JP3440752B2 - コバルトを含む硫酸ニッケルの精製方法 - Google Patents
コバルトを含む硫酸ニッケルの精製方法Info
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Description
酸ニッケルの精製方法に関するものであり、さらに詳細
にはコバルトを多く含む粗硫酸ニッケル溶液中からその
うちに含まれるアンモニア、ナトリウム、コバルト、
鉄、銅、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどの不純物
を除去して高純度の精製硫酸ニッケル溶液を得るととも
にコバルトを回収する方法に関するものである。
般電解めっきのほか、コンピュータのハードデスク用ニ
ッケル無電解めっきなどに硫酸ニッケルが広く用いられ
ており、さらに最近では、二次電池用ニッケルにも原料
として硫酸ニッケルが多用されるようになってきてい
る。
硫酸ニッケル不純物として含まれるアンモニア、ナトリ
ウム、コバルト、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシ
ウムなどの含有を極力抑えなければならない場合が多
い。従来、粗硫酸ニッケルの精製は溶媒抽出法によって
行われており、一般には酸性抽出剤として、例えば有機
リン酸系の酸性抽出剤、すなわち酸性ホスホン酸エステ
ルや酸性ホスフィン酸エステルなどを使用し、該有機抽
出剤中に粗硫酸ニッケル溶液中の不純物を抽出分離して
精製する方法、または該抽出剤中にニッケルを抽出し、
ニッケルを含む有機相から硫酸逆抽出法により精製硫酸
ニッケル溶液を得る方法が採られているが、いずれの方
法を採用するにしても、酸性抽出剤を使用するときは、
原料溶液中の不純物またはニッケルを抽出するときに水
素イオンを放出するために、中和剤とし水酸化ナトリウ
ムやアンモニアの使用が必要となる。
酸性抽出剤中に抽出する方法を採る場合には、抽出時の
pHを調節することにより通常ニッケルよりも低pH側
で抽出されるコバルト、カルシウム、鉄、亜鉛、銅など
を抽出剤中に抽出することによって、これらの不純物を
該抽出剤中に分離除去し、精製硫酸ニッケル溶液を得る
ことができるが、その抽出反応を行う際に必要な中和剤
中のNa+、NH4 +イオンが精製された硫酸ニッケル
水溶液中に混入し、これが精製硫酸ニッケル溶液を汚染
するので問題であった。
粗硫酸ニッケル溶液から、そのニッケル分のみを酸性抽
出剤中に抽出しようとすれば、ニッケルよりも低いpH
側で抽出される不純物元素も同時に抽出剤中に抽出され
てしまう。さらにニッケルの抽出と同時に一部のナトリ
ウム、アンモニアの抽出が起こることも避けられない
し、またさらに上記したように抽出pHの調整のため中
和剤の使用が避けられないので抽出完了後の有機相中に
はすべてのが混入を許すことになり、通常抽出後の有機
相中のニッケルを回収するために行われる硫酸を用いた
逆抽出操作を行うのみでは、これらの不純物元素の全部
を分離させることは困難である。
機剤を強力に洗浄することによって分離し、その他の不
純物群は、硫酸逆抽出によって得られた硫酸ニッケル
を、異なる種類の抽出剤を使用して、それぞれを抽出分
離する再精製処理を繰り返し施さなければならなかっ
た。したがって、このような従来法においては、ニッケ
ル含有抽出有機剤の洗浄のために多量の洗浄水を必要と
するばかりでなく排水処理とこれに伴うニッケル損失が
考えられるし、さらにコバルトなどの他の不純物を除去
するために、異なる溶媒抽出設備を持つ必要があるな
ど、経済的著しく不利であった。また精製すべき粗硫酸
ニッケル溶液中に比較的多量にコバルトを含む場合に
は、精製後の有機相中に残存するコバルトは高価な有価
物であるので、これを効率的に回収することができれば
経済的に有利である。
多く含む粗硫酸ニッケル溶液から精製硫酸ニッケルを得
る場合に、溶媒抽出法による中和剤の使用量をや排水処
理費を削減しながら、原料粗硫酸ニッケル溶液に含まれ
るコバルト、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、
銅、ナトリウム、アンモニアなどの不純物を除去し高純
度に精製された硫酸ニッケル溶液を得るとともに、コバ
ルトを効果的に回収する方法を提供することを目的とす
るものである。
めの本発明は、酸性有機抽出剤によりナトリウム、アン
モニアを多く含む粗硫酸ニッケル溶液からニッケルを抽
出してニッケル保持有機相を得る抽出工程と、該抽出工
程で得られたニッケル保持有機相をニッケル含有洗浄液
で洗浄する工程と、該洗浄工程で得られた洗浄後のニッ
ケル保持有機相をコバルトを多く含む硫酸ニッケル水溶
液と反応させ、前記ニッケル保持有機相中のニッケルと
前記粗硫酸ニッケル水溶液中のコバルトなどの不純物と
を置換させる工程とよりなり、該置換により精製硫酸ニ
ッケル溶液を得るとともにコバルトの濃縮した有機相を
得る硫酸ニッケルの精製方法を特徴とするものである。
ルトなどの不純物を含む有機相は、希硫酸によりニッケ
ルを選択的に逆抽出するニッケル選択逆抽出工程に送
り、該選択逆抽出工程で得られた硫酸ニッケル溶液を置
換工程において使用される不純物を含む硫酸ニッケル溶
液の一部として供給することが好ましい。また前記選択
抽出工程で得られたコバルトその他の不純物を含む有機
相は、塩酸によりコバルトを逆抽出するコバルト回収工
程に送り、前記有機相中のコバルトを塩酸コバルトとし
て回収することができる。
純物を有する有機相は洗浄後、硫酸を用いてコバルト以
外の不純物を硫酸中に逆抽出する不純物逆抽出工程に送
って前記抽出有機相中の前記不純物を硫酸中に除去し、
前記不純物逆抽出工程で得られた不純物を含まない有機
相の一部を抽出工程に還流し、該抽出工程における酸性
有機抽出剤として繰り返し使用することが好ましい。ま
た、前記不純物逆抽出工程で得られた不純物を含まない
抽出有機相の残部は、洗浄工程で得られたニッケル保持
有機相を希釈するために使用することができる。
機抽出剤によりナトリウム、アンモニアなどのニッケル
よりも高いpHで抽出される不純物を多く含む粗硫酸ニ
ッケル水溶液からニッケルを抽出してニッケル保持有機
相を得る抽出工程と、該抽出工程で得られたニッケル保
持有機相をニッケルを含む洗浄液で洗浄する工程と、該
洗浄工程で得られた洗浄後のニッケル保持有機相とその
一部を酸性有機抽出剤により希釈した希釈有機相とをコ
バルトを多く含む粗硫酸ニッケル水溶液と反応させて、
該粗硫酸ニッケル水溶液中の不純物と前記抽出有機相中
のニッケルとを置換する置換工程とからなることを特徴
とするコバルトを含む粗硫酸ニッケルの精製方法であ
る。
て説明する。前述したように鉄、亜鉛、銅、コバルト、
ナトリウム、アンモニアなどを含む硫酸ニッケル溶液か
ら酸性有機抽出剤を用いて不純物またはニッケルを溶媒
抽出する場合には、いずれの場合においても中和剤とし
て一般に水酸化ナトリウム、アンモニアなどが使用され
るので、これらが精製される硫酸ニッケル溶液中に混入
することになり好ましくない。ところで、溶媒抽出の出
発原料となる粗硫酸ニッケル溶液には、その製造履歴に
よって、ナトリウム、アンモニアなど酸性抽出剤によっ
て溶媒抽出を行う際に、ニッケルよりも高いpHで抽出
される不純物を多く含むものと、コバルト、鉄、銅、亜
鉛、カルシウム、マグネシウムなどのニッケルよりも低
いpHで抽出される不純物を多く含むものとがある。本
発明は、粗硫酸ニッケル溶液に含まれる不純物の前記抽
出特性を利用して、溶媒抽出法と置換法を原料によって
使い分けることにより粗硫酸ニッケル溶液からの不純物
の除去と、前記粗硫酸ニッケル溶液中に含まれる有価
物、特にコバルトの回収を効率的に行うことにより総合
的に経済的に有利に精製硫酸ニッケルを得る方法を確立
したものである。
程において、酸性有機抽出剤を用いてナトリウム、アン
モニアなどのニッケルよりも高いpHで抽出される不純
物を多く含む粗硫酸ニッケル溶液中のニッケルを溶媒抽
出法により有機抽出剤中に抽出してナトリウム、アンモ
ニアなどの少ないニッケル保持有機相を調製し、このニ
ッケル保持有機相とコバルトなどのニッケルよりも低い
pHで抽出される不純物を多くふくむ粗硫酸ニッケル溶
液とを反応させて、前記ニッケル保持有機相中のニッケ
ル分と粗硫酸ニッケル溶液中のコバルトなどの不純物と
を置換させ、該粗硫酸ニッケル溶液中のこれら不純物の
大部分を有機相に移行させることにより、粗硫酸ニッケ
ル溶液中から不純物を分離除去するようにしたものであ
る。
使用を必要とする酸性抽出剤によるニッケルの抽出工程
は、次の置換工程でその中に含まれるニッケルと粗硫酸
ニッケル溶液中の不純物とを置換させるためニッケルを
有機相に含ませたニッケル保持有機剤の調製のために行
われるのであり、したがって単に粗硫酸ニッケル溶液か
ら溶媒抽出法のみによりニッケルの抽出を行う従来の粗
硫酸ニッケル溶液の精製法と異なり、中和剤の使用量や
その後に行われる廃液処理費を大幅に軽減することがで
き、かつ置換工程では中和剤を使用することがないの
で、置換工程から得られる精製硫酸ニッケル溶液中に
は、少なくとも中和剤の使用によるナトリウム、アンモ
ニウムの混入を避けることができる。その上、本発明に
よるときは、置換工程を行うことにより、不純物中のコ
バルトを多く含む粗硫酸ニッケル溶液から、含まれるコ
バルトを置換工程で得られた有機相中に濃縮することが
でき、その後に行われるコバルト回収工程で効率的なコ
バルト回収を行うことができるので粗硫酸ニッケル溶液
の精製における総合的な経済効果を高めることができ
る。
概略工程図を示したものである。以下、図1に従って本
発明を工程順に説明する。抽出工程は、酸性有機抽出剤
により溶媒抽出法で粗硫酸ニッケル溶液中のニッケルを
抽出し、ニッケル保持有機相を調製する工程である。し
たがってニッケル源としては、硫酸ニッケル溶液のほ
か、塩化ニッケル溶液、硝酸ニッケル溶液などを使用す
ることも可能であるが、本発明の目的およびその入手性
から粗硫酸ニッケル溶液を使用するのが妥当である。ニ
ッケルの抽出には、従来この種の溶媒抽出法において使
用される一般的な多段向流溶媒抽出槽、例えば向流多段
ミキサーセトラーなどが用いられ、その最上段に酸性有
機抽出剤を供給し、最下段に原料粗硫酸ニッケル溶液を
供給して向流で抽出反応を行わせる。酸性有機抽出剤と
しては、抽出剤としては、例えばCyanex 27
2、D2EHPA、PC−88Aなどの有機リン酸系の
酸性有機抽出剤を使用すればよい。
液に可及的に残さないためには、抽出反応時のpHを従
来行われているニッケル抽出pHの5.5〜6.5より
も高い6.5〜7.0のpH範囲で行わせることが望ま
しい。また、抽出後のニッケル保持抽出有機相における
ニッケル濃度をできるだけ高く保持することが望まし
い。これは、高pHでの抽出により、ナトリウム、アン
モニアなどの同時抽出が起こり易くなるが、有機相中の
ニッケル濃度を高くし、酸性有機抽出剤が元来保有する
ニッケル保持化学量論量を超える量とするときは、ニッ
ケルと同時に抽出有機相中に抽出されるナトリウム、ア
ンモニウムの量を抑制することができるという本発明者
らの新しい知見によるものである。したがって抽出工程
に供給する酸性有機抽出剤の供給量は、必要最小限にと
どめる必要がある。なお、このニッケル保持有機相中に
は粗硫酸ニッケル溶液中に含まれるコバルト、鉄、銅、
亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどのニッケルよりも
低pHで有機相中に抽出される不純物の大部分が同時抽
出され含まれている。
洗浄工程に送られる。洗浄工程では該ニッケル保持有機
相はニッケル含有溶液で洗浄される。洗浄液としてニッ
ケル含有溶液を用いるのは、洗浄液中のニッケルと有機
剤中のナトリウム、アンモニウムの置換反応が行われ、
ニッケル保持有機剤からのナトリウム、アンモニウムの
除去が促進されるので、ニッケルを含まない通常の洗浄
水を使用するよりも効率的なナトリウム、アンモニアの
除去を行うことができるからである。一般的には洗浄工
程に供給する洗浄液はニッケル分がNi10〜20g/
リットルになるように硫酸ニッケル溶液を水で希釈した
ものを用いるが、溶液中のナトリウム、アンモニア濃度
によってその希釈倍率の調整を行えばよい。この洗浄工
程で排出される洗浄廃液は、そのまま抽出槽に還流させ
ることができるので特別な廃液処理を施さなくてよい。
工程に送られる。該置換工程では、少なくとも3段の反
応槽を備えた多段連続向流反応槽、例えば多段向流ミキ
サーセトラーなどが使用される。置換反応に3段向流ミ
キサーセトラーを使用し、その最上段、すなわち1段目
のミキサーセトラーにニッケル保持有機相を供給し、最
下段、すなわち3段目のミキサーセトラーに精製しよう
とするコバルトを主体とした不純物を含む粗硫酸ニッケ
ル溶液を供給して両者を向流的に反応させる。このよう
にすると該粗硫酸ニッケル溶液中のコバルト、鉄、亜
鉛、銅、カルシウム、マグネシウムなどの不純物とニッ
ケル保持有機相中のニッケルが置換反応によって交換さ
れ、該有機相中のニッケルは水相中に、また粗硫酸ニッ
ケル溶液中のコバルトなどの不純物は有機剤相中へとそ
れぞれ移行し、高純度に精製された精製硫酸ニッケル溶
液を得ることができる。
その中に含まれる不純物濃度が過度に高いと、水相中の
不純物濃度が低くなったときに不純物の水相からのニッ
ケル保持有機相への移行率が低下するので、該ニッケル
保持有機相中の不純物濃度を下げておくことが必要であ
る。このため該ニッケル保持抽出有機相の一部を、同種
の有機相組成をもつ新しい酸性有機抽出剤、または置換
工程で得られた不純物を含む有機相から逆抽出により不
純物を取り除いた後の有機相で希釈して置換反応に預か
るニッケル保持有機剤中の不純物濃度を調整することが
好ましい。また、この種の酸性有機抽出剤を使用した反
応系においては、工程中の有機相におけるコバルト濃度
が11g/リットルを超えると有機相の粘性が急激に大
きくなり、有機相と水相の分離性が低下し、置換反応を
進めることが困難となることが本発明者らの行った実験
により確認されている。したがって置換工程に供給する
ニッケル保持有機相の希釈操作を行うことは、有機相中
へのコバルト濃度が最も高くなる置換反応の最終段階で
の有機相中のコバルト濃度が11g/リットルを超えな
いようにする意味からも重要なことである。
はpH4〜5の範囲で行うのが適切である。この場合に
は、先の抽出工程での抽出反応とは異なり抽出剤からの
水素イオンの放出がないので中和剤を使用してpHの調
節を行わずに常に適正なpHを維持することができる。
したがってこの場合においては、通常の酸性抽出剤を使
用した溶媒抽出による抽出工程と異なり抽出剤からの水
素イオンの放出がないので、中和剤を使用しなくても通
常そのpHは4〜6の範囲に保たれるので、中和剤の使
用による精製硫酸ニッケル溶液中へのナトリウム、アン
モニウムの混入を避けることができる。
を行うことにより硫酸ニッケル結晶として回収されるの
で、置換工程で得られた精製硫酸ニッケル溶液中のニッ
ケル濃度は可及的に高く維持されることが望ましい。ま
た不純物を含む粗硫酸ニッケル溶液をニッケル保持有機
相と置換反応させるとき、該ニッケル保持有機相中のニ
ッケル量は置換すべき不純物当量よりもある程度高くな
ければ該ニッケル保持有機相中のニッケルの水相、つま
り硫酸ニッケル溶液への置換による移行が困難になり、
不純物との置換反応の進行が妨げられる。したがってニ
ッケル保持有機相中のニッケル濃度は置換反応後に得ら
れる有機相中にある程度の量のニッケルが残留する程度
の過剰量にすることが望ましい。本発明者らの実験によ
れば、置換工程に供給するニッケル保持有機相中のニッ
ケル濃度を供給粗硫酸ニッケル溶液中に存在する置換す
べき不純物量の1.3当量以上とした場合に、置換反応
後に排出される有機相中に残留するニッケル量は3g/
リットル程度となり、このとき置換反応は円滑に行われ
ること、ニッケル量が1.3当量以下になると、置換反
応でのpHが4以下となり、置換反応が進行しなくなる
ことが確認された。なお、ここでいう置換すべき不純物
量とは、粗硫酸ニッケル溶液中に含まれ、溶媒抽出を酸
性有機抽出剤で行うに際してニッケルよりも低いpHで
抽出されるような不純物、例えばコバルト、鉄、亜鉛、
銅、コバルト、カルシウム、マグネシウムなどの不純物
の総量をいう。
は、そのままで、または濃縮して硫酸ニッケル結晶とし
て製品とすることができる。また不純物を含む有機相
は、順次ニッケル逆抽出工程、コバルト回収工程、回収
後洗浄工程、最終逆抽出工程などの一連の回収工程に送
り、有機相中に含まれる残留ニッケル分の回収、ニッケ
ル以外の重要な回収有価物として評価されるコバルトを
回収およびコバルト以外の不純物の除去を行うことによ
って有機相の清浄化を行い、この有機相を再びニッケル
抽出工程で粗硫酸ニッケル溶液からニッケル保持有機相
を調製するための酸性有機抽出剤および置換工程に送ら
れる洗浄後のニッケル保持有機相の希釈剤として使用に
供することができるので経済的である。
pHを4.0付近で反応させることにより、有機相中の
残留ニッケルの大部分は選択的に硫酸中に抽出される。
ニッケル逆抽出工程で得られ水相は硫酸ニッケル主体の
溶液であるから、そのまま置換工程へ還流使用すること
ができる。
ルト回収工程に送られ、ここでニッケル以外の回収有価
物として評価されるコバルトを塩酸を使用してpHを
1.4〜2.0の範囲に調整することで塩酸中に逆抽出
し、塩化コバルト溶液として回収することができる。な
お、この塩化コバルト溶液中には、カルシウム、マグネ
シウム、銅、亜鉛などが同時に逆抽出されて含まれるの
でさらなる精製が必要である。コバルト回収後の有機相
は、希硫酸による洗浄を行った後、最終逆抽出工程に送
られ、ここで3〜6Nの硫酸を使用して有機相中に残存
する鉄、亜鉛などの不純物を除去する。このようにして
一連の回収工程を経ることにより有機相は、浄化され、
清浄な酸性有機抽出剤として再生させることができる。
トリウム、アンモニウムを含む粗硫酸ニッケル溶液を
6.5〜7.0の高pHでの酸性有機抽出剤よるニッケ
ルの抽出を行い、その際に該酸性有機抽出剤の保有する
ニッケル保持化学量論量以上の量のニッケルを有機相中
に保持させることにより、該有機相への該粗硫酸ニッケ
ル溶液中のナトリウム、アンモニウムの同時抽出を抑制
するようにしてニッケル保持有機相の調製を行い、しか
る後該ニッケル保持有機相とコバルトを多く含む粗硫酸
ニッケル溶液とを反応させることによって、ニッケル保
持有機相中のニッケルと粗硫酸ニッケル溶液中に含まれ
るコバルト、鉄、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム
などの不純物とを置換させて該粗硫酸ニッケル溶液の精
製を行うものであり、これにより、中和剤の使用量や廃
液処理費を削減しつつ高純度の精製硫酸ニッケル溶液を
得ることができる上に、粗硫酸ニッケル溶液中に含まれ
るコバルトを該置換工程により得られる有機相中に濃縮
して得ることができるので、その後行われるコバルト回
収工程において効果的なコバルト回収を行うことがで
き、経済的に極めて有利である。
抽出工程でのニッケルの抽出条件と洗浄工程におけるナ
トリウムとアンモニウムの除去効果の関係について検証
するための実験を行った。実験には、酸性有機抽出剤と
してPC−88A(大八化学社製)をクリーンソルG
(日本石油社製)で20%(V/V)に希釈たものを用
い、抽出実験ではミキサー部の有効容積が1.72リッ
トル、セトラー部の容積が10.3リットルのミキサー
セトラーを2連用いた連続向流2段のミキサーセトラー
を用い、1段目のミキサーセトラーに酸性有機抽出剤
を、2段目のミキサーセトラーにナトリウムを含む硫酸
ニッケル溶液を導入して、該酸性有機抽出剤を用いて該
硫酸ニッケル溶液からニッケルを向流抽出した。
7.0とし、pH調整のための中和剤としては、200
g/リットルの苛性ソーダを使用した。また抽出反応の
温度は40℃とし、各ミキサーセトラーを同温度の温水
中に保持することにより温度を一定に保持した。また本
抽出実験では2段目のミキサーセトラーに導入するナト
リウムを含む硫酸ニッケル溶液のニッケル濃度を9.3
〜34.6g/リットルの範囲で変化させたが、ナトリ
ウムの濃度は0.53g/リットルと一定にした。ま
た、該硫酸ニッケル溶液の流量は、洗浄後に得られる抽
出有機ニッケル濃度を変えるために、7.3リットル/
hrから10.0リットル/hrまで変化させた。これ
らの操作の結果、抽出実験において供給されるナトリウ
ムを含む硫酸ニッケル溶液により抽出工程に供給される
ナトリウムの量は3.9〜5.4g/hrとなった。
して抽出実験と同仕様のミキサーセトラーを3連用いた
連続向流3段のミキサーセトラーを使用し、抽出実験で
得られたニッケル保持有機相を1段目のミキサーセトラ
ーに導入し、ニッケル含有洗浄液を3段目のミキサーセ
トラーに導入して該ニッケル保持有機相を洗浄した。表
1に抽出工程で得られたニッケル保持有機相のニッケル
濃度、抽出工程から洗浄工程に供給されるニッケル保持
有機相の流量、洗浄工程に導入される洗浄液の流量およ
びニッケル濃度、洗浄工程に供給される総ニッケル量、
洗浄後の抽出残液中のニッケル濃度、該残液の流量およ
び抽出時のpHについての測定結果を示した。また、表
2に洗浄実験後のニッケル保持有機相のニッケルおよび
ナトリウム濃度、洗浄比(有機相の流量/洗浄液の流
量)、洗浄液のNa/Ni分配比および供給洗浄廃液の
Na/Ni分配比ならびにナトリウムの除去率について
測定結果を示した。
から分かるように抽出反応時のpHを7付近にするとき
は、硫酸ニッケル溶液中び含まれるニッケルの大部分を
抽出することができ、その抽出率は99.5%以上の高
い値となる。また表2の結果から、ナトリウムの除去に
関していえば、洗浄工程に供給されるニッケル保持有機
相中に保持されるニッケル濃度を高くするほど、効率的
なナトリウム除去を行い得ることが分かる。すなわちニ
ッケル保持有機相中のニッケル濃度が20g/リットル
付近より高い値では、ナトリウムの除去率はほぼ90%
以上となるのに対し、15g/リットル付近よりも低く
なると洗浄液量を増加させて洗浄比を高くしても、ニッ
ケル量を増加させてNa/Ni分配比を高くして有機相
中のナトリウムと洗浄液中のニッケルとの置換反応を促
進させても、ナトリウム除去率の向上は期待できない。
これは、抽出反応のpHが7付近であるときは、抽出有
機相中のニッケル保持濃度を高くするほど抽出時に原料
粗硫酸ニッケル溶液から抽出有機相に同時抽出されるナ
トリウム量が抑制されることと関係がある。
C−88A酸性有機抽出剤のニッケル抽出の化学量論量
は18.3g/リットルである。すなわち本実験から酸
性有機抽出剤の保有する化学量論量以上の量のニッケル
を有機相に場合には、ナトリウムの抽出有機相への同時
抽出が抑制され、ニッケルを含む洗浄剤を使用すること
による洗浄剤中のニッケルと抽出有機相中に微量に存在
するナトリムとの置換効果と相俟って抽出有機相におけ
るナトリウム除去効率を一段と高めることができたもの
と推定される。
機相中のニッケル量と精製すべき粗硫酸ニッケル溶液中
の不純物の除去効率について検証する実験を行った。置
換実験では、置換反応槽として実施例1と同仕様のミキ
サーセトラーを4連用いた連続向流4段のミキサーセト
ラーを使用し、実施例1で得られたニッケル保持有機相
を希釈用の有機相とともに1段目のミキサーセトラーに
導入し、精製すべき粗硫酸ニッケル溶液として、ニッケ
ルよりも低pHで酸性有機抽出剤により抽出される不純
物、特にコバルトを多く含む粗硫酸ニッケル溶液を4段
目のミキサーセトラーに導入して、それぞれを向流的に
反応させた。
供給するニッケル保持有機相の流量を希釈用有機相を含
めて10.8リットル/hrから18.8リットル/h
rまで変化させた。また4段目のミキサーセトラーに供
給する精製のための粗硫酸ニッケル溶液の流量を10.
7リットル/hrから18.6リットル/hrに変化さ
せた。供給粗硫酸ニッケル溶液の濃度は便宜上100g
/リットルに調整したが、有機相、水相とも種々の平衡
状態を検討するために、そのニッケルおよび不純物濃度
を変化させた。表3に置換反応実験によって得られた有
機相および精製硫酸ニッケル溶液の組成を示す。なお、
置換反応では、抽出有機相からの水素イオンの放出は起
こらず、そのpHは特に調整を行わなくても4.0〜
5.0の範囲を常時維持し安定であった。
不純物は有機相中に移行し、不純物含有量の少ない精製
硫酸ニッケル溶液を得ることができることが分かった。
また、不純物のうちコバルトの置換率は著しく大きい
が、精製硫酸ニッケル溶液中でのコバルト濃度を10m
g/リットル以下にするためには、有機相中のニッケル
濃度が少なくとも3g/リットルになるように調整する
必要があることが分かった。表4に、置換工程により得
られた精製硫酸ニッケル溶液中のコバルト濃度を基準と
して、置換すべき不純物の総量に対して必要なニッケル
量を置換後の有機相のニッケル濃度から推定した結果を
示す。この結果から、粗硫酸ニッケル溶液中の不純物を
効果的に置換するためのニッケル保持有機相中の必要ニ
ッケル当量は1.3モル以上であると判断される。
去を行うためには、ニッケル保持有機相中のニッケル量
の管理以外に、水相と有機相の相分離性の管理が必要で
ある。有機相中のコバルト濃度が過度に高くなると有機
相の粘性が大きくなり相分離性が低くなることが知られ
ているので、本実施例では相分離性に及ぼす有機相中の
コバルト濃度の影響について実験を行った。実験には実
施例1に用いた酸性有機抽出剤を用いてコバルト濃度を
変化させた有機相を調製し、これと実施例2により得ら
れた精製硫酸ニッケル溶液を1:1の割合で混合したも
のを400ミリリットルを回転数1200rpmの回転
撹拌機付き容器び装入し、35℃で20分間撹拌した
後、静置して有機相と水相の相分離時間を測定した。こ
の結果を表5に示す。表5の結果から、有機相中のコバ
ルト濃度が11g/リットルになるまでは比較的短時間
で順調に相分離を行うことができるが、これを超えると
急激に相分離時間が増大し、効率的な置換反応を行うこ
とができなくなることが分かった。
ニッケル溶液の精製およびコバルトの回収を含めた総合
的な連続精製試験を行った。抽出、洗浄、置換の各工程
においては、それぞれこれまでの実施例に使用したミキ
サーセトラーと同仕様、同段数の多段向流連続ミキサー
セトラーを用い、それぞれの温度条件も同様にし、同様
の手順で粗硫酸ニッケル溶液の精製を行った。表6に各
工程で使用した多段向流ミキサーセトラーの段数、各工
程における反応時のpHおよび各工程においてpH調整
のために使用された薬品(但し、抽出工程では中和剤の
濃度)について示した。また表7には、各工程における
有機相、水相の液組成を流量とともに示した。
付近とし、20%PC−88A酸性有機抽出剤を用い
て、粗硫酸ニッケル溶液中のニッケルを1.13当量で
抽出保持させた。洗浄後のニッケル保持有機相は、その
一部をし最終逆抽出工程から得られた清浄化有機相で希
釈し、その中に含まれるコバルト濃度を30mg/リッ
トルに調整して、置換工程における1段目のミキサーセ
トラーに流量10リットル/hrで導入し、残部の洗浄
後ニッケル保持有機相は3段目のミキサーに導入した。
ラーから得られた有機相中のニッケルと不純物濃度から
計算すると、置換工程に供給されたニッケル量は、置換
工程で除去される不純物量の1.3当量以上であること
が分かる。置換反応での反応後4段目のミキサーセトラ
ーから精製硫酸ニッケル溶液が得られる。本発明による
不純物精製度を表すために、表8に得られた精製硫酸ニ
ッケル溶液中と精製前の粗硫酸ニッケル溶液中とにおけ
る各不純物のNiに対する比率を示した。
回収するために行われるニッケル選択逆抽出工程は、3
段向流ミキサーセトラーを用いて行った。逆抽出液とし
て蒸留水を硫酸でpHを4.0付近に調整した3N硫酸
を用い、有機相中に残留するニッケル分を硫酸ニッケル
として逆抽出液中に抽出することができた。このニッケ
ル選択逆抽出工程で重要なことは、ニッケル回収後の有
機相にニッケルを残さずに十分に回収し、殆どニッケル
を含まない有機相として次のコバルト回収工程に送るこ
とである。これは、次のコバルト回収工程でコバルトを
塩化コバルトとして回収するに際し、回収液中にニッケ
ルが混入すると得られた塩化コバルトをさらに電解精製
してコバルト採集を行う場合に妨げになるからである。
表7によれば、本発明によるニッケル選択逆抽出工程で
得られた有機相中のNi/Coは0.001程度になっ
ており、十分に満足し得る結果が得られていることが分
かる。。ニッケル選択逆抽出によって得られた硫酸ニッ
ケル溶液は、同時に抽出される若干量のの不純物が含ま
れるので精製のために置換工程に還流させる。
バルト回収工程に送り、該工程で有機相中に含まれるコ
バルトの分離回収を行った。該工程ではニッケル回収後
の有機相を逆抽出液と反応させ、6N塩酸でpHを1.
4〜2.0に調整し、有機相中のコバルトを45g/リ
ットル程度の濃度の塩化コバルト液としてその大部分を
回収することができた。本工程においてコバルトを塩化
コバルトとして回収したのは、塩化コバルトの電解精製
を想定したことによるもので、硝酸を用いて硝酸コバル
トとして回収してもよい。なお、塩化コバルトとして回
収する場合には、100g/リットルの濃度まで濃縮す
ることができるので、その後のコバルト精製工程を経済
的に行うことができる。
浄工程で蒸留水と硫酸により洗浄するが、これは有機相
に含まれる塩素イオンを除去するために行われるもので
ある。このときに有機相中に残留する少量のコバルトや
カルシウムの一部が、洗浄液中に逆抽出されるが、中和
などの操作を行うことにより、コバルトをカルシウムと
分離して回収することも可能である。さらに最終逆抽出
工程として洗浄後の有機相を3Nの硫酸と反応させて、
銅、亜鉛および残留するコバルト、カルシウムの逆抽出
を行い、これらの元素を有機相から分離除去することが
できた。有機相中に鉄が含まれるときは同様にして有機
相から分離除去することができることは勿論である。な
お、この逆抽出液からコバルトを塩素酸化することで水
酸化コバルトとして回収することも可能である。また最
終逆抽出工程で得られた不純物の浄化された有機相は、
初めの抽出工程に還流させて、粗硫酸ニッケル溶液の抽
出に用いる酸性有機抽出剤として使用することができ
る。
は、有機酸性溶媒抽出法と置換法とを併用することによ
り、従来溶媒抽出法のみの適用では、困難であったナト
リウムおよびアンモニアの混入のないな精製硫酸ニッケ
ル溶液を中和剤の使用量や廃液処理費を節減しながら容
易に得ることができ、かつコバルト含有量の多い粗硫酸
ニッケル溶液から効果的にコバルトを回収することがで
きるので経済的に極めて有効である。
ト回収工程の概略を示す図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 酸性有機抽出剤によりナトリウム、アン
モニアを多く含む粗硫酸ニッケル溶液からニッケルを抽
出してニッケル保持有機相を得る抽出工程と、該抽出工
程で得られたニッケル保持有機相をニッケル含有洗浄液
で洗浄する工程と、該洗浄工程で得られた洗浄後のニッ
ケル保持有機相をコバルトを多く含む硫酸ニッケル水溶
液と反応させ、該ニッケル保持有機相中のニッケルと前
記粗硫酸ニッケル水溶液中のコバルトなどの不純物とを
置換させる工程とよりなり、該置換により精製硫酸ニッ
ケル溶液を得るとともにコバルトの濃縮した有機相を得
ることを特徴とする硫酸ニッケルの精製方法。 - 【請求項2】 前記抽出工程で得られるニッケル保持有
機相のニッケル含有量を、酸性有機剤の保有するニッケ
ル保持化学量論量よりも多くすることを特徴とする請求
項1記載の硫酸ニッケルの精製方法。 - 【請求項3】 前記置換工程で得られた不純物を含む抽
出有機相を、希硫酸によりニッケルを選択的に逆抽出す
るニッケル選択逆抽出工程に送り、該ニッケル選択逆抽
出工程で得られた硫酸ニッケル溶液を前記置換工程にお
いて使用する不純物を含む硫酸ニッケル溶液として還流
させることを特徴とする請求項1記載の硫酸ニッケルの
精製方法。 - 【請求項4】 前記ニッケル選択抽出工程で得られた有
機相を塩酸によりコバルトを逆抽出するコバルト回収工
程に送り、該工程でコバルトを塩酸コバルトとして回収
することを特徴とする請求項3記載の硫酸ニッケルの精
製方法。 - 【請求項5】 コバルト回収後のコバルト以外の不純物
を含む有機相を洗浄後、硫酸を用いてコバルト以外の不
純物を硫酸中に逆抽出する不純物逆抽出工程に送り、前
記有機相中の該不純物を硫酸中に除去した後、該不純物
逆抽出工程で得られた不純物を含まない有機相の一部を
抽出工程における酸性有機抽出剤として還流することを
特徴とする請求項1記載の硫酸ニッケルの精製方法。 - 【請求項6】 前記不純物逆抽出工程で得られた不純物
を含まない有機相の残部を洗浄工程で得られたニッケル
保持有機相の希釈に使用することを特徴とする請求項5
記載の硫酸ニッケルの精製方法。
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