上記した特許文献1の製造方法にあっては、感光ドラムの外周面に付与した各色トナーをガラス板に転写するために、該ガラス板上のブラックマトリクスと感光ドラム上の各色トナーとの位置合わせを精度良く行うことが必要である。ところが、この位置合わせは、感光ドラムとガラス板との位置決めによって行うため、前記精度に限界がある。また、ガラス板へ転写して該ガラス板を感光ドラムから引き剥がす際に、感光ドラムにトナーが残留してしまい、転写が不充分となることもあり得た。さらに、各色トナーが付着した感光ドラム上の各付着領域では、その端部をうまく転写することができず、ガラス板上に転写した各色トナーの転写領域の端部に欠け等が生じ易い。そのため、各色トナーの転写領域とブラックマトリクスとの境界が不鮮明になり易く、当該カラーフィルタでは高画質化に限界がある。
本発明は、赤緑青色の各色に着色された各着色領域とブラックマトリクスとの境界を明確に形成し、鮮明な画像を得ることができるカラーフィルタの製造方法を提案することを目的とするものである。
本発明は、絶縁性のフィルタ基板の表面上に、絶縁性のブラックマトリクスを形成するBM形成工程と、前記フィルタ基板に所定の電圧を印加して、該フィルタ基板の表面を帯電する電圧印加工程と、フィルタ基板の表面に対向する放電電極に放電制御電圧を印加し、フィルタ基板の表面上に形成されたブラックマトリクスを含む非着色領域に対向する放電電極の被加熱部位を、選択的に加熱することにより、該被加熱部位から放電を発生させ、該放電により生成されるイオンが、放電電極とフィルタ基板との間の電界によって該フィルタ基板の非着色領域に移動することにより、静電潜像を形成する潜像形成工程と、フィルタ基板の非着色領域を除く着色領域に、液体トナーを付着することにより所定色に着色して、静電潜像を現像する現像工程とを備えていることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
かかる方法の潜像形成工程にあって、放電電極に印加する放電制御電圧とは、印加しただけでは放電が起こらないが、放電電極を加熱することにより放電が起こる電圧域の電圧である。この放電制御電圧を印加した状態で放電電極の各被加熱部位への加熱の有無を制御することにより、放電によるイオンの発生制御を行う。フィルタ基板の非着色領域と対向する被加熱部位を加熱することによって前記イオンの発生制御を行うことにより、該被加熱部位で発生したイオンが、所定電位に帯電しているフィルタ基板と放電電極との間の電位差で形成された電界に従って、非着色領域へ移動する。そして、イオンの移動によって、非着色領域の電位を着色領域に比して低くして、静電潜像を形成する。この後、電位の高い着色領域を液体トナーにより現像することによって、所望のカラーフィルタを得ることができる。
本方法にあって、カラーフィルタの赤緑青色を着色する場合には、例えば、一色毎に、電圧印加工程、潜像形成工程、現像工程を順次実行し、これら工程を三回繰り返すことにより、赤緑青色の各色に着色する。すなわち、最初に赤色の着色領域を除く非着色領域に対向する放電電極の被加熱部位を加熱制御することによって、静電潜像を形成して、当該着色領域を赤色の液体トナーによって着色する。次に、同様に緑色の着色領域を除く非着色領域に対向する被加熱部位を加熱して静電潜像を形成して、緑色の液体トナーによって着色し、次に、同様に青色の着色領域を除く非着色領域に対向する被加熱部位を加熱して静電潜像を形成して、青色の液体トナーによって着色する。
本発明の製造方法によれば、着色領域に比して電位の低い非着色領域を正確かつ安定して形成でき、該非着色領域と着色領域とが明確に区別されてなる静電潜像を正確かつ安定して形成できることから、液体トナーにより着色された着色領域と着色されない非着色領域との境界がはっきりと形成され得る。そのため、赤緑青色に着色された各着色領域と、着色されないブラックマトリクスとの境界が精度良く且つ鮮明に形成される。さらに、本発明の方法は、フィルタ基板上に直接着色することから、上述した従来の転写する方法のように、転写する際に、トナーの転写が不充分となったり、着色領域の端部が欠ける等の問題を生じない。したがって、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタは、コンストラストが向上し、鮮明な画像を得ることができる。
尚、上記した放電電極およびその被加熱部位を加熱するためのものとして、絶縁層の表面側に放電電極が配設され、該絶縁層の裏面側に、発熱素子と該発熱素子に通電するための発熱用電極とを具備する加熱手段を備えた構成のものが好適に用い得る。この構成のものを用いる場合には、放電電極に放電制御電圧を印加すると、該放電電極とフィルタ基板との間に電界が形成され、この状態で前記の発熱用電極に通電して発熱素子を発熱させて放電電極の各被加熱部位を選択的に加熱する。そして、フィルタ基板の非着色領域と対向する被加熱部位を加熱することによって、該非着色領域との間で放電を発生させ、イオンが非着色領域に移動することにより静電潜像を形成する。
また、本方法にあって、フィルタ基板は、絶縁性を有するものであれば良く、例えばガラス板等が好適に用い得る。また、非着色領域は、ブラックマトリクスの全表面を含む場合だけでなく、ブラックマトリクスを部分的に含む場合をも設定することができる。すなわち、前者の場合には、ブラックマトリクス上に着色領域が形成されず、後者の場合には、ブラックマトリクス上に部分的に着色領域が形成される。
また、上記のBM形成工程にあっては、ブラックマトリクスを、フィルタ基板の表面上に格子状に形成する方法が好適に用い得る。この場合には、ブラックマトリクスに囲繞された複数の矩形状領域を、着色領域として所定の液体トナーを付着する。また、ブラックマトリクスを、直線状や波線状の縞状形態に形成するようにしても良い。このような場合には、各ブラックマトリクス間の帯状領域が着色領域として、液体トナーを付着する。
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程により静電潜像を形成した後に、フィルタ基板にバイアス電圧を印加して、該フィルタ基板の着色領域が所定電位となるように調整する電位調整工程を行い、その後、現像工程により静電潜像を現像するようにしている方法が提案される。ここで、バイアス電圧としては、電圧印加工程で印加した電圧と正負(プラス/マイナス)逆の電圧とすることが好適であり、さらに、電圧印加工程で印加した電圧よりも小さい(電圧値の絶対値が小さい)バイアス電圧を印加することが好ましい。
かかる方法にあっては、静電潜像を形成したフィルタ基板に、バイアス電圧を印加することにより、着色領域の電位を所定電位で均一化することができるため、現像工程で液体トナーを該着色領域に一様な膜厚で付着させることができ得る。そのため、各着色領域の色調を均一化でき、一層鮮明な画像を得ることが可能である。また、着色領域と非着色領域との境界を一層明確化する作用効果も奏する。
本方法にあっては、非着色領域の電位を、着色領域の電位と逆電位となるように、バイアス電圧を印加する方法が好適である。この場合には、現像工程で、着色領域の電位と逆の電荷に帯電した液体トナーを用いることによって、着色領域のみに一層確実かつ安定して液体トナーを付着することができ得る。尚、潜像形成工程では、イオンを非着色領域に移動してその電位を低くするようにしていることから、非着色領域ではその電位に乱れが生じ易い。そのため、前記のように着色領域と逆電位となるようにバイアス電圧を印加することにより、この乱れによる影響を生じないようにすることができ得る。
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程の放電電極が、その各被加熱部位に円形状のイオン発生孔を備え、潜像形成工程は、放電電極を放電制御電圧に印加して被加熱部位を選択的に加熱することにより、該被加熱部位に設けられたイオン発生孔の孔周縁から放電を発生させるようにしている方法が提案される。
ここで、放電電極の各被加熱部位には、円形状のイオン発生孔が設けられ、該放電電極の表面側に、該イオン発生孔の孔周端により円形の角部が形成される。一般的に、放電は電極の尖った部分で発生し易いことから、放電電極の各被加熱部位では、そのイオン発生孔の孔周端の円形角部から放電し易くなる。また、イオン発生孔が円形状であることから、放電電極とフィルタ基板との間に形成される電界の力線が、該イオン発生孔の孔周端から中心側に偏倚するように形成されることから、該孔周端の角部から放電により生成されるイオンが拡散し難い。そのため、このイオンが、その被加熱部位から該被加熱部位と対向する非着色領域へ移動することによって、電位の低い非着色領域を正確かつ安定して形成することができる。そして、この非着色領域と着色領域との境界が一層明確化した静電潜像を形成し得る。したがって、より鮮明な画像を得ることができるカラーフィルターを製造できる。
尚、イオン発生孔としては、放電電極の表裏を貫通する貫通孔、或いは放電電極の表面を窪ませた非貫通孔のいずれでもあってもよい。また、イオン発生孔は、その孔径を10μm以上かつ120μm以下とすることが好適に用い得る。孔径が10μm未満であると、当該イオン発生孔から発生したイオンにより電位の低下する範囲が小さくなり過ぎてしまうため、電位低下した非着色領域の電位が不均一になり易く、現像工程で液体トナーの膜厚を均一化し難い傾向を示す。一方、孔径が120μmを越えると、電位の低下する範囲が大きくなりすぎてしまい、着色領域との境界を明確化する作用効果に限界が生じ易い。
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述したように、放電電極を放電制御電圧に印加して、フィルタ基板の非着色領域と対向する被加熱部位を加熱することによって生成したイオンが、非着色領域に移動することにより、該非着色領域を着色領域に比して電位を低下させて静電潜像を形成し、電位の高い着色領域を液体トナーにより現像するようにした方法であるから、電位の高い着色領域と電位の低い非着色領域とを正確かつ安定して形成できるため、該着色領域と着色されない非着色領域との境界を明確に形成することができる。したがって、コンストラストが高く、鮮明な画像を得ることができるカラーフィルタを製造することができ得る。
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程により静電潜像を形成したフィルタ基板に、着色領域を所定電位に調整するバイアス電圧を印加した後に、現像工程を行うようにした方法の場合には、着色領域の電位を均一化した後に現像するため、液体トナーを該着色領域に一様な膜厚で付着できる。したがって、均一な色調の着色領域を形成することができ、一層鮮明な画像を得ることのできるカラーフィルタを製造できる。
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程で、放電電極を放電制御電圧に印加して被加熱部位を選択的に加熱することにより、該被加熱部位に設けられた円形のイオン発生孔の孔周縁から放電を発生させるようにした方法の場合には、該孔周縁の角部から発生した放電により生成されるイオンが拡散し難いため、電位の低い非着色領域を一層正確かつ安定して形成することができ、該非着色領域と着色領域との境界を一層明確に形成することができ得る。
実施例1のカラーフィルタの製造方法としては、BM形成工程(図示省略)、電圧印加工程(図3参照)、潜像形成工程(図4参照)、電位調整工程(図6参照)、現像工程(図示省略)を備えてなる。そして、ブラックマトリクス2により区画された各着色領域3a,3b,3cに赤色、緑色、青色を着色するために、各色毎に、電圧印加工程、潜像形成工程、電位調整工程、現像工程を実施する。すなわち、電圧印加工程、潜像形成工程、電位調整工程、現像工程を三回繰り返す。
BM形成工程では、平板状のガラスからなるフィルタ基板10の表面10a上に、絶縁性のブラックマトリクス2を格子状に形成する(図1,2参照)。ここで、絶縁性のブラックマトリクス2により区画された格子内側の領域が、略矩形状の着色領域3a,3b,3cである。尚、このブラックマトリクス2を形成する方法は、従来から用いられている方法と同じ方法を適用することができるため、その詳細については省略する。
次に、電圧印加工程では、図3のように、絶縁性のブラックマトリクス2を形成したフィルタ基板10に、所定の電圧を印加し、該フィルタ基板10の表面10aを帯電する。ここで、本実施例1にあっては、フィルタ基板10の表面10aを、+1kVの電位とするように、電圧を印加している(図3(B)参照)。
次に、図4のように潜像形成工程を行う。この潜像形成工程にあっては、フィルタ基板10をその板面方向に沿って搬送する搬送装置(図示省略)とイオン発生装置20とによって、該フィルタ基板10の表面10aに所定の静電潜像を形成する。前記のイオン発生装置20は、搬送装置によって搬送されるフィルタ基板10と所定間隔を置いて対向するように配設されており、このイオン発生装置20下を通過するフィルタ基板10に静電潜像を形成する。また、図示しない搬送装置は、フィルタ基板10を、その表面10aがイオン発生装置20と所定間隔を維持するようにして搬送する(図中の矢印の向きに搬送する)。
上記のイオン発生装置20にあっては、図5,6のように、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂で形成された担持基板21と、該担持基板21の上面に配設された発熱用共通電極22とを備えている。ここで、発熱用共通電極22は、一定間隔で並列する複数の狭幅の発熱用櫛歯電極22aと、各発熱用櫛歯電極22aの基端が接続された広幅のコ字形電極22bとから構成されている。さらに、担持基板21上には、各発熱用櫛歯電極22aの間に、細帯状の発熱用個別電極23が各発熱用櫛歯電極22aと平行でかつ互い違いとなるようにして配設されている。この発熱用櫛歯電極22a,コ字形電極22b,及び発熱用個別電極23は、平面状に形成された担持基板21の表面に金ペースト等の導体を印刷した後、エッチングすることにより形成され得る。
上記した発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23上には、該発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23と電気的に接続された帯状の発熱素子25が配設されている。発熱素子25は、発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23の上部にTaSiO2、RuO2等を印刷する等して形成され得る。
また、担持基板21上には、前記コ字形電極22b及び発熱用個別電極23の端部を除いて絶縁層26が覆設されている。該絶縁層26は、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂を印刷する等して形成され得る。
上記した絶縁層26上には放電体28が配設されており、該放電体28は、絶縁層26により上記した発熱素子25、発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23と絶縁されている。放電体28は、図5に示すように、担持基板21の横幅方向に沿って並列する細幅帯状の複数の放電電極28aと、各放電電極28aの両端部に連成された広幅帯状の共通電極28b,28bとで構成されている。この放電体28の各放電電極28aは、前記各発熱用個別電極23と上下方向で夫々一致する位置に配設されている。従って、各放電電極28aと、発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23とは絶縁層26を介して上下位置で対峙することとなる。また、前記発熱素子25に対応する各放電電極28aの部位が各放電電極28aの被加熱部位29となっている。この放電電極28a及び共通電極28b,28bは、金,銀,銅,アルミニウム等の金属層を、蒸着,スパッタ,印刷,又はメッキで形成した後、エッチングすることにより形成され得る。
また、担持基板21上には、前記発熱素子25の発熱を制御するドライバIC27が実装されている。このドライバIC27は、コ字形電極22b及び発熱用個別電極23から伸びるリードパターンに金線でワイヤボンディングされた状態で、エポキシ樹脂等のIC保護用の樹脂で封止されている。
上記した発熱素子25は、ドライバIC27が所定の信号を発信して発熱用櫛歯電極22aと発熱用個別電極23とに対して電圧を印加して通電することにより発熱する。すなわち、一本の発熱用個別電極23とその両側の発熱用櫛歯電極22a,22aとの間に所定の電圧を印加して通電することにより、放電電極28aの各被加熱部位29に対応する発熱素子25の任意の部位を発熱させて、任意の被加熱部位29を加熱する。
尚、発熱用櫛歯電極22aと発熱用個別電極23とに電圧を印加する作動(ON作動)と電圧を印加しない作動(OFF作動)とを制御することにより、発熱素子25の任意の部位を発熱させて、該部位に対応する被加熱部位29を選択して加熱することができると共に、加熱と非加熱とを選択して行うこともできる。すなわち、図示しない搬送装置により所定速度でフィルタ基板10を搬送するに伴って、該フィルタ基板10の非着色領域4上で該非着色領域4と対向する位置となった放電電極28aの被加熱部位29を加熱するように、当該被加熱部位29に対応する発熱素子25の任意の部位を選択的に発熱する。一方、着色領域3a上で該着色領域3aと対向する位置となった被加熱部位29を加熱しないように、当該被加熱部位29に対向する発熱素子25の任意の部位を発熱しない制御を行う。このような発熱素子25の発熱制御としては、予め着色領域3aと非着色領域4とを設定した画像データに基づいて、上記したドライバIC27を駆動制御することにより行うことができる。
上記した放電体28の共通電極28b,28bの表面には、図示しない導電材層が帯状に形成されている。この導電材層は、導電性に優れた銀ペーストや銀メッキ等で形成されている。かかる構成とすることにより、共通電極28b,28bの抵抗値を低下させることができ、放電電極28aに生じる電位差を均一化することができる。
本実施例1では、上記のイオン発生装置20を複数列設しており(図示省略)、フィルタ基板10の表面10aを、その搬送方向と直交する方向に亘ってカバーしている。そして、上述のように、フィルタ基板10を図示しない搬送装置により搬送するに伴って、各イオン発生装置20のドライバIC27を、図示しない制御装置により作動制御することにより、発熱素子25の任意の部位を選択的に発熱する制御を行うようにしている。
潜像形成工程にあっては、図4のように、図示しない搬送装置により、フィルタ基板10がイオン発生装置20下を搬送される。これに伴い、イオン発生装置20の放電体28に放電制御電圧を印加し、該放電体28とフィルタ基板10との間の電位差に従って電界を形成する。ここで、放電制御電圧とは、放電体28に対して印加しただけでは放電の発生はないが、放電体28が加熱されることにより放電が発生する電圧域の電圧をいう。この放電制御電圧は、交流電圧に直流電圧を重畳して生成されるが、交流電圧に負の直流電圧を重畳して放電体28に印加することにより、放電電極28aの加熱時にマイナスイオンを発生させることができる。
そして、フィルタ基板10の搬送速度に応じて、該フィルタ基板10の着色領域3aを除く非着色領域4上で、イオン発生装置20の発熱素子25を発熱する制御を行う。尚ここで、本実施例1にあっては、最初に、フィルタ基板10の表面10aに、赤色を着色する着色領域3aの静電潜像を形成するように設定している。
すなわち、搬送されるフィルタ基板10が、イオン発生装置20下を通過していく間に、該フィルタ基板10の非着色領域4と対向する放電電極28aの被加熱部位29を加熱するように、該被加熱部位29に対応する発熱素子25の任意の部位を、ドライバIC27により選択的に発熱する。ドライバIC27の制御としては、任意の発熱用個別電極23とその両側の発熱用櫛歯電極22a,22aとに24Vの電圧を印加し、放電電極28aの各被加熱部位29に対応する発熱素子25の任意の部位を発熱させて、フィルタ基板10の非着色領域4と対向する放電電極28aの被加熱部位29を選択的に所定温度(200〜300℃)に加熱する。これによって、放電電極28aの被加熱部位29とフィルタ基板10との間で放電を発生させ、この放電により生じる電離によって生成されるマイナスイオンを、放電体28とフィルタ基板10との間に形成された電界によって該フィルタ基板10の非着色領域4に移動させることにより、該非着色領域4のプラスの電位が低下して静電潜像が形成されていく。また、フィルタ基板10の着色領域3aと対向する放電電極28aの被加熱部位29は加熱しないように、ドライバIC27を制御し、該着色領域3aの電位を保つ。これにより、フィルタ基板10の表面10a上に、電位の高い着色領域3aと電位の低い非着色領域4とから構成されるパターンの静電潜像を形成する(図4(B)参照)。
尚、上記の静電潜像のパターンとしては、フィルタ基板10上で、赤色に着色される着色領域3aを除く非着色領域4が、ブラックマトリクス2と、緑色および青色に着色される着色領域3b,3cとから構成されている。
次に、電位調整工程を行う。この電位調整工程では、図7のように、フィルタ基板10に、マイナスのバイアス電圧を印加することにより、上記した着色領域3aの電位を均一化するように調整する。ここで、本実施例1にあっては、上記した電圧印加工程で印加した電圧(+1kV)よりも絶対値の小さいバイアス電圧(−800V)を印加し、着色領域3aをプラスの電位とし且つ非着色領域4をマイナスの電位となるようにしている。これにより、着色領域3aを非着色領域4と明確に区別化すると共に、両者の境界を一層明確化してなる静電潜像を形成することができる。
尚、上記した潜像形成工程にあって、低電位とした非着色領域4では、その電位に乱れが生じてしまい易い。そのため、非着色領域4と着色領域3aとを逆電位となるようにバイアス電圧を印加することにより、後述する現像工程でマイナスに帯電した液体トナー30aを確実かつ安定して着色部位3aにのみ付着できるという作用効果を生じさせ、非着色領域4の電位の乱れによる影響が生じないようにしている。
次に、上述のように形成した静電潜像を現像する現像工程を行う。この現像工程では、マイナスに帯電した赤色の液体トナーを、所定のローラーによって、フィルタ基板10の表面10a上の各着色領域3aに付着させる。すなわち、図8(A)のように、マイナスに帯電した液体トナー40aが、プラスの電位の高い着色領域3aに引き寄せられて付着する。これにより、着色領域3aのみを赤色に着色することができる。尚、非着色領域4は、上記のようにマイナスの電位であることから、マイナス電荷の液体トナー40aが反発して付着しない。また、上記した電位調整工程により着色領域3aの電位を均一化していることから、液体トナー40aが一様に付着し、均一な膜厚に形成される。この現像工程により、一様な色調で赤色に着色された着色領域3aを得ることができ、着色されない非着色領域4との境界も鮮明に形成される。
尚、このように、所定のローラーによって液体トナーを付着して静電潜像を現像する方法は、従来から用いられている方法を適用できることから、その詳細については省略する。また、この現像工程にあっては、その他、液体トナーを貯留してその液中にフィルタ基材を浸漬する方法、液体トナーを噴霧して吹き付ける方法などを適用することも可能である。
さらに、この現像工程では、着色領域3aに赤色の液体トナー40aを付着した後に、所定の温度の熱風を吹き付けることによって、該液体トナー40aを仮定着する。これにより、次に着色領域3bを緑色に着色する過程で、赤色の液体トナー40aが剥がれてしまうことを防止する。
このように着色領域3aを赤色で着色した後に、再び、上記した電圧印加工程から現像工程までを同様に実施して、着色領域3bを緑色に着色する。すなわち、電圧印加工程により、赤色に着色した着色領域3aを含むフィルタ基板10の表面10aを、所定のプラス電位となるように、電圧印加する。次に、潜像形成工程により、イオン発生装置20により、着色領域3bとそれ以外の非着色領域(図示省略)とからなる静電潜像を形成し、電位調整工程により着色領域3bの電位を調整する。次に、現像工程により、マイナスに帯電した緑色の液体トナー40bを着色領域3bにのみ付着して現像する(図8(B)参照)。さらに同様に、上記した電圧印加工程から現像工程までを同様に実施して、着色領域3cに青色の液体トナー40cを付着して青色に着色する(図8(B)参照)。その後、図示しない乾燥炉により所定温度で加熱することにより、各着色領域3a,3b,3cに定着させることにより、所望のカラーフィルタ1を得る(図1,8(B)参照)。
このように製造されたカラーフィルタ1は、各着色領域3a,3b,3cが一様な色調により精度良く形成されていると共に、格子状のブラックマトリクス2との境界も鮮明に形成されている。これは、上述したように、潜像形成工程によって、着色領域に比して電位の低い非着色領域を精度良くかつ安定して形成することができ、電位調整工程により、着色領域の電位を均一化することができることに因る。そして、本実施例のカラーフィルタの製造方法で製造したカラーフィルタ1を用いることにより、コントラストが高く、鮮明な画像を得ることができる。
実施例2にあっては、潜像形成工程を、放電電極58aの各被加熱部位59にイオン発生孔60を備えたイオン発生装置50(図9参照)により行うようにしたカラーフィルタの製造方法である。尚、潜像形成工程以外の、BM形成工程、電圧印加工程、電位調整工程、現像工程は、上述した実施例1と同様であり、同じ要素には同じ符号を記し、その説明を省略する。
本実施例2のイオン発生装置50としては、上記した実施例1と同様に、担持基板21上に、発熱用櫛歯電極22a、コ字形電極22b、発熱用個別電極23、発熱素子25、ドライバIC27が配設されており、該コ字形電極22b及び発熱用個別電極23の端部を除いて絶縁層26が覆設されている。そして、この絶縁層26上には、放電体58が配設されており、該放電体58は、絶縁層26により上記した発熱素子25、発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23と絶縁されている。放電体58は、図9のように、単一の帯状の放電電極58aとその両端部を構成する共通電極58b,58bとから構成されており、放電電極58aは、前記各発熱用個別電極23と上下方向で夫々一致する位置が被加熱部位59となっている。そして、本実施例2にあって、単一の放電電極58aの各被加熱部位59に、微小なイオン発生孔60が夫々形成されている。ここで、イオン発生孔60は、図10のように、放電電極58aの表裏を貫通する円形状の貫通孔として形成されており、該放電電極58aの表面側の孔周縁により環状の角部60aが構成されている。本実施例にあっては、イオン発生孔60の孔径を10〜120μm、さらに好ましくは30〜80μmで形成している。
このイオン発生装置50にあっても、上記した実施例1と同様に、フィルタ基板10の搬送方向と直交する方向に複数列設されており、当該直交する方向に亘ってカバーしている。そして、フィルタ基板10を図示しない搬送装置により搬送するに伴って、各イオン発生装置20のドライバIC27を、図示しない制御装置により作動制御することにより、発熱素子25の任意の部位を選択的に発熱する制御を行うようにしている。すなわち、上述した実施例1と同様に、フィルタ基板10の非着色領域4と対向する放電電極58aの被加熱部位59を加熱し、着色領域3aと対向する被加熱部位59を加熱しないように、所定の画像データに基づいてドライバIC27により発熱素子25の発熱制御を行う。
尚、実施例2のイオン発生装置50は、単一の放電電極58aの被加熱部位59にイオン発生孔60を備えた構成とした以外は、上記した実施例1のイオン発生装置と同じ構成である。
本実施例2の潜像形成工程にあっては、電圧印加工程により所定のプラス電位に帯電したフィルタ基板10を、上述した実施例1と同様に図示しない搬送装置により搬送すると共に、該フィルタ基板10がイオン発生装置50下を通過していく間に、該フィルタ基板10の非着色領域4と対向する放電電極58aの被加熱部位59を加熱するように、該被加熱部位59に対応する発熱素子25の任意の部位を、ドライバIC27により選択的に発熱する。これによって、放電電極58aの被加熱部位59とフィルタ基板10との間で放電を発生させ、この放電により生じる電離によって生成されるマイナスイオンを、該フィルタ基板10の非着色領域4に移動させることにより、該非着色領域4の電位が低下して静電潜像が形成されていく。また、フィルタ基板10の着色領域3aと対向する放電電極58aの被加熱部位59は加熱しないように、ドライバIC27を制御する。こうして、フィルタ基板10上に、電位の高い着色領域3aと電位の低い非着色領域4とから構成されるパターンの静電潜像を形成する(図4(B)参照)。
ここで、単一の放電電極58aの各被加熱部位59には、上述したように、微小な円形状のイオン発生孔60が夫々形成されており、各イオン発生孔60の孔周端により円環状の角部60aを構成している(図10(B)参照)。そして、上記したように、放電電極58aに放電制御電圧を印加して電界を形成した状態で、任意の被加熱部位59を加熱することにより、該被加熱部位59に形成されたイオン発生孔60の孔周縁の角部60aで放電が発生し、この放電で生じる電離によって、イオン発生孔60の周囲のエリアでマイナスイオンが生成される。このように生成されたマイナスイオンが電界によってフィルタ基板10の表面10aに移動して、該表面10aに帯電しているプラスの電位を低下させて、フィルタ基板の表面10aに静電潜像が形成される。尚、このようにマイナスイオンが移動するフィルタ基板10上の位置としては、該イオン発生孔60の直下の比較的狭くかつ限られた範囲とすることができる。これは、放電電極58aとフィルタ基板10との間に形成される電界の力線が、図10(B)に矢印で示すように、イオン発生孔60の孔周縁の角部60aから該イオン発生孔60の中央側に偏倚するように形成され、マイナスイオンがこの力線に沿って移動することにより、フィルタ基板10の表面10aに到達した時点で拡散し難いためと推測される。したがって、上述したように、フィルタ基板10の非着色領域4上に位置した放電電極58aの被加熱部位59を選択的に加熱することによって、該非着色領域4の電位を低下して静電潜像を形成することができ得る。
このような潜像形成工程の後に、上述した実施例1と同様に、電位調整工程(図7参照)と現像工程とを順次実行することによって、着色領域3aに赤色の液体トナー40aを付着する(図8(A)参照)。そして、同様に、電圧印加工程から現像工程まで繰り返し実行することにより、着色領域3bに緑色の液体トナー40bを付着し、さらに着色領域3cに青色の液体トナー40cを付着する。これにより、所望のカラーフィルタ1を製造することができる(図1,8(B)参照)。本実施例2の潜像形成工程によれば、上述したように、放電電極58aのイオン発生孔60の周囲のエリアで生成されたマイナスイオンを、一層正確かつ安定して非着色領域4へ移動させることができるため、静電潜像を正確かつ安定して形成できる。これにより、静電潜像を現像した各着色領域3a,3b,3cを一様な色調により精度良く形成できると共に、格子状のブラックマトリクス2との境界も鮮明に形成し得る。したがって、本実施例2の製造方法にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏する。
一方、上述した実施例2にあっては、潜像形成工程で、放電電極に設けた円形のイオン発生孔を、該放電電極を表裏に貫通する貫通孔として形成したイオン発生装置を用いるようにした方法であるが、その他の方法として、放電電極の表面を窪ませた非貫通孔として形成することもできる。この場合にも放電電極の表面側に、イオン発生孔の孔周縁からなる角部を備えたものとなるため、上述した実施例2と同様の作用効果を奏する。
また、イオン発生孔を四角形状や三角形状などの多角形状に形成したイオン発生装置を用いることもできる。このような放電電極を用いた場合にあっても、イオン発生孔の孔周縁の角部から、イオンを発生することができることから、上述した実施例2と同様に、所望の静電潜像を正確かつ安定して形成することができ得る。
一方、上述した実施例1,2の他に、潜像形成工程で、イオン発生孔を有しない単一の帯状放電電極を備えたイオン発生装置を用いることもできる。このイオン発生装置を用いた場合にあっても、ドライバICを制御して、任意の発熱用個別電極とその両側の発熱用櫛歯電極とに電圧印加して発熱素子の任意の部位を発熱することにより、被加熱部位を選択的に加熱することができるため、上述と同様に、非着色領域を着色領域に比して低電位とする静電潜像を安定して形成することができ得る。
また、上述した実施例1,2にあっては、潜像形成工程の後に、電位調整工程を行うようにした方法であるが、この電位調整工程を行わずに、現像工程を行うようにすることもできる。この場合には、上述した非着色領域4の電位の乱れを可及的に小さくできるように、例えば、発熱素子を発熱する時間を比較的長く設定したり、比較的高い温度で発熱することが好ましい。
また、上述した実施例1,2にあっては、ブラックマトリクスを格子状に構成し、赤色の着色領域3aと緑色の着色領域3bと青色の着色領域3cとがそれぞれ一列に列んで設けられている構成であるが、その他の構成とすることも可能である。例えば、各着色領域3a,3b,3cが前後左右に交互に並ぶ構成のものであっても同様に製造でき得る。さらにまた、ブラックマトリクスを枠状に形成し、かつ該枠内で直線状のブラックマトリクスを並設した縞状形態に形成し、各ブラックマトリクス間の各帯状領域を所定色で着色するようにして、カラーフィルターを製造することもでき得る。同様に、波線状のブラックマトリクスを並設した縞状形態に形成することもできる。尚ここで、ブラックマトリクスを枠状に形成せずに、縞状形態に形成するようにしても良い。
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、その他の製造方法についても、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能である。