以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の液体噴射装置の実施形態であるインクジェット式記録装置10を示している。
図1に示すインクジェット式記録装置10は、インクジェットプリンタとも呼んでいる。インクジェット式記録装置10は、本体部1を有している。この本体部1は、ガイドレール17、プラテン12、キャリッジ14、インク吸引装置20、記録ヘッド30、液体払拭装置としてのインク払拭装置130を備えている。記録ヘッド30は、印刷ヘッドとも言う。このインク吸引装置20は廃液システムの一部である。
このインクジェット式記録装置10は、いわゆるオンキャリッジ型の記録装置であり、キャリッジ14の上部には、複数のインクカートリッジ2,3,4,5が着脱可能に装着できる。キャリッジ14の下部には、記録ヘッド30が設けられている。キャリッジ14は、ベルト15を介してモータ16に接続されている。ベルト15はプーリ16A,16Bに掛けてある。プーリ16Bはモータ16の回転軸に固着されている。従って、キャリッジ14は、モータ16の駆動によりガイドレール17に沿ってプラテン12の軸方向である主走査方向T(T1,T2)に往復走行し、モータ16の駆動量に応じた位置決めが可能である。
図1の本体部1の右側には、ワイピングポジションWPと待機ポジション18が設けられている。ワイピングポジションWPは払拭作業ポジションとも言い、あるいはホームポジションとも呼ぶことができる。
ワイピングポジションWPでは、記録ヘッド30のノズルプレート面61が、インク吸引装置20により吸引され、あるいはインク払拭装置130によりノズルプレート面61に付着しているインクの払拭を行なうためのポジションである。
待機ポジション18は、記録ヘッド30からのインク払拭あるいはインクの吸引を行なわない場合の待機位置である。
図1に示すインク吸引装置20は、液体吸引装置の一例であり、キャッピングシステムもしくはキャッピング手段とも呼ぶことができる。
インク吸引装置20は、以下の2つの機能を有する。すなわち、インク吸引装置20は、長時間放置された時に記録ヘッド30のノズル開口のインクの乾燥を防止する保湿機能と、吸引ポンプ19からの負圧をノズル開口に作用させてノズル開口からインクを強制的に吸引して排出させる吸引機能を備える。
各インクカートリッジ2〜5の各インクは液体の一例である。図1に示すインク払拭装置130は、液体払拭装置の一例であり、インク吸引装置20とほぼ同じ位置にある。
図2は、図1に示すインクジェット式記録装置10の電気的な接続例を示している。インクジェット式記録装置10の制御装置7は、ローカルプリンタケーブル又は通信ネットワークを介してホストコンピュータ40のプリンタドライバ41に接続されている。プリンタドライバ41は、インクジェット式記録装置10の各構成要素に対して印刷やノズルプレート面61のインク払拭動作あるいはインク吸引動作を実行させるためのコマンドを送るソフトウェアを搭載している。
図2に示すインクジェット式記録装置10は、制御装置7の他に、センサー8、インク吸引装置20、インクカートリッジ2〜5、記録ヘッド30、キャリッジ14、用紙搬送機構15A、インク払拭装置130を含んでいる。
図1の実施形態では、複数のインクカートリッジ2〜5が、キャリッジ14の上に直接搭載されている。本発明の実施形態は、これに限らずインクカートリッジ2〜5をキャリッジとは別の位置に搭載している、いわゆるオフキャリッジ型のインクジェット式記録装置を採用しても勿論構わない。
図2の用紙搬送機構15Aは、図1の用紙29を、プラテン12上を搬送するようになっている。用紙29は記録媒体の一種である。
図3と図4は、図1に示す記録ヘッド30とインク吸引装置20の構造例を示す断面図である。
インクジェット式記録装置10は、特にカラープリンタとして用いられる場合には、この記録ヘッド30は、互いに種類の異なる複数種類のインクを吐出するために、インクの種類ごとに独立したインク経路50を有している。
各インクカートリッジ2〜5からのインクは、インク供給針50Aを介してインク経路50に流入する。インクの種類ごとに独立したインク経路50は、それぞれ複数の圧力室51に接続されている。各圧力室51には、各ノズル開口列54A,54B,54C,54Dが接続されている。
ノズルプレート62はノズルプレート面61を有していて、このノズルプレート面61には複数のノズル開口列54A〜54Dが設けられている。圧力室51から押し出されたインク滴が、ノズル開口列54A〜54Dのノズル開口55A〜55Dから吐出される。
図3と図4に示すインク吸引装置20は、ノズルプレート面61に密接もしくは圧着してノズル開口を吸引するためのものである。インク吸引装置20は、キャップ本体80と複数の吸収材90を有している。キャップ本体80は箱状であり、上部開口91を有している。キャップ本体80の底部92からは、隔壁81が突出して設けられている。キャップ本体80の4辺の側面部80Aと隔壁81の間には、吸収材90が収容されている。各吸収材90は、各ノズル開口列54A〜54Dを含むノズルプレート面61の領域に対応している。
吸収材90は、インクを吸収可能な材料により作られていて、例えばポリビニルアルコール(PVA)のスポンジにより作ることができる。吸収材90は、好ましくは親水性に優れて、微細な連続した気孔構造を有しており、インクの吸収能力を有している。
この吸収材90は、図示しない押さえ部材により吸収材90を押さえて保持する構造を採用できる。
キャップ本体80の底部92は、吸引ポンプ19に接続されている。吸引ポンプ19は廃インクタンク100に接続されている。この廃インクタンク100は吸引ポンプ19によりキャップ本体80側から吸引されてくるインクを廃棄するためのタンクである。キャップ本体80と吸引ポンプ19の間には開閉弁85が配置されている。開閉弁85を開けた状態で吸引ポンプ19を駆動させれば吸引ポンプ19による負圧がキャップ本体80に与えられる。一方、開閉弁85を閉じた状態では吸引ポンプ19を駆動しても負圧はキャップ本体80には掛からない。キャップ本体80は隔壁81により4つの部屋に分けられており、各部屋に対して管路と開閉弁85が配置されているので、開閉弁85を選択的に開閉することで選択的にキャップ本体80の部屋を負圧状態にしてインクを吸引することが可能となる。そして、開閉弁85と吸引ポンプ19の間で管路を1つにまとめることで、吸引ポンプ19は1つでも選択的な吸引が可能である。
図3は、インク吸引装置20がノズルプレート面61から離れた待機状態を示している。図4では、インク吸引装置20はノズルプレート面61に密着もしくは圧着されて、ノズルプレート面61を封止している状態(吸引状態もしくは保湿状態)を示している。
記録ヘッド30内のインク中に気泡が混入したり、インク経路50や圧力室51内に増粘したインクが存在したりすると、インクの正常な流れが阻害されて、正常なインクの吐出が行なえないことがある。この場合には、図2に示すインク吸引装置20が用いられ、このインク吸引装置20によるインクの強制排出が必要となる。
また、インクジェット式記録装置10を最初に使用する際の開始時や、インクカートリッジ2〜5を別の種類のインクカートリッジに交換した場合では、図3の記録ヘッド30内のインク経路50の中にインクを充填する必要がある。このような初期のインクの充填に際しても、インク吸引装置20が使用される。このインク吸引装置20を用いることで、図3の記録ヘッド30のノズル開口55A〜55Dから空気およびインクが、強制的に吸引されてノズル開口55A〜55Dから排出される。
図5は、ノズルプレート面61におけるノズル開口列54A〜54Dの配列例を示している。異なるインクの種類とは、見かけ上の色の違いにとどまらず、インクの構成成分の種類や比率が異なることを意味する。各ノズル開口列54A〜54Dは、例えば数10から数1000のノズル開口55A〜55Dから構成されている。
図6は、本発明のインクジェット式記録装置の記録ヘッド30の内部構造例を示している。上述したインクカートリッジ2〜5から供給されるインクは、インク経路50を通って圧力室51へ供給される。印刷の際には、圧力発生素子としての圧電振動子39が伸縮動作することによって、圧力室51の容積を変化させて、圧力室51内のインクに圧力変動を生じさせる。これによって、ノズル開口55A〜55Dからインク滴が吐出できる。圧電振動子39は各ノズル開口55A〜55Dに対応して設けられている。
図1に示すキャリッジ14は、記録ヘッド30とともに、ガイドレール17に沿って主走査方向Tに沿って往復移動可能である。キャリッジ14とともに記録ヘッド30は、ヘッド移動方向T1に移動することにより、図1に示すワイピングポジションWPと待機ポジション18に位置決めすることができる。
図1の記録ヘッド30は、液体噴射ヘッドの一種であるが、この記録ヘッド30はキャリッジ14の下面側に設けられている。記録ヘッド30の下面は、ノズルプレート面61である。このノズルプレート面61は、ノズル面の一例であり、図5にはノズルプレート面61の形状例を示している。ノズルプレート面61は、ノズルプレート62の下面である。
ノズルプレート62は、上述したような複数のノズル開口列、図5の図示例では4列のノズル開口列54A〜54Dを有している。各ノズル開口列54A〜54Dは、図5に示すT方向とは直交するU方向に沿っており、T方向に沿って同じ間隔で平行に形成されている。
次に、図1に示すインク払拭装置130の構造例について説明する。
図7は、インク払拭装置130の構造例を示す斜視図であり、図8はインク払拭装置130の構造例を示す平面図である。
図7と図8を参照すると、インク払拭装置130は、概略的にはフレーム135、複数の払拭手段151〜154、移動操作手段138を有している。
図7と図8に示す実施形態では、例えば払拭手段151〜154が移動操作手段138により移動方向Dに沿って移動可能に並べて配置されている。
払拭手段151は、ブレード161と保持部材171を有している。同様にして払拭手段152は、ブレード162と保持部材172を有している。払拭手段153はブレード163と保持部材173を有している。そして払拭手段154は、ブレード164と保持部材174を有している。
図9は、ブレード161〜164とノズルプレート面61を示している。
図7に示す払拭手段151〜154の保持部材171〜174のそれぞれの形状は同じである。ただし、ブレード161〜164は、例えば相互に異なる種類のブレードを有している。このために、払拭手段151〜154は、相互に異なる種類の払拭手段である。異なる種類とは、ブレードの材質、あるいはブレードの形状がそれぞれ異なったり、ブレードの材質と形状が共に異なる場合をいう。
図9では、ノズルプレート面61は、例えば同じ大きさの4つの払拭領域WA1〜WA4に区画できる。払拭領域WA1はノズル開口列54Aを含む領域であり、払拭領域WA2はノズル開口列54Bを含む領域である。払拭領域WA3はノズル開口列54Cを含む領域であり、払拭領域WA4はノズル開口列54Dを含む領域である。
図7〜図9に示すブレード161〜164は、互いに形状が異なるが、弾性変形可能な材質、例えばゴムやエラストマーあるいはプラスチックやインクを吸収できるような機能を有する材質により作ることができる。
いずれにしてもブレード161〜164の材質は弾性変形可能であるのがより望ましい。
ここで、図7と図9を参照して、異なる種類のブレード161〜164について説明する。
ブレード161は、図9に示すノズルプレート面61の払拭領域WA1だけを払拭するためのものである。ブレード164は、ノズルプレート面61の払拭領域WA4のみを払拭することができる。しかもブレード164は、記録ヘッド30の側面30Rを払拭することができるようにするために、側面ブレード164Sを有している。この側面ブレード164Sは側面払拭部の一例であり、ブレード164の端部に例えば平板状に形成されている。
このように、ブレード161は、払拭領域WA1だけを払拭するための払拭幅WH1を有している。ブレード164は、払拭領域WA4だけを払拭できる払拭幅WH2を有している。
図7と図9に示すブレード162は、払拭領域WA1〜WA4のすべてを同時に払拭できる払拭幅WH3を有している。このブレード162は、例えば複数の層162A,162Bを接着剤により接合した積層構造を有している。層162A,162Bは同じ材質を用いることもできるし、異なる材質を用いることもできる。例えば層162Bは不織布の材質のものや多孔質体のものを使用することができ、比較的弾性変形力が弱い材質である。これに対して層162Aは、層162Bに比べて弾性変形力が強いゴムなどにより作ることができる。層162Bは、層162Aの移動方向Dに関して前側に位置し、層162Aは後側に位置している。
次に、図7と図9に示すブレード163は、ノズル開口列54A〜54Dを除いたノズルプレート面61を一度に払拭する形状をしており、例えば、5つの列間払拭部163A〜163Eを有している。この列間払拭部163A〜163Eは、それぞれ所定間隔ごとに沿って突出して設けられている。列間払拭部163A〜163Eとブレード161とブレード162,164の突出方向は移動方向Dと垂直な方向であり、図において上方向になる。列間払拭部163A〜163Eは、ノズル開口列54A〜54Dの間のそれぞれの領域およびノズル開口列54A,54Dの外側の領域に一度に払拭するための部分である。
図7に示す互いに異なる種類のブレード161〜164は、それぞれ同じような構造の保持部材171〜174に対して着脱可能に固定することができる。
図10は、ブレード161〜164の保持部材171〜174に対して着脱可能に固定できる構造例を示している。カバー175Cと保持部材171〜174は、それぞれピン176Pを用いて固定することができる。この場合にブレード161〜164の基部190が、カバー175Cと保持部材171〜174の間に挟まれることで固定できる。保持部材171〜174およびカバー175Cは、例えばプラスチックにより作ることができる。
図7の保持部材171〜174は、ブレード161〜164をそれぞれ保持するために細長い形状を有している。そして、図7と図8に示すように保持部材171〜174は、移動方向Dに対して密接して並べられるようにして配置することができる。これにより、払拭手段151〜154の数が多くなっても、複数の払拭手段151〜154が占有するスペースを極力小さくできる。従って、インク払拭装置130の小型化が図れる。移動方向Dは、記録ヘッド30およびキャリッジ14を主走査方向Tに対して交差する方向、すなわちこの例では直交する。
図7に示すフレーム135は、ワイピングポジションWPに配置されていて、フレーム135の上には、キャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18からワイピングポジションWPまで移動される。記録ヘッド30はワイピングポジションWPにおいてフレーム135とインク吸引装置20の真上に位置している。
記録ヘッド30とキャリッジ14は、主走査方向TのT1方向に移動することで待機ポジション18からワイピングポジションWPに移動できる。その反対にキャリッジ14と記録ヘッド30は、ワイピングポジションWPから待機ポジション18に向かってT2方向に退避移動することも可能である。
次に、図7に示すインク払拭装置130の移動操作手段138について説明する。
移動操作手段138は、第1リードスクリュ181、第2リードスクリュ182および駆動部140を有している。
複数の異なる種類の払拭手段151〜154は、記録ヘッド30のノズルプレート面61に対して移動方向Dに沿ってそれぞれ個別に移動する(図21参照)ことで、ノズルプレート面61に付着しているインクを払拭するものである。
移動操作手段138は、所望の払拭をするために選択された払拭手段151〜154を移動方向Dに移動操作することにより、選択された払拭手段151〜154によりノズルプレート面61を払拭させる。この移動操作手段138は、このノズルプレート面61の払拭を行なう際には、複数の払拭手段151〜154の移動間隔を相互に持たせながら、複数の払拭手段151〜154を移動方向Dに沿って順次移動操作させる。
各異なる種類の払拭手段151〜154は、移動方向Dに沿って並べて待機させておき、そして払拭する際には、移動操作手段138は、各異なる種類の払拭手段151〜154を順次移動方向Dに送る。
インク払拭装置130の移動方向Dと直交する垂直方向についての第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は、フレーム135の側壁135A,135Bの間において回転可能に水平かつ移動方向Dに沿って平行に支持されている。第1リードスクリュ181は第1送り部材に相当し、第2リードスクリュ182は第2送り部材に相当する。
図7と図11を参照して、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の構造例について説明する。
第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は同じ構造のものである。第1リードスクリュ181は、第1送りねじ部分191,193および第2送りねじ部分192を有している。同様にして第2リードスクリュ182は、第1送りねじ部分201,203および第2送りねじ部分202を有している。
第1送りねじ部分191,193は、移動方向Dに関して第1リードスクリュ181の前側部分と後側部分に形成されたものである。第2リードスクリュ182の第1送りねじ部分201,203は、移動方向Dに関して第2リードスクリュ182の前側部分と後側部分に形成された部分である。
第2送りねじ部分192は、第1送りねじ部分191,193の間に形成されていて、前側部分と後側部分の間の中央部分に形成されている。同様にして第2送りねじ部分202は、第1送りねじ部分201,203の間に形成されていて、前側部分と後側部分の間の中央部分に形成されている。
第1送りねじ部分191,193の第1送りピッチは、第2送りねじ部分192の第2送りピッチよりも小さく設定されている。同様にして第1送りねじ部分201,203の第1送りピッチは、第2送りねじ部分202の第2送りピッチよりも小さく設定されている。逆にいえば、第2送りねじ部分192,202は、第1送りねじ部分191,193,201,203よりも大きなピッチを有していることになる。しかも第1送りねじ部分191,193,201,203は同じ送りピッチである。第2送りねじ部分192,202は同じ送りピッチである。
図12は、ブレード161〜164とノズルプレート面61との位置関係と、第1送りねじ部分191,201、第2送りねじ部分192,202および第1送りねじ部分193,203の位置関係の例を示している。
第1送りねじ部分191,201は、ブレード161〜164が記録ヘッド30のノズルプレート面の当たり開始位置700に当たるまでの間、図7の払拭手段151〜154を送る機能を有している。第1送りねじ部分193,203は、ブレード161〜164が、ノズルプレート面61から離れる前の位置(直前位置)701からその後の工程を送る機能を有している。当たり開始位置700は拭き始める時点t1であり、離れる前の位置701は拭き終り時点t3に相当する。第2送りねじ部分192,202は、ブレード161〜164の拭き始める時点t1から拭き終り時点t3までの間の拭き途中t2の間を移動させる機能を有している。
このことから、ブレード161〜164は、当たり開始位置700に当たる際において、第1送りねじ部分191,201がゆっくりブレード161〜164を送ることができる。ブレード161〜164が早く移動した場合には、当たり開始位置700におけるブレード161〜164の負荷が急激に大きくなってしまうが、ゆっくりブレード161〜164を移動させると、ブレードに生じる単位時間当たりの負荷変動の上昇を抑えることができる。従って、図7のモータ149の脱調を防止することができる。
離れる前の位置701においては、ブレード161〜164は、第1送りねじ部分193,203によりゆっくり送られることになる。これによりブレード161〜164がノズルプレート面61の離れる前の位置701から離れる場合に、ブレード161〜164の反力の開放によるインクの飛散を極力抑えることができる。そして拭き途中t2では、第2送りねじ部分192,202がブレード161〜164を拭き取って速く送ることができる。ブレード161〜164でノズルプレート面61を払拭する場合にブレード161〜164とノズル開口部の接触時間が多いと、ノズル開口からインクを引きずり出しノズル開口部のインクメニスカスを破壊したり、ノズルプレート面61のインク残りが多くなったりする。そこで、ブレード161〜164を早く送ることで払拭時間(ワイピング時間)を短縮するとともに払拭性を確保することができる。
図13は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の距離に対する送りピッチの変化例を示している。
図14(A)は、ブレード161〜164が当たり開始位置700において生じるU方向の反力Fxの最大発生時を示し、この反力Fxはブレードの移動する方向Uの反力である。図14(B)は、拭取り時における反力の例を示している。図14から分かるように、拭取り時における反力に対してブレード161〜164が生じる当たり開始位置700における反力は数倍にも達するのである。
次に、図7と図8に示す移動操作手段138の駆動部140について説明する。
駆動部140は、図に示すように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182を同期して回転駆動させるための装置である。駆動部140は、フレーム135の側壁135B側に設けられている。
駆動部140は、歯付きベルト141、ギア142、ギア143、ガイドローラ144、ギア145、ギア146、ギア147、ギア147A、ピニオン148およびモータ149を有している。モータ149は制御装置7の指令により動作することができる。このモータ149は、例えばステッピングモータを使用できる。
歯付きベルト141は、ギア142、ギア143、ギア145、ギア146にわたって掛けてある。歯付きベルト141はタイミングベルトとも呼んでいるが、歯付きベルト141に対しては、外側からガイドローラ144を押し付けることにより、歯付きベルト141のテンションを確保する。
ギア142は、第2リードスクリュ182の後端部側に固定されている。もう1つのギア146は第1リードスクリュ181の後端部側に固定されている。第2リードスクリュ182の後端部と第1リードスクリュ181の後端部は側壁135Bに対して回転可能に取り付けられている。第2リードスクリュ182の先端部と第1リードスクリュ181の先端部は、側壁135Aに対して回転可能に取り付けられている。ギア143はサポート150により回転可能に支持されている。ギア145は側壁135Bに対して回転可能に支持されている。ピニオン148は、モータ149の出力軸に固定されている。ピニオン148はギア147Aを介してギア147に対して駆動力を伝達できるようになっている。ギア146,147は一体形のものである。
これにより、モータ149が作動すると、ピニオン148の回転によりギア147A,ギア147および歯付きベルト141を介して、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して同じ方向に回転できるようになっている。このように第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182が同期して同じ方向に回転駆動できることから、払拭手段151〜154の保持部材171〜174は、移動方向Dに対して傾くことなく移動方向Dに沿って、所謂こじり現象を生じることなくスムーズに送ることができる。これによってブレード161〜164が傾いて移動方向Dに移動してしまうことがない。
図15は、図7におけるA1から見たインク払拭装置130の構造を示し、図16は図7のA2から見たインク払拭装置130の構造を示している。
図7に示す払拭手段151〜154の保持部材171〜174は、図15に示すようにガイド部175A,175を有している。ガイド部175A,175は、中央部176の両端位置にそれぞれ設けられている。中央部176は、ブレードを保持するものである。ガイド部175Aは第1リードスクリュ181を通す部分であり、ガイド部175は第2リードスクリュ182を通す部分である。
図17は、ピン部としてのピン220を示している。このピン220は、ガイド部175Aと第1リードスクリュ181を連結するとともに、ガイド部175と第2リードスクリュ182を連結している。図18はこのピン220などを示す斜視図であり、図19はピン220が第1リードスクリュ181の溝192Aに嵌っている状態を示す図である。第1リードスクリュ181の溝192Aにはピン220の先端部220Aが嵌っている。
これによって、第1リードスクリュ181が回転することにより、保持部材171〜174は移動方向Dおよびその反対方向に直線移動できる。図17に示す第2リードスクリュ182とピン220の連結構造は図18と図19に示す第1リードスクリュ181とピン220の連結構造と同様である。
図16において、キャリッジ14と記録ヘッド30がワイピングポジションWPに位置決めされると、ノズルプレート面61は第2送りねじ部分192,202の間の領域の上方に位置される。ノズルプレート面61に対応するようにしてインク吸引装置20のキャップ本体80が配置されている。図7に示すようにインク吸引装置20のキャップ本体80と昇降手段250は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の下側であって、かつこれらの間の位置に配置されている。
キャップ本体80は、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の間で昇降操作できるメリットがある。そしてキャップ本体80と昇降手段250がインク払拭装置130内に配置できるので、インクジェット式記録装置の小型化が図れる。
次に、図20を参照しながら、図7に示すインク払拭装置130の動作例について説明する。
図20は、図7に示すブレード161〜164によるノズルプレート面61のワイピング動作の手順の例を示している。
このワイピング動作を行なう前に、ノズルプレート面61は、図3と図4に示すようにインク吸引動作を行なう必要がある。図3と図4に示すインク吸引装置20は、ノズル開口列54A〜54Dに対応して選択的に吸引動作することができる。すなわち、キャップ本体80と吸引ポンプ19の間の開閉弁85を選択的に開閉させ、吸引ポンプ19を作動させることにより、ノズル開口列54A〜54Dに対応するキャップ本体80内を吸引することで選択的にノズル開口列54A〜54Dの1つ又は複数を吸引することができる。
吸引したノズル開口列に対応するノズルプレート面61の領域は、ワイピング動作を行なう必要があるが、吸引する必要のなかったノズル開口列に対応するノズルプレート面61の領域はワイピング動作をする必要がない。
例えば図4に示すキャップ本体80がすべてのノズル開口列54A〜54Dを吸引動作した場合には、図9においてノズルプレート面61の払拭領域WA1〜WA4全てを払拭する必要があり、図20のワイピング動作図に従って次のように行なう。
すでに払拭手段151〜154は、第1送りねじ部分191,201において並列してかつ密接して待機して配列されている。
例えば払拭操作の一例として、図21(B)に示すようにノズルプレート面61の払拭領域WA1〜WA4のすべてを払拭する必要がある場合には、図9に示す2番目のブレード162が選択的に用いられる。この場合には、ブレード161,163,164は使用しない。
このために、図20においてステップST1では、第1のブレード161によるワイピングが不要であるので、ステップST4に移り、図7に示すようにキャリッジ14と記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18側に退避する。そして図20のステップST3ではモータ149が作動することにより所定ステップ数回転することで、払拭手段151のブレード161はノズル面を払拭しないまま移動方向Dに沿って通過していく。
この場合に、払拭手段151〜154は、移動方向Dに沿って待機位置から同時に移動を開始する。そして、図22に示すように、最も前にある払拭手段151の保持部材171は、第1送りねじ部分191,201から第2送りねじ部分192,202に移っていくと、最も前の払拭手段151が後の払拭手段152〜154よりも先に早く移動方向Dに移動していく。そして、払拭手段151は第2送りねじ部分192,202から第1送りねじ部分193,203側に送られていく。
つまり、最も前にある払拭手段151は、第2送りねじ部分192,202により払拭手段152に比べて速く移動方向Dに送られることから、払拭手段151、払拭手段152の間の間隔を大きくとることができる。
次に、図20のステップST5では、2番目のブレード162による図9に示すノズルプレート面61の全面のワイピングが必要であるので、ステップST6において、図7に示すようにキャリッジ14および記録ヘッド30は待機ポジション18からワイピングポジションWPに移動される。そしてステップST7では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、図9に示すブレード162は、ノズルプレート面61の払拭領域WA1〜WA4の全部を払拭することができる。
次に、図20に示すステップST9では、第3のブレードによるワイピングが不要であるので、ステップST12に移る。ステップST12では、キャリッジ14と記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18へ再び退避される。そしてステップST11では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、ブレード163は単に移動方向Dに送られていくだけである。
図20のステップST13では、第4のブレード164によるワイピングは不要であるので、ステップST16に移る。ステップST16では、キャリッジ14および記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18側に移動される。そしてステップST15ではモータ149が所定ステップ数回転することにより、ブレード164は移動方向Dに沿って送られるだけである。
このようにして、図9に示すノズルプレート面61は、ブレード162だけを選択的に用いて全面的にワイピング(払拭)することができるのである。
次に、別の払拭操作の例として、図21(A)と図21(D)に示すように図9に示すブレード161とブレード164を用いて、払拭領域WA1とWA4および記録ヘッド30の側面30Rを払拭する作業例について説明する。
この場合には、ブレード161とブレード164を選択して用いるが、ブレード162,163はワイピング動作をしないことになる。
そこで、図20のステップST1では、第1のブレード161によるワイピングが必要であるので、ステップST2に移る。ステップST2では、キャリッジ14および記録ヘッド30が待機ポジション18からワイピングポジションWPに移る。そしてステップST3では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、図9のブレード161は払拭領域WA1だけを払拭する。
図20のステップST5では、第2のブレード162によるワイピングは不要であるので、ステップST8に移り、キャリッジ14と記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18に退避される。ステップST7ではモータ149が所定ステップ数回転することにより、ブレード162は、移動方向Dに送られるだけである。
図20のステップST9では、第3のブレード163によるワイピングは不要であるので、ステップST12に移る。ステップST12では、キャリッジ14および記録ヘッド30は待機ポジション18に移動される。ステップST11では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、図9のブレード163は移動方向Dに送られるだけである。
図20のステップST13では、第4のブレード164によるワイピングが必要であるので、ステップST14に移る。ステップST14では、キャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18からワイピングポジションWPへ移動される。ステップST15では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、ブレード164は払拭領域WA4と側面30Rを同時に払拭する。
このようにして、払拭領域WA1とWA4および側面30Rは、ブレード161,164により払拭することができる。
次に、例えば別の払拭操作の例として、図21(C)に示すように、ノズルプレート面61の列間領域650をそれぞれ同時に払拭する場合には、図9および図21(C)に示すブレード163が用いられる。このブレード163以外のブレード161,162,164はワイピングに使用しない。
そこで、図20のステップST1では、第1のブレード161によるワイピングが不要であるので、ステップST4に移る。ステップST4では、キャリッジ14と記録ヘッド30は待機ポジション18に退避される。ステップST3では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、図9のブレード161は、移動方向Dに単に移動されるだけである。
図20のステップST5では、第2のブレード162によるワイピングが不要であるので、ステップST8に移る。ステップST8では、キャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18に退避されたものである。ステップST7では、モータ149が所定ステップ数回転することにより、図9のブレード162は移動方向Dに単に移動されるだけである。
図20のステップST9では、第3のブレード163によるワイピングが必要であるので、ステップST10に移る。ステップST10では、キャリッジ14と記録ヘッド30が待機ポジション18からワイピングポジションWPに移動される。ステップST11では、モータ149は所定ステップ数回転することにより、図21(C)に示すようにブレード163の列間払拭部163A〜163Eが、列間領域650を同時に払拭する。
図20のステップST13では、第4のブレード164によるワイピングが不要であるので、ステップST16に移る。ステップST16では、キャリッジ14と記録ヘッド30は待機ポジション18に移動される。ステップST15ではモータ149が所定ステップ数回転することにより、図9に示すブレード164は移動方向Dに単に移動されるだけである。
このようにして、図21(C)に示すように、ノズルプレート面61の列間領域650は、ブレード163を選択的に用いることにより、より確実に払拭を行なうことができる。
上述した払拭操作例に限らず、例えばブレード161とブレード163を組み合わせたりブレード162とブレード164を組み合わせたり、あるいはブレード161〜164の1つだけを選択して払拭するような払拭の仕方も勿論採用することができる。
本発明の実施形態では、4つのブレードおよび4つの保持部材による4種類の払拭手段151〜154が設けられている。しかしこの払拭手段の数は4つに限らず2つ、3つあるいは5つ以上であっても勿論構わない。
これらの異なる種類の複数の払拭手段は、同じ形状の第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182の同期した回転により、移動方向Dに沿ってしかも相互に間隔をおいて個別に順次移動操作させることができる。図12に示すように、ブレード161〜164がノズルプレート面61の当たり開始位置700に当たる時点では、比較的小さい送りピッチを有する第1送りねじ部分191,201がブレード161〜164をそれぞれ移動させる。これによって、第1送りねじ部分191,201の小さい送りピッチによりブレード161〜164が送られるので、ブレード161〜164が当たり開始位置700において当たる場合の最大負荷(反力)を小さく抑えることができる。
逆にブレード161〜164がノズルプレート面61の離れる位置701から離れる場合には、やはり第1送りねじ部分193と203がブレード161〜164を比較的小さい送りピッチで送る。これによって、ブレード161〜164が離れる際に生じるインクの飛散量を小さく抑えることができる。
そして、拭き途中t2の間では、比較的大きいピッチの第2送りねじ部分192,202がブレード161〜164を送る。このため、ブレード161〜164はノズル開口部のインクメニスカスを破壊することなく、かつノズルプレート面61のインク残りを少なくノズルプレート面61をワイピングすることができる。
本発明の実施形態では、図7に示す1つの払拭手段がノズルプレート面61を払拭した後に、次の払拭手段がノズルプレート面61を払拭し始めるような構成になっている。具体的には、図23に示すように、各払拭手段151〜154のそれぞれは、記録ヘッド30のノズルプレート面61を個別に払拭するため、第2送りねじ部分192に係合しながら移動して払拭を行なう1の払拭手段151〜154の範囲に、他の払拭手段151〜154が存在しないような間隔をおいて、各払拭手段151〜154が配置されている。
具体的には、各払拭手段151〜154は、同じピッチ数の間隔をおいて、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182に係合している。ここで、この間隔を、第1送りねじ部分のピッチ数P(図23の払拭手段152〜154参照)で示す。また、本実施形態では、上述したように、当たり開始位置およびブレード161〜164が離れる際には、ゆっくりと移動させるために払拭手段151〜154は第1送りねじ部分191,193に係合している。なお、このとき、払拭手段151〜154は、第1送りねじ部分201,203にも係合している。従って、本実施形態では、各払拭手段151〜154の間隔のピッチ数Pよりも小さいピッチ数P2で、各払拭手段151〜154が第2送りねじ部分192を形成している。
詳述すると、ブレード161〜164が記録ヘッド30のノズルプレート面61に当接する地点から離隔するまでの第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182におけるピッチ数が、各払拭手段151〜154の間のピッチ数Pと同じか、又はそれより小さくなるように構成する。言い換えれば、記録ヘッド30の移動方向Dの長さLに相当するピッチ数がピッチ数Pと同じか、又はそのピッチ数Pより小さくなるように構成する。これにより、1つの払拭手段(図23では払拭手段151)がノズルプレート面61を払拭した後に、次の払拭手段(図23では払拭手段152)がノズルプレート面61を払拭し始める。
なお、ピッチ数Pが、記録ヘッド30の移動方向Dの長さLに相当するピッチ数と同じ場合、払拭後において、各払拭手段151〜154は払拭前と同様に密接した状態となり、スペースを極力小さくすることができる。また、ピッチ数Pが、記録ヘッド30の長さLに相当するピッチ数より大きい場合、1つの払拭手段が記録ヘッド30を払拭した後、次の払拭手段がすぐに払拭を開始しないので、モータ149を連続して駆動させていても、その間にキャリッジ14を移動させることができる。具体的には、前述した払拭領域WA1と払拭領域WA4のみを払拭する場合に、ブレード161を通過させて払拭領域WA1を払拭後、ブレード162が記録ヘッド30の払拭を開始しない間に、記録ヘッド30をワイピングポジションWPから待機ポジション18へ移動させる。そして、ブレード162,163を通過させた後、ブレード164が記録ヘッド30の払拭を開始しない間に、記録ヘッド30を待機ポジション18から移動させて再びワイピングポジションWPに位置させて、ブレード163を通過させて払拭領域WA4を払拭する。このように記録ヘッド30を移動方向Dに移動させる動作において、モータ149を停止させずに行なうことができる。
本発明の実施形態では、図9に示すように払拭手段の種類、すなわちブレードの形状をそれぞれ変えることにより、ノズルプレート面の払拭領域を選択的に払拭することができる。払拭させたくない場合には、図7に示すキャリッジ14と記録ヘッド30はワイピングポジションWPから待機ポジション18に移してワイピング動作の領域側に退避させることができる。
またキャリッジ14および記録ヘッド30が、主走査方向Tに関する位置をワイピングポジションWPにおいて所定量微小移動させることにより、別のブレードを用いて払拭領域を払拭させることもできる。例えば図9に示すブレード161を用いて払拭領域WA2〜WA4のいずれかを払拭させることができる。
図7の第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は、徐々に送りピッチを変えることにより、払拭手段151〜154の移動方向Dに沿った動きがスムーズとなり、急激な負荷変動を抑えることができる。送りピッチの小さい領域である第1送りねじ部分191,201,193,203では、他の構成要素の動き、例えばキャッピング動作やバルブ開閉動作とのタイムラグを形成したりすることにより、他の要素との駆動タイミングを合わせやすくなる。
図24は、本発明の別の実施形態を示している。図24に示す161〜164はそれぞれ互いに異なる種類のブレードである。図24に示すブレード161〜164の場合には、互いに形状が異なるが、材質は例えば同じものを使用することができる。図20の実施形態では、ブレード161は払拭領域WA1を払拭でき、ブレード162は払拭領域WA2を払拭できる。ブレード163は払拭領域WA3を払拭でき、ブレード164は払拭領域WA4を払拭することができるようになっている。
図9において、払拭領域WA1〜WA4を連続して払拭する場合には、ブレード161〜164は、連続して移動方向Dに送ればよい。この場合には、モータは一旦停止させず連続的に動作させることで、ブレード161〜164は順次移動方向Dに関して相互に間隔をおきながら送り出すことができる。
ここで、第1リードスクリュ181と第2リードスクリュ182は送りピッチを変えて払拭手段151〜154の移動速度を変えているので、モータ149の回転速度は変える必要はなく、一定の速度で回転させればよい。
ブレード161〜164は、互いに対応する払拭領域を払拭できるような払拭幅を有しているが、互いに位相がずれている。ブレード161〜164の1つ又は複数を組み合わせることにより、任意の払拭領域WA1〜WA4の1つ又は複数を払拭することができるのである。
図7に示す駆動部140は、歯付きベルト141を用いているが、これに限らず歯車列を用いて歯付きベルトを省略することも可能である。また払拭手段151〜154は移動方向Dに移動する際に、上述したようなこじり現象を生じなければ、例えば第2リードスクリュ182は棒状のガイド部材に変えることにより、1本の第1リードスクリュ181のみで送るようにしても良い。
ブレード161〜164の材質は同じものであっても良いし、異なる材質のものを採用しても勿論構わない。また各ブレード161〜164の形状は必要に応じて種々の形状のものを採用することができる。各ブレード161〜164は、当たりの強いものや当たりの弱いものや、あるいはラビング(濡れた布で拭くような効果)を発揮することができるものなど各種の材質を採用することができる。
本発明の実施形態では、図3と図4に示すインク吸引装置20は各ノズル開口列54A〜54Dに対応して1つ又は複数独立して吸引することができる構造のものを採用している。このことから、ノズルプレート面61の全体を払拭する必要がある場合と、部分的にあるノズル開口列に対応して払拭する場合がある。いずれの場合においても、本発明の実施形態におけるインク払拭装置130は、図9に示す複数の払拭領域の1つ又は複数を選択して、あるいは全部を払拭することができる。
図8に示す払拭手段151〜154は、薄肉厚の保持部材を使用することができ、しかも移動方向Dに沿って並べて密接して配置することができる。そして複数の払拭手段151〜154は、2本のリードスクリュにより送る構造になっている。インク吸引装置20は、2本のリードスクリュの間に配置して収容することができる。
このことから、インク払拭装置130の小型化および構造の単純化を図ることができる。従って、インク払拭装置130を有するインクジェット式記録装置の小型化および装置の単純化を図れるのである。
ところで、本発明の実施形態では、複数の払拭手段の異なる種類のブレードは、互いに材質を変更することにより、例えば耐インク性や耐久性を向上させることができる。例えば使用するゴム材質の変更を行なうことにより、耐インク性や耐久性を積極的に変えることができる。ブレードのゴム硬度やブレードの厚みあるいはノズルプレート面に向かう垂直方向の長さを変えることにより、ブレードの払拭時の拭取り圧力の増加あるいは減少を図ることができる。ブレードの材質として例えばフェルト材を用いることにより、例えばラビングに適用することができる。また、図1のノズルプレート面61とプラテン12とのギャップ、すなわちノズルプレート面61の高さ方向の位置を変えることにより、各ブレードがノズルプレート面61に押し付けられる力の強弱を変えることができる。以上のような変更は、インクの成分により、拭き取り性が異なる場合やノズルプレート面が耐久劣化し拭き取り力を変える必要がある場合などに有効である。従って、1種類のブレードでは十分に払拭できない場合においても、複数種類のブレードが使用可能になり、より確実に払拭を行なうことができる。
異なる種類の払拭手段の一例として、上述したような図9に示すブレード163を用いることができる。このブレード163は上述したように複数の列間払拭部163A〜163Eを有している。ブレード163を用いることにより、ノズル開口列の各ノズルにダメージを与えることなく所謂キャップマークと呼ばれる異物付着部分の除去が可能である。つまり図4に示すようにキャップ本体80の上端部97がノズルプレート面61に圧着された場合に残る、ノズル面におけるキャップマークと呼ばれるインク残留物が、図9に示す列間払拭部163A〜163Eにより拭き残しなく確実に除去することができる。
また、図9のブレードの形状例に示したように、例えばブレード161は、ノズルプレート面61の全幅よりも小さい払拭幅WH1を有している。これはブレード164においても同様であるが、ブレード161,164は、任意の領域を選択的に払拭することができる。図9に示すブレード164の側面ブレード164Sを使用することにより、記録ヘッド30の側面にたまったインクを確実に除去することができる。
図1の実施形態では、各ブレード161〜164はノズルプレート面61に対して移動方向Dに沿って移動するだけで払拭作業をしているが、ブレード161〜164は移動方向Dとその反対方向について往復移動させることでワイピングすることも可能である。
逆にキャリッジ14側にクリーナ部材が搭載されている場合には、ブレード161〜164は移動方向Dに沿った所定位置に停止させる。そしてキャリッジがブレードに対して主走査方向Tに沿って移動することにより、ブレード161〜164のクリーニングをクリーナ部材により行なうことができる。
本発明の実施形態では、異なる種類の複数の払拭手段151〜154は、それぞれノズルプレート面61に対して移動方向に沿ってそれぞれ個別に移動操作手段138により移動することができる。すなわち、複数の払拭手段を回転させて位置決めさせる構造ではないことから、占有スペースを小さくでき薄型化による小型化が図れる。このために液体噴射装置の小型化が図れる。
また異なる種類の複数の払拭手段151〜154は、移動方向Dに移動操作するだけで、ノズルプレート面61に対して異なる種類の払拭動作を行なうことができ、1種類のブレードでは十分に払拭できない場合においても、複数種類のブレードが使用可能になり、より確実に払拭を行なうことができる。
本発明の実施形態では、異なる種類の払拭手段151〜154の数が増えても、各払拭手段151〜154は移動方向に沿って並べて配列するだけでよいので、払拭手段151〜154の占有スペースを小さくして装置の大型化を避けることができる。
本発明の実施形態では、駆動部140の第1送り部材と第2送り部材を同期して回転させることにより、各払拭手段151〜154の保持部材171〜174は、移動方向Dに沿って同じ移動量で、傾いて移動することなくスムーズに送ることができる。
本発明の実施形態では、各払拭手段151〜154の保持部材171〜174は、第2送りねじ部分においては速く移動でき、第1送りねじ部分191,193,201,203では第2送りねじ部分192,202に比べてゆっくりと移動することができる。言い換えれば、第2送りねじ部分192,202の第2送りピッチが、第1送りねじ部分191,193,201,203の第1送りピッチよりも大きく設定されている。このため、各払拭手段151〜154の保持部材171〜174およびブレード161〜164は、1個ずつ移動方向に各払拭手段の移動間隔を相互に持たせながら順次移動操作することができる。このため、各払拭手段は互いに当たらず払拭操作の障害にならない。
本発明の実施形態では、払拭手段によるノズルプレート面61の拭き途中では、払拭手段のブレードと保持部材は比較的早く移動しながらノズルプレート面61の払拭を行なうことができる。
そして、液体噴射ヘッドのノズルプレート面61の開始位置に当たるまでは、第1送りねじ部分が比較的ゆっくりとブレード161〜164をノズルプレート面61の開始位置に当てることができ、この場合にブレード161〜164に生じる最大負荷を抑えることができる。
またブレード161〜164がノズル面から離れる前には、第1送りねじ部分191,193,201,203が保持部材171〜174を送ることにより、ブレード161〜164がインクを飛散する際のインクの飛散量を抑えることができる。
本発明の実施形態では、この払拭手段151〜154を選択することにより、ノズル面の複数のノズル開口列の内1つのノズル開口列だけを払拭することができる。
本発明の実施形態では、この払拭手段151〜154を選択することにより、ノズル面の複数のノズル開口列のすべてを払拭することができる。
本発明の実施形態では、この払拭手段151〜154のブレードを選択することにより、複数のノズル開口列の間の部分を払拭することができる。このようにノズル開口列の間を払拭することにより、ノズル開口列に形成された汚れを確実に除去することができる。
本発明の実施形態では、この払拭手段151〜154のブレードを選択することにより、液体噴射ヘッドの側面は側面払拭部により、より確実に払拭を行なうことができる。
本発明の実施形態では、液体噴射ヘッドのノズル開口列の払拭を不要とする場合には、液体噴射ヘッドは主走査方向に移動して払拭領域外に出せば、各払拭手段151〜154は単に移動方向へ移動するだけでありノズル面を払拭することはない。
本発明の実施形態では、図3に示すノズル開口列54A〜54Dごとに吸引して、しかも任意のノズル開口列に対応するノズルプレート面61の払拭領域を払拭できるので、所謂反応系インクを使用することが容易になる。
各異なる種類の払拭手段151〜154は、移動方向Dに沿って並べて待機させておき、そして払拭する際には、移動操作手段138は、各異なる種類の払拭手段151〜154を順次移動方向Dに送る。このため、インク払拭装置130の移動方向Dと直交する垂直方向についての厚みが、従来の回転型のブレード支持体のものに比べて薄型化できる。従って、このインク払拭装置130を備えるインクジェット式記録装置10の小型化と薄型化も図れる。
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図示した本発明の実施形態においては、例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの各インクを使用する4つのインクカートリッジが、キャリッジに装着できるようになっている。このインクカートリッジはこれに限らず、ブラックインク用のインクカートリッジだけを備えているものであってもよい。また、上述したように2つのインクカートリッジを備えていたり、ブラックインクを除いた3色のカラーインク用の3つのインクカートリッジを備えていたりするものや、5つ以上のインクカートリッジがキャリッジに装着できるようなものであってもよい。
本発明の実施形態においては、払拭手段を4つとしたが、インクカートリッジの数によらず、払拭手段は2つ以上であれば成立する。例えばブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクの各インクを使用する4つのインクカートリッジと2つの払拭手段の場合、図3,図4において隔壁81を中央の1つにしてもよい。この場合には、ノズル開口列54A,54Bを同時に吸引しその後1つの払拭手段で2列同時に払拭し、ノズル開口列54C,54Dを同時に吸引しその後別の払拭手段で2列同時に払拭しても良い。
もしくは、ブレードの表面と裏面で異なるノズル開口列を払拭することで、インクカートリッジの数より払拭手段の数を少なくしても良い。
本発明は、インクジェット式記録装置としての上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行なうことができる。さらに、上述の各実施形態は、相互に組み合わせて構成するようにしてもよい。また、本発明は、インクジェット式記録装置に限らず、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等の液体を吐出する液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置等にも適用できる。
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行なうことができる。
上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、その一部を上記とは異なる構成を用いて任意に組み合わせることができる。