JP2010196122A - 有機相からの金属元素の除去方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶媒抽出工程を構成する逆抽出段から産出される、脱離されずに残留された鉄、亜鉛又は銅から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相から該金属元素を除去する方法において、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利な有機相からの鉄、亜鉛及び銅の除去方法を提供する。
【解決手段】前記抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
【選択図】なし
【解決手段】前記抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
【選択図】なし
Description
本発明は、有機相からの金属元素の除去方法に関し、さらに詳しくは、溶媒抽出工程を構成する逆抽出段から産出される、脱離されずに残留された鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相から、鉄及び/又は亜鉛を除去する方法において、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利な有機相からの金属元素の除去方法に関する。
ニッケルの湿式製錬法において、酸性塩化物水溶液中に含まれるニッケルとコバルトの分離は重要な技術要素であり、一般的には、ニッケルに対しコバルトが酸化されやすいことを利用した酸化中和法、或いは各種の有機抽出剤による溶媒抽出法が用いられている。このうち、ニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出法では、使用する有機抽出剤が、Cyanex272に代表される燐酸エステル系酸性抽出剤と、TNOA(Tri−n−octylamine)、TIOA(Tri−i−octylamine)等に代表されるアミン系抽出剤とに別けられるが、両者ともに優れたコバルトとニッケルの分離性能を有している。しかしながら、一般的には、液中の金属イオン及び塩化物イオン濃度が高い塩化物水溶液の場合には、アミン系抽出剤が用いられる。この理由としては、上記のような条件の水溶液では、コバルトはクロロ錯イオンを形成しているため、アミン系抽出剤の方が、酸性抽出剤に比べてより優れたコバルトとニッケルの分離係数を持つこと、そして、抽出操作に際し中和剤を必要とする酸性抽出剤では、コスト高であり、かつクラッドを発生させずに操業することが困難であることによる。
ところで、通常、コバルトとその他の不純物元素を含有する塩化ニッケル水溶液からコバルトを分離する際、抽出段、洗浄段及び逆抽出段から構成される溶媒抽出工程において、アミン系抽出剤は、次のような特性を有している。
アミン系抽出剤は、通常、下記の式(1)にしたがって、アミン(R3N:)は、塩酸により塩酸付加されたアミンを生成することにより、十分な抽出特性を有するようになり、下記式(2)に従ってクロロ錯イオンの抽出が行われるので、優れたコバルトとニッケルの分離特性を示す。
アミン系抽出剤は、通常、下記の式(1)にしたがって、アミン(R3N:)は、塩酸により塩酸付加されたアミンを生成することにより、十分な抽出特性を有するようになり、下記式(2)に従ってクロロ錯イオンの抽出が行われるので、優れたコバルトとニッケルの分離特性を示す。
式(1):R3N:+HCl=R3N:HCl
式(2)R3N:HCl+MCl3 −=R3N:HMCl3+Cl−
(式中Mは、Zn、Fe、Cu、Co等のクロロ錯イオンを形成する金属種を表す。)
(式中Mは、Zn、Fe、Cu、Co等のクロロ錯イオンを形成する金属種を表す。)
上記抽出段では、この反応により、Zn、Fe、Cu、Co等のクロロ錯イオンを形成する金属種が有機相中に抽出され、金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミンを生成する。なお、ニッケルはクロロ錯イオンを形成しないので、抽出残液に残留して分離される。したがって、ニッケル水溶液中に、コバルトよりもクロロ錯体の形成能が高い、すなわち強く担持される金属、例えば鉄、亜鉛、銅等のクロロ錯イオンが含まれている場合には、これらの金属も抽出される。
また、抽出後の有機相は、必要により、洗浄段で処理される。この抽出後有機相の洗浄段では、抽出後有機相を純度の高い塩化コバルト水溶液で洗浄することによって、抽出段からの水相の持ち込み部分(塩化ニッケル水溶液)を希釈し、ニッケルとコバルトの分離性を高める。なお、洗浄段終液は抽出段に繰り返される。
また、抽出後の有機相は、必要により、洗浄段で処理される。この抽出後有機相の洗浄段では、抽出後有機相を純度の高い塩化コバルト水溶液で洗浄することによって、抽出段からの水相の持ち込み部分(塩化ニッケル水溶液)を希釈し、ニッケルとコバルトの分離性を高める。なお、洗浄段終液は抽出段に繰り返される。
ところで、上記のような金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤からのコバルトの逆抽出段では、該抽出剤を弱酸性水溶液と接触させることにより、容易に下記の式(3)に従って、該水溶液中に脱離される。
式(3):R3N:HCoCl3=R3N:HCl+CoCl2
ここで、コバルトが逆抽出された有機相は再び抽出段に戻され、工程内を循環する。
ところが、鉄、亜鉛、銅等のコバルトよりも強く担持される金属元素のクロロ錯イオンは、コバルトほど容易には脱離されない。したがって、溶媒抽出工程でアミン系抽出剤を繰り返し再利用する際には、鉄、亜鉛、銅等が次第に抽出剤中に蓄積するようになる。このため、抽出段でのアミン系抽出剤へのコバルトの担持が妨害され、終にはコバルトの抽出の大幅な低下を招くことになる。
ところが、鉄、亜鉛、銅等のコバルトよりも強く担持される金属元素のクロロ錯イオンは、コバルトほど容易には脱離されない。したがって、溶媒抽出工程でアミン系抽出剤を繰り返し再利用する際には、鉄、亜鉛、銅等が次第に抽出剤中に蓄積するようになる。このため、抽出段でのアミン系抽出剤へのコバルトの担持が妨害され、終にはコバルトの抽出の大幅な低下を招くことになる。
この解決策として、例えば、鉄、亜鉛、銅等の金属のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤からこれらの金属を分離除去するスクラビング段を設けることが行われる。スクラビング段において、鉄、亜鉛、銅等の金属のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を、塩化物イオンを含まない水溶液、例えば、シュウ酸カリウム水溶液(例えば、特許文献1参照。)、硫酸、硝酸、燐酸イオンのいずれかを含有する水溶液(例えば、特許文献2参照。)と接触させ、該アミン系抽出剤に含まれるクロロ錯イオンを解消させる濃度にまで塩化物イオンを低減させることにより、これらの金属を分離除去することが可能であるが、そのためには、多量のスクラビング液が必要となり現実的ではない。また、次のような問題点があった。
(イ)薬剤によって有機溶媒の劣化が加速される。
(ロ)塩化浴とっては不純物となる化学種を使用している。
(イ)薬剤によって有機溶媒の劣化が加速される。
(ロ)塩化浴とっては不純物となる化学種を使用している。
また、他の方法として、鉄、亜鉛、銅等の金属のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を、強アルカリ水溶液と接触させ、中和して抽出剤に蓄積しているクロロ錯イオンを除去する、アルカリ中和法と呼ばれる方法(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。なお、このようなアルカリ中和による方法では、下記の式(4)のように、水酸化ナトリウム等のアルカリ液を抽出剤と接触させ、水酸化物として金属クロロ錯イオンを除去する。
式(4):(R3N:H)2(ZnCl4)+4NaOH=2R3N:+Zn(OH)2+4NaCl+2H2O
この方法では、形成される中和沈殿物は、ろ過機を用いて固液分離して系外払出しに、一方形成される油水混合相は、油水分離を実施して有機相を回収する。しかしながら、回収した有機相は、アルカリによって中和され塩酸が脱離しているため、再び塩酸と接触させて活性化を行い抽出段に繰り返すことが不可欠である。したがって、アルカリ中和法は、鉄、亜鉛及び銅等の除去率が高いという利点はあるものの、次の問題点があった。
(ハ)中和用アルカリのコストがかかる。
(ニ)有機溶媒が中和沈殿物に付着し、処理が困難となり、また、この分が全てロスとなる。その上産業廃棄物として処理する場合には環境上問題となっていた。
(ホ)有機相と水相の混合相のろ過処理を行う必要があり、ハンドリング性及びろ過性に問題があり、そのろ過操作は手間がかかる作業となっていた。
(ヘ)亜鉛、鉄、銅等の金属元素だけでなく、有機溶媒も中和してしまうため、活性化のための塩酸が必要となりコストが増加する。
以上の状況から、溶媒抽出工程を構成する逆抽出段から産出される、脱離されずに残留された鉄、亜鉛、銅等の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相から、該金属元素を除去する際、金属元素の中和沈殿物のろ過操作が伴われないこと、スクラビング液等の使用液量が少ないこと等が達成されるより効率的な除去方法が求められている。
(ハ)中和用アルカリのコストがかかる。
(ニ)有機溶媒が中和沈殿物に付着し、処理が困難となり、また、この分が全てロスとなる。その上産業廃棄物として処理する場合には環境上問題となっていた。
(ホ)有機相と水相の混合相のろ過処理を行う必要があり、ハンドリング性及びろ過性に問題があり、そのろ過操作は手間がかかる作業となっていた。
(ヘ)亜鉛、鉄、銅等の金属元素だけでなく、有機溶媒も中和してしまうため、活性化のための塩酸が必要となりコストが増加する。
以上の状況から、溶媒抽出工程を構成する逆抽出段から産出される、脱離されずに残留された鉄、亜鉛、銅等の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相から、該金属元素を除去する際、金属元素の中和沈殿物のろ過操作が伴われないこと、スクラビング液等の使用液量が少ないこと等が達成されるより効率的な除去方法が求められている。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、溶媒抽出工程を構成する逆抽出段から産出される、脱離されずに残留された鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相から、鉄及び/又は亜鉛を除去する方法において、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利な有機相からの金属元素の除去方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)から、該金属元素を除去する方法について、鋭意研究を重ねた結果、前記溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液として、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液を使用し、かつ、特定の要件を満足する条件下に水相を形成して逆抽出後有機相を洗浄処理に付したところ、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利に有機相から鉄及び亜鉛を除去方法するこができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)から、該金属元素を除去する方法であって、
前記溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
前記溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記有機相(A)は、鉄を0.5〜1.5g/L及び/又は亜鉛を1〜2g/L含有することを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記塩化物水溶液(B)は、ニッケルを150〜200g/L、コバルトを1〜5g/L、鉄を1〜3g/L、及び亜鉛を10〜20mg/Lの濃度で含有する塩化物水溶液(A)から、下記の第1工程及び第2工程により、該塩化物水溶液中の鉄濃度を25mg/L以下に、かつ該塩化物水溶液中の亜鉛濃度を0.1mg/Lに調整されたものであることを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
第1工程:前記塩化物水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を900〜1050mV、及びpHを2.1〜2.5に調整して、酸化中和処理に付し、鉄を除去する。
第2工程:前記第1工程から得られた酸化中和処理後液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、イオン交換処理に付し、亜鉛を吸着分離する。
第1工程:前記塩化物水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を900〜1050mV、及びpHを2.1〜2.5に調整して、酸化中和処理に付し、鉄を除去する。
第2工程:前記第1工程から得られた酸化中和処理後液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、イオン交換処理に付し、亜鉛を吸着分離する。
また、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明において、前記溶媒抽出工程は、有機相を構成するアミン系抽出剤により酸性塩化物水溶液中に含有される金属元素のクロロ錯イオンを該抽出剤上に担持する抽出段と、それに続く、水相を形成する水溶液により該有機相の抽出剤上に担持されたコバルトを脱離する逆抽出段とを含むことを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1又は2の発明において、前記アミン系抽出剤は、トリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)、又はトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)から選ばれる少なくとも1種の3級アミンであることを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記3級アミンは、芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素からなる希釈剤と混合されて、有機相の全量に対し20〜40容量%含有することを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法が提供される。
本発明の有機相からの金属元素の除去方法は、溶媒抽出工程を構成する逆抽出段から産出される、脱離されずに残留された鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相から、該金属元素を除去する方法において、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利な、例えば、中和用アルカリや活性化用の塩酸の薬剤費を低減することができること、処理困難な沈殿物を出さないこと、有機溶媒のロスがなく、ろ過作業の負荷も低減できること、有機溶媒の劣化も小さく有機相中へ塩化物イオン以外の混入も考慮する必要がないこと、等の利点を有するので、その工業的価値は極めて大きいものである。
以下、本発明の有機相からの金属元素の除去方法を詳細に説明する。
本発明の有機相からの金属元素の除去方法は、抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)から、該金属元素を除去する方法であって、前記溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
本発明の有機相からの金属元素の除去方法は、抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)から、該金属元素を除去する方法であって、前記溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
本発明において、溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液として、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液を準備すること、及び逆抽出後有機相を洗浄処理する際、水相の塩化物濃度が0〜5g/Lであり、有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比が1〜10であることが重要である。
これによって、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利に、逆抽出後有機相から鉄、亜鉛及び銅を除去することができる。
これによって、従来のアルカリ中和法又は非塩化物溶液による洗浄と異なり、設備が簡便で、かつコスト上有利に、逆抽出後有機相から鉄、亜鉛及び銅を除去することができる。
すなわち、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持した有機相を塩化物イオン濃度の低い水溶液と混合すれば、ある程度の鉄又は亜鉛を水相中に逆抽出することが可能であることに着目し、この操作をコバルトが含まれていない逆抽出後有機相に対して行うことによって、鉄又は亜鉛を除去することを試みた。この際、水相中へ除去することができる鉄又は亜鉛の量には限界があるので、逆抽出後有機相中の鉄又は亜鉛の濃度を除去限界内に維持するためには、抽出始液として、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に制限した塩化物水溶液(B)を準備することが必要である。
前記塩化物水溶液(B)の調整方法としては、特に限定されるものではなく、塩化物水溶液からの脱鉄又は脱亜鉛を行なう種々の方法が用いられるが、例えば、溶媒抽出工程で処理する塩化物水溶液として、ニッケルを150〜200g/L、コバルトを1〜5g/L、鉄を1〜3g/L、及び亜鉛を10〜20mg/Lの濃度で含有する塩化物水溶液(A)を用いる際、下記の第1工程及び第2工程を用いることにより、該塩化物水溶液中の鉄濃度を25mg/L以下に、かつ該塩化物水溶液中の亜鉛濃度を0.1mg/Lに調整することができる。
第1工程:前記塩化物水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を900〜1050mV、及びpHを2.1〜2.5に調整して、酸化中和処理に付し、鉄を除去する。
第2工程:前記第1工程から得られた酸化中和処理後液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、イオン交換処理に付し、亜鉛を吸着分離する。
第1工程:前記塩化物水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を900〜1050mV、及びpHを2.1〜2.5に調整して、酸化中和処理に付し、鉄を除去する。
第2工程:前記第1工程から得られた酸化中和処理後液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、イオン交換処理に付し、亜鉛を吸着分離する。
上記第1工程は、ニッケルを150〜200g/L、コバルトを1〜5g/L、鉄を1〜3g/L、及び亜鉛を10〜20mg/Lの濃度で含有する塩化物水溶液に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を900〜1050mV、及びpHを2.1〜2.5に調整して、酸化中和処理に付し、鉄を除去する工程である。これらの条件下に酸化中和処理に付すことにより、塩化物水溶液中の鉄濃度を25mg/L以下に低下することができる。すなわち、その酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が900mV未満、又はそのpHが2.1未満では、酸化中和条件が不十分であり、十分に低い鉄濃度を得ることができない。一方、その酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)が1050mV、又はそのpHが2.5を超えると、ニッケル及びコバルト、特にコバルトの酸化中和反応による共沈殿が生じる。
上記酸化中和処理の条件に関して、図を用いて具体的に説明する。
図1は、下記の条件で酸化中和処理した際のpHと処理後の終液中鉄濃度の関係を表す。
ここで、ニッケルを160〜190g/L、コバルトを2.0〜4.0g/L、及び鉄を1.4〜2.2g/L含む塩化物水溶液に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を990〜1050mV、及びpHを1.8〜2.9に調整して、45分間保持して酸化中和処理に付し、処理後の終液スラリーを固液分離して、終液中の溶存鉄濃度を測定した結果である。
図1より、前記酸化還元電位及び滞留時間の条件下、pHが2.1以上であれば、処理後の終液中鉄濃度が25mg/L以下になることが分かる。
図1は、下記の条件で酸化中和処理した際のpHと処理後の終液中鉄濃度の関係を表す。
ここで、ニッケルを160〜190g/L、コバルトを2.0〜4.0g/L、及び鉄を1.4〜2.2g/L含む塩化物水溶液に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を990〜1050mV、及びpHを1.8〜2.9に調整して、45分間保持して酸化中和処理に付し、処理後の終液スラリーを固液分離して、終液中の溶存鉄濃度を測定した結果である。
図1より、前記酸化還元電位及び滞留時間の条件下、pHが2.1以上であれば、処理後の終液中鉄濃度が25mg/L以下になることが分かる。
前記第2工程は、前記第1工程から得られた酸化中和処理後液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、イオン交換処理に付し、亜鉛を吸着分離する工程である。
すなわち、第1工程で沈殿生成しないで塩化物水溶液中に塩化物錯体として残留する亜鉛を弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させる。なお、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、市販のアンバーライトシリーズ(製造元:オルガノ株式会社)等の官能基に3級アミンを含むものが好ましい。ここで、処理後の塩化物水溶液中の亜鉛濃度としては、低いほど好ましいが、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた通常の条件で、0.1mg/Lにまで低下することができる。
すなわち、第1工程で沈殿生成しないで塩化物水溶液中に塩化物錯体として残留する亜鉛を弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させる。なお、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、市販のアンバーライトシリーズ(製造元:オルガノ株式会社)等の官能基に3級アミンを含むものが好ましい。ここで、処理後の塩化物水溶液中の亜鉛濃度としては、低いほど好ましいが、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いた通常の条件で、0.1mg/Lにまで低下することができる。
本発明の除去方法において、以上の第1工程及び第2工程を経て得られた塩化物水溶液(B)を抽出始液として溶媒抽出工程を行なう。
上記溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)としては、特に限定されるものではないが、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤と希釈剤とからなるものであり、例えば、ニッケルとコバルトとともに微量の鉄、亜鉛及び銅その他の金属を含有する酸性塩化物水溶液からなる浸出液中のニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出工程において、それを構成する抽出段で産出されるコバルトを担持した抽出剤から希塩酸水溶液によりコバルトを脱離する逆抽出段において産出される逆抽出されたアミン系抽出剤を含む有機相が好ましく用いられる。
上記溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)としては、特に限定されるものではないが、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤と希釈剤とからなるものであり、例えば、ニッケルとコバルトとともに微量の鉄、亜鉛及び銅その他の金属を含有する酸性塩化物水溶液からなる浸出液中のニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出工程において、それを構成する抽出段で産出されるコバルトを担持した抽出剤から希塩酸水溶液によりコバルトを脱離する逆抽出段において産出される逆抽出されたアミン系抽出剤を含む有機相が好ましく用いられる。
前記酸性塩化物水溶液からなる浸出液としては、例えば、ニッケル鉱石又はニッケル硫化物の硫酸浸出法又は塩素浸出法から産出される。なお、硫酸浸出法では、浸出液の酸性塩化物水溶液への転換が行われたものである。
前記溶媒抽出工程は、有機相を構成するアミン系抽出剤により酸性塩化物水溶液中に含有される金属元素のクロロ錯イオンを該抽出剤上に担持する抽出段と、それに続く、水相を形成する水溶液により該有機相の抽出剤上に担持されたコバルトを脱離する逆抽出段とを含むものである。また、必要により、抽出後有機相を純度の高い塩化コバルト水溶液で洗浄することによって、抽出段からの水相の持ち込み部分(塩化ニッケル水溶液)を希釈し、ニッケルとコバルトの分離性を高める働きがある、コバルトの抽出後有機相の洗浄段を設けることができる。
この溶媒抽出工程の抽出段では、アミン系抽出剤からなる有機相と酸性塩化物水溶液からなる水相が混合接触され、該水溶液中に含有されるコバルトのクロロ錯イオンが抽出剤上に担持され、ニッケルを抽出残液中に残留させる。この際、鉄、亜鉛、銅等のクロロ錯イオンが共存すると、抽出剤上に担持されてしまう。また、それに続く逆抽出段では、抽出段からの有機相と希塩酸水溶液からなる水相が混合接触され、有機相に担持されたコバルトを水相へ移行させて分離する。
この溶媒抽出工程の抽出段では、アミン系抽出剤からなる有機相と酸性塩化物水溶液からなる水相が混合接触され、該水溶液中に含有されるコバルトのクロロ錯イオンが抽出剤上に担持され、ニッケルを抽出残液中に残留させる。この際、鉄、亜鉛、銅等のクロロ錯イオンが共存すると、抽出剤上に担持されてしまう。また、それに続く逆抽出段では、抽出段からの有機相と希塩酸水溶液からなる水相が混合接触され、有機相に担持されたコバルトを水相へ移行させて分離する。
上記アミン系抽出剤としては、特に限定されるものではなく、ニッケルとコバルトとの選択性に優れる3級アミンが用いられるが、この中で、トリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)、又はトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)から選ばれる少なくとも1種の3級アミンが好ましく、TNOAがより好ましい。なお、前記3級アミンは、有機相の粘性と抽出効率から、必要により、芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素からなる希釈剤と混合されて、有機相の全量に対し20〜40容量%含有するようにして用いることができる。
上記逆抽出後有機相の洗浄処理としては、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して行なうことが肝要である。これによって、鉄及び亜鉛の溶媒抽出工程へのインプット量以上の量を水相中に分配させて払いだすことができる。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩化物濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩化物濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。
上記洗浄処理において、洗浄始液として、水又は塩酸水溶液を用いて、水相の塩化物濃度を0〜5g/Lとする((1)の要件)。すなわち、その塩化物濃度が5g/Lを超えると、クロロ錯体を形成し、有機相側に抽出されやすくなるためである。
このとき有機相(A)は、鉄を0.5〜1.5g/L、及び亜鉛を1〜2g/L含有するように管理することが好ましい。すなわち、有機相(A)中の鉄及び亜鉛の濃度が高い方が除去効率は増すものの、高すぎると抽出段や逆抽出段で得られる塩化ニッケル水溶液又は塩化コバルト水溶液中に鉄及び亜鉛が分配してしまい産出液の品質低下を招くためである。
このとき有機相(A)は、鉄を0.5〜1.5g/L、及び亜鉛を1〜2g/L含有するように管理することが好ましい。すなわち、有機相(A)中の鉄及び亜鉛の濃度が高い方が除去効率は増すものの、高すぎると抽出段や逆抽出段で得られる塩化ニッケル水溶液又は塩化コバルト水溶液中に鉄及び亜鉛が分配してしまい産出液の品質低下を招くためである。
また、このときの有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10とする((2)の要件)。すなわち、(有機相/水相)比が1未満では、一度に水相中に除去できる鉄及び亜鉛の量は多くなるが、汚水発生量が増加し、排水のCOD排出量等の問題が発生する。一方、(有機相/水相)比が10を超えると、鉄及び亜鉛の除去量が小さくなったり、油水分離性が悪化する。
ここで、塩酸等の塩化物を含まない水で洗浄した場合、逆抽出後有機相中のアミン系抽出剤から塩酸が洗浄後の水相中に脱離し、水相中の塩素濃度は、0.2g/L程度になるので、この脱離分以上の塩酸を洗浄始液に添加することによって有機相中からの脱離を防止することができる。また、水相中の塩素濃度が上昇するので油水分離性も向上する。例えば、塩素濃度が、0と4g/Lの水相と逆抽出後有機相とを有機相/水相)比が1で、1200rpmで3分間攪拌し、攪拌停止後に完全に相分離するまでの時間を測定したところ、塩素濃度が0g/Lでは72秒に対し、塩素濃度が4g/Lでは56秒であった。
ここで、塩酸等の塩化物を含まない水で洗浄した場合、逆抽出後有機相中のアミン系抽出剤から塩酸が洗浄後の水相中に脱離し、水相中の塩素濃度は、0.2g/L程度になるので、この脱離分以上の塩酸を洗浄始液に添加することによって有機相中からの脱離を防止することができる。また、水相中の塩素濃度が上昇するので油水分離性も向上する。例えば、塩素濃度が、0と4g/Lの水相と逆抽出後有機相とを有機相/水相)比が1で、1200rpmで3分間攪拌し、攪拌停止後に完全に相分離するまでの時間を測定したところ、塩素濃度が0g/Lでは72秒に対し、塩素濃度が4g/Lでは56秒であった。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析は、ICP発光分析法で行った。
(実施例1、2)
下記の第1工程及び第2工程により、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)を準備し、抽出段3段、洗浄段3段及び逆抽出段3段から構成され、さらに逆抽出段後有機相を、水相を形成して洗浄処理する工程を付加した溶媒抽出工程で処理して、鉄及び亜鉛を除去した有機相を得た。
(1)第1工程
ニッケルを170g/L、コバルトを2.5g/L、亜鉛を93mg/L及び鉄を2.0g/L含む塩化物水溶液に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を990〜1050mV及びpHを2.3に調整して、45分間保持して酸化中和処理に付し、処理後の終液スラリーを固液分離して、処理後の終液を得た。
処理後の終液の組成は、ニッケルが170g/L、コバルトが2.5g/L、亜鉛が93mg/L、及び鉄が8mg/Lであった。これより、終液中の鉄は25mg/L以下まで除去することができることが分かる。
(2)第2工程
第1工程で得られた終液を、体積比で樹脂:液=2〜12:100となるように、弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、オルガノ社製)と混合した後、処理後の終液中の亜鉛平衡濃度を分析した。結果を図2に示す。図2は、イオン交換処理した際の亜鉛の吸着等温線を示す。
図2より、終液中の亜鉛は0.1mg/L以下まで除去することができることが分かる。
下記の第1工程及び第2工程により、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)を準備し、抽出段3段、洗浄段3段及び逆抽出段3段から構成され、さらに逆抽出段後有機相を、水相を形成して洗浄処理する工程を付加した溶媒抽出工程で処理して、鉄及び亜鉛を除去した有機相を得た。
(1)第1工程
ニッケルを170g/L、コバルトを2.5g/L、亜鉛を93mg/L及び鉄を2.0g/L含む塩化物水溶液に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を990〜1050mV及びpHを2.3に調整して、45分間保持して酸化中和処理に付し、処理後の終液スラリーを固液分離して、処理後の終液を得た。
処理後の終液の組成は、ニッケルが170g/L、コバルトが2.5g/L、亜鉛が93mg/L、及び鉄が8mg/Lであった。これより、終液中の鉄は25mg/L以下まで除去することができることが分かる。
(2)第2工程
第1工程で得られた終液を、体積比で樹脂:液=2〜12:100となるように、弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、オルガノ社製)と混合した後、処理後の終液中の亜鉛平衡濃度を分析した。結果を図2に示す。図2は、イオン交換処理した際の亜鉛の吸着等温線を示す。
図2より、終液中の亜鉛は0.1mg/L以下まで除去することができることが分かる。
(3)溶媒抽出工程
前記抽出段3段、洗浄段3段、逆抽出段3段、及び逆抽出段後有機相を洗浄処理する工程を有する溶媒抽出工程で処理した。
抽出段へ、抽出始液として、上記第1工程及び第2工程で処理して得られた塩化物水溶液(鉄:25mg/L、亜鉛:0.1mg/L)を供給した。また、有機相として、30容量%のTNOAを含有する有機溶媒を310mL/分の流量で供給した。このときの(有機相/水相)比は、0.7であった。したがって、このときの抽出段への亜鉛インプットは0.03mg/分、及び鉄インプットは7.8mg/分である。
ここで、逆抽出段後有機相を洗浄処理する工程は、(有機相/水相)比が7の条件下で、洗浄始液(水相)として、水(実施例1)又は塩素濃度4g/Lの塩酸水溶液(実施例2)を用いて行なった。ここで、亜鉛、鉄及び銅の濃度が、それぞれ、2.1g/L、1.6g/L及び0.5g/Lである逆抽出段後有機相を用いた際、洗浄処理後の洗浄終液(水相)中の亜鉛及び鉄濃度(g/L)と亜鉛及び鉄物量(mg/分)を求めた。結果を表1(実施例1)、表2(実施例2)に示す。
前記抽出段3段、洗浄段3段、逆抽出段3段、及び逆抽出段後有機相を洗浄処理する工程を有する溶媒抽出工程で処理した。
抽出段へ、抽出始液として、上記第1工程及び第2工程で処理して得られた塩化物水溶液(鉄:25mg/L、亜鉛:0.1mg/L)を供給した。また、有機相として、30容量%のTNOAを含有する有機溶媒を310mL/分の流量で供給した。このときの(有機相/水相)比は、0.7であった。したがって、このときの抽出段への亜鉛インプットは0.03mg/分、及び鉄インプットは7.8mg/分である。
ここで、逆抽出段後有機相を洗浄処理する工程は、(有機相/水相)比が7の条件下で、洗浄始液(水相)として、水(実施例1)又は塩素濃度4g/Lの塩酸水溶液(実施例2)を用いて行なった。ここで、亜鉛、鉄及び銅の濃度が、それぞれ、2.1g/L、1.6g/L及び0.5g/Lである逆抽出段後有機相を用いた際、洗浄処理後の洗浄終液(水相)中の亜鉛及び鉄濃度(g/L)と亜鉛及び鉄物量(mg/分)を求めた。結果を表1(実施例1)、表2(実施例2)に示す。
表1、表2より、実施例1及び2では、洗浄処理後の洗浄終液中の亜鉛及び鉄物量(mg/分)は、抽出段への亜鉛インプット(0.03mg/分)、及び鉄インプット(7.8mg/分)以上であるので、溶媒抽出工程への亜鉛及び鉄のインプット以上の量を、逆抽出段後有機相の洗浄後の水相中に除去することができることが分かる。
(比較例1)
実施例1の溶媒抽出工程において、塩素濃度9g/Lの塩酸水溶液を用いたこと以外は同様に行い、洗浄処理後の洗浄終液(水相)中の亜鉛及び鉄濃度(g/L)と亜鉛及び鉄物量(mg/分)を求めた。結果を表3に示す。
実施例1の溶媒抽出工程において、塩素濃度9g/Lの塩酸水溶液を用いたこと以外は同様に行い、洗浄処理後の洗浄終液(水相)中の亜鉛及び鉄濃度(g/L)と亜鉛及び鉄物量(mg/分)を求めた。結果を表3に示す。
表3より、洗浄処理後の洗浄終液中の亜鉛及び鉄物量(mg/分)は、抽出段への亜鉛インプット(0.03mg/分)、及び鉄インプット(7.8mg/分)を下回るので、亜鉛及び鉄の有機相中への濃縮が進むことが分かる。
以上より明らかなように、本発明の有機相からの金属元素の除去方法は、特に、ニッケルとコバルトとともに微量のその他の金属を含有する酸性塩化物水溶液からなる浸出液中のニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出工程において、それを構成する抽出段で産出されるコバルトを担持した抽出剤から希塩酸水溶液によりコバルトを脱離する逆抽出段において産出される逆抽出された有機相から、鉄及び亜鉛を除去する方法として好適である。
Claims (6)
- 抽出段と逆抽出段を含む溶媒抽出工程の逆抽出段から産出される、鉄又は亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属元素のクロロ錯イオンを担持したアミン系抽出剤を含む有機相(A)から、該金属元素を除去する方法であって、
前記溶媒抽出工程の抽出段に供給する抽出始液は、ニッケルとコバルトを含有し、鉄を25mg/L以下及び亜鉛を0.1mg/L以下に除去された塩化物水溶液(B)であり、かつ逆抽出後有機相を、下記の(1)及び(2)の要件を満足する条件下に水相を形成して、洗浄処理に付すことを特徴とする有機相からの金属元素の除去方法。
(1)前記洗浄処理の水相は、水又は塩酸水溶液であり、その塩素濃度が0〜5g/Lである。
(2)前記洗浄処理の有機相と水相の容量比を表す(有機相/水相)比は、1〜10である。 - 前記有機相(A)は、鉄を0.5〜1.5g/L及び/又は亜鉛を1〜2g/L含有することを特徴とする請求項1に記載の有機相からの金属元素の除去方法。
- 前記塩化物水溶液(B)は、ニッケルを150〜200g/L、コバルトを1〜5g/L、鉄を1〜3g/L、及び亜鉛を10〜20mg/Lの濃度で含有する塩化物水溶液(A)から、下記の第1工程及び第2工程により、該塩化物水溶液中の鉄濃度を25mg/L以下に、かつ該塩化物水溶液中の亜鉛濃度を0.1mg/Lに調整されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機相からの金属元素の除去方法。
第1工程:前記塩化物水溶液(A)に、酸化剤として塩素ガスを、及び中和剤として炭酸ニッケルスラリーを添加し、酸化還元電位(銀/塩化銀電極基準)を900〜1050mV、及びpHを2.1〜2.5に調整して、酸化中和処理に付し、鉄を除去する。
第2工程:前記第1工程から得られた酸化中和処理後液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、イオン交換処理に付し、亜鉛を吸着分離する。 - 前記溶媒抽出工程は、有機相を構成するアミン系抽出剤により酸性塩化物水溶液中に含有される金属元素のクロロ錯イオンを該抽出剤上に担持する抽出段と、それに続く、水相を形成する水溶液により該有機相の抽出剤上に担持されたコバルトを脱離する逆抽出段とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機相からの金属元素の除去方法。
- 前記アミン系抽出剤は、トリ−ノルマル−オクチルアミン(TNOA)、又はトリ−イソ−オクチルアミン(TIOA)から選ばれる少なくとも1種の3級アミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機相からの金属元素の除去方法。
- 前記3級アミンは、芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素からなる希釈剤と混合されて、有機相の全量に対し20〜40容量%含有することを特徴とする請求項5に記載の有機相からの金属元素の除去方法。
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