JP7327276B2 - スカンジウムの回収方法 - Google Patents
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Description
本発明は、スカンジウムの回収方法に関し、より詳しくは、ニッケル酸化鉱石等の原料から得られるスカンジウムを含有する溶液から、スカンジウムを効率よく回収するスカンジウムの回収方法に関する。
スカンジウムは、高強度合金の添加剤や燃料電池の電極材料として極めて有用であるが、生産量が少なく、高価であるため、広く用いられるには至っていない。
ラテライト鉱やリモナイト鉱等のニッケル酸化鉱石には、微量のスカンジウムが含まれている。しかしながら、ニッケル酸化鉱石は、ニッケル品位が低く、長らくニッケル原料として工業的に利用されてこなかった。そのため、ニッケル酸化鉱石からスカンジウムを工業的に回収することもほとんど研究されていなかった。
ところが、近年、ニッケル酸化鉱石を硫酸と共に加圧容器に装入し、240℃~260℃程度の高温に加熱してニッケルを含有する浸出液と浸出残渣とに固液分離するHPALプロセスが実用化されている。HPALプロセスでは、得られた浸出液に中和剤を添加することで不純物が分離され、次いで、不純物が分離された浸出液に硫化剤を添加することによりニッケルをニッケル硫化物として回収する。そして、回収したニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理することによって、電気ニッケルやニッケル塩化合物を得ることができる。
このようなHPALプロセスを実行した場合、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムは、ニッケルと共に浸出液に含まれることになる(特許文献1参照)。そして、得られた浸出液に対して中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加すると、ニッケルはニッケル硫化物として回収される一方で、スカンジウムは硫化剤添加後の酸性溶液(硫化後液)中に含まれるようになる。そのため、HPALプロセスを使用することで、ニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。
また、スカンジウムの分離を、キレート樹脂を用いて行う方法もある(特許文献2参照)。具体的に、特許文献2に示される方法では、先ず、ニッケル含有酸化鉱石を酸化性雰囲気の高温高圧下で酸性水溶液中にニッケルとスカンジウムとを選択的に浸出させ、次いで得られた酸性溶液のpHを2~4の範囲に調整した後、硫化剤の使用によってニッケルを硫化物として選択的に沈澱回収する。次に、得られたニッケル回収後の溶液をキレート樹脂と接触させることによってスカンジウムを吸着させ、そのキレート樹脂を希酸で洗浄した後、洗浄後のキレート樹脂を強酸と接触させることでキレート樹脂からスカンジウムを溶離する。
また、硫化後液(酸性溶液)からスカンジウムを回収する方法として、溶媒抽出を用いてスカンジウムを回収する方法も提案されている(特許文献3、4参照)。
具体的に、特許文献3に示される方法では、先ず、スカンジウムの他に、少なくとも鉄、アルミニウム、カルシウム、イットリウム、マンガン、クロム、マグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に、2-エチルヘキシルスルホン酸-モノ-2-エチルヘキシルをケロシンで希釈した有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出する。次いで、有機溶媒中にスカンジウムと共に抽出されたイットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを分離するために、塩酸水溶液を加えてスクラビングを行うことによりそれらを除去した後、有機溶媒中にNaOH水溶液を加えて有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)3を含むスラリーとし、これを濾過して得られたSc(OH)3を塩酸で溶解して塩化スカンジウム水溶液を得る。そして、得られた塩化スカンジウム水溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈澱とし、その沈澱物を濾過することによって、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを濾液中に分離し、その後、仮焼することにより高純度な酸化スカンジウムを得る。
また、特許文献4には、スカンジウム含有供給液をバッチ処理によって一定の割合で抽出剤に接触させることにより、スカンジウム含有供給液からスカンジウムを選択的に分離回収する方法が記載されている。
これらの方法で回収されるスカンジウムの品位は、酸化スカンジウムに換算して95%~98%程度の純度が得られることが知られている。ところが、合金への添加等の用途に対しては十分な品位であるものの、近年需要が高まっている燃料電池の電解質等の用途に対しては、良好な特性を発揮するために、さらに高純度な、例えば99.9%程度の品位が必要とされる。
ニッケル酸化鉱石には、産出する地域によって種類や量の大小にばらつきはあるものの、鉄やアルミニウムの他に、マンガンやマグネシウム等、さまざまな不純物元素が含有されている。スカンジウムを、燃料電池の電解質等の用途に用いる場合、不純物元素によっては許容できる上限の品位があり、元素個々に許容限度以下にまで分離除去する必要がある。
しかしながら、上述した特許文献2や特許文献3で開示されるキレート樹脂や有機溶媒では、いくつかの不純物元素はスカンジウムと類似の挙動を示し、スカンジウムを有効に分離回収することが困難となる。また、ニッケル酸化鉱石の浸出液に含まれる鉄、アルミニウム等の不純物は、スカンジウムよりもはるかに高濃度であり、これらの多量の不純物の影響もあって、ニッケル酸化鉱石から高純度なスカンジウムを工業的に回収するのに適した方法は見出されていない。
このように、ニッケル酸化鉱石からスカンジウムを回収しようとしても、大量に含有される鉄やアルミニウム等の多種多様な不純物を効果的に分離して、高純度なスカンジウムを効率的に回収することは困難であった。
ここで、特許文献5には、キレート樹脂からスカンジウムを溶離した溶離液に中和剤を添加してpHを2段階で制御することで、スカンジウムと不純物元素をそれぞれ分離する方法が提案されている。しかしながら、ニッケル酸化鉱石の種類や前工程の条件によっては、ニッケル濃度の高い酸性溶液を中和する必要がある。さらに、アルミニウム濃度が高いと、2段目の中和処理に際して共沈するニッケル量が増加し、酸化スカンジウム中のニッケル品位が増加するという問題がある。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、スカンジウムと共に不純物を含有する溶液から、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができるスカンジウムの回収方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、スカンジウムを含有する酸性溶液をイオン交換樹脂に通液して得られた溶離液に対して、中和剤及びジメチルグリオキシムの添加を含む中和処理を施し、得られた中和後溶離液を溶媒抽出に付すことで、ニッケル酸化鉱石から高純度のスカンジウムを簡便に且つ効率よく回収することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、スカンジウムを含有する溶液をイオン交換樹脂に通液し、該イオン交換樹脂から溶離した溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により中和澱物と中和濾液とを得る中和工程と、中和後溶離液に対して溶媒抽出処理を行う溶媒抽出工程と、前記溶媒抽出処理により分離された抽残液から酸化スカンジウムを回収するスカンジウム回収工程と、有する、スカンジウムの回収方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記スカンジウムを含有する溶液は、ニッケルを含む原料を酸で浸出して得られる溶液である、スカンジウムの回収方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記中和工程では、前記ジメチルグリオキシムを、前記溶離液に含まれるニッケル量に対して3当量~50当量の割合で添加する、スカンジウムの回収方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記中和工程は、前記溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により1次中和澱物と1次中和濾液とを得る第1の中和工程と、前記1次中和濾液にさらに中和剤を添加して中和処理を施し、固液分離により2次中和澱物と2次中和濾液とを得る第2の中和工程と、を有する、スカンジウムの回収方法である。
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記第1の中和工程では、前記溶離液のpHを3.8~4.5の範囲に調整する、スカンジウムの回収方法である。
(6)本発明の第6の発明は、第4又は第5の発明において、前記第2の中和工程では、前記1次中和濾液のpHを5.5~6.5の範囲に調整する、スカンジウムの回収方法である。
(7)本発明の第7の発明は、第1乃至第6のいずれかの発明において、さらに、前記中和工程で得られた前記中和澱物に酸を添加して水酸化物溶解液を得る水酸化物溶解工程を有し、前記溶媒抽出工程では、前記水酸化物溶解液を前記中和後溶離液として前記溶媒抽出処理に付す、スカンジウムの回収方法である。
(8)本発明の第8の発明は、第1乃至第7のいずれかの発明において、さらに、前記中和工程で得られた中和濾液からジメチルグリオキシムを回収する回収工程を有する、スカンジウムの回収方法である。
(9)本発明の第9の発明は、第8の発明において、前記中和工程は、前記溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により1次中和澱物と1次中和濾液とを得る第1の中和工程と、前記1次中和濾液にさらに中和剤を添加して中和処理を施し、固液分離により2次中和澱物と2次中和濾液とを得る第2の中和工程と、を有し、前記回収工程では、前記中和工程における前記第2の中和工程を経て得られる前記2次中和濾液からジメチルグリオキシムを回収する、スカンジウムの回収方法である。
(10)本発明の第10の発明は、第8又は第9の発明において、前記回収工程にて回収したジメチルグリオキシムを、前記中和工程における中和処理に繰り返して再利用する、スカンジウムの回収方法である。
本発明によれば、スカンジウムと共に不純物を含有する溶液から、不純物を効果的に分離して、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.スカンジウムの回収方法の概要≫
図1は、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法の一例を示す工程図である。このスカンジウムの回収方法は、ニッケル酸化鉱石を硫酸等の酸により浸出して得られた、スカンジウムを含有する酸性溶液から、スカンジウムと不純物とを分離して、高純度のスカンジウムを簡便に且つ効率よく回収するものである。
図1は、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法の一例を示す工程図である。このスカンジウムの回収方法は、ニッケル酸化鉱石を硫酸等の酸により浸出して得られた、スカンジウムを含有する酸性溶液から、スカンジウムと不純物とを分離して、高純度のスカンジウムを簡便に且つ効率よく回収するものである。
なお、スカンジウムの回収方法の対象である、スカンジウムを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を原料として酸浸出して得られる溶液に限られない。例えば、スカンジウムと共に、ニッケルをはじめとする不純物を含む原料から得られる酸性溶液であっても、この回収方法の好適な対象とすることができる。
具体的に、このスカンジウムの回収方法では、スカンジウムを含有する酸性溶液をイオン交換樹脂に通液してスカンジウムを吸着させ、次いでそのイオン交換樹脂に酸溶液を接触させることで得られる溶離液(スカンジウム溶離液)に対し、ジメチルグリオキシムの添加を含む中和処理を施す。これによ、不純物を分離するとともにスカンジウムを濃縮する。そして、スカンジウムを濃縮させた酸性溶液を、アミン系抽出剤等の抽出剤を用いた溶媒抽出に供することで酸性溶液中に含まれる不純物を抽出剤中に抽出し、抽出後に酸性溶液(抽残液)に残留することになるスカンジウムと分離する。
溶媒抽出により抽残液中に含まれるようになったスカンジウムについては、例えば、アルカリを添加して中和処理を施すことで水酸化物の沈澱を得る方法や、シュウ酸を用いたシュウ酸塩化処理によりシュウ酸塩の沈澱物として回収するといった方法により、製品用途に適した固体の形状にするとともに、残留する不純物も分離する。これにより、スカンジウムを高純度な水酸化スカンジウムやシュウ酸スカンジウムの結晶として回収する。
なお、得られた水酸化スカンジウムやシュウ酸スカンジウムの結晶は、公知の方法により焼成する等して酸化スカンジウムの形態とする。このようにして生成した酸化スカンジウムは、燃料電池の電解質の材料として用いることができる。また、溶融塩電解等の方法により、スカンジウムメタルを得た後にアルミニウムに添加して合金化するといった用途等に供することができる。
このように、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、スカンジウムを分離して回収するにあたって、イオン交換処理を経てスカンジウムが濃縮された溶液(溶離液)に対して、ジメチルグリオキシムの添加を含む中和処理を施すことを特徴としている。これによりスカンジウムを濃縮して、さらにその後に溶媒抽出剤を用いた溶媒抽出処理を行うようにしている。このような方法によれば、不純物をより効果的に分離でき、ニッケル酸化鉱石のような多くの不純物を含有する原料からであっても、安定した操業のもと、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができる。
≪2.スカンジウムの回収方法の各工程について≫
より具体的に、スカンジウムの回収方法は、図1に示すように、ニッケル酸化鉱石を硫酸等の酸で浸出することでスカンジウムを含有する酸性溶液を得るニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程S1と、その酸性溶液から不純物を除去してスカンジウムを濃縮させたスカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S2と、スカンジウム溶離液に対する中和処理を施して高濃度のスカンジウムを含有する溶液(中和後溶離液)を得る中和工程S3と、得られた中和後溶離液をアミン系抽出剤等による溶媒抽出に付す溶媒抽出工程S4と、抽残液からスカンジウムを回収するスカンジウム回収工程S5と、を有する。
より具体的に、スカンジウムの回収方法は、図1に示すように、ニッケル酸化鉱石を硫酸等の酸で浸出することでスカンジウムを含有する酸性溶液を得るニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程S1と、その酸性溶液から不純物を除去してスカンジウムを濃縮させたスカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S2と、スカンジウム溶離液に対する中和処理を施して高濃度のスカンジウムを含有する溶液(中和後溶離液)を得る中和工程S3と、得られた中和後溶離液をアミン系抽出剤等による溶媒抽出に付す溶媒抽出工程S4と、抽残液からスカンジウムを回収するスカンジウム回収工程S5と、を有する。
<2-1.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程>
スカンジウム回収の処理対象となるスカンジウムを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を硫酸により処理して得られる酸性溶液を用いることができる。
スカンジウム回収の処理対象となるスカンジウムを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を硫酸により処理して得られる酸性溶液を用いることができる。
具体的に、その酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱石を高温高圧下で硫酸等の酸により浸出して浸出液を得る浸出工程S11と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程S12と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S13と、を有するニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程S1により得られる硫化後液を用いることができる。以下では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程S1の流れを説明する。
[浸出工程]
浸出工程S11では、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用い、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して240℃~260℃の温度下で撹拌処理を施して、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する。なお、浸出工程S11における処理は、従来知られているHPALプロセスに従って行えばよい。
浸出工程S11では、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用い、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して240℃~260℃の温度下で撹拌処理を施して、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを形成する。なお、浸出工程S11における処理は、従来知られているHPALプロセスに従って行えばよい。
ニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8重量%~2.5重量%であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。また、これらのニッケル酸化鉱石には、スカンジウムが含まれている。
浸出工程S11では、得られた浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを洗浄しながら、ニッケルやコバルト、スカンジウム等を含む浸出液と、ヘマタイトである浸出残渣とに固液分離する。固液分離処理では、例えば、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、凝集剤供給設備等から供給される凝集剤を用いて、シックナー等の固液分離設備によって固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。なお、固液分離処理では、シックナー等の固液分離槽を多段に連結させて用い、浸出スラリーを多段洗浄しながら固液分離することが好ましい。
[中和工程]
中和工程S12では、浸出工程S11により得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る。この中和処理により、ニッケルやコバルト、スカンジウム等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分が中和澱物となる。
中和工程S12では、浸出工程S11により得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る。この中和処理により、ニッケルやコバルト、スカンジウム等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分が中和澱物となる。
中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
中和工程S12における中和処理では、分離された浸出液の酸化を抑制しながら、pHを1~4の範囲に調整することが好ましく、1.5~2.5の範囲に調整することがより好ましい。pHが1未満であると、中和が不十分となり、中和澱物と中和後液とに分離できない可能性がある。一方で、pHが4を超えると、アルミニウムをはじめとした不純物のみならず、スカンジウムやニッケル等の有価金属も中和澱物に含まれる可能性がある。
[硫化工程]
硫化工程S13では、中和工程S12により得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る。この硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、スカンジウム等は硫化後液に含まれることになる。
硫化工程S13では、中和工程S12により得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る。この硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、スカンジウム等は硫化後液に含まれることになる。
より具体的に、硫化工程S13では、得られた中和後液に対して、硫化水素ガス、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等の硫化剤を添加し、不純物成分の少ないニッケルを含む硫化物(ニッケル硫化物)と、ニッケル濃度を低い水準で安定させてスカンジウム等を含有させた硫化後液とを生成させる。
硫化処理では、ニッケル硫化物のスラリーに対してシックナー等の沈降分離装置を用いた沈降分離処理を施し、ニッケル硫化物をシックナーの底部より分離回収する。一方で、水溶液成分である硫化後液についてはオーバーフローさせて回収する。
本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、以上のような湿式製錬処理工程S1の各工程を経て得られる硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象となる、スカンジウムとその他の不純物とを含有する酸性溶液として用いることができる。
<2-2.スカンジウム(Sc)溶離工程>
上述したように、湿式製錬処理工程S1の各工程を経て得られる硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象溶液である酸性溶液として適用することができる。ところが、その酸性溶液には、スカンジウムの他に、例えば上述した硫化工程S13における硫化処理で硫化されずに溶液中に残留したアルミニウムやクロム、その他の多種多様な不純物が含まれている。このことから、得られた酸性溶液を溶媒抽出に付すにあたり、スカンジウム溶離工程S2として、予め、酸性溶液中に含まれる不純物を除去してスカンジウム(Sc)を濃縮し、スカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)を生成させることが好ましい。
上述したように、湿式製錬処理工程S1の各工程を経て得られる硫化後液を、スカンジウム回収処理の対象溶液である酸性溶液として適用することができる。ところが、その酸性溶液には、スカンジウムの他に、例えば上述した硫化工程S13における硫化処理で硫化されずに溶液中に残留したアルミニウムやクロム、その他の多種多様な不純物が含まれている。このことから、得られた酸性溶液を溶媒抽出に付すにあたり、スカンジウム溶離工程S2として、予め、酸性溶液中に含まれる不純物を除去してスカンジウム(Sc)を濃縮し、スカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)を生成させることが好ましい。
スカンジウム溶離工程S2では、例えば、キレート樹脂を使用したイオン交換処理による方法で、酸性溶液中に含まれるアルミニウム等の不純物を分離して除去し、スカンジウムを濃縮させたスカンジウム含有溶液を得ることができる。
図2は、スカンジウムの回収方法の一例を示す工程図である。図2の工程図は、特に、酸性溶液中に含まれる不純物を除去してスカンジウムを濃縮し溶離させる方法として、キレート樹脂を使用したイオン交換反応により行う方法(イオン交換処理工程)の一例を示すものである。この工程では、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理工程S1における硫化工程S13にて得られた硫化後液をキレート樹脂に接触させることによりスカンジウムを吸着させ、スカンジウム(Sc)溶離液を得る。なお、スカンジウム溶離工程S2の一例としてのイオン交換処理工程を「イオン交換処理工程S2」とする。
具体的に、イオン交換処理工程S2としては、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる吸着工程S21と、キレート樹脂に0.1N以下の硫酸を接触させてキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程S22と、キレート樹脂に0.3N以上3N以下の硫酸を接触させてスカンジウムを溶離させてスカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程S23と、スカンジウム溶離工程S23を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸を接触させてキレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程S24と、を有するものを例示できる。以下、各工程について概略を説明するが、イオン交換処理工程S2としてこれに限定されない。
[吸着工程]
吸着工程S21では、硫化後液をキレート樹脂に接触させて、硫化後液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。キレート樹脂の種類は特に限定されず、例えばイミノジ酢酸を官能基として有する樹脂を用いることができる。
吸着工程S21では、硫化後液をキレート樹脂に接触させて、硫化後液中のスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。キレート樹脂の種類は特に限定されず、例えばイミノジ酢酸を官能基として有する樹脂を用いることができる。
[アルミニウム除去工程]
アルミニウム除去工程S22では、吸着工程S21でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に、0.1N以下の硫酸を接触させて、キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。なお、アルミニウムを除去する際、硫酸溶液のpHを1以上2.5以下の範囲に維持することが好ましく、1.5以上2.0以下の範囲に維持することがより好ましい。
アルミニウム除去工程S22では、吸着工程S21でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に、0.1N以下の硫酸を接触させて、キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。なお、アルミニウムを除去する際、硫酸溶液のpHを1以上2.5以下の範囲に維持することが好ましく、1.5以上2.0以下の範囲に維持することがより好ましい。
[スカンジウム溶離工程]
スカンジウム溶離工程S23では、アルミニウム除去工程S22を経たキレート樹脂に、0.3N以上3N未満の硫酸を接触させて、キレート樹脂からスカンジウムを溶離させたスカンジウム溶離液を得る。スカンジウム溶離液を得るに際しては、溶離させるための液として用いる硫酸溶液の規定度を0.3N以上3N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2N未満の範囲に維持することがより好ましい。
スカンジウム溶離工程S23では、アルミニウム除去工程S22を経たキレート樹脂に、0.3N以上3N未満の硫酸を接触させて、キレート樹脂からスカンジウムを溶離させたスカンジウム溶離液を得る。スカンジウム溶離液を得るに際しては、溶離させるための液として用いる硫酸溶液の規定度を0.3N以上3N未満の範囲に維持することが好ましく、0.5N以上2N未満の範囲に維持することがより好ましい。
[クロム除去工程]
クロム除去工程S24では、スカンジウム溶離工程S23を経たキレート樹脂に、3N以上の硫酸を接触させて、吸着工程S21でキレート樹脂に吸着させる際に吸着したクロムを除去する。クロムを除去するに際して、硫酸溶液の規定度が3Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
クロム除去工程S24では、スカンジウム溶離工程S23を経たキレート樹脂に、3N以上の硫酸を接触させて、吸着工程S21でキレート樹脂に吸着させる際に吸着したクロムを除去する。クロムを除去するに際して、硫酸溶液の規定度が3Nを下回ると、クロムが適切にキレート樹脂から除去されないため、好ましくない。
<2-3.中和工程>
上述したように、スカンジウム溶離工程(イオン交換処理工程)S2では、キレート樹脂の選択性によってスカンジウムと不純物との分離が行われ、不純物と分離したスカンジウムがスカンジウム溶離液として回収される。ところが、使用するキレート樹脂の特性上、すべての不純物を完全にスカンジウムと分離できるわけではない。そこで、スカンジウム溶離工程S2で回収したスカンジウム溶離液を、後述する溶媒抽出工程S4での抽出始液として用いて溶媒抽出処理に付すことで、スカンジウムと不純物との分離をさらに進めることができる。
上述したように、スカンジウム溶離工程(イオン交換処理工程)S2では、キレート樹脂の選択性によってスカンジウムと不純物との分離が行われ、不純物と分離したスカンジウムがスカンジウム溶離液として回収される。ところが、使用するキレート樹脂の特性上、すべての不純物を完全にスカンジウムと分離できるわけではない。そこで、スカンジウム溶離工程S2で回収したスカンジウム溶離液を、後述する溶媒抽出工程S4での抽出始液として用いて溶媒抽出処理に付すことで、スカンジウムと不純物との分離をさらに進めることができる。
しかしながら、溶媒抽出処理では、一般的に、抽出始液中の目的成分の濃度が高い方が目的外の不純物との分離性能を向上させることができる。また、処理するスカンジウムの物量が同じであるならば、スカンジウムを高濃度に含有する抽出始液であるほど、溶媒抽出処理に供する液量が少なくて済むため、結果として使用する抽出剤の物量も低減できる。さらに、溶媒抽出処理に必要な設備がよりコンパクトで済むといったような操業効率が向上する等の様々なメリットがある。
このことから、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、スカンジウム溶離液中のスカンジウム濃度を上昇させるために、すなわち、スカンジウムを濃縮させるために、スカンジウム溶離液に対して中和剤を添加してpHを調整し、水酸化スカンジウムの沈澱物を形成させ、得られた水酸化スカンジウムの沈澱物に酸を添加して再度溶解する。このことによって、高いスカンジウム濃度をもった溶液(抽出始液)を得るようにする。
このように、溶媒抽出工程S4に先立って、スカンジウム溶離液に対し中和処理を施してスカンジウムを濃縮させることで、溶媒抽出の処理効率を向上させることができる。また、このような中和処理を施すことで、スカンジウム溶離液から一旦スカンジウムを含有する沈澱物を形成させて固液分離するようになるため、沈澱物とならなかった不純物を分離する効果も期待できる。
具体的に、この中和工程S3は、図2に示すように、スカンジウム溶離液に対して中和処理を施して中和澱物と中和濾液とを得る中和工程S31と、得られた中和澱物に対して酸を添加することによって溶解し、高濃度のスカンジウムを含有する再溶解液(水酸化物溶解液)を得る水酸化物溶解工程S32と、を有する。
[中和工程]
中和工程S31では、スカンジウム溶離液に対して中和処理を施し、その溶離液のpHを所定の範囲に調整することによって、スカンジウム溶離液中に含まれるスカンジウムを水酸化スカンジウムの沈澱物とする。そして、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、この中和工程S31において、スカンジウム溶離液に対して中和剤及びジメチルグリオキシムを添加することによって中和処理を施す。
中和工程S31では、スカンジウム溶離液に対して中和処理を施し、その溶離液のpHを所定の範囲に調整することによって、スカンジウム溶離液中に含まれるスカンジウムを水酸化スカンジウムの沈澱物とする。そして、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、この中和工程S31において、スカンジウム溶離液に対して中和剤及びジメチルグリオキシムを添加することによって中和処理を施す。
詳しくは後述するが、中和工程S31において、中和剤に加えてジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施すことによって、スカンジウム溶離液に含まれる不純物元素を、より効果的に分離することができる。特に、スカンジウムの回収方法においては不純物となるニッケルを効果的にかつ効率的に分離することができる。
ここで、中和工程S31における中和処理としては、中和剤を用いた中和によるpH調整を2段階で行うことが好ましい。これにより、より一層に効率的に不純物を分離してスカンジウムを濃縮することができる。
図3は、中和工程S31において2段階の中和処理を行うときの流れを示す工程図である。図3に示すように、中和工程S31としては、スカンジウム溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により1次中和澱物と1次中和濾液とを得る第1の中和工程S311と、1次中和濾液にさらに中和剤を添加して中和処理を施し、固液分離により2次中和澱物と2次中和濾液とを得る第2の中和工程S312と、を有する工程とすることができる。
(第1の中和工程)
具体的に、第1の中和工程S311として、スカンジウム溶離液に対して水酸化ナトリウム等の中和剤を添加してpHが所定の範囲となるように調整するとともに、ジメチルグリオキシムを添加して沈澱物を生成させる1段目の中和を行う。
具体的に、第1の中和工程S311として、スカンジウム溶離液に対して水酸化ナトリウム等の中和剤を添加してpHが所定の範囲となるように調整するとともに、ジメチルグリオキシムを添加して沈澱物を生成させる1段目の中和を行う。
この1段目の中和処理によってpH調整を行うことで、スカンジウムより塩基性が低い成分である鉄、クロム等の不純物元素の大部分が水酸化物の形態の沈澱物となる。一方、ニッケルはスカンジウムよりは塩基性が高いものの、水酸化ナトリウム等の中和剤によるpH調整では十分な沈澱物生成が生じない可能性がある。そこで、中和剤を添加するとともに、ジメチルグリオキシムを添加することによって、下記式[1]に示すようにジメチルグリオキシムとニッケルとのキレート反応により、ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケルの沈澱物を生じさせるようにする。
Ni2++2dmgH2 → Ni(dmgH)2↓+2H+ ・・・式[1]
(なお、式中の「dmgH2」はジメチルグリオキシム(C4H8O2N2)を示す)
(なお、式中の「dmgH2」はジメチルグリオキシム(C4H8O2N2)を示す)
このような中和処理により得られるスラリーを濾過することで、1次中和澱物と1次中和濾液とに分離される。なお、スカンジウムは1次中和濾液中に濃縮される。
第1の中和工程S311における中和処理では、中和剤及びジメチルグリオキシムの添加により、溶液(スカンジウム溶離液)のpHが、好ましくは3.8~4.5の範囲となるように調整する。また、より好ましくは、pHが4.0~4.2程度となるように調整する。スカンジウム溶離液のpHがこのような範囲となるように中和剤を添加することで、スカンジウムをより効率的に1次中和濾液中に濃縮することができる。
調整する溶液のpHに関して、上記の式[1]において右向きの反応を促進させるためには、中性領域に近いことが好ましい。このことから、pH3.8未満であると、ジメチルグリオキシムの酸解離がほとんどなく、ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケルの沈澱物が十分に生じない可能性がある。一方で、pHが4.5より大きくなると、水酸化スカンジウムの沈澱量が多くなるため、ニッケルとスカンジウムとを効果的に分離できない可能性がある。
なお、中和剤としては、スカンジウム溶離液を所望とするpH範囲に調整できれば特に限定されず、例えば水酸化ナトリウム等が挙げられる。
また、ジメチルグリオキシムの添加量としては、特に限定されないが、スカンジウム溶離液に含まれるニッケル量に対して3当量~50当量の割合とすることが好ましく、4当量~40当量の割合とすることがより好ましく、10当量~35当量の割合とすることがさらに好ましい。このような割合でジメチルグリオキシムを添加することで、スカンジウム溶離液に含まれるニッケルをより効果的に、スカンジウムから分離することができる。
(第2の中和工程)
次に、第2の中和工程S312として、1段目の中和により得られた1次中和濾液に対して、さらに水酸化ナトリウム等の中和剤を添加し、溶液のpHが所定の範囲となるように調整する2段目の中和を行う。
次に、第2の中和工程S312として、1段目の中和により得られた1次中和濾液に対して、さらに水酸化ナトリウム等の中和剤を添加し、溶液のpHが所定の範囲となるように調整する2段目の中和を行う。
この2段目の中和処理によって、1次中和濾液に含まれるスカンジウムを水酸化スカンジウムの沈澱物(2次中和澱物)として得ることができる。またそれとともに、スカンジウムより塩基性が高い成分であるマンガンは沈澱物とならないため2次中和濾液に残留させることができる。そして、得られた中和スラリーを固液分離することで、2次中和澱物、すなわち不純物を分離したスカンジウムの水酸化物を回収することができる。
第2の中和工程S312における中和処理では、中和剤の添加により、1次中和濾液のpHが、好ましくは5.5~6.5の範囲となるように調整する。また、より好ましくは、pHが6.0程度となるように調整する。1次中和濾液のpHがこのような範囲となるように中和剤を添加することで、水酸化スカンジウムの沈澱物をより効率的に生成させることができる。
中和剤としては、1次中和濾液を所望とするpH範囲に調整できれば特に限定されず、例えば水酸化ナトリウム溶液等が挙げられる。
また、水酸化ナトリウム溶液等の中和剤の濃度は、適宜決めればよいが、例えば4Nを超えるような高濃度の中和剤を添加すると、反応槽内でpHが局部的に上昇して部分的にpHが4.5を超える状態が生じ得る。このような場合、スカンジウムと不純物とが共沈してしまう等の弊害が生じ、高純度なスカンジウムが得られない可能性がある。このため、中和剤としては、4N以下に希釈された溶液とすることが好ましく、これにより中和反応を均一に生じさせるようにするとよい。
一方、例えば水酸化ナトリウム溶液等の中和剤の濃度が低すぎると、添加に要する溶液量がその分だけ増加してしまい、取り扱う液量が増加し、結果として設備規模が大きくなりコスト増加の原因となるなど好ましくない。このため、中和剤としては、1N以上の濃度のものを用いることが好ましい。
なお、上述した1次中和澱物や2次中和澱物のように、水酸化ナトリウム等のアルカリの中和剤を添加することで得られた沈澱物は、その濾過性が極めて悪いのが一般的である。そのため、中和に際しては、種晶を添加して濾過性を向上させるようにしてもよい。種晶は、中和処理前の溶液に対し約1g/L以上となる量で添加することが好ましい。
[水酸化物溶解工程]
水酸化物溶解工程S32では、上述した中和工程S31における中和処理を経て回収された水酸化スカンジウムを主成分とする中和澱物(2次中和澱物)に対して、酸を添加することによって溶解し、再溶解液となる水酸化物溶解液を得る。本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、このようにして得られた再溶解液を、後述する溶媒抽出工程S4における溶媒抽出処理の抽出始液として用いる。
水酸化物溶解工程S32では、上述した中和工程S31における中和処理を経て回収された水酸化スカンジウムを主成分とする中和澱物(2次中和澱物)に対して、酸を添加することによって溶解し、再溶解液となる水酸化物溶解液を得る。本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、このようにして得られた再溶解液を、後述する溶媒抽出工程S4における溶媒抽出処理の抽出始液として用いる。
中和澱物を溶解させるための酸としては、特に限定されないが、硫酸溶液を用いることが好ましい。なお、硫酸溶液を用いた場合、その再溶解液は硫酸スカンジウム溶液となる。
例えば硫酸溶液を用いる場合、その濃度としては特に限定されないが、工業的な反応速度を考慮すれば2N以上の濃度の硫酸溶液を用いて溶解することが好ましい。
また、硫酸溶液等による溶解時のスラリー濃度を調整することで、任意のスカンジウム濃度の抽出始液を得ることができる。例えば、2Nの硫酸溶液を添加して溶解する場合には、溶解液のpHが好ましくは0.8~1.5の範囲、より好ましくは1.0程度となるように維持する。このようにpHを維持するように溶解することで、水酸化スカンジウムの溶解を効率的に行うことができ、未溶解によるスカンジウム回収のロスを抑制できる。なお、上述したpH範囲に関して、pHが1.5を超えて高いと、水酸化スカンジウムの溶解が効率的に進まない可能性がある。一方で、pHが0.8未満のように低いと、酸性の強い溶液が得られ、スカンジウムを回収した後の溶液を中和して処分する排水処理において添加する中和剤の量が多くなり、コストや手間がかさんでしまい好ましくない。
[ジメチルグリオキシム回収工程]
上述した中和工程S31では、中和剤と共にジメチルグリオキシムを添加することによって中和処理を施していることから、得られる中和濾液には未反応分のジメチルグリオキシムが溶存している。そのため、中和濾液に溶存しているジメチルグリオキシムについては、回収工程にて回収する処理を行うことが望ましい。
上述した中和工程S31では、中和剤と共にジメチルグリオキシムを添加することによって中和処理を施していることから、得られる中和濾液には未反応分のジメチルグリオキシムが溶存している。そのため、中和濾液に溶存しているジメチルグリオキシムについては、回収工程にて回収する処理を行うことが望ましい。
そこで、図3の工程図に示すように、ジメチルグリオキシム回収工程S33を設け、中和工程S31を経て得られる中和濾液から、その溶液中に残存しているジメチルグリオキシムを回収するようにすることができる。図3の工程図では、2段階の中和処理を行い、第2の中和工程S312での処理を経て得られる2次中和濾液に溶存するジメチルグリオキシムを回収する流れを例示する。
なお、ジメチルグリオキシム回収工程S33は、2段階の中和処理を経て得られる中和濾液に限られず、例えば1段のみの中和処理を経て得られる中和濾液に対する処理工程としても、好適に設けることができる。
具体的に、回収処理の方法としては、例えば、中和濾液に対してニッケルを含む化合物を添加し、ジメチルグリオキシムとニッケルとを反応させビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケルの沈澱物を生成させる方法が挙げられる。そして、得られた沈澱物をpHが3.8未満になるように酸を加えて混合することにより、ニッケルのみが酸溶液中に溶解し、ジメチルグリオキシムは溶解せずに沈澱物として残るようになり、ニッケルと分離してジメチルグリオキシムを回収できる。
回収したジメチルグリオキシムは、中和工程S31にて使用するジメチルグリオキシムとして再利用することができ(図3中の矢印Rで示す)、薬剤コストを効果的に低減することができる。
<2-4.溶媒抽出工程>
次に、溶媒抽出工程S4では、中和後溶離液(抽出始液)に対して溶媒抽出処理を行う。ここで、中和後溶離液とは、スカンジウム溶離工程S2から得られたスカンジウム溶離液に対して中和工程S31における中和処理を施して得られる溶液をいう。より具体的には、中和後溶離液として中和工程S3を経て得られた再溶解液(水酸化物溶解液)を用い、それを抽出剤に接触させて溶媒抽出処理を行うことによって、スカンジウムを含有する抽残液を得る。なお、溶媒抽出に供する再溶解液は、上述したように、スカンジウムを濃縮させた酸性溶液であり、以下では「スカンジウム含有溶液」ともいう。
次に、溶媒抽出工程S4では、中和後溶離液(抽出始液)に対して溶媒抽出処理を行う。ここで、中和後溶離液とは、スカンジウム溶離工程S2から得られたスカンジウム溶離液に対して中和工程S31における中和処理を施して得られる溶液をいう。より具体的には、中和後溶離液として中和工程S3を経て得られた再溶解液(水酸化物溶解液)を用い、それを抽出剤に接触させて溶媒抽出処理を行うことによって、スカンジウムを含有する抽残液を得る。なお、溶媒抽出に供する再溶解液は、上述したように、スカンジウムを濃縮させた酸性溶液であり、以下では「スカンジウム含有溶液」ともいう。
溶媒抽出工程S4における処理態様としては、特に限定されないが、例えば図1及び図2に示すように、スカンジウム含有溶液と有機溶媒である抽出剤とを混合して、有機溶媒中に不純物を選択的に抽出するとともに、スカンジウムを残した抽残液を得る抽出工程S41と、抽出後有機溶媒に硫酸溶液を混合して抽出後有機溶媒を洗浄するスクラビング工程S42と、洗浄後有機溶媒に逆抽出剤を添加して洗浄後有機溶媒から不純物を逆抽出する逆抽出工程S43と、を有する溶媒抽出処理を行うことが好ましい。
[抽出工程]
抽出工程S41では、抽出剤を含む有機溶媒とスカンジウム含有溶液とを混合し、有機溶媒中に不純物を選択的に抽出して、不純物を含有する抽出後有機溶媒と、スカンジウムを残した抽残液とを得る。本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、抽出工程S41において、好ましくはアミン系抽出剤を用いた溶媒抽出処理を行う。このようにアミン系抽出剤を用いて溶媒抽出処理を行うことで、より効率的に且つ効果的に、不純物を抽出してスカンジウムと分離することができる。
抽出工程S41では、抽出剤を含む有機溶媒とスカンジウム含有溶液とを混合し、有機溶媒中に不純物を選択的に抽出して、不純物を含有する抽出後有機溶媒と、スカンジウムを残した抽残液とを得る。本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法では、抽出工程S41において、好ましくはアミン系抽出剤を用いた溶媒抽出処理を行う。このようにアミン系抽出剤を用いて溶媒抽出処理を行うことで、より効率的に且つ効果的に、不純物を抽出してスカンジウムと分離することができる。
アミン系抽出剤は、スカンジウムとの選択性が低く、また抽出時に中和剤が不要である等の特徴を有するものである。アミン系抽出剤としては、例えば、1級アミンであるPrimeneJM-T、2級アミンであるLA-1、3級アミンであるTNOA(Tri-n-octylamine)、TIOA(Tri-i-octylamine)等の商品名で知られるものを用いることができる。
抽出時においては、そのアミン系抽出剤を、例えば炭化水素系の有機溶媒等で希釈して使用することが好ましい。また、有機溶媒中のアミン系抽出剤の濃度としては、特に限定されないが、抽出時及び後述する逆抽出時における相分離性等を考慮すると、1体積%~10体積%程度とすることが好ましく、特に5体積%程度とすることがより好ましい。
また、抽出時における、有機溶媒とスカンジウム含有溶液との体積割合としては、特に限定されないが、スカンジウム含有溶液中のメタルモル量に対して有機溶媒モル量を0.01倍~0.1倍程度にすることが好ましい。
[スクラビング(洗浄)工程]
抽出工程S41においてスカンジウム含有溶液から不純物を抽出させた有機溶媒中にスカンジウムが僅かに共存する場合には、抽出液を逆抽出する前に、その抽出後有機溶媒(有機相)に対してスクラビング(洗浄)処理を施す。これにより、スカンジウムを水相に分離して有機溶媒中から回収する(スクラビング工程S42)。
抽出工程S41においてスカンジウム含有溶液から不純物を抽出させた有機溶媒中にスカンジウムが僅かに共存する場合には、抽出液を逆抽出する前に、その抽出後有機溶媒(有機相)に対してスクラビング(洗浄)処理を施す。これにより、スカンジウムを水相に分離して有機溶媒中から回収する(スクラビング工程S42)。
このようにスクラビング工程S42を設けて有機溶媒を洗浄し、抽出剤により抽出された僅かなスカンジウムを分離させることで、洗浄液中にスカンジウムを分離させることができ、スカンジウムの回収率をより一層に高めることができる。
スクラビングに用いる溶液(洗浄溶液)としては、硫酸溶液や塩酸溶液等を使用することができる。また、水に可溶性の塩化物や硫酸塩を添加したものを使用することもできる。具体的に、洗浄溶液として硫酸溶液を用いる場合には、1.0mol/L~3.0mol/L程度の濃度範囲のものを使用することが好ましい。
洗浄段数(回数)としては、不純物元素の種類や濃度のほか、使用したアミン系抽出剤や抽出条件等によって適宜設定できる。例えば、有機相(O)と水相(A)の相比O/A=1とした場合、3段~5段程度の洗浄段数とすることで、有機溶媒中のスカンジウムを分析装置の検出下限未満まで分離して回収できる。
[逆抽出工程]
逆抽出工程S43では、抽出工程S41にて不純物を抽出した有機溶媒から、不純物を逆抽出する。具体的に、逆抽出工程S43では、抽出剤を含む有機溶媒に逆抽出溶液(逆抽出始液)を添加して混合することで、抽出工程S41における抽出処理とは逆の反応を生じさせて不純物を逆抽出し、不純物を含む逆抽出後液を得る。
逆抽出工程S43では、抽出工程S41にて不純物を抽出した有機溶媒から、不純物を逆抽出する。具体的に、逆抽出工程S43では、抽出剤を含む有機溶媒に逆抽出溶液(逆抽出始液)を添加して混合することで、抽出工程S41における抽出処理とは逆の反応を生じさせて不純物を逆抽出し、不純物を含む逆抽出後液を得る。
上述したように、抽出工程S41での抽出処理においては、好ましくはアミン系抽出剤を用いて不純物を選択的に抽出するようにしている。このことから、不純物を有機溶媒から分離してその抽出剤を再生させる点を考慮すると、逆抽出溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を含有する溶液であることが好ましい。
逆抽出溶液である炭酸塩を含有する溶液の濃度としては、過剰な使用を抑制する観点から、例えば0.5mol/L~2mol/L程度とすることが好ましい。
なお、スクラビング工程S42において抽出剤を含む有機溶媒に対してスクラビング処理を施した場合には、同様に、スクラビング後の抽出剤に対して逆抽出溶液を添加して混合することによって逆抽出処理を行うことができる。
このようにして、抽出後の抽出剤又はスクラビング後の抽出剤に対して炭酸ナトリウム等の炭酸塩溶液を添加して逆抽出処理を行うことで、抽出剤から不純物を除去することができ、再び、抽出処理に用いる抽出剤として繰り返すことができる。
<2-5.スカンジウム回収工程>
次に、スカンジウム回収工程S5では、溶媒抽出工程S4における抽出工程S41にて得られた抽残液、及び、スクラビング工程S42にてスクラビングを行った場合にはそのスクラビング後の洗浄液から、スカンジウムを回収する。
次に、スカンジウム回収工程S5では、溶媒抽出工程S4における抽出工程S41にて得られた抽残液、及び、スクラビング工程S42にてスクラビングを行った場合にはそのスクラビング後の洗浄液から、スカンジウムを回収する。
[結晶化工程]
結晶化工程S51では、抽残液等に含まれるスカンジウムをスカンジウム塩の沈澱物に結晶化させて回収する。
結晶化工程S51では、抽残液等に含まれるスカンジウムをスカンジウム塩の沈澱物に結晶化させて回収する。
スカンジウムを結晶化させて回収する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、アルカリを加えて中和処理を施し、水酸化スカンジウムの沈澱物を生成させて回収する方法がある。また、シュウ酸溶液によってシュウ酸塩の沈澱物を生成させて回収する方法(シュウ酸塩化処理)を用いることもできる。これらの方法によれば、抽残液に含まれる効果的に不純物を分離して、高純度なスカンジウムの結晶を得ることができる。
[焙焼工程]
焙焼工程S52では、結晶化工程S51で得られた水酸化スカンジウムやシュウ酸スカンジウム等の沈澱物を水で洗浄し、乾燥させた後に焙焼する。この焙焼処理を経ることで、スカンジウムを極めて高純度な酸化スカンジウムとして回収することができる。
焙焼工程S52では、結晶化工程S51で得られた水酸化スカンジウムやシュウ酸スカンジウム等の沈澱物を水で洗浄し、乾燥させた後に焙焼する。この焙焼処理を経ることで、スカンジウムを極めて高純度な酸化スカンジウムとして回収することができる。
焙焼処理の条件としては、特に限定されないが、例えば管状炉に入れて約900℃で2時間程度加熱すればよい。なお、工業的には、ロータリーキルン等の連続炉を用いることによって、乾燥と焙焼とを同じ装置で行うことができるため好ましい。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(湿式製錬処理工程S1)
ニッケル酸化鉱石を原料として硫酸による加圧酸浸出の処理を施し、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去した後、硫化剤を添加してニッケルを分離して硫化後液を用意した。下記表1に、得られた硫化後液中のスカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)の濃度を示す。
(湿式製錬処理工程S1)
ニッケル酸化鉱石を原料として硫酸による加圧酸浸出の処理を施し、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去した後、硫化剤を添加してニッケルを分離して硫化後液を用意した。下記表1に、得られた硫化後液中のスカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)の濃度を示す。
なお、この組成の溶液(硫化後液)に中和剤を添加して沈澱物を生成させ、スカンジウムやその他の不純物成分を含む水酸化物を得た場合であっても、スカンジウムの水酸化物としての品位は0.1質量%程度しか得られなかった。
(イオン交換処理工程S2)
次に、得られた硫化後液に対して、キレート樹脂を用いた公知の方法によるイオン交換処理を施し、下記表2に組成を示すスカンジウム溶離液を得た。
次に、得られた硫化後液に対して、キレート樹脂を用いた公知の方法によるイオン交換処理を施し、下記表2に組成を示すスカンジウム溶離液を得た。
(中和工程S31)
得られたスカンジウム溶離液を反応容器に入れ、撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、スカンジウム溶離液に存在するニッケル量の10当量に相当する割合でジメチルグリオキシムを添加して、溶液のpHが4.2になるように調整する1段目の中和処理を行った(第1の中和工程S311)。
得られたスカンジウム溶離液を反応容器に入れ、撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、スカンジウム溶離液に存在するニッケル量の10当量に相当する割合でジメチルグリオキシムを添加して、溶液のpHが4.2になるように調整する1段目の中和処理を行った(第1の中和工程S311)。
1段目の中和処理後、濾紙とヌッチェを用いて固液分離を行った結果、1次中和澱物と1次中和濾液とが得られた。ICPを用いて分析することにより、上記表2に組成を示すスカンジウム溶離液に含まれていた物量のうちの沈澱が生成した物量の割合(分配)を沈澱率(%)として評価した。下記表3に、1段目の中和処理による沈澱率を示す。
表3に示すように、溶液のpHが4.2になるまで中和剤を添加するとともに、ジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施すことにより、溶液中の不純物である鉄、ニッケル、クロムを中和澱物として効果的に沈澱させることができた。特に、ニッケルを、1次中和濾液に分配されるスカンジウムと効果的に分離することができた。
続いて、得られた1次中和濾液を反応容器に入れ、これに濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液を添加し、溶液のpHが6になるように調整する2段目の中和処理を行った(第2の中和工程S312)。
2段目の中和処理後、1段目の中和処理と同様にして固液分離を行った結果、2次中和澱物と2次中和濾液とが得られた。ICPを用いて分析することにより、1次中和濾液に含まれていた物量のうちの沈澱が生成した物量の割合(分配)を沈澱率(%)として評価した。下記表4に、2段目の中和処理による沈澱率を示す。
表4に示すように、1段目の中和処理において大部分が沈澱せずに濾液中に残ったスカンジウムは、2段目の中和処理によってほぼ100%の割合で2次中和澱物に分配した。一方で、スカンジウムよりも塩基性の高いマンガンは、1段目、2段目の両方の中和処理によっても沈澱せずに2次中和濾液に残留し、スカンジウムと効果的に分離することができた。
なお、表4に示す結果からすると、スカンジウム溶離液中の成分(表2に組成を示した)の中で、鉄、ニッケル、クロムは、2段目の中和でも大部分が沈澱するように見える。しかしながら、これらの成分は、1段目の中和処理によって既に一部あるいはほとんどが1次中和澱物に分配されてスカンジウムと分離しており、2次中和澱物に分配される物量自体は抑えられている。
以上の結果から、ジメチルグリオキシムの添加を含む中和処理であって、好ましくは2段階の中和処理を施すことによって、スカンジウム溶離液に含まれていたほとんどの不純物(アルミニウム以外の不純物)を、スカンジウムと有効に分離することができた。なお。下記表5に、スカンジウムを固形化して回収した2次中和澱物中に分配された割合(沈澱率)を示す。
(水酸化物溶解工程S32)
次に、得られた2次中和澱物に濃度2Nの硫酸溶液を添加して、pHを1前後に維持しながら沈澱物を溶解し、下記表6に示す再溶解液(水酸化物溶解液)を得た。
次に、得られた2次中和澱物に濃度2Nの硫酸溶液を添加して、pHを1前後に維持しながら沈澱物を溶解し、下記表6に示す再溶解液(水酸化物溶解液)を得た。
(溶媒抽出工程S4)
次に、得られた水酸化物溶解液500mlを抽出始液とし、これに、アミン系抽出剤(ダウケミカル社製,PrimeneJM-T)を溶剤(シェルケミカルズジャパン社製,シェルゾールA150)を用いて5体積%に調整した有機溶媒250mlを混合させ、室温で60分間撹拌して溶媒抽出処理を施した(抽出工程S41)。この溶媒抽出処理により、スカンジウムを含む抽残液が得られた。なお、抽出時には、クラッドが形成されることはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
次に、得られた水酸化物溶解液500mlを抽出始液とし、これに、アミン系抽出剤(ダウケミカル社製,PrimeneJM-T)を溶剤(シェルケミカルズジャパン社製,シェルゾールA150)を用いて5体積%に調整した有機溶媒250mlを混合させ、室温で60分間撹拌して溶媒抽出処理を施した(抽出工程S41)。この溶媒抽出処理により、スカンジウムを含む抽残液が得られた。なお、抽出時には、クラッドが形成されることはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
抽出により得られた抽出有機相に含まれる各元素の組成を分析した。下記表7に、抽出有機相に含まれる各種元素の物量を、抽出前元液(抽出始液)に含まれていた各元素の物量で割った値の百分率を算出し、それを抽出率(%)とした結果を示す。
表7に示す抽出率の結果から分かるように、溶媒抽出処理を通じて、抽出前元液(水酸化物溶解液)に含まれていたスカンジウムの多くが抽残液に分配された。なお、表7には示していないが、その他の不純物は有機溶媒に抽出され、スカンジウムと効果的に分離することができた。
続いて、抽出処理後に得られた、僅かにスカンジウムを含む250mlの有機溶媒(抽出有機相)に、濃度1mol/Lの硫酸溶液を、相比(O/A)が1の比率となるように250mlの量で混合し、60分間撹拌して洗浄した。その後、静置して水相を分離し、有機相は再び濃度1mol/Lの新たな硫酸溶液250mlと混合して洗浄し、同様に水相を分離した。このような洗浄操作を計5回繰り返した(スクラビング工程S42)。
このように抽出有機相を5回洗浄することにより、抽出有機相に含まれていたスカンジウムを水相に分離し、回収することができた。一方で、抽出有機相に含まれる不純物については、1mg/Lの低いレベルの溶出に留まり、有機溶媒に抽出されたスカンジウムのみを効果的に水相に分離させることができ、不純物のみを除去できた。
続いて、洗浄後の抽出有機相に、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウムを、相比O/A=1/1の比率となるように混合して60分間撹拌して逆抽出処理を施し、不純物を水相に逆抽出した(逆抽出工程S43)。この逆抽出操作によって得られた逆抽出後液に含まれる各種元素の組成を分析した。下記表8に、逆抽出後液に含まれる各種元素の物量を、抽出処理にて有機相に抽出された各種元素の物量で割った値の百分率を算出し、それを回収率(%)として結果を示す。
表8に示す回収率の結果から分かるように、上述した溶媒抽出処理を行うことによって、大部分の鉄やアルミニウムを分離してスカンジウムを回収できた。
(スカンジウム回収工程S5)
次に、得られた抽残液に、その抽残液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で3倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス化学株式会社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合して、シュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈澱を生成させた(結晶化工程S51)。
次に、得られた抽残液に、その抽残液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で3倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス化学株式会社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合して、シュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈澱を生成させた(結晶化工程S51)。
続いて、得られたシュウ酸スカンジウムの沈澱物を吸引濾過し、純水を用いて洗浄し、105℃で8時間乾燥させた。乾燥させたシュウ酸スカンジウムを管状炉に入れ850℃~900℃に維持して焙焼(焼成)させて、酸化スカンジウムを得た。
焙焼により得られた酸化スカンジウムを、発光分光分析法によって分析した。下記表9に、酸化スカンジウムに含まれる各不純物の品位(ppm)を示す。
表9に示すように、不純物の含有量が低い高純度の酸化スカンジウムを得ることができた。
[実施例2]
実施例1にて用いた上記表1に示す同組成の硫化後液に対して、実施例1と同じ手法でイオン交換処理を行い、上記表2と同じ組成のスカンジウム溶離液を得た。
実施例1にて用いた上記表1に示す同組成の硫化後液に対して、実施例1と同じ手法でイオン交換処理を行い、上記表2と同じ組成のスカンジウム溶離液を得た。
得られたスカンジウム溶離液を反応容器に入れ、撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、スカンジウム溶離液に存在するニッケル量の5当量に相当する割合でジメチルグリオキシムを添加して、溶液のpHが4.3になるように調整する1段目の中和処理を行った。
なお、それ以外は、実施例1と同様の方法で酸化スカンジウムを得た。
焙焼により得られた酸化スカンジウムを、発光分光分析法によって分析した。下記表10に、酸化スカンジウムに含まれる各不純物の品位(ppm)を示す。
表10に示すように、不純物の含有量が低い高純度の酸化スカンジウムを得ることができた。
[比較例1]
実施例1にて用いた上記表1に示す同組成の硫化後液に対して、実施例1と同じ手法でイオン交換処理を行い、上記表2と同じ組成のスカンジウム溶離液を得た。
実施例1にて用いた上記表1に示す同組成の硫化後液に対して、実施例1と同じ手法でイオン交換処理を行い、上記表2と同じ組成のスカンジウム溶離液を得た。
得られたスカンジウム溶離液を反応容器に入れ、撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して、溶液のpHが6となるように調整する中和処理を施し、沈澱物(中和澱物)と中和濾液とを生成させた。すなわち、実施例1、2とは異なり、ジメチルグリオキシムを添加せず、1段階のみの中和処理を行った。
その後、固液分離して回収した中和濾液から、スカンジウム水酸化物の沈澱物を得たこと以外は、実施例1と同様にして酸化スカンジウムを得た。
得られた酸化スカンジウムを、発光分光分析法によって分析した。下記表11に、酸化スカンジウムに含まれる各不純物の品位(ppm)を示す。
表11に示すように、不純物元素のうち、特にニッケルの含有量が高かった。このことについて実施例との対比で考えると、比較例1では、スカンジウム溶離液に対する中和処理において、中和剤である水酸化ナトリウム溶液を添加するのみを行い、中和剤に加えてジメチルグリオキシムを添加しなかったことにより、ニッケルを沈澱物化して十分に除去できなかったためと考えられる。
[実施例3]
(湿式製錬処理工程S1)
上記の実施例1と同じニッケル酸化鉱石を原料として、実施例1と同じ方法を用いて加圧酸浸出の処理を施し、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去し、硫化剤を添加してニッケルを分離して硫化後液(上記表1と同じ組成の硫化後液)を用意した。
(湿式製錬処理工程S1)
上記の実施例1と同じニッケル酸化鉱石を原料として、実施例1と同じ方法を用いて加圧酸浸出の処理を施し、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去し、硫化剤を添加してニッケルを分離して硫化後液(上記表1と同じ組成の硫化後液)を用意した。
(イオン交換処理工程S2)
次に、得られた硫化後液に対して、キレート樹脂を用いた公知の方法によるイオン交換処理を施し、下記表12に組成を示すカンジウム溶離液を得た。
次に、得られた硫化後液に対して、キレート樹脂を用いた公知の方法によるイオン交換処理を施し、下記表12に組成を示すカンジウム溶離液を得た。
(中和工程S31)
得られたスカンジウム溶離液を反応容器に入れ、撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、スカンジウム溶離液に存在するニッケル量の10当量に相当する割合でジメチルグリオキシムを添加して、溶液のpHが4.0になるように調整する1段目の中和処理を行った(第1の中和工程S311)。
得られたスカンジウム溶離液を反応容器に入れ、撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、スカンジウム溶離液に存在するニッケル量の10当量に相当する割合でジメチルグリオキシムを添加して、溶液のpHが4.0になるように調整する1段目の中和処理を行った(第1の中和工程S311)。
1段目の中和処理後、濾紙とヌッチェを用いて固液分離を行った結果、1次中和澱物と1次中和濾液とが得られた。ICPを用いて分析することにより、上記表12に組成を示すスカンジウム溶離液に含まれていた物量のうちの沈澱が生成した物量の割合(分配)を沈澱率(%)として評価した。下記表13に、1段目の中和処理による沈澱率を示す。
表13に示すように、溶液のpHが4.0になるまで中和剤を添加するとともに、ジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施すことにより、溶液中の不純物である鉄、ニッケル、クロムを中和澱物として効果的に沈澱させることができた。特に、ニッケルを、1次中和濾液に分配されるスカンジウムと効果的に分離することができた。また、上記実施例1と比べて(pH4.2となるまで中和剤添加。上記表3を参照)、回収ロスとなるスカンジウムを半減させることができた。
続いて、得られた1次中和濾液を反応容器に入れ、これに濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液を添加し、溶液のpHが6になるように調整する2段目の中和処理を行った(第2の中和工程S312)。
2段目の中和処理後、1段目の中和処理と同様にして固液分離を行った結果、2次中和澱物と2次中和濾液とが得られた。ICPを用いて分析することにより、1次中和濾液に含まれていた物量のうちの沈澱が生成した物量の割合(分配)を沈澱率(%)として評価した。下記表14に、2段目の中和処理による沈澱率を示す。
表14に示すように、1段目の中和処理において大部分が沈澱せずに濾液中に残ったスカンジウムは、2段目の中和処理によってほぼ100%の割合で2次中和澱物に分配した。一方で、スカンジウムよりも塩基性の高いマンガンは、1段目、2段目の両方の中和処理によっても沈澱せずに2次中和濾液に残留し、スカンジウムと効果的に分離することができた。
なお、表14に示す結果からすると、スカンジウム溶離液中の成分(表12に組成を示した)の中で、鉄、ニッケル、クロムは、2段目の中和でも大部分が沈澱するように見える。しかしながら、これらの成分は、1段目の中和処理によって既に一部あるいはほとんどが1次中和澱物に分配されてスカンジウムと分離しており、2次中和澱物に分配される物量自体は抑えられている。
以上の結果から、ジメチルグリオキシムの添加を含む中和処理であって、好ましくは2段階の中和処理を施すことによって、スカンジウム溶離液に含まれていたほとんどの不純物(アルミニウム以外の不純物)を、スカンジウムと有効に分離することができた。なお。下記表15に、スカンジウムを固形化して回収した2次中和澱物中に分配された割合(沈澱率)を示す。
(水酸化物溶解工程S32)
次に、得られた2次中和澱物に濃度2Nの硫酸溶液を添加して、pHを1前後に維持しながら沈澱物を溶解し、下記表16に示す再溶解液(水酸化物溶解液)を得た。
次に、得られた2次中和澱物に濃度2Nの硫酸溶液を添加して、pHを1前後に維持しながら沈澱物を溶解し、下記表16に示す再溶解液(水酸化物溶解液)を得た。
(溶媒抽出工程S4)
次に、得られた水酸化物溶解液500mlを抽出始液とし、これに、アミン系抽出剤(ダウケミカル社製,PrimeneJM-T)を溶剤(シェルケミカルズジャパン社製,シェルゾールA150)を用いて5体積%に調整した有機溶媒250mlを混合させ、室温で60分間撹拌して溶媒抽出処理を施した(抽出工程S41)。この溶媒抽出処理により、スカンジウムを含む抽残液が得られた。なお、抽出時には、クラッドが形成されることはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
次に、得られた水酸化物溶解液500mlを抽出始液とし、これに、アミン系抽出剤(ダウケミカル社製,PrimeneJM-T)を溶剤(シェルケミカルズジャパン社製,シェルゾールA150)を用いて5体積%に調整した有機溶媒250mlを混合させ、室温で60分間撹拌して溶媒抽出処理を施した(抽出工程S41)。この溶媒抽出処理により、スカンジウムを含む抽残液が得られた。なお、抽出時には、クラッドが形成されることはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
抽出により得られた抽出有機相に含まれる各元素の組成を分析した。下記表17に、抽出有機相に含まれる各種元素の物量を、抽出前元液(抽出始液)に含まれていた各元素の物量で割った値の百分率を算出し、それを抽出率(%)とした結果を示す。
表17に示す抽出率の結果から分かるように、溶媒抽出処理を通じて、抽出前元液(水酸化物溶解液)に含まれていたスカンジウムの多くが抽残液に分配された。なお、表17には示していないが、その他の不純物は有機溶媒に抽出され、スカンジウムと効果的に分離することができた。
続いて、抽出処理後に得られた、僅かにスカンジウムを含む250mlの有機溶媒(抽出有機相)に、濃度1mol/Lの硫酸溶液を、相比(O/A)が1の比率となるように250mlの量で混合し、60分間撹拌して洗浄した。その後、静置して水相を分離し、有機相は再び濃度1mol/Lの新たな硫酸溶液250mlと混合して洗浄し、同様に水相を分離した。このような洗浄操作を計5回繰り返した(スクラビング工程S42)。
このように抽出有機相を5回洗浄することにより、抽出有機相に含まれていたスカンジウムを水相に分離し、回収することができた。一方で、抽出有機相に含まれる不純物については、1mg/Lの低いレベルの溶出に留まり、有機溶媒に抽出されたスカンジウムのみを効果的に水相に分離させることができ、不純物のみを除去できた。
続いて、洗浄後の抽出有機相に、濃度1mol/Lの炭酸ナトリウムを、相比O/A=1/1の比率となるように混合して60分間撹拌して逆抽出処理を施し、不純物を水相に逆抽出した(逆抽出工程S43)。この逆抽出操作によって得られた逆抽出後液に含まれる各種元素の組成を分析した。下記表18に、逆抽出後液に含まれる各種元素の物量を、抽出処理にて有機相に抽出された各種元素の物量で割った値の百分率を算出し、それを回収率(%)とした結果を示す。
表18に示す回収率の結果から分かるように、上述した溶媒抽出処理を行うことによって、大部分の鉄やアルミニウムを分離してスカンジウムを回収できた。
(スカンジウム回収工程S5)
次に、得られた抽残液に、その抽残液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で3倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス化学株式会社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合して、シュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈澱を生成させた(結晶化工程S51)。
次に、得られた抽残液に、その抽残液に含まれるスカンジウム量に対して計算量で3倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス化学株式会社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合して、シュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈澱を生成させた(結晶化工程S51)。
続いて、得られたシュウ酸スカンジウムの沈澱物を吸引濾過し、純水を用いて洗浄し、105℃で8時間乾燥させた。乾燥させたシュウ酸スカンジウムを管状炉に入れ850℃~900℃に維持して焙焼(焼成)させ、酸化スカンジウムを得た。
焙焼により得られた酸化スカンジウムを、発光分光分析法によって分析した。下記表19に、酸化スカンジウムに含まれる各不純物の品位(ppm)を示す。
表19に示すように、不純物の含有量が低い高純度の酸化スカンジウムを得ることができた。
[実施例4]
上記実施例1と同じ方法で得られた2次中和濾液を、以下に示すジメチルグリオキシム回収工程に付した。
上記実施例1と同じ方法で得られた2次中和濾液を、以下に示すジメチルグリオキシム回収工程に付した。
(ジメチルグリオキシム回収工程S33)
・1段目の中和
すなわち、スカンジウムを含む2次中和澱物を分離したあとの2次中和濾液を回収して容器に入れ、撹拌しながら濃度8Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、1段目の中和処理で添加したジメチルグリオキシム量の9当量に相当する割合のニッケルを硫酸ニッケルで添加して、溶液のpHが6.0になるように調整するジメチルグリオキシムを回収する処理(中和処理)を行った。
・1段目の中和
すなわち、スカンジウムを含む2次中和澱物を分離したあとの2次中和濾液を回収して容器に入れ、撹拌しながら濃度8Nの水酸化ナトリウム溶液、及び、1段目の中和処理で添加したジメチルグリオキシム量の9当量に相当する割合のニッケルを硫酸ニッケルで添加して、溶液のpHが6.0になるように調整するジメチルグリオキシムを回収する処理(中和処理)を行った。
中和処理後、濾紙とヌッチェを用いて固液分離を行って中和澱物と中和濾液とを得た。ICPを用いて分析し、2次中和濾液に含まれていた物量のうちの沈澱が生成した物量の割合(分配)を沈澱率(%)として評価した。その結果、ニッケルの沈澱率は88%でありニッケルの大部分は沈澱して中和澱物に分配された。
このようにして得られた中和澱物は、ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケルの沈澱物であり、ニッケルを分離することでジメチルグリオキシムを再利用できることがわかった。
・2段目の中和
次に、1段目の中和で得られた中和澱物(ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケル澱物)に、64%硫酸及び純水を添加しながら撹拌し、溶解液と溶解澱物とを得た。ICPを用いて分析し、中和澱物に含まれていた物量のうちの濾液中に溶解した物量の割合(分配)を溶解率(%)として評価した。その結果、ニッケルの溶解率は82%となった。
次に、1段目の中和で得られた中和澱物(ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケル澱物)に、64%硫酸及び純水を添加しながら撹拌し、溶解液と溶解澱物とを得た。ICPを用いて分析し、中和澱物に含まれていた物量のうちの濾液中に溶解した物量の割合(分配)を溶解率(%)として評価した。その結果、ニッケルの溶解率は82%となった。
このように、中和澱物であるビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケル澱物中のニッケルは、酸に溶解して溶解液に分配されることになるが、ジメチルグリオキシムは酸に溶解しないため澱物として回収される。
[実施例5]
(ジメチルグリオキシムの再利用)
実施例4の操作により回収したジメチルグリオキシムを、中和工程S31における第1の中和工程S311に戻して再利用した。
(ジメチルグリオキシムの再利用)
実施例4の操作により回収したジメチルグリオキシムを、中和工程S31における第1の中和工程S311に戻して再利用した。
具体的には、回収したジメチルグリオキシムに新たなジメチルグリオキシムを追加することによって、中和処理対象のスカンジウム溶離液中に存在するニッケル量の10当量に調整したジメチルグリオキシムをそのスカンジウム溶離液に添加し、さらに撹拌しながら濃度4Nの水酸化ナトリウム溶液を添加して、溶液のpHが4.2になるように調整する中和処理を行った。この中和処理により、1次中和澱物として、ビス(ジメチルグリオキシマト)ニッケルの沈澱物が得られた。
得られた沈澱物を、ICPを用いて分析し、中和処理前の硫酸ニッケル溶液中に含まれていた物量のうち、沈澱が生成した物量の割合(分配)を沈澱率(%)として評価した。その結果、ニッケルの沈澱率は99%となり、大部分のニッケルが沈澱物化したことが確認された。また同時に、回収したジメチルグリオキシムを有効に再利用できることが確認された。
このように、中和処理後の濾液からジメチルグリオキシムを回収し、回収したジメチルグリオキシムを繰り返し再利用することで、中和処理に用いるジメチルグリオキシムの使用コストを効果的に低減できることがわかった。
Claims (10)
- スカンジウムを含有する溶液をイオン交換樹脂に通液し、該イオン交換樹脂から溶離した溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により中和澱物と中和濾液とを得る中和工程と、
中和後溶離液に対して溶媒抽出処理を行う溶媒抽出工程と、
前記溶媒抽出処理により分離された抽残液から酸化スカンジウムを回収するスカンジウム回収工程と、有する
スカンジウムの回収方法。 - 前記スカンジウムを含有する溶液は、ニッケルを含む原料を酸で浸出して得られる溶液である
請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記中和工程では、前記ジメチルグリオキシムを、前記溶離液に含まれるニッケル量に対して3当量~50当量の割合で添加する
請求項1又は2に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記中和工程は、
前記溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により1次中和澱物と1次中和濾液とを得る第1の中和工程と、
前記1次中和濾液にさらに中和剤を添加して中和処理を施し、固液分離により2次中和澱物と2次中和濾液とを得る第2の中和工程と、を有する
請求項1乃至3のいずれかに記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記第1の中和工程では、前記溶離液のpHを3.8~4.5の範囲に調整する
請求項4に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記第2の中和工程では、前記1次中和濾液のpHを5.5~6.5の範囲に調整する
請求項4又は5に記載のスカンジウムの回収方法。 - さらに、前記中和工程で得られた前記中和澱物に酸を添加して水酸化物溶解液を得る水酸化物溶解工程を有し、
前記溶媒抽出工程では、前記水酸化物溶解液を前記中和後溶離液として前記溶媒抽出処理に付す
請求項1乃至6のいずれかに記載のスカンジウムの回収方法。 - さらに、前記中和工程で得られた中和濾液からジメチルグリオキシムを回収する回収工程を有する
請求項1乃至7のいずれかに記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記中和工程は、
前記溶離液に中和剤及びジメチルグリオキシムを添加して中和処理を施し、固液分離により1次中和澱物と1次中和濾液とを得る第1の中和工程と、
前記1次中和濾液にさらに中和剤を添加して中和処理を施し、固液分離により2次中和澱物と2次中和濾液とを得る第2の中和工程と、を有し、
前記回収工程では、
前記中和工程における前記第2の中和工程を経て得られる前記2次中和濾液からジメチルグリオキシムを回収する
請求項8に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記回収工程にて回収したジメチルグリオキシムを、前記中和工程における中和処理に繰り返して再利用する、
請求項8又は9に記載のスカンジウムの回収方法。
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