JP5686258B2 - 高純度硫酸ニッケルを得るための溶媒抽出方法 - Google Patents
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Description
このような材料に用いられるニッケルは、硫化物鉱や酸化物鉱として存在する鉱石を採掘し、製錬して製造される。
特に、高品質な鉱石が枯渇しつつある近年は、その確保が困難となり、その結果入手できる鉱石中のニッケル品位は低下傾向となり、これらの低品位原料からニッケルを得るのには、さらにコストと手間を要するようになってきた。
この方法は、低品位の資源を有効かつ比較的少ないエネルギーで有効に利用できる技術であるが、上記のようなニッケル塩類を得ようとする場合、従来の製錬方法では見られなかった新たな課題も生じてきている。
これに対して、高温加圧浸出を用いた製錬方法では、マグネシウムやマンガンは酸によってよく浸出され、その結果ニッケル塩類への混入も増加する。また高温加圧浸出では、得た浸出スラリーにアルカリを添加してpHを調整する操作が行われるが、中和剤に使われるカルシウムのニッケル塩類への混入の影響も無視できない。
特に、ニッケルをリチウムイオン電池やニッケル水素電池の材料に用いる場合、マグネシウムやカルシウムが共存すると、製品に仕上げた電池の特性に大きく影響するため、ニッケル塩を製造する段階から混入をできるだけ排除した高純度ニッケル塩が望ましいとされる。
また、pH調整剤に含まれるNaなどの不純物元素がニッケル溶液へ混入し、製品を汚染することを防止する方法としても有効である。
さらに、溶媒抽出工程や他の浄液工程から排出されるニッケルを少量含有する液を系内に繰り返す場合、マグネシウムも同様に繰り返されることになる。この結果、系内にマグネシウムが蓄積し、製品中のマグネシウム品位が上昇する要因となっていた。
[溶媒抽出工程]
(1)第1工程
抽出剤濃度が18〜30体積%で含有する抽出溶媒と、ニッケル含有溶液とをpH6.0〜7.0で接触させ、ニッケルを抽出してニッケル保持有機相を得る工程。
(2)第2工程
第1工程で得たニッケル保持有機相と、ニッケルを含有する洗浄液とを混合し、保持有機相に含有されるナトリウム、アンモニウムイオンを洗浄液に分離し、洗浄後ニッケル保持有機相を得る工程。
(3)第3工程
第2工程で得た洗浄後ニッケル保持有機相と、マグネシウム濃度/ニッケル濃度の比率が0.001〜0.004の範囲にある組成の硫酸ニッケル溶液とを反応させ、ニッケル保持有機相中のニッケルと、その硫酸ニッケル溶液に含有する不純物とを置換させ、逆抽出後有機相と不純物分離後の硫酸ニッケル溶液を得る工程であって、洗浄後ニッケル保持有機相に混合する硫酸ニッケル溶液のpHが2.8以上を維持し、ニッケル保持有機相(O)と硫酸ニッケル溶液(A)の液量の容積比(O/A)が、2.0〜5.0の範囲に維持される工程。
(1)二次電池の原料に用いることができるマグネシウム品位の低い硫酸ニッケルを得ることができる。
(2)ニッケル酸化鉱石を酸浸出して得た酸性溶液からも高純度な硫酸ニッケルを直接得ることができる。
(3)原料品位や操業負荷が変動しても得られる高純度硫酸ニッケル液中のMg/Ni濃度比を一定に維持し品質が安定する。
(4)マグネシウム除去のための新たな設備が不要で、投資が圧縮できる。
なお、マグネシウムと同時にコバルトも分離するので、ニッケルを含有する鉱石や、ニッケルとコバルトを含有する2次電池を処理する際、溶媒抽出工程を一つ設けておけば事足りる。
本発明の溶媒抽出工程は、図1に示すように具体的にはニッケル含有溶液(酸性溶液)からの硫酸ニッケルの製造における製造工程に含まれるもので、以下の3つの工程から構成される。図1は本発明の溶媒抽出工程を含むニッケル含有溶液(酸性溶液)からの硫酸ニッケルの製造工程を示す工程図である。
第1工程では、抽出剤本体を18〜30体積%の濃度で含有するように希釈した抽出溶媒と、ニッケル、カルシウム、コバルト、マグネシウム、アンモニムイオン(NH4 +)、ナトリウム、塩化物イオン(Cl−)などを含有する硫酸酸性溶液である粗硫酸ニッケル溶液(図1中の「ニッケル含有溶液」)とを、pH6.0〜7.0の範囲で接触させ、ニッケルを抽出してマグネシウム/ニッケル濃度比が0.002以下となるニッケル保持有機相を得る工程である。
第2工程では、第1工程で得たニッケル保持有機相と、予めニッケルを含むニッケル含有洗浄液とを混合し、ニッケル保持有機相中に含有しているナトリウム、アンモニウムイオンを洗浄液中に移行し、ニッケルと分離する工程である。
第3工程では、第2工程で得た洗浄後ニッケル保持有機相と、溶液中のマグネシウム/ニッケル濃度比が0.001〜0.004の範囲である硫酸ニッケル溶液(図1中の「Mg、Ni組成比制御硫酸ニッケル溶液」)とを混合し、ニッケル保持有機相中のニッケルと硫酸ニッケル溶液に含まれる不純物とを置換させる工程である。
この第3工程での置換反応は、硫酸ニッケル溶液のpHを2.8以上に維持し、抽出剤濃度を15〜30容量%、好ましくは18〜20容量%の範囲に調整する。
抽出溶媒(O)と高Co含有硫酸ニッケル溶液(A)の液量の容積比(O/A)は、有機溶媒の粘性を抑え分相性の良好な状態とするために、2.0〜5.0、好ましくは2.0以上、4.0以下の範囲に維持することが良い。
また、水相中のニッケル濃度が100[g/L]以上を維持するように、ニッケル保持有機相に添加するニッケル溶液のニッケル濃度を予め調整することが良い。
なお、Mg/(Ni+Co)濃度比が管理範囲から外れた際には、マグネシウムを濃縮した液を払い出せば範囲内に調整できる。
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
溶媒抽出の抽出装置には、向流4段のミキサーセトラーを使用した。ミキサーセトラーのミキサー部の有効容量は1リットル、セトラー部の有効容量は10リットルとした。1段目のミキサーセトラー(M/S)に有機相を、4段目のミキサーセトラーに水相をそれぞれ供給した。
図2は、第3工程における有機相および液相Mg濃度の関係を示す図で、4段目のM/SのpHを2.8以上に制御している。
図3は、4段目M/Sにおける操作pHとMg分配の関係を示す図で、ただし抽出剤濃度を18vol%として行っている。
図4は、第3工程におけるO/Aと精製硫酸ニッケル溶液のMg濃度の関係を示す図で、精製硫酸ニッケル溶液Ni濃度を120[g/L]、抽出剤濃度18vol%、4段目のpHを2.8の場合における結果である。
図3よりわかるように、第3工程における操作pHを2.8に維持する事で、マグネシウムの分配を1に維持できる。
また図4より、第3工程においてはO/Aを2以上とする事により、液のMg/Ni比を0.00050以下に抑制できる。
実施例1の結果を纏めて表1に示す。
複数のミキサーセトラーを用いて多段向流形式にて、粗硫酸ニッケル溶液とニッケルを抽出した有機溶媒(図1中の洗浄後ニッケル保持有機相/抽出溶媒:PC−88A:20vol%、テクリーンN20:80vol%)をO/A=3.5を維持しながら混合しつつ硫酸を用いて所定のpHに調整することで精製した後、静置して高純度硫酸ニッケル溶液を作製した。
比較例1の結果を表2に示す。
一方、比較例1では、Mg/(Ni+Co)濃度比が0.00456と本発明の条件を満たさない粗硫酸ニッケル溶液を用いたため、溶媒抽出工程で精製して得られた硫酸ニッケル溶液のMg/Ni比は0.00056にとどまった。
複数のミキサーセトラーを用いて多段向流形式にて、実施例1と同じ粗硫酸ニッケル溶液と、ニッケルを抽出した有機溶媒(図1中の洗浄後ニッケル保持有機相/抽出溶媒:PC−88A:20vol%、テクリーンN20:80vol%)をO/A=1.5を維持しながら混合しつつ硫酸を用いて所定のpHに調整することで精製した後、静置して高純度硫酸ニッケル溶液を作製した。
O/Aが2.0より低いために、良好なニッケル置換ができずに、Mg/Ni濃度比は実施例1よりも大きくなり、純度が大きく低下した。
Claims (4)
- ニッケル含有溶液を、以下の3工程で構成された溶媒抽出工程で処理することを特徴とする高純度硫酸ニッケルの製造方法。
[溶媒抽出工程]
第1工程:
抽出剤濃度が18〜30体積%で含有する抽出溶媒と、ニッケル含有溶液とをpH6.0〜7.0で接触させ、ニッケルを抽出してニッケル保持有機相を得る工程。
第2工程:
前記第1工程で得たニッケル保持有機相と、ニッケルを含有する洗浄液とを混合し、保持有機相に含有されるナトリウム、アンモニウムイオンを洗浄液に分離し、洗浄後ニッケル保持有機相を得る工程。
第3工程:
前記第2工程で得た洗浄後ニッケル保持有機相と、マグネシウム濃度/ニッケル濃度の比率が0.001〜0.004の範囲にある組成の硫酸ニッケル溶液とを反応させ、ニッケル保持有機相中のニッケルと前記硫酸ニッケル溶液に含有する不純物とを置換させ、逆抽出後有機相と不純物分離後の硫酸ニッケル溶液を得る工程であって、洗浄後ニッケル保持有機相に混合する硫酸ニッケル溶液のpHが2.8以上を維持し、ニッケル保持有機相(O)と硫酸ニッケル溶液(A)の液量の容積比(O/A)が、2.0〜5.0の範囲に維持される工程。 - 前記溶媒抽出工程における抽出剤が、酸性燐酸エステル系抽出剤であることを特徴とする請求項1記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- 前記第3工程における有機相マグネシウム濃度/液相マグネシウム濃度比を1.0以上に制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
- 前記第3工程における硫酸ニッケル溶液中のニッケル濃度が、100[g/L]以上に維持されるように、ニッケル保持有機相に添加する硫酸ニッケル溶液のニッケル濃度を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高純度硫酸ニッケルの製造方法。
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