JP3972516B2 - プラスチック混合物の分別方法及びそのための分別溶媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂と、ポリスチレンやスチレン−アクリロニトリル−ブタジエン樹脂などのポリスチレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレートとを含む混合物から、ポリオレフィン樹脂と他の樹脂とを分別して回収する方法に関するものである。また本発明は、この分別回収に用いる溶媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレンで代表されるポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂は、いずれも汎用樹脂として大量に使用されている。これらの樹脂は自然界においては殆んど分解しないので、これらの樹脂を用いた製品がその本来の用途を終えて廃棄物として排出された際の処理が、大きな問題となっている。これらの廃棄樹脂の処理法として最も望ましいのは樹脂として再利用する方法であり、次善の方法は熱分解油化法、熱分解ガス化法、固形燃料化法などによりエネルギー源として活用する方法であると考えられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、いずれの方法で処理する場合でも、異なる種類の樹脂が混在していると、その処理が困難となる。従って本発明は、ポリオレフィン樹脂と他の樹脂とが混在している混合物から、ポリオレフィン樹脂を分別して回収する方法を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、窒素原子の3個の結合手にそれぞれ炭素原子が結合している水溶性アミド化合物及び水溶性ラクトン化合物よりなる群から選ばれた化合物を主成分とする溶媒、又はこの化合物と炭素数5〜8の水溶性グリコールエーテル系化合物を主成分とする溶媒を用いて、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートより成る群から選ばれた少なくとも1種の樹脂とポリオレフィン樹脂とを含む混合物を処理すると、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートはこの溶媒に溶解しポリオレフィン樹脂は溶解しないので、両者を分離することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で樹脂混合物からポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートを溶解除去するのに用いる溶媒の必須成分である、窒素原子の3個の結合手のそれぞれに炭素原子が結合している水溶性アミド化合物又は水溶性ラクトン化合物としては、通常は炭素数6以下のものが用いられる。例えば水溶性アミド化合物としては入手の容易なN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが用いられる。なかでもN−メチル−2−ピロリドンはポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートに対する溶解力が大きいので好ましい。また水溶性ラクトン化合物としては、同じく入手の容易なガンマ−ブチロラクトンを用いるのが好ましい。これらの化合物は所望ならばいくつかを併用してもよい。本発明ではこれらの水溶性アミド化合物又は水溶性ラクトン化合物のみからなる溶媒を用いることもできるが、所望ならばこれに他の溶媒を併用することもできる。併用する溶媒としては、これらの溶媒と相溶性があり、かつこれらの溶媒のポリスチレン等に対する溶解力を低下させないような溶媒を用いる。他の溶媒を併用する場合には、本発明で水溶性アミド化合物又は水溶性ラクトン化合物を用いる効果が十分に奏されるように、一般的には溶媒全体に占めるこれらの化合物が60重量%以上、特に80重量%以上となるようにするのが好ましい。
【0006】
併用する溶媒として好ましいものの一つは炭素数5〜8の水溶性グリコールエーテルである。そのいくつかを例示すると、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。これらは溶媒全体の10〜30重量%を占めるように用いるのが好ましい。これらのグリコールエーテルのなかには、エチレングリコールモノブチルエーテルやジエチレングリコールモノメチルエーテルのように単独でもポリスチレン系樹脂をよく溶解し、またポリエチレンテレフタレートも溶解するものもあり、一般にこれらの水溶性グリコールエーテルを併用するとポリスチレンに対する溶解力が向上する。なお、これらの水溶性グリコールエーテルを併用する場合でも、所望ならばこれに更に他の溶媒を少量併用してもよいが、その量は全溶媒中の20重量%以下、特に10重量%以下に止めるのが好ましい。
【0007】
本発明で用いる上述の溶媒は、常温でポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートに対して大きな溶解力を有しているが、ポリオレフィン樹脂に対しては溶解力を有していない。従ってこの溶媒にポリオレフィン樹脂とポリスチレン系樹脂やポリエチレンテレフタレート等との混合物を投入すると、ポリエチレン系樹脂等は溶解するが、ポリオレフィン樹脂は溶解せずに液面上に浮遊する。従って、この浮遊しているポリオレフィン樹脂を濾過その他の適宜の手段で回収することにより、ポリオレフィン樹脂とポリスチレン系樹脂やポリエチレンテレフタレートとを分離することができる。ポリオレフィン系樹脂を分離した後の樹脂が溶解している溶液からは適宜の手段でポリスチレン系樹脂やポリエチレンテレフタレートと溶媒とを分別回収し、溶媒は循環使用する。溶液から樹脂と溶媒とを分別回収する方法の一つは、溶液を加熱して溶媒を留出させて回収し、樹脂は蒸発残渣として回収する方法である。この場合には溶媒が変質しないように、加熱は減圧下に樹脂が溶融する限度で、できるだけ低い温度で行うのが好ましい。
【0008】
溶液から溶媒と樹脂とを分別回収する他の方法としては、溶液には溶解するが溶解している樹脂は溶解しない溶媒、すなわち樹脂の非溶媒を溶液に加えて溶解している樹脂を析出させて溶液から分離する方法がある。この方法によるときは、析出した樹脂を濾過その他の適宜の手段で回収したのち、溶液から樹脂の析出に用いた非溶媒を留去させることにより溶媒を回収することができる。非溶媒として最も好ましいのは水である。水は本発明で用いる溶媒と大きな沸点差があり、また回収した溶媒中には水が多少残存していても差支えないので、水と溶媒との蒸留分離は容易に行うことができる。
【0009】
本発明によりポリオレフィン樹脂とポリスチレン系樹脂又はポリエチレンテレフタレートとの混合物から両者を分別回収する一態様を図に基いて説明すると、1は本発明で用いる水溶性アミド化合物又は水溶性ラクトン化合物を必須成分とする溶媒が収容されている溶解槽であり、ここに樹脂混合物を投入してポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートを溶解させる。2は溶解を促進するための撹拌機である。なお、超音波などにより撹拌するのも好ましい。投入する樹脂は取扱いが容易なように適宜の大きさに裁断しておくのが好ましい。溶解槽1で溶解せずに液面に浮遊するポリオレフィン樹脂は、スクレーパーなど適宜の手段でコンベア3上に取出し、液切りしたのち更に水洗して再生樹脂とする。液切りで回収された溶液は溶解槽1に戻し、溶媒を含む洗浄廃水は導管5を経て廃水処理装置に送られる。所望ならば、この洗浄廃水から簡単な蒸留により溶媒を回収することができる。6は洗浄水の導管である。
【0010】
溶解槽1で生成した溶液は析出槽4に送られる。析出槽4には導管8を経て水が供給され、溶解していたポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートが析出する。析出槽4は撹拌機7で撹拌されている。析出した樹脂は適宜の手段でコンベア9上に取出し、液切りしたのち導管11から供給される水で更に水洗して再生樹脂とする。液切りで回収された溶液は蒸留塔10に供給し、溶媒を含んだ洗浄廃水は導管12を経て廃水処理装置に送られる。所望ならば樹脂の析出は多段階で行うようにしてもよい。
析出槽4で樹脂を析出させた後の溶液は蒸留塔10に供給され、水を塔頂から留出させ、脱水された溶媒を塔底から回収する。この溶媒は溶解槽1に循環される。
【0011】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜7、比較例21〜36
1000mlのビーカーに表−1の溶媒900mlを入れ、これに60×30×2mmの大きさの各樹脂のテストピースを投入し、室温で撹拌しながら溶解状況を観察した。結果を表−1に示す。なお、符号の意味は下記の通りである。
◎:30分以内に完全に溶解
○:1時間以内に完全に溶解
△:3時間以内に殆んどが溶解
×:24時間経過後でも全く変化なし
【0012】
比較例1〜20
1000mlのビーカーに表−2の溶媒900mlを入れ、これに60×30×2mmの大きさの各樹脂のテストピースを投入し、室温で撹拌しながら溶解状況を観察した。その結果、ポリエチレン及びポリプロピレンは24時間経過後でも全く変化が無かった。また、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂及びポリエチレンテレフタレートは、溶解はしたが24時間経過後でも完全には溶解せず、テストピースが部分的に残存していた。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
A:N−メチル−2−ピロリドン
B:N,N−ジメチルホルムアミド
C:N,N−ジエチルホルムアミド
D:N,N−ジメチルアセトアミド
E:γ−ブチロラクトン
F:エチレングリコールモノブチルエーテル
G:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
H:ジエチレングリコールジメチルエーテル
I:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
J:ジエチレングリコールジエチルエーテル
K:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
L:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
M:ジプロピレングリコールモノエチルエーテル
O:ジエチルエーテル
P:アセトン
Q:シクロヘキサン
R:ベンゼン
S:テトラヒドロフラン
T:メチルエチルケトン
U:エチレングリコールモノメチルエーテル
V:エチレングリコールジメチルエーテル
W:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
【0016】
実施例8
N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びジエチレングリコールジメチルエーテルを重量比で45:45:10となるように混合した溶液100mlに、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(=ABS)又はポリエチレンテレフタレート(=PET)を溶解させた。この溶液に水を添加して溶解している樹脂を析出させた。樹脂が析出しはじめた時の水の添加量及び水100mlを添加した時点での樹脂の析出量を表−3に示す。
【0017】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図は本発明方法により樹脂混合物を処理するプロセスの1例である。
【符号の説明】
1 溶解槽
2 撹拌機
3 コンベア
4 析出槽
5 洗浄廃水導管
6 洗浄水導管
7 撹拌機
8 給水管
9 コンベア
10 蒸留塔
11 洗浄水導管
12 洗浄廃水導管
Claims (2)
- 窒素原子の3個の結合手にそれぞれ炭素原子が結合している水溶性アミド化合物及び水溶性ラクトン化合物より成る群から選ばれた化合物と、炭素数5〜8の水溶性グリコールエーテル系化合物とを主成分とする、ポリスチレン系樹脂及びポリエチレンテレフタレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂とポリオレフィン樹脂とを含む混合物から前者を溶解して分離するための分別溶媒。
- 水溶性グリコールエーテル系化合物が、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びジプロピレングリコールモノエチルエーテルより成る群から選ばれたものであり、かつ水溶性アミド化合物及び水溶性ラクトン化合物より成る群から選ばれた化合物と水溶性グリコールエーテル系化合物との合計に占める水溶性グリコールエーテル系化合物の比率が10〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の分別溶媒。
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