JP5157943B2 - 硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法 - Google Patents
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Description
湿式製錬方法(A):ニッケル酸化鉱石から、高圧酸浸出(High Pressure Acid Leach)法を用いて、下記の(1)〜(4)を含む工程によりニッケル及びコバルトを含有する混合硫化物を製造する(例えば、特許文献1参照。)。
(1)浸出工程:ニッケル酸化鉱石をスラリー化して硫酸を添加し、220〜280℃の温度で撹拌処理し、浸出スラリーを形成する。
(2)固液分離工程:前記浸出スラリーを多段階のシックナーを用いて洗浄し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と鉄をヘマタイトとして含む浸出残渣とに分離する。
(3)中和工程:前記浸出液の酸化を抑制しながら、炭酸カルシウムを用いてpHが4以下となるよう調整し、3価の鉄を含有する中和殿物を生成し、中和殿物スラリーとニッケル回収用母液とに分離する。及び
(4)硫化工程:前記ニッケル回収用母液に硫化水素ガスを吹きこみ、ニッケル及びコバルトを含有する硫化物を生成し、貧液と分離する。
また、湿式製錬方法(C)では、得られた水酸化ニッケルは、コバルトの分離がなされており、金属ニッケル、酸化ニッケル、フェロニッケル等のニッケル工業材料の原料として効果的に利用することができるが、一方、製錬プロセスとしては、浸出工程でRIP(Resin in pulp)法を採用するので、高価なイオン交換樹脂のスラリー中での磨耗等によりその使用量とロスが過大となり、浸出法自体に経済上の問題があることのほか、溶媒抽出工程の始液となる酸性溶離液のニッケル濃度も、イオン交換樹脂の使用による濃縮効果が期待されるものの、高々10〜80g/Lであるので、このような薄液を用いた溶媒抽出処理においては、湿式製錬方法(B)と同様、抽出剤の使用量及び設備容量が過大となるという問題があった。
しかも、湿式製錬方法(B)及び(C)では、溶媒抽出工程の始液からのマンガンの除去のための特別な工程は設けられていないので、始液からコバルトを有機相へ抽出するための抽出剤として燐酸エステル系酸性抽出剤を採用する際、共抽出されるマンガンの影響によりコバルトの抽出効率が悪化するため、さらに抽出剤の使用量の増加とコバルトを含有する逆抽出液中のマンガン濃度の上昇という問題もあった。
下記の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法が提供される。
工程(1):前記硫酸酸性水溶液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、炭酸カルシウムを添加して酸化中和処理に付し、生成された鉄及びアルミニウムを含有する沈殿物(a)を除去する。
工程(2):前記工程(1)で得られた酸化中和処理後液に、水酸化カルシウムを添加して中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する混合水酸化物を分離回収する。
工程(3):前記工程(2)で得られた混合水酸化物を、濃度50質量%以上の硫酸溶液中で溶解処理に付し、生成されたマンガン及び石膏を含有する沈殿物(b)を除去してニッケル及びコバルトの濃縮液を得る。
工程(4):前記工程(3)で得られた濃縮液を、燐酸エステル系酸性抽出剤を用いて溶媒抽出処理に付し、ニッケルを含有する抽出残液とコバルトを含有する逆抽出液を得る。
工程(5):前記工程(4)で得られた抽出残液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化ニッケルを分離回収する。
工程(6):前記工程(3)で得られたニッケル及びコバルトの濃縮液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、中和剤を添加して、酸化中和処理に付し、生成されたマンガン及びコバルトを含有する沈殿物(c)を除去し、得られた酸化中和処理後液を、前記工程(4)に移送する。
工程(7):前記工程(5)で得られた逆抽出液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化コバルトを分離回収する。
工程(8):前記工程(5)で得られた逆抽出液に、硫化水素ガス又は硫化アルカリを添加して硫化処理に付し、生成された硫化コバルトを分離回収する。
(イ)前記混合ガス中の亜硫酸ガスの含有割合は、希釈ガスである空気又は酸素ガスに対して1〜10容量%である。
(ロ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、400〜600mVである。
(ハ)pHは、4.0〜4.5である。
(ニ)pHは、7.5〜7.7である。
(ホ)スラリー濃度は、30〜40質量%である。
(ヘ)混合水酸化物の溶解終了時のpHは、1.5〜2.2である。
(ト)pHは、7.5〜8.0である。
(チ)前記中和剤は、水酸化マグネシウムである。
(リ)反応温度は、80℃以上沸騰点以下の温度である。
(ヌ)前記混合ガス中の亜硫酸ガスの含有割合は、空気又は酸素ガスに対して1〜10容量%である。
(ル)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、500〜600mVである。
(オ)pHは、5.0〜6.0である。
(ワ)前記中和剤は、水酸化ナトリウムである。
が提供される。
本発明の硫酸酸性水溶液からのニッケルの回収方法は、ニッケル及びコバルトと鉄、アルミニウム及びマンガンその他の不純物元素とを含有する硫酸酸性水溶液から、ニッケルを回収する方法であって、
下記の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする。
工程(1):前記硫酸酸性水溶液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、炭酸カルシウムを添加して酸化中和処理に付し、生成された鉄及びアルミニウムを含有する沈殿物(a)を除去する。
工程(2):前記工程(1)で得られた酸化中和処理後液に、水酸化カルシウムを添加して中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する混合水酸化物を分離回収する。
工程(3):前記工程(2)で得られた混合水酸化物を、濃度50質量%以上の硫酸溶液中で溶解処理に付し、生成されたマンガン及び石膏を含有する沈殿物(b)を除去してニッケル及びコバルトの濃縮液を得る。
工程(4):前記工程(3)で得られた濃縮液を、燐酸エステル系酸性抽出剤を用いて溶媒抽出処理に付し、ニッケルを含有する抽出残液とコバルトを含有する逆抽出液を得る。
工程(5):前記工程(4)で得られた抽出残液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化ニッケルを分離回収する。
上記工程(1)は、ニッケル及びコバルトと鉄、アルミニウム及びマンガンその他の不純物元素とを含有する硫酸酸性水溶液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、炭酸カルシウムを添加して酸化中和処理に付し、生成された鉄及びアルミニウムを含有する沈殿物(a)を除去する工程である。
ここで、後続の溶媒抽出処理において前記抽出剤中への蓄積性の高い鉄及びアルミニウムを略完全に除去する。
図1より、ニッケルが1%以上沈殿するようなpH条件下でも、鉄の除去率が10〜20%ていどであることが分かる。これに対して、アルミニウムの除去率は、pH4以上で略完全に除去することができることが分かる。
(イ)前記混合ガス中の亜硫酸ガスの含有割合は、希釈ガスである空気又は酸素ガスに対して1〜10容量%、希釈ガスが空気の場合には、好ましくは1〜5容量%である。
(ロ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、400〜600mVである。
(ハ)pHは、4.0〜4.5である。
上記工程(2)は、上記工程(1)で得られた酸化中和処理後液に、水酸化カルシウムを添加して中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する混合水酸化物を分離回収する工程である。ここで、前記酸化中和処理後液中のニッケル及びコバルトを一旦沈殿物として回収する。これによって、ニッケル品位が25〜45質量%の混合水酸化物が得られるので、後続の溶解処理で高ニッケル濃度の濃縮液を得て、さらに、溶媒抽出処理において、その始液となるのニッケル濃度を大幅に向上させることが可能となる。この高ニッケル濃度の濃縮液を始液として用いた溶媒抽出処理においては、抽出剤の使用量及び設備容量を低減することができ、抽出剤の損失と設備コストの低下により経済上の効率性が格段に向上する。
(ニ)pHは、7.5〜7.7である。
すなわち、中和反応のpHとしては、ニッケル及びコバルトの沈殿率(回収率)を向上させるためには高い程望ましく、97%以上の高回収率を得るためには7.5以上が用いられる。一方、pHが7.7を超えると、液中のマンガンの沈殿率が急上昇し、前記混合水酸化物に含有され、さらに後続の溶媒抽出処理でコバルトの抽出効率に悪影響を及ぼすようになる。したがって、中和反応のpHはニッケル及びコバルトの沈殿率(回収率)とマンガン沈殿率を考慮して選ばれる。なお、このようなpH条件を実現するための中和剤としては、他のアルカリ剤も用いられるが、安価な水酸化カルシウムの使用により達成することができる。
上記工程(3)は、上記工程(2)で得られた混合水酸化物を、濃度50質量%以上の硫酸溶液中で溶解処理に付し、生成されたマンガン及び石膏を含有する沈殿物(b)を除去してニッケル及びコバルトの濃縮液を得る工程である。ここで、該混合水酸化物中に含有されるニッケル及びコバルトを溶解して、高ニッケル濃度の濃縮液を得るとともに、マンガンを二酸化マンガン(MnO2)の形態で沈殿物として分離する。この工程により、マンガンの40〜60%を酸化除去することが可能であり、またニッケル溶解率99%、コバルト溶解率96%が達成される。
前記混合水酸化物を、所定濃度の硫酸溶液と混合し、次いで水を添加してスラリー濃度を調整し、その後、溶解終了時のpHが所定値になるように、所定濃度の硫酸溶液の所定量を添加した。例えば、水分率が30〜50質量%の混合水酸化物に、含有されるニッケルとコバルトに対して1当量となるように、濃度64質量%硫酸溶液を添加し1次混合する。次いで、30〜40質量%のスラリー濃度となるように、水を添加して調整する。最後に、再度濃度64質量%硫酸溶液を添加し、溶液のpHが1.5〜2.2の間に入るように調整する。
(ホ)混合水酸化物を投入した硫酸溶液スラリーのスラリー濃度は、30〜40質量%である。
(ヘ)混合水酸化物の溶解終了時のpHは、1.5〜2.2である。
図4は、混合水酸化物を濃度64質量%の硫酸溶液で溶解処理した際のニッケル、コバルト及びマンガンの浸出率(溶解率)とpHの関係を示す。図4より、pHが2.2以下では、ニッケル及びコバルトの溶解率がほぼ100%で一定であること、マンガンの溶解率が40〜60%であることが分かる。
ここで、混合水酸化物として、リモナイト鉱の浸出液(遊離硫酸を中和後)を酸化中和処理し、次いで中和処理して得られた、Ni:22質量%、Co:1.1質量及びMn:5.4質量の組成を有するものを使用し、該混合水酸化物に、濃度64質量%の硫酸溶液を添加量を変えて添加し混合後、純水を添加してスラリー濃度を30質量%に調整した。その後、溶解終了時のpHを測定し、溶解スラリーをろ過して分析した。
上記工程(4)は、上記工程(3)で得られた濃縮液を、燐酸エステル系酸性抽出剤を用いて溶媒抽出処理に付し、ニッケルを含有する抽出残液とコバルトを含有する逆抽出液を得る工程である。
ここで、上記濃縮液中のニッケルとコバルトを分離する。この際、上記濃縮液中にマンガンが共存する場合、コバルトとともに、前記抽出剤により抽出され、さらに逆抽出液中に分配される。
上記燐酸エステル系酸性抽出剤としては、特に限定されるものではなく、ニッケルとコバルトの分離がよく、かつカルシウムの抽出が少ないものであれば利用できるが、例えば米国Cyanex社製の商品名Cyanex272が用いられる。
上記工程(5)は、上記工程(4)で得られた抽出残液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化ニッケルを分離回収する工程である。これによって、ニッケル品位が40〜45質量%の水酸化ニッケル沈殿物が得られる。
ここで、上記抽出残液中のニッケルは、中和反応によって水酸化ニッケルとして沈殿物を形成し、ろ過分離して回収される。
(ト)pHは、7.5〜8.0である。
(チ)前記中和剤は、水酸化マグネシウムである。
(リ)反応温度は、80℃以上沸騰点以下の温度である。
また、(チ)の要件において、前記中和剤としては、他のアルカリ剤が用いられるが、例えば、水酸化カルシウムを用いると、石膏が生成析出して沈殿物に混じりニッケル品位を低下させてしまうので、水酸化マグネシウムが好ましい。
また、(リ)の要件において、中和剤として水酸化マグネシウムを用いる場合は、実用的な中和反応の速度が得られる、80℃以上沸騰点以下の温度が好ましい。
本発明の回収方法において、さらに、上記工程(3)に続いて、必要に応じて、下記の工程(6)を含むことができる。これにより、上記濃縮液中に残存したマンガンが水酸化物として除去されるので、後続の溶媒抽出処理において、マンガンによるコバルト抽出への効率低下を抑えることができる。また、溶媒抽出工程における抽出負荷が低減されるため、より小さな溶媒抽出工程の設計が可能となる
工程(6):前記工程(3)で得られたニッケル及びコバルトの濃縮液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、中和剤を添加して、酸化中和処理に付し、生成されたマンガン及びコバルトを含有する沈殿物(c)を除去し、得られた酸化中和処理後液を、前記工程(4)に移送する。
(ヌ)前記混合ガス中の亜硫酸ガスの含有割合は、空気又は酸素ガスに対して1〜10容量%である。
(ル)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、500〜600mVである。
(オ)pHは、5.0〜6.0である。
(ワ)前記中和剤は、水酸化ナトリウムである。
本発明の回収方法において、さらに、必要に応じて、下記の工程(7)又は工程(8)を含むことができる。これによって、上記工程(5)で得られた逆抽出液から、コバルトが、水酸化コバルト又は硫化コバルトとして回収される。これらの回収物は、コバルト精製工程を含むプロセスの原料として好適である。
工程(7):前記工程(5)で得られた逆抽出液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化コバルトを分離回収する。
工程(8):前記工程(5)で得られた逆抽出液に、硫化水素ガス又は硫化アルカリを添加して硫化処理に付し、生成された硫化コバルトを分離回収する。
(カ)pHは、7.5〜9.0である。
(ヨ)前記中和剤は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等の難溶解性の塩を形成するカルシウムを含有しないものである。
(タ)反応温度は、80℃以上沸騰点以下の温度である。
(レ)pHは、2.0〜4.0である。
(ソ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、−250〜−100mVである。
(ツ)反応温度は、60℃〜沸騰点以下の温度である。
本発明の回収方法に用いる硫酸酸性水溶液としては、ニッケル及びコバルトと鉄、アルミニウム及びマンガンその他の不純物元素とを含有するものであり、ニッケル酸化鉱石の種々の製錬方法から産出されるものが好ましく用いられるが、例えば、下記の浸出工程及び固液分離工程により、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸溶液を添加し、高温高圧下に浸出する工程から産出される浸出液が挙げられる。
浸出工程:ニッケル酸化鉱石をスラリー化して硫酸を添加し、220〜280℃の温度で撹拌処理し、浸出スラリーを形成する。
固液分離工程:前記浸出スラリーを多段階のシックナーを用いて洗浄し、ニッケル及びコバルトを含む浸出液と浸出残渣とに分離する。
ラテライト鉱の高圧酸浸出法で得た浸出液を用いて、ニッケルを分離し、水酸化ニッケルの回収を行なった。
(1)ラテライト鉱の浸出工程
ラテライト鉱(組成;Ni:1.1質量%、Co:0.1質量%、Fe:42.0質量%、Mn:0.8質量%、Al:2.7質量%)500gを採取し、濃度64質量%の硫酸溶液150gと水を加え、スラリー濃度30質量%に調整した。
このスラリーを、容積3リットルの耐熱容器に入れ、容器を内容積3.5リットルの電気加熱式オートクレーブに装入して攪拌機によって攪拌しながら250℃に加熱し、この温度で、1時間維持した後に室温まで冷却し、浸出スラリーをオートクレーブから取り出した。得られた浸出スラリーは、濃度20質量%の炭酸カルシウムスラリーを用いて残留する硫酸を中和処理した後、固液分離して、Ni:3.8g/L、Co:0.2g/L、Fe:2.0g/L、Al:4.1g/L及びMn:2.8g/Lの組成を有する、pHが2.5の浸出液を得た。
上記のように作成した浸出液10Lに、液温を60℃に制御しながら、亜硫酸ガスと空気からなる混合ガス(空気に対し3容量%のSO2ガスを含む。)を吹き込み、同時に濃度20質量%の炭酸カルシウムスラリーを添加して、酸化pHを4.5に保持した。その後、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が500mVに到達した時点で、酸化中和後スラリーをろ過し、生成された鉄及びアルミニウムを含有する沈殿物(a)を分離して、酸化中和処理後液を得て分析した。
得られた酸化中和処理後液の組成は、Ni:3.7g/L、Co:0.2g/L、Fe:<0.001g/L、Al:<0.001g/L及びMn:2.8g/Lであった。これより、鉄とアルミニウムが略完全に除去されることが分かる。
工程(1)で得られた酸化中和処理後液10Lに、液温を60℃に制御しながら、濃度20質量%の水酸化カルシウムスラリーを添加してpHを7.6に制御して中和処理し、中和後スラリーをろ過し、生成されたニッケル及びコバルトを含有する混合水酸化物を得て分析した。
得られた混合水酸化物の組成は、Ni:15.2質量%、Co:1.4質量%、Fe:<0.01質量%、Mn:4.4質量%、Al:<0.01質量%であり、ニッケルとコバルトの沈殿率は、98%であった。
工程(2)で得られた混合水酸化物300gを、濃度64質量%の硫酸溶液100mLを添加し混合後、純水を添加してスラリー濃度を30質量%に調整した。さらに、再度濃度64質量%硫酸溶液を添加し、溶解終了時のpHを2.0に調整した。その後、溶解スラリーをろ過して、生成されたマンガン及び石膏を含有する沈殿物(b)を分離して、ニッケル及びコバルトの濃縮液を得て分析した。
得られた濃縮液の組成は、Ni:65.5g/L、Co:5.9g/及びMn:10.5g/Lであった。これより、ニッケルとコバルトの溶解率は、98%であり、マンガンの溶出率は55%であった。混合水酸化物中のマンガンの45%が除去されることが分かる。
工程(3)で得られた濃縮液からなる水相と燐酸エステル系酸性抽出剤を含む溶媒からなる有機相を有機/水相比が2となる割合で混合し、pHを4.5に調整して有機相にコバルトを抽出し、その後両相を分離する3段の抽出段、及び得られた有機相と硫酸溶液を有機/水相比が2となる割合で混合して硫酸溶液にコバルトを抽出し、その後両相を分離する2段の逆抽出段、及び有機相を希酸で洗浄するスクラビング段からなる設備を用いて、溶媒抽出処理し、ニッケルを含有する抽出残液とコバルトを含有する逆抽出液を得て分析した。
得られた抽出残液の組成は、Ni:50.5g/L、Co:<0.1g/及びMn:<0.1g/Lであった。また、逆抽出液の組成は、Ni:0.6g/L、Co:5.5g/及びMn:10.0g/Lであった。これより、ニッケルとコバルトの分離が十分に行われていることが分かる。
工程(4)で得られた抽出残液に、水酸化マグネシウムスラリーを添加して中和処理し、Ni:44.4質量%、Co:<0.1質量%、Fe:<0.1質量%、Mn:<0.1質量%、Al:<0.1質量%の組成を有する水酸化ニッケルを得た。これより、金属ニッケル、酸化ニッケル、フェロニッケル等のニッケル工業材料の原料として効果的に利用することができる水酸化ニッケルを分離回収することができることが分かる。
上記実施例1の工程(3)で得られた濃縮液を用いて、脱マンガン(工程(6))を行なった。
まず、前記濃縮液の液温を60℃に制御し、亜硫酸ガスと空気からなる混合ガス(空気に対し1容量%でSO2ガスを含む。)を吹き込み、同時に濃度4mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを5.0に保持した。ここで、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を550mVに4時間保持した。その後、酸化中和後スラリーをろ過し、生成されたマンガン及びコバルトを含有する沈殿物(c)を分離し、酸化中和処理後液を得て分析した。
得られた酸化中和処理後液の組成は、Mn:5.9g/Lであった。これより、工程(4)の溶媒抽出工程における抽出負荷が低減されるため、より小さな溶媒抽出工程の設計が可能となることが分かる。
Claims (10)
- ニッケル及びコバルトと鉄、アルミニウム及びマンガンその他の不純物元素とを含有する硫酸酸性水溶液から、ニッケルを回収する方法であって、
下記の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
工程(1):前記硫酸酸性水溶液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、炭酸カルシウムを添加して酸化中和処理に付し、生成された鉄及びアルミニウムを含有する沈殿物(a)を除去する。
工程(2):前記工程(1)で得られた酸化中和処理後液に、水酸化カルシウムを添加して中和処理に付し、ニッケル及びコバルトを含有する混合水酸化物を分離回収する。
工程(3):前記工程(2)で得られた混合水酸化物を、濃度50質量%以上の硫酸溶液中で溶解処理に付し、生成されたマンガン及び石膏を含有する沈殿物(b)を除去してニッケル及びコバルトの濃縮液を得る。
工程(4):前記工程(3)で得られた濃縮液を、燐酸エステル系酸性抽出剤を用いて溶媒抽出処理に付し、ニッケルを含有する抽出残液とコバルトを含有する逆抽出液を得る。
工程(5):前記工程(4)で得られた抽出残液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化ニッケルを分離回収する。 - 前記工程(3)に続いて、下記の工程(6)を含むことを特徴とする請求項1に記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
工程(6):前記工程(3)で得られたニッケル及びコバルトの濃縮液に、亜硫酸ガスと空気又は酸素ガスからなる混合ガスを吹き込みながら、中和剤を添加して、酸化中和処理に付し、生成されたマンガン及びコバルトを含有する沈殿物(c)を除去し、得られた酸化中和処理後液を、前記工程(4)に移送する。 - 下記の工程(7)又は工程(8)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
工程(7):前記工程(5)で得られた逆抽出液に、中和剤を添加して中和処理に付し、生成された水酸化コバルトを分離回収する。
工程(8):前記工程(5)で得られた逆抽出液に、硫化水素ガス又は硫化アルカリを添加して硫化処理に付し、生成された硫化コバルトを分離回収する。 - 前記工程(1)において、酸化中和処理は、下記の(イ)〜(ハ)の要件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
(イ)前記混合ガス中の亜硫酸ガスの含有割合は、希釈ガスである空気又は酸素ガスに対して1〜10容量%である。
(ロ)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、400〜600mVである。
(ハ)pHは、4.0〜4.5である。 - 前記工程(2)において、中和処理は、下記の(ニ)の要件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
(ニ)pHは、7.5〜7.7である。 - 前記工程(3)において、溶解処理は、下記の(ホ)及び(ヘ)の要件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
(ホ)スラリー濃度は、30〜40質量%である。
(ヘ)混合水酸化物の溶解終了時のpHは、1.5〜2.2である。 - 前記工程(3)において、沈殿物(b)を、前記工程(1)へ移送する手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
- 前記工程(5)において、中和処理は、下記の(ト)〜(リ)の要件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
(ト)pHは、7.5〜8.0である。
(チ)前記中和剤は、水酸化マグネシウムである。
(リ)反応温度は、80℃以上沸騰点以下の温度である。 - 前記工程(6)において、酸化中和処理は、下記の(ヌ)〜(ワ)の要件を満足することを特徴とする請求項2又は3に記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
(ヌ)前記混合ガス中の亜硫酸ガスの含有割合は、空気又は酸素ガスに対して1〜10容量%である。
(ル)酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)は、500〜600mVである。
(オ)pHは、5.0〜6.0である。
(ワ)前記中和剤は、水酸化ナトリウムである。 - 前記硫酸酸性水溶液は、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸溶液を添加し、高温高圧下に浸出する工程から産出される浸出液であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硫酸酸性水溶液からのニッケル回収方法。
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