JP5175857B2 - 融着性面ファスナー - Google Patents

Description

本発明は、超音波（高周波を含む）融着または熱融着により被着体と融着し得る融着性面ファスナーに関する。

今日、面ファスナーは生活用品および産業用品に広く使用されている。面ファスナーは、被着体に取り付けられ、被着体に他の物体を脱着可能に係止する点が最大の特長である。面ファスナーは、２枚の被着体を連結するためにも一般的に用いられている。例えば、一方のカーペットの裏面に第１の面ファスナーをその一部がカーペットの外側にはみ出すように固定し、もう一方のカーペットの裏面に該はみ出した面ファスナーと係合し得る係合素子を有する第２の面ファスナーを固定し、該はみ出した面ファスナーと第２のファスナーとを係合させることにより２枚のカーペットを連結する方法が知られている。

この際の被着体（例えばカーペット）裏面に面ファスナーを固定する方法について、従来より種々検討されている。基布が布製の面ファスナーは縫製可能であることから、被着体も縫製可能であるときは、糸にて縫着することができる。しかし、被着体がプラスチックや金属製のときは縫着では固定できず、接着や融着することが必要となる。また、被着体が縫製可能な素材であっても、その厚みが大きいものである場合には、縫着により固定することも難しい。さらに縫着すると、被着体表面から縫着に使用した糸が目立ち、見かけ上好ましくない場合も多い。

かかる点から、粘着性（接着や融着を含む広い意味）をもつ面ファスナーが提案されている。その一例として、おむつなどの止着部に用いる面ファスナーとして、面ファスナーの表面の一部に粘着剤層を有する面ファスナーが知られており（特許文献１）、また他の例として、面ファスナー層（係合素子のある領域）と粘着剤層が互いに隣接した面ファスナーが提案されている（特許文献２）。
特開平１１−１８１３７２号公報明細書 実用新案登録第３１２７６６８号公報明細書

従来の粘着性をもつ面ファスナーは、基布上に係合素子を有する領域と粘着剤を付設した領域とを有する構造である。この構造は、基布上に係合素子を有する領域と係合素子を有しない領域を設け、該係合素子のない領域の基布に種々の粘着剤や接着フィルムなどの粘着性物質を付設して得られる。従って、基布に、係合素子が立設する領域と立設しない領域を製造する必要があり、面ファスナーの製造の点からは効率が低い。さらにかなり凹凸のある面ファスナー基布に粘着剤を均一に付設するのは、高度な技術が必要で、その製造効率も低い。

また、上記した特許文献２には、係合素子領域の一部に粘着層（接着フィルム）を戴置し、次いで押圧して係合素子を扁平にすると同時に粘着層を係合素子の扁平層を介して基布に圧着した面ファスナーが開示されている。該構造の面ファスナーを得るためには、熱融着性領域を形成するために、まず、接着フィルムをその下にある係合素子を介して基布に圧融着しなければならない。さらに得られた融着性面ファスナーを被着体と融着する際に、再度接着フィルムを熱溶融する必要がある。従って熱融性領域が２回熱融着されるので、被着体に対して使用される融着成分の量は半減することとなる。これでは面ファスナーの製造効率が高いとは言えず、被着体との熱融着力も高いと言えない。

本発明は、上記したような従来技術が有する問題点を解決し、特に融着成分が少なくても確実に被着体に融着一体化できる融着性面ファスナーを供給することを目的とする。すなわち本発明は、編織製の基布の表面に多数の係合素子が立設されている面ファスナーと該面ファスナーに部分的に固定された融着性フィルムからなり、下記領域Ａと領域Ｂからなる融着性領域および領域Ｃを有することを特徴とする融着性面ファスナーに関する。
領域Ａ：係合素子上に融着性フィルムが重ねられており、かつ該融着性フィルムと面ファスナーが融着されている領域、
領域Ｂ：係合素子上に融着性フィルムが重ねられており、かつ該融着性フィルムと面ファスナーが融着されていない領域、
領域Ｃ：係合素子上に融着性フィルムが重ね合わされていない領域。

線状部分融着した融着性フィルムを備えた本発明の融着性面ファスナーの１例を示す概略平面図。 図１のＬ−Ｌ線における断面図。 実施例１で作製した融着性面ファスナーを示す概略平面図。 本発明の融着性面ファスナーを用いて２つのカーペットを連結する場合の連結部を示す概略断面図。

本発明の融着性面ファスナーの製造には、従来公知のフック（あるいはキノコ）状係合素子を有する布製面ファスナー、ループ状係合素子を有する布製面ファスナー、またはフック状およびループ状係合素子を併有する布製面ファスナー等のいずれも使用可能であり、クラレファスニング社、ＹＫＫ社、アプリックス社、ベルクロ社などから市販されている布製面ファスナーが広く使用できる。面ファスナーの基布および係合素子を構成する繊維としては、通常、ポリアミド系繊維またはポリエステル系繊維であり、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維も使用できる。もちろん、それ以外の繊維も使用できる。また基布を構成する繊維の種類と係合素子を構成する繊維の種類は同一であっても異なっていてもよい。基布は織物でも編物でもどちらでもよいが、強度の点から織物がより好ましい。

本発明で使用する融着性フィルムは、ポリアミド系融着性フィルム（例えばダイセルファインケム（株）製ダイアミドフィルム２４０１）、ポリエステル系融着性フィルム（例えば日本マタイ（株）製エルファンＰＨ−４０２）、ポリウレタン系融着性フィルム（例えば日本マタイ（株）製エルファンＵＨ−２０３）などが、面ファスナーへの加工性や接着性の点で好ましい。特に、面ファスナーの基布および係合素子がナイロン繊維から構成されている場合には、ポリアミド系融着フィルムが好ましい。

該融着性フィルムの厚みは、加工性から０．０５〜１．０ｍｍが好ましく、被着体が厚み１０ｍｍ程度のフロアマット等である場合には０．１０〜０．３ｍｍであることが好ましく、特に０．２ｍｍ前後の厚さが好ましい。より高い接着強度が必要な場合には、融着性フィルムを２層、３層にすることができる。また、必要な厚みを達成するために、融着性フィルムを複数枚重ねて用いることもできる。さらに、該融着性フィルムの融点は、８０〜１４０℃が好ましく、加工性からは１００〜１２０℃がさらに好ましい。

該融着性フィルムを面ファスナーの基布及び／又は係合素子に部分融着するには、超音波（高周波）融着（超音波ミシン、超音波ローラー等）、熱融着（ホットプレス、熱ローラー等）等が用いられる。線状（直線または曲線）または点状（円形、楕円形、多角形、星形、不規則形状など）に融着するのが好ましい。例えば、超音波連続融着機（エフエムコーポレーション ＦＭ−１５１１）が、点状や線状に部分融着することが容易な点で好ましい。

例えば、係合素子が立設された面の融着性領域を形成する部分に融着性フィルムを重ね合わせ、そして超音波連続融着機を用いて融着性フィルムを面ファスナーの基布及び／又は係合素子に線状または点状で融着させることにより融着性フィルムを面ファスナーに固定することができる。

融着性面ファスナーを被着体に融着したときに融着領域となる部分（上記領域Ａと領域Ｂの合計）の広さは、融着した面ファスナーと被着体との融着強度が、係合素子領域（上記領域Ｃ）と該係合素子領域と係合する協同係合素子との係合強度より大きくなるように設定するのが好ましい。

本発明の融着性面ファスナーの１例を示す概略平面図を図１に示す。図１において、Ａは融着性フィルムが面ファスナーの基布及び／又は係合素子に融着されている領域Ａ、Ｂは融着性フィルムが面ファスナーの基布及び／又は係合素子に融着されることなく係合素子を覆っている領域Ｂ、および、Ｃは融着性フィルムが重ね合わされておらず、係合素子が露出している領域Ｃを示す。例えば、面ファスナーの幅Ｗが６０ｍｍである場合、領域Ａと領域Ｂを合わせた領域の幅Ｗ１は約１５〜４５ｍｍ、領域Ｃの幅Ｗ２は約４５〜１５ｍｍであるのが好ましい。Ｗ１が２５〜３５ｍｍ、Ｗ２が３５〜２５ｍｍであるのがより好ましい。すなわち、領域Ｃの面積と領域Ａと領域Ｂの合計面積の比が１：３〜３：１であるのが好ましく、５：７〜７：５であるのがより好ましい。このようにすることにより、前記融着強度を前記係合強度より大きくすることができる。領域Ａが複数の線状融着部からなる場合、または、複数の点状融着部からなる場合、領域Ａの面積は複数の線状融着部の合計面積、または、複数の点状融着部の合計面積である。

線状部分融着の場合には、融着領域Ａは図１に示したように融着フィルムの幅方向ほぼ中央に１本形成してもよいし、２又は３本形成してもよいが、融着領域Ａの位置は特に限定されない。融着領域Ａの幅（２又は３本設ける場合にはその合計幅）は、０．５〜８ｍｍが好ましく、より好ましくは０．８〜５ｍｍである。線状部分融着により形成された融着領域Ａは直線状でも曲線状でもよく、また、連続的でも断続的でもよい。

点状部分融着の場合には、個々の点状融着部の面積は０．３〜１０ｍｍ²が好ましく、より好ましくは、０．５〜５ｍｍ²である。このような点状融着部が1〜５ｍｍの間隔をあけて直線状、曲線状に配列されているのが好ましい。このような配列が複数並列に形成されているのがより好ましく、点状融着部が融着性フィルムのほぼ全表面に散在していることが、得られる融着性面ファスナーを被着体に融着する作業が容易になる程度に融着性フィルムが面ファスナーに固定されるので特に好ましい。

領域Ａの面積は領域Ａと領域Ｂの合計面積の１〜２０％が好ましく、２〜１８％が特に好ましい。領域Ａは、係合素子上に重ね合わせた融着性フィルムを面ファスナーに固定するための領域であり、両者が容易に剥離しない程度に部分的に融着されていれば問題ない。

図２に図１のＬ−Ｌ線における概略断面図を示す。図２に示すように、融着性フィルム１１は係合素子１２にのみ融着していてもよい。また、基布１３に融着していてもよいし、係合素子１２と布１３の双方に融着していてもよい。融着性フィルムは融着性面ファスナーを被着体に融着するときまで面ファスナー上に融着性領域を形成していれば十分なので、融着性フィルムを面ファスナーに強固に融着する必要はない。係合素子の立設密度が高い場合、融着性フィルムは主として係合素子と融着し面ファスナーに固定される。該立設密度が低い場合、融着性フィルムは主として基布に融着し面ファスナーに固定される。

係合素子や基布が溶融する必要はなく、重ね合わせた融着性フィルムが溶融して、係合素子間や基布内部に溶融ポリマーが浸透することにより融着固定が行われる。

本発明の融着性面ファスナーの形状はテープ状に限定されず、矩形のほか、円形、星形、その他各種形状を含む。いずれの形状であっても、本発明に従って融着性領域を容易に設けることができる。

本発明の融着性面ファスナーを超音波（高周波）融着または熱融着により融着する被着体は、フロアマット等の裏打ち材や基布として使用されている、ポリエステル系繊維（例えばポリエチレンテレフタレート系繊維やポリブチレンテレフタレート系繊維）、ポリオレフィン系繊維（例えばポリプロピレン系繊維やポリエチレン系繊維）またはナイロン系繊維（例えばナイロン６系繊維、ナイロン６６系繊維）からなる不織布、織布、またはこれら樹脂からなるバックコート層やバックコート用のシートが好ましく、特に溶融ポリマーが侵入してアンカー効果が得られる不織布が好ましい。本発明の融着性面ファスナーにより連結されるフロアマットとしては、家庭、事務所、ホテル、商業施設等で使用されるフロアマット、航空機、自動車、船舶用のフロアマット等が挙げられる。本発明の融着性面ファスナーは、自動車用のフロアマット等のように、複雑な形状のフロアマットを複数枚連結して所望の形に敷きつめる場合に特に適している。

以下に実施例及び比較例により本発明の実施態様と効果を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

融着強度および係合強度の測定
ＪＩＳ Ｌ ３４１６法に準じて測定した。自己記録計付定速伸長形引張試験機（島津製作所製 ＳＧ−５００）を用いて、引張速度３００ｍｍ／分で剥離試験を行い、得られた剥離時点での強さ（剥離荷重）から算出した。

実施例１
ポリアミド系融着性フィルム（ダイセルファインケム（株）製２４０１、融着温度：１１０℃、厚み０．２ｍｍ、幅３０ｍｍ、長さ７５ｍｍ）を、ループ状係合素子を有する幅６０ｍｍ、長さ７５ｍｍの織物製面ファスナー（クラレファスニング（株）製Ｂ１００００）の幅方向右半分の位置に載置した。超音波ミシン（エフエムコーポレーション ＦＭ−１５１１）を用いて、該融着性フィルムを幅方向中央部でループ状係合素子に点状に融着し、本発明の融着性ループ面ファスナーを得た。得られた融着性ループ面ファスナーの概略平面図を図３に示す。各ドットの大きさは１ｍｍ×１ｍｍ、ドット間隔は２ｍｍであった。ドットは長さ方向にライン上に並んでおり、かつ、そのようなドットの列を幅方向０．５ｍｍの間隔で３列形成した。点状に融着された領域（上記ドット部分）が領域Ａであり、融着性フィルムが重ね合わされているが融着されていない領域が領域Ｂであり、融着性フィルムが重ね合わせられておらず、露出している係合素子部分が領域Ｃである。領域Ａの面積は、０．７５ｃｍ²であり、領域Ａと領域Ｂの合計面積（２２．５ｃｍ²）の３．３％である。領域Ｃの面積（２２．５ｃｍ²）と領域Ａと領域Ｂの合計面積の比は１：１である。

図４に示すように、得られた融着性ループ面ファスナー１の領域Ａと領域Ｂの部分（融着性領域）を、融着性フィルムが存在していない部分（領域Ｃ）が外側にはみ出した状態で、フロアマット用カーペットＸの裏面のＰＥＴ系不織布ａに重ね合わせた。次いで、重ね合わせた部分を１６０℃で３０秒間ホットプレスして融着性ループ面ファスナー１をフロアマット用カーペットＸに融着した。

さらに、図４に示すように、幅３０ｍｍ、長さ７５ｍｍの織物製フック面ファスナー（クラレファスニング（株）製Ａ０３８００）の裏面に、上記融着性フィルムを超音波ミシンにて融着性フィルムの中央部で線状（ラインの幅は３ｍｍ）に融着し、融着性フック面ファスナー２を得た。

上記融着性フック面ファスナー２を、フロアマット用カーペットＹの裏面のＰＥＴ系不織布ｂの端部に融着性フィルムを介して重ね合わせた。次いで、重ね合わせた部分を１６０℃で３０秒間ホットプレスして融着性フック面ファスナー２をフロアマット用カーペットＹに融着した。図４に示すように、フック面ファスナー２がフロアマット用カーペットＹの裏面端部に、フック状係合素子が下向きに露出するように固定されている。

図４に示すように、フロアマット用カーペットＹの端部のフック係合素子を、フロアマット用カーペットＸの端部から外側に延在するループ係合素子（領域Ｃ）に圧接して係合素子同士を係合させ、フロアマット用カーペットＸとフロアマット用カーペットＹを連結した。

ループ面ファスナー１の融着領域（領域Ａ＋領域Ｂ）とフロアマット用カーペットＸの融着強度は４．４ｋｇ／ｃｍ、ループ係合素子（領域Ｃ）とフック係合素子の係合強度は０．２ｋｇ／ｃｍであった。また、係合−剥離操作を５０回繰り返してもループ面ファスナー１の融着領域の破壊はなかった。

比較例１
実施例１と同様のループ状係合素子を有する織物製面ファスナー（幅６０ｍｍ、長さ７５ｍｍ）の幅方向右半分を平板状ホットプレス機を用いてプレス温度１６０℃で３０秒間熱プレスしてループ状係合素子を扁平にした。扁平ループ状係合素子上に実施例１と同様の融着性フィルムを重ね、平板状ホットプレス機を用いてプレス温度１３０℃で３０秒間、融着性フィルムの全面を熱プレスし、融着性フィルムをループ状係合素子の扁平層を介して面ファスナーに融着した。

得られた融着性ループ面ファスナーを用いた以外は実施例１と同様にして、２つのフロアマット用カーペットを連結した。融着強度は２．４ｋｇ／ｃｍ、係合強度は０．２ｋｇ／ｃｍであった。係合−剥離操作を３０回繰り返したところ、融着ループ面ファスナーの融着領域とフロアマット用カーペットの界面で剥離を生じた。

融着性フィルムの厚みと融着条件を変えて上記操作を繰り返した結果、剥離を防ぐためには、融着性フィルムの厚みを０．５ｍｍにし、１６０℃で６０秒間の条件で融着する必要があることが分かった。しかし、溶融ポリマーが面ファスナーやフロアマット用カーペットの内部に侵入して、面ファスナーやフロアマット用カーペットが極めて硬くなり、違和感を与えるものであった。また、長い融着時間が必要であり、生産効率が悪かった。

本発明の融着性面ファスナーでは、係合素子または基布に融着性フィルムを部分融着により固定する。従って、従来の布製面ファスナー、すなわちフック（あるいはキノコ）状係合素子を有する面ファスナー、ループ状係合素子を有する面ファスナー、またはフック状およびループ状係合素子を併有する面ファスナーを使用して容易に製造することができる。融着性領域が極めて簡単で効率よく形成でき、融着性成分が被着体との融着に効果的に利用されるので、面ファスナーと被着体との融着強度を改善することができる。このような本発明の融着性面ファスナーは、特に、カーペットなどを連結する際に効果的に使用される。

Claims (5)

1. 編織製の基布の表面に多数の係合素子が立設されている面ファスナーと該面ファスナーに部分的に固定された融着性フィルムからなり、下記領域Ａと領域Ｂからなる融着性領域および領域Ｃを有することを特徴とする融着性面ファスナー。
   領域Ａ：係合素子上に融着性フィルムが重ねられており、かつ該融着性フィルムと面ファスナーが融着されている領域、
   領域Ｂ：係合素子上に融着性フィルムが重ねられており、かつ該融着性フィルムと面ファスナーが融着されていない領域、
   領域Ｃ：係合素子上に融着性フィルムが重ね合わされていない領域。
2. 前記融着性面ファスナーが融着された被着体と前記融着性領域との融着強度が、前記領域Ｃの係合素子と該係合素子に係合する係合素子との係合強度より大きい請求項１に記載の融着性面ファスナー。
3. 前記領域Ａにおいて、融着性フィルムが面ファスナーに線状に融着されている請求項１または２に記載の融着性面ファスナー。
4. 前記領域Ａにおいて、融着性フィルムが面ファスナーに複数の点状に融着されている請求項１または２に記載の融着性面ファスナー。
5. 融着性フィルムが、ポリアミド系融着性ポリマー、ポリエステル系融着性ポリマーおよびポリウレタン系融着性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーからなり、かつ、その厚さが約０．０５〜１．０ｍｍである請求項１〜４のいずれかに記載の融着性面ファスナー。

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