JP2009063745A - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 粗面化した電子写真感光体の表面形状のばらつきを低減し、電子写真プロセスに最適な表面形状を安定して得ることができる電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】 支持体及び該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、該支持体と該支持体上に設けられた感光層を含むすべての層とを有する被処理体の表面に、表面吸着水分量が10ppm以上かつ400ppm以下である粉体を衝突させることによって、該被処理体の表面の粗面化処理を行う表面処理工程を含むようにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は電子写真感光体の表面層の表面が粗面化処理された電子写真感光体を製造する製造方法に関するものである。
近年、電子写真感光体は、生産性が高く、感光波長域を自在にコントロールすることができる等の利点から、有機光導電性材料を用いた有機電子写真感光体が広く用いられている。特に最近では、有機光導電性染料や顔料を含有した電荷発生層と、光導電性ポリマーや低分子の電荷輸送材料を含有した電荷輸送層を積層した機能分離型感光体の開発により、従来の有機電子写真感光体の短所とされていた感度や、耐久性に著しい改善がなされてきており、これが電子写真感光体の主流となってきている。
電子写真プロセスに使用される電子写真感光体にあっては、帯電、画像露光、トナー現像、被転写体への転写、残トナーのクリーニング等の電気的、機械的外力が繰り返して直接加えられるが、無機電子写真感光体と異なり物質的に柔らかい有機電子写真感光体においては、それらに対する耐久性を向上させるため、表面層の開発が盛んに行われている。
一方、転写工程後の電子写真感光体上の残存トナーを除去するクリーニング工程は、クリーニングブレードと称するゴム性の板形状部材を電子写真感光体に圧接して電子写真感光体とクリーニングブレードとの間の隙間をなくし、トナーのスリ抜けを防止して残存トナーをかきとる方法が一般的である。しかしながら、優れたクリーニング性を示すクリーニングブレードには、電子写真感光体との摩擦力が大きいため、所謂クリーニングブレードのびびりやメクレが起こりやすいという短所があった。ここで、クリーニングブレードのびびりは電子写真感光体との摩擦抵抗が大きくなることによるブレードの振動のことであり、メクレは、電子写真感光体の移動方向にブレードが反転して反ってしまう現象である。
このような電子写真感光体の表面性に関わる問題点を克服する方法として、電子写真感光体表面を適度に粗面化することにより電子写真感光体表面とクリーニングブレード等との接触面積を減少させ、各種問題点を改善する方法が提案されている。例えば、特許文献1にはサンドブラスト法により、被処理体(電子写真感光体)表面を研磨粒子で機械研磨する電子写真感光体の粗面化の方法が開示されている。
特開平2−150850号公報
クリーニングに関する問題は、電子写真感光体の高耐久化のために電子写真感光体表面の強度を強く、即ち削れ難くした場合にさらに生じやすくなる。また、画質向上のためにトナーの粒径が均一化されて微小なトナーが除去されている場合には、トナーがクリーニングブレードと電子写真感光体表面の隙間に入ることによって引き起こされる潤滑性が薄れるので、クリーニングに関する問題が一層発生しやすくなる。
近年の高画質化や電子写真感光体の高耐久化に対応するためには、電子写真感光体表面に最適な形状を安定して形成する必要があり、被処理体(電子写真感光体)の表面に粉体を衝突させて電子写真感光体表面を粗面化する場合においても、電子写真感光体表面形状の均一性や生産安定性をより一層向上させることが必要となってきている。本発明の目的は、粗面化した電子写真感光体の表面形状のばらつきを低減し、電子写真プロセスに最適な表面形状を安定して得ることができる電子写真感光体の製造方法を提供することである。
本発明者らが検討の結果、被処理体(電子写真感光体)表面に粉体を衝突させることによって該被処理体の表面の粗面化処理を行う場合、凝集した粉体が被処理体に衝突することにより、電子写真感光体に局部的に表面粗さが粗い部分を形成したり、粗面化によって形成された電子写真感光体の表面の表面粗さに生産によるばらつきが発生したりする場合があることが分かった。粉体の凝集は該粉体の表面吸着水分量が関与していることが分かり、該粉体の表面吸着水分量を特定の範囲内にすることにより、粗面化した電子写真感光体の表面形状のばらつきを低減し、電子写真プロセスに最適な表面形状を安定して得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は、支持体及び該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、
該支持体と該支持体上に設けられた感光層を含むすべての層とを有する被処理体の表面に、表面吸着水分量が10ppm以上かつ400ppm以下である粉体を衝突させることによって、該被処理体の表面の粗面化処理を行う表面処理工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法である。
以上説明したように、本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、粗面化した電子写真感光体の表面形状のばらつきを低減し、電子写真プロセスに最適な表面形状を安定して得ることができる電子写真感光体の製造方法を提供することができる。
次に、本発明の詳細を実施の形態の記述に従って説明する。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、支持体及び該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体の表面層の表面が粗面化処理された電子写真感光体を製造する製造方法である。本発明の方法は、前記支持体と支持体上に設けられた前記感光層を含む全ての層とを有する被処理体の表面に、表面吸着水分量が10ppm以上かつ400ppm以下である粉体を衝突させることによって、前記被処理体の表面の粗面化処理を行う粗面化工程を含む。
前記被処理体は、前記支持体と支持体上に設けられた前記感光層を含む全ての層とを有する。「感光層を含む全ての層」とは、支持体上に形成されている層の構造であって、本発明における粗面化処理によって電子写真感光体の表面層となる層、すなわち粗面化工程において粗面化処理される層が含まれている層の構造を意味する。「感光層を含む全ての層」は、電子写真感光体に形成される層の構造に応じて決定され、例えば感光層のみであっても良いし、感光層と他の層とを含む層の構造であっても良い。前記被処理体には、後述する表面の物性を有する既存の感光体や、後述する層形成工程で作製された被処理体を用いることができる。
前記支持体には、導電性を有する表面上に前記感光層を支持する公知の支持体を用いることができる。例えば前記支持体には、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム等の金属や合金、あるいは前記金属の酸化物、カーボン、導電性高分子等の導電性材料が使用可能である。支持体の形状は円筒状、円柱状等のドラム形状と、ベルト状、シート状のものとがある。前記導電性材料は、そのまま成形加工される場合、導電性の表面を形成するために、支持体となる部材の表面に塗布される塗料として用いられる場合、支持体となる部材の表面に蒸着される場合や、エッチング、プラズマ処理により加工される場合もある。塗料の場合、支持体は前記金属、合金はもちろん、紙、プラスチック等の非導電性材料も用いることが可能である。
前記感光層は、光の照射によって電荷を発生し輸送する層であれば特に限定されない。感光層は、光の照射による電荷の発生と発生した電荷の輸送との両方の機能を有する単層の感光層や、光の照射によって電荷を発生させる電荷発生層と、電荷発生層で発生した電荷を輸送する電荷輸送層とからなる積層型の感光層であっても良い。
前記被処理体は、感光層を含む全ての層として、感光層以外の他の層を有していても良い。他の層としては、例えば導電層、下引き層、保護層等が挙げられる。
前記粗面化工程は、前記被処理体の表面に粉体を衝突させることによって、前記被処理体の表面の粗面化処理を行う工程である。この工程によって、表面層が粗面化処理されてなる電子写真感光体が製造される。
前記被処理体の表面へ前記粉体を衝突させ前記被処理体の表面に凹凸を形成する粗面化処理には、粗面化処理によって電子写真感光体となる被処理体の表面に粉体を衝突させて粗面化できる方法であればいかなる手段を用いてもよい。前記粗面化処理は、コストの面で、既存の装置技術の流用が好ましく、粉体を高速度で被処理体の表面に吹き付ける乾式のブラスト法が本発明の効果が得られやすく好ましい。更に、乾式のブラスト法を用いることは、電子写真感光体が湿度条件に敏感なことから、水等の溶媒に接触させることなく被処理体を粗面化できるためより好ましい。
前記乾式のブラスト法には、圧縮空気を用いて粉体を噴射する方法、モータを動力として粉体噴射する方法等がある。前記被処理体の表面の粗面化を精密に制御することが可能で、かつ設備の簡易性という点において、圧縮空気を用いて粉体を噴射する方法が好ましい。
本発明において用いられるブラスト加工装置の例を図1に示す。このブラスト加工装置は、被処理体1−7を支持するためのワーク支持体1−6と、ワーク支持体1−6に支持された被処理体1−7に向けて粉体を高速度で吹き付けるノズル部とからなる。ワーク支持体1−6は、円筒状の被処理体1−7を、被処理体1−7の軸を回転中心として回転自在に被処理体1−7の端部を支持する部材である。また被処理体1−7は、例えば円筒状の支持体と、その外周面上に形成された感光層とを有する部材である。
前記ノズル部は、被処理体1−7に向けて粉体1−5を高速度で吹き付けるための噴射ノズル1−1と、噴射ノズル1−1を被処理体1−7に向けて固定するためのノズル固定冶具1−2と、噴射ノズル1−1に向けて圧縮エアを供給する圧縮エア供給管1−3と、噴射ノズル1−1に向けて粉体1−5を供給する粉体供給管1−4と、噴射ノズル1−1を被処理体1−7に向けて支持するアーム1−9と、アーム1−9を鉛直方向(被処理体1−7の軸方向)における任意の位置に支持するノズル支持体1−8とからなる。
容器(不図示)に貯留されている粉体は、粉体供給管1−4より噴射ノズル1−1に導かれる。噴射ノズル1−1に導かれた粉体は、圧縮エア供給管1−3より導入された圧縮エアによって噴射ノズル1−1より噴射され、ワーク支持体1−6により支持され自転している被処理体1−7に衝突する。
このとき、噴射ノズル1−1の先端と被処理体1−7との距離、噴射ノズル1−1の噴射口の軸線の延長線と被処理体1−7の接線あるいは回転軸とのなす角度は、ノズル固定冶具1−2やアーム1−9により調整されて決められる。噴射ノズル1−1は、通常被処理体1−7の回転軸方向に対して移動しながら粗面化処理を行う。噴射ノズル1−1を被処理体1−7に向けて支持するアーム1−9が被処理体1−7の回転軸方向に移動することにより、被処理体1−7に対してムラ無く粗面化処理を施すことができる。
この時、噴射ノズル1−1と被処理体1−7の表面との最短距離は、適当な間隔に調整する必要がある。距離が過剰に近い、若しくは遠いと、加工効率が落ちる、若しくは所望の粗面化が行えない場合がある。噴射ノズル1−1の噴射口の軸線の延長線と被処理体1−7の接線あるいは回転軸とのなす角度は、ある程度の自由度を持つが、角度が鋭角過ぎる場合には加工効率が低下する。噴射の動力に用いる圧縮空気の圧力も、所望の粗面化を行う観点から、適度な圧力に調整する必要がある。また、被処理体1−7の表面の周方向における均一な粗面化処理を行う観点から、被処理体1−7の回転速度も適度な速度に調整する必要がある。
前記ブラスト加工装置を用いる場合では、粗面化処理は、粉体1−5を噴射する噴射ノズル1−1が被処理体1−7の一端から他端まで走査することを一回と数える。粗面化処理の回数は、所望の粗面化を行う観点から、圧縮空気の圧力や、被処理体1−7の回転速度、噴射ノズル1−1と被処理体1−7の表面との最短距離等の諸条件に応じて適度に調整する必要がある。
前記粉体には、樹脂層の表面を粗面化できる粉体であり、表面吸着水分量が10ppm以上かつ400ppm以下である粉体が用いられる。表面吸着水分量コントロールすることで、粗面化した電子写真感光体の表面形状のばらつきを低減し、電子写真プロセスに最適な表面形状を安定して得ることができる。
粉体の表面吸着水分量が10ppm未満の場合には、被処理体の表面に粉体が静電付着して被処理体表面の傷を発生しやすく、画像上のムラとなる。また、粉体の表面吸着水分量が400ppm超過の場合には、粉体の凝集が発生し、被処理体の表面に形成される凹凸の周期が凝集度に依存して大きくなったり、凝集した粒子の衝突により、小さな粒子が被処理体の表面に埋め込まれたりして、表面形状のばらつきの原因となる。
粉体の表面吸着水分量は、カールフィッシャー水分計により測定が可能である。
前記粉体の材質としては、酸化アルミニウム、ジルコニア、炭化ケイ素、ガラス等のセラミック系、ステンレス鋼、鉄、亜鉛等の金属系、ポリアミド、ポリカーボネート、エポキシ、ポリエステル等の樹脂系が挙げられるが、特に本発明の効果が得られやすく、粗面化効率及びコストの面等から、ガラスが好ましい。
また、電子写真感光体のクリーニング性等を改善できる表面形状を形成するためには、前記粉体の体積基準粒度分布における平均粒径は、10〜60μmが好ましい。
前記被処理体には、少なくとも表面が有機層によって構成されている有機電子写真感光体を用いることができる。有機電子写真感光体は、通常、その層厚、弾性特性等が電子写真感光体における製膜後に粗面化することに対して適しており、粗面化の条件を制御することにより、最終的に使用される表面形状を任意に幅広く制御できるという利点を有している。
前記層形成工程は、少なくとも被処理体の表面を構成する層を形成する工程である。被処理体の表面を構成する被処理表面層は、前記粗面化工程を経て前記表面層となる層である。
前記層形成工程は、前記被処理表面層以外の他の層を形成する工程であっても良い。前記他の層としては、例えば導電層や下引き層等の、支持体と感光層との間に形成される層や感光層、積層型(機能分離型)の感光層の場合における電荷発生層等が挙げられる。前記他の層は、被処理表面層以外の層であり、公知の方法によって製造することができる。
前記導電層は、支持体のムラなどの被覆、及び画像入力がレーザー光の場合には散乱による干渉縞防止を目的として支持体上に形成される層である。導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物等の導電性粉体を、バインダー樹脂中に分散して形成することができる。
前記下引き層は、各層間の界面での電荷注入制御や接着層として機能する層であり、支持体あるいは導電層と感光層との間に形成される層である。下引き層は、主にバインダー樹脂から成るが、前記金属や合金、又はそれらの酸化物、塩類、界面活性剤等を含んでもよい。下引き層を形成するバインダー樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド−イミド、ナイロン、ポリサルフォン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、ブチラール樹脂等が挙げられる。下引き層の層厚は、好ましくは0.05〜7μmであり、より好ましくは0.1〜2μmである。
前記感光層が機能分離型の感光層である場合には、電荷発生層及び電荷輸送層が積層されて感光層を構成する。しかしながら、成膜する順序は特に制限されるものではない。
本発明において電荷発生材料としては、一般的な材料を用いることが可能である。電荷発生材料として一般に、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム系染料、また各種の中心金属及び結晶系、具体的には例えばα、β、γ、ε及びX型等の結晶型を有するフタロシアニン化合物、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、トリスアゾ顔料、ジスアゾ顔料、モノアゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、非対称キノシアニン顔料、及びキノシアニン及びA−Si(アモルファスシリコン)等が挙げられる。
また、電荷発生材料以外に、バインダー樹脂を用いることも可能である。バインダー樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド−イミド、ポリサルフォン、ポリアリルエーテル、ポリアセタール、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂等が挙げられる。
電荷発生層にバインダー樹脂を含有する場合、電荷発生材料とバインダー樹脂の比率は質量比で、バインダー樹脂と電荷発生材料との質量の総和に対する電荷発生材料の質量比が0.1〜100%が好ましく、より好ましくは10〜80%である。
電荷発生層の層厚は、0.001〜6μmであることが好ましく、より好ましくは、0.01〜2μmである。電荷発生層全体に含有される電荷発生材料の質量比は、10〜100%が好ましく、より好ましくは50〜100%である。
電荷輸送材料の例としては、ピレン化合物、N−アルキルカルバゾール化合物、ヒドラゾン化合物、N,N−ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物等が挙げられる。
また、電荷輸送材料以外に、バインダー樹脂を用いることも可能である。バインダー樹脂の具体例として、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリイミド等が挙げられる。
電荷輸送層を被処理体における被処理表面層(電子写真感光体における表面層)とする場合、電荷輸送層に高エネルギー線等を利用して、硬化、重合する樹脂、あるいはモノマー、更には正孔輸送機能を有する硬化、重合する樹脂あるいはモノマーを用いることも可能である。
電荷輸送層にバインダー樹脂を含有する場合、電荷輸送材料とバインダー樹脂の比率は質量比で、バインダー樹脂と電荷輸送材料との質量の総和に対する電荷輸送材料の質量比が0.1〜100%が好ましく、より好ましくは10〜80%である。
電荷輸送層の厚さは薄すぎると帯電能が保てず、厚すぎると残留電位が高くなりすぎるため適当な範囲にする必要がある。好ましくは5〜70μm、より好ましくは10〜40μmである。
電荷輸送層中に含まれる電荷輸送材料の量は、質量比で好ましくは20〜100%であり、より好ましくは30〜90%である。
感光層が単層の感光層である場合、電荷発生物質と電荷輸送材料とは同一層内に含有される。電荷発生材料及び電荷輸送材料の具体例は、上記積層感光体の場合と同様である。この感光層の形成には、前述した被処理表面層の形成と同様に放射線を利用して、硬化、重合する樹脂、あるいはモノマー、更には正孔輸送機能を有する硬化、重合する樹脂あるいはモノマーを用いることが可能である。
単層の感光層の厚さは、8〜40μmであることが好ましい。単層の感光層が含有する電荷発生材料や電荷輸送材料等の光導電性材料の含有量は、好ましくは20〜100質量%であり、より好ましくは30〜90質量%である。
また、単層及び積層のどちらの場合においても、感光層の上層に保護層を設けることが可能である。この場合、保護層が被処理表面層となる。保護層は、電子写真感光体に加えられる機械的、電気的、又は化学的な負荷から感光層を保護する目的で、被処理体の表面を構成するように、種々の層の最も上に形成される層である。保護層を形成する場合では、保護層は、電子写真感光体の表面層となる。保護層を形成しない場合は、被処理表面層が粗面化処理によって電子写真感光体の表面層となる。
保護層の層厚は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜7μmである。放射線を利用して、硬化、重合する樹脂、あるいはモノマーを用いることが可能である。
更に、保護層中に金属及びその酸化物、窒化物、塩、合金やカーボン等の導電性材料を含有してもよい。その様な金属種としては、鉄、銅、金、銀、鉛、亜鉛、ニッケル、スズ、アルミニウム、チタン、アンチモン、インジウム等が挙げられる。前記導電性材料には、具体的には、ITO、TiO、ZnO、SnO、Al等が使用可能である。
前記導電性材料は微粒子状の材料であり、保護層中に分散される。その粒子径は好ましくは0.001〜5μmであり、より好ましくは0.01〜1μmである。その保護層への添加量は、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。前記導電性材料を保護層に分散する際に、分散剤としてチタンカップリング剤、シランカップリング剤、各種界面活性等を用いてもよい。
感光層を構成する各層には、酸化防止剤や光劣化防止剤等の各種添加剤を用いてもよい。また、被処理表面層には、その滑性や撥水性を改善する目的で各種フッ素化合物やシラン化合物、金属酸化物等あるいはそれらの微粒子等を含有してもよい。これらの分散性を改善する目的で分散剤や界面活性剤を用いてもよい。被処理表面層におけるこれら添加物の含有量は好ましくは1〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
被処理表面層等の前述した層は、所期の化合物そのもの、又はそれを含有する溶液や分散液等の組成物を、支持体又は支持体上に既に形成されている層の上に、蒸着、塗布等の公知の方法で付着させ、前記化合物又は組成物の膜を形成し、この膜を硬化させる公知の方法によって形成することができる。このような公知の方法の中でも、塗布法が最も好ましい。塗布による方法は、薄膜から厚膜まで広い範囲で、しかもさまざまな組成の膜が形成可能である。具体的には、バーコーター、ナイフコーター、浸漬塗布、スプレー塗布、ビーム塗布、静電塗布、ロールコーター、アトライター、粉体塗布等の、各種方法や各種手段による塗布が挙げられる。被処理表面層を製膜する方法が浸漬塗布法により塗布して製膜される場合において本発明は効果的である。被処理表面層は、浸漬塗布法により塗布、製膜された後に、被処理表面層上からのブラスト法により粗面化される。なお、被処理表面層等の前述した層の層厚は、前記膜の厚さによって調整することができる。
本発明の方法は、前記層形成工程以外に、被処理表面層が形成された被処理体を加熱する工程等の他の工程をさらに含んでいても良い。
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
アンチモンをドープした酸化スズの被覆膜を有する酸化チタン粉体(商品名:クロノス(登録商標)ECT−62、チタン工業(株)製)60質量部、酸化チタン粉体(商品名:titone SR−1T、堺化学(株)製)60質量部、レゾール型フェノール樹脂(商品名:フェノライト(登録商標) J−325、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)70質量部、2−メトキシ−1−プロパノール50質量部、メタノール50質量部とからなる溶液を約20時間ボールミルで分散させた。この分散液に含有するフィラーの平均粒径は、0.25μmであった。
このようにして調合した分散液を、30mmφ×357.5mm長のアルミニウムシリンダー上に浸漬法によって塗布し、150℃に調整された熱風乾燥機中で30分間加熱乾燥、硬化することにより膜厚15μmの導電層を形成した。
次に、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミラン(登録商標)CM8000、東レ(株)製)10質量部およびメトキシメチル化ナイロン樹脂(商品名:トレジン(登録商標)EF30T、帝国化学産業(株)製)30質量部をメタノール500質量部およびブタノール250質量部の混合液に溶解した溶液を、前記導電層の上に浸漬塗布し、100℃に調整された熱風乾燥機中に10分間投入し加熱乾燥して、膜厚み0.5μmの下引き層を形成した。
次に、CuK(線回折スペクトルにおけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料4質量部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレック(登録商標)BX−1、積水化学工業(株)製)2質量部、シクロヘキサノン90質量部からなる混合溶液を直径1mmガラスビーズを用いてサンドミルで10時間分散させた後、酢酸エチル110質量部を加えて電荷発生層用塗工液を調製した。この塗工液を上記の下引き層上に浸漬塗布し、100℃に調整された熱風乾燥機中に10分間投入し加熱乾燥して、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記構造式で示されるトリアリールアミン系化合物35質量部
Figure 2009063745
およびビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスティックス(株)製)50質量部を、モノクロロベンゼン320質量部およびジメトキシメタン50質量部に溶解して調製した電荷輸送層用塗工液を、上記電荷発生層上に浸漬塗布し、120℃に調整された熱風乾燥機中に60分間投入し加熱乾燥して、膜厚15μmの第一の電荷輸送層を形成した。
次いで、分散剤としてフッ素原子含有樹脂(商品名:GF−300、東亞合成(株)製)0.1質量部を、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH(登録商標)、日本ゼオン(株)製)35質量部と1−プロパノール35質量部に溶解した後、潤滑剤として四フッ化エチレン樹脂粉体(商品名:ルブロン(登録商標)L−2、ダイキン工業(株)製)12質量部を加え、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−110EH、米Microfluidics社製)で59N/mmの圧力で3回の処理を施し均一に分散させた。これを10μmのPTFEメンブレンフィルターで加圧ろ過を行い潤滑剤分散液を調製した。その後、下記構造式で示される正孔輸送性化合物18質量部
Figure 2009063745
を潤滑剤分散液に加え、PTFE製の5μmメンブレンフィルターで加圧ろ過を行い、硬化型表面層としての第二の電荷輸送層用塗工液を調整した。この塗工液を用いて前記第一の電荷輸送層上に硬化型表面層として第二の電荷輸送層を浸漬塗布法により塗工した。その後、窒素中において加速電圧120kV、線量1.5Mrad(1.5×10Gy)の条件で電子線を照射した。引き続いて感光体の温度が120℃になる条件で90秒間加熱処理を行った。このときの酸素濃度は10ppmであった。更に、電子写真感光体を大気中で100℃に調整された熱風乾燥機中で20分間加熱処理を行って、膜厚5μmの硬化型表面層を形成した。
次いで、電子写真感光体の最表面層の粗面化処理は温度23℃、湿度50%に調湿した環境下で以下のように行った。研磨材砥粒(粉体)は平均粒径が30μmの球状ガラスビーズ(商品名:UB−01L (株)ユニオン製)、表面水分吸着量が313ppmのものを用いた。このときの表面吸着水分量は、気化式カールフィッシャー測定装置(平沼産業(株)製、AQV−200及びEV−6)にて研磨材砥粒を120℃で加熱しながら測定した。乾式ブラスト装置(不二精機製造所製)で、エア吹き付け圧力0.2N/mm、ブラストガン移動速度430mm/min、感光体回転速度:288rpm、ブラストガン吐出口と感光体の距離:100mm、ブラスト回数:片道×1回で粗面化した。
更に、感光体表面に残存付着した研磨材砥粒は、圧縮エアを吹き付けることによって除去した。
この電子写真感光体の最表面層の表面形状として、十点平均粗さ(Rzjis)、凹凸の平均間隔(RSm)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)を電子写真感光体長手方向の0〜120mm位置、120〜240mm位置、240〜357.5mm位置でそれぞれ任意に3箇所ずつ測定箇所を選び、計9箇所測定したところ、表1に示すような数値であった。測定は、表面粗さ測定器(商品名:サーフコーダSE3500型、(株)小坂研究所製)を使用して行った。測定条件として、測定長:0.4mm、測定速度:0.1mm/sで測定した。RSm測定時のノイズカットのベースラインレベル設定値は、レベル設定=10%で測定した。
本発明において十点平均粗さ(Rzjis)、凹凸の平均間隔(RSm)、最大山高さ(Rp)、最大谷深さ(Rv)はJIS−B0601−2001に記載の方法に準じて測定したものをいう。
このようにして得られた電子写真感光体を、電子写真複写機(商品名:GP−405、キヤノン(株)製)を用い、クリーニングブレードの当接圧設定を高圧の場合、低圧の場合に設定した際のクリーニング性を評価した。該複写機の構成の概略は、電子写真感光体の帯電手段として帯電ローラを備え、現像手段として一成分ジャンピング現像方法を採用した現像器を備え、転写手段として転写ローラを備え、ブレードクリーニング手段、前露光手段を備える。また、電子写真感光体、帯電ローラ及びクリーニングブレードは一体型のユニットになっている。プロセススピードは210mm/secである。該複写機のクリーニングブレードを、高圧設定のブレードの線圧は40g/cm、低圧設定のブレード線圧は20g/cmと改造した。ブレード高圧設定においては、耐久使用した際にブレード捲れの発生状況を評価した。また、ブレード低圧設定においては、耐久評価した場合にブレードからのトナーすり抜けによるクリーニング不良の発生状況を評価した。
評価環境は23℃/50%RHの環境下で、画像比率5%のA4画像を2枚間欠で15万枚耐久評価する中で結果を比較した。耐久評価終了後にハーフトーン画像等のテスト画像を出力することで画像上の不良を観察した。
上記の感光体はいずれの条件においても良好なクリーニング特性を示し、ブレードが高圧の設定においてもブレード捲れの発生も無く、また、低圧の設定においてもトナーのすり抜けなど画像不良の発生は無いものであった。
さらに、研磨材砥粒を温度23℃、湿度50%の環境下で1ヵ月保管後、表面水分吸着量を測定したところ、376ppmであった。上記と同じ条件で電子写真感光体を作成し、粗面化処理を行ったところ、ほぼ同じ表面形状が得られ、クリーニング特性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例1において、研磨材砥粒を温度20℃、湿度10%の環境下で1ヵ月保管後、表面水分吸着量を測定したところ、258ppmであった。上記と同じ条件で粗面化処理を行ったところ、実施例1とほぼ同じ表面形状の電子写真感光体が得られ、クリーニング特性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例1において、研磨材砥粒を平均粒径が30μmの球状ガラスビーズ(商品名:UB−13LS (株)ユニオン製)、表面水分吸着量が10.7ppmのものを用い、実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、評価を行ったところ、クリーニング特性が良好な電子写真感光体が得られた。この研磨材砥粒を温度23℃、湿度50%の環境下で1ヵ月保管後、表面水分吸着量を測定したところ、31.5ppmであった。この研磨材砥粒を用いて、実施例1と同様に粗面化処理を行ったところ、1ヶ月前に粗面化したときとほぼ同じ表面形状の電子写真感光体が得られ、クリーニング特性も良好であった。結果を表1に示す。
実施例1において、研磨材砥粒を平均粒径が40μmの球状ガラスビーズ(商品名:UB−13L (株)ユニオン製)、表面水分吸着量が74.5ppmのものを用い、粗面化処理条件としてエア吹き付け圧力を0.15N/mmに変更した以外は実施例1と同様に電子写真感光体を作成し、評価を行ったところ、クリーニング特性が良好な電子写真感光体が得られた。この研磨材砥粒を温度23℃、湿度50%の環境下で1ヵ月保管後、表面水分吸着量を測定したところ、89.1ppmであった。この研磨材砥粒を用い、1ヶ月前と同様に粗面化処理条件としてエア吹き付け圧力を0.15N/mmに変更した以外は実施例1と同じ条件で粗面化処理を行ったところ、1ヶ月前に粗面化したときとほぼ同じ表面形状の電子写真感光体が得られ、クリーニング特性も良好であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、研磨材砥粒を温度30℃、湿度80%の環境下で1週間保管後、実施例1と同じ条件で粗面化処理を行ったところ、電子写真感光体表面の表面形状が実施例1と異なっていた。このときの研磨材砥粒の表面吸着水分量は、528ppmであった。得られた電子写真感光体のクリーニング特性を実施例1と同様に評価したところ、耐久評価中にトナーすり抜けが発生した。結果を表1に示す。また、また、実施例1と同じ表面形状を得るために再度条件だしを行ったが、実施例1と同じ表面形状を得ることはできなかった。
[比較例2]
実施例1において、研磨材砥粒を温度30℃、湿度80%の環境下で1ヶ月保管後、実施例1と同じ条件で粗面化処理を行ったところ、電子写真感光体表面の表面形状が実施例1と異なっていた。このときの研磨材砥粒の表面吸着水分量は、1322ppmであった。得られた電子写真感光体のクリーニング特性を実施例1と同様に評価したところ、耐久評価中にトナーすり抜けが発生した。結果を表1に示す。また、実施例1と同じ表面形状を得るために再度条件だしを行ったが、実施例1と同じ表面形状を得ることはできなかった。
[比較例3]
実施例3において、研磨材砥粒を温度30℃、湿度80%の環境下で1ヶ月保管後、実施例1と同じ条件で粗面化処理を行ったところ、表面形状が実施例1と異なっていた。このときの研磨材砥粒の表面吸着水分量は、632ppmであった。得られた電子写真感光体のクリーニング特性を実施例1と同様に評価したところ、耐久評価中にトナーすり抜けが発生した。結果を表1に示す。また、実施例1と同じ表面形状を得るために再度条件だしを行ったが、実施例1と同じ表面形状を得ることができなかった。
Figure 2009063745
本発明に用いられるブラスト加工装置の一例の構成を概略的に示す図である。
符号の説明
1 電子写真感光体
1a 軸
1−1 噴射ノズル
1−2 ノズル固定冶具
1−3 圧縮エア供給管
1−4 研磨粒子供給管
1−5 研磨粒子
1−6 ワーク支持体
1−7 被処理体
1−8 ノズル支持体
1−9 アーム

Claims (4)

  1. 支持体及び該支持体上に設けられた感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、
    該支持体と該支持体上に設けられた感光層を含むすべての層とを有する被処理体の表面に、表面吸着水分量が10ppm以上かつ400ppm以下である粉体を衝突させることによって、該被処理体の表面の粗面化処理を行う表面処理工程を含むことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 少なくとも前記被処理体の表面を構成する層を前記支持体上に形成する層形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記粉体が、ガラス粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記表面処理工程における粗面化処理方法が乾式ブラスト処理方法であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
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