JP2020164945A - 塩化コバルト水溶液の製造方法 - Google Patents

塩化コバルト水溶液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から有機溶媒によりコバルトを溶媒抽出して塩化コバルト水溶液を製造する方法において、安定的に低ニッケル濃度の塩化コバルト水溶液を製造することが可能な方法を提供する。【解決手段】ミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用い、芳香族炭化水素系希釈剤を含む有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法により、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収して塩化コバルト水溶液を製造する方法であって、(1)有機相にコバルトを抽出する抽出段と、(2)有機相に逆抽出後の水相の一部を混合してニッケルを除去する洗浄段と、(3)洗浄後有機相に弱酸性水溶液を接触させ塩化コバルト水溶液の水相を得る逆抽出段と、を有する溶媒抽出工程を含み、抽出段では、有機相に対して洗浄液を用いた洗浄処理を行うことで有機相に含まれるスルホランを洗浄除去する抽出前処理を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機溶媒によってコバルトを溶媒抽出することによりコバルトを分離回収して塩化コバルト水溶液を製造する方法に関するものである。
ニッケルの湿式製錬法において、酸性水溶液中に含まれるニッケルとコバルトの分離は最も重要な技術要素である。一般に、酸性水溶液中のニッケルとコバルトの分離は、各種の有機抽出剤を用いた溶媒抽出法によって実施されている。
具体的に、ニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出法では、有機抽出剤としてD2EHPA(Di−(2−ethylhexyl)phosphoricacid)等の燐酸エステル系酸性抽出剤や、TNOA(Tri−n−octylamine)等のアミン系抽出剤が用いられる。燐酸エステル系酸性抽出剤とアミン系抽出剤は、両者ともに優れたニッケルとコバルトの分離性能を有するが、一般的には、アニオンが硫酸イオンの場合は燐酸エステル系酸性抽出剤が、アニオンが塩化物イオンの場合にはアミン系抽出剤が使用されている。
ところで、水溶液中の塩化物イオン濃度が十分に高い、塩化物イオン濃度が200g/L以上の塩化物水溶液の場合、コバルトはクロロ錯イオンを形成するが、ニッケルはクロロ錯イオンを形成しない。そのため、アミン系抽出剤の方が、燐酸エステル系酸性抽出剤に比べてより高いコバルトとニッケルの分離係数を持つ。
また、燐酸エステル系酸性抽出剤では、金属イオンの抽出によって抽出剤から水素イオンが放出されるため、中和剤コストを要するほか、pHの変動によってクラッドが発生することが多い。このクラッドとは、金属の水酸化物等の固体であり、油水分離装置内で有機相と水相の中間に滞留・蓄積されるため、溶媒抽出の重要な技術要素である油水分離を大きく阻害するものとなる。
コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液からアミン系抽出剤によってコバルトを分離する方法は、以下に記載するような技術を利用して、抽出段、洗浄段、及び逆抽出段から構成される溶媒抽出処理として工業化されている。
アミン系抽出剤としては、1級アミン(RNH)や2級アミン(RNH)、3級アミン(RN)が用いられる(なお、Rは任意の飽和又は不飽和炭化水素基を表す)。このようなアミン系抽出剤は、塩酸が付加されて活性化することにより、金属クロロ錯イオンの抽出能力を保有し、優れたニッケルとコバルトの分離特性を発現する。
具体的に、抽出段では、塩化ニッケル水溶液に含まれるCo、Cu、Zn、Fe等のクロロ錯イオンを形成する金属種がアミン系抽出剤を含む有機相中に抽出され、金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンが生成される。一方で、塩化ニッケル水溶液中のニッケルは、クロロ錯イオンを形成しないことから、抽出残液に残留して分離される。
次の洗浄段は、必要により設置される。一般に、洗浄段では、抽出後の有機相中のエントレインメント(有機相中に懸濁する微細な水相の液滴)に含まれる不純物が、洗浄水によって希釈除去される。
洗浄段では、通常、次の逆抽出段で産出される逆抽出液である純度の高い塩化コバルト水溶液を用いて、抽出後の有機相を洗浄する。つまり、抽出後の有機相を塩化コバルト水溶液で洗浄することで、抽出段からエントレインメントとして持ち込まれる有機相中の塩化ニッケル水溶液を塩化コバルト水溶液で希釈、置換して、有機相中のニッケル濃度を低下させる。なお、洗浄後に洗浄除去される水相は、ニッケルを含んだ塩化コバルト水溶液となるため、抽出始液に混合されて抽出段に繰り返される。
次に、逆抽出段では、洗浄後の有機相、すなわちコバルトのクロロ錯イオンを担持したアミンを、弱酸性水溶液(希塩酸等)と接触させることにより、コバルトを水相中に脱離する処理を行う。
逆抽出段で得られた逆抽出液、すなわち塩化コバルト水溶液は、ニッケルとは別の処理ルートで更なる浄液処理(マンガン、銅、亜鉛等の不純物を除去する処理)が行われ、その後、電解採取によって電気コバルトとして製品化される。
ところで、塩化コバルト水溶液に含まれる微量のニッケルの除去は、酸化性雰囲気中での中和、イオン交換や溶媒抽出等の手段を用いたとしても、主要成分であるコバルトに対する沈澱除去、吸着、抽出等を行って微量不純物であるニッケルを水溶液中に残留させる操作となるため、工業的には実施が不可能である。
一方で、塩化コバルト水溶液に含まれる微量のニッケルは、電解採取工程で生成する電気コバルトを汚染して製品品質を悪化させる要因となる。したがって、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、アミン系抽出剤を含む有機溶媒によってコバルトを溶媒抽出することにより塩化コバルト水溶液を製造する方法においては、得られる塩化コバルト水溶液中のニッケル濃度を有効に低減させることが重要な技術課題となっている。
このような課題を解決するために、例えば特許文献1には、洗浄段のミキサータンク(撹拌槽)内を有機相連続とし、ミキサータンク内の有機相対水相の体積比率を3.0以下として溶媒抽出を行う方法が開示されている。特許文献1に開示された方法によれば、洗浄始液量を増やして水相連続とするのではなく、有機相連続とすることで、有機相中での水滴同士の結合が促進されるため、エントレインメント中のニッケル濃度が減少するとともにエントレインメント自体が減少するため、洗浄効率の向上を図ることができる。
しかしながら、洗浄段のミキサータンク内の洗浄効率が向上したとしても、セトラー部(油水分離槽)内の油水分離効率が低下すると、有機相中のエントレインメントが増加するため、塩化コバルト水溶液中のニッケル濃度を低減させることができなくなる。特に、有機相の化学的及び物理的性状が変化して、有機相中の微細な水相液滴が安定して存在するようになると、洗浄効率及び油水分離効率の両方が低下し、塩化コバルト水溶液中のニッケル濃度が通常の1000倍程度にまで急上昇してしまうこともある。
また、例えば特許文献2には、複数の金属イオンを含有する強酸化性雰囲気の塩化ニッケル水溶液の酸化還元電位を、還元剤により500mV(Ag/AgCl電極基準)以下に調整した後、その塩化ニッケル水溶液を抽出始液として溶媒抽出処理に付する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示の方法は、抽出剤である3級アミン化合物の劣化防止を目的としており、洗浄段の油水分離効率の低下を防止するものではない。
特開2015−183267号公報 特開2015−209582号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液からアミン系抽出剤を含む有機溶媒によってコバルトを溶媒抽出して塩化コバルト水溶液を製造する方法において、安定的に低ニッケル濃度の塩化コバルト水溶液を製造することが可能な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、溶媒抽出工程での処理において、有機溶媒用の希釈剤である芳香族炭化水素系希釈剤に含まれるスルホラン等の非芳香族物質が有機相内において界面活性剤として作用することで、塩化ニッケル水溶液を含む有機相中のエントレインメントが安定な逆ミセルを形成する結果、エントレインメントの洗浄効率が低下し、塩化コバルト水溶液中のニッケル濃度が増加してしまうことを見出した。そこで、抽出段にて抽出処理を施すに先立ち、抽出前の有機相に対して洗浄液による洗浄処理を施すことで、有機相に含まれるスルホランの量を低減させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]本発明の第1の発明は、ミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用い、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法によって、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収して塩化コバルト水溶液を製造する方法であって、(1)前記塩化ニッケル水溶液から前記有機相にコバルトを抽出する抽出段と、(2)前記抽出段にて得られたコバルトを含む有機相に逆抽出後の水相の一部を混合して、該有機相に含まれるニッケルを除去する洗浄段と、(3)前記洗浄段での洗浄後の有機相に、逆抽出剤としての弱酸性水溶液を接触させることによって該有機相中のコバルトを脱離させ、塩化コバルト水溶液の水相を得る逆抽出段と、を有する溶媒抽出工程を含み、前記抽出段では、前記有機相に対して洗浄液による洗浄処理を行うことによって該有機相に含まれるスルホランを洗浄除去する抽出前処理を行い、その後、該抽出前処理後の有機相と前記塩化ニッケル水溶液とを混合してコバルトを抽出する、塩化コバルト水溶液の製造方法である。
[2]本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記抽出前処理では、前記有機相の体積(有機相体積:O)と前記洗浄液の体積(水相体積:A)との比率O/Aが0.2以上、1.0未満となるように処理する、塩化コバルト水溶液の製造方法である。
[3]本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記抽出前処理では、前記洗浄液として水を用いる、塩化コバルト水溶液の製造方法である。
[4]本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記溶媒抽出工程は、さらに、(4)前記逆抽出段での逆抽出後の有機相をアルカリによる中和処理に付し、次いで、該中和処理後の有機相を塩酸水溶液による塩酸付加処理に付すことにより再生後有機相を得て、前記抽出段に繰り返す再生段を有する、塩化コバルト水溶液の製造方法である。
[5]本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記アミン系抽出剤は、3級アミンである、塩化コバルト水溶液の製造方法である。
本発明に係る方法によれば、洗浄段でのニッケルを含むエントレインメントの洗浄効率の低下を防ぎ、安定的に低ニッケル濃度の塩化コバルト水溶液を製造することができる。
溶媒抽出工程の流れの一例を示すフロー図である。 ミキサーセトラー型溶媒抽出装置の構成を説明するための模式図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書にて、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.塩化コバルト水溶液の製造方法(溶媒抽出工程について)≫
本発明に係る塩化コバルト水溶液の製造方法は、ミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用い、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法によって、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収する工程(溶媒抽出工程)を含む方法である。
図1は、溶媒抽出工程の流れの一例を示すフロー図である。図1に示すように、溶媒抽出工程は、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(抽出始液)から抽出剤を含む有機相にコバルトを抽出する抽出段と、コバルトを含む有機相中のニッケルを洗浄除去する洗浄段と、洗浄後の有機相に弱酸性水溶液を接触させることによって有機相中のコバルトを脱離させて塩化コバルト水溶液の水相を得る逆抽出段と、を有する。また、逆抽出後の有機相を再生して抽出段に繰り返す再生段を有する。
なお、抽出段、洗浄段、及び逆抽出段の段数は、抽出始液の組成や、抽出剤の種類、抽出装置の構造等によって決まってくるが、一般に、有機相と水相との接触を確実に行って良好な抽出結果を得る観点から、それぞれを複数段とすることが好ましい。
(1)抽出段
抽出段では、抽出始液であるコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液から、抽出剤を含む有機溶媒により構成される有機相にコバルトを抽出する。
(抽出剤について)
抽出剤は、アミン系抽出剤であれば特に限定されない。中でも、反応性の高さや水に対する溶解度の低さ等の観点から3級アミン系抽出剤を用いることが好ましく、取り扱い性や価格等を勘案すると、TNOA(Tri−n−octylamine)又はTIOA(Tri−i−octylamine)を用いることがより好ましい。
抽出剤は、後述する希釈剤により希釈されて有機溶媒となって溶媒抽出における有機相を構成する。有機溶媒における抽出剤の濃度は、所望とする有機相の粘度範囲に応じて適宜調整することが好ましいが、例えば10〜40体積%の範囲とすることができる。
(有機溶媒用の希釈剤について)
有機相を構成する有機溶媒は、抽出剤を希釈剤により希釈することで得られる。有機溶媒を構成する希釈剤としては、芳香族炭化水素系希釈剤を用いる。
芳香族炭化水素系希釈剤は、沸点範囲140℃以上で、少なくとも40質量%の芳香族炭化水素化合物を含む石油系炭化水素から製造されるものである。この芳香族炭化水素系希釈剤は、石油精製装置の蒸留塔から分離され、さらにスルホラン等の溶剤を用いて芳香族炭化水素化合物を抽出し、沸点範囲が195〜250℃の特定留分とされる。芳香族炭化水素とは、テトラメチルベンゼン等のC10芳香族炭化水素を主体とした、ベンゼン環を含む炭化水素化合物である。
(有機溶媒による抽出段での処理について)
3級アミン系抽出剤を用いた場合、その3級アミンは、下記の式[i]に示すように塩酸が付加されて活性化することで、式[ii]及び式[iii]に示すような金属クロロ錯イオンの抽出能力を保有して、優れたニッケルとコバルトの分離特性を有するようになる。
N:+HCl→RN:HCl ・・[i]
2RN:HCl+MCl 2−→(RN:H)2MCl+2Cl ・・[ii]
N:HCl+MCl →RN:HMCl+Cl ・・[iii]
上記式[ii]中のMは、Co、Cu、Zn等のクロロ錯イオンを形成する金属種を表すが、金属イオンの価数によってクロロ錯イオンの形態が異なるため、例えば3価の場合には下記式[iii]に従う。なお、式[i]〜[iii]中の「:」は、窒素原子の非共有電子対を表す。
抽出段では、式[ii]及び式[iii]で示す反応により、Co、Cu、Zn、Fe等のクロロ錯イオンを形成する金属種が有機相中に抽出され、金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンが生成される。なお、抽出始液中のニッケルはクロロ錯イオンを形成しないため、抽出残液に残留して分離される。
抽出始液であるコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液の組成は特に限定されないが、ニッケル硫化物原料を塩素浸出して得られた塩化ニッケル水溶液を用いることが好適であり、例えばニッケル濃度が140〜240g/L、コバルト濃度が3〜10g/Lの塩化ニッケル水溶液を用いることができる。ニッケル硫化物原料を塩素浸出して得られた塩化ニッケル水溶液では、ニッケルやコバルトのほか、銅、亜鉛、鉄等を含有する。上述したように、銅、亜鉛、鉄は、塩化物イオンを含む溶液中でクロロ錯イオンを形成する金属種であることから、コバルトと共に有機相中に抽出される。
(溶媒抽出処理に使用するミキサーセトラー型溶媒抽出装置について)
抽出段における溶媒抽出処理は、ミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用いて行われる。なお、後述する洗浄段、逆抽出段においても、同様にしてミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用いた処理が行われる。
図2は、ミキサーセトラー型溶媒抽出装置の構成を説明するための模式図であり、抽出段における溶媒抽出処理に用いた場合を例とするものである。ミキサーセトラー型溶媒抽出装置1は、向流多段方式の溶媒抽出装置を構成し、ミキサー部(抽出部)11と、セトラー部(静置部)12と、排出部13と、から構成されている。なお、図2に示す態様は、ミキサーセトラー型溶媒抽出装置の一具体例を示すものであり、構成はこれに限られるものではない。
ミキサー部11では、水相と有機相とが装入され、水相と有機相との接触混合によって、抽出対象物が有機相に移行して抽出される。例えば、抽出段における処理では、抽出始液であるコバルトを含有する塩化ニッケル水溶液(水相)と抽出剤を含む有機溶媒(有機相)とが装入され、水相と有機相との接触混合により抽出対象物であるコバルトが有機相に移行して抽出される。ミキサー部11は、例えば、水相装入口11aと有機相装入口11bとを有し、各装入口11a,11bから水相と有機相とがミキサー部11の内部(ミキサータンク)に装入される。
また、ミキサー部11は、例えば、撹拌軸20aと撹拌羽根20bとから構成される撹拌装置20を備えている。ミキサー部11では、撹拌装置20による撹拌力によって水相と有機相とが混合した混合相の液が効率的に撹拌される。混合撹拌された混合相の液は、オーバーフローして樋14を流れて、次のセトラー部12へと移行する。
セトラー部12では、ミキサー部11にて水相と有機相とが混合されて得られた混合相を静置させ、水相と有機相とを比重差により相分離する。例えば、抽出段における処理では、塩化ニッケル水溶液の水相とコバルトを抽出した有機溶媒からなる有機相との混合相が、セトラー部12においてそれぞれ比重差により相分離する。
セトラー部12では、水相と有機相とが相分離し、その油水界面を境にして、下層に水相が、上層に有機相がそれぞれ分離する。
排出部13では、セトラー部12にて相分離した水相と有機相の各相が混入しないように、それらを油水分離して排出する。排出部13では、セトラー部12と隔てる隔壁13wが設けられており、セトラー部12にて相分離して下層を構成するようになった水相は、下端が開放されているその隔壁13wの下部から排出される。また、セトラー部12にて相分離して上層を構成するようになった有機相は、隔壁13wの上部をオーバーフローして排出部13に移送される。
例えば、抽出段における処理では、セトラー部12にて下層を構成するようになった塩化ニッケル水溶液からなる水相が、隔壁13wの下部から排出される。一方で、セトラー部12にて上層を構成するようになったコバルトを含む有機溶媒からなる有機相が、隔壁13wの上部をオーバーフローして排出部13に移送される。なお、排出部13に排出された有機相は、有機排出口を介して排出され、次の段(洗浄段)へと移送される。
ここで、抽出段における溶媒抽出処理において、図2中の一部拡大図(「Z」)として模式的に示すように、有機相中に、塩化ニッケル水溶液を含む微細な水相の液滴(エントレインメント)が懸濁するようになる。このように有機相中にエントレインメントの形態で取り込まれたニッケルは、次の洗浄段にて洗浄除去される。
(抽出段の前処理(抽出前処理)について)
詳しくは後述するが、本発明に係る塩化コバルト水溶液の製造方法では、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機溶媒を有機相に用いた抽出処理に先立って、前処理としてその有機溶媒に対して洗浄処理を施すことを特徴としている。
具体的には、抽出段では、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機相に対して、洗浄液による洗浄処理を行う。これにより、その有機相に含まれるスルホランを洗浄除去して洗浄後有機相を得る抽出前処理を行う。
このように、抽出前処理として有機相を洗浄する洗浄処理を施すことで、エントレインメント洗浄効率及び油水分離効率の低下の原因であるスルホランを有効に除去することができる。そして、その洗浄後有機相を用いて塩化ニッケル水溶液からコバルトを抽出する処理を行うことで、有機相に含まれるエントレインメントの逆ミセル化を抑制することができ、後述する洗浄段において有機相に含まれるニッケルを効果的に除去することができる。
(2)洗浄段
洗浄段では、抽出後の有機相中のエントレインメントを洗浄液によって希釈除去する。つまり、抽出後の有機相を洗浄することによって、抽出段からエントレインメントとして持ち込まれる塩化ニッケル水溶液を洗浄液で希釈し置換して、有機相中のニッケル濃度を低下させる。なお、上述したように、洗浄段での処理も、図2に模式的に示したようなミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用いて行われ、コバルトを抽出した有機相と洗浄水(水相)とが接触混合されて、エントレインメントを洗浄除去する。
この洗浄段では、次の逆抽出段での逆抽出後の水相、すなわち逆抽出される塩化コバルト水溶液(逆抽出液)の一部を洗浄液として用いる。なお、洗浄後の水相は、エントレインメントに含まれていたニッケルを含有する塩化コバルト水溶液となるため、抽出始液に混合されて抽出段に繰り返される。
ここで、洗浄段における処理では、エントレインメントとして持ち込まれる塩化ニッケル水溶液を洗浄除去する効率の低下を防ぎ、さらには向上させることが重要となる。エントレインメントの洗浄効率が低いと、次の逆抽出段において逆抽出液にコバルトと共にニッケルが抽出され、ニッケルを含有する塩化コバルト水溶液が生成されることになる。塩化コバルト水溶液に含まれる微量のニッケルは、電解採取工程で生成する電気コバルトを汚染して製品品質を悪化させる要因となる。したがって、洗浄段でのニッケルを含むエントレインメントの洗浄効率の低下を防ぎ、安定的に低ニッケル濃度の塩化コバルト水溶液を製造することが求められる。
なお、洗浄段の水相流量を増やせば洗浄効率は向上するとも考えられる。しかしながら、その場合には洗浄液として用いる逆抽出液(塩化コバルト水溶液)の繰り返し量が増えることになるため、塩化コバルトとして回収されるコバルト量が減少してコバルト回収効率が低下する。さらにはコバルト処理能力が低下するだけでなく、逆抽出液の塩化物イオン濃度が低いため、洗浄段でのコバルトの逆抽出量を増加させてしまう。このことから、洗浄段の水相(洗浄水)流量を増やさずに、エントレインメントを有効に洗浄除去することが求められる。
(3)逆抽出段
逆抽出段では、洗浄後の有機相(洗浄後有機相)に、逆抽出剤としての希塩酸等の弱酸性水溶液を接触させることにより、有機相中のコバルトのクロロ錯イオンを担持したアミンからコバルトを脱離させ、塩化コバルト水溶液の水相を得る。
逆抽出段では、上記式[ii]の逆反応である下記式[iv]に従ってコバルトを水相中に脱離する。これにより、ニッケルを分離した塩化コバルト水溶液が得られる。
(RN:H)CoCl→2RN:HCl+CoCl ・・[iv]
上述したように、逆抽出段での処理も、図2に模式的に示したようなミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用いて行われる。具体的には、洗浄後有機相と弱酸性水溶液(水相)とがミキサー部にて接触混合され、有機相中のコバルトが水相に分配される。その後、セトラー部にて静置することで、有機相と塩化コバルト水溶液からなる水相とが分離する。
(4)再生段
再生段では、逆抽出段での逆抽出後の有機相を再生する処理を行い、抽出段にて用いる抽出剤を含む有機相として繰り返す。具体的に、再生段では、逆抽出後の有機相をアルカリによる中和処理に付し、次いで、その中和処理後の有機相を塩酸水溶液による塩酸付加処理に付すことにより再生後有機相を得て、抽出段に繰り返す。
(中和処理)
上述したように、抽出段においては、コバルトと共に、亜鉛、鉄、銅等の不純物も有機相に抽出される。抽出されたコバルトは、逆抽出段にて水相に逆抽出されるが、不純物(亜鉛、鉄、銅)は逆抽出されずに有機相中に残る。ところが、有機相中の不純物濃度が上昇し、そのような有機相を抽出段に繰り返すと、抽出段でのコバルト抽出量の減少や、塩化ニッケル溶液や塩化コバルト溶液への不純物の溶出が生じる可能性がある。そのため、逆抽出後の有機相については、アルカリによる中和処理を施して、亜鉛、鉄、銅等の不純物を除去する。
具体的に、アルカリを用いた中和処理では、逆抽出段から産出される、金属元素(亜鉛、鉄、銅等の不純物元素)のクロロ錯イオンを担持したアミンを含む有機相に、アルカリ水溶液を添加して混合する。これにより、金属元素が脱離された有機相と、金属元素の中和沈殿物と、水相とを形成する。次いで、有機相、中和沈殿物、及び水相を油水分離に付して、有機相の上澄み部分からなる中和沈殿物の混入がない有機相を分別する。
アルカリとしては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。また、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリを用いて、pH9以上、好ましくはpH10以上、より好ましくはpH13以上の条件下で行うことが好ましい。
なお、この再生段における中和処理は、中和処理槽にて行われる。
(活性化処理)
活性化処理では、中和処理後の有機相を塩酸水溶液による塩酸付加処理に付すことによって再生後有機相を得る。アルカリを用いた中和処理を経て得られる有機相は、亜鉛、鉄、銅等の不純物元素が脱離され、かつ中和沈殿物の混入がない清澄な有機相であるため、その得られた有機相に対して塩酸付加することで活性化(再生)し、抽出段での再利用を可能にする。なお、上記式[i]に示すようにして塩酸が付加されて活性化される。本明細書では、活性化処理のことを「塩酸付加処理」とも称する。
なお、この再生段における塩酸付加処理は、塩酸付加処理槽にて行われる。
≪2.洗浄段におけるエントレインメント洗浄不良について≫
上述したように、塩化コバルト水溶液の製造方法では、溶媒抽出工程の洗浄段(2)での洗浄処理において、エントレインメントとして有機相に持ち込まれる塩化ニッケル水溶液を洗浄除去する効率(洗浄効率)の低下を防ぐことが重要となる。エントレインメントの洗浄効率が低いと、次の逆抽出段において逆抽出液にコバルトと共にニッケルが抽出され、ニッケルを含有する塩化コバルト水溶液が生成されることになり、次工程の電解工程を経て得られる電気コバルト製品の品質を悪化させる。
本発明者らは、洗浄段(2)におけるエントレインメントの洗浄効率の低下(洗浄不良)について研究を重ねた結果、抽出段(1)において有機相中に界面活性物質が含まれるようになり、その界面活性剤物質がエントレインメントの逆ミセル化を助長することによることが原因であることを発見した。
本発明に係る塩化コバルト水溶液の製造方法では、抽出段(1)において、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機溶媒を有機相に用いた抽出処理を行っている。本発明者らは、芳香族炭化水素系希釈剤を含む有機溶媒を用いて、コバルトを含む塩化ニッケル水溶液からコバルトを抽出する溶媒抽出処理を行うと、有機相中に、芳香族炭化水素系希釈剤に由来する非芳香族物質であるスルホランが含まれるようになり、このスルホランが界面活性剤として作用して、塩化ニッケル水溶液を含むエントレインメントの逆ミセル化を助長していることを見出した。
スルホランは、テトラメチレンスルホンと称される環状スルホンである。スルホランは、芳香族炭化水素系希釈剤の原料となる石油系炭化水素を製造する工程において、ベンゼン、トルエン、キシレンを抽出し蒸留精製で分離する溶媒として用いられるものであり、芳香族炭化水素と分離しきれずに一部が残留したものである。
具体的に、界面活性物質として作用するスルホランが有機相中に含まれるようになると、そのスルホランによってエントレインメントを構成する微細な水滴が安定な形態の逆ミセルを形成する。例えば、1000nmを超える大きさを形成するエマルジョンの場合、比較的不安定な形態であるため、洗浄液を用いた洗浄によって物理破壊が生じさせて容易に除去することができる。これに対し、1000nm以下(1〜1000nm)程度の大きさの逆ミセルの場合、極めて安定な形態であることから、洗浄による物理破壊を生じさせることができない。これにより、洗浄段(2)におけるエントレインメントの洗浄効率の低下、つまり洗浄不良が生じると考えられている。
また、後述する試験例でも示されるように、エントレインメントの洗浄効率の低下の原因であるスルホランを除去するという操作に関しては、抽出段(1)、洗浄段(2)、そして逆抽出段(3)を経て得られる逆抽出後の有機相に対する処理では有効ではないことが、本発明者らによる研究により分かった。
≪3.抽出前処理について(エントレインメント洗浄効率の低下防止)≫
本発明に係る塩化コバルト水溶液の製造方法は、(1)塩化ニッケル水溶液から有機相にコバルトを抽出する抽出段と、(2)コバルトを含む有機相に逆抽出後の水相の一部を混合してその有機相に含まれるニッケルを除去する洗浄段と、(3)洗浄後有機相に逆抽出剤としての弱酸性水溶液を接触させることによって有機相中のコバルトを脱離させ、塩化コバルト水溶液の水相を得る逆抽出段と、を有する溶媒抽出工程を含むものである。
そして、この塩化コバルト水溶液の製造方法では、上述した知見に基づき、抽出段(1)において、抽出処理に先立ち、新規な有機相に対して洗浄液による洗浄処理を行うことによってその有機相に含まれるスルホランを洗浄除去して洗浄後有機相を得る抽出前処理を行うことを特徴としている。なお、抽出段(1)では、その抽出前処理を経て得られる抽出前処理後有機相と、コバルトを含む塩化ニッケル水溶液とを混合してコバルトを抽出する。
このように、抽出段(1)にて抽出処理を施すに先立ち、抽出前処理として有機相を洗浄する洗浄処理を施すことで、エントレインメント洗浄効率の低下の原因であるスルホランを有効に除去することができる。そして、その抽出前処理後有機相を用いて塩化ニッケル水溶液からコバルトを抽出する処理を行うことで、有機相に含まれるエントレインメントの逆ミセル化を抑制することができ、洗浄段(2)において有機相に含まれるニッケルを効果的に除去することができる。これにより、安定的に、低ニッケル濃度の塩化コバルト水溶液を製造することができる。
ここで、芳香族炭化水素系希釈剤に由来するスルホランが含まれるようになった有機相の洗浄処理については、抽出段(1)、洗浄段(2)、そして逆抽出段(3)を経て得られる逆抽出後の有機相に対して行うことも考えられる。しかしながら、後述する試験例でも示すように、逆抽出後有機相に対する洗浄処理では、ほとんどスルホランを除去することができないことが判明した。このことから、抽出段(1)にて抽出処理を施すに先立って新規な有機相を洗浄する洗浄処理を施すことが、エントレインメント洗浄効率の低下の原因であるスルホランの有効な除去には重要となる。
なお、スルホランの洗浄処理を施す対象である新規な有機相を「抽出前有機相」ともいう。
また、溶媒抽出工程では、さらに、(4)逆抽出段での逆抽出後の有機相をアルカリによる中和処理に付し、次いで、その中和処理後の有機相を塩酸水溶液による塩酸付加処理に付すことにより再生後有機相を得て、抽出段に繰り返す再生段を有してもよい。
上述したように、本発明に係る塩化コバルト水溶液の製造方法では、抽出前処理として抽出前有機相中のスルホランを洗浄除去している。このことから、抽出段(1)、洗浄段(2)、そして逆抽出段(3)を経て得られる逆抽出後の有機相には、スルホランがほとんど含まれていないといえる。したがって、そのような逆抽出後の有機相をアルカリによる中和処理に付し、次いで、中和処理後の有機相を塩酸水溶液による塩酸付加処理に付すことにより、抽出段(1)で使用する有機相として有効に再利用することができ、エントレインメント洗浄効率の低下も抑えながら効率的に塩化コバルト水溶液を製造できる。
抽出前処理における有機相の洗浄では、弱酸性〜中性のpH領域にある水溶液を洗浄液として用いることができる。エントレインメント洗浄効率の低下の原因であってこの洗浄処理での除去対象であるスルホランは、水溶性の化合物である。したがって、洗浄液としては、弱酸性〜中性のpH領域にある水溶液を用いることで、安全性高く、効果的にスルホランを洗浄除去することができる。
洗浄液として用いる弱酸性〜中性の水溶液は、具体的にpH4〜8程度の領域にある水溶液であり、特に限定されないが、水(純水)を用いることが好ましい。
抽出前処理における洗浄では、有機相の体積(有機相体積:O)と洗浄液の体積(水相体積:A)との比率O/Aが0.2以上、5.0以下となるように処理することが好ましく、0.2以上、1.0未満となるように処理することがより好ましい。O/Aが0.2未満であると、洗浄液が多すぎて、かえってエントレインメントの増加を招き、効率的な洗浄処理を行うことができなくなる。一方で、O/Aが5.0を超えると、水等の洗浄液による洗浄効果が低下して効率的にスルホランを除去できない可能性がある。特に、より好ましくは比率O/Aが0.2以上、1.0未満となるように処理することで、有機相の単位体積当たりのスルホランの洗浄効率をより向上させることができる。
なお、抽出前処理における洗浄の温度としては、特に限定されず、例えば液温が50〜70℃、好ましくは55〜65℃となるように処理する。
[試験1:新規な有機相と逆抽出後有機相とのスルホラン除去の比較検証]
(試験内容)
試験1として、有機相に含まれるようになったスルホランの洗浄除去の有効なタイミングを検証するために、新規の有機相と、抽出段、洗浄段、そして逆抽出段を経て得られる逆抽出後有機相とを用いて、洗浄効果の比較を行った。
有機相としては、3級アミン系抽出剤であるTNOAを、有機溶媒用希釈剤のスワゾール1800(芳香族炭化水素系希釈剤,丸善石油化学社製)により希釈して得られる有機溶媒(抽出剤濃度28体積%)により構成した。また、抽出段、洗浄段、及び逆抽出段の処理は、図1のフロー図に示すように行い、逆抽出段を経て逆抽出後有機相を得た。
洗浄処理では、洗浄液として純水を用い、有機相と純水とを分液漏斗に装入して、試験温度(液温)60℃、撹拌時間30秒として、それらを混合撹拌した。このとき、有機相体積(O)と洗浄液(水相)体積(A)との比率O/Aを1.0、3.0、10.0の3段階で変化させて試験を実施した。混合撹拌後に、分相して得られた水相中のスルホラン濃度(ppm)を分析した。なお、水相中のスルホラン濃度は高速液体クロマトグラフィー法により測定した。
(結果)
下記表1に、各O/A比率の有機相と洗浄液の液量を示す。また、下記表2に、新規な有機相と逆抽出後有機相とのそれぞれの洗浄後の水相中スルホラン濃度の測定結果を示す。
Figure 2020164945
Figure 2020164945
表2に示す分析結果から明らかなように、新規な有機相では、洗浄液である純水との洗浄処理によりスルホランを効果的に洗浄除去できた一方で、逆抽出後有機相では、水相中スルホラン濃度が0ppmであった。また、新規な有機相と逆抽出後有機相とで分相の様子を確認したところ、逆抽出後有機相ではエマルジョン相の形成が観察され、また分相性も悪かった。なお、逆抽出後有機相に形成されたエマルジョン相は30分以上放置しても解消されなかった。
この結果から、スルホランを除去する洗浄処理は、抽出段における抽出処理を行う前の有機相(抽出前有機相)に対して行うことが有効であることが分かった。
[試験2:逆抽出後有機相を用いた洗浄における液温の影響の確認検証]
(試験内容)
試験2として、逆抽出後有機相に対する洗浄において液温の影響を確認するため、比率O/Aが1.0となるように有機相(400ml)と純水(400ml)とを分液漏斗に装入して、試験温度(液温)50℃、撹拌時間30秒として、それらを混合撹拌して洗浄を実施した。混合撹拌後に、分相して得られた水相中のスルホラン濃度(ppm)を分析した。なお、その他の条件は試験1と同様とした。
(結果)
その結果、液温を50℃とした場合であっても、水相中スルホラン濃度は0ppmであり、全く洗浄除去できなかった。また、逆抽出後有機相ではエマルジョン相の形成が観察され、また分相性も悪く、エマルジョン相は30分以上放置しても解消されなかった。
この結果より、逆抽出後有機相を用いた洗浄における液温の影響は無いものを判断されたことから、やはり、スルホランを除去する洗浄処理は、抽出段における抽出処理を行う前の有機相(抽出前有機相)に対して行うことが有効であることが分かった。
[試験3:新規な有機相に対するスルホランの洗浄効果の検証]
(試験内容)
試験3として、抽出段における抽出処理を行う前の有機相(抽出前有機相)に対するスルホランの洗浄効果を確認するため、新規な有機相を用い、比率O/Aが0.25となるように有機相(160ml)と純水(640ml)とを分液漏斗に装入して、試験温度(液温)60℃、撹拌時間30秒として、それらを混合撹拌して洗浄を実施した。1回目の混合撹拌後、水相を入れ替えて2回目の洗浄を実施した。1回目と2回目の混合撹拌後に分相して得られた水相中のスルホラン濃度(ppm)をそれぞれ分析した。なお、その他の条件は試験1と同様とした。
(結果)
下記表3に、洗浄1回目と2回目のそれぞれの水相中スルホラン濃度の結果を示す。なお、上述した合計2回の洗浄処理の試験を複数回行った。また、表中に、希釈剤として用いたスワゾールの製造会社がS濃度から換算したスルホラン濃度を参考として示す。
Figure 2020164945
表3に示す分析結果から、洗浄2回目における水相中スルホラン濃度が0ppmであったことから、1回目の洗浄により有機相中のスルホランのほとんどを洗浄除去できたことがわかる。また、その洗浄後1回目で得られた水相中のスルホラン濃度は、メーカー値のスルホラン濃度と極めて近似しており、複数回の洗浄処理の試験での洗浄効率としては67〜100%という結果になった。
このように、抽出段における抽出処理を行う前の有機相に対して純水等の洗浄液を用いて洗浄処理を行うことで、スルホランを高い洗浄効率で洗浄できることが分かった。
なお、[試験1]では、O/Aが1.0のとき水相中スルホラン濃度が100ppm、O/Aが3.0のとき水相中スルホラン濃度が133ppm、O/Aが10.0のとき水相中スルホラン濃度が70ppmであり、[試験3]では、O/Aが0.25のとき水相中スルホラン濃度が120ppmであったことから、有機相の単位体積当たりに洗浄されたスルホラン量の比率は、O/Aが1.0のときの100に対して、O/Aが0.25では480、O/Aが3.0では44、O/Aが10.0では7、となる。
このことから、O/Aが0.2以上、1.0未満となるように洗浄することがより好ましいと言える。
[試験4:塩化コバルト水溶液の製造プラントでの検証]
塩化コバルト水溶液の製造プラントにおいて、新規な有機相に対する洗浄試験を実施した。有機相としては、3級アミン系抽出剤であるTNOAを、有機溶媒用希釈剤のスワゾール1800(芳香族炭化水素系希釈剤,丸善石油化学社製)により希釈して得られる有機溶媒(抽出剤濃度28体積%)により構成した。
具体的には、3mのタンクに、有機溶媒を15L/分、63〜70℃の工業用水を60L/分で供給し、撹拌機で撹拌を行った。その後、セトラーにより油水分離後の洗浄液を採取してスルホランの分析を行ったところ、洗浄効率(洗浄されたスルホラン量÷新規な有機相中のスルホラン量×100)は、66〜85%であった。
1 ミキサーセトラー型溶媒抽出装置
11 ミキサー部
11a 水相装入口
11b 有機相装入口
12 セトラー部
13 排出部
13w 隔壁
14 樋
20 撹拌装置
20a 撹拌軸
20b 撹拌羽根

Claims (5)

  1. ミキサーセトラー型溶媒抽出装置を用い、アミン系抽出剤と芳香族炭化水素系希釈剤とを含む有機溶媒を有機相に用いた溶媒抽出法によって、コバルトを含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離回収して塩化コバルト水溶液を製造する方法であって、
    (1)前記塩化ニッケル水溶液から前記有機相にコバルトを抽出する抽出段と、
    (2)前記抽出段にて得られたコバルトを含む有機相に逆抽出後の水相の一部を混合して、該有機相に含まれるニッケルを除去する洗浄段と、
    (3)前記洗浄段での洗浄後の有機相に、逆抽出剤としての弱酸性水溶液を接触させることによって該有機相中のコバルトを脱離させ、塩化コバルト水溶液の水相を得る逆抽出段と、
    を有する溶媒抽出工程を含み、
    前記抽出段では、前記有機相に対して洗浄液による洗浄処理を行うことによって該有機相に含まれるスルホランを洗浄除去する抽出前処理を行い、その後、該抽出前処理後の有機相と前記塩化ニッケル水溶液とを混合してコバルトを抽出する
    塩化コバルト水溶液の製造方法。
  2. 前記抽出前処理では、前記有機相の体積(有機相体積:O)と前記洗浄液の体積(水相体積:A)との比率O/Aが0.2以上、1.0未満となるように処理する
    請求項1に記載の塩化コバルト水溶液の製造方法。
  3. 前記抽出前処理では、前記洗浄液として水を用いる
    請求項1又は2に記載の塩化コバルト水溶液の製造方法。
  4. 前記溶媒抽出工程は、さらに、
    (4)前記逆抽出段での逆抽出後の有機相をアルカリによる中和処理に付し、次いで、該中和処理後の有機相を塩酸水溶液による塩酸付加処理に付すことにより再生後有機相を得て、前記抽出段に繰り返す再生段を有する
    請求項1乃至3のいずれかに記載の塩化コバルト水溶液の製造方法。
  5. 前記アミン系抽出剤は、3級アミンである
    請求項1乃至4のいずれかに記載の塩化コバルト水溶液の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN117438123A (zh) * 2023-12-22 2024-01-23 中国核电工程有限公司 确定萃取柱中铀萃取区的方法、装置、控制其位置的方法

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