JP5028235B2 - 炭酸エチレンの回収方法 - Google Patents

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本発明は、使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤から炭酸エチレンを回収する方法に係わり、特に、半導体、プリント基板、液晶などの電子部品の製造工程で使用されるフォトレジスト材料の洗浄に用いられた使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤から炭酸エチレンを回収する方法に関する。
半導体、プリント基板、液晶などの電子部品の製造工程においては、フォトレジスト材料により基板上に被膜が塗布され、マスクを用いた露光の後、未硬化部分が洗浄剤により洗浄除去され、この後エッチング処理等が行われる。
フォトレジスト材料の塗布工程で使用されるカップの洗浄は、従来、アセトン、メチルエチルケトン、キシレン等の有機溶剤が使用され、レジストが溶解した使用済み洗浄剤は、そのまま廃棄物として処理されていた。このような有機溶媒からなる洗浄剤は臭気、毒性があり、消防法による危険物に該当し再利用が困難であった。
近時、炭酸エチレンがフォトレジスト材料等の有機物の良溶媒で、凝固点が36.4℃で再結晶による精製が容易で、しかも低引火性(沸点246℃、引火点152℃)で、環境負荷も小さいことから、炭酸エチレンを主成分とするフォトレジスト用の洗浄剤が用いられるようになってきている。
また、最近、使用済みの炭酸エチレンからなる洗浄剤をオゾンと接触させて、炭酸エチレン中の不純物を酸化分解する方法が提案され、フォトレジスト皮膜を洗浄した洗浄剤をオゾンと接触させる工程を繰返すことにより、同一の洗浄剤により多数回にわたりフォトレジストの洗浄を行うことを可能にした技術も開発されている(例えば特許文献1)。
特開2003−330206 特開2005−144351 特開2006−150291 特開2006−278685
ところで、使用済みの炭酸エチレンからなる洗浄剤をオゾン処理すると、溶解しているフォトレジスト成分は酸化分解して二酸化炭素と水に分解されるが同時に少量のギ酸や酢酸のような有機酸を副成し洗浄を繰返すと洗浄剤がこれらの酸により刺激臭を発して、作業環境を悪化させるという問題が起きている。また、同一洗浄剤でフォトレジストの洗浄を繰返すとフォトレジスト中に微量存在する金属分が洗浄剤中に蓄積し基板の電気特性に悪影響を与える懸念もある。
このため、フォトレジスト塗布工程で使用されるカップの洗浄に使用する炭酸エチレンからなる洗浄剤は、洗浄の都度オゾンによる酸化処理を施しても、フォトレジストの洗浄を70〜150回(カップ)程度繰返したところで、産業廃棄物として廃棄しているのが実情である(洗浄対象、洗浄装置等については特許文献2〜4等)。
炭酸エチレンは、融点以上の温度で水と任意の割合で溶解するため、炭酸エチレンの融点以上の温度で水溶液を作り、炭酸エチレンの凝固点より低い温度にまで冷却し炭酸エチレンを凝固させつつ不純物を水相側に移して凝固した炭酸エチレンを分離回収することも考えられる。
しかし、炭酸エチレンは、図1に示すように、水に対する溶解度が高いため、一般の再結晶法では、水相中に相当量の炭酸エチレンが溶解して回収率が低くなる上に、水相側が元の使用済み洗浄剤よりも多くなってしまうため、産業廃棄物としての処理対象がかえって増えてしまうという問題がある。
さらに、このような方法で回収した炭酸エチレンは、市販のものよりも水の含有量が多くなり、品質面でも十分なものとはいえないという問題もあった。
本発明者らは、産業廃棄物として廃棄の対象となっている使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤から、産業廃棄物の排出量を増やすことなく、良品質の炭酸エチレンを回収すべく鋭意研究を進めたところ、使用済み洗浄剤に炭酸エチレンの融点以上の温度で少量の水を添加し再結晶させたところ、炭酸エチレンの凝固過程で不純物と含有水分が液相側に移行し、液相の部分を分離除去することにより、良品質の炭酸エチレンを回収することができ、さらに、この操作を繰返すことにより、より純度の高い炭酸エチレンを回収し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、本発明の炭酸エチレンの回収方法は、使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤に、前記炭酸エチレンに対して2〜25重量%、好ましくは5〜15重量%となる量の水を加えて、前記炭酸エチレンの融点以上の温度で攪拌する不純物抽出工程と、前記不純物抽出工程を経た前記洗浄剤を、炭酸エチレンの融点以上の温度から、炭酸エチレンの融点より低く水の氷点より高い温度まで冷却して前記洗浄剤中の炭酸エチレンを凝固させる炭酸エチレン凝固工程と、前記炭酸エチレン凝固工程を経た前記洗浄剤から液相部分を分離除去して凝固した炭酸エチレンを回収する炭酸エチレン回収工程とを有することを特徴とする。
本発明における炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤は、基本的には、含水率0.7%以下の実質的に炭酸エチレンのみからなる洗浄剤であり、炭酸エチレンの融点以上の温度にまで加熱して液状にして使用される。また必要に応じて、洗浄剤に通常配合される、例えば界面活性剤のような添加剤を少量含む洗浄剤も本発明の対象となる。
また、本発明の対象となる使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤としては、フォトリソグラフィーにおけるフォトレジストの剥離工程で排出される炭酸エチレンの廃棄物、フォトレジストの塗布工程でフォトレジストで汚染された塗装装置(カップ等)の洗浄廃液、その他炭酸エチレンに溶解する汚染物の付着した部材の洗浄に使用された洗浄剤等が挙げられる。
本発明においては、まず、使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤を、例えば、下部に開閉可能な排液口を有する適当な容器に収容し、37〜85℃、好ましくは40〜70℃に加熱して液状にし、この中に、2〜25重量%、好ましくは5〜15重量%となる量の水を添加して攪拌(振動を含む)し均一にする。なお、凝固状態の洗浄剤に、2〜25重量%、好ましくは5〜15重量%となる量の水を添加してから、あるいは添加しながら、上記温度まで昇温させて攪拌し均一にする方法を採ってもよい。
使用済みの前記洗浄剤に添加する水は、1.0MΩ・cm以上の純度の純水が適しているが、回収する炭酸エチレンに要求される純度によっては、市水や井戸水を使用することも可能である。
炭酸エチレンと水の蒸気圧曲線の相違から炭酸エチレンより水の方が蒸発し易いので、攪拌を長時間行う場合には、水の蒸発を見込んで、最終的に液相を分離除去する直前に上記割合となるように水を添加し攪拌、均一化してもよい。
溶融した使用済みの洗浄剤の攪拌時間は、一回の処理量、攪拌装置の種類によって相違するが、ミキサーを用いて攪拌する場合には、通常1〜20分間程度で十分である。
この攪拌操作により、使用済みの洗浄剤に含まれていた不純物は、水を加えた使用済み洗浄剤の融液中に均一に分散される。
次に、水を加えた液相の使用済み洗浄剤を、炭酸エチレンの凝固点である36.4℃より低い温度にまで冷却して、炭酸エチレン相を固化しつつ水相と相分離させる。
この炭酸エチレン凝固工程において、炭酸エチレンは、不純物を液相中に残して結晶化し高い純度の固体の炭酸エチレンとなる。
回収される炭酸エチレンの純度を高くするには、結晶化の速度を小さくする必要があり、このためには、洗浄剤の融液の冷却速度を、1.0℃/分以下となるようにし、常温又は5〜30℃の温度で1〜30時間、好ましくは2〜5時間程度静置して炭酸エチレンの結晶を析出させるようにする。
しかる後、排液口を開いて、結晶間の空隙部分に存在する不純物を含む液相部分を5〜
40時間、好ましくは8〜20時間要して分離し排出させる。
液相部分を分離除去する際の温度は、5〜34℃、好ましくは20〜32℃の範囲が適当である。
なお、排出される液相に含まれる炭酸エチレンの濃度は、ほぼそのときの温度の飽和濃度に近いものになるので、回収率を高くするには、水の氷点以上の範囲で、できるだけ低温である方が有利である。しかし、純度の高い炭酸エチレンを回収するには、むしろ炭酸エチレンの回収率を低くする方が有利である。
したがって、液相部分を排出する温度は目的に応じて適宜設定することが望ましい。
本発明においては、このようにして回収した炭酸エチレンに、再び同じ操作を繰返すことにより、回収される炭酸エチレンの純度をさらに高めることができる。
この場合、添加する水の量、冷却速度、最終の液相部分の分離排出温度等の条件は、最初の炭酸エチレンの回収時の条件と同じである必要はなく、目的に応じて、適宜、変えることができる。
本発明によれば、産業廃棄物として廃棄対象とされた使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤の中から、最終的な産業廃棄物としての排出量を増加させることなく、簡単な操作で、含水率の低い、純度の高い炭酸エチレンを回収することができる。
次に本発明の実施例について説明する。
[実施例1〜3]
ユーザーから回収された使用済みの炭酸エチレンからなる洗浄剤(フォトレジスト塗布工程でレジストが付着したカップをオゾンによる酸化処理を施しながら70回(カップ)繰返し洗浄を行った使用済みの炭酸エチレンからなる洗浄剤)の凝固物16kgを蓋付きのポリエチレン容器にとり、40℃の温水浴で3時間加温して溶融させた。
次に、溶融した上記洗浄剤を4個の容量5Lの蓋付きのポリエチレン容器に4kgずつ分取し、抵抗率10MΩ/cmの純水を、第1の容器には5重量%となる量(実施例1)、第2の容器には10重量%となる量(実施例2)、第3の容器には15重量%となる量(実施例3)をそれぞれ添加し、第4の容器には純水を添加せずに(比較例1)、10℃の冷水浴中に入れて約5時間かけて冷却し炭酸エチレンを結晶化させた(15℃までの冷却速度約0.1℃/分)。
しかる後、各試料容器を口を斜め下となるよう傾けて(元の直立1から110〜130°回転)、周囲温度25〜28℃で24時間保持して液相部分を分離除去した。
次に、容器中に残留した炭酸エチレン結晶について、回収率と特性を測定した。
測定結果を表1に示す。なお、表中、比較例2は使用済み炭酸エチレン、比較例3は未使用の炭酸エチレンの特性である。
[実施例4]
実施例1(純水5重量%となる量添加)で回収された炭酸エチレンの1kgを、実施例1と同じ方法で溶融し、抵抗率10MΩ/cmの純水を、5重量%添加し、実施例1と同じ方法で、攪拌し、10℃の冷水浴中に入れて約5時間かけて冷却し、炭酸エチレンを結晶化させた。
しかる後、実施例1と同じ方法により液相部分を分離除去して炭酸エチレンを回収した。回収された炭酸エチレンの回収率と特性を表1に示す。
Figure 0005028235
炭酸エチレンの温度による水に対する溶解度の変化を示す図。

Claims (9)

  1. 使用済みの炭酸エチレンを主成分とする洗浄剤に、前記炭酸エチレンに対して2〜25重量%となる量の水を加え、炭酸エチレンの融点以上の温度で攪拌する不純物抽出工程と、
    前記不純物抽出工程を経た前記洗浄剤を、前記炭酸エチレンの融点以上の温度から、炭酸エチレンの融点より低く水の氷点より高い温度まで冷却して前記洗浄剤中の炭酸エチレンを凝固させる炭酸エチレン凝固工程と、
    前記炭酸エチレン凝固工程を経た前記洗浄剤から液相部分を分離除去して凝固した炭酸エチレンを回収する炭酸エチレン回収工程と
    を有することを特徴とする炭酸エチレンの回収方法。
  2. 前記水は、溶融状態の使用済みの前記洗浄剤に添加されることを特徴とする請求項1記載の炭酸エチレンの回収方法。
  3. 前記水は、抵抗率が1.0MΩ/cm以上の純水であることを特徴とする請求項1又は2記載の炭酸エチレンの回収方法。
  4. 前記不純物抽出工程において、使用済みの前記洗浄剤は、37〜85℃に加温されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の炭酸エチレンの回収方法。
  5. 前記炭酸エチレン凝固工程における炭酸エチレンの冷却速度は、1.0℃/分以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の炭酸エチレンの回収方法。
  6. 前記炭酸エチレン凝固工程を経た前記洗浄剤から液相部分を分離除去する際の温度は、5〜34℃であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の炭酸エチレンの回収方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項記載の炭酸エチレンの回収方法により回収された炭酸エチレンを融点以上の温度に加熱して溶融させるとともに前記炭酸エチレンに対して2〜25重量%となる量の水を添加して攪拌する不純物抽出工程と、
    前記不純物抽出工程を経た前記洗浄剤を、前記炭酸エチレンの融点以上の温度から、炭酸エチレンの融点より低く水の氷点より高い温度まで冷却して前記洗浄剤中の炭酸エチレンを凝固させる炭酸エチレン凝固工程と、
    前記炭酸エチレン凝固工程を経た前記洗浄剤から液相部分を分離除去して凝固した炭酸エチレンを回収する炭酸エチレン回収工程と
    を有することを特徴とする炭酸エチレンの回収方法。
  8. 前記水は、溶融した前記炭酸エチレンに添加されることを特徴とする請求項7記載の炭酸エチレンの回収方法。
  9. 前記水は、抵抗率が1.0MΩ/cm以上の純水であることを特徴とする請求項7又は8記載の炭酸エチレンの回収方法。
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