JP5012043B2 - 液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
従来から、液滴吐出ヘッドの一例としてのインクジェット記録ヘッドの複数のノズルから選択的にインク滴を吐出し、記録用紙等の記録媒体に画像(文字を含む)等を記録するインクジェット記録装置(画像形成装置)は知られている。このようなインクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッドは、圧力室を構成する振動板を変位させることによって、その圧力室内に充填されているインクをノズルから吐出させるようになっており、振動板上には振動板を変位させるための圧電素子が形成されている。
このような圧電素子に対して、特許文献1〜3では、圧電素子の振動板側に形成された第一の電極を個別に圧電素子を駆動する集積回路と接続させ、第一の電極側に正電圧を印加する方法が採られている。
特開平10−193595号公報 特開2002−234158号公報 特開2006−6096号公報
本発明では、第一の電極を個別に集積回路と接続させる構成において、圧電素子の振動板側に形成された第一の電極を圧電素子を駆動する集積回路と個別に接続させる場合と比較して、第一の電極と集積回路を接続する配線の引き回し領域を十分に確保することができる液滴吐出ヘッド及びインクジェット記録装置を得ることを目的とする。
請求項1に記載の発明は、液滴吐出ヘッドにおいて、撓み変形可能な圧電体と、前記圧電体を挟む第一の電極と第二の電極とを有する圧電素子と、前記圧電素子の第一の電極側に配置された振動板と、前記圧電素子の第二の電極側に配置され前記圧電素子に電気信号を供給する第一の電気配線を備えた配線板と、前記振動板を間において、前記圧電素子の反対側に設けられた圧力室と、前記圧力室の液滴を吐出する吐出口と、前記配線板を間において、前記圧電素子と反対側に設けられた液体貯留室と、前記配線板に形成され、前記液体貯留室から前記圧力室に液体を供給するインク供給口と、を有し、前記第二の電極に形成された貫通孔を介して前記第一の電極と前記第一の電気配線を個別に接続したことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記貫通孔が前記圧電体を貫通していることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記貫通孔が前記圧電体を避けて形成されたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記配線板は、前記圧電素子を駆動させる集積回路を有し、前記集積回路と前記第一の電気配線との接続部と該接続部に近い側の前記配線板の外縁部との間に前記二の電極と接続された第二の電気配線が配設されたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記配線板は、前記圧電素子を駆動させる集積回路と前記第一の電気配線を電気的に接続する接続部材を有し、前記接続部材と前記第一の電気配線との接続部と該接続部に近い側の前記配線板の外縁部との間に前記二の電極と接続された第二の電気配線が配設されたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、各前記第二の電極は互いに電気的につながっており、共通配線として機能していることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧電素子の駆動領域以外の領域で前記第二の電極に金属膜が形成されたことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、インクジェット記録装置において、前記液滴がインクであり、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送された記録媒体にインクを吐出する請求項1〜の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドと、前記集積回路を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記第一の電極の電圧が前記第二の電極の電圧よりも大きくなるように制御することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、第一の電極を個別に集積回路と接続させる構成において、圧電素子の振動板側に形成された第一の電極を圧電素子を駆動する集積回路と個別に接続させる場合と比較して、第一の電極と集積回路とを接続するための第一の電気配線の引き回し領域を確保できる。
請求項2に記載の発明によれば、高密度に圧電素子を配置した場合でも、さらに第一の電気配線の引き回し領域を確保できる。
請求項3に記載の発明によれば、圧電素子を圧力室の周壁の内側に形成でき、圧電素子の変形効率を向上できる。
請求項4に記載の発明によれば、圧電素子を駆動する集積回路を配線板に配設した場合でも、第二の電極と接続された第二の電気配線の形成領域を確保できる。
請求項5に記載の発明によれば、集積回路と第一の電気配線を電気的に接続する接続部材を配線板に配設した場合でも、第二の電気配線の形成領域を確保できる。
請求項6に記載の発明によれば、高密度に圧電素子を配置した場合でも接地配線の領域を確保できる。
請求項7に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して第二の電気配線の低抵抗化を図ることができる。
請求項に記載の発明によれば、本発明を採用しない場合に比較してインクジェット記録装置の小型化が可能となる。
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。
まず、液滴吐出ヘッドを備えたインクジェット記録装置10を例に採って説明する。したがって、液体はインク110とし、液滴吐出ヘッドはインクジェット記録ヘッド32として説明をする。そして、記録媒体は記録用紙Pとして説明をする。
インクジェット記録装置10は、図1で示すように、記録用紙Pを送り出す用紙供給部12と、記録用紙Pの姿勢を制御するレジ調整部14と、インク滴を吐出して記録用紙Pに画像形成する記録ヘッド部16及び記録ヘッド部16のメンテナンスを行うメンテナンス部18を備える記録部20と、記録部20で画像形成された記録用紙Pを排出する排出部22とから基本的に構成されている。
用紙供給部12は、記録用紙Pが積層されてストックされているストッカー24と、ストッカー24から1枚ずつ取り出してレジ調整部14に搬送する搬送装置26とから構成されている。レジ調整部14は、ループ形成部28と、記録用紙Pの姿勢を制御するガイド部材29とを有しており、記録用紙Pは、この部分を通過することによって、そのコシを利用してスキューが矯正されるとともに、搬送タイミングが制御されて記録部20に供給される。そして、排出部22は、記録部20で画像が形成された記録用紙Pを、排紙ベルト23を介してトレイ25に収納する。
記録ヘッド部16とメンテナンス部18の間には、記録用紙Pが搬送される用紙搬送路27が構成されている(用紙搬送方向を矢印PFで示す)。用紙搬送路27は、スターホイール17と搬送ロール19とを有し、このスターホイール17と搬送ロール19とで記録用紙Pを挟持しつつ連続的に(停止することなく)搬送する。そして、この記録用紙Pに対して、記録ヘッド部16からインク滴が吐出され、記録用紙Pに画像が形成される。
以上のように、記録用紙Pの搬送手段は、搬送装置26、スターホイール17と搬送ロール19から構成されている。
メンテナンス部18は、インクジェット記録ユニット30に対して対向配置されるメンテナンス装置21を有しており、インクジェット記録ヘッド32に対するキャッピングや、ワイピング、更には、予備吐出や吸引等の処理を行う。
ここで、各インクジェット記録ヘッド32は制御装置(制御手段)21と接続されており、この制御装置21によって、画像データに基づいた駆動波形が出力され、インクジェット記録ヘッド32の駆動が制御される。
図2で示すように、各インクジェット記録ユニット30は、矢印PFで示す用紙搬送方向と直交する方向に配置された支持部材34を備えており、この支持部材34に複数のインクジェット記録ヘッド32が取り付けられている。インクジェット記録ヘッド32には、マトリックス状に複数のノズル56が形成されており、記録用紙Pの幅方向には、インクジェット記録ユニット30全体として一定のピッチでノズル56が並設されている。そして、用紙搬送路27を連続的に搬送される記録用紙Pに対し、ノズル56からインク滴を吐出することで、記録用紙P上に画像が記録される。なお、インクジェット記録ユニット30は、例えば、いわゆるフルカラーの画像を記録するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応して、少なくとも4つ配置されている。
図3で示すように、それぞれのインクジェット記録ユニット30のノズル56による印字領域幅は、このインクジェット記録装置10での画像記録が想定される記録用紙Pの用紙最大幅PWよりも長くされており、インクジェット記録ユニット30を紙幅方向に移動させることなく、記録用紙Pの全幅にわたる画像記録が可能とされている。つまり、このインクジェット記録ユニット30は、シングルパス印字が可能なFull Width Array(FWA)となっている。
ここで、印字領域幅とは、記録用紙Pの両端から印字しないマージンを引いた記録領域のうち最大のものが基本となるが、一般的には印字対象となる用紙最大幅PWよりも大きくとっている。これは、記録用紙Pが搬送方向に対して所定角度傾斜して(スキューして)搬送されるおそれがあるためと、縁無し印字の要望が高いためである。
以上のような構成のインクジェット記録装置10において、次にインクジェット記録ヘッド32について詳細に説明する。なお、図4はインクジェット記録ヘッド32の全体構成を示す概略平面図であり、図5は図4のX−X線断面図である。また、図7(A)は、図4の概略拡大図を示しており、図7(B)、(C)は(A)の断面図を示している。
(第1実施形態)
図4及び図5で示すように、このインクジェット記録ヘッド32には、天板部材40が配置されている。本実施形態では、天板部材40を構成するガラス製の天板(配線板)41は板状で、かつ配線を有しており、インクジェット記録ヘッド32全体の天板となっている。
天板部材40には、耐インク性を有する材料で構成されたプール室部材39が貼着されており、天板41との間に、所定の形状及び容積を有するインクプール室38が形成されている。プール室部材39には、インクタンク(図示省略)と繋がるインク供給ポート36が所定箇所に穿設されており、インク供給ポート36から注入されたインク110は、インクプール室38に貯留される。
また、天板部材40には、駆動IC(集積回路)60と、駆動IC60からの電気信号を供給するための金属配線(第一の電気配線)90が設けられており、駆動IC60の下面には、図6で示すように、複数のバンプ62がマトリックス状に所定高さ突設され、天板41上で、かつプール室部材39よりも外側の金属配線90に駆動IC60がフリップチップ実装される(駆動IC60のバンプ62が金属配線90の端子(接続部)90Aと接続される)。なお、駆動IC60の周囲は樹脂材58で封止されている。また、金属配線90は、樹脂保護膜92で被覆保護され、インク110による浸食が防止されるようになっている。
また、天板41には、後述する圧力室50と1対1で対応するインク供給用貫通口112が形成されており、その内部が第1インク供給路114Aとなっている。さらに、天板41には、圧力室50の周壁に対応する位置に、電気接続用貫通口42(後述する)が形成されている。
一方、流路基板としてのシリコン基板72には、インクプール室38から供給されたインク110が充填される圧力室50が形成されている。このシリコン基板72の下部には、SUSで形成された連通路基板120が接着剤122を介して接合されている。
この連通路基板120には、圧力室50と繋がる連通路124が形成されており、該連通路124は圧力室50よりも狭い空間となるようにしている。そして、連通路基板120の下面に、連通路124と繋がるノズル56が形成されたノズルプレート74が貼着されている。
また、シリコン基板72の表面には後述する圧電素子45が形成されている(圧電素子基板70とする)。該圧電素子基板70は振動板48を有し、この振動板48が圧力室50の1つの面を構成している。この振動板48は、Chemical Vapor Deposition(CVD)法で形成されたSiOx膜であり、少なくとも上下方向に弾性を有し、圧電素子45に電圧が印加されると、上下方向に撓み変形する(変位する)構成になっている。なお、振動板48は、Cr等の金属材料であっても差し支えはない。この振動板48の振動によって、圧力室50の容積を増減させて圧力波を発生させることで、連通路124を経て、ノズル56からインク滴が吐出されるようになっている。
圧電素子45は圧力室50毎に振動板48の上面に設けられており、圧電素子45を形成する過程では、シリコン基板72に形成された振動板48の上面にスパッタ法により、IrとTiとの積層膜(下部電極(第一の電極)52)を形成し、該積層膜の上面に、スパッタ法によりPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜(圧電体46)を形成して、さらにこのPZT膜の上面にIr膜(上部電極(第二の電極)54)を形成する。そして、上部電極54、圧電体46及び下部電極52をそれぞれパターニングして圧電素子45が形成される。
この圧電素子45の表面は、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80で被覆保護されている。低透水性絶縁膜(SiOx膜)80は、水分透過性が低くなる条件で着膜するため、水分が圧電素子45の内部に侵入して信頼性不良となること(PZT膜内の酸素を還元することにより生ずる圧電特性の劣化)を抑制する。
また、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80上には、隔壁樹脂層82が積層されており、圧電素子基板70と天板部材40との間の空間を区画している。隔壁樹脂層82には、天板41のインク供給用貫通口112とシリコン基板72の圧力室50を繋げるインク供給用貫通口44が形成されており、その内部が第2インク供給路114Bとなっている。
この第2インク供給路114Bは、第1インク供給路114Aの断面積よりも小さい断面積を有しており、インク供給路114全体での流路抵抗が所定の値になるように調整されている。つまり、第1インク供給路114Aの断面積は、第2インク供給路114Bの断面積よりも充分に大きくされており、第2インク供給路114Bでの流路抵抗と比べて実質的に無視できる程度とされている。したがって、インクプール室38から圧力室50へのインク供給路114の流路抵抗は、第2インク供給路114Bで規定される。
そして、少なくともインク110が接する壁面である、インク供給用貫通口112、44、圧力室50、連通路124の内壁面には、内面処理膜(SiCN膜)96が、プラズマCVD法により、それらの接合部分(境界部分)を含むように一体的に成膜され(コーティングされ)、耐インク性を向上させている。
また、天板部材40と圧電素子45(厳密には、圧電素子45上の低透水性絶縁膜(SiOx膜)80)との間には、圧力室50の上部に空間126(空気層)が設けられており、圧電素子45の駆動や振動板48の振動に影響を与えないようにしている。
ところで、図7(B)に示すように、圧電素子45を構成する上部電極54及び圧電体46には、圧力室50の周壁(シリコン基板72)の上部に貫通孔54A、46Aがそれぞれ形成されており、該貫通孔54A、46Aの表面は、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80で被覆されている。
そして、貫通孔54A、46Aの内側の低透水性絶縁膜(SiOx膜)80に、貫通孔54A、46Aよりもさらに小径の貫通孔80Aが形成され、該貫通孔80A内に形成された隔壁樹脂層82に、電気接続用貫通口42と繋がり、電気接続用貫通口42よりも小径の電気接続用貫通口138が形成されている。
そして、この電気接続用貫通口42、138内に、ペースト状の導電性材料(以下「導電性ペースト」という)87が充填されており、該導電性ペースト87を介して、金属配線90と下部電極52とが電気的に接続されている。
つまり、下部電極52を個別化し、個別配線としての金属配線90を天板41の上面で引き回して駆動IC60と接続させている。なお、この金属配線90にはフレキシブルプリント基板(FPC)100(図4参照)も接続される。
一方、図8(A)、(B)に示すように、各圧電素子45の上部電極54は共通電極としている。そして、図7(A)、(C)に示すように、天板41には、駆動IC60からの電気信号を供給するための金属配線90に設けられた端子90A(以下、単に「金属配線90の端子62」という)よりも外側(金属配線90の端子90Aと該端子90Aに近い側の天板41の外縁部との間;図4で示す領域A)に、電気接続用貫通口132が形成され、該電気接続用貫通口132と対応する位置には、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80に貫通孔80Bが形成されている。
この貫通孔80B内に形成された隔壁樹脂層82に電気接続用貫通口132と繋がる電気接続用貫通口136が形成されている。そして、この電気接続用貫通口132、136内に、導電性ペースト86が充填されており、該導電性ペースト86を介して、GND配線(接地配線)134と上部電極54が電気的に接続されている。
次に、インクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10において、次に、その作用を説明する。
まず、インクジェット記録装置10に印刷を指令する電気信号が送られると、ストッカー24から記録用紙Pが1枚ピックアップされ、搬送装置26により搬送される。
一方、インクジェット記録ユニット30では、すでにインクタンクからインク供給ポートを介してインクジェット記録ヘッド32のインクプール室38にインク110が注入(充填)され、インクプール室38に充填されたインク110は、インク供給路114を経て圧力室50へ供給(充填)されている。そして、このとき、ノズル56の先端(吐出口)では、インク110の表面が圧力室50側に僅かに凹んだメニスカスが形成されている。
そして、記録用紙Pを搬送しながら、複数のノズル56から選択的にインク滴を吐出することにより、記録用紙Pに、画像データに基づく画像の一部を記録する。すなわち、駆動IC60により、所定のタイミングで、所定の圧電素子45に電圧を印加し、振動板48を上下方向に撓み変形させて(面外振動させて)、圧力室50内のインク110を加圧し、所定のノズル56からインク滴として吐出させる。
こうして、記録用紙Pに、画像データに基づく画像が完全に記録されたら、排紙ベルト23により記録用紙Pをトレイ25に排出する。これにより、記録用紙Pへの印刷処理(画像記録)が完了する。
ところで、図11に示すように、圧電素子45において、スパッタ法でPZT膜を形成した場合、下部電極52の電圧を上部電極54の電圧よりも高くすることで変位が大きくなる。またさらに図12に示すように、下部電極52側を上部電極54の電圧よりも高くして分極処理を行った方が分極度(およびそれに対応した変位効率)が大きくなり、さらに長期安定性が高くなることを見出した。ここで分極度とは、分極前の値を1.0とする分極の度合いを意味する。
このため、本実施形態では、図7(A)、(B)に示すように、天板41に電気接続用貫通口42を形成し、上部電極54及び圧電体46に貫通孔54A、46Aを形成して、該貫通孔54A、46A内に形成された隔壁樹脂層82に、電気接続用貫通口42と繋がる電気接続用貫通口138を形成している。そして、この電気接続用貫通口42、138内に、導電性ペースト87を充填し、該導電性ペースト87を介して、金属配線90と下部電極52を電気的に接続している。
また、各圧電素子45の上部電極54を共通電極とし、天板41の金属配線90の端子90Aよりも外側に電気接続用貫通口132を形成して、電気接続用貫通口132と対応する位置に、低透水性絶縁膜(SiOx膜)80に形成された貫通孔80B内の隔壁樹脂層82に電気接続用貫通口132と繋がる電気接続用貫通口136を形成し、この電気接続用貫通口132、136内に、導電性ペースト86を充填して、導電性ペースト86を介して、GND配線134と上部電極54を電気的に接続している。つまり、下部電極52側が正電位となるようにしている。
なお、ここでは、上部電極54をGND配線134に接続させ、下部電極52に正電圧を印加させるようにしたが、下部電極52の電圧が上部電極54の電圧以上に高ければよいため、例えば、上部電極54に5V印加し、下部電極52に5Vよりも大きい電圧を印加させるようにしても良い。
駆動IC60からの信号が、天板部材40の金属配線90に通電されると、電気接続用貫通口42、138の内部に充填された導電性ペースト87により、下部電極52に通電される。そして、所定のタイミングで圧電素子45に電圧が印加され、振動板48が上下方向に撓み変形することにより、圧力室50内に充填されたインク110が加圧されて、ノズル56(図5参照)からインク滴が吐出する。
ここで、図8(A)に示すように、下部電極52と同じ層(同一平面上)で個別配線200を引き出し、駆動IC60に接続した場合、圧電素子45間の領域(スペース)で個別配線200を引き出さなければならなくなり、配線本数が多い高密度マトリクス配列では素子面積が大きくなってしまう。
しかし、本実施形態では、図7(B)及び図8(B)に示すように、天板41及び隔壁樹脂層82に、電気接続用貫通口42、138を形成し、該電気接続用貫通口42、138内の導電性ペースト87を介して、下部電極52と金属配線90を電気的に接続させ、天板41の上面で金属配線90を引き回しているため、下部電極52の同一平面上で電気配線を引き回す場合と比較して、金属配線90の引き回し領域が広いので、配線による圧電素子面積の増大が抑制されている。
また、図7(A)及び図8(B)に示すように、金属配線90の端子90Aよりも外側で、導電性ペースト87を介して、上部電極54とGND配線134を電気的に接続させてGND配線134の面積を広くしているので、配線抵抗は、面積が大きくなった分小さくなっている。しかも個別配線(金属配線90)を引き回す領域も広くなる。なお、駆動IC60の下部に導電性ペースト87用の電気接続用貫通口132を形成し、上部電極54とGND配線134(仮想線で示す)を電気的に接続させてもよい。
また、ここでは、GND配線134と上部電極54の電気的接続を、図4及び図7(A)に示すように、金属配線90の端子90Aと該端子90Aに近い側の天板41の外縁部との間(領域A)で行ったが、図4及び図13に示すように、金属配線90の端子90Aに近い側の配線板41の外縁部に略直交する外縁部と圧電素子45の形成領域との間(領域B)で行ってもよい。さらに、図8(B)では、金属配線90の端子90Aは、駆動IC60に接続されているが、図8(C)のようにFPC100を介して駆動IC60と接続させてもよい。この場合、駆動IC60はFPC100の上に実装される。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のインクジェット記録ヘッド32について説明する。なお、以下において、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同一の構成要素、部材等は同一符号を付して、その詳細な説明(作用を含む)を省略する。なお、図9(A)はインクジェット記録ヘッド32の概略平面図を示しており、図9(B)は(A)の断面図を示している。
図9(A)、(B)に示すように、本実施形態では、上部電極54及び圧電体46が、圧力室50の周壁(シリコン基板72)の内側となるようにしているので、圧電体46は、圧力室50の周壁の拘束が低減されている。ここで、上部電極54は共通電極であるため、上部電極54の一部には接続配線55を設け、該接続配線55を介して各上部電極54間を繋げている。
そして、この上部電極54及び圧電体46を避けるようにして、圧力室50の周壁の上部に位置する低透水性絶縁膜(SiOx膜)80に貫通孔80Aを形成し、この貫通孔80A内の隔壁樹脂層82に、電気接続用貫通口42と繋がる電気接続用貫通口140を形成する。
この電気接続用貫通口42、140内に導電性ペースト87を充填して、該導電性ペースト87を介して金属配線90と下部電極52を電気的に接続させる。つまり、本実施形態では、電気接続用貫通口140の周辺に圧電体46及び上部電極54の層がない場合である。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のインクジェット記録ヘッド32について説明する。なお、以下において、第1実施形態のインクジェット記録ヘッド32と同一の構成要素、部材等は同一符号を付して、その詳細な説明(作用を含む)を省略する。なお、図10(A)はインクジェット記録ヘッド32の概略平面図を示しており、図10(B)は(A)の断面図を示している。
図10(A)、(B)に示すように、本実施形態では、圧電素子45の駆動領域以外の領域で、上部電極54の上面に、アルミニウムなどの金属膜142(図10で示すハッチング領域)を積層させている。これにより、金属膜142を積層しない場合と比べ、GND配線134は低抵抗になる。そして、この金属膜142は圧電素子45の駆動領域以外の領域に形成するため、圧電素子45は変位拘束を受けない。ここで、圧電素子45の形成後に金属膜142を積層させるため、低温成膜可能でかつ低抵抗なアルミニウム膜を使用することが好ましい。
ところで、これらのインクジェット記録ヘッド32は、インクプール室38と圧力室50の間に振動板48(圧電素子45)が配置され、インクプール室38と圧力室50が同一水平面上に存在しないように構成されている。したがって、圧力室50が互いに近接配置され、ノズル56が高密度に配設されている。
また、圧電素子45に電圧を印加する駆動IC60は、圧電素子基板70よりも外方側へ突出しない構成とされている(インクジェット記録ヘッド32内に内蔵されている)。したがって、インクジェット記録ヘッド32の外部に駆動IC60を実装する場合に比べて、圧電素子45と駆動IC60の間を接続する金属配線90の長さが短くて済み、これによって、駆動IC60から圧電素子45までの配線抵抗が小さくなっている。
本発明に係る液滴吐出ヘッドとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド32を挙げ、液滴吐出装置としても、インクジェット記録ヘッド32を備えたインクジェット記録装置10を挙げたが、本発明に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置は、記録用紙P上への画像(文字を含む)の記録に限定されるものではない。
また、上記実施例のインクジェット記録装置10では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ユニット30から画像データに基づいて選択的にインク滴が吐出されてフルカラーの画像が記録用紙Pに記録されるようになっているが、本発明におけるインクジェット記録は、記録用紙P上への文字や画像の記録に限定されるものではない。
すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成するなど、工業的に用いられる液滴噴射装置全般に対して、本発明に係るインクジェット記録ヘッド32を適用することができる。
また、上記実施例のインクジェット記録装置10では、紙幅対応のいわゆるFull Width Array(FWA)の例で説明したが、これに限定されず、主走査機構と副走査機構を有するPartial Width Array(PWA)であってもよい。
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置を示す概略正面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの配列を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの印字領域の幅と記録媒体の幅との関係を示す説明図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図である。 図4のX−X線断面図である。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの駆動ICのバンプを示す概略平面図である。 (A)は、第1実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図を示しており、(B)、(C)は(A)の断面図を示している。 (A)〜(C)は、駆動ICと電気配線との接続を示す説明図である。 (A)は、第2実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図を示しており、(B)は(A)の断面図を示している。 (A)は、第3実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図を示しており、(B)は(A)の断面図を示している。 本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッドの圧電素子を構成する圧電体の分極の向きに対する圧電体の変位量を示すグラフである。 圧電体の分極方向の違いによる分極度の温度安定性を示したグラフである。 第1実施の形態の変形例に係るインクジェット記録ヘッドの概略平面図である。
符号の説明
10 インクジェット記録装置
17 スターホイール(搬送手段)
19 搬送ロール(搬送手段)
21 制御装置(制御手段)
26 搬送装置(搬送手段)
32 インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
38 インクプール室(液体貯留室)
41 天板(配線板)
45 圧電素子
46 圧電体
48 振動板
50 圧力室
52 下部電極(第一の電極)
54A 貫通孔
54 上部電極(第二の電極)
56 ノズル(吐出口)
60 駆動IC(集積回路)
90 金属配線(第一の電気配線)
114 インク供給路(インク供給口)
134 GND配線(第二の電気配線)
138 電気接続用貫通口(貫通孔)
140 電気接続用貫通口(貫通孔)
142 金属膜

Claims (8)

  1. 撓み変形可能な圧電体と、前記圧電体を挟む第一の電極と第二の電極とを有する圧電素子と、
    前記圧電素子の第一の電極側に配置された振動板と、
    前記圧電素子の第二の電極側に配置され前記圧電素子に電気信号を供給する第一の電気配線を備えた配線板と、
    前記振動板を間において、前記圧電素子の反対側に設けられた圧力室と、
    前記圧力室の液滴を吐出する吐出口と、
    前記配線板を間において、前記圧電素子と反対側に設けられた液体貯留室と、
    前記配線板に形成され、前記液体貯留室から前記圧力室に液体を供給するインク供給口と、
    を有し、
    前記第二の電極に形成された貫通孔を介して前記第一の電極と前記第一の電気配線を個別に接続したことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記貫通孔が前記圧電体を貫通していることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 前記貫通孔が前記圧電体を避けて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
  4. 前記配線板は、前記圧電素子を駆動させる集積回路を有し、前記集積回路と前記第一の電気配線との接続部と該接続部に近い側の前記配線板の外縁部との間に前記第二の電極と接続された第二の電気配線が配設されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  5. 前記配線板は、前記圧電素子を駆動させる集積回路と前記第一の電気配線を電気的に接続する接続部材を有し、前記接続部材と前記第一の電気配線との接続部と該接続部に近い側の前記配線板の外縁部との間に前記二の電極と接続された第二の電気配線が配設されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  6. 各前記第二の電極は互いに電気的につながっており、共通配線として機能していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  7. 前記圧電素子の駆動領域以外の領域で前記第二の電極に金属膜が形成されたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
  8. 前記液滴がインクであり、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段で搬送された前記記録媒体にインクを吐出する請求項1〜7の何れか1項に記載の液滴吐出ヘッドと、前記集積回路を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記第一の電極の電圧が前記第二の電極の電圧よりも大きくなるように制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
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