JP4214626B2 - 強撚織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレッチ性およびドライ感に優れた強撚織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)繊維は耐熱性、機械的特性に優れるのみならず、糸加工が容易であり最も汎用的な合成繊維である。しかしながら、PET繊維使いの布帛では、天然繊維使いの布帛に比べ審美性、風合いが劣ってしまう。このため、天然繊維をターゲットとし、繊維や布帛設計に対し様々な技術開発がなされてきた。布帛設計の技術開発の一環として、強撚織物にも様々な工夫がなされてきた。強撚織物とは、ポリエステルに撚り係数Kが15000以上の強撚−撚り止めセットを施して製織することによって得られるが、製織後に撚り止めセットより高い熱履歴を与えることにより、解撚を発生させ布帛表面に微細な糸形態斑、いわゆるシボ立てにより絹織物の持つ繊細な外観やドライ感を狙ったものである。そして、強撚織物に対する技術開発は如何に美しいシボを立てるかということに焦点が絞られてきたのであった。
【0003】
しかしながら、PET繊維使いの強撚織物では、ある程度良好なシボ立ちが得られるのであるが、PET繊維の初期引っ張り抵抗度が90〜100cN/dtex程度と高く、繊維基質として硬いため、織物風合いが硬化してしまう問題があった。このため、衣料にした場合、布帛が硬いためドレープ性が低く、美しいシルエットを表現できず安物イメージが払拭できないという問題があった。さらに、織物としてのストレッチ性が低いため体の動きに対する追従性が悪いといった実用特性にも問題があった。特に最近はストレッチはスポーツ用途のみでなく、衣料の快適性を向上させるための基本機能として認知されてきており、シャツ、パンツ、スカート、スーツ等にも広く求められるものとなっている。さらに、快適性のみならず、布帛のドレープ性や可縫製を向上させるためにも重要な機能であることが認知されてきており、ストレッチは欠くべからざるものとなってきつつある。
【0004】
また、ドライ感についても満足できるレベルではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ソフトで、ストレッチ性およびドライ感に優れた強撚織物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の本発明の目的は、ウースター斑が1.0%以下で沸騰水収縮率の標準偏差が0.40以下である実質的にポリプロピレンテレフタレートからなる繊維糸条に撚り係数Kが15000以上の強撚を施した繊維糸条を経糸および/または緯糸に用いた織物であって、30%伸長時の伸長回復率が95%以上、伸長応力が392cN/cm以下であることを特徴とする強撚織物により達成される。
ただし、撚り係数K=T×D1/2T:糸長1m当たりの撚数D:繊維糸条の繊度(デシテックス×0.9)である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明でいうポリプロピレンテレフタレート(以下PPTと略す)とは、1,3−プロパンジオールとテレフタル酸の重縮合により合成されるポリエステルである。また、ジオール成分および酸成分の一部が各々15mol%以下の範囲で他の共重合可能な成分で置換されたものであってもよい。なお、共重合成分がポリエチレングリコールの場合は15重量%以下であることが好ましい。また、これらは他ポリマ、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していてもよい。
【0008】
本発明の強撚織物は、撚り係数K15000以上の強撚を施したPPT繊維糸条を経糸および/または緯糸に使用した織物である。織物に充分なストレッチ性、ドライ感を与えるためにはKは15000以上とすることが重要である。Kは20000以上であれば織物のストレッチ性が向上するため、ドレープ性が高くなり好ましい。また、強撚織物の場合、残留トルクが過度に強く発現し、織物表面が荒れる場合があるので、PPT強撚糸は経糸および/または緯糸においてS撚り/Z撚りの交互配置とすることが好ましい。
【0009】
また、強撚の原糸として使用するPPT繊維糸条の初期引っ張り抵抗度は30cN/dtex以下であれば、強撚織物であっても布帛がソフトとなり、優れたドレープ性を有する織物とすることが可能となるので好ましい。また、充分な織物引き裂き強力を得るためには原糸として使用するPPT繊維糸条の強度は3.0cN/dtex以上であることが好ましい。また、強撚糸の撚り止めセットや織物の加工工程での収縮斑による布帛表面の荒れを防ぐためには、PPT繊維糸条の沸騰水収縮率は15%以下であることが好ましい。
【0010】
ところで、強撚織物では強撚糸の解撚トルクを利用してシボを立てるものであるが、この時、解撚斑が発生すると布帛表面が荒れたり染色斑が発生するという問題が発生する。そのため、強撚用原糸として用いる繊維は糸斑が小さいことが重要な要件となる。この問題を解決するためには、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差は0.40以下であることが重要である。糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差は好ましくは0.30以下である。加えて、糸長手方向の太細斑を示すウースター斑は1.0%以下であることが重要である。
【0011】
また、原糸として使用するPPT繊維の繊度は特に限定されるものではないが、単糸繊度10dtex以下であることが好ましい。なお、通常のPET繊維では単糸繊度2.5dtex以下でないと布帛の粗硬化が顕著となってしまうが、本発明ではソフト性に優れるPPT繊維を使用するため単糸繊度をPET繊維に比べ太く設定しても充分なソフト性が得られる。また、原糸として使用するPPT繊維の単糸横断面形態も特に限定されるものではなく、丸断面、扁平断面、多葉断面、中空断面等目的に応じて自由に設定することが可能である。
【0012】
また、体の動きに対する追従性を高め、快適な織物とするためには織物のストレッチ性が高いことが重要である。通常の衣料に要求される織物伸びは20〜30%程度あれば充分であると言われているため、本発明で言うストレッチ性は、織物を30%伸長した場合の伸長回復率、伸長応力で評価する。ここで、伸長回復率とは荷重−伸長ヒステリシス曲線における回復率を示すものであり(図1)、値が高いほど伸長に対し可逆的な変化をする、すなわちストレッチ性が高いことを示す。また、伸長応力とは織物を30%伸長した場合の発生応力であり、小さいほど伸長に対する抵抗力が小さい、すなわち楽に衣服が伸びるソフトストレッチ性が高いことを示すものである。これは、快適性には重要な特性である。本発明では伸長回復率は95%以上とするものであり、好ましくは97%以上である。また、伸長応力は392cN/cm(400gf/cm)以下とするものであり、好ましくは196cN/cm(200gf/cm)以下、より好ましくは98cN/cm(100gf/cm)以下である。
【0013】
このように、本発明は従来のPET繊維使い強撚織物にはないソフトストレッチ性を示すのであるが、これに吸湿性を付加する目的でセルロース系繊維を混用するとさらに風合いが向上し、好ましい。また、セルロース系繊維として接触冷感を有するビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンを混用すると、さらにドライ感が向上し好ましい。混用方法は特に限定されるものではないが、PPT繊維糸条中にセルロース系繊維を混繊したり、織物中に経糸および/または緯糸として、セルロース系繊維糸条を交織したりすることができるが、経糸にセルロース系繊維糸条を使用する交織が、セルロース系繊維の特徴を発現させやすく好ましい。セルロース系繊維糸条の混率は布帛で、10〜70重量%であることが好ましい。
【0014】
本発明の織物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下の製造方法で得ることができる。まず、極限粘度[η]≧1.0のPPTを紡糸温度260℃で紡糸し、2500m/分以上の速度で引き取る。その後、延伸熱処理を行い強撚用原糸となるPPT延伸糸を得る。この時、引き取った繊維をそのまま延伸熱処理後巻き取る、いわゆる紡糸直接延伸法や、一旦繊維を巻き取り、その後改めて延伸熱処理を施すいわゆる2工程法を採用することができる。
【0015】
ここで、PPT繊維は紡糸や延伸し繊維を巻き取った後に、パッケージ上で顕著な遅延収縮が発生してしまうという問題が生じる。これにより、パッケージ内層部、外層部で収縮斑による物性差が発生してしまうのみならず、外層部、内層部の中でも物性差が発生し、糸斑が劣悪となってしまうのである。このため、本発明においては、遅延収縮を抑制するため紡糸や延伸時の巻き取り前に弛緩処理を行い、遅延収縮を吸収、消去しておくことが重要である。また、紡糸速度としては2500m/分以上として結晶化を進め、遅延収縮を抑制することが重要である。
【0016】
図2は、未延伸糸巻き取りの様子を示す概略図である。図2において、1はスピンブロックであり、該スピンブロック1には、不織布よりなるフィルター2および口金3が装着されている。4はチムニーであり、口金3より吐出された糸条5を冷却している。紡糸糸条5は給油ガイド6により紡糸油剤を付与され、交絡ガイド7により交絡が付与され、第1ゴデットローラー8および第2ゴデットローラー9を介して巻き取り糸10として巻き取られる。
【0017】
また、図3は、延伸熱処理の様子を示す概略図である。図3において、未延伸糸11は、フィードローラー12とドローローラー15との間に設けられた第1ホットローラー13、第2ホットローラー14で延伸熱処理され、延伸糸16として巻き取られる。
【0018】
また、図4は、未延伸糸を紡糸/巻き取り過程で熱処理する様子あるいは紡糸直接延伸の様子を示す概略図である。図4において、1はスピンブロックであり、該スピンブロック1には、不織布よりなるフィルター2および口金3が装着されている。4はチムニーであり、口金3より吐出された糸条5を冷却している。紡糸糸条5は給油ガイド6により紡糸油剤を付与され、交絡ガイド7により交絡が付与され、第1ホットネルソンローラー17および第2ホットネルソンローラー18および第3ホットネルソンローラー19を介して巻き取り糸20として巻き取られる。
【0019】
本発明においては、例えば、図2の装置で3000m/分程度の未延伸糸を紡糸し巻き取る際には、第2ゴデットローラー(以下ゴデットローラーをGDと略す)9と巻き取り糸10の間で弛緩させることが好ましいが、弛緩率は1〜5%とすることが好ましい。なお、1GD8と2GD9の間で弛緩処理することももちろん可能である。また、図4の装置で3000m/分程度の未延伸糸を紡糸し巻き取る際には、第2ホットネルソンローラー(以下ホットネルソンローラーをHNRと略す)18で70〜130℃程度で定長熱処理することが好ましい。さらに、図4の装置で紡糸直接延伸を行う場合には、2HNR18と3HNR19の間で5〜15%程度弛緩させることが好ましい。図4の装置の場合は、もちろん3HNRで熱処理を付加することや、3HNRと巻き取り糸20の間で弛緩処理を行うことも可能である。また、延伸の場合には第2ホットローラー14とドローローラー15の間で弛緩させることが好ましいが、弛緩率は1〜10%とすることが好ましい。なお、ドローローラー15と延伸糸16の間で弛緩することももちろん可能である。
【0020】
このようにして得た強撚用原糸にダブルツイスターなどを用いて強撚を施し、次いで例えば95℃スチームにより撚り止めセットを施す。その後、製織、精練、中間セットを施し、必要に応じてアルカリ減量、染色を施し、本発明の織物を得ることができる。
【0021】
本発明の織物は、ブラウス、シャツ等の薄地からパンツ、スカート、コート等の中厚地まで衣料用途全般に使用することが可能である。さらに、衣料用途のみだけでなく、靴、特にストレッチブーツのような資材用途にも適用可能である。なお、本発明は強撚織物であるが、本発明で使用したPPT強撚糸をニットに適用しても優れたストレッチ性ニットが得られ好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.極限粘度[η]
オルソクロロフェノール中25℃で測定した。
B.伸長回復率
JIS L1096において、サンプルの伸長(L10)を30%伸長とした以外は、JIS L1096の伸長回復率測定法のA法にしたがい伸長回復率を求めた(図1、JIS L1096から転載)。この時のサンプルのつかみ間隔は20cmとした。
C.伸長応力
JIS L1096の6.14.1のA法にしたがい荷重−伸長曲線を描かせた。そして、30%伸長時の応力を求めた。この時のサンプルのつかみ間隔は20cmとした。
D.強度および初期引っ張り抵抗度
JIS L1013にしたがい測定した。
E.沸騰水収縮率
沸騰水収縮率(%)=[(L0 −L1 )/L0 )]×100
L0 :糸をかせ取りし、初荷重0.09cN/dtex下で測定したかせの原長
L1 :L0 を測定したかせを実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、風乾後初荷重0.09cN/dtex下でのかせ長
F.糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差
東レエンジニアリング社製FTA−500を用いて、繊維の糸長手方向の沸騰水収縮率の連続測定を行った。この時、糸の供給速度20m/分、走行糸応力0.01cN/dtexで長さ15.5cmの100℃に加熱した湿熱処理装置に通した。そして10分間測定を行い、収縮率の標準偏差を求めた。この時、測定糸長3.3cm毎に生の収縮率をポイントデータとして取り込み、これを6点合わせて平均し1データとした。そしてそれを1000データ集め標準偏差を計算した。このようにして、ノイズの測定値への影響を抑制した。
G.ウースター斑(U%)
Zellweger社製USTER TESTER 1 ModelCを使用し、200m/分の速度で糸を給糸しながらノーマルモードで測定を行った。
H.カバーファクター(CF)
織物の経方向、緯方向のカバーファクターをCF=N×D1/2 で計算し、経方向のCFと緯方向のCFの和を織物のCFとした。
【0023】
N:織物中の糸密度(本数/インチ)
D:繊維糸条の繊度(デシテックス×0.9)
I.布帛風合い評価
実施例、比較例で得られた織物に、98℃でリラックス精練を施し、180℃で中間セットした。さらに常法により10%のアルカリ減量処理を施した後染色、180℃で仕上げセットを行った。このようにして得られた布帛を、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面の美しさについて1〜5級で官能評価した。3級以上を合格とした。
実施例1
[η]=1.00の酸化チタンを含まないPPTを紡糸温度260℃で丸断面吐出孔(48ホール)から紡糸し、3000m/分の速度で一対のゴデットローラー(以下GDと略す)を介し、巻き取った(図2)。その後、一対のホットローラー(以下HRと略す)を有する延伸機を利用し、延伸熱処理を行った(図3)。この時、1HR温度を70℃、2HR温度を130℃、1HR/2HR間延伸倍率を1.50倍とした。なお、巻き取った後の遅延収縮によるパッケージ端面周期斑、パッケージ内層、外層の物性斑を抑制するため、紡糸/巻き取り時には第2GDと巻き取りの間で2%弛緩させ、延伸/巻き取り時には2HR/ドローローラー間で3%弛緩させて巻き取った。
【0024】
得られた延伸糸は111dtex、48フィラメント、強度3.2cN/dtex、初期引っ張り抵抗度20cN/dtex、沸騰水収縮率12%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.35、ウースター斑0.8%であった。
【0025】
このPPT延伸糸にK=20000の強撚を施し、95℃スチームで撚り止めセットを行った。経糸として沸騰水収縮率が−2%の低収縮PET繊維(55dtex、24フィラメント)と18%の高収縮PET繊維(33dtex、12フィラメント)からなる異収縮混繊糸(撚り数200T/m)を114本/インチで整経し、該PPT強撚糸を緯糸とし、S撚、Z撚糸を交互に105本/インチで打ち込み、3/1ツイルを製織した。この織物のカバーファクターは2065であった。これを風合い評価したところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れていた。また、この染色した織物の緯糸方向のストレッチ性を評価したところ伸長回復率98%、伸長応力79cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。また、経糸に使用した異収縮混繊糸の効果によりふくらみ感にも優れたものであった。
【0026】
【表1】
【0027】
比較例1
PPTに代えて[η]=0.63の酸化チタンを含まないPETを紡糸温度290℃で丸断面吐出孔(48ホール)から紡糸し、第2GDと巻き取りの間で0.5%弛緩させた以外は実施例1と同様に未延伸糸を巻き取った。その後、1HR温度を90℃、1HR/2HR間延伸倍率を1.80倍、2HR/DR間で0.3%ストレッチさせて巻き取った以外は実施例1と同様に延伸を行った。得られた延伸糸は111dtex、48フィラメント、強度4.1cN/dtex、初期引っ張り抵抗度90cN/dtex、沸騰水収縮率7%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.35、ウースター斑0.8%であった。
【0028】
このPET延伸糸を用い実施例1と同様に織物を作成した後、風合い評価を行ったところ、ソフト感に乏しいものであった。また、伸長回復率45%、伸長応力3500cN/cmであり、ストレッチ性に乏しく体の動きに追従しにくい織物であった(表1)。
実施例2
PPT延伸糸の撚り係数Kを15000とした以外は実施例1と同様に織物を作成し、評価を行ったところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れ、また伸長回復率95%、伸長応力350cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。また、経糸に使用した異収縮混繊糸の効果によりふくらみ感にも優れたものであった。
比較例2
PPT延伸糸の撚り係数Kを10000とした以外は実施例1と同様に織物を作成し、評価を行ったところ、ソフト感、ドライ感に劣り、また伸長回復率75%、伸長応力1020cN/cmであり、ストレッチ性に乏しいものであった(表1)。
実施例3
織り組織を平織りとした以外は実施例1と同様に織物を作成し、評価を行ったところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れ、また伸長回復率97%、伸長応力94cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。また、経糸に使用した異収縮混繊糸の効果によりふくらみ感にも優れたものであった。
実施例4
口金、吐出量を変更した以外は実施例1に準じ、紡糸、延伸を行い、111dtex、24フィラメント、丸中空断面(中空率25%)、強度3.3cN/dtex、初期引っ張り抵抗度20cN/dtex、沸騰水収縮率12%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.40、ウースター斑1.0%のPPT延伸糸を準備した。
【0029】
このPPT延伸糸を用い、糸使いを経糸、緯糸とも2糸条合糸使い(経糸176dtex、72フィラメント、緯糸222dtex、48フィラメント)とした以外は実施例3と同様に織物を作成し、評価を行ったところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れ、また伸長回復率97%、伸長応力194cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。また、経糸に使用した異収縮混繊糸の効果によりふくらみ感にも優れたものであった。さらに中空断面による軽量感にも優れていた。
実施例5
口金、吐出量を変更した以外は実施例1に準じ、紡糸、延伸を行い、83dtex、24フィラメント、三葉断面、強度3.3cN/dtex、初期引っ張り抵抗度20cN/dtex、沸騰水収縮率11%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.36、ウースター斑1.0%のPPT延伸糸を準備した。
【0030】
このPPT延伸糸にK=20000の強撚を施し、95℃スチームで撚り止めセットを行った。経糸として沸騰水収縮率が−2%の低収縮PET繊維(33dtex、18フィラメント)と18%の高収縮PET繊維(33dtex、12フィラメント)からなる異収縮混繊糸(撚り数200T/m)を120本/インチで整経し、該PPT強撚糸を緯糸とし、S撚、Z撚糸を交互に70本/インチで打ち込み、デシンを製織した。この織物のカバーファクターは1536であった。この織物の評価を行ったところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れ、また伸長回復率97%、伸長応力80cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。また、経糸に使用した異収縮混繊糸の効果によりふくらみ感にも優れたものであった。
【0031】
比較例3
紡糸速度を1500m/分、延伸倍率を2.90倍とし、紡糸および延伸の巻き取り時に弛緩処理を行わず、沸騰水収縮率を低下させるため延伸の2HR温度を140℃とした以外は、実施例1と同様に紡糸、延伸を行った。この時は顕著な遅延収縮が発生し、紡糸/巻き取り時には遅延収縮によりパッケージ上で糸が巻き締まりドッフ不可能な場合があったり、パッケージが端面から崩れる場合があった。また、延伸時には糸切れが頻発した。得られた延伸糸は111dtex、48フィラメント、丸断面、強度3.3cN/dtex、初期引っ張り抵抗度30cN/dtex、沸騰水収縮率15%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.60、ウースター斑2.1%と糸斑の大きいものであった。
【0032】
この強撚用PPT延伸糸を使用し、実施例1と同様に織物を作成し、評価を行ったところ、染め斑、布帛表面美しさが大きく劣っていた。
実施例6
経糸および緯糸を実施例1で使用したPPT強撚糸としてジョーゼットを製織した。この時経糸密度は101本/インチ、緯糸密度は90本/インチとし、織物のカバーファクターは1910であった。この織物の評価を行ったところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れ、また伸長回復率97%、伸長応力82cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。
実施例7
[η]=1.00の酸化チタンを含まないPPTを紡糸温度260℃で丸断面吐出孔(48ホール)から紡糸し、3000m/分の速度で引き取り、そのままホットネルソンローラー(以下HNRと略す)を介し熱処理を行った後巻き取った(図4)。この時、1HNR温度を室温、2HNR温度を100℃、3HNR温度を室温、1HNR/2HNR間延伸倍率を1.00倍とした。また、巻き取った後の遅延収縮によるパッケージ端面周期斑、パッケージ内層、外層の物性斑を抑制するため、2HNR/3HNR間で2%弛緩させて巻き取った。なお、糸はHRに2回巻き付けた。そして、得られた熱処理未延伸糸を実施例1と同様に延伸した。得られた延伸糸は111dtex、48フィラメント、強度3.2cN/dtex、初期引っ張り抵抗度20cN/dtex、沸騰水収縮率10%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.35、ウースター斑0.8%であった。
【0033】
このPPT延伸糸にK=20000の強撚を施し、95℃スチームで撚り止めセットを行った。
【0034】
経糸としてセルロース系繊維である旭化成工業(株)製銅アンモニアレーヨン“キュプラ”(83dtex、45フィラメント)と太細を有するPET繊維(55dtex、24フィラメント、丸断面、沸騰水収縮率8%)を300T/mで合撚した複合糸を90本/インチで整経し、該PPT強撚糸を緯糸とし、S撚、Z撚糸を交互に105本/インチで打ち込み、3/1ツイルを製織した。この織物のカバーファクターは2056であった。この織物を風合い評価したところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れていた。また、この染色した織物の緯糸方向のストレッチ性を評価したところ伸長回復率98%、伸長応力85cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。さらに、銅アンモニアレーヨン繊維特有の大きな接触冷感による高度なドライ感が発現しただけでなく、吸湿性にも優れておりポリエステル繊維だけでは得られない優れた風合いであった。
実施例8
[η]=1.00の酸化チタンを含まないPPTを紡糸温度260℃で丸断面吐出孔(48ホール)から紡糸し、3000m/分の速度で引き取り、そのまま紡糸直接延伸法により巻き取った(図4)。この時、1HNR温度を70℃、2HNR温度を130℃、1HNR/2HNR間延伸倍率を1.63倍とした。また、巻き取った後の遅延収縮によるパッケージ端面周期斑、パッケージ内層、外層の物性斑を抑制するため、2HNR/3HNR間で10%弛緩させて巻き取った。なお、糸はHNRに6回巻き付けた。得られた延伸糸は111dtex、48フィラメント、強度3.6cN/dtex、初期引っ張り抵抗度20cN/dtex、沸騰水収縮率7%、糸長手方向の沸騰水収縮率の標準偏差0.25、ウースター斑0.8%であった。
【0035】
経糸としてセルロース系繊維である旭化成工業(株)製ビスコースレーヨン“Silmax”(83dtex、38フィラメント)と太細を有するPET繊維(55dtex、24フィラメント、丸断面、沸騰水収縮率8%)を300T/mで合撚した複合糸を用いた以外は実施例8と同様に製織を行った。これを風合い評価したところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れていた。また、この染色した織物の緯糸方向のストレッチ性を評価したところ伸長回復率98%、伸長応力86cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。さらに、ビスコースレーヨン繊維特有の優れた反発感、接触冷感による優れたドライ感が発現しただけでなく、吸湿性にも優れておりポリエステル繊維だけでは得られない優れた風合いであった。
実施例9
経糸としてセルロース系繊維である東洋紡績(株)製ポリノジック繊維“タフセル”(単糸繊度1.7dtex、丸断面、平均繊維長38mm、平均重合度500)と太細を有するPET繊維(55dtex、24フィラメント、丸断面、沸騰水収縮率8%)を300T/mで合撚した複合糸を用いた以外は実施例8と同様に製織を行った。これを風合い評価したところ、ソフト感、ドライ感、染め斑、布帛表面美しさに優れていた。また、この染色した織物の緯糸方向のストレッチ性を評価したところ伸長回復率98%、伸長応力85cN/cmであり、優れたストレッチ性を示した(表1)。さらに、ポリノジック繊維特有の優れた反発感が発現しただけでなく、吸湿性にも優れておりポリエステル繊維だけでは得られない優れた風合いであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明のソフトで、ストレッチ性およびドライ感に優れた強撚織物により快適な衣料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】伸長回復率測定時の荷重−伸長曲線の概略図である。
【図2】未延伸糸巻き取りの様子を示す概略図である。
【図3】延伸熱処理の様子を示す概略図である。
【図4】紡糸直接延伸の様子を示す概略図である。
【符号の説明】
1:スピンブロック
2:不織布フィルター
3:口金
4:チムニー
5:糸条
6:給油ガイド
7:交絡ガイド
8:第1ゴデットローラー
9:第2ゴデットローラー
10:巻き取り糸
11:未延伸糸
12:フィードローラー
13:第1ホットローラー
14:第2ホットローラー
15:ドローローラー
16:延伸糸
17:第1ホットネルソンローラー
18:第2ホットネルソンローラー
19:第3ホットネルソンローラー
20:巻き取り糸
Claims (6)
- ウースター斑が1.0%以下で沸騰水収縮率の標準偏差が0.40以下である実質的にポリプロピレンテレフタレートからなる繊維糸条に撚り係数Kが15000以上の強撚を施した繊維糸条を経糸および/または緯糸に用いた織物であって、30%伸長時の伸長回復率が95%以上、伸長応力が392cN/cm以下であることを特徴とする強撚織物。
ただし、撚り係数K=T×D1/2
T:糸長1m当たりの撚数
D:繊維糸条の繊度(デシテックス×0.9) - セルロース系繊維を混用していることを特徴とする請求項1記載の強撚織物。
- ポリプロピレンテレフタレート繊維の横断面形状が中空あるいは多葉断面から選ばれるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の強撚織物。
- ポリプロピレンテレフタレート繊維の沸騰水収縮率が15%以下であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の強撚織物。
- ポリプロピレンテレフタレート繊維が、紡速2500m/分以上の速度で紡糸され、定長熱処理された後、弛緩されて巻き取られ、これに延伸が施された繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の強撚織物。
- ポリプロピレンテレフタレート繊維が、紡速2500m/分以上の速度で紡糸され、紡糸直接延伸された後、弛緩されて巻き取られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の強撚織物。
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