JP7016484B2 - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温高圧下の条件でニッケルアンミン錯体溶液と水素ガスによる金属ニッケル粉の製造方法に適用でき、ニッケル粉を回収した後の溶液に、残存して含まれるニッケル成分を、硫化水素を用いずに回収するニッケル粉の製造方法に関する。
硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を水素還元して生成した硫酸アンモニウム水溶液に残存する硫酸ニッケルアンミン錯体溶液のニッケルを回収する方法として、反応式(1)に示すような硫化水素ガスによりニッケル硫化物として回収する方法が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
Figure 0007016484000001
しかし、この硫化水素ガスを用いてニッケルを回収する方法では、回収したニッケル硫化物(NiS)は、温度130~180度、圧力1.5~2.0MPaの高温高圧下条件で下記反応式(2)より硫酸ニッケル水溶液まで酸化浸出する工程(以下、加圧抽出工程)に繰返して処理することとなる。
Figure 0007016484000002
よって、加圧抽出工程の負荷が高くなるため、加圧抽出工程の反応槽(オートクレーブ)の容量を大きくする必要がある。また、硫化水素ガスは水溶液への溶解度が高く、硫酸アンモニウム溶液を爆気除去し、除去した硫化水素ガスを苛性ソーダ水溶液で中和処理する必要があった。
特開2009-173983号公報
このような状況の中で、本発明は硫化水素ガスを使用せず、ニッケルアンミン錯体溶液を水素ガスによる還元処理によりニッケル粉を得た後に残された還元反応濾液から、直接ニッケルアンミン錯体溶液を回収し、効率よくニッケル粉を製造する方法を提供するものである。
上記の課題を解決するための本発明の第1の発明は、硫酸ニッケル溶液にアンモニアを混合後、含まれる硫酸アンモニウムの濃度を100~500g/Lの範囲に調節した硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を形成するアンミン錯体化工程と、その硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を、高温高圧下で水素ガスと接触させて硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯体イオンを還元処理して生成したニッケル粉を含む還元反応スラリーを得る還元工程と、次いで、前記還元反応スラリーを固液分離処理して固体成分のニッケル粉と、還元濾液に分離してニッケル粉を得る固液分離工程を含み、還元濾液が、還元工程で還元処理されなかった硫酸ニッケルアンミン錯体を含む溶液で、その還元濾液を抽出始液に用いて溶媒抽出処理に付し、還元濾液中の硫酸ニッケルアンミン錯体からアンモニウムイオンを抽出してニッケルアンミン錯体澱物を含むスラリー(水相)を形成するニッケル回収溶媒抽出工程と、そのスラリー(水相)をアンモニア水と混合し、スラリーに含まれる硫酸ニッケルアンミン錯体澱物を溶解して硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を形成する溶解工程を含むことを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
本発明の第2の発明は、第1の発明におけるニッケル回収溶媒抽出工程が、抽出後有機相に還元濾液中のニッケルアンミン錯体からアンモニウムイオンを抽出し、水相の抽残液に、硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物を得ることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明におけるニッケル回収溶媒抽出工程で用いる有機溶媒が、抽出剤に、「2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2エチルヘキシル」、「ジ-2エチルヘキシルホスホン酸」、「ビス2、4,4トリメチルペンチルホスフィン酸」から選ばれる1種を用い、その抽出剤に「ナフテン系合成炭化水素」を混合して希釈した有機溶媒であることを特徴とするニッケル粉の製造方法である。
本発明によれば、ハンドリング性が難しく、有毒な硫化水素ガスを使用せずに、ニッケル粉を製造する方法は、還元濾液中の残存しているニッケル成分を高い効率で回収可能で、工業上顕著な効果を奏するものであり、自然環境管理や作業環境管理にも優れている。
本実施の形態に係る硫酸ニッケルアンミン錯体溶液の生成工程であるアンミン錯体化工程から溶媒抽出工程および硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物溶解工程の一連の硫酸ニッケルアンミン錯体溶液の回収フローである。
以下、本実施の形態に係るニッケル粉の製造方法を、図1に示す硫酸ニッケルアンミン錯体溶液の回収フロー図を参照して説明する。
[硫酸ニッケル水溶液]
本実施の形態に用いる硫酸ニッケル水溶液は、特に限定はされないが、ニッケルおよびコバルト混合硫化物、粗硫酸ニッケル、ニッケルマットなどから選ばれる一種、または複数の混合物から成る工業中間物などのニッケル含有物を、硫酸により溶解して得られるニッケル浸出液を、溶媒抽出法、イオン交換法、中和などの浄液工程を施すことにより溶液中の不純物元素を除去して得られる硫酸ニッケル水溶液である。
[アンミン錯体化工程]
アンミン錯体化工程では、硫酸ニッケル水溶液のニッケルとアンモニア回収工程から繰返した(回収)アンモニアのmol比を1.9~2.0(Ni/NH)になるよう調整し、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を生成させる。
さらに、溶解工程で回収した硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を混合後、この混合した溶液に硫酸アンモニウム濃度が、100~500g/L、望ましくは200g/Lになるように、還元工程、固液分離工程を経て得られた還元濾液を繰り返して、還元工程に供給する硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を調整する。なお、このときの硫酸アンモニウム濃度は100~500g/Lが好ましく、500g/L以上では溶解度を超えてしまい、結晶が析出してしまい、プロセスのメタルバランス上、100g/L未満を達成するのは困難である。
[還元工程]
この還元工程では高温高圧反応槽に、アンミン錯体化工程から供給される硫酸ニッケルアンミン錯体溶液と種晶としてニッケル粉を30~200g/Lのスラリー濃度となるように添加し、反応温度を140~200℃、圧力が2.0~3.5MPaの雰囲気とし、ここに水素ガスを吹込み、下記反応式(3)により、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯イオンを還元して金属ニッケル粉を生成し、副生成物として得られた硫酸アンモニウムを含む還元濾液を得る。
Figure 0007016484000003
[固液分離工程]
固液分離工程は、前工程の還元工程で得られた金属ニッケル粉と還元濾液の硫酸アンモニウム水溶液(一部未反応の硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を含む)を濾過機で分離し、固相成分の金属ニッケル粉は、水洗を行って製品とする。
一方硫酸アンモニウム水溶液は、未反応の硫酸ニッケルアンミン錯体が残るため、本実施の形態の特徴である、この未反応の硫酸ニッケルアンミン錯体を回収する「Ni回収溶媒抽出工程」へ送る。
[Ni回収溶媒抽出工程]
このNi回収溶媒抽出工程では、上記還元濾液と有機溶媒をミキサーで混合し、セトラーで水相と有機相に分離する。
ここで、還元後に残留するニッケル成分を、溶媒抽出を用いて回収する場合、ニッケル成分を抽出して分離する方法もあるが、本実施の形態ではアンモニア成分を先に抽出し、その結果硫酸ニッケルアンミン錯体の沈殿を生成させて錯体として直接回収する方法を用いた。
つまり、本実施の形態の溶媒抽出では、下記反応式(4)により有機相にはNH が抽出される。一方水相には硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物が生成する。
Figure 0007016484000004
また、上記で得た有機相(RNHorg.)は次工程のアンモニア回収工程で、下記反応式(5)により希釈した硫酸の水相と混合して有機相のNH を硫酸アンモニウムとして回収し、アンモニア回収工程に送る。
Figure 0007016484000005
一方、水相で沈殿した硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物は、セトラーの底部から断続的にスラリー状で抜出、溶解工程に送る。
このように、本実施の形態ではニッケルを硫酸ニッケルアンミン錯体の形態のまま固体として回収するので、再度錯体化する必要がなく、再利用のための手間やコストを削減でき、設備がコンパクトで済むなどの利点がある。
なお、上記のNi回収溶媒抽出工程で用いる抽出剤は、実用上は希釈剤を用いて希釈して使用することができる。
具体的な抽出剤濃度は、対象物のニッケル濃度などにより異なるが、例えば20%(すなわち抽出剤20容量%に対して希釈剤が80容量%)の前後(10~40%程度)の範囲で希釈することが好ましい。
また、上記の希釈した抽出剤(すなわち有機溶媒;有機相)、は還元濾液(水相)と同体積、すなわち有機相O/水相Aの比率が1.0程度に混合して溶媒抽出に付すのが使いやすい。
O/A比が例えば0.5以下などと、小さすぎると還元濾液の量が多すぎて十分にアンモニアを抽出できず、その結果硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物の生成が不十分となる。一方、O/A比が例えば2を超えるなど有機相が多すぎると、硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物が有機相に巻き込まれるなど操業は困難になる恐れがあり好ましくない。
本実施の形態のNi回収溶媒抽出工程で得た硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物は、再利用しやすいように、次の溶解工程に送り、アンモニアを添加して再度溶解する。
[溶解工程]
溶解工程では、下記反応式(6)により硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物スラリーに、アンモニア回収工程で得られたアンモニア水を添加して硫酸ニッケルアンミン錯体溶液として回収する。
この回収した硫酸ニッケルアンミン錯体溶液は、アンミン錯体化工程へ繰り返すことで、高温高圧下の条件で水素ガスを用いて還元処理する還元工程を経ることによって、繰り返して再度ニッケル錯イオンをニッケル粉として回収する処理に再利用することができる。
Figure 0007016484000006
さらに、溶解時に添加するアンモニアは、回収した硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物に含まれるニッケル当量となる量のアンモニア水を添加する。
以上のように、本実施の形態に係る製造方法では、ハンドリング性が難しく、有毒な硫化水素ガスを使用しないので自然環境管理や作業環境管理に優れている。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
Ni回収溶媒抽出工程において、溶媒抽出で用いる有機溶媒は、抽出剤に2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2エチルヘキシル(例えば、大八化学工業株式会社製:商品名「PC-88A」)、ジ-2エチルヘキシルホスホン酸(D2EHPA)、ビス2、4,4トリメチルペンチルホスフィン酸(Cyanex272)を用い、いずれもナフテン系合成炭化水素(例えば、新日本石油株式会社製:商品名「テクリーンN20」)を希釈剤に用いて、有機溶媒中の抽出剤濃度が20容量%になるように希釈したものを用いた。
上記有機溶媒を、ニッケル濃度が5g/Lである還元工程で得られた還元濾液と、それぞれ体積比で50:50となるように混合し、溶媒抽出に付した。
なお、上記の還元濾液は、硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を公知の方法により、高温高圧下で水素ガスと接触させてニッケル錯イオンを還元して得たニッケル粉を含むスラリーを、固液分離した後の濾液を用いた。
また、上記溶媒抽出に付す前の反応濾液の硫酸アンモニウム濃度は400g/Lだった。
本実施例の「Ni回収溶媒抽出工程」に付して水相に回収した硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物に含まれるニッケル量を、溶媒抽出に付す前の反応濾液に含まれたニッケル物量で除して回収率を求めると、下記表1のように、いずれの抽出剤の場合でも、80%を超える高い回収率となり、ニッケル成分を有効に回収し、ニッケル粉を得ることができることが分かった。
なお、表のPC-88Aを用いて回収した硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物19.3g-wetを分取し、これに還元反応濾液で250g-wet/Lとなる濃度でレパルプし、次に濃度25%アンモニア水5.5mLを添加すると、硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物が全量溶解した溶解液が得られた。
この溶解液のニッケル濃度は20.2g/Lだった。また溶解したニッケルと添加した25%アンモニア水の添加量の比は、2.2(Nimol/NHmol)だった。
Figure 0007016484000007

Claims (3)

  1. 硫酸ニッケル溶液にアンモニアを混合後、含まれる硫酸アンモニウムの濃度を100~500g/Lの範囲に調節した硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を形成するアンミン錯体化工程と、
    前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を、高温高圧下で水素ガスと接触させて前記硫酸ニッケルアンミン錯体溶液中のニッケル錯体イオンを還元処理して生成したニッケル粉を含む還元反応スラリーを得る還元工程と、
    次いで、前記還元反応スラリーを固液分離処理して固体成分のニッケル粉と、還元濾液に分離して前記ニッケル粉を得る固液分離工程を含み、
    前記還元濾液が、前記還元工程で還元処理されなかった硫酸ニッケルアンミン錯体を含む溶液で、
    前記還元濾液を、抽出始液に用いて溶媒抽出処理に付し、前記還元濾液中の硫酸ニッケルアンミン錯体からアンモニウムイオンを抽出してニッケルアンミン錯体澱物を含むスラリー(水相)を形成するニッケル回収溶媒抽出工程と、
    前記スラリー(水相)をアンモニア水と混合し、前記スラリーに含まれる硫酸ニッケルアンミン錯体澱物を溶解して硫酸ニッケルアンミン錯体溶液を形成する溶解工程を含むことを特徴とするニッケル粉の製造方法。
  2. 前記ニッケル回収溶媒抽出工程が、抽出後有機相に、前記還元濾液中のニッケルアンミン錯体からアンモニウムイオンを抽出し、
    水相の抽残液に、硫酸ニッケルアンミン錯体沈殿物を得ることを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
  3. 前記ニッケル回収溶媒抽出工程で用いる有機溶媒が、
    抽出剤に、「2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2エチルヘキシル」、「ジ-2エチルヘキシルホスホン酸」、「ビス2、4,4トリメチルペンチルホスフィン酸」から選ばれる1種を用い、
    前記抽出剤に「ナフテン系合成炭化水素」を混合して希釈した有機溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル粉の製造方法。
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