JP7389338B2 - ニッケル水溶液の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ニッケル水溶液の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、粗ニッケル水溶液から不純物を除去して高純度ニッケル水溶液を製造する方法に関する。
ニッケル水溶液、特に高純度ニッケル水溶液はニッケル化合物の原料として用いられる。例えば、硫酸ニッケル水溶液を晶析することで硫酸ニッケル結晶が得られる。塩化ニッケル水溶液を晶析することで塩化ニッケル結晶が得られる。硫酸ニッケルまたは塩化ニッケルを焙焼することで酸化ニッケルが得られる。ニッケル水溶液を炭酸化することで炭酸ニッケルが得られる。
ニッケル化合物は、一般的な電解めっき材料、装飾用途または電子部品用途の無電解めっき材料、触媒材料、コンデンサーおよびインダクターなどの電子部品用材料、電池用材料などとして用いられる。
純度の高いニッケル化合物を得るために、ニッケル水溶液から不純物を除去する処理が行なわれる。例えば、特許文献1には、粗硫酸ニッケル水溶液に空気を吹き込みながら中和して主に鉄を除去する脱鉄工程の後に、溶媒抽出を行なってその他の不純物を除去することが開示されている。
特開2006-225217号公報
脱鉄工程においてpHを高くするほど、鉄が除去されやすく、鉄濃度の低い硫酸ニッケル水溶液が得られる。鉄濃度の高い硫酸ニッケル水溶液を溶媒抽出に供すると、有機溶媒に鉄が濃縮し、不純物分離能力が低下する。この観点からも、脱鉄工程においてできるだけ鉄濃度を低減することが好ましい。しかし、脱鉄工程においてpHを高くするほど、ニッケルも水酸化物を生成して澱物となるため、除去されやすくなり、ニッケルロスが増加する。
本発明は上記事情に鑑み、効率的に鉄を除去しつつ、ニッケルロスを低減できるニッケル水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
第1発明のニッケル水溶液の製造方法は、酸化中和反応により粗ニッケル水溶液に含まれる鉄を澱物として除去する脱鉄工程と、前記脱鉄工程の後、脱鉄終液とニッケルを担持した酸性抽出剤とを接触させて、前記脱鉄終液中の鉄と前記酸性抽出剤中のニッケルとを置換し、高純度ニッケル水溶液を得る交換段と、前記交換段の後、前記酸性抽出剤と逆抽出液とを接触させて、前記酸性抽出剤に担持された鉄を逆抽出する逆抽出段と、を備え、前記脱鉄工程において、前記粗ニッケル水溶液のpHを4.0以上、5.2以下に調整し、前記逆抽出段において、前記逆抽出液の酸の規定度を1.6N以上に調整することを特徴とする。
第2発明のニッケル水溶液の製造方法は、第1発明において、前記逆抽出段において、前記逆抽出液の酸の規定度を3.2N以下に調整することを特徴とする。
第3発明のニッケル水溶液の製造方法は、第1または第2発明において、前記脱鉄工程において、前記粗ニッケル水溶液のpHを5.0以上に調整することを特徴とする。
第4発明のニッケル水溶液の製造方法は、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記粗ニッケル水溶液は粗硫酸ニッケル水溶液であり、前記高純度ニッケル水溶液は高純度硫酸ニッケル水溶液であることを特徴とする。
第5発明のニッケル水溶液の製造方法は、第1~第4発明のいずれかにおいて、前記逆抽出液は硫酸水溶液であることを特徴とする。
本発明によれば、脱鉄工程において粗ニッケル水溶液のpHを比較的低く調整することで、ニッケルロスを低減できる。また、粗ニッケル水溶液に含まれる鉄を、脱鉄工程、溶媒抽出工程の二段階で除去することで、効率的に除去できる。
高純度硫酸ニッケル水溶液の製造プロセスの全体工程図である。 溶媒抽出工程の詳細工程図である。 脱鉄工程におけるpHとニッケルロス率との関係を示すグラフである。 逆抽出液の酸の規定度と逆抽出段における有機溶媒への鉄分配比との関係を示すグラフである。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の一実施形態に係るニッケル水溶液の製造方法は、不純物として少なくとも鉄を含む粗ニッケル水溶液から不純物を除去して高純度ニッケル水溶液を製造する方法である。
ニッケル水溶液として硫酸ニッケル水溶液などが挙げられる。粗ニッケル水溶液とは鉄などの不純物を含むニッケル水溶液である。高純度ニッケル水溶液とは不純物が除去された後のニッケル水溶液である。不純物を含む硫酸ニッケル水溶液を粗硫酸ニッケル水溶液という。不純物が除去された後の硫酸ニッケル水溶液を高純度硫酸ニッケル水溶液という。
(高純度硫酸ニッケル水溶液製造プロセス)
高純度硫酸ニッケル水溶液は、例えば、図1に示すプロセスで製造される。
原料としてニッケル・コバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド)が用いられる。低品位ラテライト鉱などのニッケル酸化鉱石を加圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leaching)し、浸出液から鉄などの不純物を除去した後、硫化水素ガスを浸出液に吹き込むことで硫化反応を生じさせ、ニッケル・コバルト混合硫化物が得られる。
ニッケル・コバルト混合硫化物の組成は、ニッケルが50~60重量%、コバルトが4~6重量%、硫黄が30~34重量%(いずれも乾燥量基準)である。ニッケル・コバルト混合硫化物には、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛などの不純物が含まれている。
(1)加圧浸出工程
加圧浸出工程では、ニッケル・コバルト混合硫化物を含むスラリーを、オートクレーブで加圧浸出する。浸出条件は、例えば圧力(ゲージ圧)1.8~2.0MPaG、温度140~180℃である。加圧浸出により、ニッケル・コバルト混合硫化物に含まれるニッケル、コバルト、その他の不純物が浸出され、粗硫酸ニッケル水溶液が得られる。
(2)脱鉄工程
脱鉄工程では、酸化中和反応により粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物、主に鉄を中和澱物として除去する。酸化剤として空気を用いることができる。中和剤として、消石灰、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウムなどが用いられる。固液分離により中和澱物が除去された後の液を脱鉄終液と称する。
脱鉄反応は、以下の式(1)で表される。粗硫酸ニッケル水溶液に含まれるFe2+をFe3+に酸化し、中和反応によってFe(OH)3を生成して中和澱物とする。
4FeSO4+4Ca(OH)2+O2+2H2O→4Fe(OH)3+4CaSO4・・・(1)
両性金属以外の金属水酸化物はpHが高いほど溶解度が低くなる。そのため、脱鉄工程においてpHを高くするほど、多くの不純物を除去できる。後工程における鉄負荷を低減するためには、脱鉄工程におけるpHを、鉄を十分に除去できる程度に高く設定することが好ましい。
しかし、脱鉄工程におけるpHを高くするほど、澱物として除去されるニッケルの量も多くなる。すなわち、脱鉄工程においてpHを高くするとニッケルロスが増加する。この反応は、以下の式(2)で表される。
NiSO4+Ca(OH)2→Ni(OH)2+CaSO4・・・(2)
図3に脱鉄工程におけるpHとニッケルロス率との関係を示す。図3のグラフの横軸は、脱鉄工程における粗硫酸ニッケル水溶液のpHである。縦軸は、脱鉄工程におけるニッケルロス率である。ニッケルロス率は後述の溶媒抽出工程から得られる高純度硫酸ニッケル水溶液に含まれるニッケルの重量に対する脱鉄工程において除去される中和澱物に含まれるニッケルの重量の割合の百分率を意味する。図3のグラフからも、脱鉄工程におけるpHを高くするほど、ニッケルロス率が高くなることが分かる。
そこで、脱鉄工程における粗硫酸ニッケル水溶液のpHを比較的低い値に調整して、ニッケルロスを低減する。具体的には、粗硫酸ニッケル水溶液のpHを5.2以下に調整する。これにより、ニッケルロス率を0.4%以下に抑えることができる。
脱鉄工程においてある程度の鉄を除去するために、粗硫酸ニッケル水溶液のpHを4.0以上に調整することが好ましく、pHを5.0以上に調整することがより好ましい。ただし、脱鉄工程におけるpHを比較的低い値に調整することから、脱鉄終液の鉄濃度は比較的高くなる。脱鉄終液に残留した鉄は溶媒抽出により除去される。
(3)溶媒抽出工程
溶媒抽出工程では、溶媒抽出により脱鉄終液から不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得る。得られた高純度硫酸ニッケル水溶液は、その後、用途に応じた処理に付される。例えば、高純度硫酸ニッケル水溶液は、晶析装置を用いて濃縮、晶析され、硫酸ニッケル結晶となる。また、高純度硫酸ニッケル水溶液は、水溶液のままの状態で二次電池の正極材料の製造に用いられる。
以下、図2に基づき、溶媒抽出工程の詳細を説明する。なお、図2において実線矢印は水または水溶液の流れを意味し、破線矢印は有機溶媒の流れを意味する。
溶媒抽出工程には酸性抽出剤が用いられる。酸性抽出剤としては、特に限定されないが、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、ジ-(2-エチルヘキシル)ホスホン酸(通称D2EHPA)などの燐酸エステル系酸性抽出剤が用いられる。
一般に、酸性抽出剤は希釈剤で希釈して用いられる。有機溶媒の酸性抽出剤濃度は10~40体積%に調整される。酸性抽出剤を希釈するのは、有機溶媒を適正な粘性に調整して、油水分離性、すなわち分相性を良くするためである。希釈剤としては、水への溶解度が低く、粘性が低く、酸性抽出剤と反応をしないものであれば特に限定されないが、例えば飽和炭化水素が用いられる。
溶媒抽出工程は、抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、逆抽出段からなる。これらの工程には、向流多段方式の抽出装置、特にミキサーセトラーが用いられる。以下、順に説明する。
(3-1)抽出段
抽出段には洗浄段から洗浄後液が供給される。洗浄後液は硫酸ニッケル水溶液である。抽出段では、洗浄後液中のニッケルを有機相に抽出し、酸性抽出剤にニッケルを担持させる。得られた有機相をニッケル保持有機相と称する。洗浄後液にはカルシウム、マグネシウムなどのニッケルよりも低いpHで有機相に抽出される不純物が含まれている。抽出段ではこれらの不純物も有機相に抽出される。そのため、ニッケル保持有機相にはこれらの不純物も含まれている。
酸性抽出剤を用いた溶媒抽出では、抽出反応に水素イオンが関与するため、pHによって抽出率が変化する。抽出率は金属によって異なり、Fe>Zn>Cu>Mn>Co>Ca>Mg>Niの順に抽出されやすい。抽出段、洗浄段、交換段、ニッケル回収段、コバルト回収段、逆抽出段と、有機相の流れに従って順にpHを下げていくと、それぞれの段で各金属を分離回収できる。
酸性抽出剤による抽出反応は、以下の式(3)で表される。ここで、式中のRは官能基を含む有機化合物全体を表す。式(3)に示した通り、金属イオンの抽出に伴い、水素イオンが放出される。
2R-H+Ni2+→R2-Ni+2H+・・・(3)
水素イオンが放出されるとpHが下がる。不純物を除去するためには適正なpHを維持する必要があるため、抽出段では、苛性ソーダなどのアルカリを添加してpHを調整する。
(3-2)洗浄段
抽出段で得られたニッケル保持有機相は洗浄段に送られる。洗浄段では、ニッケル保持有機相を、ニッケルを含有する洗浄液で洗浄する。洗浄液は交換段にて精製された高純度硫酸ニッケル水溶液の一部を水で希釈したものである。晶析装置を用いて高純度硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケル結晶を製造する場合には、晶析工程から排出された母液を水で希釈したものを洗浄液の一部または全部として用いてもよい。洗浄後液は抽出段に供給される。
抽出段では有機相に微細な液滴粒子が残留する場合がある。抽出段で苛性ソーダを添加した場合、有機相中の液滴粒子にナトリウムが含まれる。すなわち、ニッケル保持有機相にナトリウムが含まれる。洗浄段では、ニッケル保持有機相に含まれたナトリウムが除去される。
(3-3)交換段
交換段には脱鉄終液が供給される。脱鉄工程では、酸化中和反応により粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物、主に鉄を中和澱物として除去している。しかし、脱鉄工程の反応条件では中和澱物として共沈除去できないコバルトなどの不純物があり、この不純物が脱鉄終液に残留している。交換段では、洗浄後のニッケル保持有機相(ニッケルを担持した酸性抽出剤)と脱鉄終液とを接触させて、ニッケル保持有機相中のニッケルと脱鉄終液中の不純物(鉄を含む)とを置換し、高純度硫酸ニッケル水溶液を得る。すなわち、脱鉄終液に残留した鉄は有機相に抽出されることにより除去される。
交換段に供給される脱鉄終液の組成は、例えば、ニッケル濃度が110~140g/L、コバルト濃度が8~12g/L、マグネシウム濃度が19~31mg/L、カルシウム濃度が0.3~0.6g/L、鉄濃度が約0.02g/Lである。
置換反応後の高純度硫酸ニッケル水溶液の組成は、例えば、ニッケル濃度が118~152g/L、コバルト濃度が1~60mg/L、マグネシウム濃度が1~20mg/L、カルシウム濃度が1~15mg/L、鉄濃度が1~5mg/Lである。
通常、ニッケル保持有機相のニッケル濃度は、置換反応後の有機相にある程度の量のニッケルが残留するような過剰量に調整されている。そのため、置換後有機相にはニッケルが担持されている。
(3-4)ニッケル回収段
ニッケル回収段では、置換後有機相に硫酸を添加してpH3.5程度に調整する。これにより、有機相に担持されたニッケルの大部分を逆抽出して、ニッケル回収液を得る。ニッケル回収液はコバルト、マグネシウムなどの不純物を含む硫酸ニッケル水溶液である。
(3-5)コバルト回収段
ニッケルを逆抽出した後のニッケル回収後有機相はコバルト回収段に送られる。コバルト回収段では、有機相に塩酸を添加してpH1.0程度に調整する。これにより、有機相に担持されたコバルトを逆抽出して、コバルト回収液を得る。コバルト回収液は塩化コバルト水溶液である。コバルト回収液には、有機相に含まれるマグネシウム、カルシウム、銅、亜鉛などの不純物の一部も同時に逆抽出されている。
(3-6)逆抽出段
コバルトを逆抽出した後のコバルト回収後有機相は逆抽出段に送られる。逆抽出段では、有機相と逆抽出液とを接触させて、有機相に担持された不純物(鉄を含む)を逆抽出する。逆抽出液として硫酸、塩酸などの酸の水溶液が用いられる。逆抽出段で不純物が除去された有機相は、抽出段と交換段とに繰り返し供給される。
前述のごとく、脱鉄工程におけるpHを比較的低い値に調整することから、脱鉄終液の鉄濃度は比較的高くなる。脱鉄終液に残留した鉄は交換段において有機相に抽出される。そして、有機相に抽出された鉄は、逆抽出段において逆抽出される。鉄などの不純物を含む逆抽出後液は系外に払い出される。
脱鉄終液の鉄濃度が高い分、逆抽出段において鉄を十分に逆抽出しないと、有機相に鉄が濃縮する。図4に逆抽出液の酸の規定度と逆抽出段における鉄分配比との関係を示す。図4のグラフの横軸は、逆抽出液の酸の規定度である。酸の規定度は水溶液に含まれる水素原子の濃度ともいえる。例えば、硫酸水溶液であれば、硫酸濃度[g/L]を硫酸の分子量98[g/mol]で除したものに酸の価数2を乗じれば、酸の規定度を求めることができる。縦軸は、逆抽出段における有機溶媒への鉄分配比である。鉄分配比は逆抽出後液の鉄濃度に対する逆抽出後の有機溶媒の鉄濃度の割合を意味する。図4のグラフから分かるように、逆抽出液の酸の規定度を高くするほど、鉄分配比が低くなる。すなわち、逆抽出液の酸の規定度を高くするほど、逆抽出される鉄の割合を高くすることができる。
有機相への鉄の濃縮を防ぐためには、逆抽出段における鉄分配比を5以下にすればよい。そのためには、逆抽出液の酸の規定度を1.6N以上に調整すればよい。換言すれば、逆抽出液の酸の規定度を1.6N以上に調整することで、有機相への鉄の濃縮を防ぐことができる。
有機相からの鉄の除去という観点からは、逆抽出液の酸の規定度は高いほど好ましく、特に上限はない。ただし、逆抽出液の酸の規定度を高くするには、その分多くの酸が必要となりコストが増加する。そのため、逆抽出液の酸の規定度を3.2N以下に調整することが好ましい。
なお、逆抽出液として硫酸水溶液を用いる場合、酸の規定度1.6~3.2Nは、硫酸濃度0.8~1.6mol/Lに相当する。また、逆抽出液として塩酸水溶液を用いる場合、酸の規定度1.6~3.2Nは、塩酸濃度1.6~3.2mol/Lに相当する。
以上のように、粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる鉄は、脱鉄工程、溶媒抽出工程の二段階で除去される。脱鉄工程においてpHを比較的低く設定することにより、粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる鉄の一部が残留する。残留した鉄は溶媒抽出工程で除去される。溶媒抽出工程における鉄負荷が増加する分、有機相への鉄の濃縮を防止するために逆抽出段において多くの酸が必要となる。しかし、酸の単価はニッケルに比べると極めて安価である。逆抽出段において酸にかかるコストと、脱鉄工程におけるニッケルロスの低減分とを考慮すれば、全体として合理的な操業を行なうことができる。このように、全体のコストで考えて、効率的に鉄を除去できる。
つぎに、実施例を説明する。
脱鉄工程および溶媒抽出工程により粗硫酸ニッケル水溶液に含まれる不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得た。脱鉄工程では中和剤として消石灰を用いた。溶媒抽出工程では抽出剤として燐酸エステル系酸性抽出剤(2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル)を用いた。逆抽出液として硫酸水溶液を用いた。粗硫酸ニッケル水溶液の処理量は120~180L/分である。
脱鉄工程における粗硫酸ニッケル水溶液のpH、および逆抽出段における逆抽出液の硫酸濃度を変更しつつ、各条件で1ヶ月間の操業を行なった。表1に、各月の操業条件とニッケルロス率、鉄分配比、逆抽出段の鉄収支の結果を示す。なお、ニッケルロス率はXRF(蛍光X線)分析により求めた中和澱物のニッケル濃度および測定した中和澱物の重量から求めた。逆抽出段の鉄収支はXRF分析により求めた有機溶媒の鉄濃度および有機溶媒の体積から求めた。
Figure 0007389338000001
実施例1、2では、脱鉄工程のpHが5.2以下であり、ニッケルロス率が0.4%以下に抑えられている。また、実施例1、2では、逆抽出液の酸の規定度が1.6N以上であり、有機溶媒の鉄収支がマイナスとなっている。すなわち、有機溶媒の鉄の濃縮を防止できている。
一方、比較例1、2では、脱鉄工程のpHが5.2を超えており、ニッケルロス率が0.4%より高くなっている。また、比較例1、2では、逆抽出段の酸の規定度が1.0~1.1Nと低いため、有機溶媒への鉄の濃縮が進んでいる。比較例3では、脱鉄工程のpHが5.1であり、ニッケルロス率が0.4%以下となっている。しかし、逆抽出段の酸の規定度が1.3Nと低いため、有機溶媒への鉄の濃縮が進んでいる。
以上より、脱鉄工程のpHを5.2以下とし、逆抽出液の酸の規定度を1.6N以上とすれば、ニッケルロス率を0.4%以下に抑えつつ、有機溶媒への鉄の濃縮を防止できることが確認された。

Claims (5)

  1. 酸化中和反応により粗ニッケル水溶液に含まれる鉄を澱物として除去して、脱鉄終液(鉄濃度が5mg/L以下のものを除く)を得る脱鉄工程と、
    前記脱鉄工程の後、前記脱鉄終液とニッケルを担持した酸性抽出剤とを接触させて、前記脱鉄終液中の鉄と前記酸性抽出剤中のニッケルとを置換し、高純度ニッケル水溶液を得る交換段と、
    前記交換段の後、前記酸性抽出剤と逆抽出液とを接触させて、前記酸性抽出剤に担持された鉄を逆抽出する逆抽出段と、を備え、
    前記脱鉄工程において、前記粗ニッケル水溶液のpHを4.0以上、5.2以下に調整し、
    前記逆抽出段において、前記逆抽出液の酸の規定度を1.6N以上に調整する
    ことを特徴とするニッケル水溶液の製造方法。
  2. 前記逆抽出段において、前記逆抽出液の酸の規定度を3.2N以下に調整する
    ことを特徴とする請求項1記載のニッケル水溶液の製造方法。
  3. 前記脱鉄工程において、前記粗ニッケル水溶液のpHを5.0以上に調整する
    ことを特徴とする請求項1または2記載のニッケル水溶液の製造方法。
  4. 前記粗ニッケル水溶液は粗硫酸ニッケル水溶液であり、
    前記高純度ニッケル水溶液は高純度硫酸ニッケル水溶液である
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のニッケル水溶液の製造方法。
  5. 前記逆抽出液は硫酸水溶液である
    ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のニッケル水溶液の製造方法。
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