JP4191364B2 - 面ファスナ雌材用不織布の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はおむつ、手術着等の使い捨て用途に使用する簡便な面ファスナ雌材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、面ファスナは、ループあるいはアーチ形の係合部を有する雌材と、雌材係合部と係合するきのこ状あるいは鋸状の突起物を有する雄材とから形成され、衣類、日用品、内装材、産業資材を始め様々な分野に使用されている。
【0003】
最近になり、その使用の簡便さから使い捨て用途にも、使い捨て用途に必要十分なファスナ特性を有する面ファスナの使用が増えてきている。この使い捨ての用途においては、それほど高い耐久性や、非常に強い係合強力を必要としないため、例えば特開平6−33359号公報にシワ部を有する長繊維不織布からなる面ファスナ用雌材や、また特開平7−2646号公報にはポリプロピレン系樹脂を含有した長繊維ウェブを温度差を有した一対の熱圧接ロールで圧接した面ファスナ用雌材がまた、特開平7−171011号公報にはウェブをニードルパンチして片面に多数のループを形成させ、他面を接着性物質で固着する面ファスナ雌材が、特開平9−317号公報には、片面にループを形成させ、他面の構成繊維を融着固化させたりするする面ファスナ雌材が提案されている。
【0004】
また、さらに最近では、面ファスナ雌材は他機材との接合だけでなく、不織布の持つ、通気性、柔軟性を活かした布帛としての機能と、雌材としての接合機能との両方を持たせようという使い捨て商品が求められている。すなわち、雌材用不織布は、適度な接合強力を有するのみでなく、肌に直接接して使用しても肌触りがよく、且つ、肌を傷つけないという布帛としての要求と、接合部分の繰り返し脱着においてもファスナ材不織布が容易に伸びたり、切れたりしないファスナ雌材としての要求が高まってきている。
【0005】
しかし、上記した面ファスナ雌材では、例えば特開平6−33359号公報のシワ部を有する長繊維不織布からなる面ファスナ用雌材や、特開平7−26462号公報のポリプロピレン系樹脂を含有した長繊維ウェブを熱圧接した面ファスナ用雌材では必要な係合強力を得ることが出来ないという根本的な欠点を有していた。
【0006】
また、これら係合強力を向上させる手段として、特開平7−171011号公報のウェブをニードルパンチして片面にループを形成させ、他面を接着性物質で固着させた面ファスナや、特開平9−317号公報の片面にループを形成させ、他面の構成繊維を融着固化させたりするする面ファスナ雌材では、十分な接合強力と繰り返しの脱着においても変形しない形態保持性を有しているが、粗硬感があるため肌に接したときに肌触りが悪く、肌を傷つける恐れや、通気性が低いために皮膚障害を引き起こすという欠点を有しているため、直接肌に接するような布帛として用いるには問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の上記のような欠点を解消し、適度な係合強力と柔軟性を有し、且つ、係合部分の繰り返し脱着においても面ファスナ雌材不織布が容易に伸びたり、切れたりしない形態安定性と容易に毛羽立たないという実用性に優れた面ファスナ雌材であって、肌に直接接して使用しても肌触りがよく、肌を傷つけない装着の快適性を具備する布帛としても使用可能な面ファスナ雌材用不織布を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ファスナ使用時に、粗硬感を与えず、必要十分なファスナ特性を有し、更には繰返しの着脱への耐久性を併せ持つ、使い捨て用途に適した面ファスナが出来ないかと検討した結果、特定の形態を有する2種の熱可塑性合成長繊維不織布を積層し、三次元的に交絡させることにより上述の要求を達成することが出来ること、さらに、概積層不織布の少なくとも一部を熱融着させることで、特定の圧接部、非圧接部の形態をなすことにより、より上述の要求を満足する、極めて優れた面ファスナ雌材用不織布を得ることができることを究明し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、熱処理を施していない長繊維不織ウエブAと、散点状の部分的熱融着部を有することにより構成繊維が固定されてなる熱融着長繊維不織布Bとを積層し、前記長繊維不織ウエブA側よりニードルパンチ処理することにより、前記長繊維不織ウエブAを構成する長繊維を前記熱融着長繊維不織布Bに三次元的に交絡させて一体化させるとともに、前記長繊維不織ウエブAを構成する長繊維を、前記熱融着長繊維不織布Bを突き抜けさせて前記熱融着長繊維不織布B表面に多数のループとして形成させることを特徴とする面ファスナ雌材用不織布の製造方法を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について詳細に説明する。本発明により得られる面ファスナ雌材用不織布は、実質的に熱処理が施されてなく、熱による影響を受けていない長繊維不織ウエブAと散点状の部分的熱融着部を有する熱融着長繊維不織布Bとが積層され、前記不織ウエブAの構成長繊維が前記不織布Bに三次元的に交絡して一体化している。
【0013】
本発明により得られる面ファスナ雌材用不織布における長繊維不織ウエブAは、構成繊維同士が三次元的に交絡することによって形態が保持されており、構成繊維は、熱による軟化または溶融等がなく、実質的に熱処理が施されていない状態であって、柔軟性に富んでいる。
【0014】
長繊維不織ウエブAの構成繊維は、雄材と主として係合するループを形成する繊維となるため、係合強力等の面よりポリエチレンテレフタレート単一からなる繊維またはポリエチレンテレフタレートを芯成分とした芯鞘複合型繊維であることが好ましい。芯鞘複合型とする場合は、鞘成分として共重合ポリエステルやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系やナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系等を用いればよく、特に限定されるものではない。
【0015】
長繊維不織ウエブAの構成繊維の単糸繊度は、1〜11デシテックス(以下、dtexと称す。)であることが好ましく、より好ましくは1〜9dtexである。
【0016】
単糸繊度が1dtex未満の場合、雄材を係合するループとなる繊維の強力が弱すぎるため、雄材を雌材に係合した後、剥離時にループを形成する繊維が容易に切断され、係合強力、繰り返し使用における耐久性が著しく低下する。また、ニードルパンチにより、ループを形成する場合には、ニードル針の貫入による摩耗等により、繊維が破壊され易く、雌材として十分な係合強力を有するループを形成できにくい。
【0017】
一方、11dtexを超えると、繊維の強力は十分であるが、係合部となるループの数が相対的に減少し、また、ループの剛性が大きくなるために、雄材の係合部と係合しにくくなって係合力に差が生じる係合斑が生じることになる。
【0018】
長繊維不織ウエブAの目付は、10g/m2以上であることが好ましく、より好ましくは20g/m2以上である。10g/m2未満であると、雄材と係合するループの数が相対的に減少する傾向となるため好ましくない。目付の上限は、適宜選択すればよいが、コストや柔軟性の点から100g/m2程度であればよい。
【0019】
熱融着長繊維不織布Bは、散点状の部分的熱融着部を有する。長繊維不織布Bが散点状の部分的熱融着部を有することによって、雌材不織布の強力を担っている。また、熱融着部により長繊維不織布Bの構成繊維が固定されており、これらの繊維が、長繊維不織布Bを突き抜けて長繊維不織布B表面に存在する長繊維不織ウエブAの構成繊維からなるループを固定し、ループの伸びや抜けを防ぎ、形態安定性を向上させている。ここで、部分的熱融着部を散点状に設けるのは、不織布強力と柔軟性とを併せ持つためであり、部分熱融着部を例えば連続線状に設けると強力は向上するが、柔軟性が極端に劣り、目的とする柔軟性と強力の両方を併せ持つ雌材を得ることができないためである。
【0020】
この熱融着部を設ける方法としては、一対の加熱されたエンボスロールまたは加熱されたエンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置に通布することにより、エンボスロールの凸部に当接する部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法、部分的に穴が設けられた板やネットを当てて、その上から熱風処理を施し、熱風が当たる部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法、一対のエンボスロールまたはエンボスロールとフラットロールからなる超音波融着装置に通布することにより、エンボスロールの凸部に当接する部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法等が挙げられる。
【0021】
熱融着長繊維不織布Bが有する散点状の部分的熱融着部1個の面積は、0.04〜2mm2、熱融着率は、2〜50%であることが好ましい。熱融着率が2%未満であると、熱融着部を有する効果が十分でなく、雄材との繰り返し着脱に耐えられず、ループが脱落しやすく、毛羽が発生しやすい。これを防ぐ目的で、熱融着長繊維不織布B側表面にネット状の熱圧接部を施した場合、強固に圧接しなければループの脱落、毛羽の発生を防ぐことができないため、得られる雌材は柔軟性に劣り、粗硬感があるものとなる。一方、熱融着部の面積が2mm2を超え、熱融着率が50%を超えると、長繊維不織布Bの強力が大きくなるので得られる雌材の形態安定性は十分なものとなる、ペーパーライク感が発生し、柔軟性が低下する。
【0022】
熱融着長繊維不織布Bの目付は、10〜130g/m2であることが好ましい。目付が130g/m2を超えると、必然的に面ファスナ雌材全体の目付が増加するため、雌材が粗硬感を有する傾向となり、また、コストが高くなるため好ましくない。一方、雌材用不織布全体の目付を低下せしめるために、長繊維不織ウエブAの目付のみを低下させることは、雄材との係合を司るループの数を減らすことにつながり、必要十分な係合力が得られなくなってしまうため好ましくない。
【0023】
また、目付が10g/m2未満であると、雄材との繰り返し着脱による雌材の形態安定性の保持という熱融着長繊維不織布Bの最も重要な役割を果たすに十分な強力を有しないため、実用に供しえない傾向となる。
【0024】
熱融着長繊維不織布Bの厚みは400μm以下であることが好ましい。厚みが400μmを超えると、曲げに対する追従性などが低下し、粗硬感やゴワゴワ感を生ずる原因となるばかりでなく、熱融着長繊維不織布B表面に存在する長繊維不織ウエブAを構成する長繊維からなるループの高さが低くなるため、すなわち雄材との係合に寄与する部位の長さが短くなる傾向となるため、雄材との係合強力を低下させる要因となる。
【0025】
熱融着長繊維不織布Bの構成繊維は、ポリエステル系、ポリアミド系およびオレフィン系等特に限定されるものではないが、雌材用不織布の形態安定性を保持する役割をする部分であることから、ポリエチレンテレフタレート単一からなる繊維またはポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、芯成分より低い融点を有する共重合ポリエステル、ポリプロピレンやポリエチレン等を鞘成分とした芯鞘型複合繊維が好ましく用いられる。
【0026】
また、長繊維不織ウエブAと熱融着長繊維不織布Bを構成する繊維間では、繊維表面を形成している重合体相互間に相溶性があることが、雄材との繰り返し着脱におけるループの抜け落ちを防止する上でより好ましい。長繊維不織ウエブAと熱融着長繊維不織布Bとの構成繊維表面を形成している重合体相互が相溶性を有すると、すなわち、長繊維不織ウエブAの構成繊維からなるループと、このループを押さえ、固定してなる熱融着長繊維不織布Bの構成繊維とが相溶性を有すると、互いに滑りが生じにくいため、熱融着長繊維不織布B表面のループをより効果的に固定でき、ループの抜け落ちを防止できるのである。
【0027】
ループ繊維の抜け落ちが多いと、抜けた繊維が、雄側のフック内に詰まっていくため、フックの性能を低下させて係合耐久性が劣るものになると同時に、雌材表面が毛羽立ち、繰り返しの使用により著しく品位が低下する原因となる。
【0028】
長繊維不織ウエブAと熱融着長繊維不織布Bとは、三次元的に交絡して一体化している。本発明においては、一方の層が熱融着された不織布であること、また同時に熱融着長繊維不織布Bを突き抜けてループの形成させるため、ニードルパンチ法が用いられる。
【0029】
本発明により得られる面ファスナ雌材用不織布は、熱融着長繊維不織布B表面には、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維が多数のループを形成しており、これは、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維が熱融着長繊維不織布Bを突き抜けて該不織布B表面に形成されているものである。この熱融着長繊維不織布B表面に形成された多数のループが係合部となって雄材と係合する。長繊維不織ウエブAの構成繊維が熱融着長繊維不織布Bを突き抜けて該不織布B表面にループとして存在していることにより、ループは、構成繊維同士が部分熱融着部にて固定されてなる熱融着長繊維不織布Bによって、より強固に固定されることになり、雄材との繰り返し着脱において、ループの伸びや抜けを防止できる形態安定性に優れた雌材となる。
【0030】
また、多数のループを有する熱融着長繊維不織布B側および長繊維不織ウエブAに、熱圧接部を形成させることにより、好ましくは、ネット状の熱圧接部を形成させることにより、雄材との繰り返し脱着においてもループが容易に伸びたり、切れたりせず、また、雌材用不織布自体も伸びたりせず、形態安定性が良好で容易に毛羽立たないという効果を更に向上させることができる。
【0031】
ネット状の熱圧接部とは、非熱圧接部の周囲がすべて連続した熱圧接部に囲まれている。すなわち、個々の非熱圧接部は連続していないで、熱圧接部により区切られている。ネット状熱圧接部を形成させることにより、雄材と雌材との繰り返し脱着において、雄材と係合するループがネット状熱圧接部によって、より強固に固定され、より効果的にループの伸びや雌材の形態を保持することができる。
【0032】
また、雌材用不織布自体も、表裏共、熱圧接部を有することにより形態安定性が向上するため、例えば、本発明により得られる雌材用不織布を面ファスナとして用いると同時に布帛としても機能する用途、例えば、手術着等の布帛として用い、胴回り等に雄材を付けて着脱できるようにする用途や、おむつカバーやおむつ等の布帛、特に腰回り部の布帛として使用し、一部に雄材を取りつけて、雌材(布帛)に固定するベルト等としてする用途において、雄雌材との繰り返し脱着および人の呼吸や動き等により不織布(雌材)に付加されるせん断方向の力による不織布(布帛)の変形や、不織布形態の崩壊を防止することができる。
【0033】
このような熱圧接部を有していないと、雄材との繰り返し脱着において、雄材を剥離する際に、ループの一部が雌材基部から外れ毛羽状に発生した場合、連鎖的に非圧接部を構成している繊維までもがズルズルと抜け落ちやすくなる。熱圧接部が連続したネット状形態であることにより、よりこのような効果を向上させることができる。
【0034】
ネット状熱圧接部に囲まれてなる一つの非熱圧接部の面積は5mm2以上、ネット状熱圧接部の面積率は10〜60%であることが好ましい。非圧接部の外周近傍(すなわち、熱圧接部との境界付近に存在する非圧接部の繊維)においては、熱圧接処理による熱の影響を受けているため、圧接された状態に近い形態となっていることが多く、非熱圧接部の面積が5mm2未満であると、相対的に雄材と係合する非圧接部の面積率が小さくなることから、十分な係合を得られない傾向となる。逆に、非熱圧接部の面積が大きすぎると、ネット状熱圧接部を設ける効果が薄れ、ループが抜けやすくなるので、一つの非熱圧接部の面積の上限は、350mm2程度であることが好ましい。
【0035】
ネット状熱圧接部の面積率が60%を超えると、雄材との係合に寄与できる部分が小さくなり十分な係合を得られない傾向となり、一方、10%未満であると、熱圧接部を設ける効果が期待できない傾向となる。
【0036】
ネット状熱圧接部の形状は、特に限定するものではなく、例えば、図2に示すごとく6角形のハニカム状や、図3に示すごとく碁盤目状等が挙げられる。
【0037】
ネット状熱圧接部と非熱圧接部との高低差は1mm以上であることが好ましい。高低差が小さいと、係合時に雄材を雌材に押し付けたとき、圧接部分の厚みがネックとなり十分に雄材フックが雌材のループ空間に入り込めず、十分な係合強力が得られにくくなるため、高低差を1mm以上に設定することにより、雄材のフックが容易に非圧接部内へ入りやすくなるため、雄材との係合性が良好となる。
【0038】
また、本発明により得られる面ファスナ用雌材用不織布全体にバインダー樹脂を含浸してもよい。特に長繊維不織ウエブAと熱融着長繊維不織布Bが共に単一成分であったり、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維表面の重合体と熱融着長繊維不織布Bを構成する長繊維表面の重合体とが、相溶性がない場合には、繊維の抜け落ち防止や形態安定性を高めるのに有効である。
【0039】
使用するバインダー樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーを二種以上組み合わせて所望のモル比で共重合した共重合体やこの共重合体が架橋剤によって架橋されている架橋型のバインダー樹脂等、一般の合成樹脂を用いればよいが、オムツ等のように肌に直接触れるような用途に雌材を用いる場合等もあるので、用途に合わせた選択が必要である。
【0040】
バインダー樹脂の付着量としては、質量比で1〜15重量%が好ましく、特には1〜10質量%がより好ましい。バインダー樹脂の役割は、不織布の形態安定性向上とループ繊維の抜け落ち防止であるため、付着量が1質量%未満であると、少なすぎて役割を果たせず、一方、15質量%を超えると、雌材用不織布が非常に粗硬なものとなり、柔軟性を有するという本発明の課題を解決することが出来ないものとなってしまう。
【0041】
面ファスナ雌材用不織布全体の目付は、20〜150g/m2であることが好ましい。雌材用不織布の目付が20g/m2未満であると、布帛としての十分な強力が得られず、繰り返しのファスニングにより容易に雌材用不織布が変形しやすい。一方、150g/m2を超えると、ファスニング性能や雌材用不織布の形態安定性は十分であるが、通気性に劣るものとなり、ムレ等の皮膚への影響上好ましくない。また、コスト的にも大きくなりすぎる結果となり、使い捨て用途などには不経済となってしまう。
【0042】
本発明により得られる面ファスナ雌材用不織布の通気度は、80cc/秒・cm2以上であることが好ましく、より好ましくは、80〜250cc/秒・cm2である。通気度が80cc/秒・cm2未満であると、通気度が不足するため、面ファスナ雌材用不織布を直接肌に触れるような用途に用いた場合、ムレや発汗の妨げとなり、皮膚障害などを引き起こす原因となりやすい。
【0043】
図1は、本発明により得られる面ファスナ雌材用不織布の一例を示す概略断面図である。図1において、面ファスナ雌材用不織布(1)は、長繊維不織ウエブA(2)と、散点状の部分的熱融着部を有する熱融着長繊維不織布B(3)とが積層され、三次元的に交絡して一体化しており、熱融着長繊維不織布B表面には、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維が多数のループ(4)を形成しており、熱融着長繊維不織布Bおよび長繊維不織ウエブAの全面には、ネット状熱圧接部(5)を有し、長繊維不織ウエブAの非熱圧接部(6)は、実質的に熱による影響を受けていない。また、hは、非熱圧接部(6)と熱圧接部(7)との高低差である。
【0044】
次に、本発明の面ファスナ雌材用不織布の製造方法について説明する。まず、長繊維群が集積されてなる長繊維ウエブを、従来公知の方法、例えば、スパンボンド法等により作成する。すなわち、溶融紡糸法によって長繊維群を引き取りながら、この長繊維群を移動する捕集コンベア上に堆積させることによって集積する。具体的には、熱可塑性重合体を通常の紡糸口金より溶融紡出し、紡出された糸条を冷却した後、エアーサッカーにて牽引細化し、次いで公知の方法で開繊させた後、移動堆積装置上に長繊維不織ウエブとして堆積させる。
【0045】
エアーサッカーにて牽引する際の引取速度は、例えば3000〜6000m/分程度とするのが好ましい。3000m/分未満であると、長繊維の分子配向が十分に増大しないため、得られる長繊維の引張強力が不十分となる傾向となり、その結果、得られる雌材用不織布は、雄材との接合後、剥離の際に容易に伸びやすく、また、形態安定性に劣る傾向となる。一方、6000m/分を超えると、溶融紡糸時の製糸性が低下する傾向となる。
上記の方法で、堆積させて得た長繊維不織ウエブを長繊維不織ウエブAとして用いる。
【0046】
一方、長繊維不織ウエブに散点状の部分的熱融着部を設けて、熱融着長繊維不織布Bを作成する。この熱融着部を設ける方法としては、一対の加熱されたエンボスロールまたは加熱されたエンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置に通布することにより、エンボスロールの凸部に当接する部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法、部分的に穴が設けられた板やネットを当てて、その上から熱風処理を施し、熱風が当たる部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法、一対のエンボスロールまたはエンボスロールとフラットロールからなる超音波融着装置に通布することにより、エンボスロールの凸部に当接する部分の構成繊維を融着させて繊維同士を固定する方法等が挙げられる。
【0047】
エンボスロールの凸部の先端面の面積、配設密度によって、また、熱風処理の場合は熱風が通る板の穴やネットの目合いの大きさ、配設密度によって、熱融着長繊維不織布Bが有する部分的熱融着部の形態が決定される。したがって、凸部の形態、板の穴やネットの構成も、前述した熱融着長繊維不織布Bが有する熱融着部の形態条件と同様に、凸部の先端面の面積および板の穴面積、ネットの開孔面積が、0.04〜2mm2、ロール表面積(凸部を無視した状態での表面)に対する凸部の先端面の総面積比率、板の表面積(穴を無視した状態での表面)に対する穴の総面積比率、ネットの表面積(開孔を無視した状態での表面)に対する開孔の総面積比率が、2〜50%であることが好ましい。
【0048】
エンボス装置を用いる場合は、ロールの加熱温度は、長繊維を構成する熱可塑性重合体の融点未満の温度とし、好ましくは、融点未満〜融点より60℃低い温度の範囲に設定することが好ましい。長繊維が低融点重合体と高融点重合体とからなる複合繊維である場合は、低融点重合体の融点を基準とし、低融点重合体の融点未満〜融点より60℃低い温度の範囲とすることが好ましい。ロールの加熱温度が融点以上であると、凸部に当接する部分の軟化または溶融した重合体がロールに付着し、生産性が著しく低下することになる。融点より60℃を超えて低い温度であると、ロール間の線圧にもよるが、熱圧接点の熱融着が不十分となり、目的とする不織布の機械的強力が得られにくい。ロール間の線圧としては、処理を行う不織ウエブの目付により適宜選択すればよいが、98〜980N/cmの範囲とすることが好ましい。処理速度については、圧接温度およびロール線圧にもよるが、5〜30m/分とするのがよい。
【0049】
熱風処理を行う場合の処理温度は、長繊維を構成する熱可塑性重合体の融点以上の温度とし、好ましくは融点〜融点より20℃高い温度の範囲に設定することが好ましい。長繊維が低融点重合体と高融点重合体とからなる複合繊維である場合は、低融点重合体の融点を基準として行う。
【0050】
次に、得られた熱処理を施していない長繊維不織ウエブAと散点状の部分的熱融着部を有する熱融着長繊維不織布Bとを積層し、長繊維不織ウエブA側よりニードルパンチ処理することにより、長繊維不織ウエブAの構成繊維を熱融着長繊維不織布Bに三次元的に交絡させて一体化するとともに、熱融着長繊維不織布B表面に、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維からなる多数のループを形成させる。
【0051】
長繊維不織ウエブAの構成繊維は、熱処理が施されていないため、繊維同士が単に集積された状態であって固定されていない。そこで、長繊維不織ウエブAと熱融着長繊維不織布Bとを積層した積層体において、長繊維不織ウエブA側よりニードルパンチを施すことにより、ニードル針は、自由度の高い長繊維不織ウエブAの構成繊維を引っ掛ける。ニードル針に引っ掛かった長繊維不織ウエブAの構成繊維は、熱融着長繊維不織布B内を突き抜けて熱融着長繊維不織布B表面へループを形成することになる。このとき、熱融着長繊維不織布Bの構成繊維は、部分的熱融着によって固定されているために、ニードル針に引っ掛かりにくいのである。
【0052】
また、このニードルパンチ処理により、長繊維不織ウエブAの構成繊維が熱融着長繊維不織布Bに交絡し、長繊維不織ウエブAの構成繊維同士もまた交絡することで全体として一体化する。
【0053】
ニードルパンチの針密度は、使用するニードル針の種類や針深度によって適宜設定されるが、一般的に20〜100回/cm2であるのが好ましい。針密度が20回/cm2未満であると、層間の交絡の程度が低く十分に一体化できない傾向となる。また、熱融着長繊維不織布B表面に形成させるループの数が少なくなる。一方、針密度が100回/cm2を超えると、層間の交絡は強くなるが、ニードル針による長繊維の損傷が激しく、繊維自体が著しく強力の低いものとなってしまうため、雌材用不織布の機械的強力が劣る傾向となる。
【0054】
ニードルパンチを施した後、ネット状のエンボス模様を有するエンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置に、不織布表面にループを有する熱融着長繊維不織布Bがエンボスロールに当接するように通布するとよい。または、一対のネット状のエンボス模様を有するエンボスロールからなり、エンボスロールの凸部が互いに当接するエンボス装置に通布するとよい。エンボスロールの凸部が形成するネット状模様により、雌材不織布に付与されるネット状熱圧接部が決定されるので、一個の凹部の面積は5mm2以上、ロール表面積(凸部を無視した状態での表面)に対する凸部の総面積率は10〜60%とすることが好ましい。
【0055】
このエンボス処理の際、エンボスロールとフラットロールとからなるエンボス装置を用いる場合、フラットロールに全面が接する長繊維不織ウエブAにおいて、エンボスロールの凸部に相当しエンボスロール側より圧力が加わる部分(熱圧接部)以外の非熱圧接部が、熱による影響を受けないようにするため、フラットロールの加熱温度を考慮する。例えば、長繊維不織ウエブAの構成繊維がポリエチレンテレフタレート(融点255℃前後)である場合は、フラットロールの加熱温度を160〜180℃程度とし、ポリエチレン(融点130℃前後)である場合は、フラットロールの加熱温度を90℃程度とする。一方、熱融着長繊維不織布Bに接するエンボスロールは、該不織布Bの構成繊維がポリエチレンテレフタレート(融点255℃前後)である場合は、加熱温度を230〜240℃程度とし、ポリエチレン(融点130℃前後)である場合は、加熱温度を120℃程度とする。長繊維不織ウエブAに当接するフラットロールの加熱温度を低温とするのは、非熱圧接部における長繊維不織ウエブAの構成繊維に、熱の影響を受けないようにして、得られる雌材用不織布の柔軟性を担うためである。フラットロールの加熱温度が上記温度を超える高い温度であると、長繊維不織ウエブA全面が熱により溶融して繊維同士が融着してしまい、得られる雌材用不織布は、非常に硬化したものとなってしまうため、本発明の目的とするものが得られない。
【0056】
エンボスロールの凸部の高さ(彫刻の深さ)については、1mm以上とすることが好ましく、より好ましくは、2mm以上である。エンボスロールの凸部の高さによって、ネット状熱圧接部と非熱圧接部との高低差が決定される。凸部の高さが低くなると、凹部内の係合を司るループを潰すことになり、すなわち、凹部内のループがエンボスロールの熱の影響を受けて溶融接着したり、潰されたりし、雄材との係合性が劣る傾向となる。凸部の高さの上限は特に設定しないが、エンボスロールの摩耗や彫刻のためのコストを考慮して3mm程度であればよい。
【0057】
次に、雌材の形態安定性をより向上させる目的で、前述したバインダー樹脂を付着させることが好ましく、付着方法としては、公知のディッピング法、泡含浸法、スプレー法等を採用すればよい。
【0058】
図5は、本発明の面ファスナ雌材用不織布の製造方法の一例を示す概略図である。熱処理を施していない長繊維不織ウエブA(2)と散点状の部分的熱融着部を有する熱融着長繊維不織布B(3)とを積層し、長繊維不織布ウエブA側よりニードルパンチ機(7)によりニードルパンチ処理することにより、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維を熱融着長繊維不織布Bに三次元的に交絡させて一体化するとともに、熱融着長繊維不織布B表面に、長繊維不織ウエブAを構成する長繊維からなる多数のループを形成させる。次いで、ニードルパンチ処理後、エンボスロール(8)とフラットロール(9)からなるエンボス装置に、多数のループを有する熱融着長繊維不織布B側(3)がエンボスロール(8)に当接するように通布して面ファスナ雌材用不織布(1)を得る。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において各特性値は次のようにして求めた。
(1)単糸繊度(dtex)
吸引装置により牽引細化した繊維について電子顕微鏡を用いて、密度補正を行いもとめた。
【0060】
(2)熱圧接部と非熱圧接部の高低差(mm)
サンプル断面の写真撮影を行い、ループの平均高さと熱圧接部厚みを実測し、ループの平均高さを非熱圧接部の高さとし、その差を求め高低差とした。
【0061】
(3)圧縮剛軟度(cN)
不織布をMD方向(機械的方向)5cm×CD方向(機械的方向に直交する方向)10cmの長方形に切り出し、サンプルの短辺と短辺を合わせて、中央部をテープで張り合わせ、円筒状のサンプルを作成する。サンプルを平板上に立て、MD方向軸に垂直な別の平板で押しつぶした時に平板に掛かる最大強力を株式会社東洋ボールドウイン製テンシロンRTM−500で圧縮速度50mm/分で測定し、MD方向圧縮剛軟度とした。
切り出しサンプルの向きを変え、同様な手法でCD方向圧縮剛軟度を求めた。MD、CD方向各々n=5で測定し、全平均値をもって圧縮剛軟度とし、柔軟性の指標とした。この値については小さいほど柔軟性が優れており、196cN以下であることが好ましく、より好ましくは147cN以下である方が望ましい。
【0062】
(4)CD方向降伏点強度(N)
面ファスナ不織布より、MD方向5cm×CD方向30cmの長方形に試験片を切り出し、前記テンシロンにて、チャック間20cm、引張速度20cm/分にて測定を実施し、得られた結果のN=5の平均値とし、この値をもって形態安定性の指標とした。この値については16.7N以上であることが好ましく、さらには19.6N以上であることが好ましい。
【0063】
(5)係合剥離強力(N/cm)
JIS L3416の面ファスナの試験方法に準じて行った。
サンプル片を幅25mm、長さ100mmとし、同大きさのYKK製マッシュルームテープ(雄側)と重ね合わせ、端部50mm長が係合するよう、24.5Nの鉄製のローラーを二往復転圧して係合した。これを上記テンシロンを用い、つかみ間隔10cm、引張速度30cm/分で剥離した。強力値は剥離するときに示す極大値6点と極小値6点の平均から求め、さらにn=5の平均を強力値とした。
【0064】
(6)係合剥離強力測定後の毛羽立性
係合剥離強力測定後の雌材表面を目視にて観察し、ループが切れたり、外れて発生した毛羽の状態を下の5段階にて評価した。
5;極めて良好
4;良好
3;ふつう
2;やや不良
1;不良
【0065】
(7)通気度(cc/秒・cm2)
JIS L1096により測定した。
【0066】
(8)5%伸張時強度(N)
面ファスナ雌材用不織布より、30cm×5cmの長方形に試験片を切り出し、株式会社東洋ボールドウィン製テンシロンRTM−500にて、チャック間10cm、引張速度20cm/分にて測定を実施し、得られた結果のN=5の平均値を求め、5%伸張時強度(N)とした。MD方向、CD方向の両方向について測定した。
【0067】
実施例1
融点255℃のポリエチレンテレフタレートを、溶融温度285℃で口金より溶融紡出した。紡糸速度5000m/分でエアーサッカーにて繊維の単糸繊度が3デニールになるよう引き取り、延伸後の繊維をネット上に、単位面積(m2)当たりの質量が35gのウエブになるように捕集した。得られたウエブを一対のエンボッシングロールからなるエンボス装置に通し、ロール温度230℃とし、熱融着部の面積が0.4mm2、熱融着率10%の散点状の熱融着部を有し、厚みが250μmの不織布を得た。
【0068】
得られたウエブと熱融着部を有する不織布とを積層し、針の進入側がウエブ側になるように、ニードルパンチング機械(針:フォスター社製、クラウンバーブニードル)にて針密度50回/cm2、針深9mmでニードルパンチ処理を行い、交絡一体化させると同時に、熱融着部を有する不織布表面にループを形成させた。
【0069】
得られた積層不織布を図2に示すごとき230℃に加熱したハニカム状エンボスロール(エンボス部の高さ1.5mm)と200℃に加熱したフラットロールからなる一対のエンボス装置にて、ループ側がエンボスロール側になるように圧接した。そのとき、非熱圧接部の面積100mm2、熱圧接部の面積率は24%であった。
【0070】
次いで、アクリル系樹脂(株式会社大日本インキ化学工業製)を固形分付着量で6質量%になるように含浸した後、乾燥を行って本発明の面ファスナ用雌材を得た。
【0071】
実施例2
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレートを芯成分、融点125℃の高密度ポリエチレンを鞘成分とし、複合比が質量比で1/1である芯鞘型複合繊維を紡出し、エアーサッカーにて単糸繊度4デニールになるよう引き取り、延伸後の繊維をネット上に、単位面積(m2)当りの質量が30gのウエブになるように捕集した。
【0072】
得られたウエブを実施例1で用いたエンボス装置に通し、ロール温度120℃で、散点状の熱融着部を有し、厚みが200μmの不織布を得た。
【0073】
次いで、得られた芯鞘型複合繊維からなるウエブと得られた熱融着部を有する不織布とを積層し、実施例1と同様にしてニードリングを行った。
【0074】
得られた積層不織布を図3に示すごとき120℃に加熱した碁盤目状エンボスロール(エンボス部の高さ1.5mm)と90℃に加熱したフラットロールからなるエンボス装置にて、ループ側がエンボスロール側になるように圧接し、本発明の面ファスナ用雌材を得た。
【0075】
実施例3
実施例2において、表1に示す非圧接部面積、圧接部面積率となる碁盤目状エンボスロールを用いた以外は、実施例2と同様にして本発明の面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0076】
実施例4
実施例2において、ニードリング後の圧接の際、図4に示すごとき、非圧接部分が点在せず連続している圧接模様となる織目状エンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置を用いた以外は実施例2と同様にして、面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0077】
実施例5
実施例2において、散点状の熱融着部を有する不織布として、目付55g/m2、厚み450μmのものを用いた以外は、実施例2と同様にして、面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0078】
実施例6
実施例2において、表1に示す非圧接部面積、圧接部面積率となる碁盤目状エンボスロールを用いた以外は、実施例2と同様にして、面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0079】
実施例7
実施例2において、ニードリング後の熱圧接処理を施さなかった以外は、実施例2と同様にして、面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0080】
実施例8
実施例2において、表1に示す非圧接部面積、圧接部面積率で、エンボス部高さ2.5mmの碁盤目状エンボスロールを用いた以外は、実施例2と同様にして、面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0081】
比較例1
実施例2において、ニードリング後の熱圧接処理の際、フラットロールの加熱温度を130℃とし、非ループ面を全面熱融着させた以外は、実施例2と同様にして面ファスナ雌材用不織布を得た。
【0082】
得られた面ファスナ用不織布の特性値と試験結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1から明らかなように、実施例1〜3、8の面ファスナ雌材用不織布は、必要十分な係合強力を有し、柔軟性、形態安定性、通気性共に優れたものであった。
【0085】
実施例4の面ファスナ雌材用不織布は、織目状熱圧接部を有し、非熱圧接部が連続しているので、実施例1〜3のものに比べると、係合剥離後に表面に毛羽がやや見られたが、必要十分な係合強力を有し、柔軟性に優れたものであった。
【0086】
実施例5の面ファスナ雌材用不織布は、表面に存在するループの高さがやや小さいものであったが、あまり強力な係合力を必要としない用途では十分に使用できる係合強力を有し、柔軟性、形態安定性に優れたものであった。
【0087】
実施例6の面ファスナ雌材用不織布は、非熱圧接部の面積がやや小さいものであったが、あまり強力な係合力を必要としない用途では十分に使用できる係合強力を有し、形態安定性に優れたものであった。
【0088】
実施例7の面ファスナ雌材用不織布は、熱圧接を施さなかったものであるが、あまり強力な係合力を必要としない用途では十分に使用できる係合強力を有し、形態安定性に優れたものであった。
【0089】
比較例1では、非ループ面(不織ウエブA側面)が、繊維同士が全面的に熱融着しているものであったため、粗硬感を有して肌触りに劣り、本発明が目的とするものではなかった。
【0090】
【発明の効果】
本発明により得られる面ファスナ用雌材によれば、ループ生成に寄与し、かつ柔軟性に優れた長繊維不織ウエブAと形態安定性に優れる熱融着長繊維不織布Bとを積層したものであり、熱融着長繊維不織布Bがループを固定するため、適度な係合強力と係合部分の繰り返し脱着においても面ファスナ雌材が容易に伸びたり、切れたりしない形態安定性と容易に毛羽立たないため、実用性に優れ、また、長繊維不織ウエブAは、全面的に熱処理が施されていないため、粗硬感がなく肌触りの良好で柔軟性に優れ、通気性に優れた面ファスナ雌材を提供することができたものである。
【0091】
このような本発明により得られる面ファスナ雌材用不織布は、雄材のフックと係合する雌材として使用することは、もちろんのこと、直接肌に接する用途、例えば、手術着やおむつカバー、おむつ本体を構成する布帛として用い、その布帛の一部に雄材を取り付けて雌材(布帛)に固定するベルト等として用いても、ムレ感がなく、肌を傷つけず、肌触りがよいため快適に着用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の面ファスナ雌材用不織布の概略断面図である。
【図2】本発明に用いるエンボスロールの一例を示す概略図ある。
【図3】本発明に用いるエンボスロールの一例を示す概略図ある。
【図4】本発明に用いるエンボスロールの一例を示す概略図ある。
【図5】本発明の面ファスナ雌材用不織布の製造方法の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 面ファスナ雌材用不織布
2 長繊維不織ウエブA
3 散点状の部分的熱融着部を有する熱融着長繊維不織布B
4 ループ
5 ネット状熱圧接部(エンボスロールの凸部)
6 非熱圧接部(エンボスロールの凹部)
h 非熱圧接部(6)と熱圧接部(7)との高低差
7 ニードルパンチ機
8 エンボスロール
9 フラットロール
Claims (5)
- 熱処理を施していない長繊維不織ウエブAと、散点状の部分的熱融着部を有することにより構成繊維が固定されてなる熱融着長繊維不織布Bとを積層し、前記長繊維不織ウエブA側よりニードルパンチ処理することにより、前記長繊維不織ウエブAを構成する長繊維を前記熱融着長繊維不織布Bに三次元的に交絡させて一体化させるとともに、前記長繊維不織ウエブAを構成する長繊維を、前記熱融着長繊維不織布Bを突き抜けさせて前記熱融着長繊維不織布B表面に多数のループとして形成させることを特徴とする面ファスナ雌材用不織布の製造方法。
- 熱融着長繊維不織布Bが有する散点状の部分的熱融着部は、エンボス装置を通布することにより設けられることを特徴とする請求項1記載の面ファスナ雌材用不織布の製造方法。
- 熱融着長繊維不織布Bが有する散点状の部分的熱融着部は、部分的熱融着部の1個の面積が0.04〜2mm 2 、熱融着率が2〜50%であることを特徴とする請求項1または2記載の面ファスナ雌材用不織布の製造方法。
- 熱融着長繊維不織布Bの厚みは400μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の面ファスナ雌材用不織布の製造方法。
- ニードルパンチ処理後、ネット状のエンボス模様を有するエンボスロールとフラットロールからなるエンボス装置に、不織布表面に多数のループを有する熱融着長繊維不織布B側がエンボスロールに当接するように通布することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の面ファスナ雌材用不織布の製造方法。
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