JP4816833B2 - 化粧シート及び化粧シート付き基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品等の表面化粧に使用するための化粧シートに関するものである。更に詳しくは、平面上基材への貼付は勿論のこと、Vカット加工や凹凸基材へのラッピング、真空成形等の立体成形も可能であり、燃焼時に塩化水素ガス等の有害物質を発生しない環境に優しい化粧シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、消費者の嗜好の高度化・多様化によって、各種の複雑な立体形状の化粧部材に対する需要が高まっている。係る立体形状の化粧部材としては、例えば合板やパーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質系基材や、珪酸カルシウム板やスレート板、木毛セメント板等の無機質系基材、繊維強化プラスチック(FRP)等の合成樹脂系基材等の各種の基材の表面に、適宜の化粧シートを貼着して得た化粧板に、Vカット加工等の折り曲げ加工を施したものもある。また、表面に凹凸形状を有する柱状基材の表面に沿って、化粧シートを巻き付けつつ貼着するラッピング加工によるものもある。
【0003】
しかし、これらの手法による限り、製造可能な立体形状の範囲は、平面状に展開可能な形状に限定され、更に複雑な三次元立体形状には対応することができない。そこで、予め複雑な三次元立体形状に成形した各種の基材の表面に、熱可塑性樹脂製の化粧シートを、真空成形法(圧空成形法、真空圧空成形法を含む)により立体成形すると同時に貼着する手法も、既に広く採用されている。そして、近年の消費者の嗜好の更なる高度化・多様化によって、ますます複雑な三次元立体形状の化粧部材に対する需要が高まっており、これに伴って、より厳しい成形条件に耐える化粧シートの開発が、ますます強く要請される様になっている。
【0004】
ところで、従来、一般的な熱可塑性樹脂製の化粧シートを構成する熱組成樹脂としては、安価で加工適性や各種物性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が最も多く使用されて来た。ところが、近年になって、環境問題に対する社会的な関心の高まりを受けて、燃焼時に塩化水素ガスやダイオキシン等の有害物質を発生するおそれのあるポリ塩化ビニル樹脂が敬遠される様になっており、環境への悪影響の少ない非塩素系の樹脂を使用した化粧シートが強く要請される様になっている。これを受けて、ポリ塩化ビニル樹脂の代替材料として、例えば熱可塑性オレフィン系樹脂を使用した化粧シートなどが既に開発され、実用化されている(特開平6−16832号公報等)。
【0005】
しかるに、熱可塑性オレフィン系樹脂として、例えば通常の汎用のポリプロピレン樹脂を使用した化粧シートは、柔軟性が不足する為に、折り曲げ加工や真空成形加工を行った際に、白化や亀裂、破断、ネッキング等を発生し易いという問題点があった。そこで、係る問題点を解決する目的で、ポリプロピレン等の樹脂に軟質モノマーとの共重合やエラストマー等の軟質成分の配合等の手段により柔軟性を付与した、所謂軟質オレフィン系樹脂を使用した化粧シートも、各種提案されている(特開平9−300554号公報、特開平9−328562号公報、特開平10−17679号公報等)。
【0006】
しかしながら、係る如く柔軟性を付与した軟質オレフィン系樹脂からなる化粧シートは、上記した問題点は確かに解決出来たものの、シートが本質的に柔軟であり、腰や耐熱性が低く、化学的にも弱い為に、基材への貼着時のシワや、基材表面の不陸を拾う為の外観不良、真空成形時の加熱によりシートが軟化し過ぎる為のドローダウンや成形ムラ等の外観不良等が発生し易く、表面硬度や耐磨耗性、耐溶剤性等の各種表面物性にも劣る等の問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記の様な問題点を解決する目的でなされたものであって、真空成形適性に優れると共に、表面硬度や耐磨耗性、耐溶剤性等の各種表面物性にも優れた化粧シートを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ガラス転移温度が60℃以上85℃以下であり、冷結晶化温度が120℃以上で、引張弾性率が100kgf/mm 2 以上300kgf/mm 2 以下であり、厚みが50〜150μmの範囲の非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シート上に、厚みが50〜150μmの範囲の熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層を有することを特徴とする化粧シートである。
また、本発明は、三次元立体形状を有する基材の表面に、ガラス転移温度が60℃以上85℃以下であり、冷結晶化温度が120℃以上で、引張弾性率が100kgf/mm 2 以上300kgf/mm 2 以下であり、厚みが50〜150μmの範囲の非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シート上に、厚みが50〜150μmの範囲の熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層を有する化粧シートを三次元成形ラミネートしたことを特徴とする化粧シート付き基材である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【0011】
本発明の化粧シートは、図1に示す様に、非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シート1上に、熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層2が積層されて構成されるものである。なお、基材シート1と透明樹脂層2との層間には、木目等の所望の絵柄による意匠性の付与の為の絵柄層3が設けられるのが通例である。
【0012】
基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂の種類には特に制限はないが、代表的なものは通称A−PETシートとして市販されているもので、これは汎用の熱可塑性ポリエステル系樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂を結晶化させない成形条件でシート状に押出成形したものである。
【0013】
具体的には例えば、帝人株式会社製「テイジンテトロンシート(A−PET)」、東洋紡績株式会社製「東洋紡PETMAXシートAシリーズ」、鐘紡株式会社製「カネボウA−PETシート」等として市販されているものを挙げることができる。これらは、例えば透明容器等の用途に既に広く使用されている。
【0014】
非晶質ポリエステル樹脂としては、上記の如く成形条件によるものの他、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の汎用の熱可塑性ポリエステル樹脂を基本骨格としつつ、結晶化を抑制するための各種の共重合成分を使用した共重合ポリエステル樹脂を使用することもできる。
【0015】
これには例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルと、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールとの縮合重合反応において、ジカルボン酸成分として例えばセバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の長鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環族ジカルボン酸を導入したり、及び/又は、ジオール成分としてポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の両末端に水酸基を有するポリエーテル系ジオールを導入したもの等がある。具体的には例えばイーストマンコダック社製「Spectar」等として市販されている。
【0016】
本発明においては上記の他、各種の非晶質ポリエステル系樹脂から選ばれる任意の樹脂からなるシートを、基材シートとして使用することができる。勿論、同種又は異種の非晶質ポリエステル系樹脂からなる複数層の積層体であってもよい。
【0017】
非晶質ポリエステル系樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂を使用していないことによって、焼却処分を行っても塩化水素ガスやダイオキシン等の有害化学物質を発生する危険性が極めて少ない他、ポリ塩化ビニル樹脂よりも高融点であるので耐熱性(加熱時の耐破断性)に優れ、また耐溶剤性の面でも優れるので、印刷インキや接着剤等の選択範囲が広い。また、ポリオレフィン系樹脂との比較では、非晶質ポリエステル系樹脂は結晶相と非結晶相との海島構造が存在しないことにより、極めて均一な成形性が得られ、ネッキングや絵柄歪、白化等の成形不良を発生することがない。
【0018】
基材シート1の厚みには特に制限はなく、従来の化粧シートの基材シートと同様の厚さのものを使用することができる。但し、あまり薄過ぎると真空成形時に破断し易く、一方あまり厚過ぎても成形性に劣る他、不経済でもあるので、一般的には20〜200μm程度の範囲内とするのが良い。中でも50〜150μm程度の範囲が最も推奨される。
【0019】
なお、従来より用いられている一般的な化粧材用の真空成形機の成形条件に適合させる為には、基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が60℃以上85℃以下であり、且つ、冷結晶化温度(Tc)が120℃以上である樹脂を採用することが望ましい。
【0020】
ガラス転移温度が85℃を越えると、真空成形時の加熱温度を通常より高く設定する必要があり、熱エネルギー効率や成形サイクル時間の面で不利である他、樹脂が硬くなるので成形性の面でも不利である。一方、60℃を下回ると、シートが耐熱性に劣る為にドローダウン等の成形不良が発生し易い他、製造された化粧材の耐熱性や耐久性の面でも不利である。また、冷結晶化温度が120℃に満たないと、真空成形時の加熱により樹脂の結晶化が進行して樹脂が柔軟性を失い成形性が低下する他、結晶相と非結晶相との海島構造が出現し、両者の変形特性差に起因するネッキングや絵柄歪、両者の屈折率差による白化等、成形不良が発生し易くなるからである。
【0021】
ガラス転移温度や冷結晶化温度は、樹脂の組成や分子量による他、樹脂のシート成形時の成形条件にもよるので、市販の各種の非晶質ポリエステル系樹脂シートの中から真空成形条件に適合したものを適宜選択するか、又は適合する範囲となる様にシートの成形条件を設定すれば良い。
【0022】
その他、基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂の物性としては、引張弾性率が100kgf/mm2以上300kgf/mm2以下であることが望ましい。引張弾性率が100kgf/mm2未満であると、樹脂が柔軟過ぎて傷付き易く腰も弱く、ラミネート時のシワや傷、ドローダウンや、基材の表面の不陸を拾う為の成形不良等の原因となり易く、一方、300kgf/mm2を越えると、樹脂の柔軟性が不十分である為に加工適性に劣り、基材の表面の三次元立体形状に完全に追従できない為の成形不良や割れ、白化、成形後に残留する応力による経時剥離等の原因となり易いからである。
【0023】
基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂には、必要に応じて例えば着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種の添加剤の一種以上を添加することもできる。
【0024】
特に、目的とする化粧シートに被貼着基材の表面に対する隠蔽性が要求される場合には、基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂に着色剤を添加して着色し、隠蔽性とすることが望ましい。着色剤としては、例えば有機又は無機の染料又は顔料が挙げられるが、隠蔽力の観点からは無機顔料を少なくとも使用することが望ましい。
【0025】
具体的には、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛等の白色無機顔料や、酸化鉄(弁柄、黄色酸化鉄、鉄黒)、酸化クロム、コバルトブルー、カーボンブラック等の有色無機顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料等を挙げることができる。勿論、色彩調整を目的として、例えばフタロシアニン系顔料等の耐候性に優れた有機顔料を併用することは差し支えない。また、必要に応じて、例えば酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料を併用することもできる。
【0026】
その他の添加剤として、酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪族アミド系、高級アルコール系、パラフィン系、シリコーン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石、蝋石、カオリン等から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用される。
【0027】
透明樹脂層2は、化粧シートの表面に表面硬度や耐磨耗性、耐溶剤性等の各種表面物性を付与する目的で設けられるものであって、本発明の化粧シートではこれを熱可塑性オレフィン系樹脂から構成する。なお、本発明の化粧シートにおいて、透明樹脂層2の「透明」とは、必ずしも無色透明に限定されるものではなく、半透明や着色透明をも包含する。
【0028】
透明樹脂層2を構成する熱可塑性オレフィン系樹脂の種類には特に制限はなく、例えば従来より化粧シートの構成材料として使用されている任意の熱可塑性オレフィン系樹脂を使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン−1樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂等を始めとする種々の単独重合体や、エチレン−αオレフィン共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等のオレフィン系共重合体樹脂などを挙げることができる。
【0029】
中でも本発明の目的に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわちポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1、のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−αオレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられているエチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等の改質剤を添加することもできる。
【0030】
勿論、透明樹脂層2を構成する熱可塑性オレフィン系樹脂の種類はこれらに限定されるものではない。また、同種又は異種の熱可塑性オレフィン系樹脂からなる複数層の積層体であっても良い。
【0031】
また、前記熱可塑性オレフィン系樹脂には、目的の化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。これらの添加剤として具体的には、例えば既に基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂に添加すべき添加剤として例示したもの等を使用することができる。
【0032】
熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層2の厚さには特に制限はなく、例えば従来の一般の複層型の化粧シートにおける透明樹脂層の厚さと同等とすることができる。一般に、厚い程耐磨耗性や耐溶剤性等の表面物性や耐候性、塗装感や深み感、エンボス深さ等の意匠性の面などで有利であるが、反面化粧シートとしての柔軟性や可撓性、真空成形時の基材表面の三次元立体形状への追従性等の面で不利となるので、両者のバランスの取れる厚み範囲が選ばれる。具体的には、化粧シートの用途やそれに応じた要求品質、使用する熱可塑性オレフィン系樹脂の種類等にもよるが、一般に20〜200μm程度の範囲から選ばれ、特に好ましい範囲は50〜150μm程度である。
【0033】
上記透明樹脂層2の形成方法には特に制限はなく、従来公知の任意の方法を適宜採用することができる。具体的には例えば、予めフィルム状乃至シート状に成形された透明樹脂層2をドライラミネート接着剤、感熱接着剤又は電離放射線硬化型接着剤等の適宜の接着剤を介して接着する方法や、或いは接着剤を介さずに熱圧着、高周波溶着又は超音波溶着等の手段によって直接接着する方法、透明樹脂層2を形成すべき熱可塑性オレフィン系樹脂を加熱溶融しフィルム乃至シート状に押し出し成形すると同時に基材シート1の表面上に積層し接着させる方法等、従来公知の各種の方法の中から、樹脂の特性に合致した方法を適宜選択して採用することができる。
【0034】
なお、後者の方法(押し出しラミネート法)において、基材シート1と透明樹脂層2との接着性が劣る場合には、これも公知の様に、基材シート1上に予め感熱接着性のアンカー層5を設けておくか、及び/又は、透明樹脂層2の構成樹脂と別途容易した熱接着性樹脂とを共押し出しラミネートして、基材シート1と透明樹脂層2との間に接着性樹脂層6を挟持させることによって、接着性の向上を図ることもできる。
【0035】
上記とは逆に、予めシート状に成形されている透明樹脂層2の裏面に、非晶質ポリエステル系樹脂をシート状に押し出しラミネートすることにより、基材シート1を成形すると同時に透明樹脂層2と積層することも、勿論可能である。
【0036】
本発明の化粧シートは、上記した非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シート1と、熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層2との他、基材シート1の裏面及び/又は基材シート1と透明樹脂層2との層間に、適宜の熱可塑性樹脂からなる裏面層及び/又は中間層を具備していても良い。
【0037】
本発明の化粧シートには、前述した様に、木目等の所望の絵柄による意匠性を付与する目的で、絵柄層3が設けられるのが通例である。絵柄層3の位置は、要するに化粧シートの表面から透視可能であれば良いのであって、透明樹脂層2の表面、基材シート1と透明樹脂層2との層間、或いは、基材シート1が透明である場合には基材シート1の裏面であっても良く、これらの複数箇所に同一又は異なる絵柄層3を設けても良い。しかし一般的には、表面及び裏面からの絵柄層の保護の目的で、絵柄層3は基材シート1と透明樹脂層2との層間に設けられるのが通例である。なお、この場合、図1に示す例では、絵柄層は基材シート1の表面側の面上に設けられているが、透明樹脂層2の裏面側の面上に設けることもできる。
【0038】
絵柄層3の絵柄の種類には特に制限はなく、例えば従来より係る化粧シートの分野において広く採用されている木目柄を始め、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等、或いは単なる着色乃至色彩調整を目的とする場合には単色無地であっても良く、要するに、目的の化粧シートの用途に応じて任意の所望の絵柄を採用することができる。
【0039】
絵柄層3の構成材料や形成方法には特に制限はなく、従来より係る化粧シートの絵柄層に適用されて来た任意の画像形成材料や画像形成方法を適宜採用することができる。具体的には例えば、染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又はコーティング剤等を使用することができる。但し、三次元立体形状への真空成形に追従可能な柔軟性を有する材料を選択する必要がある。
【0040】
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
【0041】
また、前記結着剤樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの2種以上の混合物等を使用することができる。
【0042】
また、前記溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤等の各種有機溶剤や、水等の無機溶剤、又はそれらの2種以上の混合物等を使用することができる。
【0043】
その他、必要に応じて例えば体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着賦与剤、接着助剤、乾燥剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種の添加剤を適宜添加することもできる。
【0044】
絵柄層3の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には上記した各種の印刷方法の他、例えばロールコート法やナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種のコーティング方法によることもできる。その他、例えば手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、またはこれらの各種の方法から選ばれる2種以上を適宜組み合わせて行うことも勿論可能である。
【0045】
なお、絵柄層3の形成に先立ち、必要に応じて、基材シート1又は透明樹脂層2の被印刷面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、基材シート1又は透明樹脂層2と絵柄層3との密着性を向上することもできる。
【0046】
また、目的とする化粧シートが隠蔽性を必要とする場合、基材シート1が透明であるか又は基材シート1の隠蔽性が不足している時には、絵柄層3と併せて隠蔽層4を設けることもできる(図2)。隠蔽層4の形成材料や形成方法は、上記した絵柄層3の場合に準ずるが、良好な隠蔽性を得る為には、酸化チタン系顔料又は酸化鉄系顔料等の隠蔽性の無機顔料を少なくとも使用することが好ましい。また、適宜の色彩に着色することにより、絵柄層3の背景色としての機能を兼ねさせることもできる。なお、隠蔽層4の形成位置は、絵柄層3よりも裏面側であれば良く、基材シート1の表面側であっても裏面側であっても良い。
【0047】
透明樹脂層2の表面には、従来公知の如く、必要に応じて所望の適宜の模様のエンボス7を設けることもできる。エンボス7の種類にも特に制限はなく、例えば木目調(特に導管模様状)、石目調、布目調、和紙調、幾何学模様状等の各種模様状であっても良いし、或いは例えば砂目調等の艶消状や、ヘアライン状、スウェード調等であっても良い。また、これらのエンボス7の模様を絵柄層3の絵柄と同調させることによって更なる意匠性の向上を図ることもできるが、その必要がなければ非同調であっても良く、また絵柄層3の絵柄と同調した模様と同調しない模様との両者を含む模様のエンボス7を設けることもできる。
【0048】
エンボス7の形成方法にも特に制限はないが、金属製のエンボス版を使用した機械エンボス法が最も一般的である。またエンボス7の形成時期にも特に制限はなく、透明樹脂層2の基材シート1との積層前、積層と同時又は積層後の中から任意の時期を選択することができる。また、これらの中から選ばれる複数の時期に同一又は異なる模様のエンボス7を複数回に亘って施すこともできる。なお、エンボス7の凹陥部には、必要に応じてワイピング法等の手法により着色剤8を充填しても良く、これによって表面の凹凸模様と同調した色彩模様を有する意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。
【0049】
また、化粧シートの表面に更に優れた表面物性を付与する目的で、透明樹脂層2の表面にトップコート層9を設けることもできる。トップコート層9の構成材料としては、従来より係る化粧シートのトップコート層の構成材料として使用されている公知の各種のトップコート剤の中から選ばれる任意のものを使用することができる。一般的には、少なくとも下地を透視可能な透明性を有する必要がある他、化粧シートの用途により要求される耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を具備させるべく、硬化性樹脂を主成分とする材料から構成することが好ましい。
【0050】
上記トップコート層9の構成材料として具体的には、例えばメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、好適に使用することができる。また必要に応じて、例えば艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、結露防止剤、抗菌剤、防黴剤等の各種添加剤を適宜添加することもできる。
【0051】
トップコート層9の形成方法にも特に制限はなく、例えばグラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法等の従来公知の任意のコーティング法を適宜適用することができる。
【0052】
なお、透明樹脂層2とトップコート層9との密着性が不十分である場合には、トップコート層9の塗工形成に先立ち、透明樹脂層2の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、透明樹脂層2とトップコート層9との間の密着性を向上することができる。
【0053】
本発明の化粧シートは、既に説明した様に、従来の化粧シートと同様、木質系基材や無機質系基材等の各種の基材の表面に貼着(ラミネート)して使用するものであり、一般的には該貼着の際に例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用される。しかし、係る接着剤の種類によっては、基材シート1を構成する非晶質ポリエステル系樹脂との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、基材シート1の裏面に、汎用のラミネート用接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層10を設けておくことが望ましい。
【0054】
プライマー層10としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から基材シート1に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層9に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層9の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できる他、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
【0055】
【実施例】
以下に本発明の化粧シートの具体的な実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0056】
実施例1
厚さ100μmの非晶質ポリエステル系着色フィルムを基材シートとして、その表面に建材用ウレタン系グラビア印刷インキにて木目柄を印刷し、該印刷面上に、厚さ20μmのエチレン−エチルアクリレート系接着性樹脂層と、光安定剤0.2重量%及び紫外線吸収剤0.3重量%を添加した厚さ120μmのランダム重合ポリプロピレン樹脂層とを、共押し出しラミネート法にて順次積層して透明樹脂層を形成し、最後に該透明樹脂層の表面に2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビア塗工法にて乾燥後の塗布量4g/m2に形成してトップコート層を形成し、本発明の化粧シートを作製した。
【0057】
得られた化粧シートを、予め表面に水性2液ウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の塗布量10g/m2に塗工して乾燥させた、曲率半径5Rの三次元立体形状を有する木質基材の表面に、真空成形機にてシート温度60℃の条件で三次元成形ラミネートしたところ、ネッキング、白化、柄伸び等の成形不良のない良好なラミネート製品を得ることができた。また、表面硬度や耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性も、実用上全く支障のないものであった。
【0058】
実施例2
厚さ100μmの非晶質ポリエステル系透明フィルムを基材シートとしてその表面に、まず隠蔽性の無機顔料(酸化チタン系及び酸化鉄系)を主体とした顔料組成物を含有するウレタン樹脂系インキにてグラビア印刷法により隠蔽層を印刷形成し、次に建材用ウレタン系グラビア印刷インキにて木目柄を印刷し、該印刷面上に、2液ウレタン樹脂系接着剤を介して、光安定剤0.2重量%及び紫外線吸収剤0.3重量%を含有する厚さ120μmのランダム重合ポリプロピレン樹脂透明フィルムをドライラミネートして透明樹脂層を形成し、最後に該透明樹脂層の表面に2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビア塗工法にて乾燥後の塗布量4g/m2に形成してトップコート層を形成し、本発明の化粧シートを作製した。
【0059】
得られた化粧シートを、予め表面に水性2液ウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の塗布量10g/m2に塗工して乾燥させた、曲率半径5Rの三次元立体形状を有する木質基材の表面に、真空成形機にてシート温度60℃の条件で三次元成形ラミネートしたところ、ネッキング、白化、柄伸び等の成形不良のない良好なラミネート製品を得ることができた。また、表面硬度や耐擦傷性、耐溶剤性等の表面物性も、実用上全く支障のないものであった。
【0060】
【発明の効果】
以上詳述の如く、本発明の化粧シートは、非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シートを具備することにより、真空成形時にネッキングや白化、柄伸び等の成形不良を発生することなく均一に成形可能であり、しかも、その表面に熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層を具備することにより、表面硬度、耐擦傷性、耐磨耗性、耐溶剤性等の各種表面物性にも優れた化粧シートを、容易に実現することができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【図2】本発明の化粧シートの実施の形態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 基材シート
2 透明樹脂層
3 絵柄層
4 隠蔽層
5 アンカー層
6 接着性樹脂層
7 エンボス
8 着色剤
9 トップコート層
10 プライマー層
Claims (2)
- ガラス転移温度が60℃以上85℃以下であり、冷結晶化温度が120℃以上で、引張弾性率が100kgf/mm 2 以上300kgf/mm 2 以下であり、厚みが50〜150μmの範囲の非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シート上に、厚みが50〜150μmの範囲の熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層を有することを特徴とする化粧シート。
- 三次元立体形状を有する基材の表面に、ガラス転移温度が60℃以上85℃以下であり、冷結晶化温度が120℃以上で、引張弾性率が100kgf/mm 2 以上300kgf/mm 2 以下であり、厚みが50〜150μmの範囲の非晶質ポリエステル系樹脂からなる基材シート上に、厚みが50〜150μmの範囲の熱可塑性オレフィン系樹脂からなる透明樹脂層を有する化粧シートを三次元成形ラミネートしたことを特徴とする化粧シート付き基材。
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