本発明においては、上述したように、鋼組織が最終の仕上げ連続焼鈍およびその冷却過程にて形成されるものであるため、冷間圧延母材の高強度化、すなわち冷間圧延時の鋼板の破断を伴うことなく、高強度化された高張力無方向性電磁鋼板を製造することが可能となる。さらに、上述したように組織制御された高張力無方向性電磁鋼板は、疲労破壊抑制の観点から良好な端面性状を有しており、かつ渦電流損失を効果的に低減できる。
上記化学組成を有する鋼は、連続鋳造法、鋼塊を分塊圧延する方法など、公知の方法によりスラブとすることができる。このスラブは加熱炉に装入して熱間圧延してもよく、スラブ温度が高い場合には加熱炉に装入しないで熱間圧延してもよい。スラブ加熱温度としては、特に限定されるものではないが、コストおよび熱間圧延性の観点から、1000〜1300℃とすることが好ましく、より好ましくは1050〜1250℃である。
熱間圧延としては、特に限定はされなく、例えば仕上げ温度は700〜950℃、巻き取り温度は750℃以下など、公知の条件にしたがって行えばよい。
本発明においては、上記熱間圧延後、冷間圧延により鋼板を所定の板厚に仕上げる。所定の板厚に仕上げる際には、一回の冷間圧延により所定の板厚に仕上げてもよく、中間焼鈍を含む二回以上の冷間圧延により所定の板厚に仕上げてもよい。また、必要に応じて冷間圧延前に熱延板焼鈍を施してもよい。熱延板焼鈍温度および中間焼鈍温度は、連続焼鈍、箱焼鈍に関わらず、600℃以上が好ましい。本発明においては、Cを0.02%以上、好ましくは0.04%以上を鋼板に含有させることが重要であるため、脱炭焼鈍等の特殊な工程は必要としない。
上記冷間圧延後は、仕上げの連続焼鈍を施す。本発明においては、均熱時の材料温度としては、700℃〜1100℃の範囲内とする。上記材料温度が700℃に満たない場合には、十分な強度が得られない可能性があるからである。一方、上記材料温度が1100℃を超える条件での操業は、設備上現実的ではないからである。上記以外の連続焼鈍条件は公知の条件にしたがえばよいが、750℃以下での冷却速度を15℃/秒以上に制御することが必要である。
さらに、本発明においては、上記連続焼鈍後、常法にしたがって、有機成分の絶縁被膜、無機成分の絶縁被膜および有機無機複合物からなる絶縁被膜のいずれかを、鋼板の少なくとも片方の表面にコーティングすることが望ましい。無機成分の絶縁被膜を有する場合は積層鋼板間の絶縁性が向上し、有機無機複合の絶縁被膜を有する場合は打抜性および積層鋼板間の絶縁性がともに向上し、また有機成分の絶縁被膜を有する場合は打抜性が向上するからである。
また、鋼板の少なくとも片方の表面に接着性絶縁被膜をコーティングしてもよい。接着性絶縁被膜は、打ち抜き等の加工後に加熱・加圧することにより接着性が発揮されるものであり、低振動、低騒音化に有効であるからである。また、カシメや溶接による磁気特性の劣化を伴わずに鋼板同士の固着力を高めることができるからである。
なお、高張力無方向性電磁鋼板の鋼成分等に関しては、上述した「A.高張力無方向性電磁鋼板」に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示すような種々の化学組成を有する鋼を真空溶製し、これらを1150℃に加熱し、820℃で仕上げ圧延を行い、580℃で巻き取り、厚さが2.0mmの熱延鋼板を得た。この熱延鋼板を中間板厚まで冷間圧延した後、水素雰囲気中にて10時間均熱する箱焼鈍による中間焼鈍、あるいは1000℃で60秒間均熱する連続焼鈍による中間焼鈍を施し、二回目の冷間圧延により製品板厚に仕上げた。また、一部の熱延鋼板は、水素雰囲気中にて10時間均熱する箱焼鈍による熱延板焼鈍、あるいは1000℃で60秒間均熱する連続焼鈍による熱延板焼鈍を施し、一回の冷間圧延により製品板厚に仕上げた。さらに、一部の熱延鋼板は、熱延板焼鈍を施さずに、一回の冷間圧延により製品板厚に仕上げた。その後、種々の温度で30秒間保持し、25℃/秒で冷却する仕上げの連続焼鈍を施した。実施例1〜35の鋼板はフェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織であり、比較例2〜5および比較例7〜14の鋼板はフェライト単相組織であった。表2に冷間圧延、中間焼鈍または熱延板焼鈍条件を示す。
得られた鋼板について、機械特性、磁気特性および疲労特性を評価した。機械特性は、JIS5号試験片を用いた引張試験にて降伏点:YPおよび引張強度:TSにて評価した。ここで、降伏点は読みとり精度の高い下降伏点を採用した。また、磁気特性は、JIS C 2550に規定されるエプスタイン試験にて評価した。磁気特性としては、最大磁束密度:0.5T、励磁周波数:1500Hzでの渦電流損失:We5/1500を用い、種々の周波数での測定値から周波数分離法にて算出した。さらに、疲労試験は、打ち抜き加工により試験片を採取し、端面に研削加工を施すことなく打ち抜きのままで、振動数60Hzの片振り電磁共振試験に供した。駆動モータの応力状態に対して安全率を考慮し、平均応力:300MPa、応力振幅:180MPaの条件で疲労破壊しなかったものを良好と判断した。繰り返し数は10まで実施し、この繰り返し数での破壊の有無で判断した。表2に結果を示す。
Figure 0004311127
Figure 0004311127
比較例1および比較例6は、Si、P、Al等の含有量が高いため、冷間圧延時に破断した。また、比較例2〜5および比較例7〜14は、C含有量が本発明で規定する範囲を下回っており、降伏点(YP)、引張強度(TS)とも低かった。これに対して、実施例1〜35では、降伏点(YP)、引張強度(TS)とも優れた値を示した。図4は、実施例と比較例の機械特性と磁気特性のバランスを示すグラフである。図4から明らかなように、実施例が優れた磁気特性と機械特性とを兼備していることがわかった。また、実施例1〜35では、上述の応力条件においても疲労破壊を生じないことから、優れた機械特性と同時に端面性状も良好なことがわかった。
無方向性電磁鋼板の打ち抜き端面性状を示す写真である。 電気抵抗と渦電流損失の関係を示すグラフである。 板厚と渦電流損失の関係を示すグラフである。 無方向性電磁鋼板の磁気特性と機械特性のバランスを示すグラフである。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.02%〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下、P:0.2%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、フェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、あるいは、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織を有し、降伏点が400MPa以上、引張強度が550MPa以上、板厚が0.15mm〜1.0mmの範囲内であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  2. Nb、Zr、Ti、Cr、MoおよびBからなる元素群から選択される少なくとも一種の元素を下記の質量%で含有することを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
    Nb:0.001%以上0.2%未満、Zr:0.002以上0.2%未満、
    Ti:0.001%以上0.2%未満、Cr:0.01%以上1.0%未満、
    Mo:0.005%以上1.0%未満、B:0.0001%以上0.01%未満。
  3. 質量%で、CuおよびNiの少なくともいずれか一方を0.01%〜0.5%の範囲内で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 記無方向性電磁鋼板の少なくとも片方の表面に、有機成分の絶縁被膜、無機成分の絶縁被膜、および有機無機複合の絶縁被膜のいずれかを有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の無方向性電磁鋼板。
  5. 記無方向性電磁鋼板の少なくとも片方の表面に、接着性絶縁被膜を有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の無方向性電磁鋼板。
  6. 質量%で、C:0.02%〜0.3%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%〜3.0%、Al:1.5%以下、P:0.2%以下、S:0.02%以下、N:0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼塊または鋼片に、熱間圧延を施し、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、一回または中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延を施すことにより、板厚を0.15mm〜1.0mmの範囲内とし、次いで均熱時の材料温度を700℃〜1100℃の範囲内とし、冷却速度を15℃/秒以上とする連続焼鈍を施し、鋼組織をフェライト+マルテンサイトおよび/またはベイナイト複相組織、あるいは、マルテンサイトまたはベイナイト単相組織とし、降伏点を400MPa以上、引張強度を550MPa以上とすることを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 前記鋼塊または鋼片が、Nb、Zr、Ti、Cr、MoおよびBからなる元素群から選択される少なくとも一種の元素を下記の質量%で含有することを特徴とする請求項6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
    Nb:0.001%以上0.2%未満、Zr:0.002以上0.2%未満、
    Ti:0.001%以上0.2%未満、Cr:0.01%以上1.0%未満、
    Mo:0.005%以上1.0%未満、B:0.0001%以上0.01%未満。
  8. 前記鋼塊または鋼片が、質量%で、CuおよびNiの少なくともいずれか一方を0.01%〜0.5%の範囲内で含有することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
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