JP5180053B2 - 保温編地 - Google Patents

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本発明は、防風性と伸張性と伸張回復性を兼ね備えた着用快適性の高い保温編地に関するものである。
従来、丸編地は、柔軟性、フィット性に優れるため、インナーウエアー、アウターウエアー、スポーツウエアーなど幅広い分野で使用されている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、丸編地は、伸張されるとそのループ構成上組織ズレが発生しやすく、伸張回復性が良くないという問題を有していた。
この問題を改善する方策として、丸編地の編密度を極めて高密度にすることにより、編地の伸張回復性を向上させる方法が提案されている(特許文献4参照)。具体的には、繊度が50dtex以下の細糸を用いて、46ゲージ/inchの特殊な高密度編機を用いて、ニードルループ数が5000個/(2.54cm)以上と超高密度な編地が開示されている。しかしながら、この編地を高密度にすると、伸張回復性は良くなる傾向にあるが、伸張性(伸度)は一般的に低下する。
一方、保温性を向上させる方策として、布帛を高密度にして通気性を下げ、防風性を付与する方法がある。例えば、高収縮ポリエステル糸を用いてなる織編物であって、織編地にした後に経方向及び/又は緯方向の乾熱160℃における寸法変化率を−60%〜−15%に縮めて高密度にするポリエステル高収縮織編物が開示されている(特許文献5参照)。しかしながら、この方法では、ポリエステル糸を熱で収縮させて織編物を高密度にするため、得られる織編物の伸張性は期待できない。
また、単層または2層以上からなる編地であって、少なくとも外層が単糸繊度0.2〜3.0dtexの繊維から構成され、該編地の少なくとも1層が縦方向45個/inch以上のかつ横方向45個/inch以上の編密度を有し、該編地の通気度が5〜50cc/cm・secであって、吸水加工が施されていることを特徴とする保温編地が提案されている(特許文献6参照)。しかしながら、この編地は高密度なので保温性には優れるが、この方法によっても期待する伸張性は得られない。そのため、伸張性を付与するためには、スパンデックス等の伸縮糸を用いる必要があった。
しかしながら、スパンデックス糸を使用すると、工程が複雑になり、また工程管理が難しくなりトラブルが起こりやすい。また、スパンデックス糸を使って縮めた編地は締め付け感が強く、強度な運動を行うときは筋肉をサポートして肉離れ等の防止に有効であるが、それほど強い運動を必要としない一般的な使用目的には、締め付け感は不快に感じるものであった。
特開2002−20947号公報 実用新案登録第2567438号公報 特開2000−8252号公報 特開2006−328567号公報 特開2003−82552号公報 特開2002−363843号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消するために創案されたものであり、その目的は、防風性と伸張性と伸張回復性を兼ね備え、着用快適性に優れる保温編地を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、編地を編成するにあたり、単層または2層以上からなる編地の少なくとも1層の編地に、S撚りとZ撚りの仮撚糸を一本ずつ交互に配列することによって、染色加工工程の精練や染色工程で仮撚トルクが大きく発現して、編地が大きく縮むことを見いだした。更に、仮撚糸に高捲縮仮撚糸を用いることによって、スパンデックス糸を用いなくとも高密度になり、防風性、保温性に満足できる編物を得ることができた。また、出来上がった編物は高い伸張性があるとともに、適度の伸張回復性を持つことも確認できたので、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、単層または2層以上からなる編地であって、少なくとも1層の編地は、S撚り及びZ撚りの2種類のポリエステル仮撚捲縮糸を一本ずつ交互に配列して構成されてなり、かつ該仮撚捲縮糸は40〜70%の捲縮伸張率を有することを特徴とする保温編地である。
本発明の保温編地の好ましい態様では、20〜50%の保温率、90cc/cm・s以下の通気度、20%以上の縦方向の伸度、及び85%以上の縦方向の伸張回復率を有する。
本発明の保温編地の好ましい態様では、保温編地が、100〜250g/mの目付、及び0.5〜1.2mmの厚みを有し、4℃以上の蓄熱保温性を有する。
本発明の保温編地の好ましい態様では、編地の表面が全てニットループで構成されている。
本発明の保温編地の好ましい態様では、保温編地が、蓄熱加工を施され、5℃以上の蓄熱保温性を有する。
また、本発明は、上記保温編地を用いてなる繊維製品であって、インナーウエアー、アウターウエアー、およびスポーツウエアーからなる群より選択されることを特徴とする繊維製品である。
本発明の保温編地は、単層または2層以上からなる編地の少なくとも1層に、S撚り及びZ撚りの仮撚糸を一本ずつ交互に配列させ、さらに仮撚糸に捲縮伸張率が40〜70%である高捲縮仮撚糸を用いることで、スパンデックス糸を用いなくとも、仕上りで高密度の編地を得ることができるため、防風性に優れながらも、適度な伸張性と高い伸張回復性を両立させることができ、着用快適性に優れる。さらに、本発明の保温編地は、編地に赤外線吸収剤を含有する樹脂組成物を付着させることにより、蓄熱保温性がさらに向上し、高い保温性をもつ編地を得ることができる。
以下、本発明の保温編地について詳細に説明する。
本発明の保温編地は、単層または2層以上からなり、そのうちの少なくとも一層がS撚り及びZ撚りの2種のポリエステル仮撚捲縮糸を一本ずつ交互に配列して構成されているもの(以下、特徴構成層と言う)であり、該捲縮糸は捲縮伸張率40〜70%の高捲縮糸であることを特徴とする。
上記特徴構成層におけるポリエステル仮撚捲縮糸は、図1に示すように、S撚りの捲縮糸とZ撚りの捲縮糸がコース方向に一本ずつ交互に配列されるものである。編地は通常、S撚りだけまたはZ撚りだけの捲縮糸を使用するが、本発明では、このようにS撚り及びZ撚りの捲縮糸を一本ずつ交互に配列させて使用することにより、ねじれトルクにより糸のループがコース方向に対し左右に傾き、ループが扁平になり経密度が上がることにより、伸縮性が向上し、編地の中の糸密度が高くなり、編目のカバー効果が高くなり防風性が向上する(即ち、通気性が低下する)。
上記特徴構成層におけるポリエステル仮撚捲縮糸は、40〜70%、好ましくは45〜65%の捲縮伸張率を有することが必要である。捲縮伸張率が上記範囲未満の場合、染色加工での捲縮発現が不十分であり、高い収縮率と伸縮性を得ることが困難になり、それにより捲縮加工糸による編目のカバー効果が十分発現されない恐れがある。一方、捲縮伸張率が上記範囲を越える場合には、編地の風合いが粗硬になり好ましくない。なお、かかる仮撚捲縮糸は、公知の方法により製造でき、仮撚加工の方法としてスピンドル仮撚、フリクションデイスク仮撚、ベルト仮撚が例示され、いずれの仮撚加工法を選択してもよいが、加工速度が低く、高捲縮の仮撚条件を取りやすいスピンドル仮撚が好適に用いられる。本発明では、このように高捲縮糸を使用することにより、編目密度が大きくなり伸張性が向上し、高捲縮糸の伸長回復性が編地に作用する結果、伸長回復性が向上し、さらに高捲縮糸のフィラメント間の空隙が増えるため断熱効果により保温性が向上する。
本発明のポリエステル仮撚捲縮糸の原料となるポリエステル長繊維は、その全構成単位の少なくとも80%以上がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルから構成されるものである。ポリエステルとしては、特に、テレフタル酸又はその機能的誘導体とエチレングリコ−ル又はエチレンオキサイドとから製造されたポリエチレンテレフタレ−トが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレ−トは、酸成分としてテレフタル酸又はその機能的誘導体の他に20モル%未満、好ましくは10モル%未満のイソフタル酸、アジピン酸、セパチン酸、アゼライン酸、ナフタ−ル酸、P−オキシ安息香酸、2.5−ジメチルテレフタル酸、ビス(P−カルボキシフエノキシ)エタン、2.6−ナフタレンジカルボン酸、3.5−ジ(カルボメトキシ)ベンゼンスルホン酸塩又はそれらの機能的誘導体を加えるか、もしくはグリコ−ル成分として、エチレングリコ−ルの他にジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1.4−ブタンジオ−ル、1.4−ピロキシメチルシクロヘキサン等の2価アルコ−ルを加えた共重合体であってもよい。
また、例えば、難燃性を付与するために芳香族ポリホスホネ−トを加えた共重合体であってもよい。更に、これらの重合体に酸化防止剤、艶消剤、着色剤、染色性向上剤、難燃性向上剤、制電剤等を添加しても差支えない。特に、本発明では、艶消剤として用いる酸化チタンは、赤外線を吸収する効果もあるので、製造上問題ないレベルで多く添加した方が、保温性の点から好ましい。ポリエステルの酸化チタンの含有量は、0.05〜3.5質量%の範囲が好ましい。酸化チタンの含有量が0.05質量%未満の場合、赤外線吸収効果は殆ど得られない。一方、酸化チタンの含有量が3.5質量%を超える場合、赤外線吸収能力は高いが、製糸性が極端に悪くなり、得られる糸も毛羽が増えるなど品質も低下しやすくなる。
また、このポリエステル長繊維(単繊維)の断面形状は、通常の丸断面の他、多角断面、多葉断面、偏平断面、中空断面、その他特殊異形断面など、いかなるものでもよい。
本発明の保温編地の特徴構成層を構成する繊維の単糸繊度は、好ましくは、0.3〜3.0dtex、より好ましくは0.2〜1.5dtexの範囲である。単糸繊度をかかる範囲内とすることにより、編目のカバー性が向上し、防風効果が得られ易くなるとともに吸水性も向上する。単糸繊度が上記範囲未満では、編目のカバー性は向上するものの、編地のピリング性及びスナッギング性が悪化し、好ましくない。一方、単糸繊度が上記範囲を越えると編目のカバー性が低下し、編地に防風性を付与しにくくなるとともに風合が硬くなりすぎる。また、総繊度は特に限定はされないが、風合いの点で30〜150dtexの範囲にあるものが好ましい。
特徴構成層を構成するポリエステル仮撚捲縮糸の形態としては、マルチフィラメントに仮撚捲縮加工を施した仮撚捲縮加工糸や仮撚捲縮加工糸と他の長繊維糸とを複合させた複合加工糸が好ましく使用される。但し、捲縮伸張率が40〜70%の高捲縮の仮撚加工糸を使用することが必要である。
特徴構成層を構成するポリエステル仮撚捲縮糸は、例えばスピンドル仮撚方法を用いる場合、次のように製造される。加撚ヒーター及び解撚ヒーターを具備する1段又は2段仮撚加工機においてポリエステル高配向延伸糸又は中間配向糸を仕掛け、紡速によって決定する所定ドローレシオをとり、加撚ヒーター温度180℃〜220℃で、仮撚数を3500〜10000T/mにとり、糸速度80〜200m/分で仮撚加工すると、1段仮撚糸が得られる。また、更に解撚ヒーター温度を150〜180℃の低温で加工した高捲縮の2段仮撚糸を使用してもよい。
高捲縮糸にするために、仮撚数、加撚ヒーター温度、糸速度は、製造中に未解撚や糸切れが問題にならない程度に高い条件をとることが必要である。好適な仮撚数としては、3000〜4800T/mであり、更に好適には3500〜4300T/mである。好適な加撚ヒーター温度は180℃〜220℃であり、更に好適には190〜210℃である。仮撚数及び加撚ヒーター温度は、上記範囲未満であると高捲縮な仮撚糸が得られず、上記範囲より高いと、糸切れや未解撚が発生して操業性が極端に悪くなる。また、製編性をよくするために解撚ヒーターを用いることができるが、高捲縮を維持するためには解撚ヒーターを使わないか、または低温処理に留めておくことが必要である。後者の場合、解撚ヒーター温度は130〜180℃が好ましく、更に好ましくは150℃〜160℃である。糸速度は80〜200m/分であることが好ましく、更に好ましくは100〜150m/分である。糸速度が80m/分未満の場合は、生産性が低く実用的でない。一方、糸速度が200m/分を超える場合は、一般的に市販されているスピンドル仮撚設備では、高捲縮糸を得るのに十分な熱処理を施すことができない。
本発明の保温編地において、少なくとも1層は上記のような特徴構成層で構成されるが、編地の表面が全てニットループで構成されることが必要である。編地の表面がニットループを構成することで、防風性が増し、編地内の空気層の移動を抑えて保温性が向上する。なお、特徴構成層を構成しない層については、構成する繊維の種類、単糸繊度、繊維の形態とも特に限定されるものではない。また、より高い機能を追求するため、特徴構成層を構成しない層において、防風性の向上を目的として高収縮ポリエステルフィラメント糸で構成して、染色加工で編地を更に収縮させて編地密度を高くしたり、または綿やレーヨン等の吸湿性の高い繊維を少なくとも一部に使った糸で構成して、着用快適性を向上させてもよい。
また、本発明の保温編地の編密度は、縦方向及び横方向ともに40〜90個/inchであることが好ましい。40個/inch未満では、希望の目付が確保できなくなり好ましくない。
上記のように構成された本発明の保温編地は、S撚り及びZ撚りの高捲縮糸の交互配列により、高い保温性と防風性を有し、具体的には50%以上の保湿率、及び90cc/cm・s以下の通気度を持つ。さらに、本発明の保温編地は、高い伸張性と伸張回復性を有し、具体的には20〜50%の縦方向の伸度、及び85%以上の縦方向の伸張回復率を持つ。従って、本発明の保温編地は、高い保温性と防風性を持ちながら、ヒジやヒザ部分の屈曲時の伸びに対する追従性、キックバック性が良好でフィット性が高く、着用時の快適性が高い。本発明の保温編地の保温性については、100〜250g/mの目付及び0.5〜1.2mmの厚みを有する編地であっても、蓄熱保温性が4℃以上あり、保温性が極めて高い。
本発明の編地の染色加工の方法としては、一般的に丸編地を加工する染色加工設備を使用すればよい。また、本発明の編地は、染色加工工程で収縮して高密度化し、適度の伸張性を発現させる必要があるので、できるだけ張力の掛からない設備及び条件で加工することが好ましい。編地の後加工において、各種の機能性を付与するために、SR加工などの防汚加工、消臭加工、抗菌、制菌加工、UVカット加工、摩擦溶融加工、静電加工、スキンケア加工などを施しても良い。
また、本発明の編地は、遠赤外線吸収加工等の保温機能がある蓄熱加工を行うことにより、蓄熱保温性がさらに向上し、蓄熱保温性を5℃以上にすることができる。例えば、オルガノゾル系アンチモン酸亜鉛や、酸化ジルコニウム、酸化錫を固溶した酸化インジウム系微粒子等の赤外線吸収能がある物質をパディング法やコーティング、グラビア、捺染等の手法を用いて蓄熱加工することができる。このような赤外線吸収能がある物質の使用量は、物質の種類により蓄熱性能が変化するので、編地の性能を確認しながら適宜調整する。
本発明の保温編地は、防風性と伸張性と伸張回復性を併せ持ち、着用快適性に優れるので、インナーウエアー、アウターウエアー、およびスポーツウエアー等の繊維製品に用いるのに極めて好適である。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各性能評価は、以下の方法により行った。
(1)厚み
JIS L−1018−1998 6.5に準じて編地の厚みを測定した。
(2)編地の密度
JIS L−1018―1998に準じて編地の縦方向(T)密度(個/inch)、横方向(W)密度(個/inch)を測定した。
(3)編地の目付
JIS L−1096法に準じて測定した。
(4)縦方向の伸度
JIS L−1096B法に記載された方法により測定した。
(5)縦方向の伸張回復率
JIS L−1096B−1法に記載された方法により測定した。
(6)通気度(防風性)
JIS L−1018に記載されたフラジール型通気性試験法により測定した。
(7)捲縮伸長率
適度なテンション調整装置を有するラップリール(周長1.125m)を用い、1/10(g/d)の荷重をかけて8巻きの綛を作る。これをフックにかけ、100℃の熱水中に無荷重の状態で5分間浸漬し、この試料を熱水中より取り出し湿潤状態のまま(2/10)×8×2×表示デニールのg数の荷重をかけ、1分後の長さaを測定する。
次に、荷重を取り除き、無荷重の状態でフックにかけたまま60±2℃の乾燥機で30分間乾燥し、標準状態の試験室に1時間以上放置する。
さらに、(2/1000)×8×2×表示デニールのg数の初荷重をかけ、1分後の長さbを測る。次いで、下記式により、上記のa、bを用いて捲縮伸長率を算出する。試験回数は2回以上とし、その平均値で表す(小数点以下1桁まで)。
捲縮伸長率(%)={(a−b)/a}×100
(8)保温率
図2に示すカトーテック社製のサーモラボIIを用い、20℃、65%RHの環境下で、BT−BOXのBT板(熱板)を人の皮膚温を想定し35℃に設定し、その上に試料を置き、熱移動量が平衡になったときの消費電力量Wを測定する。また、試料を置かない条件での消費電力量W0を計測する。以下の式で保温率を計算する。
保温率(%)={(W0−W)/W0}×100
BT板は、サイズ10cm×10cmであるが、試料は20cm×20cmとする。通常は試料を熱板に接触させて測定するが、ここでの保温率は熱板の上に断熱性のある発砲スチロール等のスペーサーを設置して試料との空隙を5mm設けて計測を行なう。
(9)蓄熱保温性
20℃、60%RHの恒温室内において、10cm角の穴の開いた鉄板に穴の縁に沿って5mm幅の両面テープを貼り付けて、穴をふさぐように測定生地を皺にならないように両面テープで貼り付ける。測定生地を貼り付けた側から鉄板の正面1mの距離に東芝製500W型レフランプRF220V450WHCを設置する。
また、測定生地裏から1mの距離に日本電子社製赤外センサー:サーモビュアを設置する。レフランプ照射を開始して約3分後に反対側の測定試料の表面温度を測定して、照射前に比べた生地の上昇温度(℃)を蓄熱保温性として表す。
(実施例1)
酸化チタンを2.0質量%含有する、固有粘度〔η〕=0.635のポリエチレンテレフタレートを、紡糸温度275℃、引取り速度3100m/分で溶融紡糸してモノフィラメントを得て、丸断面の高配向未延伸糸であるポリエステルマルチフィラメントを作製した(総繊度125dtex、フィラメント数72)。
このマルチフィラメントを、三菱重工製スピンドル仮撚機LS−6を用いて高捲縮条件で延伸仮撚加工して84dtexの延伸仮撚糸を得た。仮撚条件は、糸速度108m/min、延伸倍率1.634,加撚ヒーター温度220℃、スピンドル回転数396100rpm、そのときのスピンドル前後の張力T1及びT2は25g/50gであった。仮撚方向はS方向、Z方向のそれぞれを作製した。
この高捲縮糸の捲縮伸張率は54%であった。その高捲縮糸を33インチ、28ゲージのダブルニット機を使い、シリンダー側、ダイヤル側の両方に高捲縮糸を供給して編成した。その際、仮撚方向SZが一本ずつ交互に配列されるように、クリールにS糸及びZ糸を配置した。編組織はノンランスムースとした。出来上がった生機の密度は縦方向70個/inch、横方向38個/inchであった。
得られた生機を以下のようにして精練した。
液流染色機(日阪製作所製、NSタイプ;浴比1:15)を用いて、下記精練処方で処理して、95℃×30分で湯洗を3回、次いで水洗を行った。その後、染色機から編地を取り出して遠心脱水した後、シュリンクサーファードライヤー(ヒラノテクシード製)を用いて乾燥(120℃×3分)を行なった。
(精練処方)
・里田加工製 ノニゾールN,1g/L
・日華化学製 ネオクリスタル CG1000,0.5g/L
・ソーダ灰 0.5g/L
その後、チャンバー温度180℃、処理時間30秒の条件でヒラノテクシード製ピンテンターを用いて中間セットを行った。その際、テンター幅は編地を引っ張り過ぎないように働き幅を設定し、縦方向にも十分オーバーフィードを掛けて編地が伸びないように注意した。
次に、以下のようにして染色した。
液流染色機(日阪製作所製、NSタイプ;浴比1:15)を用いて、下記の染色処方で130℃×45分で編地を染色した。次いで、湯洗を3回行った後、水洗して編地を取り出した。
(染色処方)
・酢酸0.2g/L,pH=4に調整
・分散均染剤(明成化学製、ディスパーN700) 0.5g/L
・日華化学製 ネオクリスタル GC1000,0.5g/L
・蛍光染料 0.25%omf
染色後、遠心脱水、乾燥(120℃×3分)を行ない、下記の仕上処方で仕上げ剤を付与した。仕上げ剤のピックアップは100%であった。液付け後の乾燥は120℃×2分で行った。
(仕上処方)
・高松油脂製 SR1800,1.5%omf
・明成化学製 HP600,0.5%
その後、最終セットをピンテンター160℃×2分の条件で行ない、性量調整し、最終生地を得た。その際にもテンター幅は編地の皺を取る程度の幅として、仕上げた編地を縦横に極力引っ張らない用に注意した。
得られた編地は、編上りに比べて経緯密度が大きく入って、仕上密度が縦方向79個/inch、横方向45個/inchと高密度に仕上がった。仕上げ編地の特性(目付、厚み、防風性(通気度)、縦方向の伸度、縦方向の伸張回復率、保温率、蓄熱保温性)を測定した。それらの測定結果を編地の構成とともに表1に示す。
(実施例2)
酸化チタンを2.0質量%含有する、固有粘度〔η〕=0.635のポリエチレンテレフタレートを、紡糸温度275℃、引取り速度3100m/分で溶融紡糸してモノフィラメントを得て、丸断面の高配向未延伸糸であるポリエステルマルチフィラメントを作製した(総繊度:84dtex、フィラメント数72)。
このマルチフィラメントを、三菱重工製スピンドル仮撚機LS−6を用いて高捲縮条件で延伸仮撚加工して56dtexの延伸仮撚糸を得た。仮撚条件は、糸速度88m/min、加撚ヒーター温度220℃、延伸倍率1.582、スピンドル回転数396100rpmであった。仮撚方向はS方向、Z方向のそれぞれを作製した。
この高捲縮糸の捲縮伸張率は48%であった。その高捲縮糸を33インチ、32ゲージのダブルニット機を使い、シリンダー側、ダイヤル側の両方に高捲縮糸を供給して編成した。その際、仮撚方向SZが一本ずつ交互に配列されるように、クリールにS糸及びZ糸を配置した。編組織はノンランスムースとした。出来上がった生機の密度は縦方向66個/inch、横方向43個/inchであった。
それ以降は実施例1と同様の工程条件にて精練、染色加工を行った。但し、中間セットと最終セットのテンター幅及びオーバーフィード条件は、編地の性量に合わせて引っ張り過ぎないように調整した。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
(実施例3)
高捲縮仮撚糸に用いるポリエチレンポリテレフタレートの酸化チタン含有率を0.3質量%にした以外は、実施例1と全く同様の工程条件にて仕上げ編地まで作製した。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
(実施例4)
染色加工の仕上工程で、下記に示す遠赤外線吸収加工を施した以外は実施例1と同様の工程条件にて仕上げ編地を作製した。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
(加工処方)
・オルガノゾル系アンチモン酸亜鉛赤外線吸収剤 20質量部
(平均一次粒子径15〜20nm)
・スルコハク酸ジオクチルナトリウム(界面活性剤) 4質量部
・工業用水 36質量部
・アクリル系バインダー(樹脂分50質量%) 36質量部
・メラミン硬化樹脂(樹脂分100質量%) 4質量部
(加工方法)
上記加工処方の配合品をボールミルにて24時間分散させて、更に工業用水で10倍に希釈して熱線吸収加工液を作成した。実施例1の染色上りの編地をこの液に浸漬して、マングルを用いて生地に対する液付着量70%で絞り、110℃で2分間乾燥して、更に170℃で1分間加熱処理した。乾燥及び加熱処理によって編地密度が極力変化しないように、加熱処理のテンター幅及びオーバーフィードを調整して加工した。
(比較例1)
実施例1において、高捲縮仮撚糸の代わりに本発明の捲縮伸張率の範囲より低い通常捲縮の仮撚糸を用いる以外は実施例1と同様に行った。染色加工では生地の染上り性量に合わせてテンター幅及びオーバーフィードを調整した。なお、該通常捲縮仮撚糸の加工条件は以下の通りである。
スピンドル仮撚機(三菱重工製、LS−6)を用いて、糸速度を122m/min、加撚ヒーター温度を190℃、スピンドル回転数を403800rpm、解撚ヒーター温度を200℃に制御した。また、そのときのスピンドル前後の張力T1及びT2は26g/56gであった。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、高捲縮仮撚糸をSZ一本ずつ交互配列に使わず、仮撚方向がZ撚の糸のみを使用して、実施例1と同様に行った。染色加工では生地の性量に合わせてテンター幅及びオーバーフィードを調整した。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例1と同様に、高捲縮仮撚糸の代わりに通常捲縮の仮撚糸を用いた。
その通常捲縮糸を33インチ、28ゲージのダブルニット機を使い、シリンダー側、ダイヤル側の両方に通常捲縮糸のみを供給して編成した。その際、仮撚方向がZ撚り糸のみを用いた。編組織は鹿の子とした。その後、実施例1と同様に行ったが、染色加工では生地の性量に合わせてテンター幅及びオーバーフィードを調整した。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例4において、高捲縮仮撚糸の代わりに通常捲縮の仮撚糸を用い、さらに、仮撚方向がZ撚の糸のみを使用した以外は実施例4と同様に行い、遠赤外線吸収加工を施した。尚、染色加工では生地の性量に合わせてテンター幅及びオーバーフィードを調整した。編地の構成と特性の測定結果を表1に示す。
表1から、実施例1〜3の編地は、高捲縮仮撚糸と仮撚方向SZ一本ずつ交互配列とによって高い保温率、蓄熱保温性、防風性、伸度、伸張回復性を持つことがわかる。また、実施例4の編地のように、遠赤外線加工を施すと、さらに高い蓄熱保温性を得ることができることもわかる。一方、仮撚方向SZ一本ずつ交互配列を採用しているが高捲縮仮撚糸を使用しなかった比較例1は、高い防風性が得られず、伸張回復率及び保温率も低かった。また、高捲縮仮撚糸を使用しているが仮撚糸方向SZ一本ずつ交互配列を使用しなかった比較例2は、高い防風性が得られず、伸度及び保温率も低かった。また、高捲縮仮撚糸を使用せず、仮撚方向SZ一本ずつ交互配列も採用していない比較例3及び4は、高い防風性が得られず、伸張回復率及び保温率も低かった。
本発明の保温編地は、高い防風性、伸張性、伸張回復性、保温性、及び蓄熱保温性を持つので、着用快適性に優れ、インナーウエアー、アウターウエアー、スポーツウエアーなどの幅広い繊維製品に使用するのに有用である。
本発明の編地のSZ撚りの仮撚捲縮糸の一本ずつ交互配列の構成を示す。 保温率を測定するための装置の説明図である。
符号の説明
1 BT板(熱板)
2 メインヒーター
3 ガイドヒーター
4 ゲージセンサー(温度検出)
10 BT−BOX
20 BT温度中継ボックス
30 アンプ
40 積分計

Claims (6)

  1. 単層または2層以上からなる編地であって、少なくとも1層の編地は、S撚り及びZ撚りの2種類のポリエステル仮撚捲縮糸を一本ずつ交互に配列して構成されてなり、かつ該仮撚捲縮糸は40〜70%の捲縮伸張率を有することを特徴とする保温編地。
  2. 50%以上の保温率、90cc/cm・s以下の通気度、20〜50%の縦方向の伸度、及び85%以上の縦方向の伸張回復率を有することを特徴とする請求項1記載の保温編地。
  3. 保温編地が、100〜250g/mの目付及び0.5〜1.2mmの厚みを有し、4℃以上の蓄熱保温性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の保温編地。
  4. 編地の表面が全てニットループで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の保温編地。
  5. 保温編地が、蓄熱加工を施され、5℃以上の蓄熱保温性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の保温編地。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の保温編地を用いてなる繊維製品であって、インナーウエアー、アウターウエアー、およびスポーツウエアーからなる群より選択されることを特徴とする繊維製品。
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