JP3948560B2 - 面ファスナー雌材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は面ファスナー雌材に関するものであり、特に使い捨ておむつのようなディスポーザブル商品に好適に用いることのできる面ファスナー雌材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に面ファスナーは工業用をはじめとして生活雑貨等のあらゆる分野で使用されている。面ファスナーの構成としては、通常鉤型やアーチ型、マッシュルーム形状のフックからなる雄材とループからなる雌材とで構成される。面を接着させるには、粘着剤を塗布し面と面を貼り合わせることや、接着剤を塗布した接着テープで貼り合わせることなどが多い。一方、面ファスナーは接着機能もさることながら、剥離機能もその代表的な機能である。従って、面ファスナーは着脱の両機能を兼備えた接着部材であるということができる。近年、実用性の観点から、接着個所の付けはがしが簡単な面ファスナーテープが粘着テープに置き換えられてきており、例えば、使い捨ておむつには粘着テープが用いられていたが、面ファスナーに置き換わりつつある。
【0003】
接着部材である面ファスナーに要求される性能は、使われる用途で係合強力が好適であること、すなわち、フック面とループ面の垂直方向における剥離強力(ピール強力)とずり水平方向における引張り強力(シアー強力)が必要な強さを有していることである。また、複数回の繰返し係合剥離が可能なように剥離耐久性や、面ファスナー部分が嵩高とならぬような薄さが要求される。さらに、ディスポーザブル用途には安価であることや製造ラインでの工程性に支障をきたさないことも要求される。
【0004】
このような要求に対し、例えば特開平10−127311号公報に見られるように、使い捨ておむつの面ファスナー材の雌材として、薄手のトリコットやフィルム上に低目付けのトリコットをラミネートしたものなどが提案されている。また近年では、価格の低い不織布の提案が数多くなされているが、その係合強力が面ファスナーとして十分でないことや係合剥離の耐久性に劣ること、通気性が高いことによる工程通過性の低下を来たすことなどが課題として挙げられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、面ファスナーとして十分な係合強力とディスポーザブル用途に必要な剥離耐久性を有し、目付けが低く安価であり、かつ使い捨ておむつ等の製造ラインにおける工程通過性が良好な面ファスナー雌材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、平均繊維径が10μm以下の繊維からなるメルトブロー不織布を含む基材と短繊維ウェブが積層されてなり、かつ熱融着領域と非熱融着領域が存在する面ファスナー雌材であって、該短繊維ウェブが1.1〜2.2dtexの繊維30〜70%、6.6〜11dtexの繊維70〜30%の比率で混綿されてなる面ファスナー雌材である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明の面ファスナー雌材は平均繊維径が10μm以下の繊維からなる不織布を含む基材に短繊維ウェブを積層し、熱エンボス等の処理にて熱融着領域と非熱融着領域を設けてなる。
【0008】
本発明の基材は複数の不織布および/または繊維材料がその構成材料として提供され、互いに性能を補完しあい、一体物として複数の機能を発揮させるものである。すなわち、本発明の目的とするおむつ製造ラインでの工程通過性を向上および主機能である面ファスナーとしての係合性能に寄与する。
【0009】
本発明の面ファスナー雌材を構成する基材に使用される平均繊維径が10μm以下である繊維からなる不織布として、直接紡糸して得られる繊維の他、分割して極細化し得る繊維や複合繊維の一部を抽出して極細繊維を得るタイプの繊維からなる不織布、メルトブロー法等により得られる不織布等が挙げられるが、中でもメルトブロー不織布を用いる。
また、該基材の層の数は特に規定されるものではなく、基材の少なくとも一層に平均繊維径が10μm以下の繊維からなるメルトブロー不織布が含まれていればよい。
該基材部の目付は特に規定されるものでないが、経済性を考えあわせた場合20g/m2以下が好ましい。
【0010】
本発明に用いる基材を構成する素材は、特に限定されないが、後に述べる短繊維ウェブを積層する際に熱圧着が容易となるようにウェブとの接着面には、短繊維ウエブを構成する繊維と同質材料となるような素材を選定することが望ましい。
かかる素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等を挙げることができるが、使い捨ておむつ等の部材として用いるには、ポリプロピレンがコスト的に有利である。
【0011】
本発明に用いる基材は、上記したように平均繊維径が10μm以下である繊維からなる不織布を含むものであるが、該不織布と他の素材とを積層してもよい。積層する素材としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布等が挙げられるが、中でもスパンボンド不織布が好ましい。また、積層方法については、特に限定はなく、公知の手法を適宜採用すればよいが、熱エンボス法が好ましい。
【0012】
本発明の基材に積層される短繊維ウェブは、カード法、エアレイ法などの乾式法や湿式法によって形成される繊維ウェブを用いることができる。短繊維ウェブの構成繊維として、基材と同質の繊維以外に材質の異なる短繊維を混綿したものを用いるのが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやナイロン、ポリエチレン等を挙げることができる。短繊維ウェブを構成する繊維の繊維長は少なくとも繊維の一端がエンボス等で熱圧着固定されるだけの繊維長があればよい。
【0013】
該短繊維ウェブは、面ファスナー雌側としての係合機能を有する非熱融着領域の繊維が該非熱融着領域を構成する繊維同士で互いに熱融着して素子形状を固定化するとともに該素子を形成する繊維が係合の剥離力を受けた場合でも熱融着領域での素抜けが生じないようにするために、強度があり、かつ熱融着性のある繊維であることがより好ましい。従って、ウェブを構成する繊維は、低融点ポリマー成分を繊維表面に有する芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合型熱融着繊維であることが好ましい。すなわち、構成繊維の一部が強度保持成分として働き、他方が融着成分として働くことになる。
【0014】
かかる熱融着性複合型短繊維の両ポリマーの組合せとしては、例えば、芯/鞘が、ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリプロピレン/変性ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ナイロン/ポリエチレン等が挙げられる。これら両ポリマーの組合せは熱圧着の際、繊維としての機械的特性を保持するポリマーを存在させる目的でポリマーの融点差が30℃以上である組合せが好ましい。
【0015】
該短繊維ウェブは、1.1〜2.2dtexの繊維と6.6〜11dtexの繊維の混綿からなり、比率はそれぞれ30〜70%が、雄側係合素子が入り易く、また引っ掛かり易い点でより好適である。1.1〜2.2dtexの繊維が70%を超えると雄側素子は入りにくくなることや後述する非熱融着領域の形態保持性が劣る場合がある。また、本発明の面ファスナー雌材をおむつ用に用いる場合、その表面(係合面)にサイズ表示や動物をはじめとするキャラクターが捺染される。非熱融着領域の形態保持性はかかる捺染工程の押圧による係合部のつぶれ、すなわち係合力低下を軽微にする目的から低繊度(1.1〜2.2dtex)繊維が30〜50%、高繊度(6.6〜11dtex)繊維が50〜70%の混綿比率とすることがより好ましい。
【0016】
また、該短繊維ウエブの目付は20〜100g/m2が好ましく、より好ましくは25〜50g/m2である。目付が20g/m2未満であると係合素子としての充分な高さが得られない場合がある。一方、100g/m2を超えると、係合素子部の繊維密度が高くなり、雄側フック素子が入り難くなるばかりでなく、価格面でも好ましくない。
【0017】
また、該短繊維ウェブを構成する繊維の少なくとも1種類は基材を構成するポリマーと同系のポリマーからなり、該同系のポリマーかなる繊維は、ウェブ内での構成比率が10〜50%であることが、面ファスナー雌材に求められる係合性を容易に実現できる点で好ましい。同系のポリマーであることは、本発明による不織布構造体は熱エンボス等による熱圧着で好適に製造されることから明らかなように、熱による接着性能が向上する。同質のポリマーからなる繊維が10%未満の場合、係合剥離力により、素子部を構成するウェブ内繊維が素抜けし、係合力を発揮できない場合がある。また、50%を超えるとウェブの熱融着領域での圧着力が大きくなることで、係合剥離力が加わった場合、この力が非熱融着領域のウェブの構成繊維を切断し、係合力が低下する場合がある。
【0018】
ウェブを構成する繊維は基材との熱圧着の面から同質のポリマーからなる繊維を使用した原綿であることが要求されるが、その構成比率は、10〜50%であることが、面ファスナー雌材としての係合性に好適である。言い換えれば異質のポリマーからなる繊維原綿を使用することで、熱圧着はされるが圧着度合いが低くなり、素抜けはしないが適度に繊維が引抜かれより優れた係合力を得られるのである。
【0019】
本発明の面ファスナー雌材は、上記した基材と短繊維ウエブが積層されてなり、かつ熱融着領域と非熱融着領域が存在する点に特徴を有する。積層方法については、熱融着領域と非熱融着領域が形成できる方法であれば、特に限定はなく熱エンボス法、ウェルダー接着法、超音波接着法等を採用することができるが、中でも熱エンボス法を用いることが望ましい。
【0020】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明の面ファスナー雌材を示す模式図である。領域Iは非融着領域であり、この領域がウェブの中で係合に寄与する部分となる。かかる領域に存在する繊維の少なくとも一端側が熱融着領域Sで固定されていることは、係合剥離力が加わった場合に素抜けを生じさせない点から好ましい。
【0021】
熱融着領域は前記のように、非熱融着領域を構成し係合のループ目を形成する短繊維の素抜けがないように固定する役割も果たすものであり、その意味では、短繊維が固定できる間隔であればよく、その距離は特に限定されないが、不織布全体の形態を安定に維持させる点では、一般的には0.5〜5.0mmであることが好ましい。凸形状の非熱融着領域は熱融着領域から立ち上がった凸形状となっているが、その形態、すなわち、不織布表面上方から見た形状は、円形に限らず任意形状にできるが、円形換算で平均直径が2〜8mm程度の面積を有する形状のものであることが好ましい。平均直径が2mm未満のものでは上面部での係合面積が有効に確保できず好ましくなく、平均直径が8mmを超えたものとなると、該上面部を構成する短繊維の端部が熱融着領域に至らず、この領域で熱固定されない関係となるので、好ましくない。従って、非熱融着領域は円形換算で平均直径2〜8mmであり、かつ不織布面の100cm2当り80〜800個存在していることがより好ましい。
【0022】
通気性、柔軟性に優れた不織布面ファスナー雌材は予てより種々提案されてきているが、通気性の高さは反面おむつ等の製造ラインに使用されるバキュウム機構での通過性を低下させる。本発明では、得られる不織布の通気性を抑制することで、すなわち、部材を構成する不織布材料の少なくとも一つに通気性抑制材としての不織布を使用することで、この課題を解決した。本発明の面ファスナー雌材は、通気度100cc/cm2/秒以下が好ましく、より好ましくは、90cc/cm2/秒以下である。
【0023】
本発明の面ファスナー雌材は、優れた係合機能を有することから、衣料、生活資材、工業資材等の様々な用途に用いることができる。特に、使い捨ておむつ等のディスポーザブル用途に好適に用いることができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例における各物性値は、それぞれ次の方法で測定した。
【0025】
<厚み>
12g/cm2(皿径20mmφ)の荷重を加えた状態でデジマチックインジケーター543−454B(テクロック社製)を用いて測定した。
【0026】
<係合剥離強力>
高さ0.3mmの丸型(キノコ型)のフック部が1cm2当り約250個設けられた巾25mm、長さ24mmの粘着材付き係合部材を巾25mm、不織布基材の端に固定した。一方、巾40mm、長さ100mmのループ側係合部材を、両面テープを用い巾60mm、長さ200mmのステンレス板に貼り付けた。用意したそれぞれの係合部材を重ねて2Kgのローラーを1往復させて結合させた。
その後、1Kgの荷重をせん断方向に10秒間掛け、次いでインストロン社製5543型インストロンを用いて、角度90度の方向に分けた係合していない部分のフック側とループ側をチャック間隔50mmでつかみ、速度300mm/分で剥離させて、最大値(3箇所)と最小値(3箇所)を読み取った(測定数:n=3)。全測定値の平均を『平均値』、最大値の平均を『最大値』として剥離強度とした。
【0027】
<引張りせん断強力>
上記剥離強度と同じ方法にてフック材を準備し、ループ材はステンレス板には貼り付けないで切断したままの状態で準備した。用意したそれぞれの部材を重ねて2Kgのローラーを1往復させて結合させた。次いで5543型インストロンを用いて係合していない部分のフック側とループ側の上下をチャック間隔50mmでつかみ速度300mm/分で引っ張った。最大強力を読み(測定数:n=4)、これの平均値をせん断強力とした。
【0028】
<通気度>
JIS L 1906の8.27.1A法(フラジール形法)に準じて測定した。試験片は15cm×15cmの大きさとし、不織布CD方向1m当り3枚採取した。傾斜形気圧計の圧力は125Paに調整した。東洋精器社製フラジール形通気度試験機を使用し、係合面を上にして、試験片を通過する空気量を求め、3回の試験結果の平均値を算出した。
【0029】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート(融点255℃)を芯成分、ポリエチレン(融点130℃)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維で、単繊維繊度が6.7dTexと2.0dTexの複合繊維を用い、前者を60%、後者を40%で充分に混綿した目付40g/m2のカードウェブを作製した。このカードウェブを基材である目付け重量15g/m2のポリプロピレン製スパンボンド不織布−ポリプロピレン製メルトブロー不織布−ポリプロピレン製スパンボンド不織布貼り合せ基材に積層した。
積層した後、熱エンボス法で熱圧着させた。用いたエンボスロールは直径が5mmで、深さが2mmの円形孔が5.5mm間隔で一列に並び、その円形孔列に対して次の円形孔列が千鳥状に並ぶように配列されたもので、対ローラーとしてフラットローラーを用いた。処理のエンボス圧力は45Kg/cm、エンボス温度は155℃であった。エンボス領域の面積率は76.3%であった。
図1で示される如き、エンボス熱融着領域Sの中に、エンボス非熱圧着面として、多数の非熱融着領域Iが突出したエンボス不織布を得た。得られた不織布は、図2に示すように非熱融着部の高さHが0.65mmであった。
このエンボス不織布を面ファスナー雌材として用い、高さ0.3mmからなるマッシュルーム状の雄側係合部材として用い、両者で係合剥離強力を測定した。係合剥離強力は初期の最大値が508g/cm幅、3回の係合剥離を繰り返した後の値が160g/cm幅であった。初期の平均値は400g/cm幅、3回の係合剥離を繰り返した後の値が81g/cm幅であった。また、剪断引張り強力は424g/cm2であり、いずれも面ファスナーとして充分な係合強力を示した。また、通気度は81cc/cm2/秒であり、おむつ製造ラインでの工程通過性は極めて良好であった。
【0030】
比較例1
ポリエステル(融点255℃)を芯成分、ポリエチレン(融点130℃)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維で、単繊維繊度が6.7dTexと2.0dTexの複合繊維を用い、前者を60%、後者を40%で充分に混綿した40g/m2のカードウェブを作製した。このカードウェブを目付15g/m2のポリプロピレン製のスパンボンド不織布に積層した。エンボスの条件は実施例1と同条件で熱圧着させた。この不織布の非熱融着領域の高さHは0.53mmであった。
得られた不織布について係合力を測定したところ、係合剥離強力は初期の最大値が463g/cm幅、3回の係合剥離を繰り返した後の値が207g/cm幅であった。初期の平均値は347g/cm幅、3回の係合剥離を繰り返した後の値が145g/cm幅であった。また、剪断引張り強力は418g/cm2であり、いずれも面ファスナーとしての係合強力は充分なものではなかった。一方、通気度は157cc/cm2/秒であり、おむつ製造ラインでの工程通過性が低下した。
【0031】
【発明の効果】
本発明の面ファスナー雌材は、通気性を抑制し、おむつ製造ラインでの工程通過性を向上せしめ、しかも安価に提供することができる極めて優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の面ファスナー雌材を示す模式図
【図2】 図1のX−X断面図
【符号の説明】
I:非熱融着領域
S:熱融着領域
H:非熱融着領域の高さ
Claims (5)
- 平均繊維径が10μm以下の繊維からなるメルトブロー不織布を含む基材と短繊維ウェブが積層されてなり、かつ熱融着領域と非熱融着領域が存在する面ファスナー雌材であって、該短繊維ウェブが1.1〜2.2dtexの繊維30〜70%、6.6〜11dtexの繊維70〜30%の比率で混綿されてなる面ファスナー雌材。
- 該短繊維ウェブを構成する繊維が低融点ポリマー成分を繊維表面に有する芯鞘型またはサイドバイサイド型の複合型熱融着繊維である請求項1記載の面ファスナー雌材。
- 該短繊維ウェブを構成する繊維の少なくとも1種類は基材を構成するポリマーと同系のポリマーからなり、ウェブ内での構成比率が10〜50%である請求項1または2に記載の面ファスナー雌材。
- 非熱融着領域に存在する繊維の少なくとも一端側が熱融着領域で固定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の面ファスナー雌材。
- 該面ファスナー雌材の通気度が100cc/cm2/秒以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の面ファスナー雌材。
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