JP6172100B2 - スカンジウムの回収方法 - Google Patents
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Description
図1は、本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法を説明するためのフロー図である。図1に示すように、このスカンジウムの回収方法は、ニッケル、スカンジウム等の有価金属のほかに、アルミニウム、クロム等の成分を含有するニッケル酸化鉱からスカンジウムを回収する方法である。
以下、図1に示すフロー図を参考にして、スカンジウムの回収方法の各工程についてより詳細に説明する。
浸出工程S1では、スカンジウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸等の酸と共に高温加圧容器(オートクレーブ)等に装入し、240℃〜260℃の高温で且つ高圧の環境下において、撹拌処理を施しながら酸によりニッケル酸化鉱を浸出して浸出液と浸出残渣とを含む浸出スラリーを生成する。なお、浸出工程S11における処理は、従来知られているHPALプロセスに従って行えばよく、例えば特許文献1に記載されている。
中和工程S2では、上述した浸出工程S1により得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る。この中和工程S2における中和処理により、スカンジウムやニッケル等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分が中和澱物となる。
硫化工程S3では、中和工程S12により得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る。この硫化工程S13における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、スカンジウム等は硫化後液に含まれることになる。
イオン交換工程S4では、上述したニッケル酸化鉱の湿式製錬処理により得られた硫化後液をキレート樹脂に接触させることによって、その硫化後液中に含まれるスカンジウムをキレート樹脂に吸着させ、不純物成分を除去したスカンジウム溶離液を得る。
吸着工程S41では、硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させる。キレート樹脂としては、特に限定されないが、例えばイミノジ酢酸を官能基とする樹脂を用いることが好ましい。
アルミニウム除去工程S42では、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸溶液を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去する。
スカンジウム溶離工程S43では、アルミニウム除去工程S42を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸溶液を接触させ、スカンジウム溶離液を得る。
クロム除去工程S44では、スカンジウム溶離工程S43を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸溶液を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着したクロムを除去する。
また、図示していないが、ニッケル酸化鉱から得られた浸出液中には不純物として鉄が含まれている場合がある。この場合、アルミニウム除去工程S42に先立ち、吸着工程S41でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に、アルミニウム除去工程S42で使用する硫酸溶液の規定度よりも小さい規定度の硫酸溶液を接触させ、吸着工程S41でキレート樹脂に吸着した鉄を除去することが好ましい。
また、必須の態様ではないが、得られたスカンジウム溶離液をキレート樹脂に再吸着させる処理を施すことが好ましい。
また、スカンジウム溶離工程S43によって得られたスカンジウム溶離液に対して、再びスカンジウム溶離工程S43における処理、すなわち、アルミニウム除去工程S42を経たキレート樹脂に対して、得られたスカンジウム溶離液を接触させる処理を行う。このように、スカンジウム溶離液を用いてスカンジウム溶離工程S43を繰り返し行うことで、スカンジウム溶離液の濃度を高めることができる。
次に、上述したイオン交換工程S4に続いて、溶解工程S5を設けて、スカンジウム溶離液に含まれるスカンジウムの沈殿物を生じさせて不純物と分離し、さらにこの沈殿物を硝酸溶液で溶解して、次工程の溶媒抽出に供する抽出始液を生成させる処理を行う。
スカンジウム溶離液に対する水酸化中和処理では、上述したイオン交換工程S4で得られたスカンジウム溶離液に対して中和剤を添加することによって中和処理を施し、スカンジウムの水酸化物沈殿と不純物成分を含む中和後液とを生成させる。
次に、本実施の形態においては、上述のように水酸化中和処理により得られた水酸化スカンジウムの沈殿物に対して硝酸溶液を添加することによってその沈殿物を溶解し、スカンジウムの硝酸溶解液を生成する。本実施の形態に係るスカンジウムの回収方法においては、このようにして得られたスカンジウム硝酸溶解液が次工程の溶媒抽出工程における溶媒抽出処理の処理対象(抽出始液)となる。
溶媒抽出工程S6では、上述した溶解工程S5にて水酸化スカンジウムを硝酸溶液で溶解して得られたスカンジウム硝酸溶解液を中性抽出剤に接触させて溶媒抽出処理を行い、不純物を抽出した有機溶媒とスカンジウムを含有する抽残液とを得る。この溶媒抽出工程S6における溶媒抽出処理により、スカンジウム以外の不純物を効率的に且つ効果的にスカンジウムと分離することができ、スカンジウムの純度を高めることができる。特に、本実施の形態においては、上述のようにして得られたスカンジウム硝酸溶解液を溶媒抽出処理の対象としているため、より効果的に不純物を抽出剤により抽出することができる。
抽出工程S61では、スカンジウム硝酸溶解液と中性抽出剤を含む有機溶媒とを混合して、スカンジウム以外の不純物元素を選択的に抽出する。この抽出工程S61における抽出処理により、不純物を含有する有機溶媒と、スカンジウムの純度を高めた抽残液とを得る。中性抽出剤としては、様々な種類が知られており特に限定されないが、リンを含む抽出剤、具体的にはTBP(トリ−n−ブチルホスフェート)等を用いることが好ましい。
上述した抽出工程S61において、不純物を抽出させた有機溶媒中にスカンジウムが僅かに共存する場合には、抽出液を逆抽出する前に、その有機溶媒(有機相)に対してスクラビング(洗浄)処理を施し、スカンジウムを水相に分離させて抽出剤から回収することが好ましい(スクラビング工程S62)。
逆抽出工程S63では、不純物元素を抽出した有機溶媒から不純物元素を逆抽出する。具体的に、この逆抽出工程S63では、抽出剤を含む有機溶媒に逆抽出溶液(逆抽出始液)を添加して混合することによって、抽出工程S61における抽出処理とは逆の反応を生じさせて不純物元素を逆抽出し、その不純物元素を含む逆抽出後液を得る。
次に、スカンジウム回収工程S7において、溶媒抽出工程S6により得られたスカンジウムを含有する抽残液からスカンジウムを回収する。このスカンジウム回収工程S7では、抽残液に含まれるスカンジウムの塩を生成させた後、その固体のスカンジウム塩を焙焼することによって酸化スカンジウムを生成させてスカンジウムを回収する。
スカンジウム沈殿工程S71は、溶媒抽出工程S6で得られた抽残液(抽出後液)にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウムの白色結晶の固体として析出、沈殿させて分離する工程である。
焙焼工程S8では、スカンジウム沈殿工程S7で得られたシュウ酸スカンジウムの沈殿物を水で洗浄し、乾燥して、焙焼することにより酸化スカンジウムを生成させる。このようにして焙焼処理を施すことで、極めて高品位な酸化スカンジウムとしてスカンジウムを回収することができる。
<浸出工程S1>
先ず、ニッケル酸化鉱を濃硫酸と共にオートクレーブに装入し、245℃の温度条件下で1時間かけてスカンジウムやニッケル等の有価金属を含有する浸出スラリーを生成させ、このスラリーから各種の有価金属を含有する浸出液と、浸出残渣とに固液分離した。
次に、分離して得られた浸出液に炭酸カルシウム(中和剤)を添加して中和処理を施した。この中和処理により、スカンジウムやニッケル等の有価金属を含有する中和後液と、アルミニウムをはじめとした不純物の大部分を含有する中和澱物とを得た。
次に、得られた中和後液に硫化水素ガス(硫化剤)を吹き込み、ニッケルやコバルト、亜鉛を硫化物とし、この硫化処理後の液である硫化後液と分離した。
(吸着工程S41)
続いて、分離して得られた硫化後液に中和剤として消石灰を添加して、溶液のpHを1.6に調整した。加えて、消石灰添加後の液には含まれていないか、あるいは含まれているとしてもその含有量がごく微量である元素の挙動を明らかにするため、一部の元素については試薬を添加して、下記表1に示す組成の吸着元液を得た。
次に、吸着処理後のキレート樹脂に、濃度0.1Nの硫酸溶液800リットルを(SVが40となる)毎分27リットルの流量で通液した。カラムから排出され残留したアルミニウムの多い洗浄液は、アルミ洗浄液として貯液し一部をサンプリングしてICPで分析した。その結果、分析値としては、Ni:7mg/l、Mg:1mg/l、Mn:4mg/l、Fe:1mg/l、Al:84mg/l、Sc:3mg/lであった。なお、Cr、Caの分析値は、測定可能な下限未満であった。
その後、キレート樹脂に、濃度1Nの硫酸溶液400リットルを(SVが40となる)毎分80リットルの流量で通液した。カラムから排出された溶離液は、スカンジウム溶離液として貯液し一部をサンプリングして分析した。下記表2にスカンジウム溶離液の分析結果を示す。なお、表中の「−」は、未分析又は測定可能な下限未満であったこと示す。
続いて、キレート樹脂に、濃度3Nの硫酸溶液80リットルを(SVが40となる)毎分2.6リットルの流量で通液した。カラムから排出された洗浄液は、クロム洗浄液として貯液し一部をサンプリングして分析した。その結果、分析値としては、Fe:2mg/l、Cr:30mg/lであった。なお、Ni、Mg、Mn、Al、Ca、Scの分析値は、測定可能な下限未満であった。
次に、表2に示す組成のスカンジウム溶離液に、水酸化ナトリウムを添加してpHを8〜9に維持し、スカンジウムの水酸化物沈殿を生成させた。この水酸化物沈殿に硝酸溶液を添加して溶解し、キレート溶離液水酸化物溶解液(スカンジウム硝酸溶解液)を得た。下記表3に溶解液の組成を分析した結果を示す。なお、表中の「−」は、未分析又は測定可能な下限未満であったこと示し、例えば、Mg、Cr、Mn、Caの分析値は測定可能な下限未満であった。
(抽出工程S61)
表3に示す組成のスカンジウム溶解液103リットルを抽出始液として溶媒出処理を行った。具体的には、その抽出始液と、中性抽出剤であるトリ−n−ブチルホスフェート(商品名:TBP、大八化学株式会社製)と有機溶剤であるテクリーンN20(JX日鉱日石株式会社製)とを用いて50体積%に調整した有機溶媒20.6リットルとを混合して室温で60分撹拌し、スカンジウムを除く不純物を含む抽出有機相と、抽出後液(抽残液)とを得た。なお、この抽出時には、クラッドが形成されることはなく、静置後の相分離も迅速に進行した。
次に、抽出工程S61で得られた20.6リットルの有機溶媒(抽出有機相)に対して、濃度3mol/lの硝酸溶液を、相比(O/A)が0.3の比率となる6.2リットルの量で混合し、10分間撹拌してスクラビング(洗浄)した。その後、静置して水相を分離し、有機相は再び濃度3mol/lの新たな硝酸溶液6.2リットルと混合して洗浄を繰り返し、同様にして水相を分離した。このような洗浄操作を合計3回繰り返した。
次に、洗浄後の抽出有機相に、純水を、相比O/A=1/0.3の比率となるように混合して20分撹拌し、静置して逆抽出後の有機相(有機溶媒)と逆水相(逆抽出後液)とに分離した。
(スカンジウム沈殿工程S71)
次に、上述した溶媒抽出工程S6で得られた抽出後液(抽残液)に対して、その抽残液中に含まれるスカンジウム量に対して計算量で2倍となるシュウ酸・2水和物(三菱ガス社製)の結晶を溶解し、60分撹拌混合してシュウ酸スカンジウムの白色結晶性沈殿を生成させた。
スカンジウム沈殿工程S71で得られたシュウ酸スカンジウムの沈殿物を吸引濾過し、純水を用いて洗浄した後、105℃で8時間乾燥させた。続いて、乾燥後のシュウ酸スカンジウムを管状炉に入れて850℃〜900℃に維持して焙焼(焼成)処理を施し、酸化スカンジウムを得た。
Claims (5)
- スカンジウムを含有するニッケル酸化鉱を高温高圧下で硫酸により浸出して浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程と、
前記浸出液に中和剤を加えて中和澱物と中和後液とを得る中和工程と、
前記中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程と、
前記硫化後液をキレート樹脂に接触させることで該硫化後液中のスカンジウムを該キレート樹脂に吸着させ、スカンジウム溶離液を得るイオン交換工程と、
前記スカンジウム溶離液にアルカリを添加して水酸化スカンジウムの沈殿物を得た後、該水酸化スカンジウムに硝酸溶液を添加して酸溶解することでスカンジウム硝酸溶解液を得る溶解工程と、
前記スカンジウム硝酸溶解液を中性抽出剤に接触させてスカンジウム以外の不純物元素を抽出分離し、スカンジウムを含有する抽残液を得る溶媒抽出工程と、
前記抽残液に含まれるスカンジウムの塩を生成させ、該スカンジウム塩を焙焼して酸化スカンジウムを得るスカンジウム回収工程と
を有するスカンジウムの回収方法。 - 前記キレート樹脂は、イミノジ酢酸を官能基とする樹脂であり、
前記イオン交換工程は、
前記硫化後液を前記キレート樹脂に接触させて前記スカンジウムを前記キレート樹脂に吸着させる吸着工程と、
前記吸着工程でスカンジウムを吸着したキレート樹脂に0.1N以下の硫酸溶液を接触させて前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去するアルミニウム除去工程と、
前記アルミニウム除去工程を経たキレート樹脂に0.3N以上3N未満の硫酸溶液を接触させて前記スカンジウム溶離液を得るスカンジウム溶離工程と、
前記スカンジウム溶離工程を経たキレート樹脂に3N以上の硫酸溶液を接触させて前記吸着工程で前記キレート樹脂に吸着したクロムを除去するクロム除去工程と
を含む請求項1に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記溶媒抽出工程は、
前記スカンジウム硝酸溶解液と前記中性抽出剤を含む有機溶媒とを混合し、スカンジウム以外の不純物元素を抽出した抽出後有機溶媒と抽残液とに分離する抽出工程と、
前記抽出後有機溶媒に1mol/l以上5mol/l以下の濃度の硝酸溶液を混合し、該抽出後有機溶媒からスカンジウムを回収し洗浄後有機溶媒を得るスクラビング工程と、
前記洗浄後有機溶媒に逆抽出剤を添加し、該洗浄後有機溶媒から不純物元素を逆抽出して逆抽出液を得る逆抽出工程と
を含む請求項1又は2に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記スカンジウム回収工程は、
前記溶媒抽出工程で得られた前記抽残液にシュウ酸を添加してシュウ酸スカンジウムの結晶を得る工程と、
前記シュウ酸スカンジウムの結晶を焼成する工程と
を含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のスカンジウムの回収方法。 - 前記スカンジウム回収工程は、
前記溶媒抽出工程で得られた前記抽残液に5.0mol/l以上8.0mol/l以下の濃度の水酸化ナトリウムを添加して、水酸化スカンジウムの沈殿物を得る工程と、
得られた水酸化スカンジウムの沈殿物を硫酸又は塩酸で溶解し、溶解して得られた溶解液にシュウ酸を添加してシュウ酸スカンジウムの結晶を得る工程と、
前記シュウ酸スカンジウムの結晶を焼成する工程と
を含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のスカンジウムの回収方法。
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