JP5034408B2 - 化粧シート - Google Patents

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本発明は、熱可塑性性を有する樹脂シート基材に表面保護層を積層して耐久消費材として使用される樹脂積層体に関するもので、床材、壁材、天井材等の建築材、建具、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに関するものであり、特に、賃貸マンション、アパート、オフィスビル、店舗、公共施設等の耐傷性や耐候性が要求される用途に好適な化粧シートに関するものである。
従来、この種の化粧シートとしては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル共重合体樹脂などが、該化粧シートの基材シート又はその基材シート表面の透明樹脂層などとして使用されている。例えば化粧シートの基材シートには、紙または合成樹脂シートを使用し、これに印刷を施してなる印刷シートがそのまま用いられたり、表面保護層または/および意匠表現層として前述の透明樹脂層が設けられたりして、木材合板、木質繊維板、パーティクルボードなど木質系基材の表面に貼り合わせて使用されている。また、特に表面強度を必要とする床材および縁材などには、塩化ビニル樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの表面強度に優れる高強度な樹脂が使用されてきた。
近年、ポリ乳酸樹脂は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料の一つになり、また生分解性ポリマーであることから大きな注目を集めている。ポリ乳酸樹脂は、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とするバイオマス材料であり、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となる生分解性樹脂でもある。さらには燃焼により発生する熱量も少なく、燃焼時に発生する炭酸ガスは、元々、ポリ乳酸樹脂の原料となる澱粉を光合成する時に吸収した大気中の炭酸ガスであり、環境に優しい最も有望な生分解性バイオマス樹脂であるといわれている。
しかし、このような生分解性樹脂やバイオマス樹脂による積層シートは、表面強度に優れるものもあるが、耐熱性に劣る、生分解性であるが故に耐久性に劣る、耐薬品性に劣るなどの理由により、これまでは化粧シートとして実用化されるに至らなかった。また、その一方では、従来の化粧シートが木質基材の表面に貼合された化粧材は、廃棄時には、その化粧シートと木質基材の分別が困難であり、また表面の化粧シートの材質が判別できないなどの問題により、原料リサイクルは困難であり、また有害ガス発生の問題から、焼却処理も困難であり、埋め立て処理といった廃棄処理方法を採らざるを得ないという現状の
以下に本発明に関連する公知文献を記載する。
特開2001−270054
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
したがって、本発明の目的は、表面加飾性に優れ、高度な表面強度が得られ、且つバイオマス原料から構成された環境に配慮した化粧シートを提供することにある。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、熱可塑性樹脂シート基材1の上に、絵柄インキ層2とアンカーコート層と接着性樹脂層とポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3と表面保護層4とがこの順に積層され、前記表面保護層4側から熱エンボス加工により該表面保護層4及び前記透明熱可塑性樹脂層3に凹凸の表面加飾が施されてなる化粧シートであって、前記熱可塑性樹脂シート基材1がポリプロピレン樹脂シートであり、前記ポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3がポリ乳酸樹脂80%とポリブチレンサクシネート樹脂20%の混合体からなり、かつ、前記熱可塑性樹脂シート基材1の軟化点(熱変形温度)が150℃で、前記透明熱可塑性樹脂層3の軟化点(熱変形温度)が100℃であることを特徴とする化粧シートである。
本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂シート基材1の上に、少なくとも絵柄インキ層2とポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3と表面保護層4とがこの順に積層され、前記表面保護層4側から熱エンボス加工により該表面保護層4及び前記透明熱可塑性樹脂層3に凹凸の表面加飾が施されてなる化粧シートにおいて、前記ポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3が、少なくとも生分解性のポリ乳酸樹脂を含有していることにより、熱エンボスによる凹凸の表面加飾性に優れるだけでなく、高度な表面強度が得られ、且つバイオマス原料から構成された環境に配慮した化粧シートを製造することが可能となるものである。
本発明の化粧シートは、図1の側面図に示すように熱可塑性樹脂シート基材1の上に、少なくとも絵柄インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4が、この順に積層された積層体であり、前記透明熱可塑性樹脂層3はポリエステル系樹脂からなり、前記表面保護層4側から熱エンボス加工により表面保護層4及び透明熱可塑性樹脂層3にエンボス凹凸部5による表面加飾が施されている。
本発明における化粧シートの前記ポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3には、少なくとも生分解性のポリ乳酸樹脂(飽和脂肪酸ポリエステル系樹脂)を含有している。そして本発明の化粧シートの透明熱可塑性樹脂層3表層近傍を形成するポリ乳酸樹脂の熱変形温度を比較的低くすることにより、エンボス加工性を改善することができ、優れた表面加飾性を付与することが可能となる。
また生分解性のポリ乳酸樹脂が透明性にすぐれることから、エンボス加工性に加えて、表面加飾表現の自由度が大きくなり、高い光沢感が得られる表面加飾が可能となる。さらには、ポリ乳酸の非晶性シートは、ガラス転移温度が約60℃であるが、これ以下の温度では非常に剛性(弾性率)が大きく、表面強度に優れるものである。
前記熱可塑性樹脂シート基材1としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリ
レート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイト、ポリエーテルサルファイト、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンエーテル等が使用可能である。
前記熱可塑性樹脂シート基材1は、好ましくは、透明熱可塑性樹脂層3として用いる生分解性のポリ乳酸樹脂を含有する樹脂材料よりも軟化点(樹脂変形温度)が大きい材料を選択する。好ましくは、熱可塑性樹脂シート基材1の軟化点(熱変形温度)が、前記透明熱可塑性樹脂層3の軟化点(熱変形温度)よりも15℃以上、より好ましくは20℃以上高いものを選択し、熱可塑性樹脂シート基材1と透明熱可塑性樹脂層3とをラミネート加工する際における熱可塑性樹脂シート基材1の変形や溶融を防止する。ここで軟化点とはビカット軟化点のことでありJISK7206に従って測定した。
本発明の化粧シートには、図1に示すように、熱可塑性樹脂シート基材1上に意匠性付与を主な目的として印刷による絵柄インキ層2が設けられている。絵柄インキ層2は、熱可塑性樹脂シート基材層1若しくは透明熱可塑性樹脂層3に設けることができ、通常のグラビア印刷等により所定の印刷インキにて設けることができる。
熱可塑性樹脂シート基材層1若しくは生分解性のポリ乳酸樹脂を含有する透明熱可塑性樹脂層3に、絵柄インキ層2を設ける方法としては、周知の任意の印刷方法により製造可能である。熱可塑性樹脂シート基材層1と透明熱可塑性樹脂層3のラミネート加工方法にもよるが、少なくとも熱可塑性樹脂シート基材1には周知の任意の印刷方法により製造可能であり、その表面に、グラビア印刷、オフセット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷技法を用いるのが一般的である。特には調子再現性、生産性の点でグラビア印刷法が特に好適である。また、必要に応じて、熱可塑性樹脂シート基材1の表面だけでなく、その裏面あるいはその両方面に絵柄インキ層2を設けるようにしてもよい。
化粧シートの木目柄等のパターン、絵柄、彩色等の印刷に用いるインキとしては、バインダーとしては硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独、若しくは各変性物の中から適宜選択すればよい。これらインキは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。さらには、紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。
最も一般的な印刷方法としては、ウレタン系の樹脂バインダーを用いたインキでイソシアネートで硬化させる方法である。これら樹脂バインダーには、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されている。特に良く用いられる顔料には、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等がある。
また印刷方法に用いられるインキも、上記の樹脂バインダーを用いたインキ以外に、公知のもの、すなわちビヒクルに染料または顔料等の着色剤、体質顔剤を添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤等を任意に添加して溶剤、希釈剤等で十分に希釈、攪拌してなるものでよい。
前記シート基材層1上の絵柄インキ層2上に、生分解性のポリ乳酸樹脂を含有する透明熱可塑性樹脂層3を設けるラミネート方法としては、適宜に接着材や接着助剤を使用してもよく、あるいは押出しラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート、ウェットラミネート法など、周知の任意のラミネート方法により製造可能である。化粧表現のための
意匠性や、透明若しくは任意に着色された熱可塑性樹脂シート基材層1、絵柄インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3として使用する各材料に対応して透明熱可塑性樹脂層3を設ける方法を選択することができる。表面加飾のための前記エンボス凹凸5のエンボス加工条件等にもよるが、ラミネート同時エンボス加工の点では押出しラミネート法が好適である。またエンボス加工の表現を豊かにするためには、ラミネート後のエンボス加工を選択することが好ましく、またラミネートする透明熱可塑性樹脂層3として予めシート状もしくはフィルム状に成形してあるものを使用する場合であれば、ドライラミネート法が好ましく選択される。
熱可塑性樹脂シート基材層1及び/又は絵柄インキ層2と、透明熱可塑性樹脂層3とを押出しラミネート法により積層接着する場合においては、十分な接着強度を得るため、前記透明熱可塑性樹脂層3にアンカーコートを塗布したり、又は接着性樹脂層(図示せず)とポリ乳酸樹脂を含有する透明熱可塑性樹脂層3とを、あるいは接着性樹脂層(図示せず)と透明熱可塑性樹脂層3となるポリ乳酸樹脂とを、共押出ししたり、あるいは前記接着性樹脂層にオゾンガスを吹き付けながら共押出しする方法がある。
また一般的に化粧シートには耐候性も求められるため、透明熱可塑性樹脂層3には紫外線吸収剤及び光安定剤の添加は必須条件である。紫外線吸収剤としては、所望する紫外線吸収効果を有する範囲内で、かつ化粧シートの耐候性以外の特性に大きな影響を与えない範囲であれば、特にその成分や添加量に制限はない。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3、5−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、酸化セリウム、酸化チタン等の無機系紫外線吸収剤等の中から1種あるいは1種以上を任意に組み合わせて、透明熱可塑性樹脂層3に添加することが可能である。
光安定剤も所望する紫外線吸収効果を有する範囲内で、かつ化粧シートの耐候性以外の特性に大きな影響を与えない範囲であれば、特にその成分や添加量に制限はない。例えばコハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等のヒンダードアミン系光安定剤、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系光安定剤、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルキシ)−4−ピペリジニル)エステル等のアミノエーテル型の光安定剤等の中から1種あるいは1種以上を任意に組み合わせて使用することが可能である。
前記透明熱可塑性樹脂層3には、その他にも必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等が添加される。熱安定剤はペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]−プロピオネート、2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトに代表される燐系酸化防止剤等の中から1種、あるは1種以上組み合わせて使用可能である。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機系化合物や燐酸エステル系の難燃剤等があるが、特に成分に限定は無い。但し、化粧シートが環境を考慮した非塩化ビニル製シートであるならば、ハロゲン系の難燃剤の使用は十分に考慮するか、使用を避ける必要がある。
ブロッキング防止剤は、珪酸アルミニウム、酸化珪素、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム等の無機系ブロッキング防止剤、脂肪酸アミドのような有機系ブロッキング防止剤等が任意に添加される。
これらの紫外線吸収剤、光安定化剤、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤などの添加剤は、透明熱可塑性樹脂層3の所望する透明性を損なわない範囲で添加することができる。
また場合によっては、化粧シートの表面の手触り感や、より一層の意匠感を得るため、図1に示すように化粧シート表面の透明なポリプロピレン樹脂層5に凹陥模様5aを施して、その凹陥部内に充填インキを埋め込み(ワイピングし)、その透明熱可塑性樹脂層の最外表面に表面保護層を設けることも好適に行われる。
本発明の化粧シート表面に、図1に示すように、表面保護層4側から凹凸部5による凹陥模様を施す方法としては通常の熱圧エンボス加工法でよく、何ら限定されるものではない。
またその他に本発明の化粧シート表面に凹凸部5による凹陥模様を施す方法としては、前記透明熱可塑性樹脂層3の形成方法として溶融押出ラミネート法を用いる場合は、溶融樹脂を冷却固化させるチルロールの表面にエンボス加工用の凹陥模様(エンボス型)を施しておき、押し出された溶融樹脂をチルロールとプレスロールとの間でエンボスして、凹凸部5による凹陥模様を施す方法が良い。
例えば、図2に示すように、熱可塑性樹脂シート基材層1上に溶融押出ラミネートされた透明熱可塑性樹脂層3の表面に、溶融樹脂を冷却固化させるチルロールの表面に施されたエンボス加工用の凹陥模様(エンボス型)により、凹凸部5による凹陥模様の凹陥部5aをエンボス加工し、その凹陥部5a内にインキ2aを埋め込む。そして、該透明熱可塑性樹脂層3の最外表面に表面保護層4(トップコート層)を設けることも好適に行われるものである。これらの方法は、従来の塩化ビニル樹脂製の化粧シートで行われているワイピング処理及びトップコート処理と同様の方法で実施可能である。
また、いずれの化粧シートにおいても、その化粧シート表面や裏面に、合板や鋼板などの基材に貼り合わせるためのプライマーコート層や、表面保護層や、艶調整のためのトップコート層を施しても良いし、エンボス法やグロスマット法等による木目柄のための導管表現等が施されていても構わない。
次に、熱可塑性樹脂シート基材1として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を使用することにより、得られる化粧シートは比較的柔軟で折り曲げ加工性やラッピング加工性に優れる化粧シートを得ることができる。
前記ポリオレフイン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体や、これらを接着性の向上の目的で酸変性したもの、あるいはアイオノマー等から適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
前記熱可塑性樹脂シート基材層1及び/又は絵柄インキ層2と、透明熱可塑性樹脂層3とを積層接着する際に接着性樹脂層を使用して、該接着性樹脂層と透明熱可塑性樹脂層3との押出しラミネート法にて積層接着する場合における前記接着性樹脂層に用いる接着性樹脂材料としては、マレイン酸変性ポリエチレン樹脂やエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂などが一般的であるが、化粧シートに高温が掛かった場合においても、十分なラミネート強度を保持するために、接着性樹脂として不飽和カルボン酸、あるいはその無水物(例えば無水マレイン酸)をグラフト重合したランダムポリプロピレン樹脂を用いることにより解決することができる。
不飽和カルボン酸あるいはその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フタル酸、シトラコン酸、イタコン酸およびそれらの無水物が挙げられるが、これらの中で無水マレイン酸が特に好ましい。
また、前記接着性樹脂にオゾンガスを吹き付けるオゾン処理装置としては一般的なもので良く、特に制約されるものではない。オゾン処理量としてはオゾン濃度20〜50g/Nm3 (ノルマル・立方メートル)、オゾン流量1〜10Nm3 /時間が良好である。
さらに、本発明の化粧シートにおいては、熱可塑性樹脂基材シート1と前記接着性樹脂層との間にアンカーコート層を設けてもよい。このアンカーコート層としては、ポリオールとイソシアネートとの反応でウレタン結合を形成するイソシアネート硬化型ウレタン系樹脂が望ましい。さらに好ましくは、イソシアネート成分として少なくともへキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートを少なくとも含む混合物を使用することにより常温及び高温において最も優れたラミネート強度を得ることができる。
各イソシアネート成分の配合量としては、イソシアネート成分の全体量のうち、へキサメチレンジイソシアネート2〜30重量部、イソホロンジイソシアネートを30〜98重量部、及びその両者以外のイソシアネート成分0〜68重量部とするのが良い。その他のイソシアネート成分として、例えば4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メシチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等から選ばれる1種以上を添加することもできる。
また、アンカーコート層3の形成方法はグラビア法(グラビア印刷法、グラビア塗布法)が好適に用いられるが何ら限定されるものではない。
次に、化粧シートを構成する熱可塑性樹脂シート基材1として、ポリエチレンテレフタ
レート樹脂などの剛性(弾性率)が大きい樹脂を使用することにより、化粧シート全体の剛性(弾性率)を大きくすることができ、特に表面強度に優れる化粧シートを得ることができる。
また、熱可塑性樹脂シート基材1として、生分解性のポリ乳酸樹脂やポリブチレンサクシネートなどの植物由来原料からなるポリエステル系樹脂を使用することにより、化粧シートを構成する材料として、バイオマス材料の含有率が大きくなり、さらには燃焼により発生する熱量も少なく、さらに燃焼時に発生する炭酸ガスは元々光合成で吸収した炭酸ガスであるため大気中環境に優しい化粧シートを得ることができる。
さらに、前記熱可塑性樹脂シート基材1の軟化点(熱変形温度)が、前記透明熱可塑性樹脂層3の軟化点(熱変形温度)よりも15℃以上高くすることにより、熱エンボス加工時に透明熱可塑性樹脂のみに熱エンボス加工がなされて、優れた表面加飾を得ることができる。
また前記熱可塑性樹脂シート基材1にポリ乳酸樹脂を使用した場合、耐熱性向上させるために混合される生分解樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリブチレンサクシネート系、ポリカプロラクトン系、酢酸セルロース系、ポリエステルアミド系、酢酸ビニル系、コポリエステル系、ポリ乳酸系、デンプン系のものから適宜選択が可能で単一でも複数種の混合でも構わない。
以下に本発明の具体的実施例について説明する。なお、実施例1は参考例である。
<実施例1>
下記の積層構成からなる木目調の化粧シートを作成した。まず、木目柄の基調色に予め着色されたポリ乳酸樹脂90%とポリブチレンサクシネート樹脂10%の樹脂混合体(軟化点約100℃)からなる厚み100μmの熱可塑性樹脂シート基材1に、グラビア印刷により木目絵柄の印刷を行って絵柄インキ層2を作成した。この印刷が施された熱可塑性樹脂シート基材1に透明熱可塑性樹脂層3としてポリ乳酸100%からなる厚み100μmの透明シート(軟化点約60℃)をドライラミネート法により貼合した。さらにその透明熱可塑性樹脂層3側に表面保護層4としてウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようにグラビアコーティングにて塗工した。尚、このウレタン系コート剤には紫外線吸収剤と光安定剤、および光沢調整のためのマット剤を添加している。さらに最終工程として、この表面保護層4の上からエンボス模様型にて熱エンボス加工(加熱約100℃)を施して凹凸部5を形成し、凹凸の表面加飾を行い、本発明の化粧シート(図1参照)を作成した。
(実施例1の化粧シート積層構成)
・熱可塑性樹脂シート基材:ポリ乳酸+ポリブチレンサクシネート 100μm
・絵柄インキ層:印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜1μm
・接着性樹脂層:ドライラミネート接着剤:ウレタン系2液硬化型 10μm
・透明熱可塑性樹脂層:ポリ乳酸樹脂(軟化点約60℃) 100μm
・表面保護層:ウレタン系コート剤 9μm
<実施例2>
下記の構成構成からなる木目調の化粧シートを作成した。まず、木目柄の基調色に予め着色された厚み70μmのポリプロピレン樹脂シート(軟化点約150℃)からなる熱可塑性樹脂シート基材1に、グラビア印刷により木目絵柄の印刷を行って絵柄インキ層2を形成した。この印刷が施されたシートに、アンカーコート剤を乾燥厚み1μmとなるようグラビアコーティング法にて塗工しアンカーコート層を形成した後、接着性樹脂と透明熱可塑性樹脂(軟化点約100℃)との共押出し製膜ラミネート法により該接着性樹脂を介
して透明熱可塑性樹脂層3を積層した。この接着性樹脂層の厚みは20μmとし、透明熱可塑性樹脂としてポリ乳酸80%とポリブチレンサクシネート20%の混合体からなる樹脂を使用し、その厚みは60μmとして、合計80μmの透明熱可塑性樹脂層3とした。また、この透明熱可塑性樹脂層3を共押出し製膜するのと同時に、該透明熱可塑性樹脂層3の表面に、エンボス模様型を設けた冷却ロールでエンボス加工して凹凸部5を形成して凹凸の表面加飾を施した。さらに最終工程として、その透明熱可塑性樹脂層3側に表面保護層4として、ウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようにグラビアコーティングにて塗工して、本発明の化粧シート(図1参照)を作成した。尚、透明熱可塑性樹脂層3には紫外線吸収剤と光安定剤、表面保護層4には紫外線吸収剤と光安定剤および光沢調整のためのマット剤をそれぞれ予め添加したものを用いた。
(実施例2の化粧シート積層構成)
・熱可塑性樹脂シート基材:ポリプロピレン 70μm
・絵柄インキ層:印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜1μm
・アンカーコート層:アンカーコート剤:ウレタン系2液硬化型 1μm
・接着性樹脂層:マレイン酸グラフト変性オレフィン系樹脂 20μm
・透明熱可塑性樹脂層:ポリ乳酸樹脂+ポリブチレンサクシネート樹脂 60μm
・表面保護層:ウレタン系コート剤 9μm
<比較例1>
下記の積層構成からなる木目調の化粧シートを作成した。まず、木目柄の基調色に予め着色された厚み70μmのポリプロピレン樹脂(軟化点約150℃)からなる熱可塑性樹脂シート基材1に、グラビア印刷により木目絵柄の印刷を行って絵柄インキ層2を形成した。この印刷が施された熱可塑性樹脂シート基材1に透明熱可塑性樹脂層3として厚み100μmの透明なポリエチレンテレフタレートシート(軟化点約240℃)をドライラミネート法により貼合した。さらに、その透明熱可塑性樹脂層3側に表面保護層4としてウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようにグラビアコーティングにて塗工して比較例1の化粧シートを作成した。このウレタン系コート剤には紫外線吸収剤と光安定剤、および光沢調整のためのマット剤を予め添加したものを用いた。尚、本構成の化粧シートは透明熱可塑性樹脂として使用したポリエチレンテレフタレート樹脂の熱変形温度(軟化点)が熱可塑性樹脂シート基材のポリプロピレン樹脂の熱変形温度(軟化点)より高いため、表面保護層の上から熱エンボス加工を施すことができない。
(比較例1の化粧シート積層構成)
・熱可塑性樹脂シート基材:ポリプロピレン樹脂 70μm
・絵柄インキ層:印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜1μm
・ドライラミネート接着剤:ウレタン系2液硬化型 10μm
・透明熱可塑性樹脂層:ポリエチレンテレフタレート樹脂シート 100μm
・表面保護層:ウレタン系コート剤 9μm
<比較例2>
下記構成配からなる木目調の化粧シートを作成した。まず木目柄の基調色に予め着色された厚み70μmのポリプロピレン樹脂(軟化点約150℃)からなる熱可塑性樹脂シート基材1に、グラビア印刷により木目絵柄の印刷を行った。この印刷が施された熱可塑性樹脂シート基材1に、アンカーコート剤を乾燥厚み1μmとなるようグラビアコーティング法にて塗工してアンカーコート層を形成した後、接着性樹脂と透明熱可塑性樹脂との共押出し製膜ラミネート法により、該接着性樹脂を介して、透明熱可塑性樹脂層3を積層した。この接着性樹脂層の厚みは15μmとし、透明熱可塑性樹脂層としてポリプロピレン樹脂(軟化点約150℃)を使用し、その厚みは65μmとし、合計80μmの透明熱可塑性樹脂層3とした。また、この透明熱可塑性樹脂層3を共押出し製膜するのと同時に冷却ロールでエンボス加工による凹凸の表面加飾を施した。さらに最終工程として、その透明熱可塑性樹脂層3側に、表面保護層4としてウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようにグラビアコーティングにて塗工して、比較例1の化粧シートを作成した。尚、透明熱可塑性樹脂層には紫外線吸収剤と光安定剤、表面保護層には紫外線吸収剤
と光安定剤および光沢調整のためのマット剤を添加している。
(比較例2の化粧シート積層構成>
・熱可塑性樹脂シート基材:ポリプロピレン 70μm
・絵柄インキ層:印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0〜1μm
・アンカーコート層:アンカーコート剤:ウレタン系2液硬化型 1μm
・接着性樹脂層:マレイン酸グラフト変性オレフィン系樹脂 15μm
・透明熱可塑性樹脂層:ポリプロピレン樹脂 65μm
・表面保護層:ウレタン系コート剤 9μm
<評価>
以下の化粧シートの評価は、上記実施例1および2、比較例1および2にて作成さた各々化粧シートを厚さ3mmのMDF(化粧板用基材:木質樹脂組成物)に貼合して化粧ボードにした状態にて評価を行った。
・耐久性:促進試験として60℃オーブンに10日間投入し、化粧シート層間のデラミネーションや変色の有無(有→不良,無→良)を判定。且つ、化粧シートを貼合した化粧板用基材の木質樹脂組成物をサンシャインウェザーメータ1000時間投入し、光照射は化粧シート貼合面側に行い、表面劣化及び内部劣化の有無(有→不良,無→良)を判定。両方共に良であれば良好(○)とし、いずれか一つでも満足できなかったものは不良(×)と評価した。
・表面強度:鉛筆硬度(H(硬)、B(軟))により比較した。H以上を◎、BからHを○、B未満を×とした。
・バイオマス度:化粧シートを構成する材料のうち化粧シート全体に対してバイオマスプラスチックが占める重量比率を、各材質の厚みと比重より算出した。実施例1および実施例2のポリ乳酸樹脂およびポリブチレンサクシネート樹脂がバイオマスプラスチックの対象となる。その他の接着性樹脂およびポリプロピレン樹脂、ウレタン系コート剤などはバイオマス原料の対象とならない。
以下に結果を示す。
エンボス加工性 耐久性 表面強度 バイオマス度
実施例1 ◎ ○ ◎ ◎(90%)
実施例2 ○ ○ ○ ○(52%)
比較例1 × ○ ◎ △(37%)
比較例2 ◎ ○ ○ ×( 0%)
本発明の化粧シートの一実施例における積層断面図。 本発明の化粧シートの他の実施例における積層断面図。
符号の説明
1…熱可塑性樹脂シート基材
2…絵柄インキ層
3…透明熱可塑性樹脂層
4…表面保護層

Claims (1)

  1. 熱可塑性樹脂シート基材1の上に、絵柄インキ層2とアンカーコート層と接着性樹脂層とポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3と表面保護層4とがこの順に積層され、前記表面保護層4側から熱エンボス加工により該表面保護層4及び前記透明熱可塑性樹脂層3に凹凸の表面加飾が施されてなる化粧シートであって、前記熱可塑性樹脂シート基材1がポリプロピレン樹脂シートであり、前記ポリエステル系樹脂からなる透明熱可塑性樹脂層3がポリ乳酸樹脂80%とポリブチレンサクシネート樹脂20%の混合体からなり、かつ、前記熱可塑性樹脂シート基材1の軟化点(熱変形温度)が150℃で、前記透明熱可塑性樹脂層3の軟化点(熱変形温度)が100℃であることを特徴とする化粧シート。
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