JP5084381B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体の製造方法に関する。より詳しくは、干渉縞の抑制に効果的な下地層表面形状を有する電子写真感光体の製造方法に関する。
現在、電子写真装置は、高速運転が可能かつ高印字品質を得ることができるので、複写機およびレーザービームプリンター等の分野において広く利用されている。電子写真装置に用いられる感光体としては、有機の光導電材料を用いた有機感光体(OPC)の開発・普及が活発に進められている。また、感光体の構成に関しても、電荷移動型錯体構造や電荷発生材料を結着樹脂中に分散した単層型の感光体から、電荷発生層と電荷輸送層とを分離した機能分離型の感光体構成へと、構成が変遷してきた。機能分離型感光体構成においては、現在、アルミニウム支持体の上に、まず下地層を形成し、その後電荷発生層および電荷輸送層を形成する構成が主流となっている。
ところで、半導体レーザーにて電子写真感光体に露光を行うと、形成されたトナー画像に干渉縞模様が出現し、画像に濃度ムラが発生する場合がある。原因の1つとして、次のことが考えられている。半導体レーザーが感光層内で完全に吸収されず、その透過光が支持体表面あるいは下地層の表面で正反射し、そのため感光層内でレーザービームの多重反射光が生じ、それと感光層表面の反射光との間で干渉が生じるのである。
上記問題を解消する方法として、これまで、導電性支持体を改良する方法や下地層を改良する方法が提案されてきた。導電性支持体の改良としては、例えば、特許文献1では、導電性支持体の表面を陽極酸化法により粗面化する方法が開示されている。特許文献2では、導電性支持体の表面をバイトによる切削で粗面化する方法が開示されている。特許文献3では、ガラスビーズあるいはアルミナなどの研磨剤を吹き付けて照射するブラスト処理により支持体表面を適度に粗面化することが提案されている。特許文献4では、湿度ホーニング処理により支持体表面を適度に粗面化することが提案されている。これは水等の液体に粉末状の研磨剤を懸濁させ、高速度で支持体表面に吹き付けて粗面化する方法である。その場合、表面粗さは、吹き付け圧力、速度、研磨剤の量、種類、形状、大きさ、硬度、比重および懸濁温度等により制御することができ、様々な製造条件が提案されている。
一方、下地層の改良としては、例えば、特許文献5では、支持体上に下地層を形成し、該下地層に導電性の金属酸化物を分散させて下地層表面を粗面化する方法が提案されている。特許文献6には、無切削のアルミニウム支持体表面のササクレを被覆するために、下地層として、導電層および中間層の2層からなる下地層を用いている。そして、導電層には酸素欠損型SnO被覆TiO粒子を含有させ、さらに導電層表面の粗さ制御のため、平均粒径が1μm以上3μm以下のシリコーン樹脂粒子などの粗し粒子を加えることにより、干渉縞を抑制している。特許文献7には、下地層を塗布する工程で、該下地層が未乾燥な状態でこの塗膜に送風して下地層表面に平均ピッチ幅500μm以下で最大粗さが0.3μ以上の粗面を形成する製造方法が提案されている。
特開平05−72785号公報 特開昭58−162975号公報 特開平08−292592号公報 特開2002−107958号公報 特開2005−140963号公報 特開2007−47736号公報 特開平5−88395号公報
しかしながら、上述の特許文献1に記載されている導電性支持体の表面を陽極酸化法により粗面化する方法では、電子写真特性がアルミニウム支持体表面の酸化被膜の状態によって左右され、酸化被膜が薄い部分の抵抗が著しく低下する。よって、黒ポチなどが発生する場合がある。また、酸化被膜のムラは表面形状の粗さムラにも表れ、部分的に干渉縞が発生する場合もある。また、生産において装置が複雑になる傾向もあり、生産性が十分に高いとは言えない。
さらに、特許文献2から4に記載されている方法で加工された電子写真感光体支持体の表面では、切削、ブラストまたはホーニング処理で生じた切削片、研磨剤残りまたはササクレによって黒ポチが発生しやすい。また、それらを除去するための洗浄工程などを設けることが求められ、製造工程が複雑になる傾向がある。また、ここでも、洗浄後の支持体の汚れ、酸化被膜のムラが画像に影響を与える場合があり、製造上の制約が多い。
一方、下地層を改良する方法である、特許文献5に記載されている支持体上に下地層を形成し、該下地層に導電性の金属酸化物を分散させて下地層表面を粗面化する方法では、次のような問題が生じる。すなわち、微粒子を含有させることにより金属酸化物の凝集や沈降などの問題が生じる場合があるので、分散条件や、使用できる溶剤およびバインダー樹脂などに大きな制約が生じ、電子写真特性との両立が難しい場合がある。また、表面の粗さを均一にすることが難しいので部分的に粗さが大きくなることがあり、それはガサツキ画像などが発生する原因となる。また、特許文献6では、導電層および中間層の2層からなる下地層を有する感光体が開示されているが、導電層表面を効果的に粗面化するために粗し粒子を加える場合、熱硬化性樹脂との併用により、膜のクラックが発生しやすい場合がある。よって、クラックや、黒ポチを抑制するためには、粗し粒子の適正な粒径、添加量、塗膜液の分散条件、使用溶剤の制御など生産上の制約をする必要があり、生産の自由度が狭まる場合がある。さらに、特許文献7の方法では、下地層が未乾燥な状態で送風により表面を粗らすので、均一な表面粗さを得ることが製法上難しく、カブリや黒ポチなどの画像欠陥や部分的な干渉縞が発生しやすい。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものである。そして、画像上の黒ポチ、白ポチ、ムラ、スジ、干渉縞、モアレなど画像欠陥のない画像を出力可能な、新規で生産性の高い電子写真感光体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、電子写真感光体の下地層に所定の製造方法で凹凸形状部を形成することによって上述の課題を効果的に改善する、生産性が高い新規な製造方法を見いだした。以下に詳細を記す。
本発明は、支持体と、該支持体上の塗布法により形成された下地層と、該下地層上の塗布法により形成された感光層とを有する電子写真感光体であって該下地層が、導電層および中間層のいずれか一方からなる層あるいは該支持体側から導電層および中間層をこの順に積層してなる層であり、該下地層のうち少なくとも1層が表面に凹凸形状を有する層である電子写真感光体
を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
該製造方法が、該表面に凹凸形状を有する層用の塗布液の塗膜の表面に液体を吹き付けた後、該塗膜の表面を乾燥させることにより、該表面に凹凸形状を有する層を形成する工程を有し、
該液体が、該表面に凹凸形状を有する層用の塗布液をそれに含まれる溶剤で希釈してなる液体であ
ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
本発明によれば、画像上の黒ポチ、白ポチ、ムラ、スジ、干渉縞、モアレなど画像欠陥のない画像を出力可能な、新規で生産性の高い電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、次のような工程からなる。まず、第1工程として、支持体上に下地層用塗布液を塗布する。次に、第2工程として、塗布後の下地層用塗布液の塗膜表面を結露または液体を吹き付けた後、乾燥することにより、微細な凹凸形状を下地層の表面に形成する。最後に、第3工程として、形状が形成された下地層上に感光層用塗布液を塗布することを特徴とする。
ここで、本発明における下地層とは、支持体と感光層との間に存在するすべての層を指す。下地層の構成は、1層でもよいし、2層以上の積層構成でもよい。2層以上の積層構成の場合は、少なくともいずれかの層の表面に、上述の微細な凹凸形状を下地層の表面に形成する工程によって形成された凹凸形状を有する。そして、本発明において、下地層は、導電層または中間層のいずれか一方、または両者が支持体側から順に積層した構成をしている。
また、本発明における支持体は、従来の電子写真感光体で用いられる支持体でよい。すなわち、支持体としては導電性を有するもの(導電性円筒状支持体)が好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレスのような金属製の円筒状支持体を用いることができる。アルミニウムまたはアルミニウム合金の場合は、ED管、EI管や、これらを切削、電解複合研磨(電解作用を有する電極と電解質溶液による電解および研磨作用を有する砥石による研磨)、湿式または乾式ホーニング処理したものも用いることができる。また、アルミニウム、アルミニウム合金または酸化インジウム−酸化スズ合金が真空蒸着によって被膜形成された層を有する上記金属製円筒状支持体や樹脂製円筒状支持体を用いることができる。ここで、該樹脂製円筒状支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ポリプロピレンまたはポリスチレン樹脂を用いることが可能である。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子または銀粒子のような導電性粒子を樹脂や紙に含浸した円筒状支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。支持体およびその酸化被膜を含む体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以下であることが好ましく、特には1×10Ω・cm以下であることがより好ましい。
また、一般的に、下地層は、支持体と感光層との接着性を高める役割、および支持体から感光層へのキャリアの注入を防止し、繰り返し使用時の明部電位と暗部電位の安定性を高める役割を有している。この機能がないと、部分的なキャリアの注入により部分的に黒ポチが発生したり、画像にカブリが生じたりすることがある。
まず、前記第1工程、すなわち支持体上に下地層用塗布液を塗布する工程について、より詳細に説明する。
ED管などの無切削のアルミニウム支持体表面の傷やササクレを被覆するために、支持体と、中間層または感光層との間に、支持体の傷やササクレなどの被覆を目的として導電層を設けてもよい。これは導電性粉体を適当な結着樹脂に分散させた塗布液を塗工することにより形成される層である。該導電層の上に中間層が設けられる場合、第2工程において、導電層に凹凸形状が形成されてから中間層が設けられてもよいし、導電層の上に積層された中間層に凹凸形状が形成されてもよい。
このような導電性粉体としては、以下のようなものが挙げられる。カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛または銀のような金属粉および導電性ポリマー。導電性酸化スズ、酸化チタンまたは酸化亜鉛のような金属酸化物粒子など。酸化スズについては材料の製造時に、酸化アンチモンなどのスズとは異なる価数の金属の化合物や非金属元素などを混合して(ドープして)、粉体抵抗率を1/1000から1/100000に小さくすることが好ましい。また、構成元素を増やさずにノンドープで酸化スズの抵抗をアンチモンドープと同程度に小さくした酸素欠損型酸化スズなども低抵抗化の観点で好ましい。また、塗料の分散性の観点から、硫酸バリウム粒子に酸素欠損型酸化スズを被覆してもよい。また、硫酸バリウム粒子を用い、その上に白色度を向上させるために酸化チタン(TiO)を被覆し、さらにその上に、導電性を付与するために酸化スズを被覆する3層構成の導電性粉体も好ましい。
さらに、芯材粒子として酸化チタン粒子を用い、表面に酸素欠損型酸化スズを被覆した粒子を導電層用塗布液に用いることは、低抵抗化と粒子の分散性向上の観点から好ましい。芯材粒子として酸化チタン粒子を用いることで、酸素欠損型酸化スズの酸素欠損部位と酸化チタン粒子表面の酸化物部位の親和力により、酸素欠損型酸化スズの被覆層と芯材の結合が強化されるのである。また、酸素欠損型はドープ型と異なり、酸素存在下で酸化して酸素欠損部位が消失し、導電性が低下(粉体抵抗率が増加)してしまう場合があるが、芯材粒子として酸化チタン粒子を用いることにより、酸素欠損型酸化スズの酸素欠損部位が保護される。被覆率は質量比率で30%〜70%が好ましい。
これらの導電性粉体の平均粒径としては、0.05μm以上2.0μm以下が好ましく、特には0.1μm以上0.6μm以下がより好ましい。平均粒径がこれよりも大きいと本発明の下地層の表面の凹凸が均一に形成されにくくなり、局所的な表面の荒れにより、感光層への局所的なキャリアの注入が起こりやすく、画像上に黒ポチが生じやすい。従来の製造方法では、平均粒径が0.20μm未満の場合、導電層の体積抵抗率を後述の適正な範囲に収めるには、導電性粉体の使用量を増やす必要があった。ところが、導電性粉体の使用量を増やすと、導電層の表面で反射した光が干渉して出力画像に干渉縞が発生することを抑制するために導電層の表面粗さを好適にすることが難しかった。しかし、本発明の凹凸形状を形成する方法にしたがうと、平均粒径が0.20μm未満でも干渉縞が発生することのない良好な画像出力を得ることができる。
また、同時に用いられる結着樹脂としては、以下の熱可塑樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂樹脂が挙げられる。フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン、フェノキシ樹脂、酢酸セルロース樹脂。エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アルキッド樹脂。スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、など。これらは1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、各種樹脂の中でも、他層へのマイグレーション(溶け込み)の抑制、支持体への密着性、導電性材料の分散性・分散安定性、成膜後の耐溶剤性などの観点から、導電層の結着樹脂は硬化性樹脂が好ましく、特には熱硬化性樹脂がより好ましい。具体的には、熱硬化性のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シロキサン樹脂およびアクリル樹脂などがより好ましい。導電層の結着樹脂として硬化性樹脂を用いる場合、導電層用塗布液に含有させる結着材料は該硬化性樹脂のモノマーおよび/またはオリゴマーとなる。このような加熱による重縮合反応を行う場合には、重合が十分に進行するように、100℃以上で加熱されることが好ましい。また、過度の加熱は電子写真感光体の特性を低下させるおそれがあるため、200℃以下であることが好ましい。さらには、120℃以上170℃以下で加熱が行われることが好ましい。重合工程に必要な時間は、重合が十分に進行するように、5分以上が好ましい。また、加熱時間が長すぎると電子写真感光体の特性を低下させるおそれがあるため、120分以下であることが好ましい。さらには、20分以上90分以下であることがより好ましい。
導電層用塗布液における導電性粉体(P)と結着樹脂(B)との質量比(P:B)は、1.0:1.0から5.0:1.0の範囲にあることが好ましい。導電性粉体が少なすぎると、導電層の体積抵抗率を後述の範囲に収めることが難しくなる。導電性粉体が多すぎると、導電層における導電性粉体の結着が難しくなり、膜のクラックが発生しやすくなる。
さらに、従来の製造方法では、さらなる干渉縞の抑制するために、導電層用塗布液に導電層の表面を粗面化するための表面粗し付与材を添加することが一般的であった。この粗し粒子には、平均粒径が1μm以上3μm以下の樹脂粒子が用いられる。例えば、硬化性ゴム、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、シリコーン樹脂、アクリル−メラミン樹脂などの硬化性樹脂の粒子などが挙げられる。導電層中の表面粗し付与材の含有量は、導電層中の結着樹脂に対して5から20質量%になるように調節する必要があった。なぜなら含有量が多いと、導電層の体積抵抗率が上昇しカブリなどの感光体の特性悪化を引き起こしたり、粗し粒子が凝集することによる膜のクラックが発生しやすかったりするからである。しかしながら、本発明の表面の凹凸形状を形成させる方法では、粗し粒子を添加しなくても、干渉縞が発生せず、膜性の良好な導電層が形成できるという利点がある。したがって、本発明では、粗し粒子は上述の範囲内で添加してもよいし、添加しなくてもよい。また、導電層の表面性を高めるためにレベリング剤を添加してもよく、導電層の隠蔽性を向上させるために顔料粒子を導電層に含有させてもよい。
導電層は、上記の導電性粉体と結着樹脂とを適切な溶剤に分散または溶解し、これを塗布することにより形成することができる。ただし、後述する導電層塗布後、周辺環境を高湿度に制御することで結露を促進させ表面に凹凸形状の作成する場合は、後述の溶剤条件を用いることで、より一層干渉縞の防止に有効な凹凸形状を形成することができる。
導電層に使用される前記溶剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。メタノール、エタノール、メトキシプロパノールおよびイソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール系溶剤や、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロへキサノンなどのケトン系溶剤。テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤。酢酸メチルおよび酢酸エチルなどのエステル系溶剤。トルエン、クロロベンゼンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤。また、これらの溶剤は2種類以上混合して用いてもよい。
導電層用塗布液の分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機などを用いた方法が挙げられる。
また、前述の支持体または導電層と、感光層との間に、支持体からのキャリアの注入に対するバリア機能や接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、硬化性樹脂を塗布後硬化させて樹脂層を形成する、あるいは結着樹脂を含有する中間層用塗布液を導電層上に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。
中間層の結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリグルタミン酸またはカゼインのような水溶性樹脂。ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリグルタミン酸エステル樹脂。電気的バリア性を効果的に発現させるために、そして塗工性、密着性、耐溶剤性および抵抗の観点から、中間層の結着樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、熱可塑性ポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、溶液状態で塗布できるような低結晶性または非結晶性の共重合ナイロンが好ましい。また、中間層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、中間層中に、前述のような導電性粉体を分散させる、あるいは電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
ただし、中間層塗布後、周辺環境を高湿度に制御することで結露を促進させ表面に凹凸形状の作成する場合は、後述の溶剤条件を用いることでより一層、干渉縞の防止に有効な凹凸形状を形成することができる。
また、中間層は、上記の導電性粉体や結着樹脂を、適切な溶剤に分散し、または溶解し、これを塗布することにより形成することができる。
中間層に使用する溶剤の具体例としては以下のものが挙げられる。アルキルアミン化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミンアルキルアミン化合物などのアルキルアミン化合物。メタノール、エタノール、1−ブタノール、メチルセロソルブ、メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤。アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロへキサノンなどのケトン系溶剤。テトラヒドロフラン、ジオキサン,エチレングリコールモノメチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤。酢酸メチルおよび酢酸エチルなどのエステル系溶剤。トルエン、クロロベンゼンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、など。これらの溶剤は2種類以上混合して用いてもよい。
本発明の第1工程である、支持体上に少なくとも導電層または中間層のいずれか、または両者からなる下地層用塗布液を塗布する塗布工程では、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法またはリングコーティング法のような塗布方法を用いることができる。なかでも、生産性の観点から浸漬コーティング法であることが好ましい。
次いで、本発明における第2工程、すなわち塗布後の下地層用塗布液の塗膜表面を結露または液体を吹き付けた後、乾燥することにより、微細な凹凸形状を下地層の表面に形成する工程についてより詳しく説明する。
本発明における第2工程においては、生産性および形状の均一性の観点から、以下の凹凸形成方法1から3で示される方法を用いることが好ましい。ここで、本発明における結露とは、前記溶液の表面または内部のいずれか一方もしくは両方で、空気中の水蒸気が凝集することを意味する。
一般に、揮発性の大きい溶剤を使用し、その大きな気化熱による基体の冷却効果を利用したり、基体自体を冷却したりすることで、空気中の水分から結露を促進させることができる。また、周辺環境を高湿度に制御することによっても効果的な結露の促進を実現することができる。すなわち、高湿度な雰囲気にさらすか、あるいは高湿度気体または噴霧状の液体を吹き付けることによっても下地表面に結露による微小な水滴を作成できる。なかでも、下地層に疎水性溶剤を用いた場合には、高湿度な雰囲気下にさらした場合に、その表面に水の凝集力により水滴が形成され、個々に独立した均一な凹形形状が形成される。また、下地層にアルコールなどの親水性溶剤を用いた場合には、少なくとも炭素数4以上のアルコール系溶剤を含有させ、高湿度な雰囲気下または高湿度気体または噴霧状の水またはアルコールを吹き付けることで、溶剤の揮発性はコントロールされる。そうすることで、塗料液の内部に水滴が取り込まれやすくなり、その状態で乾燥工程を経ることで、干渉縞に効果的な下地層表面の凹凸形状が作成できるので好ましい。
以下に、下地層に凹凸を形成する方法について3通りの方法を挙げて、具体的に説明する。
(凹凸形成方法1)
ここで説明するのは、塗布された下地層用塗布液の塗膜表面を結露させた後、乾燥することにより凹凸形状を形成する方法である。
前述のように下地層用塗布液の塗膜表面を結露させる方法として、下地層用塗布液を塗布された支持体を、塗膜表面が結露する雰囲気下に一定時間保持する方法がある。この表面形成方法における結露とは、水の作用により塗膜表面に液滴が形成されることを示す。塗膜を結露させる条件は、支持体を保持する雰囲気の相対湿度および塗布液溶剤の揮発条件(例えば気化熱)によって影響を受けるので、適切な条件を選択することが重要である。特に、支持体を保持する雰囲気の相対湿度に主に依存する。塗膜表面を結露させる相対湿度は、40%以上100%以下であることが好ましい。さらに、相対湿度60%以上95%以下であることがより好ましい。塗膜表面を結露させる工程には、結露による液滴形成が行われるのに必要な時間があればよい。生産性の観点から、好ましくは1秒から300秒であり、さらには10秒から180秒程度であることが好ましい。支持体または下地層用塗布液を、雰囲気温度よりも10℃以上下回る条件に事前に液冷することにより、結露による液滴形成はより短時間で効果的になされる。ここで、塗膜表面を結露させる工程には相対湿度が重要であるが、雰囲気温度としては20℃以上80℃以下であることが好ましい。
塗膜表面に凹凸形状を形成する方法に適した下地層用塗布液としては、前記理由から疎水性の有機溶剤、または炭素数4以上のアルコール系溶剤を含有させた塗布液が好ましい。さらには、前述の結着樹脂含有することが好ましく、必要に応じて前述の導電性粉体を含有させてもよい。
上記疎水性の有機溶剤としては芳香族有機溶剤が挙げられる。具体的には、トルエン、キシレン、1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼンあるいはクロロベンゼンが挙げられる。さらに、芳香族有機溶剤の含有量が下地層用塗布液中の全溶剤質量に対し50質量%以上含有することが、表面の水滴が凝集し個々に独立した凹凸形形状の均一な形状が形成されるため好ましい。ここで、疎水性の有機溶剤を主溶剤として用いる場合、形状部を安定的に作製する目的で、前記下地層用塗布液中に芳香族有機溶剤を含有し、さらに水との親和性の高い有機溶剤あるいは水を表面層用塗布液中に含有してもよい。水との親和性の高い有機溶剤としては、次のものが好ましい。(メチルスルフィニル)メタン(慣用名:ジメチルスルホキシド)、チオラン−1,1−ジオン(慣用名:スルホラン)、N,N−ジメチルカルボキシアミド、N,N−ジエチルカルボキシアミド、ジメチルアセトアミドあるいは1−メチルピロリジン−2−オン。これらの有機溶剤は、単独で含有することも、2種以上混合して含有することもできる。
また、炭素数4以上のアルコール系溶剤としては、イソブチルアルコール、1−ブタノール、1−メトシキ−2−プロパノール、1−ペンタノールなどの沸点100℃以上のアルコール溶剤が挙げられる。さらに、炭素数4以上のアルコール系溶剤の含有量が下地層用塗布液中の全溶剤質量に対し50質量%以上含有することで、溶剤の揮発性がコントロールされる。よって、塗料液の内部に水滴がより取り込まれやすくなり、その状態で乾燥工程を経ることで、干渉縞に効果的な下地層表面の凹凸形状が作成できるので好ましい。さらには、炭素数4以上のアルコール系溶剤の含有量が下地層用塗布液中の全溶剤質量に対し80質量%以上含有させることがより好ましい。これらの炭素数4以上のアルコール系溶剤は単独で含有することも、2種以上混合して含有することもできる。また、アルコール系溶剤の炭素数が9以上になると沸点が高くなる傾向にあり、乾燥工程後にも下地層中に残留溶剤として残りやすくなり、感光体の残留電位の増大など電子写真特性上この好ましくない場合がある。よって、炭素数4以上8以下のアルコール系溶剤を用いることがより好ましい。
(凹凸形成方法2)
次に説明するのは、塗布された下地層用塗布液の塗膜表面に対し、水もしくはアルコールを吹き付けた後、乾燥することにより凹凸形状を形成する方法である。詳しくは、下地層用塗布液の塗膜表面に対し、水もしくはアルコールを霧化して吹き付ける。
水もしくはアルコールを霧化して吹き付ける方法としては、次のものがある。すなわち、水もしくはアルコールを高圧のエアーと混合し微粒化してノズルから噴霧するスプレー法、または液滴を粒子で吐出させるヘッド部を含むインクジェットユニットを用いて塗布表面に水もしくはアルコールを吹き付ける方法などである。
吹き付けるアルコールとしては、沸点が水よりも低いアルコールであることが好ましい。なかでも、メタノール、エタノール、n−プロパノールまたはイソプロパノールであることが好ましい。また、水もしくは前記アルコールを混合して吹き付けてもよい。
塗布された下地層用塗布液の塗膜表面に対し、水もしくは上記のアルコールを吹き付けることにより、霧化した微小な粒子の大きさの凹凸形状が塗膜表面に形成される。本発明において用いる吹き付け加工装置の例を、図4に示す。容器(不図示)に貯留されている水またはアルコール溶剤は指示番号44の経路よりノズルに導かれ、指示番号43の経路より導入された圧縮空気を用いて噴射ノズル41より噴射される。そして、ワーク支持体46により支持され自転している下地層用塗布液を塗布された円筒状支持体47に吹き付けられる。このとき、ノズルと前記円筒状支持体の距離はノズル固定冶具42、アーム49により調整されて決められる。ノズルは通常前記円筒状支持体の回転軸方向に対して移動しながら凹凸形状形成を行い、ノズル支持体48が前記円筒状支持体の回転軸方向に移動することによりワークに対してムラ無く凹凸形状形成を施すことができる。このとき、ノズルと前記円筒状支持体表面の最短距離は、適当な間隔に調整されることが求められる。噴射の動力に用いる圧縮空気の圧力も、適度な圧力に調整されることが求められる。
以上のようにして水もしくはアルコールを吹き付けた後、乾燥する方法としては、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥が挙げられ、これらの可能な方法を組み合わせた方法を用いることもできる。特には、生産性の観点から加熱乾燥および加熱送風乾燥が好ましい。また、均一性の高い凹凸形状を形成するためには、速やかな乾燥であることが重要であるため、加熱乾燥が行われることが好ましい。乾燥工程における乾燥温度は、100℃〜150℃であることが好ましい。乾燥する乾燥工程時間は、支持体上に塗布された塗布液中の溶剤、塗膜表面に対し吹き付けられた水もしくはアルコールが除去される時間があればよい。乾燥工程時間は、5分〜120分であることが好ましく、さらには10分〜100分であることが好ましい。
(凹凸形成方法3)
次に説明するのは、塗布された下地層用塗布液の塗膜表面に対し、下地層用塗布液と同一の成分を吹き付けた後、乾燥することにより凹凸形状を形成する方法である。詳しくは、下地層用塗布液の塗膜表面に対し、下地層用塗布液と同一の成分を霧化して吹き付ける。
下地層用塗布液と同一の成分を吹き付ける方法としては、下地層用塗布液を高圧のエアーと混合し微粒化してノズルから噴霧するスプレー法、または液滴を粒子で吐出させるヘッド部を含むインクジェットユニットを用いる方法が挙げられる。吹き付ける下地層用塗布液の粘度を、適切な粘度になるように必要に応じて下地層用塗布液塗布液に含まれる溶剤で希釈を行うことも可能である。
本発明において用いる吹き付け加工装置の例を図5に示す。容器(不図示)に貯留されている下地層用塗布液は指示番号54の経路よりノズルに導かれ、指示番号53の経路より導入された圧縮空気を用いて噴射ノズル51より噴射される。そして、ワーク支持体56により支持され自転している下地層用塗布液を塗布された円筒状支持体57に吹き付けられる。このとき、ノズルと前記円筒状支持体の距離はノズル固定冶具52、アーム59により調整されて決められる。ノズルは通常前記円筒状支持体の回転軸方向に対して移動しながら凹凸形状形成を行い、ノズル支持体58が前記円筒状支持体の回転軸方向に移動することによりワークに対してムラ無く凹凸形状形成を施すことができる。このとき、ノズルと前記円筒状支持体表面の最短距離は、適当な間隔に調整されることが求められる。噴射の動力に用いる圧縮空気の圧力も、適度な圧力に調整することが求められる。
以上の下地層用塗布液と同一の成分を吹き付ける方法により、微小な粒子となった塗布液と同一の成分が、塗膜表面に吹き付けられた際に、微小な粒子の大きさの独立した凹凸形状が塗布表面に形成される。
下地層用塗布液と同一の成分を吹き付けた後、乾燥する方法としては、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥が挙げられ、これらの可能方法を組み合わせた方法を用いることができる。特には、生産性の観点から加熱乾燥および加熱送風乾燥が好ましい。乾燥工程における乾燥温度は、100℃〜150℃であることが好ましい。乾燥する乾燥工程時間は、支持体上に塗布された塗布液中の溶剤が除去される時間があればよい。乾燥工程時間は、5分〜120分であることが好ましく、さらには10分〜100分であることが好ましい。
このように下地層を塗布し、表面に凹凸形状が形成された下地層の膜厚としては、導電層の場合支持体の傷の被覆の観点から、導電層の平均膜厚が0.5μm以上100.0μm以下であることが好ましい。さらには1.0μm以上50.0μm以下であることがより好ましく、さらには5.0μm以上35.0μm以下であることがより一層好ましい。
また、中間層の平均膜厚は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以上5.0μm以下であることがより好ましい。
なお、ここにおいて表面の膜厚の基準点とは、凸形状においては凸の頂点であり、凹形状については凹の上面からの膜厚を指す。
なお、本発明において、下地層を含む電子写真感光体の各層の膜厚は、(株)フィッシャーインストルメンツ社製のFISHERSCOPEで測定することができる。膜厚測定は、凹凸形状を形成した後に測定される。
また、本発明の下地層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cmを超え1.0×1014Ω・cm以下であることが、感光体の繰り返し電位安定性の観点から好ましい。なかでも、導電層の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cmを超え1.0×1011Ω・cm以下であることが好ましく、中間層の体積抵抗率は1.0×10Ω・cmを超え1.0×1014Ω・cm以下であることが好ましい。
本発明における下地層の体積抵抗率の測定方法は以下のとおりである。
まず、下地層用塗布液を用いてアルミニウムシート上に下地層サンプル(膜厚は下地層と同程度の膜厚とする)を形成する。この下地層サンプル上に金の薄膜を蒸着により形成する。アルミニウムシートと金薄膜の両電極間を流れる電流値をpAメーターで測定する。測定環境は23℃/60%RHであり、印加電圧は導電層の場合は0.1V、中間層の場合は100Vとする。電流値測定開始1分後の安定した値を読み取り、下地層の体積抵抗率を導き出す。
次に、本発明における第3工程、すなわち凹凸形状が形成された下地層上に感光層用塗布液を塗布する工程について、より詳細に説明する。
感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質とを同一の層に含有する単層型感光層であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であってもよい。本発明による電子写真感光体は、電子写真特性の観点から、積層型感光層が好ましい。また、積層型感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層であっても、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層であってもよい。本発明による電子写真感光体において、積層型感光層を採用する場合、電子写真特性の観点から、順層型感光層が好ましい。また、電荷発生層を積層構造としてもよく、また、電荷輸送層を積層構成としてもよい。さらに、耐久性能向上等を目的とし感光層上に保護層を設けることも可能である。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、以下のものが挙げられる。モノアゾ、ジスアゾまたはトリスアゾのようなアゾ顔料。金属フタロシアニンまたは非金属フタロシアニンのようなフタロシアニン顔料。インジゴまたはチオインジゴのようなインジゴ顔料。ペリレン酸無水物またはペリレン酸イミドのようなペリレン顔料。アンスラキノンまたはピレンキノンのような多環キノン顔料。スクワリリウム色素、ピリリウム塩またはチアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素。セレン、セレン−テルルまたはアモルファスシリコンのような無機物質。キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、キサンテン色素、キノンイミン色素またはスチリル色素。これら電荷発生材料は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特に、オキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンあるいはクロロガリウムフタロシアニンのような金属フタロシアニンは、高感度であるため好ましい。
感光層が積層型感光層である場合、電荷発生層に用いる結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂。ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂または塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂。特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは単独、混合または共重合体として1種または2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライターまたはロールミルを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、10:1〜1:10(質量比)の範囲が好ましく、特には3:1〜1:1(質量比)の範囲がより好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
電荷発生層の平均膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および/または可塑剤を必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
積層型感光体の場合、電荷発生層上には電荷輸送層が形成される。該電荷輸送層には電荷輸送物質が含有される。電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物などが挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。さらに、電荷輸送層には耐久性を付与するためにバインダー樹脂をブレンドし、適当な溶剤を用いて溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することが一般的である。乾燥温度は80℃以上の温度で乾燥させることが好ましい。
電荷輸送層に用いるバインダー樹脂としては、例えば、次のものが挙げられる。アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂。ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂。ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、など。特には、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが珪素またはフッ素化合物によって変性した、変性ポリカーボネートやポリエステルを用いることは、相溶性や電子写真特性、表面移行と表面形状との組合せによる効果の持続性の意味でより好ましい。これらは単独、混合として1種または2種以上用いることができる。
電荷輸送物質とバインダー樹脂との割合は、2:1〜1:2(質量比)の範囲が好ましい。電荷輸送層の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、特には7〜30μmであることがより好ましい。電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などの添加剤が含まれていてもよい。
また、感光層が単層型の場合は、上述のような電荷発生材料や電荷輸送材料を上述のようなバインダー樹脂に分散および溶解した溶液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。塗工の際の液粘度は、塗工性の観点から、5mPa・s以上500mPa・s以下が好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、以下のものが挙げられる。アセトンまたはメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤。酢酸メチルまたは酢酸エチルのようなエステル系溶剤。テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメトキシメタンまたはジメトキシエタンのようなエーテル系溶剤。トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンのような芳香族炭化水素溶剤。これら溶剤は、単独で使用してもよいが、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤を使用することが、樹脂溶解性の観点から好ましい。
電荷輸送層の平均膜厚は5〜50μmであることが好ましく、特には10〜35μmであることがより好ましい。また、電荷輸送層には、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤および/または可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
さらなる耐久性向上が求められる場合、電荷輸送層上に第二の電荷輸送層あるいは保護層を形成する構成を用いてもよい。該第二の電荷輸送層あるいは保護層は、電荷輸送層のように可塑性を示す電荷輸送物質と結着樹脂により形成することもできるが、より耐久性能を発現させるためには表面層を硬化系樹脂で構成することが有効である。
表面層を硬化系樹脂で構成する方法としては、例えば、電荷輸送層を硬化系樹脂で構成する方法や、電荷輸送層上に第二の電荷輸送層あるいは保護層として硬化系樹脂層を形成する方法が挙げられる。硬化系樹脂層に要求される特性は膜の強度と電荷輸送能力とを両立することであるので、電荷輸送材料および重合あるいは架橋性のモノマーやオリゴマーから構成されるのが一般的である。
これら表面層を硬化系樹脂で構成する方法には、電荷輸送材料として、公知の正孔輸送性化合物および電子輸送性化合物を用いることができる。これらの化合物を合成する材料としては、アクリロイルオキシ基またはスチレン基を有する連鎖重合系の材料が挙げられる。また、水酸基、アルコキシシリル基またはイソシアネート基を有する逐次重合系のような材料が挙げられる。特に、表面層を硬化系樹脂で構成された電子写真感光体の電子写真特性、汎用性や材料設計および製造安定性の観点から、正孔輸送性化合物と連鎖重合系材料の組合せが好ましい。さらには、正孔輸送性基およびアクリロイルオキシ基の両者を分子内に有する化合物を硬化させた表面層で構成された電子写真感光体であることが特に好ましい。
硬化手段としては、熱、光または放射線のような公知の手段が利用できる。
硬化層の平均膜厚は、電荷輸送層の場合は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、さらには10μm以上35μm以下であることがより好ましい。第二の電荷輸送層あるいは保護層の場合は、0.3μm以上20μm以下であることが好ましく、さらには1μm以上10μm以下であることが好ましい。
本発明の電子写真感光体の各層には、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの劣化防止剤などが挙げられる。
以上説明してきた本発明の方法によって、下地層表面に複数の凹凸形状を有している電子写真感光体を製造することができる。
前記電子写真感光体下地層の凹凸形状としては、下地層表面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線および曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形あるいは六角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、円形状あるいは楕円形状が挙げられる。直線および曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形、角の円い六角形あるいは扇形が挙げられる。また、本発明における電子写真感光体の下地表面の凹凸形状は、感光体断面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線および曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形あるいは五角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、部分円形状あるいは部分楕円形状が挙げられる。直線および曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形あるいは扇形が挙げられる。なかでも、凹凸形状が曲線を持った部位により構成されることがより好ましい。というのも、感光体下地層表面の凹凸が曲線部を持っている方が、レーザー光の乱反射が効果的に起きやすいからである。直線からなる凹凸形状の場合や凹凸形状の直線部分がある程度大きい場合、レーザー光が正反射しやすく、感光層内で多重反射光となり、干渉縞が発生しやすいのである。前述した下地層表面の凹凸形成方法1〜3では、一般的に感光体下地層表面に形成される凹凸形状に曲線部分を有する凹凸形状が形成される。
前記電子写真感光体下地表面の凹形状の具体例が、図1、図2および図3に示されている。図1は、凹凸形状の形状例(表面)を示している。図2は、凹形状の形状例(断面)を示している。図3は、凸形状の形状例(断面)を示している。前記電子写真感光体下地表面の凹凸形状は、個々に異なる形状、大きさあるいは深さ・高さを有してもよく、また、すべての凹凸形状が同一の形状、大きさあるいは深さであってもよい。さらに、前記電子写真感光体下地層表面は、個々に異なる形状、大きさあるいは深さ・高さを有する凹凸形状と、同一の形状、大きさあるいは深さを有する凹形状が組み合わされた表面であってもよい。また、これらの形状が重複部分を有しても、相互に重なり合ってもよい。
次に、前記電子写真感光体下地層表面の凹凸形状の大きさについて説明する。凹形状の場合、大きさの指標として長軸径(L1)を用いる。前記長軸径(L1)とは、各凹形状部の開孔部を横切る直線のうち、最大となる直線の長さを示す。具体的には、図2中の長軸径(L1)で示されているように、前記電子写真感光体下地表面における凹形状の開孔部周囲の表面を基準とし、各凹形状における表面開孔部の最大長さを示す。例えば、凹形状の表面形状が円状の場合は直径を示し、表面形状が楕円状の場合は長径を示し、表面形状が四角形の場合は対角線のうち長い対角線を示す。前記電子写真感光体下地表面における凹形状の長軸径(L1)は、任意であるが、0.1μm以上7.0μm以下であることが好ましい。さらには、0.3μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以下であることがより一層に好ましい。
凹形状場合の深さについて説明する。前記凹形状の指標として深さ(D)を用いる。前記深さ(D)とは、各凹形状の最深部と開孔面との距離を示す。具体的には、図2中の深さ(D)で示されているように、前記電子写真感光体下地層表面における凹形状の開孔部周囲の表面を基準とし、凹形状の最深部と開孔面との距離を示す。前記電子写真感光体下地表面における凹形状の深さ(D)は、任意であるが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。さらには、0.3μm以上7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがより一層好ましい。
また、前記電子写真感光体下地層表面の凸形状の大きさについて説明する。前記凸形状の指標として長軸径(L2)を用いる。前記長軸径(L2)とは、各凸形状部の周囲の表面を基準とし、各凸形状と周囲の表面とが接する部位の最大長さを示す。具体的には、図3中の長軸径(L2)で示されている長さであることを示す。例えば、凸形状の表面形状が円状の場合は直径を示し、表面形状が楕円状の場合は長径を示し、表面形状が四角形の場合は対角線のうち長い対角線を示す。前記電子写真感光体下地表面における凸形状の長軸径(L2)は、任意であるが、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。さらには、1μm以上5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより一層好ましい。
また、凸形状の高さについて説明する。前記凸形状の指標として高さ(H)を用いる。前記高さ(H)とは、各凸形状の最頂部と周囲の表面との距離を示す。具体的には、図3中の高さ(H)で示されている距離を示す。前記電子写真感光体下地表面における凸形状の高さ(H)は、任意であるが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。さらには、0.3μm以上7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがより一層好ましい。
また、前記電子写真感光体下地層表面の凹凸形状が形成されている領域は、感光体表面の全域であってもよいし、表面の一部分に形成されていてもよいが、レーザー光の操作領域全域に凹凸形状が形成されていることが干渉縞画像の防止の観点から好ましい。また、凸形状だけであっても凹形状だけであっても、両者が混在していてもよい。また、前記電子写真感光体下地表面の凹凸形状は、前記電子写真感光体下地表面の100μm四方中に10個以上40,000個以下有することが好ましい。さらには、100個以上20,000個以下有することがより好ましい。なお、上記の100μm四方の領域は、電子写真感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定している。
前記電子写真感光体下地層表面の凹凸形状は、例えば、市販のレーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡あるいは原子力間顕微鏡を用いて測定可能である。
レーザー顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。超深度形状測定顕微鏡VK−8550、超深度形状測定顕微鏡VK−9000および超深度形状測定顕微鏡VK−9500(いずれも(株)キーエンス社製)。表面形状測定システムSurface Explorer SX−520DR型機((株)菱化システム社製)。走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS3000(オリンパス(株)社製)。リアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130(レーザーテック(株)社製)。
光学顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。デジタルマイクロスコープVHX−500およびデジタルマイクロスコープVHX−200(いずれも(株)キーエンス社製)。3DデジタルマイクロスコープVC−7700(オムロン(株)社製)。
電子顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800および3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800(いずれも(株)キーエンス社製)。走査型電子顕微鏡コンベンショナル/Variable Pressure SEM(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)。走査型電子顕微鏡SUPERSCAN SS−550((株)島津製作所社製)。
原子力間顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。ナノスケールハイブリッド顕微鏡VN−8000((株)キーエンス社製)。走査型プローブ顕微鏡NanoNaviステーション(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)。走査型プローブ顕微鏡SPM−9600((株)島津製作所社製)。
上記顕微鏡を用いて、所定の倍率により、測定視野内の凹凸形状の長軸径、深さおよび高さを計測することができる。
一例として、Surface Explorer SX−520DR型機による解析プログラムを利用した測定例について説明する。まず、測定対象の電子写真感光体をワーク置き台に設置し、チルト調整して水平を合わせ、ウェーブモードで電子写真感光体の周面の3次元形状データを取り込む。その際、対物レンズの倍率を50倍とし、100μm×100μm(10000μm)の視野観察としてもよい。この方法で、測定対象の感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定する。次に、データ解析ソフト中の粒子解析プログラムを用いて電子写真感光体の下地表面の等高線データを表示する。
凹凸形状の形状、長軸径、深さおよび高さのような凹凸形状の解析パラメーターは、形成された凹凸形状によって各々最適化することができる。例えば、長軸径10μm程度の凹凸形状の観察および測定を行う場合、長軸径上限を15μm、長軸径下限を1μm、深さ下限を0.1μmおよび体積下限を1μm以上としてもよい。そして、解析画面上で凹凸形状と判別できる凹凸形状の個数をカウントし、これを凹凸形状の個数とする。なお、凹凸形状の長軸径が1μm程度以下の凹凸形状については、レーザー顕微鏡および光学顕微鏡による観察が可能であるが、より測定精度を高める場合には、電子顕微鏡による観察および測定を併用することが望ましい。
次に、本発明の製造方法によって作られた電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジおよび電子写真装置について説明する。図6は、本発明による電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
図6において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面は、帯電手段(一次帯電手段:例えば帯電ローラー)3により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光のような露光手段(図示せず)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。そして、電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。該トナー像は転写手段(例えば転写ローラー)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(図示せず)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して給送された転写材(例えば紙)Pに順次転写されていく。そして、トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(例えばクリーニングブレード)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。
さらに、電子写真感光体1の表面は、前露光手段(図示せず)からの前露光光(図示せず)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図6に示すように、帯電手段3が、例えば帯電ローラーを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7の構成要素の群のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。また、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターのような電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図6では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールのような案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の例に限定されはしない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、実施例1〜5、7〜10、12〜14および16〜18は参考例である。
(実施例1)
本実施例では、本発明の製造方法にしたがって電子写真感光体を製造した。
23℃、60%RH環境下で熱間押し出しすることにより得られた、長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JISにおいて材料記号A3003として規定されているアルミニウム合金のED管、昭和アルミニウム(株)製)を支持体とした。この支持体端部から100〜150mmの領域の支持体表面のRzjisを測定したところ、0.8μmであった。ここで、Rzjisの測定は、JIS−B0601(1994)に準じ、小坂研究所(株)製の表面粗さ計サーフコーダーSE3500を用いて、送り速度0.1mm/秒、カットオフλc0.8mm、測定長さ2.50mmの設定で行った。以下におけるRzjisの測定についても同様の条件で測定した。
次に、以下のようにして導電層用塗料を調製した。
まず、酸素欠損型SnO被覆TiO粒子55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂36.5部、溶剤としてのメトキシプロパノール30部、メタノール5部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。ここで、前記酸素欠損型SnO被覆TiO粒子は粉体抵抗率100Ω・cmで、SnOの被覆率(質量比率)は40%である。また、前記フェノール樹脂は、商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製で、樹脂固形分60%である。
上記分散液に、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調整した。
この導電層用塗布液における酸素欠損型SnO被覆TiO粒子の平均粒径は0.36μmであり、該粒子のうち、粒径が0.10から0.40μmの範囲にある粒子の割合は61.2質量%であった。
上記方法にて調製した導電層用塗料を、支持体の表面温度を20℃に調整した支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度80%および雰囲気温度60℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
次に、以下の成分をメタノール600部に溶解した中間層用塗料を、上記導電層上に浸漬塗布し、直ちに100℃に加熱されたのオーブン内で30分間、加熱乾燥することにより、支持体上端から130mm位置の平均膜厚が1.0μmの中間層を形成した。
共重合ナイロン樹脂 10部
(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)
メトキシメチル化6ナイロン樹脂 30部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)
次に、以下の成分を、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、酢酸エチル700部を加えて電荷発生層用塗料を調製した。
ヒドロキシガリウムフタロシアニン 20部
(CuKα特性X線回折において、7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°、28.3°(ブラッグ角度(2θ±0.2°))に強い回折ピーク有するもの)
下記構造式(1)で示されるカリックスアレーン化合物 0.2部
ポリビニルブチラール 10部
(商品名:エスレックBX−1、積水化学製)
シクロヘキサノン 600部
上記電荷発生層用塗料を中間層上に浸漬コーティング法で塗布し、100℃に加熱されたオーブン内で10分間、加熱乾燥することにより、支持体上端から130mm位置の平均膜厚が0.17μmの電荷発生層を形成した。
次いで、以下の成分をクロロベンゼン350部およびメチラール150部の混合溶媒中に溶解して電荷輸送層用塗料を調製した。
下記構造式(2)で示される化合物 35部
下記構造式(3)で示される化合物 5部
下記構造式(4)で示される共重合型ポリアリレート樹脂 50部
(式中、mおよびnは、繰り返し単位の本樹脂における比(共重合比)を示し、本樹脂においては、m:n=7:3である)
なお、上記ポリアリレート樹脂中のテレフタル酸構造とイソフタル酸構造のモル比(テレフタル酸骨格:イソフタル酸骨格)は50:50である。また、重量平均分子量(Mw)は、120,000である。
これを用いて、上記電荷発生層上に電荷輸送層を浸漬塗布し、110℃に加熱されたオーブン内で30分間、加熱乾燥することにより、支持体上端から130mm位置の平均膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、支持体、導電層、中間層、電荷発生層および電荷輸送層をこの順に有し、該電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製した。
また、本発明において、樹脂の重量平均分子量は、常法に従い以下のようにして測定した。
まず、測定対象樹脂をテトラヒドロフラン中に入れ、数時間放置した後、振盪しながら測定対象樹脂とテトラヒドロフランとよく混合し(測定対象樹脂の合一体がなくなるまで混合し)、さらに12時間以上静置した。その後、東ソー(株)製のサンプル処理フィルターマイショリディスクH−25−5を通過させたものをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)用試料とした。次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、GPC用試料を10μl注入して、測定対象樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムには、東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHM−Mを用いた。
測定対象樹脂の重量平均分子量の測定にあたっては、測定対象樹脂が有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料には、次のものを用いた。すなわち、アルドリッチ社製の単分散ポリスチレンで、分子量が、3,500、12,000、40,000、75,000、98,000、120,000、240,000、500,000、800,000、1,800,000のものを用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
次に、以下のようにして下地層の体積抵抗率を測定した。
前記導電層用塗布液および中間層用塗布液を用いて、アルミシート上に厚さ20μmの導電層、厚さ3μの中間層サンプルをそれぞれ作成した。このサンプルに金の薄膜を蒸着により形成して、導電層および中間層の体積抵抗率を前述の方法で測定した。その結果、導電層の体積抵抗率は8.5×10Ω・cm、中間層の体積抵抗率は、2.0×1012Ω・cmであった。
<電子写真感光体導電層表面の表面形状測定>
作製された電子写真感光体の下地層表面(導電層に凹凸形状を作製した場合は導電層表面。中間層に凹凸形状を作製した場合は中間層表面)を超深度形状測定顕微鏡VK−9500((株)キーエンス社製)を用いて観察した。まず、測定対象の電子写真感光体を、円筒状支持体を固定できるよう加工された置き台に設置し、対物レンズ倍率50倍とし、電子写真感光体の上端から130mm位置の下地層表面の100μm四方を視野観察し、凹凸形状部の測定を行った。上記の100μm四方の領域を、電子写真感光体の下地表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定した。このようにして評価した範囲内で、下地層表面の凹凸観察を行った。観察された凹凸形状部については、開口部の最大長さ(L1)と、開口部から最深部までの長さ、すなわち深さ(D)とを測り、その平均値を算出した。凸形状部については、凸形状と周囲の表面とが接する部位の最大長さ(L2)と、凸形状の最頂部と周囲の表面との距離、すなわち高さ(H)とを測り、その平均値を算出した。なお、凹形状、凸形状の両方が存在する場合についても同じように計測し、絶対値としてL1、L2、D、Hの平均値を算出した。また、この100μ四方辺りの凹凸形状の個数も算出した。測定結果を下記の表1に示す。
<電子写真感光体の画像評価>
実施例により作製した電子写真感光体について、以下の評価装置にて干渉縞および画像欠陥について評価を行った。
評価装置として、キヤノン(株)製LBP−2510(一次帯電:直流電圧のみを印可する接触耐電方式、プロセススピード:94.2mm/秒)を改造して用いた。改造は像露光量を調整できるようにし、かつ600dpiと1200dpiの解像度がだせるようにするために、以下のようにした。すなわち、波長780nm、レーザースポット径60μmで解像度600dpiを出力できるレーザー光、および波長780nm、レーザースポット径40μmで解像度1200dpiを出力できるレーザー光を用いた。
評価は、常温常湿環境下(23℃、65%)で行い、ハーフトーン画像(PBS、1ドット/2スペース、2ドット/3スペース)をそれぞれの解像度で出力し、干渉縞を目視にて下記の基準でレベル付けを行った。また、黒ポチ、カブリなどの画像欠陥についても評価を行った。評価結果を下記の表1に示す。
A:全く干渉縞模様が観察されない。
B:特定画像にのみ極軽微に干渉縞模様が観察される。
C:画像の一部に干渉縞模様が観察される。
D:画像の全面に干渉縞模様が観察される。
(実施例2)
実施例1と同様に調製・作成した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度95%および雰囲気温度50℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例3)
実施例1と同様に調製・作成した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度60%および雰囲気温度65℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例4)
実施例1と同様に調製・作成した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、塗布された導電層用塗布液の塗膜表面を有する支持体を120rpmで回転させ、直径50μmの液滴にした水を5秒間吹き付けた。水吹き付けによる形状形成工程終了後、予め140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例5)
導電層塗膜表面上に水を吹き付ける代わりにメタノールを吹き付けた以外は、実施例4と同様の方法で表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層をからなる感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例6)
導電層用塗布液を調合するまでは、実施例4と同様の方法により作製・調製した。
上記導電層用塗布液を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、塗布された導電層用塗布液の塗膜表面を乾燥させる目的で、50℃に加熱保持されている乾燥機内で、15分間の乾燥を行い、塗膜表面を形成した。
実施例1の導電層用塗布液にメタノールを塗工液1質量部に対し5質量部添加することで希釈を行った。その後、塗布された導電層用塗布液の塗膜表面を有する支持体を120rpmで回転させ、塗膜表面に対し希釈した導電層用塗布液を5秒間吹き付けた。導電層希釈液吹き付けによる形状形成工程終了後、予め140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例7)
実施例1における、導電層用塗布液の調製において、使用する溶剤をメトキシプロパノール30部、メタノール5部からトルエン35部に変更した以外は、実施例1と同様に導電層用塗布液の調製・作製した。そして、導電層表面が凹形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。その後の工程においても、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例8)
実施例1と同様に調製・作成した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、直ちに予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有さない、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
次に、以下の成分を1−ブタノール350部、メタノール50部の混合液に溶解した中間層用塗料を、上記導電層上に浸漬塗布した。
共重合ナイロン樹脂 10部
(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)
メトキシメチル化6ナイロン樹脂 30部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)
塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度80%および雰囲気温度60℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、中間層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が100℃に加熱されたオーブン内で30分間、加熱乾燥することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が4.0μmの中間層を形成した。その後の工程においても、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例9)
実施例8と同様に導電層・中間層用塗布液を調製・作成し、支持体上に導電層用塗布液を浸漬コーティングし、表面が凹凸形状を有さない、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。その後、該導電層上に該中間層用塗布液を浸漬コーティングで塗布した。その後、中間層用塗布液の塗膜表面を有する支持体を120rpmで回転させ、直径40μmの液滴にした水を5秒間吹き付ける工程を行った。水吹き付けによる形状形成工程終了後、予め装置内が100℃に加熱されたオーブン内で30分間、加熱乾燥することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が4.0μmの中間層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例10)
中間層塗膜表面上に水を吹き付ける代わりにメタノールを吹き付けた以外は、実施例9と同様の方法で表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が4.0μmの中間層からなる感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例11)
実施例8と同様の方法により導電層・中間層用塗布液を作製・調製し、支持体上に導電層用塗布液を塗布、乾燥し表面に凹凸形状を有さない導電層を形成した。次に、該中間層用塗布液を、該導電層上に浸漬コーティングで塗布した。塗布された中間層用塗布液の塗膜表面を乾燥させる目的で、40℃に加熱され保持されている乾燥機内で、15分間の簡易乾燥を行い、塗膜表面を形成した。
次に、実施例1の中間層用塗布液にメタノールを中間層塗工液1質量部に対し2質量部添加することで希釈を行った。その後、塗布された中間層用塗布液の塗膜表面を有する支持体を120rpmで回転させ、塗膜表面に対し希釈した中間層用塗布液を5秒間吹き付けた。
中間層希釈液吹き付けによる形状形成工程終了後、予め装置内が100℃に加熱されたオーブン内で30分間、加熱乾燥することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が4.2μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例12)
実施例8における、中間層用塗布液の調製において、使用する樹脂をホリビニルブチラール樹脂40部(積水化学工業(株)製、エスレックBM−S)、使用する溶剤を1−ブタノール350部、メタノール50部の混合液からトルエン400部に変更した。それ以外は、実施例1と同様に中間層用塗布液の調製・作製し、中間層表面が凹形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が4.0μmの中間層を形成した。その後の工程においても、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で中間層の体積抵抗率の測定を行った結果、8.5×1014Ω・cmであった。
(実施例13)
実施例1における導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。
酸化亜鉛粒子55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂36.5部、溶剤としてのメトキシプロパノール30部、メタノール5部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。ここで、前記酸化亜鉛粒子は、商品名:パゼット23K、ハクスイテック(株)社製である。前記フェノール樹脂は、商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製で、樹脂固形分60%である。
この分散液に、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調整した。
この導電層用塗布液における分散後の酸化亜鉛粒子の平均粒径は0.37μmであり、該粒子のうち、粒径が0.10から0.40μmの範囲にある粒子の割合は71.5質量%であった。
上記方法にて調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度80%および雰囲気温度60℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で導電層の体積抵抗率の測定を行った結果、8.5×10Ω・cmであった。
(実施例14)
実施例13における、導電層用塗布液の調製において、使用する溶剤をメトキシプロパノール30部、メタノール5部からトルエン35部に変更した。それ以外は、実施例1と同様に導電層用塗布液の調製・作製し、導電層表面が凹形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。その後の工程においても、実施例13と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例15)
導電層用塗布液を調合するまでは、実施例13と同様の方法により作製・調製した。
上記導電層用塗布液を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、塗布された導電層用塗布液の塗膜表面を乾燥させる目的で、50℃に加熱され保持されている乾燥機内で、15分間の簡易乾燥を行い、塗膜表面を形成した。
実施例13の導電層用塗布液にメタノールを塗工液1質量部に対し5質量部添加することで希釈を行った。その後、塗布された導電層用塗布液の塗膜表面を有する支持体を120rpmで回転させ、塗膜表面に対し希釈した導電層用塗布液を5秒間吹き付ける工程を行った。
導電層希釈液吹き付けによる形状形成工程終了後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例16)
実施例1における、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。
酸化亜鉛粒子55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂36.5部、溶剤としてのトルエン35部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。ここで、前記酸化亜鉛粒子は、商品名:パゼットCK、ハクスイテック(株)社製である。前記フェノール樹脂は、商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製で、樹脂固形分60%である。
この分散液に、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調整した。
この導電層用塗布液における分散後の酸化亜鉛粒子の平均粒径は0.11μmであり、該粒子のうち、粒径が0.10から0.40μmの範囲にある粒子の割合は25.3質量%であった。
上記方法にて調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度80%および雰囲気温度60℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で導電層の体積抵抗率の測定を行った結果、1.0×1011Ω・cmであった。
(実施例17)
実施例1における、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。
酸化スズの被覆層を有する硫酸バリウム粒子からなる導電粉体55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂36.5部、溶剤としてのトルエン35部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで5時間分散して、分散液を調製した。ここで、前記酸化スズの被覆層を有する硫酸バリウム粒子からなる導電粉体は、商品名:パストランPC1、三井金属鉱業(株)社製である。前記フェノール樹脂は、商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製で、樹脂固形分60%である。
この分散液に、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調整した。
この導電層用塗布液における分散後の粒子の平均粒径は0.22μmであり、該粒子のうち、粒径が0.10から0.40μmの範囲にある粒子の割合は45.3質量%であった。
上記方法にて調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度80%および雰囲気温度60℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で導電層の体積抵抗率の測定を行った結果、3.0×1012Ω・cmであった。
(実施例18)
実施例13における、導電層用塗布液の調製において、次のような変更をした。すなわち、使用する樹脂をフェノール樹脂36.5部からアクリルメラミン樹脂36.5部に変更し、溶剤としてメトキシプロパノール10部、メタノール25部から、キシレン30部、メトキシプロパノール5部に変更した。ここで、前記アクリルメラミン樹脂は、商品名:商品名:アクローゼ#6000、大日本塗料(株)製で、樹脂固形分60%である。それ以外は、実施例13と同様に導電層用塗布液の調製・作製し、導電層表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。その後の工程においても、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で導電層の体積抵抗率の測定を行った結果、4.4×1010Ω・cmであった。
(実施例19)
実施例1における支持体を以下の切削管に変更した。
まず、熱間押し出しすることにより得られた、外径30.5mm、内径28.5mm、長さ260.5mm、振れ精度100μm、Rzjis10μmのアルミニウム素管を旋盤に装着した。それから、該アルミニウム素管をダイヤモンド焼結バイトにて切削加工して、外径30.0±0.02mm、振れ精度15μm、Rzjis0.2μmである切削管を得た。また、前記アルミニウム素管は、JIS H4000:1999において材料記号A6063として規定されているアルミニウム合金製である。
なお、切削加工において主軸回転数は3000rpm、バイトの送り速度は0.3mm/revであり、加工時間は被加工物の着脱を除き24秒であった。
この切削管を支持体とし、導電層は塗布せず、支持体上に実施例8と同様の方法で、中間層用塗布液を調製・作成した。それから、該中間層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、中間層表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が4.0μmの中間層を形成した。
その後の工程においても、実施例1と同様に実施し、支持体上に中間層、電荷発生層、電荷輸送層をこの順で積層した電子写真感光体を作製した。作製した感光体について実施例1と同様に測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例20)
実施例1と同様に調製・作成した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め相対湿度40%および雰囲気温度30℃の状態にされていた支持体保持工程用装置内に、導電層用塗布液が塗布された支持体を120秒間保持した。支持体保持工程終了から60秒後、予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(実施例21)
実施例1における、導電層用塗布液の調製において、使用する溶剤をメトキシプロパノール30部、メタノール5部からメタノール35部に変更した。それ以外は、実施例1と同様に導電層用塗布液の調製・作製し、導電層表面が凹形状を有し、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。その後の工程においても、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に調製・作成した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、形状形成工程を行わず、直ちに予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(比較例2)
実施例1における、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。
酸素欠損型SnO被覆TiO粒子55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂36.5部、溶剤としてメトキシプロパノール30部、メタノール5部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。ここで、前記酸素欠損型SnO被覆TiO粒子は粉体抵抗率100Ω・cmで、SnOの被覆率(質量比率)は40%である。前記フェノール樹脂は、商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製で、樹脂固形分60%である。
この分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子1.0部、レベリング剤としてのシリコーンオイル0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調整した。ここで、前記シリコーン樹脂粒子は、商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2μmである。前記シリコーンオイルは、商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製である。
この導電層用塗布液における酸素欠損型SnO被覆TiO粒子の平均粒径は0.33μmであり、該粒子のうち、粒径が0.10から0.40μmの範囲にある粒子の割合は63.1質量%であった。
上記方法にて調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、形状形成工程を行わず、直ちに予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で導電層の体積抵抗率の測定を行った結果、2.2×1010Ω・cmであった。
(比較例3)
実施例1における、導電層用塗布液の調製を以下のように変更した。
酸素欠損型SnO被覆TiO粒子55部、結着樹脂としてのフェノール樹脂36.5部、溶剤としてメトキシプロパノール30部、メタノール5部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。ここで、前記酸素欠損型SnO被覆TiO粒子は粉体抵抗率100Ω・cmで、SnOの被覆率(質量比率)は40%である。前記フェノール樹脂は、商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製で、樹脂固形分60%である。
この分散液に、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子13部、レベリング剤としてのシリコーンオイル0.001部を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調整した。ここで、前記シリコーン樹脂粒子は、商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2μmである。前記シリコーンオイルは、商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製である。
この導電層用塗布液における酸素欠損型SnO被覆TiO粒子の平均粒径は0.30μmであり、該粒子のうち、粒径が0.10から0.40μmの範囲にある粒子の割合は66.1質量%であった。
上記方法にて調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、形状形成工程を行わず、直ちに予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、表面が凹凸形状を有さない、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
これら以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
なお、実施例1に記載した方法と同様の方法で導電層の体積抵抗率の測定を行った結果、2.3×1014Ω・cmであった。
(比較例4)
実施例19における電子写真感光体の作製において、支持体上に導電層を塗布せず、支持体上に中間層を直接浸漬コーティングし、該中間層表面には形状形成工程を行わなかった以外は、実施例19と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(比較例5)
実施例8における、中間層用塗布液の調製を以下のように変更した。
共重合ナイロン樹脂 10部
(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)
メトキシメチル化6ナイロン樹脂 30部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学(株)製)
酸化チタンSMT500SAS(1回目:シリカ・アルミナ処理、2回目:メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、数平均一次粒径35nm:テイカ社製) 5部
以上の材料をメタノール600部に同一容器中に加え超音波ホモジナイザーを用いて分散して、中間層用塗布液を作製した。
このようにして調製した中間層用塗料を、上記導電層上に浸漬塗布し、形状形成工程を行わず、直ちに予め装置内が100℃に加熱されたオーブン内で10分間、加熱乾燥した。そうすることで、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が0.8μmの中間層を形成した。
それ以外は実施例8と同様に電子写真感光体を作製し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(比較例6)
実施例13における、支持体上に導電層用塗布した後の工程を以下のように変更した。
実施例13で調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、形状形成工程を行わず、直ちに予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
それ以外は実施例13と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
(比較例7)
実施例17における、支持体上に導電層用塗布した後の工程を以下のように変更した。
実施例17で調製した導電層用塗料を、支持体上に直接浸漬コーティングし、支持体上に導電層用塗布液を塗布した。その後、形状形成工程を行わず、直ちに予め装置内が140℃に加熱されたオーブン内で60分間、加熱硬化することにより、支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が20μmの導電層を形成した。
それ以外は実施例17と同様に電子写真感光体を作成し、測定・評価を行った。測定・評価結果を下記の表1に示す。
以上の結果より、本発明にしたがった電子写真感光体の下地層表面に凹凸を形成する方法によって、膜性にも優れ、干渉縞が発生しない高画質な電子写真感光体を容易に製造できることがわかった。
本発明における凹凸形状部の形状例(表面)を示す図である。 本発明における凹形状部の形状例(断面)を示す図である。 本発明における凸形状部の形状例(断面)を示す図である。 水またはアルコール吹き付け装置の概略図である。 下地層塗布を吹き付ける装置の概略図である。 本発明による電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
符号の説明
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
41 噴射ノズル
42 ノズル固定治具
43 経路
44 水またはアルコール溶剤
45 噴霧液体
46 ワーク支持体
47 円筒状支持体
48 ノズル支持体
49 アーム
51 噴射ノズル
52 ノズル固定治具
53 経路
54 下地層用塗布液
55 噴霧液体
56 ワーク支持体
57 円筒状支持体
58 ノズル支持体
59 アーム
L1 凹形状の長軸径
L2 凸形状の長軸径
D 深さ
H 高さ

Claims (1)

  1. 支持体と、該支持体上の塗布法により形成された下地層と、該下地層上の塗布法により形成された感光層とを有する電子写真感光体であって該下地層が、導電層および中間層のいずれか一方からなる層あるいは該支持体側から導電層および中間層をこの順に積層してなる層であり、該下地層のうち少なくとも1層が表面に凹凸形状を有する層である電子写真感光体
    を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
    該製造方法が、該表面に凹凸形状を有する層用の塗布液の塗膜の表面に液体を吹き付けた後、該塗膜の表面を乾燥させることにより、該表面に凹凸形状を有する層を形成する工程を有し、
    該液体が、該表面に凹凸形状を有する層用の塗布液をそれに含まれる溶剤で希釈してなる液体であ
    ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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