〔第1実施形態について〕
まず、本発明にかかる椅子用床ずれ防止クッションの第1実施形態について説明する。
本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、椅子の座面に載置して用いられるものであり、体圧分散性を有する第1の領域と、この第1の領域を囲繞するとともに、当該第1の領域よりも硬質とした第2の領域と、を有するクッション本体を具備するものである。
第1の領域は、合成樹脂など比較的軟質の素材で形成され、着座者の臀部や大腿部などに局部的に大きくかかる加重を分散させる性能、所謂体圧分散性を有している。この第1の領域によって、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、長期間着座した状態の着座者の床ずれを防止することを可能としている。
そして、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第1の領域よりも硬質な素材で形成された第2の領域を有しており、この第2の領域は、第1の領域を囲繞するように配設されている。かかる構成とすることにより、例えば、当該クッションを車椅子の座面に載置した場合において、着座者がトランスファーボードを利用して、例えばベッド等から車椅子へ移乗する場合、トランスファーボードの端部を当該第2の領域に安定して設置することができるため、従来のクッションの課題であった移乗のしづらさを解消することが可能となる。
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、体圧分散性を有する第1の領域を、給排気自在とした複数のエアセルを配置して形成する一方、第2の領域を発泡材により形成している。
すなわち、第1の領域は、配置された複数のエアセルがそれぞれ給排気によって膨縮するため、着座者の身体の特定箇所に集中してかかる荷重をより分散させ、当該着座者の床ずれを有効に防止することができる。また、第2の領域を発泡材により形成することにより、クッションとしての使い心地の良さを維持しつつも移乗のし辛さを解消することができる。
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションにおける第2の領域は、発泡材により形成した枠体としている。この枠体でエアセルの端部に形成された鍔部を挟持した状態で、第1の領域を囲繞することとしている。なお、発泡材としては、発泡ウレタンなどが好適な材料となる。
すなわち、枠状に形成された第2の領域により第1の領域の鍔部を挟持する構成とすることによって、使用者の臀部や大腿部を受ける第1の領域を狭めることなく、クッション本体をコンパクト化することができ、例えば、座面の広さに限りがある車椅子などに載置した場合に、体圧分散性を有する第1の領域の有効面積を可及的に広くとることができる。さらに、前記構成によって第1の領域と第2の領域との一体性が高まり、クッション本体としての使い心地の良さや使い勝手の良さを向上させることができる。
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第1の領域内に、押圧力に度合差をつけた領域を区画形成している。
すなわち、従来のクッションは、単に体圧分散を図っただけのものが多く、車椅子上での生活が主となる者には、さらなる改善点が残されていた。そこで、本実施形態では、例えば、第1の領域における、臀部や大腿部など体重が集中してかかる部位に位置する部分を特定の領域として区画形成し、当該特定の領域における身体への部位への押圧力(クッションからの反力)の度合いを他の領域における押圧力よりも小さくすることにより、例えば、着座者の坐骨周辺など、特定箇所に集中してかかる押圧力をより小さくし、第1の領域における体圧分散性をより向上させることができるようにしている。
さらに、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第1の領域内に、着座者の大腿部に対する刺激力に度合差をつけた領域を形成している。
すなわち、例えば、第1の領域において、着座者の大腿部に対応する位置に小さな突起を設けることにより、当該大腿部を刺激しマッサージ効果を得ることができる。また、第1の領域を給排気自在とした複数のエアセルで形成した場合、当該大腿部に対応する位置にあるエアセルの給排気タイミングを、他のエアセルの給排気タイミングよりも速くすることにより、当該大腿部を刺激し血流促進効果を促すことができる。
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、第2の領域における着座者の大腿部に対応する位置に凹部が形成されており、これにより、第1の領域が有する体圧分散性能をより効果的に発揮させることができる。
また、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションは、クッション本体の下側にベースクッションを、上側にはカバークッションを重合配設し、カバークッションを、ベースクッションよりも低反発材料で形成している。
かかる構成とすることにより、例えば、折り畳み式の車椅子のように、着座者の体重によって座面が大きく沈んでしまうような椅子に同クッションを適用した場合であっても、ベースクッションによってクッション全体の形状を適度に維持することができ、さらに、カバークッションをベースクッションよりも低反発材料で形成することにより、座り心地の良さを維持することができる。
以下、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションについて、図面を参照しながらより具体的に説明する。図1は本実施形態に係る椅子用床ずれクッションの使用状態を示す説明図であり、図2は同クッションの分解斜視図である。なお、ここでは、一例として、椅子用床ずれ防止クッションを車椅子の座面に載置した場合について説明するが、本発明は、これに限定するものではなく、オフィスチェアや折り畳み式の椅子など各種の椅子について適用することができる。
図1に示すように、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッション(以下、単に「クッション1」とする。)は、車椅子Cの座面に載置して使用するものであり、汚れ防止のためクッションカバー2により被覆されている。なお、クッションカバー2は、洗濯可能な透湿性素材を用いるとよい。
クッション1は、第1の領域としてのセルユニット11と第2の領域としてのサイドクッション12とを有するクッション本体10を備え、さらに、このクッション本体10の下側にベースクッション20を、上側にはカバークッション30を重合配設して形成されている。すなわち、クッション1は、カバークッション30、サイドクッション12、ベースクッション20を外装として、セルユニット11を内蔵した状態となっている。
図2に示すように、ベースクッション20は、クッション1の土台となる部材であり、発泡ウレタンなどの発泡材のうち、高密度のものを用いて形成されている。また、このベースクッション20は、セルユニット11の略下半分を収納可能とするため、同セルユニット11の下面の形状に沿った段部89、90が形成されている。
また、この段部89、90の底面部分における、着座者の臀部、特に坐骨を中心とした箇所及び左右の大腿部に位置する箇所には、それぞれ切欠部81、82、83が形成されている。このように、臀部や大腿部など着座者にとって自己の体重が集中的にかかる部位に対応する位置に切欠部81、82、83を設けることにより、臀部や大腿部かかる押圧力を軽減させることができる。また、これら切欠部81、82、83は、ベースクッション20を矩形状に切欠しただけの簡易な構成のものであり、低コストでの製造が可能である。
なお、切欠部81、82、83は、必ずしもベースクッション20を切欠して形成されるものである必要はなく、例えば、所定の深さを有する凹部であってもよい。かかる構成とすることにより、ベースクッション20の強度が高まり、クッション1全体の安定性を向上させることができる。ここで、所定の深さとしては、着座者が着座した状態でセルユニット11の下面が当該凹部と接触しない程度の深さであることが望ましい。
また、ベースクッション20には、後述するセルユニット11の給排気を行うための各種部材(給排気装置など)を収納するスペースとしての切欠部84が同ベースクッション20の後部左側に設けられている。
カバークッション30は、板状部材であり、ベースクッション20に用いられる発泡材よりも密度が小さく低反発の発泡材で形成されており、着座者の身体に馴染み易く、セルユニット11の体圧分散性を極力阻害しないようにしている。
また、上記のように、クッション1は、カバークッション30を、ベースクッション20よりも低反発材料で形成したため、例えば、折り畳み式の車椅子のように、着座者の体重によって座面が大きく沈んでしまうような椅子に同クッション1を適用した場合であっても、ベースクッション20によってクッション1全体の形状を適度に維持することができるとともに、カバークッション30によって座り心地の良さを維持することができる。
クッション本体10は、体圧分散性を有するセルユニット11と同セルユニット11よりも硬質なサイドクッション12とを有している。
セルユニット11は、合成樹脂からなる部材であり、矩形箱型のエアセル100を複数配置して形成される。このエアセル100は、その内部に空気を給排自在に構成されており、さらに、本実施形態においては、複数のエアセル100を、空気の給排が交互のタイミングで行われる二系統に区分して、第1の系統に属するエアセル101と第2の系統に属するエアセル102とが隣設するように配置している。このように、セルユニット11は、空気の給排によってエアセル101及びエアセル102を交互のタイミングで膨縮させることにより、体圧分散効果を得ることができる。かかる点については、後述する。
また、セルユニット11には、エアセル100を複数配置してなる領域の端部に鍔部120が形成されており、この鍔部120上には、さらに、各エアセル100に空気を給排するための給排パイプ130、140が形成されている。
サイドクッション12は、セルユニット11よりも硬質な発泡ウレタンなどの発泡材により形成された枠体であり、当該セルユニット11を囲繞するように構成されている。
また、このサイドクッション12の底部には、段部76が設けられている。
また、このサイドクッション12における、着座者の両大腿部に対応する位置には、それぞれ凹部71,72が形成されており、これにより、当該部位に集中的にかかる負荷を小さくし、床ずれを防止することが可能となっている。また、同サイドクッション12の後部左側には、後述するセルユニット11の給排気を行うための各種部材を収納するスペースとしての切欠部73が設けられている。
クッション1は、このように形成された各部材を、下からベースクッション20、セルユニット11、サイドクッション12、カバークッション30の順に積層することにより形成される。
そして、各部材を積層した際、クッション1は、ベースクッション20における上端部88及び段部89からなる領域と、サイドクッション12の下端部75及び段部76とからなる領域とによって、セルユニット11の鍔部120が挟持される構成としている。
次に、セルユニット11におけるエアセル100の給排気の仕組みについて、図3〜5を用いて具体的に説明する。図3はセルユニット11の模式的説明図であり、図4はクッション1におけるエアセル100の制御ブロック図であり、図5はエアセルの給気・排気タイミングの説明図である。
図3に示すように、セルユニット11は、複数のエアセル100を空気の給排が交互のタイミングで行われる第1のエアセル101と第2のエアセル102に区分し、しかも、第1のエアセル101と第2のエアセル102とを隣接するように配置している。また、図中、130は、第1のエアセル101へ空気を給排する第1給排パイプ、140は、第2のエアセル102へ空気を給排する第2給排パイプであり、両給排パイプ130、140は給排気装置5に連通連結している。また、第1、第2給排パイプ130,140は、それぞれ連通管131、141を介して各エアセル101、102と連通している。なお、図中、137、147は、排気バルブであり、手動でエアセル100の排気を行う際に用いられる。このように、セルユニット11は、各給排パイプ130,140の給排気装置5及び排気バルブ137,147との連結部分を、全てセルユニット11の後方左側の一箇所に集中させており、かかる構成とすることにより、クッション1全体としての見栄えの良さを保つとともに、使い勝手の良さを向上させることができる。
給排気装置5は、内蔵したポンプにより各エアセル100へ空気を給排する装置である。この給排気装置5は、予め設定された所定時間ごとに空気の送気流路を切り替えるように制御されており、ポンプに連通する空気の送気流路が閉じられた場合は、逆に大気開放されるように構成されている。
上記構成により、給排気装置5を駆動すると、第1のエアセル101と第2のエアセル102とには、交互に空気が充填されることとなる。このように、各エアセル101、102は、空気が充填されていない場合は、着座者の体重によって萎み、空気が充填された場合は、膨張するという変化を繰り返すことにより、体圧分散効果を発揮して、床ずれを防止することが可能となる。
しかも、第1のエアセル101と第2のエアセル102とは、隣設するように配設されており、着座者の身体を保持する部分の入れ替わりも近接したところでなされるため、着座者に体圧の変化を意識させることがなく、使い心地の良さを維持することができる。
ここで、給排気装置5の構成について、図4及び図5を用いて説明する。
図4中、Pは各エアセル100に給気するためのポンプであり、同ポンプPは、第1給気用電磁弁61、第2給気用電磁弁62及び第1給排パイプ130、第2給排パイプ140を介して、それぞれ第1のエアセル101及び第2のエアセル102と連通連結している。
また、第1給排パイプ130の中途部には第1圧力センサS1が、第2給排パイプ140の中途部には第2圧力センサS2が設けられている。さらに、第1給気用電磁弁61と第1圧力センサS1との間には第1排気用電磁弁63が、第2給気用電磁弁62と第2圧力センサS2との間には第2排気用電磁弁64が設けられている。
これら各電磁弁61〜64、圧力センサS1,S2及びポンプPは、制御部7により制御される。
すなわち、圧力センサS1、S2からのセンシング信号に基づいて、ポンプPの駆動・駆動停止、及び各電磁弁61〜64の開閉動作をタイミングを計りながら実行することにより、第1のエアセル101と第2のエアセル102とに空気を交互に給排するようにしている。
また、図中、Vは家庭用電源(交流100V)であり、ポンプPに給電するとともに、トランスTを介して制御部7に接続している。
ここで、上記制御部7は、刺激モードと、体圧分散モードとを備えており、図5に示すように刺激モードと体圧分散モードが交互に行なわれる。
すなわち、制御部7は、実線で示すように、先ず第1のエアセル101に対して給気を行い、膨張状態を所定秒(5秒程度)維持させた後、所定時間だけ排気を行う。
さらに、制御部7は、第1のエアセル101の排気と同時に第2のエアセル102の給気を開始し、当該第2のエアセル102の膨張状態を所定秒(5秒程度)維持させた後、所定時間だけ排気を行う。この一連の動作を刺激モードとする。
また、上記各エアセル101、102はいずれも全ての空気が排気されるのではなく、いずれのエアセル101、102にも一部の空気は残したままの状態で所定秒(20秒程度)維持される。この状態を体圧分散モードとする。なお、一部の空気を維持するには排気時間で規定しても良いが、圧力センサS1、S2により所定の圧力を維持するように制御してもよい。
給排気装置5は、以上のようにして刺激モード及び体圧分散モードを交互に行う。クッション1は、このように交互に異なるモードを規則的に実行することにより、一層の床ずれ防止効果を発揮することができる。
また、制御部7は、上記刺激モード及び体圧分散モードのほかに、セルユニット11に設けられた全てのエアセル100を給気により膨張させ、かかる膨張状態を維持する高圧静止モードを備えている。この高圧静止モードは、着座者が移乗を行う際に用いられるものであり、全てのエアセル100が膨張して高圧状態が維持されるため、より安定した移乗が可能となる。
さらに、かかる高圧静止モード中においては、エアセル100のみでなく給排パイプ130、140の膨張状態が維持されるため、トランスファーボード等を用いての移乗もより安定して行うことができる。かかる点については、後述する。
また、セルユニット11には、押圧力に度合差をつけた領域が区画形成されている。以下、かかる構成について、図6〜9を用いてより詳細に説明する。図6はセルユニット11の模式的説明図であり、図7は図6のA−A線における断面図であり、図8は図6のB−B線における断面図であり、図9はエアセル100の変形例を示す説明図である。
図6に示すように、セルユニット11には、着座者の身体の部位に対する押圧力が他のエアセル100と比較して小さいエアセル100による領域150、151、152(図中、灰色で着色された領域)が区画形成されている。これらの領域は、それぞれ着座者の臀部、右大腿部、左大腿部に対応する位置に設けられており、これらの部位に集中的にかかる荷重を分散させることができる。
本実施形態では、当該領域にあるエアセル100の高さを、他のエアセル100の高さよりも低く形成することにより、押圧力の度合差をつけることとしている。
すなわち、図7に示すように、着座者の臀部に対応する領域150(以下、「臀部支持領域150」とする。)に属するエアセル100は、その他のエアセル100と比較して若干低く形成されている。また、図8に示すように、着座者の右大腿部に対応する領域151(以下、「右大腿部支持領域151」とする。)及び着座者の左大腿部に対応する領域152(以下、「左大腿部支持領域152」とする。)に属するエアセル100も、臀部支持領域150に属するエアセル100と同様に、その他のエアセル100と比較して若干低く形成されている。かかる構成とすることにより、臀部支持領域150、右大腿部支持領域151、左大腿部支持領域152に属するエアセル100による押圧力をその他のエアセル100による押圧力よりも小さくすることができ、したがって、着座者の体重が集中的にかかる臀部及び大腿部への押圧力をより小さくし、セルユニット11における体圧分散性をより向上させて床ずれを防ぐことができる。なお、臀部支持領域150に属するエアセル100は、上側のセル51と下側のセル52とを異なる高さに形成したが、下側のセル52を上側のセル51と同じ高さに形成してもよい。
さらに、ベースクッション20には、着座者の臀部及び大腿部に対応する位置に切欠部81、82、83が設けられている。すなわち、臀部支持領域150、右大腿部支持領域151、左大腿部支持領域152に属するエアセル100は、ベースクッション20からの反発力を受けることがなく、さらに、着座者の体重によってクッション1が撓んだ際に切欠部81、82、83により形成された空間内に沈み込むため、着座者の臀部及び大腿部への押圧力をさらに小さくすることができる。
しかも、各領域150、151、152にあるエアセル100以外のエアセル100(すなわち、各領域150、151、152の周囲にあるエアセル100)は、ベースクッション20の段部90により支持されているため、着座者の体重がかかった際に、ベースクッション20からの反発力によって当該体重を確実に受けることができる。また、セルユニット11全体が過剰に撓むことを防止することもできる。
ところで、図7に示すように、クッション1は、ベースクッション20の上端部88及び段部89からなる領域と、サイドクッション12の下端部75及び段部76とからなる領域とによって、セルユニット11の鍔部120を挟持する構成としている。ここで、ベースクッション20の段部89及びサイドクッション12の段部76により形成される空間は、セルユニット11の鍔部120に設けられた給排パイプ130、140の収納スペースとなっている。
このように、セルユニット11の鍔部120をサイドクッション12及びベースクッション20で挟持する構成とすることにより、セルユニット11のうちエアセル100により形成される領域を狭めることなく、クッション本体10をコンパクト化することができ、例えば、座面の広さに限りがある車椅子などに載置した場合に、体圧分散性を有する第1の領域の有効面積を可及的に広くとることができる。さらに、前記構成によってセルユニット11とサイドクッション12との一体性が高まり、クッション本体10としての使い心地の良さや使い勝手の良さを向上させることができる。
ここで、給排パイプ130、140は、上述した高圧静止モード中において、同パイプ130、140内に空気が充填され膨張すると、サイドクッション12の段部76とベースクッション20の段部89とに当接するよう構成されている。かかる構成とすることにより、上方から荷重がかかった際にも、カバークッション30やサイドクッション12の段部76が給排パイプ130、140によって支持されるため、例えば、着座者がトランスファーボード等を用いて移乗する際、当該トランスファーボード等の荷重によってクッション1の端部が変形し難くなり、着座者は安定して移乗を行うことができる。
なお、本実施形態では、上述のように、セルユニット11の鍔部120をサイドクッション12及びベースクッション20で挟持する構成とすることとしたが、図9に示すように、サイドクッション12のみで挟持することとしてもよい。
すなわち、図9に示すように、サイドクッション12’を断面視略コの字状の枠体に形成し、このコの字内部にセルユニット11の鍔部120を挿入することにより、同鍔部120がサイドクッション12’により挟持された状態とする。また、ベースクッション20’は、ベースクッション20と同素材でできた板状部材に、着座者の臀部及び両大腿部に対応する切欠部81、82、83を設けた形状とする。かかる構成とすることにより、サイドクッション12’及びベースクッション20’の形状を簡素化することができ、クッション1をより低コストで製造可能となる。
なお、本実施形態では、セルユニット11の上部にカバークッション30を配設することで、臀部支持領域150に属するエアセル100にかかる着座者の体重をより自然に他のエアセル100へ伝えることができる。
なお、本実施形態では、エアセル100の高さを異ならせることにより臀部や大腿部への押圧力に度合差をつけることとしたが、これに代えて、例えば、各領域150、151、152に属するエアセル100の材質をその他のエアセル100よりも軟質のものとしたり、各領域150、151、152に属するエアセル100の厚みをその他のエアセル100の厚さよりも薄くしたりすることにより当該押圧力に度合差をつけることとしてもよく、或いは、連通管131、141の配置を変更するなどして、各領域150、151、152に属するエアセル100の給排気を他のエアセル100とは別系統で行うようにしたうえで、各領域150、151、152に属するエアセル100への給気量を他のエアセル100への給気量よりも少なくなるよう給排気装置5を用いて制御することにより、押圧力に度合差をつけることとしてもよい。
また、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152には、着座者の大腿部に対する刺激力に度合差をつけた領域を形成することもできる。
すなわち、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属するエアセル100の給排気を他のエアセル100とは別系統で行うようにし、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属するエアセル100の給排気を他のエアセル100の給排気よりも速いタイミングで行うように給排気装置5を制御する。かかる構成とすることにより、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属するエアセル100が大腿部を集中的に刺激し、血流促進のマッサージ効果を得ることができる。
また、図10に示すように、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152に属するエアセル100の上側のセル51の上部に突起55を設けてもよい。かかる構成とすることにより、当該突起55が大腿部を刺激し、つぼ押し効果による血流促進を促すことができる。
また、本実施形態では、ベースクッション20に切欠部81、82、83を設けることにより、臀部及び大腿部に集中的にかかる荷重を分散させることとしたが、これに代えて、着座者の臀部から大腿部にかけての形状に応じた凹部を設けてもよい。
すなわち、図11に示すように、ベースクッション20の底部には、着座者の臀部に対応する位置に、臀部の形状に沿った形状を有する凹部85が形成されている。すなわち、この凹部85の底部は、着座者の坐骨部分を中心として湾曲上に形成されており、また、当該凹部85の側面は、臀部の側面に沿って傾斜している。また、同様に、着座者の大腿部に対応する位置には、大腿部の形状に沿った形状を有する凹部86、87が形成されている。そして、凹部86、87は、着座者の身体に沿って形成された隆起部を介して凹部85と連続している。かかる構成とすることにより、着座者の身体との一体性が増し、使い心地及び体圧分散効果を向上させることができる。なお、これら凹部85、86、87は、それぞれ底面部分を刳り貫いた切欠部であってもよい。かかる構成とすることにより、材料費を削減することができる。
また、本実施形態においては、臀部支持領域150、右大腿部支持領域151及び左大腿部支持領域152にあるエアセル100の高さを、他のエアセル100の高さよりも低く形成することにより押圧力に度合差をつけることとしたが、セルユニット11に上記のような押圧力に度合差をつけた領域を区画形成しなくとも、ベースクッション20に設けられた切欠部81、82、83により、押圧力に度合差をつけることは可能である。
このように、セルユニット11に、押圧力に度合差をつけた領域を区画形成せず、ベースクッション20の切欠部81、82、83のみによって押圧力に度合差をつける構成とすることにより、例えば、大人用や子供用或いは女性用など、年齢や性別によって押圧力に度合差をつけた領域の大きさが異なるクッション1を製造する際に、ベースクッション20の切欠部81、82、83の大きさのみを変更すればよいので、製造コストの削減に資することができる。また、これら切欠部81、82、83は、ベースクッション20を単に切欠しただけの簡易な構成であるため、設計上の自由度も向上させることができる。
〔第2実施形態について〕
ところで、上記実施形態で説明した椅子用床ずれ防止クッション1には、エアセルの給排気動作のオン・オフやエアセルの膨縮度合いの調節などを着座者の手元で行うために、クッション1とコード等を介して接続されるリモコン装置を設けることもできる。
しかしながら、このようなリモコン装置を設けた場合、着座者が当該リモコン装置の置き場に困る場合がある。特に、クッション1を車椅子に適用した場合、当該車椅子にリモコン装置等の小物を収納するようなスペースがない場合も多く、かかる場合、着座者は、リモコン装置を常に持ち続けるか、或いは、自分の膝の上等に置いておかなければならず不便である。しかも、着座者が椅子に座ったり椅子から離れたりする際にコードが邪魔になるおそれもあり、見た目にも問題がある。
そこで、本発明の第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションでは、クッションカバーにリモコン装置の収納部を設けることにより、上記のような課題を解決することとした。
すなわち、第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションは、エアセルの給排気動作を制御する制御ユニットと、クッション本体を覆うクッションカバーとを具備し、クッションカバーは、少なくとも枠体に形成された第2の領域の周側面を覆う部分に制御ユニットを収納する収納部を有する構成とした。
ここで、制御ユニットとは、着座者がエアセルの給排気動作を操作するためのリモコン装置であり、この制御ユニットをポンプ、制御部、電磁弁等を内蔵した給排気装置と所定長さのコードを介して接続することによって、着座者がエアセルの操作を手元で行うことができる構成としている。
そして、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションは、かかる制御ユニットを収納するための収納部をクッションカバーに配設することにより、着座者が制御ユニットを使用しない場合でも、当該制御ユニットの置き場に困らないようにしている。
しかも、収納部は、クッションカバーにおける、第2の領域(枠体)を含むクッション本体等の周側面に対応する位置に設けられているため、着座者は、制御ユニットの取り出しや収納をより容易に行うことができる。
特に、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションにおいて、収納部は、クッションカバーにおける、第2の領域の着座者前方側の周側面に対応する位置に配置されている。
すなわち、通常、椅子用床ずれ防止クッションの着座者前方側の周側面と着座者のふくらはぎ部との間には、ある程度の隙間ができるものであり、かかる位置に収納部を配設することにより、無駄なスペースを有効利用することができる。
また、先の実施形態において、給排気装置は、着座者の後方側に、しかもクッション本体とは別体に配設されていたが、本実施形態では、クッション本体の着座者前方側に配設され、しかも、クッション本体等とともにクッションカバーに収容される構成としている。したがって、制御ユニットを収納部から取り出さずに操作を行う場合でも、制御ユニットが硬質な素材で形成された第2の領域や給排気装置と当接するため、制御ユニットが安定し、操作を容易に行うことができる。
以下に、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションについて、図面を参照しながらより具体的に説明する。図12は、第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの分解斜視図であり、図13は、第2実施形態にかかるクッションカバーの着座者前方側の側面図である。図14は、第2実施形態にかかる収納部のバリエーションを示す図であり、図15は、第2実施形態にかかるセルユニットの給排パイプの形状を説明するための図であり、図16及び図17は、第2実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの変形例を示す図である。
図12に示すように、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション3(以下、単に「クッション3」とする。)は、クッション本体210と、ベースクッション220と、カバークッション230と、底シート240と、給排気装置250と、これらを覆うクッションカバー260と、制御ユニットとしてのリモコン装置270と、により構成される。
すなわち、本実施形態にかかるクッション3は、第1実施形態にかかるクッション1とは、主に、リモコン装置270を備えた点、下側サイドクッション213及び底シート240を新たに設けた点、そして、クッションカバー260に収納部261を設けた点等において異なるものである。
クッション本体210は、体圧分散性を有するセルユニット211と、同セルユニット211よりも硬質なサイドクッションとして、上側サイドクッション212及び下側サイドクッション213とにより構成される。
セルユニット211は、第1実施形態にかかるセルユニット11と同様の機能を果たすものであるが、排気バルブ137、147に連通する給排パイプを有していない点、及び、所定の連通管にオリフィスを形成した点において第1実施形態にかかるセルユニット11と異なっている。かかる点については、後述する。
上側サイドクッション212及び下側サイドクッション213は、第1実施形態にかかるサイドクッション12と同素材で形成された枠体であり、セルユニット211を囲繞するように構成されている。
ここで、上側サイドクッション212の底面部の一部には切欠部215が形成されるとともに、下側サイドクッション213の上端部214の一部には段部218が形成されており、この切欠部215と段部218とにより、セルユニット211と給排気装置250とを連結する給排パイプ251,251を収容する空間が形成されるようにしている。
また、ベースクッション220は、セルユニット211の土台となる板状部材であり、第1実施形態にかかるベースクッション20と同素材で形成される。すなわち、ベースクッション220は、カバークッション230に用いられる発泡材よりも密度が高く高反発の発泡材で形成される。
なお、上側サイドクッション212、下側サイドクッション213、ベースクッション220は、同素材で形成することができる。また、カバークッション230は、第1実施形態にかかるクッション1の有するカバークッション30と同一のものを使用することができる。
底シート240は、クッション3全体の土台となる板状部材であり、柔軟かつ剛性のある素材で形成されている。かかる構成とすることにより、セルユニット211によるクッション3下方への圧力がこの底シートにより吸収され、クッション3全体としての安定性を高めるとともに、クッション3を載置した椅子への追従性を高めることが可能となる。
そして、クッション3は、このように形成された各部材が、下から底シート240、ベースクッション220、下側サイドクッション213、セルユニット211、上側サイドクッション212、カバークッション230の順に重合配設されており、また、カバークッション230、上側サイドクッション212、下側サイドクッション213、ベースクッション220を外装として、セルユニット211が内蔵された状態となっている。
また、各部材を積層した際、クッション3は、下側サイドクッション213における上端部214からなる領域と、上側サイドクッション212の下端部216及び段部217とからなる領域とによって、セルユニット211の鍔部280が挟持される構成としている。
給排気装置250は、ポンプ、制御部、電磁弁等を矩形状のケースに内蔵して構成されるものであり、セルユニット211と給排パイプ251,251を介して接続されるとともに、コード271を介してリモコン装置270と接続されている。
ここで、本実施形態において、この給排気装置250は、クッションカバー260内に収容することとしている。
すなわち、クッション3は、底シート240と、ベースクッション220と、下側サイドクッション213と、セルユニット211と、上側サイドクッション212とを重ねて載置した際に、ベースクッション220の一部に形成された矩形状の切欠部221と下側サイドクッション213に形成された開放部219とによって所定の空間が形成されるように構成されており、この空間内に給排気装置250を収容することにより、当該給排気装置250を各クッションやセルユニット211等と一体的にクッションカバー260内に収容することが可能となる。
なお、本実施形態にかかるクッション3では、給排気装置250が収納される側を着座者の前方側とする。
また、給排気装置250の内部構成は、第1実施形態における給排気装置50の内部構成と同様のものであるため、その説明を省略する。
リモコン装置270は、着座者の操作に応じて、セルユニット211に設けられたエアセルの給排気動作を制御するものであり、着座者が自分の手元でセルユニット211の操作ができるように、給排気装置250と所定の長さのコード271を介して接続されている。
また、リモコン装置270には、給排気装置250のON・OFF動作を行うための電源ボタン272及び、セルユニット211の給排気動作の程度を決定するための選択ボタン273が設けられており、各ボタンに応じた指示がコード271を介して給排気装置250に内蔵された制御部へと伝達されるように構成されている。
なお、このリモコン装置270は、給排気装置250の電源(例えば、リチウム電池により構成される。)を内蔵しており、この電源から得られた電力は、コード271を介して給排気装置250へ供給することとなる。
クッションカバー260は、重合配設したクッション本体210、ベースクッション220、カバークッション230、底シート240、給排気装置250を収容可能な矩形状のカバーであり、防水性、通気性に優れた素材で形成されている。
そして、当該クッションカバー260の周側面、すなわち、クッションカバー260内にクッション本体210、ベースクッション220、カバークッション230、底シート240、給排気装置250を収容した状態における、これらの周側面を覆う部分に、リモコン装置270を収納するための収納部261が設けられている。
この収納部261は、図13に示すように、クッションカバー260と同素材で形成された帯状部材の両端を、それぞれクッションカバー260の上端縁及びクッションカバー260に形成されたファスナーガード263の下端縁に縫い付けて形成されるものであり、この帯状部材とクッションカバー260との間に形成された略筒状の空間にリモコン装置270を挿通して収納可能としている。
ここで、ファスナーガード263は、クッションカバー260の略全周に亘って設けられたファスナー262を隠蔽するための部材であり、クッションカバー260と同素材で形成されており、その一端をファスナー262の取り付け位置よりも上方でクッションカバー260に縫い付けられることでクッションカバー260と一体に形成されている。
かかる構成とすることにより、クッションカバー260内にクッション本体210等を収容する際、或いは、同カバー260からクッション本体210等を取り出す際に、ファスナーガード263をファスナー262が露出するまでめくり上げることで、収納部261を形成する帯状部材もファスナーガード263とともにめくり上がるため、収納部261が邪魔になることがなく、これらの動作をスムーズかつ容易に行うことが可能となる。
このように、本実施形態にかかるクッション3は、リモコン装置270を収納する収納部261を備えた構成としたため、着座者がリモコン装置270を使用しない時でも、当該リモコン装置270の置き場に困ることがない。
また、クッション3の周側面には、上側サイドクッション212や下側サイドクッション213などの比較的硬質な素材で形成された部材が配設されているため、リモコン装置270を、収納部261に収納した状態で操作するような場合であっても、これら硬質な部材が、着座者がリモコン操作を行う際に生じる押圧力に対する抵抗となり、当該リモコン装置270の操作をより安定して行うことが可能となる。
ところで、収納部を、例えば上部に開口を有するポケット型とすると、リモコン装置270を収納部へ収納したり収納部から取り出したりする際に、着座者自身の足が邪魔になるため、足の位置をずらしたり足を上げたりしなければならないおそれがある。しかしながら、車椅子の使用者など足が不自由な人の場合は、かかる動作が困難である場合が多い。そのため、本実施形態にかかるクッション3では、収納部261を、両端が開口した筒状としており、リモコン装置270を横方向からスライドさせるようにして、当該開口から収納部261内部へ挿入するようにしている。
このように、リモコン装置270を横方向から収納部261内へ挿入して収納する構成とすることにより、収納部を上部に開口を有するポケット型とした場合のように、リモコン装置270を収納部へ収納したり収納部から取り出したりする際に、着座者自身の足が邪魔になることがなく、よりスムーズな収納及び取り出しが可能となる。
また、図13(a)に示すように、収納部261は、リモコン装置270の全長よりも長くなるように形成されており、リモコン装置270が収納部261からはみ出ることなく確実に収納できるようにしている。
また、リモコン装置270は、図13(b)に示すように、リモコン装置270を挿入した開口とは反対側の開口からリモコン装置270を引き出して使用することもできる。この際、リモコン装置270と給排気装置250とを接続するコード271の長さは、当該リモコン装置270を引き出した際に、電源ボタン272及び選択ボタン273は収納部261から露出するが、リモコン装置270とコード271との接続部274は露出しない程度の長さ、望ましくは、リモコン装置270の重心位置が収納部261から外部に露出しない長さとしている。
かかる構成とすることにより、リモコン装置270を収納部261から引き出して使用する際に、当該リモコン装置270が収納部261から落下するおそれがない。
また、図12に示すように、収納部261は、クッションカバー260における、クッション本体210等の周側面のうち、着座者前方側の周側面に対応する位置に配置されている。
すなわち、通常、クッション3の着座者前方側の周側面と着座者のふくらはぎとの間には、ある程度の隙間ができるものであり、かかる位置に収納部261を配設することにより、無駄なスペースを有効利用することができる。
しかも、上述したように、クッションカバー260内に収容された各部材のうち、クッション3の着座者前方側の周側面に対応する位置には、給排気装置250が配設されているため、リモコン装置270を収納部261に収納した状態で操作するような場合、この給排気装置250が、上側サイドクッション212や下側サイドクッション213などの硬質な部材とともに、着座者がリモコン操作を行う際に生じる押圧力に対する抵抗となり、当該リモコン装置270の操作をより一層安定して行うことが可能となる。
ここで、本実施形態において、収納部261は、クッションカバー260と同素材で形成されるものとしたが、必ずしもこれに限ったものではなく、種々の素材、形状で形成することができる。
例えば、図14(a)に示すように、収納部261を形成する帯状部材の一部を透明ビニールなどの透明部材で形成することもできる。
具体的には、帯状部材のうち、収納部261にリモコン装置270を収納した際に、当該リモコン装置270の電源ボタン272及び選択ボタン273が外部から視認できるような範囲を透明部材で形成することとする。
かかる構成とすることにより、リモコン装置270を収納部261から引き出さずとも電源ボタン272や選択ボタン273を視認しながら当該リモコン装置270の操作を行うことが可能となる。
なお、収納部261の全てを透明部材で形成することとしてもよい。
また、図14(b)に示すように、収納部261を形成する帯状部材をメッシュ素材265で構成してもよく、かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置270を収納部261から引き出さずとも電源ボタン272や選択ボタン273を視認しながら当該リモコン装置270の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン272や選択ボタン273に直接触れることができるため、これらボタン272、273をより確実に押下することができる。
また、図14(c)に示すように、収納部261を形成する帯状部材に、収納部261にリモコン装置270を収納したときに電源ボタン272及び選択ボタン273が位置する場所にそれぞれ切欠部266、267を設けた構成としてもよい。
かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置270を収納部261から引き出さずとも電源ボタン272や選択ボタン273を視認しながら当該リモコン装置270の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン272や選択ボタン273に直接触れることができるため、これらボタン272、273をより確実に押下することができる。
さらに、各切欠部266,267の周辺にそれぞれ肉厚部268,269を形成することにより、着座者手探りで電源ボタン272や選択ボタン273を操作しようとした場合、これらボタン272,273の場所を容易に特定することができる。そのうえ、この肉厚部268,269により、電源ボタン272や選択ボタン273の誤操作を防止することもできる。
ところで、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション3は、セルユニット211における、エアセル同士を連結する連結管の構造にも特徴を有している。
すなわち、図15に示すように、セルユニットに設けられた複数の連結管283のうち、セルユニット211の中央に位置するエアセル284a〜284iに直接連結する連結管283には、減圧用のオリフィスが形成されている。
かかる構成とすることにより、着座者の体重が最もかかり易い位置にあるエアセル284a〜284h内の空気が他のエアセルと比較して抜け難くなるため、セルユニット211による体圧分散性能をより効果的に発揮させることができる。
なお、図中、281,282は、給排パイプである。
ところで、車椅子利用者にとって、大腿部全周を覆っての圧マッサージは危険が伴うものである。すなわち、車椅子利用者は、足の感覚がない場合や鈍感な場合が多いため、大腿部全周を覆っての圧マッサージにより血流が止まっていることや無理な付加がかかっていることに気付かず、重大な事故に繋がるおそれがある。
そこで、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションを、一方向からのみの圧マッサージを行うクッションとしてもよい。
かかる場合、図16(a),(b)に示すように、板状に形成したベースクッション530上面に、着座者の左大腿部6Lを支持する左側エアセル510及び着座者の右大腿部6Rを支持する右側エアセル520よりなるセルユニット540を一体的に設けて構成されるクッション500とする。
このクッション500において、セルユニット540は、連結管550及び給排パイプ560を介して給排気装置(図示せず)と連結している。また、左側エアセル510と右側エアセル520とは、連結管550近傍で連通しており、給排気装置から供給される空気は、給排パイプ560及び連結管550を介して各エアセル510、520にそれぞれ送られることとなる。
かかる構成とすることにより、クッション500は、図16(b)に示すように、図示しない給排気装置から各エアセル510,520に空気が供給されることにより、着座者の大腿部6L、6Rに、上方へ向けての一方向の圧力を与えることができる。
また、必ずしも着座者の大腿部に与える圧力は、一方向でなくてもよく、図17に示すように、二方向としてもよい。
かかる場合、クッション600は、図17(a),(b)に示すように、板状に形成したベースクッション530の上面に、着座者の左大腿部6Lを支持する左側セルユニット610及び着座者の右大腿部6Rを支持する右側セルユニット620を有する構成とする。
左側セルユニット610は、図16におけるクッション500と同様の構成であり、板状に形成したベースクッション611上面に、左側エアセル612及び右側エアセル613を一体的に設けて構成される。
また、右側セルユニット620も、図16におけるクッション500と同様の構成であり、板状に形成したベースクッション621上面に、左側エアセル622及び右側エアセル623を一体的に設けて構成される。なお、図中、614、624は連通管、615、625は、給排パイプである。
かかる構成とすることにより、クッション600は、図17(b)に示すように、図示しない給排気装置から各セルユニット610,620に空気が供給されると、着座者の大腿部6L、6Rに、それぞれ左側エアセル612,622からの圧力と右側エアセル613,623からの圧力とによる二方向の圧力を与えることができる。
このように、一方向或いは二方向のみからの圧マッサージとすることにより、上記のような危険性を回避することができる。
なお、このクッション500、600に収納部を設けることにより、本実施形態と同様の効果を得ることもできる。
〔第3実施形態について〕
以下、本発明にかかる椅子用床ずれ防止クッションの第3実施形態について説明する。
先に説明した第2実施形態では、クッションカバー260の周側面に収納部261を設け、当該収納部261にリモコン装置270を収納することとしたが、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションでは、この収納部261に代えて、クッション本体の周側面から垂下する保持部を設けて、当該保持部によりリモコン装置や給排気装置を保持する構成としている。
すなわち、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションは、エア給排気により膨縮するエアセルを有するクッション本体と、クッション本体の給排気を実行する機能部ユニットと、を具備し、クッションカバーは、クッション本体の周側面に対応する位置から機能部ユニットを吊下状態で保持する保持部を有する構成とした。
このように、保持部を具備することにより、機能部ユニットの置き場に困ることがない。また、着座者が椅子に座ったり椅子から離れたりする際に機能部ユニットが邪魔になることもなく、見た目もよくすることができる。
しかも、この保持部は、クッション本体の周側面から機能部ユニットを吊下状態で保持する構成としており、この保持部で機能部ユニットを保持することにより、当該機能部ユニットの自重によってクッションカバーが引っ張られて、当該クッションカバーにシワやヨレがない状態とすることができる。
このように、クッションカバーにシワやヨレのない状態とすることにより、クッション全体の見栄えを良くすることができるばかりでなく、エアセルとクッションカバーとが均一に重なるため、エアセルを着座者の臀部や大腿部により確実に当接させることができ、当該エアセルによる体圧分散性能をより効果的に発揮させることができる。
また、保持部は、クッションカバーにおける、クッション本体の着座者前方側の周側面に対応する位置に設けられている。
すなわち、上述したように、通常、クッション本体の着座者前方側の周側面と着座者のふくらはぎ部との間には、所定の隙間ができるものであり、かかる位置に保持部を配設することによって、この無駄なスペースを有効利用することができるとともに、機能部ユニットを着座者の邪魔にならない場所で保持しておくことができる。
また、保持部は、クッション本体の周側面の上端縁に連接されることとしたため、保持部がクッションカバーと段差なく連続的に取り付けられた状態となり、椅子用床ずれ防止クッション全体としての外観や座り心地を損ねることがない。しかも、クッションカバーのシワやヨレをより確実に取ることができる。
さらに、保持部は、着座者前方側の周側面の全幅に亘って設けられることとしたため、保持部の強度を十分に保つことができ、大きな力がかかった際に保持部が破損するといった事態を防止することができる。また、全幅に亘って引っ張ることができるため、クッションカバーのシワやヨレをより均一に取ることができる。
また、保持部は、機能部ユニットを収納するためのユニット収納部を有しており、このユニット収納部は、着座者後方側に開口部を有する構成としている。
かかる構成とすることにより、ユニット収納部内に収納された機能部ユニットが外部から視認困難となるため、椅子用床ずれ防止クッション全体としての外観を損なうことがない。
また、クッション本体は、上記各実施形態と同様、エアセルからなる第1の領域と、発泡材により形成した枠体からなる第2の領域とで構成され、枠体でエアセルの端部に形成された鍔部を挟持した状態で、エアセルを囲繞している。
かかる構成とすることにより、第1の領域に配置された複数のエアセルがそれぞれ給排気によって膨縮するため、着座者の身体の特定箇所に集中してかかる荷重をより分散させ、当該着座者の床ずれを有効に防止することができる。
また、枠状に形成された第2の領域により第1の領域の鍔部を挟持する構成とすることによって、着座者の臀部や大腿部を受ける第1の領域を狭めることなく、クッション本体をコンパクト化することができ、例えば、座面の広さに限りがある自動車の座席などに載置した場合に、体圧分散性を有する第1の領域の有効面積を可及的に広くとることができる。さらに、前記構成によって第1の領域と第2の領域との一体性が高まり、クッション本体としての使い心地の良さや使い勝手の良さを向上させることができる。
なお、保持部は、クッションカバーから着脱自在に構成としてもよく、かかる構成とすることにより、保持部をクッションカバーから着脱自在とすることができる。したがって、例えば、椅子用床ずれ防止クッションをエアセルによる給排気動作を行わずに単にクッションとして使用する場合、すなわち、機能部ユニットが不必要な場合、保持部を取り外すことにより、当該椅子用床ずれ防止クッションをより快適に使用することが可能となる。
以下、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッションについて、図面を参照しながらより具体的に説明する。図18は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの使用状態図であり、図19は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの分解斜視図であり、図20は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの背面斜視図であり、図21及び図22は、第3実施形態にかかる保持部の変形例であり、図23は、第3実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションの変形例である。
なお、ここでは、一例として、椅子用床ずれ防止クッションを自動車の座席に載置した場合について説明するが、本発明は、これに限定するものではない。
図18に示すように、本実施形態に係る椅子用床ずれ防止クッション4(以下、単に「クッション4」とする。)は、自動車の座席C’の座面に載置して使用するものであり、クッションカバー300の内部に、エア給排気により膨縮するエアセルを有するクッション本体310と、このクッション本体310の上部に載置されるカバークッション320と、同クッション本体310の下部に載置される底シート400とを収容しており、さらに、クッション本体310の給排気を実行する機能部ユニット330と、クッション本体310の周側面から機能部ユニット330を吊下状態で保持する保持部340とを具備して構成される。
クッションカバー300は、防水性、通気性に優れた素材で形成された略矩形状のカバーである。
また、本実施形態において、機能部ユニット330は、ポンプ、制御部、電磁弁等を内蔵する給排気装置350と、着座者がエアセルの給排気動作を操作するためのリモコン装置360とにより構成されるものであり、このリモコン装置360を給排気装置350と所定長さのコード361を介して接続することによって、着座者がエアセルの操作を手元で行うことができる構成としている。
なお、図中、351,352は、それぞれ給排気装置に内蔵されたポンプからの空気をエアセルに供給するための給排パイプ、362は、給排気装置350のON・OFF動作を行うための電源ボタン、363は、給排気動作の程度を決定するための選択ボタンである。
保持部340は、クッションカバー300と同素材で形成された扁平状の部材であり、上端部の幅員がクッションカバー300の幅員と同一に形成され、当該上端部をクッションカバー300の周側面の上端縁に取り付けることによって、当該クッションカバー300と一体化されている。この際、当該保持部340の下端は、クッションカバー300から垂下した状態となっている。なお、保持部は、必ずしもクッションカバー300から垂下した状態である必要はない。
そして、この保持部340には、下端部に機能部ユニット330としての給排気装置350やリモコン装置360を収納するユニット収納部341が形成されており、このユニット収納部341内に給排気装置350及びリモコン装置360を収納することにより、これらを吊下状態で出し入れ自在に保持可能としている。
かかる構成とすることにより、着座者が給排気装置350やリモコン装置360の置き場に困ることがなく、必要に応じて容易に取り出すこともできる。
さらに、クッション4は、このユニット収納部341に給排気装置350やリモコン装置360を収納してこれらを吊下状態で保持した状態とすることにより、当該給排気装置350やリモコン装置360の自重によってクッションカバー300が引っ張られて、当該クッションカバー300にシワやヨレがない状態とすることができる。
したがって、クッション4全体の見栄えを良くすることができるばかりでなく、クッションカバー300に収容されたエアセルとクッションカバー300とが均一に重なるため、クッション本体310に設けられたエアセルを着座者の臀部や大腿部により確実に当接させることが可能となる。
また、保持部340は、クッションカバー300における、クッション本体310の着座者前方側の周側面に対応する位置に設けられている。
すなわち、上述したように、通常、クッション4の着座者前方側の周側面と着座者のふくらはぎ部との間には、所定の隙間ができるものであり、かかる位置に保持部を配設することによって、この無駄なスペースを有効利用することができるとともに、機能部ユニット330を着座者の邪魔にならない場所で保持しておくことができる。
また、保持部340は、クッション本体310の周側面の上端縁に連接されることとしたため、保持部340がクッションカバー300と段差なく連続的に取り付けられた状態となり、クッション4全体としての外観や座り心地を損ねることがない。しかも、クッションカバー300のシワやヨレをより確実に取ることができる。
さらに、保持部340は、着座者前方側の周側面の全幅に亘って設けられている。かかる構成とすることにより、保持部340の強度を十分に保つことができ、大きな力がかかった際に保持部が破損するといった事態を防止することができる。しかも、クッションカバー300のシワやヨレをより均一に取ることができる。
次に、クッションカバー300の内部に収容されたクッション本体310、カバークッション320、底シート400の構成について、図19を用いて説明する。
図19に示すように、クッション本体310は、体圧分散性を有するセルユニット370と、同セルユニット370よりも硬質なサイドクッション380とにより構成される。セルユニット370は、第2実施形態にかかるセルユニット211と同様の構成を有するものであり、第1の系統に属するエアセル371と第2の系統に属するエアセル372とが隣設するように配置している。
サイドクッション380は、第1実施形態にかかるサイドクッション12と同素材で形成された枠体であり、セルユニット370を囲繞するように構成されている。なお、図中、381は、セルユニット370と給排気装置350とを連結する給排パイプ351,351の収容空間を形成するための切欠部である。
カバークッション320は、第1実施形態にかかるクッション1の有するカバークッション30と同一のものを使用することができる。
底シート400は、クッション4全体の土台となる板状部材であり、柔軟かつ剛性のある素材で形成されている。かかる構成とすることにより、セルユニット370によるクッション4下方への圧力がこの底シートにより吸収され、クッション4全体としての安定性を高めるとともに、クッション4を載置した椅子への追従性を高めることが可能となる。
そして、クッション4は、底シート400、カバークッション320及びサイドクッション380を外装として、セルユニット370が内蔵された状態となるように重合配設される。
このように、クッションカバー300内に硬質なサイドクッション380を収容することにより、ユニット収納部341内に収納された給排気装置350やリモコン装置360の自重によってクッションカバー300が引っ張られる際、当該自重によりクッションカバー300が撓みにくくなるため、当該クッションカバー300のシワやヨレをより効果的に取ることができる。
しかも、このサイドクッション380は、枠体状に形成されているため、クッション4の周側面の上端縁の断面形状がほぼ直角となってエッジがキワ立ち、吊下げ力が良好に作用し、さらに、上端縁の形状を直線状とすることで、より吊下げ力を作用させることができる。
また、給排気装置350は、ポンプ、制御部、電磁弁等を矩形状のケースに内蔵して構成されるものであり、セルユニット370と給排パイプ351,352を介して接続されるとともに、コード361を介してリモコン装置360と接続されている。
リモコン装置360は、着座者の操作に応じて、セルユニット370に設けられたエアセル371の給排気動作を制御するものであり、着座者が自分の手元でセルユニット370の操作ができるように、給排気装置350と所定の長さのコード361を介して接続されている。
また、リモコン装置360には、給排気装置350のON・OFF動作を行うための電源ボタン362及び、セルユニット370の給排気動作の程度を決定するための選択ボタン363が設けられており、各ボタンに応じた指示がコード361を介して給排気装置350に内蔵された制御部へと伝達されるように構成されている。
なお、このリモコン装置360は、給排気装置350の電源(例えば、リチウム電池により構成される。)を内蔵しており、この電源から得られた電力は、コード361を介して給排気装置350へ供給することとなる。なお、リモコン装置360は、必ずしも電源を内蔵した構成とする必要はなく、自動車に設けられたシガーポケットから所定のケーブルを介してクッション4へ電力が供給されるようにしてもよい。
また、本実施形態において、このリモコン装置360の全長は、給排気装置350の全長よりも短いものとする。
次に、保持部340に設けられたユニット収納部341のより具体的な構成について、図20を用いて説明する。
図20(a)に示すように、ユニット収納部341は、保持部340の下端部に形成されたポケット状の部材であり、給排気装置350及びリモコン装置360を収納可能な開口部を着座後方側に有している。
かかる構成とすることにより、ユニット収納部341内に収納された機能部ユニット330が外部から視認困難となるため、クッション4全体としての外観を損なうことがない。
また、このユニット収納部341には、着座者後方側の表面に面ファスナー342が設けられるとともに、ユニット収納部341の上端縁には、その一端を取り付けられた略帯状のカバー体343を設け、当該カバー体における、ユニット収納部341に対向する面に面ファスナー344が設けられている。
そして、保持部340は、これら面ファスナー342,344同士を当接させて付着させることにより、図20(b)に示すように、ユニット収納部341の開口部が一部閉鎖されるように構成されている。
かかる構成とすることにより、例えば、クッション4を載置した座席C’を有する車が砂利道を通るなどしてユニット収納部341が大きく揺れた場合であっても、ユニット収納部341内に収納した給排気装置350及びリモコン装置360が当該ユニット収納部341から飛び出たりするおそれがなく、保持部340を着座者前方側に設けた場合であっても運転に支障を来すことがない。
なお、図中、301は、クッションカバー300内に収容したクッション本体310やカバークッション320を出し入れする際に開閉して用いるファスナーであり、このファスナー301をわずかに開放させて形成された間隙から給排パイプ351,352をクッションカバー300内部に挿通させることとしている。
また、ユニット収納部341は、その幅員を保持部340の下端に向かうにつれて漸次均等に狭めた構造としている。具体的には、ユニット収納部341の開口部の幅員は、保持部340の上端と同幅員(すなわち、クッションカバー300と同幅員)とするとともに、ユニット収納部341の底部の幅員(すなわち、保持部340の下端の幅員)は、給排気装置350の全長と同等としている。
このように、ユニット収納部341を先細り形状とすることにより、給排気装置350やリモコン装置360をユニット収納部341内に収納する際は、広い開口によりこれら給排気装置350やリモコン装置360を収納し易いとともに、収納した後はこれらがユニット収納部341内でがたつくのを防止することができる。
しかも、ユニット収納部341の幅員を下端に向かって均等に狭めることにより、給排気装置350やリモコン装置360が、正面視において保持部340の略中央に位置した状態となるため、カバーのシワやヨレをより均一に取ることができる。
ここで、ユニット収納部341を含めた保持部340の全体的な形状としては、例えば、クッションカバー300の周側面の上端縁から下方に向かって漸次その幅員を狭めた逆台形状とすることもできるが、かかる形状とした場合、クッションカバー300の周側面の上端縁の両端には、保持部340の形状に沿った方向の力がかかるため、クッションカバー300の周側面の上端縁にかかる力が均一にならず、当該クッションカバー300のシワやヨレを取り除く効果を阻害するおそれがある。
そこで、本実施形態では、ユニット収納部341を含めた保持部340の全体的な形状を、保持部340の上端縁からユニット収納部341の開口部までの幅員を同一とした、所謂ホームベース状としている。
このように、保持部340の幅員を当該保持部340の上端縁から狭めるのではなく、当該保持部340の上端縁よりも下方位置から狭めることにより、クッションカバー300の周側面の上端縁にかかる力の差を可及的に無くすことができ、当該クッションカバー300のシワやヨレをより効果的に取ることができる。
しかも、保持部40の上端縁の幅員とユニット収納部41の開口部の幅員とを同一とすることにより、当該ユニット収納部41の開口部をより広く形成でき、給排気装置50やリモコン装置60の出し入れをさらに容易に行うことができるばかりでなく、給排パイプ51,52が外部からより視認されにくくすることができ、クッション1全体としての外観をより良よくすることができる。
また、この時、ホームベース状の保持部340において、この保持部340の上端縁からユニット収納部341の開口部までのストレート部の長さをクッション4の厚み以上とし、クッション4の厚み以上の位置に開口部を設けることが好ましい。これは、保持部340の上端から先細りとした逆台形状とすると、ユニット収納部341の開口部をクッションカバー300の周側面の上端部に設けた場合は、機能部ユニット330の出し入れを吊下状態で行いにくく、クッション4を一度裏返しにしないと行いにくいものであり、また、ユニット収納部341の開口部を先細りの中途に設けた場合は、開口部が狭くなってしまい、機能部ユニット330の収納が行いにくい。これに対して、保持部340を上記構成とすれば、ユニット収納部341の開口部は、クッション4の幅員と同一の広い開口となっているため、機能部ユニット330を収納し易く、保持部340の下端は機能部ユニット330と同等の幅員となっているため、機能部ユニット330がユニット収納部341内でがたつくことを防ぐことができる。
ここで、保持部340はクッションカバー300から着脱自在に構成してもよい。かかる場合、図21(a)に示すように、クッションカバー300と保持部340とを線ファスナー302で連結することとすればよい。
すなわち、クッションカバー300の着座者前方側の周側面の上端縁と保持部340の上端縁とにそれぞれ務歯列303、345を設けるとともに、これら務歯列303、304を噛合させるスライダー304を設けた構成とする。
かかる構成とすることにより、例えば、クッション4をセルユニット370による給排気動作を行わずに単にクッションとして使用する場合、すなわち、給排気装置350やリモコン装置360が不必要な場合、スライダー304を務歯列303、345に沿って所定方向に移動させてこれら務歯列303、345の噛合状態を解除することにより、保持部340をクッションカバー300から取り外すことができるため、着座者は、クッション4をより快適に使用することができる。
なお、本実施形態において、保持部340は、クッションカバー300と同素材で形成されるものとしたが、必ずしもこれに限ったものではなく、種々の素材、形状で形成することができる。
例えば、保持部340の一部を透明ビニールなどの透明部材で形成することもできる。
具体的には、保持部340のうち、ユニット収納部341にリモコン装置360を収納した際に、当該リモコン装置360の電源ボタン362及び選択ボタン363が外部から視認できるような範囲を透明部材で形成することとする。
かかる構成とすることにより、リモコン装置360をユニット収納部341から取り出さずとも電源ボタン362や選択ボタン363を視認しながら当該リモコン装置360の操作を行うことが可能となる。
なお、ユニット収納部341の全てを透明部材で形成することとしてもよい。
また、保持部340をメッシュ素材で構成してもよく、かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置360をユニット収納部341から取り出さずとも電源ボタン362や選択ボタン363を視認しながら当該リモコン装置360の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン362や選択ボタン363に直接触れることができるため、これらボタン362、363をより確実に押下することができる。
また、保持部340における、ユニット収納部341内にリモコン装置360を収納したときに電源ボタン362及び選択ボタン363が位置する場所にそれぞれ切欠部を設けた構成としてもよい。
かかる構成とすることにより、上記と同様、リモコン装置360をユニット収納部341から取り出さずとも電源ボタン362や選択ボタン363を視認しながら当該リモコン装置360の操作を行うことが可能となる。しかも、電源ボタン362や選択ボタン363に直接触れることができるため、これらボタン362、363をより確実に押下することができる。
さらに、各切欠部の周辺を肉厚とすることにより、着座者手探りで電源ボタン362や選択ボタン363を操作しようとした場合、これらボタン362,363の場所を容易に特定することができる。そのうえ、かかる構成とすることにより、電源ボタン362や選択ボタン363の誤操作を防止することもできる。
なお、本実施形態において、保持部340は、着座者後方側に開口を有するユニット収納部341を有し、このユニット収納部341に機能部ユニット330を収納して保持する構成としたが、必ずしもこれに限ったものではない。
例えば、保持部を、両端部が開放した筒型形状としてもよい。
かかる場合、保持部346は、図22に示すように、縦長の帯状部材347を折り畳み、その両端同士を当接させた状態で当該両端をクッションカバー300の周側面の上端縁に取り付けることにより形成される。
これにより、この保持部346には筒状の空間が形成されるため、この空間をユニット収納部348として利用することが可能となる。
かかる構成とすることにより、保持部及びユニット収納部をより簡素な部材で形成することができ、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッションをより安価に製造することが可能となる。
また、この保持部346は、座席C’の左右方向に開口部を有しているため、着座者後方側に開口部を有する保持部340と比べてより簡単に機能部ユニット330の出し入れを行うことができる。
また、クッション4を、セルユニットによる体圧分散効果を大腿部周辺のみに与える構成とすることにより、クッション4をより安価に製造することもできる。
かかる場合、クッション4は、図23に示すように、クッションカバー300内部に収容されたセルユニット390が大腿部周辺のみに設けられた構成とすればよい。
この際、セルユニット390に設けられるエアセルの高さは、着座者の大腿部から臀部に向かって順次低くなるように構成されている。すなわち、図23に示すように、着座者前方側に配置されたエアセル391よりも着座者後方側に配置されたエアセル392の方が高さが低く、さらに、このエアセル392よりも着座者後方側に配置されたエアセル393の方が高さが低くなるように構成されている。
かかる構成とすることにより、セルユニット390が配設された部分と配設されていない部分との間に生じる段差を可及的に無くすことができるため、着座者の座り心地を損ねることがない。
なお、クッションカバー300は、サイドクッションやカバークッションは、セルユニット390の形状に合わせて、その大きさや形状を変更するものとする。
また、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション4は、自動車の座席C’に載置して用いることを想定しており、全体的な厚さがある程度薄くなるように、クッションカバー300内に収容する部材は、セルユニット370、サイドクッション380、カバークッション320、底シート400のみとしたが、別途、下側サイドクッションやベースクッション等を設けてもよい。
また、本実施形態では、機能部ユニット330として、給排気装置350とリモコン装置360とを備えた構成としたが、これら給排気装置350及びリモコン装置360を一体に形成したものを用いてもよい。
また、本実施形態にかかる椅子用床ずれ防止クッション4は、給排気装置に内蔵された電磁弁の構造にも特徴を有するものである。
すなわち、これまでの電磁弁は、いわゆる常閉型の減圧用電磁弁であり、ソレノイドの磁力により弁体を開閉作動させるプランジャがスプリングの付勢力によってポンプからの圧力に抗する方向に付勢された状態としていたが、かかる構成とした場合、着座者がクッション4に着座すると、プランジャをスプリングの付勢力に抗して移動させるための電磁気力よりもエアセルからの圧力とスプリングによる付勢力との合力が勝ってしまい、電磁弁が正常に作動しないおそれがあった。
そこで、本実施形態では、排気用電磁弁の構造を、スプリングによってプランジャがエアセルからの圧力に抗する方向に付勢された状態とすることにより、かかる事態を防止することとした。
かかる構成とすることにより、クッション4に大柄の着座者が座り、エアセルに予想以上の圧力がかかったとしても、スプリングによる付勢力がエアセルからの圧力と抗する方向に働くため、電磁気力が不足するといった事態が生じるおそれがない。
また、上記のような構成とすることにより、電磁弁に安全弁としての機能を持たせることも可能となる。
すなわち、例えば、スプリングによる付勢力が10kPaである場合において、エアセルからの圧力が8kPaであった場合は、スプリングによる付勢力が勝っているため弁が開くことはない。また、クッション4上に着座者が着座してエアセルからの圧力が20kPaに増加した場合は、プランジャがスプリングの付勢力に抗して移動して弁が開放状態となるため、エアセルに予期せぬ大きな圧力がかかり破裂するといった事態を防止することができる。
上述してきた実施形態により、以下の椅子用床ずれ防止クッションが実現できる。
椅子(例えば車椅子C)の座面に載置して用いる椅子用床ずれ防止クッションにおいて、体圧分散性を有する第1の領域(例えば、セルユニット11)と、この第1の領域を囲繞するとともに、当該第1の領域よりも硬質とした第2の領域(例えば、サイドクッション12)と、を有するクッション本体(10)を具備する椅子用床ずれ防止クッション(1)。
第1の領域(例えば、セルユニット11)を、給排気自在とした複数のエアセル(100)を配置して形成する一方、第2の領域(例えば、サイドクッション12)を発泡材により形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
第2の領域(例えば、サイドクッション12)は、発泡材により形成した枠体であり、この枠体でエアセル(100)の端部に形成された鍔部(120)を挟持した状態で、第1の領域(例えば、セルユニット11)を囲繞した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
第1の領域(例えば、セルユニット11)内に、押圧力に度合差をつけた領域(例えば、領域150、151、152)を区画形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
第1の領域(例えば、セルユニット11)内に、着座者の大腿部に対する刺激力に度合差をつけた領域(例えば、領域151、152)を形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
第2の領域(例えば、サイドクッション12)における着座者の大腿部に対応する位置に凹部(71,72)を形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
クッション本体(10)の下側にベースクッション(20)を、上側にはカバークッション(30)を重合配設し、カバークッション(30)を、ベースクッション(20)よりも低反発材料で形成した椅子用床ずれ防止クッション(1)。
エアセル(284)の給排気動作を制御する制御ユニット(例えば、リモコン装置270)と、クッション本体(210)を覆うクッションカバー(260)とを具備し、クッションカバー(260)は、少なくとも枠体(例えば、上側サイドクッション212)の周側面を覆う部分に制御ユニットを収納する収納部(261)を有する椅子用床ずれ防止クッション(3)。
収納部(261)は、着座者前方側の周側面に配置した椅子用床ずれ防止クッション(3)。
以上、本発明の実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。