以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、前述のとおり、円筒状支持体上に支持体上に表面層を有し、表面層と接する下層を有する積層型電子写真感光体の製造方法において、
(1)円筒状支持体上に下層用塗布液を塗布する下層塗布工程、
(2)塗布された下層用塗布液の塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する形状形成工程、
(3)形状が形成された塗膜表面に表面層用塗布液を塗布する表面層塗布工程、
を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
本発明における表面層及び下層とは、円筒状支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層である場合には、表面層は電荷輸送層を示し、下層は電荷発生層であることを示す。また、円筒状支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層である場合には、表面層は電荷発生層を示し、下層は電荷輸送層であることを示す。
また、感光層上に保護層を有する場合には、本発明の表面層は保護層であり、下層は感光層であることを示す。感光層上に保護層を有する場合の下層の感光層としては、電荷発生層及び電荷輸送層のいずれも可能であるが、電荷輸送層であることが好ましい。
中でも、表面層は、円筒状支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層上に形成されることが好ましい。即ち、順層型感光層の電荷輸送層が下層であり、その上に表面層が形成されることが好ましい。
本発明における表面層は、表面層用塗布液を下層上に塗布されることにより形成されるが、その塗布液中に重合性材料を含有することが好ましい。更に、表面層用塗布液を塗布後、重合性材料の重合により表面層が形成されることが機械的強度向上の点から好ましい。本発明における重合性材料の重合の形態は任意であるが、好ましくは重合性材料が架橋された重合であることが好ましい。
本発明における重合性材料は、重合可能な材料であれば任意であるが、重合性材料が重合性官能基を有する化合物であること、フェノール誘導体であること及びアルコキシシラン誘導体の少なくともいずれかであることが好ましい。
前記重合性官能基を有する化合物が有する重合性官能基としては、重合可能な官能基はいずれの場合にも適応可能であるが、中でもアクリル基、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。これらの重合性官能基は、重合性を阻害しない範囲で置換基を有してもよい。有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基又はフルオロアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はイソプロピル基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基又はナフチル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
更に、前記重合性官能基を有する化合物としては、重合性官能基を有する高分子化合物であることが好ましい。前記重合性官能基を有する高分子化合物としては、前記重合性官能基を有する樹脂であることが好ましい。重合性官能基を有する樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂又は不飽和樹脂が挙げられる。特には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアリレート樹脂であることが好ましい。
前記重合性官能基を有する高分子化合物の構造単位の例を下記式(1)に示す。
上記式(1)中、R1〜R8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基を示す。X1は、単結合、酸素原子、硫黄原子又は下記式(1−a)で示される二価の基を示す。
上記式(1−a)中、R9及びR10は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はR9とR10が結合することによる環構造を有する基を示す。
更に、上記式(1)及び上記式(1−a)中に記載のR1〜R10の少なくともいずれか1つは、前記重合性官能基であることを示す。
上記式(1)中のR1〜R8で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。
上記式(1−a)中のR9〜R10で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。R9とR10が結合することによる環構造を有する基としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基又はシクロオクチレン基が挙げられるが、シクロへキシレン基であることが好ましい。
上記式(1)及び上記式(1−a)中に記載のR1〜R10の少なくともいずれか1つは重合性官能基であるが、中でも、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。更には、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。
また、前記重合性官能基を有する高分子化合物の構造単位の例を下記式(2)に示す。
上記式(2)中、R11〜R18は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基を示す。Y1は、二価の有機基を示す。X2は、単結合、酸素原子、硫黄原子又は下記式(2−a)で示される二価の基を示す。
上記式(2−a)中、R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はR19とR20が結合することに環構造を有する基を示す。
更に、上記式(2)及び上記式(2−a)中に記載のR11〜R20の少なくともいずれか1つは前記重合性官能基であることを示す。
上記式(2)中のR11〜R18で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。
上記式(2−a)中のR19〜R20で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。R19とR20が結合することによる環構造を有する基としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基又はシクロオクチレン基が挙げられるが、シクロへキシレン基であることが好ましい。
上記式(2)中のY1は、二価の有機基を示す。二価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基が挙げられる。置換基を有してもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が好ましい。置換基を有してもよいアリーレン基としては、下記式(2−b−1)〜(2−b−5)で示される構造が挙げられる。
中でも、(2−b−1)、(2−b−2)又は(2−b−5)で示される構造であることが好ましい。
置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又は重合性官能基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。
上記式(2)及び上記式(2−a)中に記載のR11〜R20の少なくともいずれか1つは重合性官能基であるが、中でも、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。更には、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。
次に、前記重合性官能基を有する高分子化合物の具体的な構造単位の例を示すがこれらに限定されるものではない。
中でも、(1−4)、(2−2)、(2−7)又は(2−14)で示される構造単位であることが好ましい。
前記重合性官能基を有する高分子化合物は、重合性官能基を有さない構造単位と共重合させてもよい。
重合性官能基を有さない構造単位の例として下記式(3)で示される構造単位が挙げられる。
上記式(3)中、R21〜R28は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基を示す。X3は、単結合、酸素原子、硫黄原子又は下記式(3−a)で示される二価の基を示す。
上記式(3−a)中、R29及びR30は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はR29とR30が結合することによる環構造を有する基を示す。
上記式(3)中のR21〜R28で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。
上記式(3−a)中のR29〜R30で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。R29とR30が結合することによる環構造を有する基としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基又はシクロオクチレン基が挙げられるが、シクロへキシレン基であることが好ましい。
また、前記重合性官能基を有さない高分子化合物の構造単位の例を下記式(4)に示す。
上記式(4)中、R31〜R38は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基を示す。Y2は、二価の有機基を示す。X4は、単結合、酸素原子、硫黄原子又は下記式(4−a)で示される二価の基を示す。
上記式(4−a)中、R39及びR40は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又はR39とR40が結合することによる環構造を有する基を示す。
上記式(4)中のR31〜R38で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。
上記式(4−a)中のR39〜R40で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。R39とR40が結合することによる環構造を有する基としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基又はシクロオクチレン基が挙げられるが、シクロへキシレン基であることが好ましい。
上記式(4)中のY2は、二価の有機基を示す。二価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基が挙げられる。置換基を有してもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が好ましい。置換基を有してもよいアリーレン基としては、下記式(4−b−1)〜(4−b−5)で示される構造が挙げられる。
中でも、(4−b−1)、(4−b−2)又は(4−b−5)であることが好ましい。
置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基の有する置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基又は重合性官能基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
次に、前記重合性官能基を有さない構造単位の具体的例を示すがこれらに限定されるものではない。
中でも、(3−2)、(4−1)、(4−2)、(4−5)、(4−6)、(4−7)、(4−10)又は(4−12)で示される構造単位であることが好ましい。
重合性官能基を有する高分子化合物は、重合性官能基を有する構造単位と重合性官能基を有さない構造単位との共重合が可能である。その場合の共重合比は、重合性官能基を有する構造単位が、高分子の全構造単位中に30モル%以上含有されることが好ましい。更には、重合性官能基を有する構造単位が高分子の全構造単位中に50モル%以上含有されることが好ましい。
重合性官能基を有する高分子化合物の分子量は任意であるが、重量平均分子量(Mw)において、5,000以上300,000以下であることが感光体の塗工性が良好である点で好ましい。更に、10,000以上200,000以下であることが好ましい。
本発明において、樹脂の重量平均分子量は、常法に従い、以下のようにして測定されたものである。
すなわち、測定対象樹脂をテトラヒドロフラン中に入れ、数時間放置した後、振盪しながら測定対象樹脂とテトラヒドロフランと良く混合し(測定対象樹脂の合一体が無くなるまで混合し)、更に12時間以上静置した。
その後、東ソー(株)製のサンプル処理フィルターマイショリディスクH−25−5を通過させたものをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)用試料とした。
次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、GPC用試料を10μl注入して、測定対象樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムには、東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHM−Mを用いた。
測定対象樹脂の重量平均分子量の測定にあたっては、測定対象樹脂が有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料には、アルドリッチ社製の単分散ポリスチレンを用いた。単分散ポリスチレンとしては分子量が、3,500、12,000、40,000、75,000、98,000、120,000、240,000、500,000、800,000、1,800,000のものを10点用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
また、前記重合性官能基を有する化合物としては、アリールアミン誘導体であることが好ましい。本発明における重合性官能基を有するアリールアミン誘導体とは、少なくとも1つの重合性官能基を有するアリール基を有するアミン化合物であることを示す。本発明における重合性官能基を有するアリールアミン誘導体を下記式(5)に示す。
上記式(5)中、R51〜R55は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はフルオロアルキル基を示す。Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。ただし、R51〜R55の少なくともいずれか1つは、下記式(5−a)で示される構造であることを示す。
上記式(5−a)中、Z1は、単結合、酸素原子、硫黄原子又は二価の有機基を示す。A1は、重合性官能基を示す。
上記式(5)中のR51〜R55で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。これらの中でも、メチル基、エチル基又はフェニル基であることが好ましい。
上記式(5)中のAr1及びAr2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。これらが有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又は重合性官能基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基又はジアリールアミノ基が挙げられるが、ジアリールアミノ基であること好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもアクリル基又はビニル基であることが好ましい。これら重合性官能基は、置換基を有してもよいアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基に対し、アルキレン基を介して結合してもよい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
上記式(5−a)中のZ1は、単結合、酸素原子、硫黄原子又は二価の有機基を示す。二価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基が挙げられる。置換基を有してもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基又はヘキシレン基が挙げられる。中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が好ましい。置換基を有してもよいアリーレン基としては、フェニレン基又はナフチレン基が挙げられるが、フェニレン基であることが好ましい。置換基を有してもよいアルキレン基又は置換基を有してもよいアリーレン基の有する置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
上記式(5−a)中のA1は、重合性官能基を示す。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもアクリル基又はビニル基であることが好ましい。
以下に、重合性官能基を有するアリールアミン誘導体の具体的な例を示すがこれらに限定されるものではない。
中でも、(5−1)、(5−2)、(5−4)、(5−5)、(5−9)、(5−11)又は(5−15)であることが好ましい。
また、本発明における重合性材料は、重合可能な材料であれば任意であるが、フェノール誘導体であることが好ましい。本発明におけるフェノール誘導体とは、重合工程後、フェノール樹脂となる原料を示す。フェノール誘導体は、重合モノマーであっても、フェノール部位が繰り返されるオリゴマーであってもよいし、複数の原料を組み合わせてもよい。
本発明におけるフェノール誘導体は、下記式(6)で示される構造を有する。
上記式(6)中のR61〜R65は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、置換基を有してもよいアミノ基、水酸基又は重合性官能基を示す。
上記式(6)中のR61〜R65で示される置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基又は下記式(6−a)で示される基が挙げられるが、
メチル基、エチル基又は上記式(6−a)で示される基であることが好ましい。更には、上記式(6)中のR61あるいはR65の少なくともいずれか1つが上記式(6−a)で示される基であることが特に好ましい。置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。置換基を有してもよいアミノ基としては、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基又はジアリールアミノ基が挙げられるが、ジアリールアミノ基であること好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。これら重合性官能基は、アルキレン基を介して結合してもよい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
上記式(6)中のR61〜R65で示される置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアミノ基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又は重合性官能基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基が挙げられるが、ジアリールアミノ基であること好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。これら重合性官能基は、アルキレン基を介して結合してもよい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
次に、本発明におけるフェノール誘導体の構造の例を示すがこれらに限定されるものではない。
中でも、(6−2)、(6−5)又は(6−6)であることが好ましい。
また、本発明における重合性材料は、重合可能な材料であれば任意であるが、アルコキシシラン誘導体であることが好ましい。本発明におけるアルコキシシラン誘導体とは、加水分解による重合が可能なケイ素原子含有化合物であることを示し、アルコキシ基を少なくとも1つ以上置換基に有するケイ素原子化合物であることを示す。アルコキシシラン誘導体は、重合モノマーであっても、重合可能な置換基を有するケイ素原子を複数個有するオリゴマーであってもよいし、複数の原料を組み合わせてもよい。
本発明におけるアルコキシシラン誘導体はアルコキシ基を少なくとも1つ有する。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基及びエトキシ基であることが好ましい。
本発明におけるアルコキシシラン誘導体の構造を下記式(7)に示す。
上記式(7)中のR71〜R74は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、水酸基、ハロゲン原子及び重合性官能基を示すが、R71〜R74のうち少なくとも1つはアルコキシ基である。
上記式(7)中のR71〜R74で示される置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられるが、メチル基、エチル基で示される基であることが好ましい。置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基及びエトキシ基であることが好ましい。フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基又はノナフルオロブチル基が挙げられるが、トリフルオロメチル基であることが好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられるが、塩素原子であることが好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。これら重合性官能基は、アルキレン基を介して結合してもよい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
上記式(7)中のR71〜R74で示される置換基を有してもよいアルキル基及び置換基を有してもよいアリール基が有する置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又は重合性官能基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基が挙げられるが、メチル基又はエチル基であることが好ましい。アリール基としては、フェニル基又はナフチル基が挙げられるが、フェニル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が挙げられるが、メトキシ基であることが好ましい。アミノ基としては、ジアルキルアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ジアリールアミノ基が挙げられるが、ジアリールアミノ基であること好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基が挙げられるが、中でもビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。これら重合性官能基は、アルキレン基を介して結合してもよい。アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
次に、本発明におけるアルコキシシラン誘導体の構造の例を示すがこれらに限定されるものではない。
中でも、(7−2)、(7−5)又は(7−8)であることが好ましい。
本発明における下層は、順層型感光層である場合には、電荷発生層であることを示す。また、逆層型感光層である場合には、下層は電荷輸送層であることを示す。また、感光層上に保護層を有する場合には、本発明の下層は感光層であることを示す。感光層上に保護層を有する場合の下層の感光層としては、電荷発生層及び電荷輸送層のいずれも可能であるが、電荷輸送層であることが好ましい。中でも、表面層は、円筒状支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層上に形成されることが好ましい。即ち、順層型感光層の電荷輸送層が下層であり、その上に表面層が形成されることが好ましい。
本発明における下層が電荷発生層である場合の下層用塗布液について説明する。
本発明における下層が電荷発生層である場合の電荷発生物質としては、以下のものが挙げられる。
・モノアゾ、ジスアゾ又はトリスアゾのようなアゾ顔料;
・金属フタロシアニン又は非金属フタロシアニンのようなフタロシアニン顔料;
・インジゴ又はチオインジゴのようなインジゴ顔料;
・ペリレン酸無水物又はペリレン酸イミドのようなペリレン顔料;
・アンスラキノン又はピレンキノンのような多環キノン顔料;
・スクワリリウム色素、ピリリウム塩又はチアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素;
・セレン、セレン−テルル又はアモルファスシリコンのような無機物質;
・キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、キサンテン色素、キノンイミン色素又はスチリル色素。
これら電荷発生物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。これらの中でも、特にオキシチタニウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンあるいはクロロガリウムフタロシアニンのような金属フタロシアニンは、高感度であるため好ましい。
本発明における下層が電荷発生層である場合の結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂が挙げられる。また、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂が挙げられる。特には、ブチラール樹脂が好ましい。これらは、単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
本発明における下層が電荷発生層である場合の電荷発生層用塗布液に用いる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択される。有機溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤又は芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
次に、本発明における下層が電荷輸送層である場合の下層用塗布液について説明する。
本発明における下層が電荷輸送層である場合の電荷輸送物質としては、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物又はトリアリルメタン化合物が挙げられる。これら電荷輸送物質は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
本発明における下層が電荷輸送層である場合の結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂又は不飽和樹脂。特には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂又はジアリルフタレート樹脂が好ましい。これらは、単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂とを溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。また、上記電荷輸送物質のうち単独で成膜性を有するものは、結着樹脂を用いずにそれ単独で成膜することにより、電荷輸送層とすることもできる。
本発明における下層が電荷輸送層である場合の溶剤としては、以下のものが挙げられる。
・アセトン又はメチルエチルケトンのようなケトン系溶剤;
・酢酸メチル又は酢酸エチルのようなエステル系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジメトキシメタン又はジメトキシエタンのようなエーテル系溶剤;
・トルエン、キシレン又はクロロベンゼンのような芳香族炭化水素溶剤。
これら溶剤は、単独で使用してもよいが、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤又は芳香族炭化水素溶剤を使用することが、樹脂溶解性のような観点から好ましい。
本発明における(1)で示された円筒状支持体上に下層用塗布液を塗布する下層塗布工程に関して説明する。
本発明における円筒状支持体は、従来の電子写真感光体で用いられている円筒状支持体でよい。すなわち、円筒状支持体としては、導電性を有するもの(導電性円筒状支持体)が好ましく、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレスのような金属製の円筒状支持体を用いることができる。アルミニウム又はアルミニウム合金の場合は、ED管又はEI管の引抜き管や、これらを切削、電解複合研磨(電解作用を有する電極と電解質溶液による電解及び研磨作用を有する砥石による研磨)、湿式又は乾式ホーニング処理したものも用いることができる。また、アルミニウム、アルミニウム合金又は酸化インジウム−酸化スズ合金を真空蒸着によって被膜形成された層を有する上記金属製円筒状支持体や樹脂製円筒状支持体を用いることもできる。樹脂製円筒状支持体の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、フェノール樹脂、ポリプロピレン又はポリスチレン樹脂が挙げられる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子又は銀粒子のような導電性粒子を樹脂や紙に含浸した円筒状支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチックを用いることもできる。
本発明における(1)で示された下層用塗布液とは、下層が電荷発生層である場合は電荷発生層用塗布液であり、下層が電荷輸送層である場合は電荷輸送層用塗布液であることを示す。
本発明における(1)で示された下層用塗布液を塗布する塗布工程は、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法又はリングコーティング法のような塗布方法を用いることができる。生産性の観点から浸漬コーティング法であることが好ましい。
次いで、本発明における(2)で示された塗布された下層用塗布液の塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する形状形成工程について説明する。
本発明における(2)で示された下層用塗布液の塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法としては、生産性及び形状の均一性の観点から以下の凹凸形成方法1乃至4で示される方法であることが好ましい。
(凹凸形成方法1)
本発明における(2)で示された塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法としては、塗布された下層用塗布液の塗膜を乾燥後、凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を有するモールドを加圧接触させることにより、凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を下層用塗布液の塗膜表面に形成する工程であることが好ましい。
前記下層用塗布液の塗膜を乾燥させる工程の乾燥方法は、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥が挙げられ、これらの乾燥方法を組み合わせた方法を用いることができる。特に、生産性の観点から加熱乾燥及び加熱送風乾燥であることが好ましい。
前記凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を有するモールドを加圧接触させることにより、凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を下層用塗布液の塗膜表面に形成する方法とは、所定の形状を有するモールドを電子写真感光体の塗膜表面に加圧接触し形状転写を行う表面の形成方法であることを示す。図1は、本発明におけるモールドによる加圧接接による形状転写加工装置の概略図の例を示す図である。加圧及び解除が繰り返し行える加圧装置Aに所定のモールドBを取り付けた後、下層用塗布液を塗布された円筒状支持体Cに対して所定の圧力でモールドを当接させ形状転写を行う。その後、加圧を一旦解除し、前記円筒状支持体Cを回転させた後に、再度加圧そして形状転写工程を行う。この工程を繰り返すことにより、電子写真感光体全周にわたって所定の凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成することが可能である。また、形状形成を効率的に行う目的で、モールドや前記円筒状支持体Cを加熱してもよい。
また、例えば図2に示されているように、初めに加圧装置Aに前記円筒状支持体Cの塗膜表面一周長さ程度の所定形状を有するモールドBを取り付ける。その後、前記円筒状支持体Cに対して所定の圧力をかけながら、前記円筒状支持体Cを回転(矢印で示す方向に)、移動(矢印で示す方向に)させることにより、感光体全周にわたって所定の凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成してもよい。
また、シート状のモールドをロール状の加圧装置と前記円筒状支持体Cとの間に挟み、モールドシートを送りながら表面加工することも可能である。
また、形状転写及び前記円筒状支持体Cの加熱温度は、本発明の形状が形成できる範囲で任意であるが、より低く制御されていることが形状を安定的に形成するうえで好ましい。
モールド自体の材質や大きさ、形状は適宜選択することが出来る。材質としては、微細表面加工された金属及びシリコンウエハーの表面にレジストによりパターニングをしたもの、微粒子が分散された樹脂フィルム又は所定の微細表面形状を有する樹脂フィルムに金属コーティングされたものが挙げられる。モールド形状の一例を図3及び図4に示す。図3及び図4において、(1)は上から見たモールド形状を示し、(2)は横から見たモールド形状を示す図である。
また、感光体に対して圧力の均一性を付与する目的で、モールドと加圧装置との間に弾性体を設けてもよい。
上記、所定の形状を有するモールドを下層用塗布液の塗膜表面に圧接し形状転写を行う凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状の形成方法により、凹形状、凸形状の大きさ、形状及び配列の制御性が高く、高精度且つ自由度の高い塗膜表面の表面加工が可能である。
(凹凸形成方法2)
本発明における(2)で示された塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法としては、塗布された下層用塗布液の塗膜を乾燥後、研磨粒子を表面に吹き付けることにより凹形状を形成する工程であることが好ましい。
前記下層用塗布液の塗膜を乾燥させる工程の乾燥方法は、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥が挙げられ、これらの乾燥方法を組み合わせた方法を用いることができる。特に、生産性の観点から加熱乾燥及び加熱送風乾燥であることが好ましい。
研磨粒子を表面に吹き付けることにより凹形状を形成する方法としては、乾式のブラスト法が挙げられる。ブラスト加工の方法としては、圧縮空気を用いて噴射する方法、モーターを動力として噴射する方法が挙げられるが、被処理体の凹形状形成を精密に制御が可能で、かつ設備の簡易性という点において、圧縮空気を用いる方法が好ましい。
乾式ブラストに用いる研磨粒子としては以下の粒子が挙げられる。酸化アルミニウム粒子、ジルコニア粒子、炭化ケイ素粒子、ガラス粒子のようなセラミック粒子。ステンレス粒子、鉄粒子、亜鉛粒子のような金属粒子。ポリアミド樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子のような樹脂粒子。特に凹形状形成の効率及びコスト面からガラス粒子が好ましい。
本発明において、使用する研磨粒子の体積基準粒度分布における平均粒径は、10μm以上60μm以下であることが好ましい。また、体積基準粒度分布における最頻径は、10μm超過60μm未満が好ましい。
本発明における研磨粒子の平均粒径及び最頻径は、体積基準粒度分布に基づくものである。これらは種々の方法によって測定できるが、本発明においてはシスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA−2100を用いて測定を行っている。
具体的な測定方法としては、予め容器中の不純物を除去した水100ml以上150ml以下中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1ml以上0.5ml以下加え、更に測定試料を0.1g以上0.5g以下加える。試料を分散した懸濁液は超音波(50kHz、120W)を1分間以上3分間以下照射し、分散液濃度を1.2万個以上/μl2.0万個/μl以下とする。上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.6μm以上400μm以下(平均円形度においては10.05μm以上100.48μm未満)の円相当径を有する粒子の平均粒径及び最頻径を測定している。
本発明において用いるブラスト加工装置の例を図5に示す。容器(不図示)に貯留されている研磨粒子は経路24よりノズルに導かれ、経路23より導入された圧縮空気を用いて噴射ノズル21より噴射される。噴射された研磨粒子は、ワーク支持体26により支持され自転している下層用塗布液を塗布された円筒状支持体27に衝突する。25は研磨粒子(ブラスト砥粒)である。
このときノズルと前記円筒状支持体の距離は、ノズル固定冶具22、アーム29により調整されて決められる。ノズルは通常前記円筒状支持体の回転軸方向に対して移動しながら凹形状形成を行い、ノズル支持体28が前記円筒状支持体の回転軸方向に移動することによりワークに対してムラ無く凹形状形成を施すことができる。
この時、ノズルと前記円筒状支持体表面の最短距離は適当な間隔に調整する必要がある。噴射の動力に用いる圧縮空気の圧力も適度な圧力に調整する必要がある。コストの安価なガラスビーズは圧縮空気の圧力が高いと破損する場合があり、生産性の観点から圧縮空気は低圧で行うことが好ましい。
(凹凸形成方法3)
本発明における(2)で示された塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法としては、塗布された下層用塗布液の塗膜表面を結露させた後、乾燥することにより凹形状を形成する工程であることが好ましい。
前記下層用塗布液の塗膜表面を結露させる方法は、下層用塗布液を塗布された支持体を、塗膜表面が結露する雰囲気下に一定時間保持する工程を示す。この表面形成方法における結露とは、水の作用により塗膜表面に液滴が形成されたことを示す。塗膜を結露させる条件は、支持体を保持する雰囲気の相対湿度及び塗布液溶剤の揮発条件(例えば気化熱)によって影響を受け、適切な条件を選択することが重要である。特に、支持体を保持する雰囲気の相対湿度に主に依存する。塗膜表面を結露させる相対湿度は、40%以上100%以下であることが好ましい。更に相対湿度60%以上95%以下であることが好ましい。塗膜表面を結露させる工程には、結露による液滴形成が行われるのに必要な時間があればよい。生産性の観点から好ましくは1秒以上300秒以下であり、更には10秒以上180秒以下であることが好ましい。塗膜表面を結露させる工程には、相対湿度が重要であるが、雰囲気温度としては20℃以上80℃以下であることが好ましい。
本発明における(2)で示された塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法に適した下層用塗布液は、結着樹脂を含有することが好ましい。前記結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂及び不飽和樹脂が挙げられる。特には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂あるいはジアリルフタレート樹脂が好ましい。更には、ポリカーボネート樹脂あるいはポリアリレート樹脂であることが好ましい。これらは、単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
また、本発明における(2)で示された塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法に適した下層用塗布液は、芳香族有機溶剤を含有することが好ましい。芳香族有機溶剤は、水に対して親和性の低い溶剤であり、結露工程における形状形成が安定的に行われる点で好ましい。具体的には、1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、1,4−ジメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼンあるいはクロロベンゼンが挙げられる。更に、芳香族有機溶剤の含有量が下層用塗布液中の全溶剤質量に対し50質量%以上80質量%以下で含有する下層用塗布液であることが好ましい。
また、形状部を安定的に作製する目的で、上記下層用塗布液中に芳香族有機溶剤を含有し、更に水との親和性の高い有機溶剤あるいは水を下層用塗布液中に含有してもよい。水との親和性の高い有機溶剤としては、下記に示すものが好ましい。
・(メチルスルフィニル)メタン(慣用名:ジメチルスルホキシド)、
・チオラン−1,1−ジオン(慣用名:スルホラン)、
・N,N−ジメチルカルボキシアミド、
・N,N−ジエチルカルボキシアミド、
・ジメチルアセトアミド、
・1−メチルピロリジン−2−オン。
これらの有機溶剤は単独で含有することも、2種以上混合して含有することができる。
前記下層用塗布液の塗膜表面を結露させた後、乾燥をさせる工程の乾燥方法は、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥が挙げられ、これらの乾燥方法を組み合わせた方法を用いることができる。特に、生産性の観点から加熱乾燥及び加熱送風乾燥であることが好ましい。また、均一性の高い凹形状を形成するためには、速やかな乾燥であることが重要であるため、加熱乾燥が行われることが好ましい。乾燥工程における乾燥温度は、100℃以上150℃以下であることが好ましい。乾燥する乾燥工程時間は、支持体上に塗布された塗布液中の溶剤及び結露工程によって形成した水滴が除去される時間があればよい。乾燥工程時間は、20分以上120分以下であることが好ましく、更には40分以上100分以下であることが好ましい。
前記結露による形状形成は、製造方法で示した範囲内で製造条件の調整を行うことにより形状の制御が可能である。凹形状部は、例えば、本発明に記載の下層用塗布液中の溶剤種、溶剤含有量、結露工程における相対湿度、結露工程における保持時間、乾燥温度により制御可能である。
(凹凸形成方法4)
本発明における(2)で示された塗膜表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する方法としては、塗布された下層用塗布液の塗膜表面に対し、下層用塗布液と同一成分を吹き付け後、乾燥することにより凸形状を形成する工程であることが好ましい。すなわち、塗膜表面に凸形状を形成する方法とは、下層用塗布液の塗膜表面に対し、下層用塗布液と同一の成分を霧化して吹き付けて凸部を形成する方法を示す。
本発明における塗布された下層用塗布液の塗膜表面に対し、下層用塗布液と同一の成分を吹き付ける方法としては、下記の方法が挙げられる。
・下層用塗布液を高圧のエアーと混合し微粒化してノズルから噴霧するスプレー法、
・液滴を粒子で吐出させるヘッド部を含むインクジェットユニットを用いる方法。
吹き付ける下層用塗布液の粘度を、適切な粘度になるように必要に応じて下層用塗布液に含まれる溶剤で希釈を行うことも可能である。
本発明における塗布された下層用塗布液の塗膜表面に対し、下層用塗布液と同一の成分を吹き付ける方法により、微小な粒子となった塗布液と同一の成分が、塗膜表面に吹き付けられた際に、微小な粒子の大きさの独立した凸形状が塗布表面に形成される。
前記下層用塗布液の塗膜表面に対し、下層用塗布液と同一の成分を吹き付けた後、乾燥をさせる工程の乾燥方法は、加熱乾燥、送風乾燥、真空乾燥が挙げられ、これらの乾燥方法を組み合わせた方法を用いることができる。特に、生産性の観点から加熱乾燥及び加熱送風乾燥であることが好ましい。乾燥工程における乾燥温度は、100℃以上150℃以下であることが好ましい。乾燥する乾燥工程時間は、支持体上に塗布された塗布液中の溶剤が除去される時間があればよい。乾燥工程時間は、20分以上120分以下であることが好ましく、更には40分以上100分以下であることが好ましい。
次いで、本発明における(3)で示された形状形成後の塗膜表面に表面層用塗布液を塗布する表面層塗布工程について説明する。
前述のように本発明における表面層とは、円筒状支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層である場合には、表面層は電荷輸送層を示す。また、円筒状支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層である場合には、表面層は電荷発生層を示す。また、感光層上に保護層を有する場合には、本発明の表面層は保護層を示す。
本発明における(3)で示された形状形成後の塗膜表面に表面層用塗布液を塗布する表面層塗布工程は、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法又はリングコーティング法のような塗布方法を用いることができる。生産性の観点から浸漬コーティング法であることが好ましい。
前述のように本発明における表面層は、表面層用塗布液を下層上に塗布されることにより形成されるが、その塗布液中に重合性材料を含有することが好ましい。更に、表面層用塗布液を塗布後、重合性材料の重合により表面層が形成されることが機械的強度向上の点から好ましい。本発明における重合性材料の重合の形態は任意であるが、好ましくは重合性材料が架橋された重合であることが好ましい。
上記重合性材料を重合させる重合工程について説明する。
重合工程は、重合性材料が重合反応を起こす重合方法であれば、材料に応じ、適した重合方法を選択できる。重合方法としては、加熱による重合、紫外線照射による重合、放射線照射による重合又は加水分解による重合であることが好ましい。
前記重合性材料の加熱による重合工程について説明する。加熱方法は、重合性材料が重合反応を起こす方法であれば任意である。具体的には、発熱体からの熱放射による加熱又は円筒状支持体の電磁誘導による加熱方法が挙げられる。前記重合性材料の加熱による重合工程で重合反応を行う場合、連鎖重合あるいは重縮合が好ましい。また、重合工程で架橋重合であることが好ましい。
加熱による重合として、連鎖重合を行う場合には、ラジカル連鎖重合であることが好ましい。加熱によりラジカルを発生し連鎖重合を行う場合には、重合性材料としては、重合性官能基を有する化合物であることが好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。また、複数の重合性材料を表面層塗布液中に含有してもよい。加熱によりラジカルを発生し連鎖重合を行う場合には、重合性材料を含有する表面層塗布液中にラジカル開始剤を用いることも可能である。ラジカル開始剤としては、p−メトキシ過酸化ベンゾイル、m,m’−ジメトキシ過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチルエステル又は4,4’−アゾビス−4−シアノヘプタン酸が挙げられる。
また、加熱による重縮合反応を行う場合には、有機金属化合物を用いたゾルゲル法による縮合反応又はフェノール樹脂とホルムアルデヒドのような2種類以上の分子が反応する重縮合又は置換フェノールによる重縮合反応が挙げられる。中でも、フェノール樹脂とホルムアルデヒドのような2種類以上の分子が反応する重縮合又はレゾール型フェノール樹脂による重縮合反応であることが好ましい。更に、レゾール型フェノール樹脂による重縮合反応であることがより好ましい。
加熱による重縮合反応を行う場合には、表面層塗布液中に重縮合可能な重合性材料を含有している。重縮合可能な重合性材料としては、上記式(6)で示される化合物であることが好ましい。また、フェノール樹脂とホルムアルデヒドのような2種類以上の分子が反応する重縮合を用いる場合のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール又はアセトアルデヒドが挙げられる。
加熱による重合工程は、重合が十分に進行するように、100℃以上で加熱されることが好ましい。また、過度の加熱は電子写真感光体の特性を低下させる恐れがあるため、200℃以下であることが好ましい。更には、120℃以上170℃以下で加熱が行われることが好ましい。重合工程に必要な時間は、重合が十分に進行するように、5分以上重合工程が行われることが好ましい。また、加熱時間が長過ぎると電子写真感光体の特性を低下させる恐れがあるため、120分以下であることが好ましい。更には、20分以上90分以下であることが好ましい。
前記重合性材料の紫外線照射による重合工程について説明する。紫外線照射方法は重合性材料が重合反応を起こす方法であれば任意である。前記重合性材料の紫外線照射による重合工程で重合反応を行う場合、連鎖重合であることが好ましい。連鎖重合を行う場合には、ラジカル連鎖重合であることが好ましい。また、重合工程で架橋重合であることが好ましい。
紫外線照射によりラジカルを発生し連鎖重合を行う場合には、重合性材料としては、重合性官能基を有する化合物であることが好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。また、複数の重合性材料を表面層塗布液中に含有してもよい。紫外線照射によりラジカルを発生し連鎖重合を行う場合には、重合性材料を含有する表面層塗布液中に光開始剤を用いてもよい。光開始剤としては、光開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、チオキサントン、ベンゾインブチルエーテル、アシロキシムエステル又はジベンゾスロベンが挙げられる。
紫外線照射によりラジカルを発生し連鎖重合を行う場合の光源としては、重合性材料あるいは光開始剤の種類により最適なものが選択される。光源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー又はHe−Cdレーザーが挙げられる。中でも、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ又は超高圧水銀ランプが好ましい。
紫外線照射による重合工程で重合を行う場合には、重合可能であれば重合工程の雰囲気は任意であるが、重合を十分に進行させる点で、酸素濃度が少ない条件下で行うことが好ましい。更には、窒素ガス下で行われることが好ましい。また、重合工程に必要な時間は、紫外線照射により十分に重合が進行する時間があればよい。また、紫外線照射後には加熱処理を行うことも可能である。
前記重合性材料の放射線照射による重合工程について説明する。放射線照射方法は、重合性材料が重合反応を起こす方法であれば任意である。前記重合性材料の放射線照射による重合工程で重合反応を行う場合、連鎖重合であることが好ましい。連鎖重合を行う場合には、ラジカル連鎖重合であることが好ましい。また、重合工程で架橋重合であることが好ましい。
本発明における放射線としては、特許公報9において開示された放射線と同様に、電子線及びγ線が挙げられる。中でも、装置の大きさ、安全性、コスト及び汎用性の点から電子線であることが好ましい。電子線照射で重合工程を行う場合、電子線の加速器としては、スキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型又はラミナー型のいずれの方式も使用することができる。また、電子線の加速電圧としては、300kV以下が好ましく、更には150kV以下であることが好ましい。また、電子線の線量としては、10kGy以上1,000kGy以下であることが好ましく、更には500kGy以下であることが好ましい。
放射線照射によりラジカルを発生し連鎖重合を行う場合には、重合性材料としては、重合性官能基を有する化合物であることが好ましい。重合性官能基としては、アクリル基、ビニル基又はエポキシ基であることが好ましい。また、複数の重合性材料を表面層塗布液中に含有してもよい。
放射線照射による重合工程で重合を行う場合には、重合可能であれば重合工程の雰囲気は任意であるが、重合を十分に進行させる点で、酸素濃度が少ない条件下で行うことが好ましい。更には、窒素ガス下で行われることが好ましい。また、重合工程に必要な時間は、放射線照射により十分に重合が進行する時間があればよい。また、放射線照射後には加熱処理を行うことも可能である。
前記重合性材料の加水分解による重合工程について説明する。前記重合性材料の加水分解による重合工程は、重合性材料がアルコキシシラン誘導体である場合に適応される。アルコキシシラン誘導体は、空気中の水蒸気といった水が介在することにより加水分解反応を起こし重合反応が進行する。常湿状態でも加水分解反応は進行するが、速やかに反応を進行させるためにアルコキシシラン誘導体を含有する表面層塗布液を塗布後、相対湿度50%以上90%以下で保持することが好ましい。更に、反応を速やかに進行させるためにアルコキシシラン誘導体を含有する表面層塗布液を塗布後、加熱雰囲気下で保持してもよい。この場合の加熱雰囲気温度は、25℃以上40℃以下であることが好ましい。また、加水分解による重合後に加熱処理を行うことも可能である。
本発明の製造方法により、電子写真感光体の表面に凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を安定的に形成することが可能である。
本発明の電子写真感光体の製造方法により製造された電子写真感光体の表面は、凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を有している。
前記電子写真感光体表面の凹形状としては、感光体表面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線及び曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形あるいは六角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、円形状あるいは楕円形状が挙げられる。直線及び曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形、角の円い六角形あるいは扇形が挙げられる。また、本発明における電子写真感光体の表面の凹形状は、感光体断面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線及び曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形あるいは五角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、部分円形状あるいは部分楕円形状が挙げられる。直線及び曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形あるいは扇形が挙げられる。前記電子写真感光体表面の凹形状の具体例としては、図6(a)乃至(g)(凹形状の形状例(表面))及び図7(h)乃至(n)(凹形状の形状例(断面)))で示される凹形状が挙げられる。前記電子写真感光体表面の凹形状は、個々に異なる形状、大きさあるいは深さを有してもよく、また、全ての凹形状が同一の形状、大きさあるいは深さであってもよい。更に、前記電子写真感光体表面は、個々に異なる形状、大きさあるいは深さを有する凹形状と、同一の形状、大きさあるいは深さを有する凹形状が組み合わされた表面であってもよい。また、これらの形状が、重複部分を有しても、相互に重なり合ってもよい。
また、前記電子写真感光体表面の凹形状の大きさについて説明する。前記凹形状の指標として長軸径(L1)を用いる。前記長軸径(L1)とは、各凹形状部の開孔部を横切る直線のうち、最大となる直線の長さを示す。具体的には、図6(a)乃至(g)中の長軸径(L1)及び図7(h)乃至(n)中の長軸径(L1)で示されているように、前記電子写真感光体表面における凹形状の開孔部周囲の表面を基準とし、各凹形状における表面開孔部の最大長さを示す。例えば、凹形状の表面形状が円状の場合は直径を示し、表面形状が楕円状の場合は長径を示し、表面形状が四角形の場合は対角線のうち長い対角線を示す。前記電子写真感光体表面における凹形状の長軸径(L1)は、任意であるが、0.5μm以上80μm以下であることが好ましい。更には、1μm以上40μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
また、前記電子写真感光体表面の凹形状の深さについて説明する。前記凹形状の指標として深さ(D)を用いる。前記深さ(D)とは、各凹形状の最深部と開孔面との距離を示す。具体的には、図7(h)乃至(n)中の深さ(D)で示されているように、前記電子写真感光体表面における凹形状の開孔部周囲の表面を基準とし、凹形状の最深部と開孔面との距離を示す。前記電子写真感光体表面における凹形状の深さ(D)は、任意であるが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。更には、0.3μm以上7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
また、前記電子写真感光体表面の凹形状は、感光体表面の凹形状が形成されている領域は、感光体表面の全域であってもよいし、表面の一部分に形成されていてもよいが、表面全域に凹形状が形成されていることが好ましい。また、前記電子写真感光体表面の凹形状は、前記電子写真感光体表面の100μm四方中に1個以上70,000個以下有することが好ましい。更には、100個以上50,000個以下有することが好ましい。なお、上記の100μm四方の領域は、電子写真感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定している。
前記電子写真感光体表面の凸形状としては、感光体表面の観察では、例えば、直線により構成される形状、曲線により構成される形状あるいは直線及び曲線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形、五角形あるいは六角形が挙げられる。曲線により構成される形状としては、例えば、円形状あるいは楕円形状が挙げられる。直線及び曲線により構成される形状としては、例えば、角の円い四角形、角の円い六角形あるいは扇形が挙げられる。また、本発明における電子写真感光体の表面の凸形状は、感光体断面の観察では、例えば、直線により構成される形状が挙げられる。直線により構成される形状としては、例えば、三角形、四角形あるいは五角形が挙げられる。前記電子写真感光体表面の凸形状の具体例としては、図8(a)乃至(g)(凸形状の形状例(表面))及び図9(h)乃至(l)(凸形状の形状例(断面))で示される凸形状が挙げられる。前記電子写真感光体表面の凸形状は、個々に異なる形状、大きさあるいは高さを有してもよく、また、全ての凸形状が同一の形状、大きさあるいは高さであってもよい。更に、前記電子写真感光体表面は、個々に異なる形状、大きさあるいは高さを有する凹形状と、同一の形状、大きさあるいは高さを有する凸形状が組み合わされた表面であってもよい。また、これらの形状が、重複部分を有しても、相互に重なり合ってもよい。
また、前記電子写真感光体表面の凸形状の大きさについて説明する。前記凸形状の指標として長軸径(L2)を用いる。前記長軸径(L2)とは、各凸形状部の周囲の表面を基準とし、各凸形状と周囲の表面とが接する部位の最大長さを示す。具体的には、図8(a)乃至(g)中の長軸径(L2)及び図9(h)乃至(l)中の長軸径(L2)で示されている長さであることを示す。例えば、凸形状の表面形状が円状の場合は直径を示し、表面形状が楕円状の場合は長径を示し、表面形状が四角形の場合は対角線のうち長い対角線を示す。前記電子写真感光体表面における凸形状の長軸径(L2)は、任意であるが、0.5μm以上40μm以下であることが好ましい。更には、1μm以上20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
また、前記電子写真感光体表面の凹形状の高さについて説明する。前記凹形状の指標として高さ(H)を用いる。前記高さ(H)とは、各凸形状の最頂部と周囲の表面との距離を示す。具体的には、図9(h)乃至(l)中の高さ(H)で示されている距離を示す。前記電子写真感光体表面における凸形状の高さ(H)は、任意であるが、0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。更には、0.3μm以上7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
また、前記電子写真感光体表面の凸形状は、感光体表面の凸形状が形成されている領域は、感光体表面の全域であってもよいし、表面の一部分に形成されていてもよいが、表面全域に凸形状が形成されていることが好ましい。また、前記電子写真感光体表面の凸形状は、前記電子写真感光体表面の100μm四方中に1個以上70,000個以下有することが好ましい。更には、100個以上50,000個以下有することが好ましい。なお、上記の100μm四方の領域は、電子写真感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定している。
前記電子写真感光体表面の凹凸形状は、例えば、市販のレーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡あるいは原子力間顕微鏡を用いて測定可能である。
レーザー顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
・超深度形状測定顕微鏡VK−8550、超深度形状測定顕微鏡VK−9000及び超深度形状測定顕微鏡VK−9500(いずれも(株)キーエンス社製):
・表面形状測定システムSurface Explorer SX−520DR型機((株)菱化システム社製):
・走査型共焦点レーザー顕微鏡OLS3000(オリンパス(株)社製):
・リアルカラーコンフォーカル顕微鏡オプリテクスC130(レーザーテック(株)社製)。
光学顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
・デジタルマイクロスコープVHX−500及びデジタルマイクロスコープVHX−200(いずれも(株)キーエンス社製):
・3DデジタルマイクロスコープVC−7700(オムロン(株)社製)。
電子顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
・3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800及び3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800(いずれも(株)キーエンス社製):
・走査型電子顕微鏡コンベンショナル/Variable Pressure SEM(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製):
・走査型電子顕微鏡SUPERSCAN SS−550((株)島津製作所社製)。
原子力間顕微鏡としては、例えば、以下の機器が利用可能である。
・ナノスケールハイブリッド顕微鏡VN−8000((株)キーエンス社製):
・走査型プローブ顕微鏡NanoNaviステーション(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製):
・走査型プローブ顕微鏡SPM−9600((株)島津製作所社製)。
上記顕微鏡を用いて、所定の倍率により、測定視野内の凹凸形状の長軸径、深さ及び高さを計測することが出来る。
一例として、Surface Explorer SX−520DR型機による解析プログラムを利用した測定例について説明する。測定対象の電子写真感光体をワーク置き台に設置し、チルト調整して水平を合わせ、ウェーブモードで電子写真感光体の周面の3次元形状データを取り込む。その際、対物レンズの倍率を50倍とし、100μm×100μm(10000μm2)の視野観察としてもよい。この方法で、測定対象の感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定する。
次に、データ解析ソフト中の粒子解析プログラムを用いて電子写真感光体の表面の等高線データを表示する。
凹凸の形状、長軸径、深さ及び高さのような凹凸形状の解析パラメーターは、形成された凹凸形状によって各々最適化することが出来る。例えば、長軸径10μm程度の凹凸形状の観察及び測定を行なう場合、長軸径上限を15μm、長軸径下限を1μm、深さ下限を0.1μm及び体積下限を1μm3以上としてもよい。そして、解析画面上で凹凸形状と判別できる凹凸形状の個数をカウントし、これを凹凸形状の個数とする。
なお、凹凸形状の長軸径が1μm程度以下の凹凸形状については、レーザー顕微鏡及び光学顕微鏡による観察が可能であるが、より測定精度を高める場合には、電子顕微鏡による観察及び測定を併用することが望ましい。
次に、本発明による電子写真感光体の構成について説明する。
上記のとおり、本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に設けられた有機感光層(以下、単に「感光層」ともいう。)とを有する。本発明による電子写真感光体は、一般的には、円筒状支持体上に感光層を形成した円筒状有機電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状の形状も可能である。
支持体としては、前述の支持体が挙げられる。支持体の表面は、レーザー光等の散乱による干渉縞の防止等を目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理等を施してもよい。
支持体の体積抵抗率は、支持体の表面が導電性を付与するために設けられた層である場合、その層の体積抵抗率は、1×1010Ω・cm以下であることが好ましく、特には1×106Ω・cm以下であることがより好ましい。
支持体と、後述の中間層又は感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、レーザー光等の散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。これは、導電性粉体を適当な結着樹脂に分散させた塗布液を塗工することにより形成される層である。
このような導電性粉体としては、以下のようなものが挙げられる。
・カーボンブラック、アセチレンブラック;
・アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛又は銀のような金属粉;
・導電性酸化スズ又はITOのような金属酸化物粉体。
また、同時に用いられる結着樹脂としては、以下の熱可塑樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン;
ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール;
アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂又はアルキッド樹脂。
導電層は、上記導電性粉体と結着樹脂を、
・テトラヒドロフラン又はエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル系溶剤;
・メタノールのようなアルコール系溶剤;
・メチルエチルケトンのようなケトン系溶剤;
・トルエンのような芳香族炭化水素溶剤;
に分散し、又は溶解し、これを塗布することにより形成することができる。導電層の平均膜厚は0.2μm以上40μm以上であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、更には5μm以上30μm以下であることがより一層好ましい。
導電性顔料や抵抗調節顔料を分散させた導電層は、その表面が粗面化される傾向にある。
支持体又は導電層と、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、例えば、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護のために形成される。
中間層は、硬化性樹脂を塗布後硬化させて樹脂層を形成する、あるいは結着樹脂を含有する中間層用塗布液を導電層上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
中間層の結着樹脂としては、以下のものが挙げられる。
ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリグルタミン酸又はカゼインのような水溶性樹脂;
ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂又はポリグルタミン酸エステル樹脂。
電気的バリア性を効果的に発現させるためには、また、塗工性、密着性、耐溶剤性及び抵抗のような観点から、中間層の結着樹脂は熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、熱可塑性ポリアミド樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂としては、溶液状態で塗布できるような低結晶性又は非結晶性の共重合ナイロンが好ましい。中間層の平均膜厚は、0.05μm以上7μm以下であることが好ましく、更には0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、中間層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、中間層中に、半導電性粒子を分散させる、あるいは、電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
次に、本発明における感光層について説明する。
本発明における電荷発生層用塗布液及び電荷発生層に用いられる電荷発生物質としては、前述の電荷発生物質が挙げられる。また、電荷発生層に用いる結着樹脂としては、前述の結着樹脂が挙げられる。また、電荷発生層用塗布液に用いる溶剤としては、前述の溶剤が挙げられる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂及び溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、アトライター又はロールミルを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、質量比で10:1乃至1:10の範囲が好ましく、特には3:1乃至1:1の範囲がより好ましい。
電荷発生層の平均膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び/又は可塑剤を必要に応じて添加することもできる。また、電荷発生層において電荷(キャリア)の流れが滞らないようにするために、電荷発生層には、電子輸送物質(アクセプターのような電子受容性物質)を含有させてもよい。
本発明における電荷輸送層用塗布液及び電荷輸送層に用いられる電荷輸送物質としては、前述の電荷輸送物質が挙げられる。また、電荷輸送層に用いる結着樹脂としては、前述の結着樹脂が挙げられる。また、電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、前述の溶剤が挙げられる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質と結着樹脂を溶剤に溶解して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、乾燥することによって形成することができる。電荷輸送物質と結着樹脂との割合は、質量比で2:1乃至1:2の範囲が好ましい。
電荷輸送層の平均膜厚は5μm以上50μm以下であることが好ましく、特には10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
また、電荷輸送層には、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤及び/又は可塑剤を必要に応じて添加することもできる。
保護層としては、前述の重合性材料の重合により形成されることが挙げられる。また、下層に電荷輸送層を塗布し、凹凸形成した後、更に電荷輸送層を形成することが挙げられる。これらの保護層の平均膜厚は、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、更には1μm以上10μm以下であることが好ましい。
本発明の電子写真感光体の各層には各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤あるいは耐光安定剤のような劣化防止剤や、有機微粒子や無機微粒子が挙げられる。劣化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤、硫黄原子含有酸化防止剤、リン原子含有酸化防止剤が挙げられる。有機微粒子としては、フッ素原子含有樹脂粒子、ポリスチレン微粒子、ポリエチレン樹脂粒子のような高分子樹脂粒子が挙げられる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナのような金属酸化物が挙げられる。
次に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成について説明する。
図10に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図10において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される該電子写真感光体1の表面は、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラー等)3により、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラー等)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙等)Pに順次転写されていく。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレード等)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。更に前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図10に示すように、帯電手段3が帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。更に、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図10では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレール等の案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
図11に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えたフルカラー電子写真装置(インライン方式)の概略構成の一例を示す。
図11において、1Y(イエロー)、1M(マゼンタ)、1C(シアン)、1K(ブラック)は円筒状の電子写真感光体(第1色〜第4色用電子写真感光体)であり、それぞれ軸2Y、2M、2C、2Kを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される第1色用電子写真感光体1Yの表面は、第1色用帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラー等)3Yにより、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4Yを受ける。露光光4Yは、目的のカラー画像の第1色成分像(例えばイエロー成分像)に対応した露光光である。こうして第1色用電子写真感光体1Yの表面に、目的のカラー画像の第1色成分像に対応した第1色成分静電潜像(イエロー成分静電潜像)が順次形成されていく。
張架ローラー12によって張架された転写材搬送部材(転写材搬送ベルト)14は、矢印方向に第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kとほぼ同じ周速度で回転駆動される。転写材搬送部材の速度は、例えば第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの周速度に対して97〜103%である。また、転写材供給手段17から給送された転写材(紙等)Pは、転写材搬送部材14に静電的に担持(吸着)され、第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kと転写材搬送部材との間(当接部)に順次搬送される。
第1色用電子写真感光体1Yの表面に形成された第1色成分静電潜像は、第1色用現像手段5Yのトナーにより現像されて第1色トナー画像(イエロートナー画像)となる。次いで、第1色用電子写真感光体1Yの表面に形成担持されている第1色トナー画像が、第1色用転写手段(転写ローラー等)6Yからの転写バイアスによって、第1色用電子写真感光体1Yと第1色用転写手段6Yとの間を通過する転写材搬送部材14に担持された転写材Pに順次転写されていく。
第1色トナー画像転写後の第1色用電子写真感光体1Yの表面は、第1色用クリーニング手段(クリーニングブレード等)7Yによって転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、繰り返し第1色トナー画像形成に使用される。
第1色用電子写真感光体1Y、第1色用帯電手段3Y、第1色成分像に対応した露光光4Yを出力する第1色用露光手段、第1色用現像手段5Y及び第1色用転写手段6Yをまとめて第1色用画像形成部と称する。
第2色用電子写真感光体1M、第2色用帯電手段3M、第2色成分像に対応した露光光4Mを出力する第2色用露光手段、第2色用現像手段5M及び第2色用転写手段6Mを有する第2色用画像形成部の動作は、第1色用画像形成部の動作と同様である。また、第3色用電子写真感光体1C、第3色用帯電手段3C、第3色成分像に対応した露光光4Cを出力する第3色用露光手段、第3色用現像手段5C及び第3色用転写手段6Cを有する第3色用画像形成部の動作は、第1色用画像形成部の動作と同様である。また、第4色用電子写真感光体1K、第4色用帯電手段3K、第4色成分像に対応した露光光4Kを出力する第4色用露光手段、第4色用現像手段5K及び第4色用転写手段6Kを有する第4色用画像形成部の動作は、第1色用画像形成部の動作と同様である。すなわち、転写材搬送部材14に担持され、第1色トナー画像が転写された転写材Pに、第2色トナー画像(マゼンタトナー画像)、第3色トナー画像(シアントナー画像)、第4色トナー画像(ブラックトナー画像)が順次転写されていく。こうして転写材搬送部材14に担持された転写材Pに目的のカラー画像に対応した合成トナー画像が形成される。
合成トナー画像が形成された転写材Pは、転写材搬送部材14の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることによりフルカラー画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
また、第1色〜第4色用クリーニング手段7Y、7M、7C、7Kによる転写残トナー除去後の第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの表面を、前露光手段からの前露光光により除電処理してもよい。また、図11に示すように、第1色〜第4色用帯電手段3Y、3M、3C、3Kが帯電ローラー等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段等の構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。更に、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図11では、画像形成部ごとに、電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレール等の案内手段(不図示)を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9Y、9M、9C、9Kとしている。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
(実施例1)
23℃/60%RHの環境下で押し出し工程により得られた、直径30mm、長さ357.5mmの表面が切削加工されたアルミニウムシリンダーを支持体(円筒状支持体)とした。
次に、
導電性粒子としての酸素欠損型SnO2を被覆したTiO2粒子 6.6部
(粉体抵抗率80Ω・cm、SnO2の被覆率(質量比率)は50%)
結着樹脂としてのフェノール樹脂 5.5部
(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分60%)
及び溶剤としてのメトキシプロパノール5.9部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで3時間分散して、分散液を調製した。
この分散液に、
表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子 0.5部
(商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2μm)
レベリング剤としてのシリコーンオイル 0.001部
(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)
を添加して攪拌し、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を、導電性円筒状支持体上に浸漬コーティングし、温度140℃で30分間乾燥、熱硬化して、導電性円筒状支持体上端から130mmの位置の平均膜厚が15μmの導電層を形成した。
更に、導電層上に、
N−メトキシメチル化ナイロン 4部
(商品名:トレジンEF−30T、帝国化学産業(株)製)
共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製) 2部
を、メタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶媒に溶解して得られた中間層用塗布液を浸漬コーティングし、温度100℃で10分間乾燥して、円筒状支持体上端から130mm位置の平均膜厚が0.5μmの中間層を形成した。
次に、
下記構造式(CGM−1)で示されるアゾ顔料 2部
ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBLS、積水化学製) 1部
シクロヘキサノン 50部
を、1mmφガラスビーズを用いたサンドミル装置で10時間分散し、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、中間層上に浸漬コーティングし、温度100℃で10分間乾燥して、円筒状支持体上端から130mm位置の平均膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。
次に、
下記構造式(CTM−1)で示される電荷輸送物質10部
結着樹脂として上記式(3−2)で示される構造単位からなるポリカーボネート樹脂 10部
(ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)[粘度平均分子量(Mv)40,000]
をクロロベンゼン65部及びジメトキシメタン35部の混合溶媒に溶解し、電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を調合した。
なお、粘度平均分子量(Mv)の測定方法は以下のとおりである。まず、試料0.5gをメチレンクロライド100mlに溶解し、改良Ubbelohde型粘度計を用いて、25℃における比粘度を測定した。次に、この比粘度から極限粘度を求め、Mark−Houwinkの粘度式により、粘度平均分子量(Mv)を算出した。
以上のように調製した電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を、電荷発生層上に浸漬コーティングし、円筒状支持体上に電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を塗布する工程を行った。その後、装置内が120℃に加熱されていた送風乾燥機内に、下層用塗布液が塗布された円筒状支持体を入れ、乾燥工程を60分間行った。このようにして、円筒状支持体上端から130mm位置の平均膜厚が20μmの電荷輸送層(下層)を形成した。
次いで、前記下層用塗布液の塗膜表面に対し、図2に示されたモールドによる圧接形状転写加工装置において、図12に示された形状転写用のモールドを設置し表面加工を行った。加工時の電子写真感光体及びモールドの温度は110℃に制御し、5MPaの圧力で加圧しながら、感光体を周方向に回転させ形状転写を行った。図12において、(1)は上から見たモールド形状を示し、(2)は横から見たモールド形状を示す図である。図12に示すモールドは円柱形状を有しており、その長軸径Aは10.0μm、高さCは10.0μmであり、モールドとモールドとの形状間隔Bは1.0μmである。
次に、
上記式(CTM−1)で示される構造を有する電荷輸送物質2部、
結着樹脂として上記式(2−2)及び(2−7)の構造単位を1:1の比で共重合されたポリアリレート樹脂[重量平均分子量(Mw):120,000]5部、
クロロベンゼン70部及びジメトキシメタン23部の混合溶媒に溶解し、表面層用塗布液を調合した。以上のように調製した表面層用塗布液を、形状形成された塗膜表面上に浸漬コーティングし、円筒状支持体上に表面層用塗布液を塗布する工程を行った。上記方法により、形状形成を行った後、前記支持体を、予め140℃に加熱された乾燥機内に入れ、60分間の乾燥を行った。このようにして、円筒状支持体上端から130mm位置の平均膜厚が5μmの表面層を形成し、電子写真感光体を作製した。
作製した電子写真感光体について、感光体表面の外観評価、形状測定及び形状の均一性評価を行った。
<感光体表面の外観評価>
作製された電子写真感光体の表面を超深度形状測定顕微鏡VK−9500((株)キーエンス社製)を用いて観察した。測定対象の電子写真感光体を円筒状支持体を固定できるよう加工された置き台に設置、対物レンズ倍率50倍とし、感光体表面の100μm四方を視野観察とし、凹形状部の測定を行った。上記の100μm四方の領域は、電子写真感光体の表面を感光体回転方向に4等分し、該感光体回転方向と直交する方向に25等分して得られる計100箇所の領域のそれぞれの中に、一辺100μmの正方形の領域を設けて測定した。このようにして評価した範囲内で、外観評価を行った。結果を表1に示す。
<電子写真感光体の表面形状測定>
前記外観評価で測定している範囲の測定視野内に観察された凹形状あるいは凸形状を解析プログラムを用いて解析を行った。測定視野内にある凹形状あるいは凸形状の表面部分の長軸径を測定し、その平均値を算出した。また、測定視野内にある凹形状あるいは凸形状の深さあるいは高さを測定し、その平均値を算出した。
<凹凸形状の均一性の評価方法>
前記外観評価で測定している範囲の測定視野内に観察された凹形状あるいは凸形状を解析プログラムを用いて解析を行った。測定視野内にある凹形状あるいは凸形状の表面部分の長軸径を測定し、その平均値を算出した。測定視野内にある凹形状あるいは凸形状のうち、前述の長軸径の平均値に対し、0.8倍以上の長軸径あるいは1.2倍以下の長軸径を有する凹形状あるいは凸形状の個数を計測した。凹形状あるいは凸形状の均一性は、100μm四方あたりの全凹形状あるいは凸形状の個数に対し、100μm四方あたりの長軸径の平均値に対し、0.8倍以上の長軸径あるいは1.2倍以下の長軸径を有する凹形状あるいは凸形状の個数の割合より求めた。表1中の均一性は、(100μm四方あたりの長軸径の平均値に対し0.8倍以上の長軸径あるいは1.2倍以下の長軸径を有する凹形状あるいは凸形状の個数)/(100μm四方あたりの全凹形状あるいは凸形状の個数)を示す。
実施例1で作製された感光体の表面の表面形状測定により、電子写真感光体の表面には、図13に示される円柱状の凹形状が形成されていることが確認された。上記100μm四方中の凹形状の長軸径(L1)の平均値は、3.0μmであった。また、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、8.0μmの間隔で形成されていた。また、上記100μm四方中の凹形状の深さ(D)の平均値は、1.5μmであった。結果を表1に示す。
更に、作製した電子写真感光体について、電子写真感光体の特性評価を行った。
<電子写真感光体の特性評価>
上記製造方法により製造した電子写真感光体を、キヤノン(株)製レーザービームプリンターLBP−2510(帯電(一次帯電):接触帯電方式、プロセススピード:94.2mm/s)のプロセスカートリッジに装着した。このプロセスカートリッジを用いて、電子写真感光体の回転モータの駆動電流値(電流値A)を測定した。この評価は、電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量を評価したものである。得られた電流値の大きさは、電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量の大きさを示す。更に、前述の下層に対する形状形成を行わない下層を作製した後、同様の表面層を作製した電子写真感光体を用いて、回転モータの駆動電流値(電流値B)を測定した。このようにして得られた下層に形状形成を行った電子写真感光体の回転モータの駆動電流値(電流値A)と、下層に形状形成を行っていない電子写真感光体の回転モータの駆動電流値(電流値B)との比を算出した。評価は、雰囲気温度23℃及び相対湿度50%の環境下で行った。得られた(電流値A)/(電流値B)の数値を、相対的なトルク比率として比較した。この相対的なトルク比率の数値は、電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量の増減を示し、トルク比率の数値が小さいほうが電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量が小さいことを示す。結果を表1に示す。
(実施例2)
表面層用塗布液中の上記式(2−2)及び(2−7)の構造単位を1:1の比で共重合されたポリアリレート樹脂を(1−4)の構造単位を有するポリカーボネート樹脂[粘度平均分子量(Mv)40,000]に代えた。これ以外は、実施例1と同様の方法で感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、7.8μmの間隔で形成されていた。
(実施例3)
下層用塗布液を塗布し、その塗膜表面に形状形成を行う工程までは、実施例1と同様に行った。
次いで、
上記式(5−5)で示される化合物 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート 10部
(商品名:KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 1部
(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
及びトルエン79部により表面層用塗布液を調合した。上記表面層用塗布液を、下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に浸漬塗布した。その後、50℃に加熱された乾燥機中で10分間乾燥した後、支持体に対し、メタルハライドランプ、照射強度650mW/cm2、照射時間90秒の条件で光照射を行った。その後、140℃で60分乾燥を加えた。支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、5.8μmの間隔で形成されていた。
(実施例4)
下層用塗布液を塗布し、その塗膜表面に形状形成を行う工程までは、実施例1と同様に行った。
次いで、
上記式(5−9)で示される化合物 10部
1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン 15部
(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)社製)
及び1−プロパノール15部を混合し、溶解させた表面層用塗布液を調合した。
上記表面層用塗布液を、下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に浸漬塗布した。その後、50℃に加熱された乾燥機中で10分間乾燥し、その後、窒素雰囲気下において加速電圧150kV及びビーム電流3.0mAの条件で支持体を200rpmで回転させながら1.6秒間電子線照射を行った。引き続いて、窒素雰囲気下において、支持体周囲の温度を25℃から125℃まで30秒かけて昇温させた。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。また、電子線照射及び加熱重合反応雰囲気の酸素濃度は15ppm以下であった。上記処理を行った支持体を、大気中において25℃まで自然冷却し、その後、100℃に加熱された乾燥機内で30分間、大気中で加熱処理を行った。支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、6.4μmの間隔で形成されていた。
(実施例5)
下層用塗布液を塗布し、その塗膜表面に形状形成を行う工程までは、実施例1と同様に行った。
次いで、上記式(6−6)で示されるフェノール誘導体10部、フェノール樹脂(商品名:PL−4804、群栄化学(株)社製)10部及びエタノール80部により表面層用塗布液を調合した。
上記表面層用塗布液を、下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に浸漬塗布した。その後、予め140℃に加熱された乾燥機内に入れ、60分間の乾燥を行い、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、3.6μmの間隔で形成されていた。
(実施例6)
下層用塗布液を塗布し、その塗膜表面に形状形成を行う工程までは、実施例1と同様に行った。
次いで、上記式(7−2)で示されるアルコキシシラン誘導体10部、上記式(7−8)で示されるアルコキシシラン誘導体6部、エタノール40部及びイソプロパノール44部により表面層用塗布液を調合した。
上記表面層用塗布液を、下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に浸漬塗布した。塗布工程終了から60秒後、予め装置内を相対湿度70%及び雰囲気温度30℃の状態にされていた装置内に、表面層用塗布液が塗布された塗膜表面を有する円筒状支持体を10分間保持した。その後、予め装置内が80℃に加熱されていた送風乾燥機内に、円筒状支持体を入れ、60分間の乾燥を行い、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2.5μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、4.6μmの間隔で形成されていた。
(実施例7)
実施例1で使用したモールドを、図14で示したモールド(長軸径A:7.0μm、高さC:7.0μm、モールドとモールドとの形状間隔B:0.5μm)に変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、表面には図15で示された形状が形成され、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、6.0μmの間隔で形成されていた。
(実施例8)
実施例2で使用したモールドを、実施例7で使用したモールドに変更した以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、6.0μmの間隔で形成されていた。
(実施例9)
実施例3で使用したモールドを、実施例7で使用したモールドに変更した以外は、実施例3と同様に電子写真感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、4.9μmの間隔で形成されていた。
(実施例10)
実施例4で使用したモールドを、実施例7で使用したモールドに変更した以外は、実施例4と同様に電子写真感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、5.2μmの間隔で形成されていた。
(実施例11)
実施例5で使用したモールドを、実施例7で使用したモールドに変更した以外は、実施例5と同様に電子写真感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、3.9μmの間隔で形成されていた。
(実施例12)
実施例6で使用したモールドを、実施例7で使用したモールドに変更した以外は、実施例6と同様に電子写真感光体を作製した。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。なお、凹形状と、その凹形状と最も近い距離にある凹形状との形状間隔Eは、4.5μmの間隔で形成されていた。
(実施例13)
実施例1と同様の方法で、下層用塗布液を調合、塗布した。その後、塗布された下層用塗布液の塗膜表面を乾燥させる目的で、50℃に加熱され保持されている乾燥機内で、15分間の乾燥を行い、塗膜表面を形成した。この塗膜表面に対し、図5に示すブラスト装置を用いて研磨粒子を吹き付ける処理を行った。研磨粒子として、球状ガラスビーズ(商品名:UB−01L、(株)ユニオン社製、体積平均粒径28.5μm)を用いた。研磨粒子を吹き付け処理における圧縮空気の圧力は78kPa、噴射ノズルの回転軸方向への移動速度は430mm/分、ワーク(円筒状支持体)の回転速度は60rpm、噴射ノズルとワークとの距離は100mmで行った。上記条件による吹き付け処理を塗膜表面に対し1回行った。上記方法により、形状形成を行った後、前記支持体を、予め140℃に加熱された乾燥機内に入れ、60分間の乾燥を行った。このようにして、円筒状支持体上端から130mm位置の平均膜厚が15μmの電荷輸送層(下層)を形成した。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例3で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例3と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例14)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例13と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例5で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例5と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例15)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例13と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例6で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例6と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2.5μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例16)
電荷発生層を円筒状支持体上に作製するまでは、実施例1と同様に作製した。
次いで、下記構造式(CTM−2)で示される電荷輸送物質5部、
下記構造式(CTM−3)で示される電荷輸送物質5部、
結着樹脂として前記ポリカーボネート樹脂10部、
(ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)[粘度平均分子量(Mv)40,000]
クロロベンゼン65部及びジメトキシメタン35部の混合溶媒に溶解し、電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を調合した。
作製された電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を電荷発生層上に浸漬コーティングし、円筒状支持体上に下層用塗布液を塗布する工程を行った。下層用塗布液を塗布する工程は、相対湿度45%及び雰囲気温度25℃の状態で行った。塗布工程終了から60秒後、予め装置内を相対湿度70%及び雰囲気温度40℃の状態にされていた装置内に、表面層用塗布液が塗布された塗膜表面を有する円筒状支持体を120秒間保持した。この処理により塗膜表面に凹形状を形成した。上記方法により、形状形成を行った後、前記支持体を、予め120℃に加熱された乾燥機内に入れ、60分間の乾燥を行った。このようにして、支持体上端から170mm位置の平均膜厚15μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例1で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例1と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が5.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例17)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例16と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例2で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例2と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が5.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例18)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例16と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例3で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例3と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例19)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例16と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例4で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例4と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例20)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例16と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例5で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例5と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例21)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例16と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例6で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例6と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2.5μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例22)
電荷発生層を円筒状支持体上に作製するまでは、実施例1と同様に作製した。
次いで、
上記構造式(CTM−2)で示される電荷輸送物質 5部
上記構造式(CTM−3)で示される電荷輸送物質 5部
結着樹脂として前記ポリカーボネート樹脂 10部
(ユーピロンZ−400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)[粘度平均分子量(Mv)40,000]
をクロロベンゼン65部、ジメトキシメタン32部及び(メチルスルフィニル)メタン3部の混合溶媒に溶解し、電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を調合した。
作製された電荷輸送層用塗布液(下層用塗布液)を電荷発生層上に浸漬コーティングし、円筒状支持体上に下層用塗布液を塗布する工程を行った。下層用塗布液を塗布する工程は、相対湿度70%及び雰囲気温度25℃の状態で行った。塗工直後より結露が進行し、塗膜表面に凹形状が形成された。上記方法により、形状形成を行った後、前記支持体を、予め120℃に加熱された乾燥機内に入れ、60分間の乾燥を行った。このようにして、支持体上端から170mm位置の平均膜厚15μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例1で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例1と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が5.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例23)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例22と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例2で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例2と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が5.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例24)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例22と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例3で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例3と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例25)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例22と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例4で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例4と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例26)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例22と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例5で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例5と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2.0μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例27)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例22と同じ方法で行った。
得られた下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に、実施例6で用いた表面層用塗布液を塗布し、実施例6と同様の方法により表面層を作製し、支持体上端から170mm位置の平均膜厚が2.5μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
得られた感光体に対し、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例2において、下層塗布液塗布後、形状形成工程を行わず、乾燥し、下層を作製した以外は、実施例2と同様に表面層形成工程を行った。
その後、プラスチック製のラッピングフィルムシート(粒度15μm、3M社製)を用いて、上記感光体表面に押し付け、研磨を行った。実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。外観評価では、測定視野内に研磨フィルムから剥がれた研磨粒子によると思われるささくれ状の傷が入っている部分が確認された。線状傷がランダムに形成されるため形状均一性の判断はできなかった。
(比較例2)
実施例2において、下層塗布液塗布後、形状形成工程を行わず、乾燥し、下層を作製した以外は、実施例2と同様に表面層形成工程を行った。上記感光体の表面層の表面に対し、図5に示すブラスト装置を用いて研磨粒子を吹き付ける処理を行った。研磨粒子として、球状ガラスビーズ(商品名:UB−01L、(株)ユニオン社製、体積平均粒径28.5μm)を用いた。研磨粒子を吹き付け処理における圧縮空気の圧力は78kPa、噴射ノズルの回転軸方向への移動速度は430mm/分、ワーク(円筒状支持体)の回転速度は60rpm、噴射ノズルとワークとの距離は100mmで行った。上記条件による吹き付け処理を塗膜表面に対し1回行った。上記方法により、形状形成を行った後、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。外観評価及び形状測定を行うと、感光体表面には形状がほとんど形成されず、形状の均一性はできなかった。
(比較例3)
実施例2において、下層塗布液塗布後、形状形成工程を行わず、乾燥し、下層を作製した以外は、実施例2と同様に表面層形成工程を行った。上記感光体の表面層の表面に対し、図5に示すブラスト装置を用いて研磨粒子を吹き付ける処理を行った。研磨粒子として、球状ガラスビーズ(商品名:UB−01L、(株)ユニオン社製、体積平均粒径28.5μm)を用いた。研磨粒子を吹き付け処理における圧縮空気の圧力は950kPa、噴射ノズルの回転軸方向への移動速度は430mm/分、ワーク(円筒状支持体)の回転速度は60rpm、噴射ノズルとワークとの距離は100mmで行った。上記条件による吹き付け処理を塗膜表面に対し1回行った。上記方法により、形状形成を行った後、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。測定視野内に破砕された研磨粒子によると思われる微小な傷が入っている部分が確認された部分があった。
(比較例4)
実施例5において、下層塗布液塗布後、形状形成工程を行わず、乾燥し、下層を作製した以外は、実施例5と同様に表面層形成工程を行った。
その後、プラスチック製のラッピングフィルムシート(粒度15μm、3M社製)を用いて、上記感光体表面に押し付け、研磨を行った。実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。外観評価では、測定視野内に研磨フィルムから剥がれた研磨粒子によると思われるささくれ状の傷が入っている部分が確認された。線状傷がランダムに形成されるため形状均一性の判断はできなかった。
(比較例5)
実施例5において、下層塗布液塗布後、形状形成工程を行わず、乾燥し、下層を作製した以外は、実施例5と同様に表面層形成工程を行った。上記感光体の表面層の表面に対し、比較例2と同様の条件による吹き付け処理を塗膜表面に行った。上記方法により、形状形成を行った後、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。外観評価及び形状測定を行うと、感光体表面には形状がほとんど形成されず、形状の均一性はできなかった。
(比較例6)
実施例5において、下層塗布液塗布後、形状形成工程を行わず、乾燥し、下層を作製した以外は、実施例5と同様に表面層形成工程を行った。上記感光体の表面層の表面に対し、比較例3と同様の条件による吹き付け処理を塗膜表面に行った。上記方法により、形状形成を行った後、実施例1と同様に外観評価、形状測定、形状の均一性評価及び電子写真感光体の特性評価を行った。測定視野内に破砕された研磨粒子によると思われる微小な傷が入っている部分が確認された部分があった。
(実施例28)
電荷発生層を円筒状支持体上に作製するまでは、実施例1と同様に作製した。
次いで、実施例1と同様の方法で、下層用塗布液を調合、塗布した。その後、塗布された表面層用塗布液の塗膜表面を乾燥させる目的で、50℃に加熱され保持されている乾燥機内で、15分間の乾燥を行い、塗膜表面を形成した。実施例1の表面層用塗布液をクロロベンゼンを塗工液1質量部に対し19質量部添加することで希釈を行った。その後、塗布された表面層用塗布液の塗膜表面を有する支持体を120rpmで回転させ、塗膜表面に対し希釈した表面層用塗布液を5秒間吹き付ける工程を行った。
表面層用塗布液の吹き付けによる形状形成工程終了後、予め装置内が120℃に加熱されていた送風乾燥機内に、円筒状支持体を入れ、60分間の乾燥を行った。このようにして、円筒状支持体上端から130mm位置の平均膜厚が21μmの電荷輸送層(下層)を形成した。
次いで、
上記式(5−5)で示される化合物 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート 10部
(商品名:KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン 1部
(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
及びトルエン79部により表面層用塗布液を調合した。上記表面層用塗布液を、下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に浸漬塗布した。その後、50℃に加熱された乾燥機中で10分間乾燥した後、支持体に対し、メタルハライドランプ、照射強度650mW/cm2、照射時間90秒の条件で光照射を行った。その後、140℃で60分乾燥を加えた。支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
このようにして得られた電子写真感光体に対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例29)
下層用塗布液の塗膜表面に形状を形成する工程まで、実施例22と同じ方法で行った。
次いで、
上記式(5−9)で示される化合物 10部
1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン 15部
(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)社製)
及び1−プロパノール15部を混合し、溶解させた表面層用塗布液を調合した。
上記表面層用塗布液を、下層用塗布液の塗膜表面に形状形成された円筒状支持体上に浸漬塗布した。その後、50℃に加熱された乾燥機中で10分間乾燥し、その後、窒素雰囲気下において加速電圧150kV及びビーム電流3.0mAの条件で支持体を200rpmで回転させながら1.6秒間電子線照射を行った。引き続いて、窒素雰囲気下において、支持体周囲の温度を25℃から125℃まで30秒かけて昇温させた。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。また、電子線照射及び加熱重合反応雰囲気の酸素濃度は15ppm以下であった。上記処理を行った支持体を、大気中において25℃まで自然冷却し、その後、100℃に加熱された乾燥機内で30分間、大気中で加熱処理を行った。支持体上端から170mm位置の平均膜厚が4μmの表面層を形成し、電子写真感光体を得た。
このようにして得られた電子写真感光体に対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例と比較例を比較すると、表面層の下層に対し形状形成を行う製造方法では、感光体表面に対し凹形状、凸形状の少なくとも一方の形状を形成する製造方法よりも、形状形成の安定性や形状均一性において、優位性が高いことを示している。特に重合性材料の重合により表面層を形成する製造方法を工程上含む場合には、加工圧力を低くすると形状形成できない場合が有ることが示されている。また加工圧力を高くすると研磨粒子の破砕によると思われる微小な傷が発生する場合があることが示されている。以上より、本発明の製造方法を行うことにより、形状均一性と生産安定性の両立が可能であることが示唆されていると考えられる。
また、本発明の製造方法により製造された電子写真感光体は、上記トルク評価においてトルク比率の数値が小さいことが示されている。この相対的なトルク比率の数値は、電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量の増減を示し、トルク比率の数値が小さいほうが電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量が小さいことを示している。従って、本発明の電子写真感光体とクリーニングブレードとの負荷量は小さく、プロセスカートリッジや電子写真装置に用いた場合に、優れたクリーニング特性を有することが示されている。