JP5121100B2 - エステル交換油脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エステル交換油脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
消費者の嗜好の変化に伴い、口溶け、 風味、食感がよく、食べたときに油っぽくない食品が好まれ、そのような食品を提供できる油脂が求められている。
【0003】
液状油や比較的融点の低い油脂は、口溶け、風味がよい。又はハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油等に多く含まれるオレイン酸は、血中のHDLコレステロールを減らさずLDLコレステロールのみを減らすと言われ、健康志向の高まる昨今、非常に注目されている。しかし、液状油や比較的融点の低い油脂を例えばフライ油として用いた場合には、熱安定性に欠けるため淡白な風味が持続せず、得られたフライ食品の食感はさくさく感に欠け油っぽくなり好ましくない。またスプレー油として用いた場合には、酸化安定性に欠けるため淡白な風味が持続せず、スプレーした食品の食感もぱりぱり感に欠け油っぽくなり好ましくない。さらに、マーガリンやショートニング製造用油脂として用いた場合には、十分な可塑性を得ることができない。
【0004】
そこで、動植物油脂を水素添加した硬化油、あるいは硬化油を配合した油脂を用いて物性を改良し、油っぽさを低減させ、酸化安定性、熱安定性を改良する方法が広く用いられてきた。しかし、動植物油脂を水素添加した硬化油、あるいは硬化油を配合した油脂を用いて、口溶け、風味、物性、食感のよさと油っぽさの解消を同時に満足できる食品は得がたい。例えば、特開平4−173053号公報では、高エルシン菜種極度硬化油を油脂に対し0.5〜5重量%と比較的少量配合することにより課題に対処しているが、これをフライ油として用いたフライ食品は、油っぽさの面でやや問題がある。特開2001−69913号公報では、極度硬化油を油脂に対し5.1〜35.0重量%と比較的多量に配合することにより課題に対処しているが、これをフライ油として用いたフライ食品は、口溶けの面でやや問題がある。
【0005】
一方、2種以上の油脂をエステル交換して改質したエステル交換油脂、あるいはエステル交換油脂を配合した油脂組成物も公知である。特公平6−43595公報、特開平11−155483号公報、特開平11−262358号公報は、パーム系油脂と炭素数22の飽和脂肪酸を含有する油脂とのエステル交換油脂を含有させることにより、それぞれマーガリン及びショートニング製造用油脂組成物、フライ用油脂組成物、スプレー用油脂組成物を得る方法である。また特開平11−289976号公報には、ラード及び/又は分別ラードと炭素数22の飽和脂肪酸を含有する油脂とのエステル交換油脂を含有した可塑性油脂組成物が記載されている。しかし、これらは食品の物性を満足するには不十分であり、さらなる改良が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、酸化安定性、熱安定性が良好であり、油脂組成物や食品の口溶け、風味、食感及び物性を良好なものとし、さらに油っぽくないものとすることができるエステル交換油脂組成物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭素数18〜20の飽和脂肪酸を15重量%以上含有する油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂Aと、炭素数22の飽和脂肪酸を15重量%以上含有する油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂Bと、融点が35℃未満である油脂の中から選ばれた1種または2種以上の油脂Cとを混合し、エステル交換反応することにより、構成脂肪酸として、炭素数18〜20の飽和脂肪酸を15〜60重量%、炭素数22の飽和脂肪酸を2〜20重量%を含有するエステル交換油脂組成物を製造することを特徴とするエステル交換油脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエステル交換油脂組成物の製造方法により製造されるエステル交換油脂組成物(本発明のエステル交換油脂組成物ともいう)について詳しく説明する。
【0009】
本発明のエステル交換油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数18〜20の飽和脂肪酸を15〜60重量%、好ましくは17〜50重量%含有する。炭素数18〜20の飽和脂肪酸の含有量が15重量%未満であると油っぽさの増加等の食感の問題、可塑性の不足等の物性の問題、短期の保存で劣化臭が発生する等の酸化安定性、熱安定性の問題が生じるので好ましくなく、炭素数18〜20の飽和脂肪酸の含有量が60重量%を超えると口溶けの悪化等の食感の問題が生じるので好ましくない。
【0010】
本発明のエステル交換油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数18の飽和脂肪酸を好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは16〜40重量%含有する。
【0011】
また、本発明のエステル交換油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数22の飽和脂肪酸を2〜20重量%、好ましくは3〜19重量%含有する。炭素数22の飽和脂肪酸の含有量が2重量%未満であると油っぽさの増加等の食感の問題、可塑性の不足等の物性の問題、短期の保存で劣化臭が発生する等の酸化安定性、熱安定性の問題が生じるので好ましくなく、炭素数22の飽和脂肪酸の含有量が20重量%を超えると口溶けの悪化等の食感の問題が生じるので好ましくない。
【0012】
本発明のエステル交換油脂組成物は、油脂をエステル交換することにより得られた油脂のことを示すものであり、油脂をエステル交換しさらに分別して得られた油脂を示すものではない。
【0013】
本発明のエステル交換油脂組成物の融点は、好ましくは30〜55℃、さらに好ましくは35〜50℃であり、固体脂含量(SFC)が好ましくは20℃で20〜50%、40℃で5〜35%、60℃で0%であり、さらに好ましくは20℃で22〜40%、40℃で7〜15%、60℃で0%である。
【0014】
次に、本発明のエステル交換油脂組成物の製造方法について説明する。
【0015】
本発明のエステル交換油脂組成物の製造方法は、炭素数18〜20の飽和脂肪酸を15重量%以上含有する油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂Aと、炭素数22の飽和脂肪酸を15重量%以上含有する油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂Bと、融点が35℃未満である油脂の中から選ばれた1種または2種以上の油脂Cとを混合し、エステル交換反応することよりエステル交換油脂組成物を製造する方法である。
【0016】
上記の油脂Aとしては、牛脂、サル脂、シア脂、マンゴー脂、コクム脂、イリッペ脂、これらの分別硬部油、分別軟部油、極度硬化油が挙げられる。また油脂Aとしては大豆油、菜種油、米油、綿実油、とうもろこし油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、ゴマ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、パーム油、ラード、魚油等の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂の極度硬化油が挙げられる。
【0017】
本発明では油脂Aとして牛脂、サル脂、シア脂、これらの分別硬部油、分別軟部油、極度硬化油、大豆極度硬化油を用いるのが好ましい。
【0018】
上記の油脂Bとしては、魚油極度硬化油、ハイエルシン菜種極度硬化油等を挙げることができるが、ハイエルシン菜種極度硬化油を用いることが好ましい。さらに、ハイエルシン菜種極度硬化油は、エルシン酸を20〜60重量%含有する菜種油を沃素価5以下、融点50℃以上まで水素添加したものを用いるのが好ましい。またハイエルシン菜種極度硬化油は、脂肪酸組成として、ステアリン酸が好ましくは35〜40重量%、さらに好ましくは36〜39重量%、アラキジン酸が好ましくは7〜12重量%、さらに好ましくは8〜11重量%、ベヘン酸が好ましくは44〜49重量%、さらに好ましくは45〜48重量%のものを用いるのがよい。
【0019】
さらに本発明では、油脂Cを上記の油脂Aと油脂Bに添加し、エステル交換反応を行う。本発明において油脂Cは融点が35℃未満である油脂を示す。このような油脂Cとしては、大豆油、菜種油、米油、綿実油、とうもろこし油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、ゴマ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、パーム油、パーム分別軟部油等の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂が挙げられる。また油脂Cの脂肪酸組成として、オレイン酸を好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上のものを用いるのがよく、菜種油、ゴマ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、パーム分別軟部油の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂を用いるのが好ましい。
【0020】
本発明のエステル交換油脂組成物は、上記の油脂A、上記の油脂B及び上記の油脂Cの混合油脂をエステル交換することにより製造する。
【0021】
上記の混合油脂中の油脂Aの混合割合は、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは10〜70重量%である。上記の混合油脂中の油脂Bの混合割合は、好ましくは2〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%である。上記の混合油脂中の油脂Cの混合割合は、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。
【0024】
上記のエステル交換の方法としては、リパーゼを触媒として用いる方法又はナトリウムメチラート等の金属触媒を用いる方法の何れの方法でもよいが、リパーゼを用いる方法の方が風味のよいエステル交換油脂組成物となる。
【0025】
上記のリパーゼは、位置特異性を有するものでも、位置特異性を有さないものでもよい。本発明で用いるリパーゼとしては、例えば、アルカリゲネス属、リゾプス属、アスペルギルス属、ムコール属、ペニシリウム属、キャンリダ属等から得られるリパーゼが挙げられる。これらのリパーゼは単体で使用することも可能であるが、通常はケイソウ土、アルミナ、活性炭、セラミック等の担体に固定化させて用いるのがよい。
【0026】
リパーゼを用いたエステル交換反応の反応条件は特に制限はないが、無溶媒下で行うのが好ましく、反応温度60〜85℃で行うのが好ましい。反応は、カラム式の連続反応、バッチ式反応のどちらでもよい。
【0027】
また、ナトリウムメチラート等の金属触媒を用いたエステル交換反応は、通常の方法に従って行えばよい。
【0028】
このようなエステル交換反応で生成した油脂は、通常の方法に従って、漂白、脱臭又は脱酸、漂白、脱臭を行うことによって精製し、本発明のエステル交換油脂組成物となる。
【0029】
このようにして得られたエステル交換油脂組成物は、油脂組成物の原料油脂として用いることができる。
【0030】
ここでいう油脂組成物は、ドーナツ、揚げパン、フリッター、フライドポテト、天ぷら、素揚げ、空揚げ、フライ等の食品を製造する際のフライ用油脂組成物、ポテトやコーン、米、小麦粉等を原料としたスナック菓子類、プレッツェル、ハードビスケット、クラッカー等の菓子類、パン類、ケーキ類等の食品を製造する際のスプレー用油脂組成物として用いることができる。
【0031】
さらに、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、シュ、ドーナツ、ケーキ、クラッカー、クッキー、ビスケット、ワッフル、スコーン、スナック菓子等を製造する際のマーガリン用油脂組成物、ショートニング用油脂組成物として用いることができ、この際、マーガリン用油脂組成物やショートニング用油脂組成物は、ロールイン用、練りこみ用、サンド用、フィリング用、トッピング用、スプレッド用として用いることができる。
【0032】
その他、調理用油脂組成物、ハードバター用油脂組成物、クリーム用油脂組成物、マヨネーズ・ドレッシング用油脂組成物として本発明の油脂組成物を用いることもできる。
【0033】
また、本発明の油脂組成物が乳化させた油脂組成物である場合は、その乳化形態が油中水型、水中油型及び二重乳化型のいずれでも構わない。これらの場合の油相と水相の割合は特に制限はないが、好ましくは油相20〜95重量%と水相80〜5重量%である。
【0034】
上記の油脂組成物において、油相として上記のエステル交換油脂組成物を単独で使用してもよいが、その他の油脂を配合してもよい。配合割合としては、上記エステル交換油脂組成物の含有量が油相中に好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10〜70重量%、最も好ましくは15〜60重量%、その他の油脂の含有量が好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90〜30重量%、最も好ましくは85〜40重量%になるように混合する。このとき、上記エステル交換油脂組成物の含有量が5重量%未満であると、フライ用又はスプレー用油脂組成物として用いた場合には食品が油っぽくなりやすく、マーガリン又はショートニング用油脂組成物として用いた場合には十分な可塑性が得られにくい。
【0035】
上記のエステル交換油脂組成物以外の油脂組成物に配合するその他の油脂としては、目的、用途、経済性等を考慮して、様々なものを使用することが可能である。例えば大豆油、菜種油、米油、綿実油、とうもろこし油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、ゴマ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油等の液状油や、パーム油、サル脂、シア脂、マンゴー脂、コクム脂、イリッペ脂、ラード、牛脂等の固形脂、及びこれらの硬化油、分別油、エステル交換油を、単独又は2種以上配合したもの、2種以上配合して硬化、分別、エステル交換したもの等を、単独もしくは2種以上配合して用いられる。この中で、菜種油、ゴマ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、パーム分別軟部油の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂を配合して用いるのが好ましく、さらには、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油の中から選ばれた1種又は2種以上を用いるのがより好ましい。これらを用いることにより、血中のHDLコレステロールを減らさず、LDLコレステロールのみを減らすと言われているオレイン酸を多く含有する油脂組成物とすることができる。
【0036】
また、上記の油脂組成物の油相中のオレイン酸の含有量は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは52重量%以上である。
【0037】
さらに、上記の油脂組成物に、必要により含有させることができる成分としては、例えば水、乳化剤、増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0038】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、植物ステロール類等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記乳化剤の含有量は、特に制限はないが、本発明の油脂組成物中、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜3重量%、最も好ましくは0.1〜1重量%である。また本発明の油脂組成物において、上記乳化剤が必要でなければ、乳化剤を用いなくてもよい。
【0039】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の含有量は、特に制限はないが、本発明の油脂組成物中、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%である。また、本発明の油脂組成物において、上記増粘安定剤が必要でなければ、増粘安定剤を用いなくてもよい。
【0040】
次に、上記油脂組成物の製造方法を説明する。
【0041】
本発明では、上記油脂組成物を可塑性を有さないものとする場合は、原料を混合することにより製造することができる。
【0042】
一方、上記油脂組成物を可塑性油脂組成物とする場合は、油相、必要により水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、冷却可塑化する。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。また、上記可塑性油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、させなくても構わない。
【0043】
上記可塑性油脂組成物をロールイン用として用いる場合は、その形状を、シート状、ブロック状、円柱状等の形状としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mmである。
【0044】
また、上記のエステル交換油脂組成物を含有する食品としては、食パン、菓子パン、パイ、デニッシュ、シュ、ドーナツ、ケーキ、スフレ、タルト、クラッカー、クッキー、ビスケット、ワッフル、スコーン、スナック菓子、米菓、和菓子、冷菓子、飲料、デザート、カレー、シチュー、コロッケ、グラタン、麺類、チョコレート、ペースト状食品、チーズ類、米飯類、惣菜類、揚げ物類、練り製品等が挙げられる。
【0045】
【実施例】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
尚、下記実施例1〜4のうち、実施例1及び3が本発明の実施例であり、実施例2及び4は参考例である。
【0046】
〔実施例1〕
炭素数18〜20の飽和脂肪酸を89重量%含有する大豆極度硬化油1kgと、エルシン酸を48重量%含有するハイエルシン菜種油を水素添加した、沃素価1.5、融点60.5℃、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸の含有量がそれぞれ37重量%、10重量%、48重量%のハイエルシン菜種極度硬化油1kgと、パームオレイン8kgとを配合し、10kgの配合油を得た。
【0047】
この配合油を用いて、反応温度70℃、触媒としてリパーゼQLC(名糖産業(株)製)50gを用いて、15リットルの反応槽でエステル交換反応を行った。反応終了後(反応時間48hr)、漂白(白土量対油3重量%、85℃、10mmHgの減圧下、30分間)、脱臭(250℃、水蒸気吹き込み量対油3重量%、1mmHgの減圧下、60分間)を行い、融点44.1℃、固体脂含量が20℃で35%、40℃で11%、60℃で0%のエステル交換油脂組成物を得た。得られたエステル交換油脂組成物の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は16重量%、炭素数20の飽和脂肪酸の含有量は1重量%、炭素数22の飽和脂肪酸の含有量は5重量%であった。
【0048】
さらに、このエステル交換油脂組成物50重量%と、ハイオレイックキャノーラ油50重量%とを混合し、トコフェロール200ppmを添加し、オレイン酸含量59重量%の油脂組成物を得た。
【0049】
〔実施例2〕
炭素数18〜20の飽和脂肪酸を28重量%含有するサル脂分別軟部油8kgと、エルシン酸を48重量%含有するハイエルシン菜種油を水素添加した、沃素価1.5、融点60.5℃、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸の含有量がそれぞれ37重量%、10重量%、48重量%のハイエルシン菜種極度硬化油2kgとを配合し、10kgの配合油を得た。
【0050】
この配合油を用い、実施例1と同様の方法でエステル交換、漂白、脱臭を行い、融点47.2℃、固体脂含量が20℃で22%、40℃で8%、60℃で0%のエステル交換油脂組成物を得た。得られたエステル交換油脂組成物の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は26重量%、炭素数20の飽和脂肪酸の含有量は6重量%、炭素数22の飽和脂肪酸の含有量は10重量%であった。
【0051】
さらに、このエステル交換油脂組成物50重量%と、ハイオレイックキャノーラ油50重量%とを混合し、トコフェロール200ppmを添加し、オレイン酸含量59重量%の油脂組成物を得た。
【0052】
〔実施例3〕
炭素数18〜20の飽和脂肪酸を56重量%含有するサル脂分別硬部油7kgと、エルシン酸を48重量%含有するハイエルシン菜種油を水素添加した、沃素価1.5、融点60.5℃、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸の含有量がそれぞれ37重量%、10重量%、48重量%のハイエルシン菜種極度硬化油0.5kgと、ハイオレイックキャノーラ油2.5kgとを配合し、10kgの配合油を得た。
【0053】
この配合油を用い、実施例1と同様の方法でエステル交換、漂白、脱臭を行い、融点49.0℃、固体脂含量が20℃で33%、40℃で12%、60℃で0%のエステル交換油脂組成物を得た。得られたエステル交換油脂組成物の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は36重量%、炭素数20の飽和脂肪酸の含有量は6重量%、炭素数22の飽和脂肪酸の含有量は3重量%であった。
【0054】
さらに、このエステル交換油脂組成物50重量%と、ハイオレイックキャノーラ油50重量%とを混合し、トコフェロール200ppmを添加し、オレイン酸含量63重量%の油脂組成物を得た。
【0055】
〔実施例4〕
エルシン酸を48重量%含有するハイエルシン菜種油を水素添加した、沃素価1.5、融点60.5℃、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸の含有量がそれぞれ37重量%、10重量%、48重量%のハイエルシン菜種極度硬化油4kgと、ハイオレイックキャノーラ油6kgとを配合し、10kgの配合油を得た。
【0056】
この配合油を用い、実施例1と同様の方法でエステル交換、漂白、脱臭を行い、融点35.2℃、固体脂含量が20℃で22%、40℃で8%、60℃で0%のエステル交換油脂組成物を得た。得られたエステル交換油脂組成物の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は16重量%、炭素数20の飽和脂肪酸の含有量は5重量%、炭素数22の飽和脂肪酸の含有量は19重量%であった。
【0057】
さらに、このエステル交換油脂組成物に、トコフェロール200ppmを添加し、オレイン酸含量52重量%の油脂組成物を得た。
【0058】
〔比較例1〕
オレイン酸含量83重量%のハイオレイックキャノーラ油に、トコフェロール200ppmを添加し、油脂組成物を得た。
【0059】
〔比較例2〕
融点36.3℃の魚油硬化油に、トコフェロール200ppmを添加し、油脂組成物を得た。
【0060】
〔比較例3〕
炭素数18〜20の飽和脂肪酸を5重量%含有するパームオレイン9.5kgと、エルシン酸を48重量%含有するハイエルシン菜種油を水素添加した、沃素価1.5、融点60.5℃、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸の含有量がそれぞれ37重量%、10重量%、48重量%のハイエルシン菜種極度硬化油0.5kgとを配合し、10kgの配合油を得た。
【0061】
この配合油を用い、実施例1と同様の方法でエステル交換、漂白、脱臭を行い、融点38.1℃、固体脂含量が20℃で22%、40℃で2%、60℃で0%のエステル交換油脂組成物を得た。得られたエステル交換油脂組成物の炭素数18の飽和脂肪酸の含有量は6重量%、炭素数20の飽和脂肪酸の含有量は1重量%、炭素数22の飽和脂肪酸の含有量は3重量%であった。
【0062】
さらに、このエステル交換油脂組成物50重量%と、ハイオレイックキャノーラ油50重量%とを混合し、トコフェロール200ppmを添加し、オレイン酸含量62重量%の油脂組成物を得た。
【0063】
〔フライテスト1〕
実施例1〜3及び比較例1において得られた油脂組成物をフライ用油脂組成物として用い、市販品冷凍フレンチフライドポテトを揚げ、以下のように評価した。
【0064】
実施例1〜3及び比較例1において得られた油脂組成物3.8kgをフライヤーに挿入し、185℃に加熱後、市販品冷凍フレンチフライドポテトを揚げた。
フライドポテトは凍ったまま揚げ油中に200g入れ、2.5分間揚げた後、速やかに油を切った。フライは3時間で20回行い、油の加熱時間は揚げ時間も含め1 日7時間とした。フライテスト3日目にフライしたフライドポテトでパネルテストを行い、12名のパネルにより、フライドポテトの口溶け、風味(劣化臭)、さくさく感、油っぽさを下記評価基準にて評価した。これらの結果を表1に示した。
【0065】
口溶けの評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
風味の評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
さくさく感の評価;◎:非常にさくさく感がある、○:さくさく感がある、△:あまりさくさく感がない、×:さくさく感がない。
油っぽさの評価 ;◎:非常にあっさりしている、○:あっさりしている、△:やや油っぽい、×:油っぽい。
【0066】
【表1】
【0067】
〔フライテスト2〕
実施例1〜3及び比較例1において得られた油脂組成物をフライ用油脂組成物として用い、市販品冷凍ケーキドーナツを揚げ、以下のように評価した。
【0068】
実施例1〜3及び比較例1において得られた油脂組成物4.5kgをフライヤーに挿入し、180℃に加熱後、市販品冷凍ケーキドーナツを揚げた。冷凍ケーキドーナツ(フライ前約45g/個)は凍ったまま揚げ油中に5個入れ、3分間揚げた後、速やかに油を切った。フライは3時間で20回行い、油の加熱時間は揚げ時間も含め1 日7時間とした。フライテスト3日目にフライしたドーナツでパネルテストを行い、12名のパネルにより、ドーナツの口溶け、風味(劣化臭)、さくさく感、油っぽさを下記評価基準にて評価した。これらの結果を表2に示した。
【0069】
口溶けの評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
風味の評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
さくさく感の評価;◎:非常にさくさく感がある、○:さくさく感がある、△:あまりさくさく感がない、×:さくさく感がない。
油っぽさの評価 ;◎:非常にあっさりしている、○:あっさりしている、△:やや油っぽい、×:油っぽい。
【0070】
【表2】
【0071】
[クラッカー製造テスト]
実施例1〜3及び比較例1において得られた油脂組成物をスプレー用油脂組成物として用い、次のような配合、製法にて得られたクラッカーにスプレーし、評価を行った。
【0072】
<配合>
(中種)
小麦粉(中力粉) 70重量部
イースト 0.25重量部
水 30重量部
(本捏)
小麦粉(強力粉) 30重量部
ショートニング 10重量部
麦芽水飴 1.5重量部
食塩 1.5重量部
重曹 0.65重量部
【0073】
<製法>
(1)上記中種配合を縦型ミキサーで低速2分ミキシングし、捏ね上げ温度を23℃とする。
(2)上記(1)で得られた中種生地を27℃にて18時間発酵させる。
(3)発酵した中種生地に、本捏配合を加え、縦型ミキサーにて低速2分、中速2分ミキシングする。
(4)上記(3)で得られた生地を27℃にて4時間発酵させる。
(5)上記(4)で得られた生地を、3つ折り2回行い、生地厚を2mmまで圧延する。
(6)型抜きし、260℃で4分焼成する。
(7)焼成後、直ちにスプレー用油脂組成物をスプレーする。
【0074】
<クラッカーの評価法>
12名のパネルにより、クラッカーの口溶け、風味、ぱりぱり感、油っぽさを評価した。さらに、焼成したクラッカーに食塩と粉チーズを振り掛けたあと、スプレー用油脂組成物をスプレーし、30℃にて保管し、24時間後と48時間後の風味(劣化臭)、表面のべたつきを下記評価基準で評価した。これらの結果を表3に示した。
【0075】
口溶けの評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
風味の評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
ぱりぱり感の評価;◎:非常にぱりぱり感がある、○:ぱりぱり感がある、△:あまりぱりぱり感がない、×:ぱりぱり感がない。
油っぽさの評価 ;◎:非常にあっさりしている、○:あっさりしている、△:やや油っぽい、×:油っぽい。
べたつきの評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
【0076】
【表3】
【0077】
[マーガリン製造テスト]
実施例1〜4及び比較例1〜3において得られた油脂組成物をマーガリン用油脂組成物として用い、次のような配合でマーガリンを製造した。
<配合>
油脂 100重量部
グリセリン脂肪酸エステル 0.1重量部
レシチン 0.1重量部
水 20重量部
【0078】
マーガリンの可塑性、風味を下記評価基準で評価した。これらの結果を表4に示した。
【0079】
可塑性の評価;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
風味の評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良。
【0080】
【表4】
【0081】
[ショートニング製造テスト]
実施例1〜4及び比較例1〜3において得られた油脂組成物をショートニング用油脂組成物として用い、次のような配合でショートニングを製造した。
【0082】
<配合>
油脂 100重量部
グリセリン脂肪酸エステル 0.1重量部
レシチン 0.1重量部
【0083】
ショートニングの可塑性、風味を下記評価基準で評価した。これらの結果を表5に示した。
【0084】
可塑性の評価;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
風味の評価 ;◎:非常に良好、○:良好、△:やや不良、×:不良
【0085】
【表5】
【0086】
【発明の効果】
本発明のエステル交換油脂組成物は、酸化安定性、熱安定性が良好で、本発明のエステル交換油脂組成物を含有する油脂組成物や食品の口溶け、風味、食感及び物性を良好なものとし、さらに油っぽくないものとすることができる。
Claims (1)
- 炭素数18〜20の飽和脂肪酸を15重量%以上含有する油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂Aと、炭素数22の飽和脂肪酸を15重量%以上含有する油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂Bと、融点が35℃未満である油脂の中から選ばれた1種または2種以上の油脂Cとを混合し、エステル交換反応することにより、構成脂肪酸として、炭素数18〜20の飽和脂肪酸を15〜60重量%、炭素数22の飽和脂肪酸を2〜20重量%含有するエステル交換油脂組成物を製造することを特徴とするエステル交換油脂組成物の製造方法。
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