JP4992128B2 - リチウム二次電池用負極活物質粒子および負極の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池用負極活物質粒子および負極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池用の新規な高容量の負極活物質粒子およびその製造方法に関し、特に、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出するリチウム二次電池用の負極活物質粒子であって、シリコン又は錫と第1の他の金属元素よりなる非晶質組織を有するシリコン又は錫からなる合金粒子の全部または一部の表面が低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料でさらに表面処理されていることを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質粒子およびその製造方法に関する。
リチウム二次電池は、特に携帯用機器に使用される。昨今の携帯用機器に代表される携帯電話および携帯用パソコンにおいて多くの機能が付加されて使用される電池には、その機器の作動電圧に応じた出力電圧と、使用時間に影響する電池容量を大きくする要求がある。特に、使用時間を長くするための電池容量の増加については、限られた電池スペースでは電気エネルギーを蓄える活物質のエネルギー密度を高める以外に電池の容量を増加させることはできない。
従来から使用されている代表的なリチウム二次電池の正極活物質はコバルト酸リチウムであり、負極活物質は黒鉛である。このような電池材料構成で容積エネルギー効率を400Wh/L以上にするのは困難である。特に、負極活物質としての黒鉛の理論エネルギー量は372mAh/gであるために電池容量のさらなる向上を図るためには限界があり、他の種類の負極活物質の利用が各研究機関や電池製造メーカーで研究開発されている。
そのような中で考えられている負極活物質材としてはシリコン、錫、金属リチウムなどがあり、金属リチウムについてはリチウムデンドライトの発生、シリコン及び錫についてはリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積膨張・収縮の繰り返しによる結晶構造の破壊および微粒子化による孤立化などによる利用率低下などが問題としてあり、それらの改善が色々となされている。
特開平8−50922号公報 特開平8−213008号公報 特開2001−332254号公報 特開2002−83594号公報 特開2003−77529号公報 特開2003−109589号公報 WO00/17949号国際公開公報 WO01/029912号国際公開公報
負極活物質としてのシリコン及び錫は、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積膨張・収縮の比率が大きく、また、粒子の微粒子化が起こり易いために電気的な繋がりが阻害され、充放電サイクルと共に充電放電ができ難くなるといった問題がある。
また、負極活物質はスパッタリング、真空蒸着、メッキなどの方法により、負極集電体表面に被覆されているが、このような表面処理方法で形成できる被覆層の厚みはせいぜい数μm程度であり、被覆層の厚みを厚くし過ぎるとリチウムイオンを吸蔵・放出する際の体積変化で被覆層にクラックが発生し微粉砕化してしまうといった問題があった。
さらに、リチウム二次電池の電池容量を大きくするためには被覆される負極活物質の被覆量を大きくする必要があるが、上記表面処理方法では形成できる被覆層の厚みには限界がある上に製造時間が極めて長くなるなど実用的でないといった問題があった。
一方、被覆される負極活物質の量を大きくするためには、負極活物質粒子を導電材及びバインダーなどと混錬した塗工液で塗工するといった他の表面処理方法が用いられてきたが、この方法では、前記表面処理方法に比べて塗工された被覆層の導電性が悪く、微粉砕化した場合には各粒子間の電気的伝導が遮断されてリチウム二次電池の電池容量を急速に低下させてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、以上のような問題を解決することを目的に開発されたものであり、その主な目的は、(1)負極活物質粒子のリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う粒子の微細化からくる孤立化の抑制と、(2)負極集電体への負極活物質粒子の被覆量を増大させながら表面処理負荷の低減を図ることができる、リチウム二次電池用負極活物質粒子およびその製造方法を提供することにある。
本発明による負極活物質粒子およびその製造方法は、シリコン又は錫を用いた非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子の表面を低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料で表面改質したことおよびその製造方法に特徴があり、特に、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出するリチウム二次電池用の負極活物質粒子であって、シリコン又は錫と他の金属元素よりなる非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子の全部または一部の表面を低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料で表面処理することにより、電気的特性の良好な負極活物質粒子およびその製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明による負極活物質粒子およびその製造方法によれば、シリコン又は錫と他の金属元素とを合金化した非晶質組織を有するシリコン又は錫からなる合金粒子を母材として、さらに、その表面の全部または一部に低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を粒子形状又は繊維状のまま固着させたり層状に被覆させたりすることにより、複雑化した形状を有する負極活物質粒子が提供される。
この負極活物質粒子の表面上に被覆された低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料は、リチウムイオンの吸蔵および放出に伴い被覆層が体積変化した場合であっても、各粒子間および負極集電体との間に生じた隙間を埋めて電気的接続を維持するように働くため、負極短絡の原因となる被覆層の体積変化に対する電気的な許容範囲を拡大するために寄与させることができる。
また、シリコン又は錫を主体とする非晶質組織を有する負極活物質粒子自体も、リチウムイオンの吸蔵および放出に伴う体積変化による構造変化の歪疲労から微細化が進み、孤立化による電気的接触の低下を招くことになるが、シリコン又は錫からなる合金粒子の表面上に被覆された低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料は、前記体積変化による微細化が進んだ後の各粒子間の電気的な繋がりを確保するためにも機能することから、シリコン又は錫の微細化にかかわらず優れた充放電サイクル特性を有するリチウム二次電池を提供することができる。
さらに、このような負極活物質粒子の形態は、該負極活物質粒子が負極集電体上に所定の厚みを持って被覆されることにより各粒子および負極集電体との間に適当な空隙を形成すると共に、負極活物質粒子の表面に被覆された低融点合金元素の変形のし易さと相まって、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う被覆層の体積変化を吸収するように作用し、その結果、本発明による負極活物質粒子は充放電に伴う被覆層自体の体積変化を軽減するためにも貢献する。
このとき、本発明による負極活物質粒子により負極表面に形成された被覆層の空隙率は、37〜85%の範囲内にあることが好ましい。
このような空隙率は、空隙率37%より小さくなると、負極活物質粒子により形成された被覆層の中への電解液の浸透を困難にして、電解液の真空含浸に多大な時間を必要とさせたり含浸量不足で電池性能を悪化させたりし、また、限られた容積内での電極の動きにより内部短絡を発生し易くしたりする。逆に、空隙率85%より大きくなると、限られた容積内に所定量の負極活物質を配置できなくなり電池容量が低減してしまうといった問題を生じさせることとなる。
したがって、このような適当な空隙を負極の被覆層に保持するためには、表面処理後、リチウム二次電池用の負極を適度に加圧成形することによりリチウム二次電池用の負極を形成させることが重要である。必要以上に加圧して空隙率を低下させた状態でリチウム二次電池用の負極を作製すると、充放電を繰り返すことにより負極の厚みが増加し、最終的には設計通りの負極厚みを維持することができなくなってリチウム二次電池を破壊してしまうことになる。
本発明による負極活物質粒子の平均粒子径は25μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以下の平均粒子径を有する負極活物質粒子が、リチウムイオンを吸蔵および放出する際の体積変化に対応して応力歪の発生を効果的に防止し微細化を抑制することが判明した。
負極活物質粒子の平均粒子径が25μmより大きくなると、負極被覆面に凹凸が発生し、特に一部に角部を有する負極集電体上に負極活物質粒子が表面処理される負極を使用した場合には、約23%程度の割合で内部短絡を起こしてセパレーターを損傷することが破損されたリチウムイオン電池を解体調査することにより確認された。
また、5μm以下の平均粒子径を有する負極活物質粒子を使用すると、リチウムイオンの吸蔵および放出時の応力歪を各粒子間に形成された空隙により、より一層効果的に吸収できるようになることから、負極活物質粒子のさらなる微細化を防止できることが判った。
さらに、本発明において用いられる非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子の形状は、球状よりは扁平状、繊維状などの細長く潰れた形状の方が好ましく、粒子の微細化が進み難いことが判明した。
次に、本発明によるシリコン又は錫と他の金属元素よりなるシリコン又は錫からなる合金粒子は、その全部または一部に非晶質領域を有することが好ましい。
また、本発明によるシリコン又は錫からなる合金粒子はその全部または一部に非晶質領域を有すればよいから、他の金属元素はシリコン又は錫の全部と合金化されている必要はなく、シリコン又は錫の一部と合金化しているものであってもよい。
この非晶質領域の形成は、以下に説明する方法によって作製される。
シリコン又は錫を非晶質化するために添加される他の金属元素としては、その添加する目的および工程の違いによりシリコン又は錫の非晶質化を促進するために添加される第1の他の金属元素と、シリコン又は錫の非晶質化および被覆するために添加される第2の他の金属元素とに大別される。
まず、シリコン又は錫の非晶質化を促進するためには、一般的な合金製造方法を用いて第1の他の金属元素が最終的な負極活物質粒子全体の重量の0.1wt%以下となるようにプレ・シリコン又は錫合金粒子が作製される。
このように、シリコン又は錫にあらかじめ0.1wt%程度の他の金属元素を添加してプレ・シリコン又は錫合金粒子を作製しておくことは、例えば、この後の非晶質化工程で遊星ボールミルなどを用いて加工処理する場合にシリコン又は錫の非晶質化が第1の他の金属元素を添加しない場合には30〜48時間程度かかっていたのが、数時間程度の短い時間で非晶質化することを可能にする。
なお、上述されたプレ・シリコン又は錫合金粒子が後述される第2の他の金属元素により合金化および非晶質化した後の合金組成は、第2の他の金属元素の添加により、第1の金属元素が非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子全体の重量の0.1wt%よりさらに低率となって含有されることになる。また、シリコン合金粒子において鉄が第1の他の金属元素として使用されている場合は、鉄には微量のシリコンが含まれているために0.1wt%以上の含有率を示して含有されることがある。
このように、シリコン又は錫の非晶質化を促進させるためにあらかじめ添加すべき適当な第1の他の金属元素としては、鉄、アルミニウム、クロム、マグネシウムなどがある。また、ここでシリコン又は錫と第1の他の金属元素よりなるプレ・シリコン又は錫合金粒子は、シリコン又は錫と、複数の異なる第1の他の合金元素を添加することによって合金化されたものであってもよい。
つぎに、例えば上記プレ・シリコン又は錫合金粒子は、第2の他の金属元素と混合され、少なくともメカニカルアロイング法、メカニカルグライディング法、液体急冷法及び気体急冷法より選ばれた1又は2以上の製法により非晶質化され、全部または一部に非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金金粒子が作製される。
また、作製されたシリコン又は錫からなる合金粒子は、その全部または一部に非晶質領域を有すればよいから、他の金属元素はシリコン又は錫の全部と合金化されている必要はなく、シリコン又は錫の一部と合金化しているものであってもよい。さらに、後述される非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子を表面改質化するためには、前記これらの異なる製法によって作製されたシリコン又は錫からなる合金粒子の混合粉を使用することもできる。
このように、シリコン又は錫を非晶質化するためにプレ・シリコン又は錫合金粒子と混合される第2の他の金属元素としては、鉄、アルミニウム、コバルト、銅、ニッケル、クロム、マグネシウム、鉛、亜鉛、ビスマス及びアンチモンなどがあり、さらに、シリコンを非晶質化する場合に有効な金属元素としては錫が挙げられる。また、非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子は、第1の他の金属元素と同じ又は複数の異なる前記第2の他の合金元素を混合することによって非晶質化させたものであってもよい。
ここでシリコンの場合、前記製法により作製された非晶質領域を有するシリコンとしては、シリコンの結晶構造の違いにより非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンが存在するが、本発明においては、非晶質領域を有するシリコンの他、微結晶領域を有するシリコンを含む。
また、非晶質シリコンとは、ラマン分光分析において非晶質領域に対応する480cm-1近傍のピークが検出される一方、結晶領域に対応する520cm-1近傍のピークが実質的に検出されないものである。また、微結晶シリコンとは、ラマン分光分析において結晶領域に対応する520cm-1近傍のピークと、非晶質領域に対応する480cm-1近傍のピークとの両方が実質的に検出されるものであり、微結晶シリコンは結晶領域と非晶質領域とから実質的に構成されるものである。一方、多結晶シリコン及び単結晶シリコンは、ラマン分光分析において、結晶領域に対応する520cm-1近傍のピークが検出される一方、非晶質領域に対応する480cm-1近傍のピークが実質的に検出されないものである。
このように、負極活物質に非晶質化されたシリコン又は錫を使用する理由としては、従来より有望視されていたシリコン又は錫などの負極活物質では、リチウムイオンを吸蔵したり放出したりした場合の体積膨張変化が3倍から4倍と非常に大きくなることが欠点の一つで、その結果、結晶がその体積変化に耐え切れなくなって微粉砕され、負極中で電気的な接続経路が遮断されて電気化学反応に寄与しなくなってしまうのに対して、非晶質化されたシリコン又は錫は、他の金属元素と合金化されることによる各元素同士の強い結合力のために前記膨張・収縮に対する耐久性が高まると共に、非晶質化により粒子自体の体積変化をも小さくでき、その結果、粒子が微粉砕されることによる負極中での電気的な接続経路の遮断を抑制する上で極めて有効であるからである。
また、負極と接触する界面において固体電解質を用いる場合には、このような非晶質化されたシリコン又は錫を用いると該電解質に含まれる成分が負極活物質粒子からなる負極表面処理層に拡散して固溶され、その結果、負極活物質粒子で表面処理された負極と固体電解質との密着性が向上することも考えられる。
さらに、負極と固体電解質との密着性が高まると、イオン伝導性が向上してより高い充放電容量が得られるようになると共に、充放電を繰り返した場合に、負極活物質粒子の体積変化による固体電解質との接触性が低下することも抑制されて、さらに優れた充放電サイクル特性が得られるようになる。また、上述のように負極と固体電解質とが接触する界面において固体電解質に含まれる成分が負極活物質粒子の中に固溶された状態になると、あたかも金属間化合物を形成したかのように、充放電によって固体電解質に含まれる成分と負極活物質とが分離されて密着性が低下するということもなく、一層優れた充放電サイクル特性が得られるようになる。
このように、負極内の負極活物質の膨張・収縮に対する耐久性を高め、微粉砕化を抑制し、さらには負極と固体電解質との密着性を高めることによりリチウム二次電池の充放電サイクル特性の向上を図るためには、少なくともシリコン又は錫からなる合金粒子全体の重量に占める非晶質領域の割合が80wt%以上にすることが必要である。
シリコン又は錫からなる合金粒子全体の重量に占める非晶質領域の割合を80wt%以上にすると、合金粒子の体積膨張・収縮による構造破壊が抑制されることによりリチウム二次電池の充放電50サイクル後の容量減衰率が約1/20まで改善され、非晶質化が進んでいないシリコン粒子またはシリコン合金粒子を用いた場合に比べてリチウム二次電池容量の減衰抑制効果を一層高めることができる。
さらに、合金化された他の金属元素が酸化してしまうことよるリチウムイオンに対する不活性化を防止するために、プレ・シリコン又は錫合金粒子の非晶質化は不活性ガス雰囲気の中で実施されることが好ましい。
プレ・シリコン又は錫合金粒子と第2の金属元素とを不活性ガス雰囲気の中で固着・表面処理すると、金属酸化物の生成を所定量以下に抑えることが可能であり、また、このような不活性ガス雰囲気下における金属酸化物生成の抑制は、シリコン又は錫からなる合金粒子および第2金属元素が雰囲気ガスと反応して他の金属生成物を生成してしまうことをも排除する。
また、このとき生成される金属酸化物の負極活物質粒子全体の重量に占める割合が1wt%より大きくなると、初期負極活物質粒子の利用率が相乗効果で90%以下になってしまうため、負極活物質粒子全体の重量に占める金属酸化物の割合は1wt%以下に抑えられていることが好ましい。
さらに、本発明による負極活物質粒子は、上記非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子表面の全部または一部を低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料で被覆(接着、結着、融着、結合)することより、極めて複雑な形状が与えられる。
この複合化された負極活物質粒子の形状は、負極集電体に表面処理された後各粒子間に形成された適度な空隙により、負極活物質粒子により形成された被覆層が充放電に伴い体積変化することを吸収すると共に、体積変化した場合であっても、それにより生じた各粒子間の隙間を埋めて各粒子間の電気的な繋がりを保証し、その結果、以下に述べるような多くのさらなる作用効果をもたらす。
例えば、従来は、メッキ法、スパッタリング法及び真空蒸着法以外の手段を用いて銅箔または銅メッキが施されたフィルムからなる負極集電体の表面に負極活物質粒子を被覆するためには、負極活物質粒子と負極集電体および負極活物質粒子同士を連結させるためにバインダーを用いる必要があったのに対して、本発明による負極活物質複合粒子を用いて被覆する場合は、その表面に低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料があらかじめ被覆(接着、結着、融着、結合)されているためにバインダーの使用が不要となり、従来よりも安価な負極の製造が可能となる(第1の作用効果)。
また、本発明による負極活物質複合粒子を用いて負極を製造した場合は、バインダーを省略できる分だけ負極活物質複合粒子の充填密度を高めることができ、しかも、負極活物質粒子で被覆するために用いられるバインダーは電気化学反応に全く寄与しないものであるため、結果としてリチウム二次電池の電池容量をアップさせる(第2の作用効果)。
また、本発明による負極活物質複合粒子を用いた負極の中には非電導性材料が存在せず、また、負極活物質複合粒子の表面に被覆された低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料は、その表面改質複合化効果により各粒子間に電導性ネットワークを構築することから、負極およびそれによって作られたリチウム二次電池の電気抵抗を極めて低く抑えることができ(第3の作用効果)、その結果、本発明による負極を用いたリチウム二次電池の効率の高い充放電を可能とする(第4の作用効果)。
また、低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料により各粒子間に構築された網の目状の電導性ネットワークの形成は、負極活物質としての働きをも活性化して促進することから、リチウム二次電池の導電性および電池容量をアップをさせる(第5の作用効果)。
さらに、網の目状の電導性ネットワークを形成している低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料は、リチウム二次電池の充放電に伴う負極活物質の体積膨張・収縮に対して負極内で順応して電導性ネットワークを崩すことなく負極形態を維持できることから、リチウム二次電池の充放電サイクル特性を安定化させる(第6の作用効果)
このように表面改質複合化された被覆層を有する負極活物質粒子の形成は、非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子を焼結法、表面改質複合化法(高速で複数種類の粉体同士が衝突しながら容器内を循環することにより合金化、表面処理する製法で、ハイブリダイジング法とも呼ばれる方法や容器内壁と中心軸との間隙で粉体が押し付けられる時の摩砕熱と加圧力を利用して合金化、表面処理するメカノフュージョン法などがある。)を用いて低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料で表面処理することにより作製される。また、本発明による負極活物質粒子は、これらの異なる製法によって作製された負極活物質粒子の混合粉であってもよい。
前記製法の中で、特にメカニカルアロイング法、またはメカニカルグラインディング法などを用いて非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子の表面に低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を被覆すると、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴い粒子形状が破壊した場合でも、これらの低融点金属元素と、および/または炭素材料が合金粒子の表面に凹凸を形成しながら残存し、網の目状に形成された電導性ネットワークを維持することから、固着された低融点金属元素と、および/または炭素材料を媒体として各粒子間の電気的な繋がりが維持され、リチウムイオン電池の電池容量の減少が抑制される。
この結果、このような表面処理がなされていない場合の負極の表面抵抗は9Ωcmであったものに対して、0.9Ωcm以下まで低減され改善することができた。
このように、低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料は、上述したように負極集電体への結合と各粒子間の導電性を確保するためなどに寄与するものであるから、かかる目的を達成するための低融点金属元素としては、鉛半田、鉛フリー半田、導体ペーストなどの金属自体が柔らかく低温で処理できるものが好ましく、具体的には、Sn−Pb合金、Sn−Sb合金、Sn−Ag合金、Sn−Bi合金、Sn−In合金、Sn−Zn合金、Sn−Ag−In−Bi合金、亜鉛、銀ロウ、ビスマス、インジウム、アンチモン及びセレンなどよりなる群から選ばれた1種以上の半田、金属又は合金であることが好ましい。
また、網の目状に形成された電導性ネットワークの機能を補完し、自らも負極活物質として機能できるカーボン又は黒鉛からなる炭素材料としては、約600℃〜800℃の温度で焼成された低温焼成カーボン、カーボン繊維及び黒鉛よりなる群から選ばれた1種又は2種以上の炭素材料がシリコン又は錫からなる合金粒子の複合化による表面改質ために使用できる。さらに、本発明で使用される低融点金属元素と、および/または炭素材料は、これらの異なる複数の金属元素と、および/または炭素材料を組み合せたものであってもよい。
このように、本発明による上記機能を達成するためには、負極活物質粒子に含まれるすべての他の金属元素(第1の他の金属元素、第2の他の金属元素および低融点金属元素)の前記負極活物質粒子全体の重量に占める割合が30〜83wt%の範囲内にあることが好ましい。
ただし、表面改質のために添加される低融点金属元素と、および/または炭素材料の負極活物質粒子全体の重量に占める割合は特に限定されるものではなく、上記範囲内にあれば、電池の充放電サイクル特性を重視するか又は電池(負極)の容量を重視するなど、リチウム二次電池の用途に応じて添加する低融点金属元素と、および/または炭素材料の重量割合やその粒子径、粒度分布も適宜選択することができる。したがって、極端な場合は選択された低融点金属元素と、および/または炭素材料が、隣接する粒子同士が点接触する箇所のみへ選択的に薄く結合されるような場合であってもよい。
すべての他の金属元素が負極活物質粒子全体の重量に占める割合が30wt%より少ないと、リチウムイオンの吸蔵および放出時の体積膨張・収縮に伴う構造変化歪の疲労からシリコン又は錫からなる合金粒子の微細化が進み、孤立化により電気的接触が乏しくなる傾向を示す。また、83wt%より多い場合は、リチウムイオン吸蔵および放出に対してシリコン又は錫からなる合金粒子の体積膨張・収縮による微細化が抑制されることにより、孤立化により電気的接触が乏しくなるといった問題点は改善されるものの、負極活物質粒子としての電池容量が極めて小さくなるといった問題点を生ずることになる。
次に、本発明による負極活物質粒子およびそれを用いたリチウム二次電池用の負極の形成方法について説明する。
本発明によるリチウム二次電池用負極活物質粒子の製造方法は、電気的化学にリチウムを吸蔵および放出するリチウム二次電池用の負極活物質粒子を製造する方法であって、
シリコン又は錫の全部または一部と第1の他の金属元素とを合金化させてシリコン又は錫からなる合金粒子を製造するための第1のステップと、
前記シリコン又は錫からなる合金粒子表面の全部または一部を第2の他の金属元素でさらに合金化および/または表面処理し、非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子に改質するための第2のステップと、
前記非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子に低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を固着させて負極活物質粒子を形成させるための第3のステップとを含み、そして
前記第3のステップは、少なくともメカニカルアロイング法、メカニカルグライディング法、メカノフュージョン法、ハイブリダイジング法及び焼結法より選ばれた1又は2以上の製法であることを特徴とする。
また、本発明によるリチウム二次電池用負極の製造方法は、電気化学的にリチウムを吸蔵および放出するリチウム二次電池用負極を製造する方法であって、
シリコン又は錫の全部または一部と第1の他の金属元素とを合金化させてシリコン又は錫からなる合金粒子を製造するための第1のステップと、
前記シリコン又は錫からなる合金粒子表面の全部または一部を第2の他の金属元素でさらに合金化および/または表面処理し、非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子に改質するための第2のステップと、
前記非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子に低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を固着させて負極活物質粒子を形成させるための第3のステップと、
前記負極活物質粒子を含む被覆材料を負極集電体に表面処理し、負極を形成させるための第4のステップとを含み、そして
前記第3のステップは、少なくともメカニカルアロイング法、メカニカルグライディング法、メカノフュージョン法、ハイブリダイジング法及び焼結法より選ばれた1又は2以上の製法より選ばれた1又は2以上の製法であり、かつ、前記第4のステップは、前記負極活物質粒子を含む被覆材料を冷間圧延法、塗工法、焼結法、溶融滴下法又は溶射法により負極集電体に表面処理した後プレス処理する製法、または加熱プレスする製法であることを特徴とする。
前記第1のステップは、シリコン又は錫と第1の他の金属元素とを、例えば、溶解法などの一般的な合金化方法を用いることにより、プレ・シリコン又は錫合金粒子を作製することができる。
前記第2のステップは、前記プレ・シリコン又は錫合金粒子と第2の他の金属元素とを混合し、少なくともメカニカルアロイング法、メカニカルグライディング法、液体急冷法及び気体急冷法より選ばれた1又は2以上の製法を用いることによりプレ・シリコン又は錫合金粒子を非晶質化し、その全部または一部に非晶質領域を有するシリコン又は錫からなる合金粒子が作製される。
また、作製されたシリコン又は錫からなる合金粒子はその全部または一部に非晶質領域を有すればよいから、他の金属元素はシリコン又は錫の全部と合金化されている必要はなく、シリコン又は錫の一部と合金化しているものであってもよい。さらに、後述される非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子を表面改質複合化するための第3のステップにおいては、前記これらの異なる製法によって作製されたシリコン又は錫からなる合金粒子の混合粉を使用することもできる。
さらに、作成された負極活物質粒子が酸化してしまうことよるリチウムイオンに対する不活性化を防止するために、第2のステップによるプレ・シリコン又は錫合金粒子の非晶質化処理および第3ステップによる表面改質複合化処理は不活性ガス雰囲気の中で実施されることが好ましい。
プレ・シリコン又は錫合金粒子の非晶質化処理、およびプレ・シリコン又は錫合金粒子の第2の金属元素による表面改質複合化処理とを不活性ガス雰囲気の中で行うと金属酸化物の生成を所定量以下に抑えることが可能であり、また、このような不活性ガス雰囲気下での金属酸化物の生成の抑制は、本発明による負極活物質粒子の構成する各金属元素が雰囲気ガスと反応して他の金属生成物を生成してしまうことをも排除する。
また、このとき生成される金属酸化物の負極活物質粒子全体の重量に占める割合が1wt%より大きくなると、初期負極活物質粒子の利用率が相乗効果で90%以下となるため、負極活物質粒子全体の重量に占める金属酸化物の割合は1wt%以下に抑えられていることが好ましい。
第3のステップよる複雑形状を有する負極活物質粒子の形成は、非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子表面の全部または一部に、遊星ボールミルなどを用いたメカニカルアロイング法、焼結法、およびその他の表面改質複合化法(高速で複数種類の粉体同士が衝突しながら容器内を循環することにより合金化、表面処理する製法で、ハイブリダイジング法とも呼ばれる方法や、容器内壁と中心軸との間隙で粉体が押し付けられる時の摩擦熱と加圧力を利用して合金化、表面処理する製法で、メカニカルグライディング法、またはメカノフュージョン法と呼ばれているものなどがある。)を用いて、低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を表面処理することにより行われる。また、本発明による負極活物質粒子は、これらの異なる製法によって作製された負極活物質粒子の混合粉であってもよい。
前記製法の中で、特にメカニカルアロイング法、メカニカルグラインディング法などを用いて非晶質化されたシリコン又は錫からなる合金粒子の表面に低融点金属元素と、および/または低温焼成炭素や黒鉛、繊維状炭素を被覆すると、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴い粒子形状が破壊した場合でも、これらの導電性材料がシリコン又は錫からなる合金粒子の表面に凹凸を形成しながら残存し、かつ、網の目状に形成された電導性ネットワークを維持することから、固着された導電性材料を媒体として各粒子間の電気的な繋がりが維持され、リチウム二次電池の電池容量の減少が抑制される。
前記第4のステップによる負極活物質粒子を用いた負極の形成は、銅箔や銅メッキされた樹脂フィルムなどからなる負極集電体の表面に本発明により表面改質複合化処理された負極活物質粒子を含む被覆材料を直接に配置し、これを冷間圧延法、塗工法、焼結法、溶融滴下法又は溶射法により負極集電体に表面処理した後プレス処理するか、または加熱・プレス処理を同時に行う製法(加熱プレス法)により実施され、その結果、負極表面に負極活物質粒子同士が被覆された低融点金属元素と、および/または炭素材料とを介した電導性ネットワークを形成し、かつ、所定の空隙率を有する負極が作製される。
このような本発明による負極集電体への被覆方法は、他の特許に説明されているような負極集電体表面を粗面化したところに数μmの厚さに柱状シリコンをイオンスパッタリング、PVD、CVD、蒸着、溶射、メッキなどの方法により形成させる方法に対して被覆層の厚みを厚くできることから、電極容量を大きくして容積効率を高めることができる。
また、バインダーおよび導電材料を混錬した溶液を塗工し乾燥する被覆方法に対して、本発明による被覆方法ではバインダーを省略できる分、負極の厚み変えずに負極活物質粒子の充填密度を高めることができ、この結果、単位容積あたりの電池容量を増大させることができる。
さらに、負極活物質粒子間の電気的な繋がりについては、従来の負極活物質粒子では各粒子同士の接触による間接的な繋がりでのみであったのに対して、本発明による負極活物質粒子では、従来の各粒子同士の繋がりに加えて低融点金属元素と、および/または炭素材料とを介した各粒子間が結合された状態にある直接的な繋がりをも形成させることから、電極の電気抵抗は従来のものに比べて1/10以下にまで低減される。
この結果、本発明による負極を用いたリチウム二次電池は、高率充放電に対して厚み90μmの電極においては、5Cまでは0.2Cの場合とほぼ同程度の電池容量を示すため、小型の電動機器へ適用することもできる。
また、負極に形成される被覆層の空孔率は、負極集電体の表裏面に負極活物質粒子を被覆した状態での前記被覆層の空隙率を好ましくは37%〜65%の範囲内にすることで、負極活物質粒子のリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積膨張を被覆層内部のみで吸収して負極の厚みの増加を抑制することができるため、全体としても前記負極が組み込まれたリチウム二次電池の形状変化を最小限に抑えることができる。さらに好ましくは、充電時にリチウムイオンの吸蔵を完了した状態で被覆層の空孔率が10%程度になるようにするとリチウム二次電池の形状変化を一層少なく抑えることができ、そのためには、負極作製時の負極活物質粒子の粒度、充填量、充填密度および電極厚みを適宜選定することができる。
本発明の要旨ともいうべき低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を負極活物質粒子の表面上に被覆することは、頑丈な電気的繋がりを保有する網目状の電導性ネットワークを各負極活物質粒子間に形成させることに役立ち、その結果、リチウム二次電池の充放電サイクルに伴う体積膨張・収縮による粒子形状崩壊を抑制すると共に、たとえ微細化したとしても電気的な繋がりを維持することからリチウム二次電池のサイクル特性を改善することができた。
この結果、本発明による負極活物質粒子は、(1)負極活物質粒子のリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う粒子の微細化の抑制と、(2)負極活物質粒子のリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う粒子の微細化が起こっても微細化された微粒子の電気的な繋がりを保持することができる。
また、本発明による負極は、(3)負極集電体面に接合した網目状の電導性ネットワークを形成しており、負極活物質粒子の微粒子化が起こったとしても、前記電導性ネットワークが存在するために各粒子間における電気的な導電性や機械的な繋がりが確保されてリチウムイオンの電気化学的反応に寄与できる。
また、本発明による負極は、(4)負極集電体面上に本発明による負極活物質粒子を加熱し低融点金属を溶解または軟化させて固着させるだけの比較的簡単な工程で負極活物質粒子を酸化させることなく製造でき、リチウムイオンの吸蔵および放出時における体積変化を低減できるリチウム二次電池用負極活物質粒子およびその製造方法、並びにその負極活物質粒子を用いた負極およびリチウム二次電池を提供することができる。
さらに、本発明による負極活物質粒子は、(5)充放電効率が高く、サイクル寿命及びエネルギー密度が低下せず、更に内部抵抗が増大しないリチウム二次電池を提供することができる。
なお、本発明における他の金属元素の個々の比率および原材料の粒度などについては、本発明の技術的思想に従う限りにおいて特に限定されるものではなく、例えば、低融点金属元素は半田に限らず、負極活物質粒子を変質させない温度で溶解し互いに接合できる金属元素や他の導電ペーストなども利用でき、さらには電導性の乏しい正極活物質に対しても利用できるなどリチウム二次電池の用途・容量・形態に応じて適宜選択されるものである。
以下、本発明による負極活物質粒子を用いた負極、およびその負極を用いたリチウム二次電池について実施例を用いて具体的に説明すると共に、充放電サイクル特性が向上されることを比較例を挙げて明らかにする。
図1は、本発明による負極活物質粒子5を用いた薄型のリチウム二次パック電池1の外観斜視図を示し、電池1にはそれぞれ正極端子2および負極端子3が設けられている。
図2には、図1に用いられている負極の斜視図が示されており、厚み約8μmの銅箔からなる負極集電体4の表裏面に、本発明による負極活物質粒子5を表裏面で相対的に少し位置をずらしてそれぞれ厚みが約40μmになるように熱プレス成形したものである。
負極活物質粒子5には、通常の溶融合金化法により、シリコンにアルミニウム0.07%、クロム0.01%、鉄0.1%およびマグネシウム0.01%をあらかじめ添加させた平均粒子径2μmを有するプレ・シリコン合金粉末粒子を作製し使用した。
つぎに、このプレ・シリコン合金粒子と平均粒子径5μmを有するニッケル粉末粒子、および平均粒子径6μmのマグネシウム粉末粒子とを0.6:0.3:0.1の重量比になるように混合し、アルゴンガス雰囲気下で遊星ボールミル容器内に収納して前記容器を密閉した上で約3時間高速回転させること(メカニカルアロイング法)により、プレ・シリコン合金粒子とニッケル粉末粒子、マグネシウム粉末粒子とを合金化し非晶質化させた。
このとき作製されたシリコン合金粒子をXRD分析したところ、シリコン元素のピークは検出されなかったことから、すべてのシリコンが非晶質化したものと考えられる。
つぎに、平均粒子径が2μmとなるように分級された前記非晶質化された前記シリコン合金粒子粉末と、Sn−Zn−Al合金からなる低融点金属合金元素および気相成長カーボン繊維との重量比が0.9:0.08:0.02となるように配合して、メカノフュージョン機器を用いてシリコン合金粒子の表面改質複合化処理を行なうことにより、本発明による負極活物質粒子5の粉末を作製し、平均粒子径が6μmとなるように分級した。
分級された本発明による負極活物質粒子5の粉末は、有機高分子としてのPVA(ポリビニルアルコール)5%溶液の適量を加えて攪拌混合することによりペースト状にされ、このペースト状にされた負極活物質粒子5を約130℃に予熱された負極集電体4の表裏面に一定厚みを有するように塗布した後、さらに約210℃に加熱されたロールで加熱プレスて負極集電体4の表裏面に被覆(固着)させた後、アルゴンガスと5%水素ガスの混合ガス雰囲気炉内で約750℃、2時間の熱処理を行いPVAを低温焼成カーボン化することによって、本発明によるリチウム電池用の負極を作製した。この時作製された本発明による負極の要部拡大断面状態の模式図を図3(ただし、粒子は表面形態を示す)に示す。
図3に示されるように、負極活物質粒子5を構成するシリコン合金粒子6の表面上には、表面改質複合化処理により被覆(固着)された低融点金属元素であるSn−Zn−Al合金7と気相成長カーボン繊維9とが、互いに溶融したSn−Zn−Al合金8を介して各負極活物質粒子5同士および負極集電体4とを接合させた状態で網目状の電導性ネットワークを形成している。また、有機高分子としてのPVA溶液は不活性ガス雰囲気下での熱処理によりカーボン化し、シリコン合金粒子6の表面に低温焼成カーボン10として析出しシリコン合金粒子6を被覆する。
つぎに、このような構造を有する本発明による負極活物質粒子5が適用された負極被覆層の空隙率を53%となるように所定厚みにプレスした。本発明による負極活物質粒子5が適用された負極被覆層はある意味において焼結体の構造に類似しており、各シリコン合金粒子6の表面上に固着したカーボン繊維9やSn−Zn−Al合金7およびカーボン10が隣接するシリコン合金粒子6同士の電気的な繋がりを形成し、そしてその表面積を増大させた上で、溶融し結合したSn−Zn−Al合金8が骨格となる網目状の電導性ネットワークを形成する。
このように、負極集電体4の表裏面に網目状の電導性ネットワークが形成されてコイル状に巻き取られた負極を所定の幅に切断した後、接着フィルムが熱接着されている負極端子2を該負極集電体4の端部の未塗工部分に超音波溶接し、真空乾燥後に正極集電体とセパレーターを介して重ね合わせながら扁平状に巻き込み、さらに、アルミラミネートフィルムを成形した電池パック内に装填して片面を残して熱シールし、未シール部分から電解液を真空含浸した後に未シール部分を真空下で熱シールすることにより真空密閉し、リチウム二次電池1を作製した。
このようにして作製された、本発明による負極活物質粒子が塗工された負極を有する薄型パック電池の設計上の理論電池容量は約2,020mAhとなる。
他の実施例として、実施例1と同じ平均粒子径が2μmとなるように分級された非晶質化されたシリコン合金粉末粒子にSn−Pb合金からなる低融点金属をAr不活性ガス雰囲気中で混合し容器内に密封した。これをハイブリダイジング機にセットし、約5分間運転しシリコン合金粒子6の表面改質複合化処理を施した。このようにして作製された負極活物質粒子5は、シリコン合金粉末粒子6の表面に小さなSn−Pb合金粒子を点在させて結合していることが観察された。
作製された負極活物質粒子5は平均粒子径が5μmとなるように分級された後、銅箔からなる負極集電体4の表裏面に溶射法により被覆・結合させた。その後、負極集電体4の溶射面を平滑にするためにロール間隙が一定にされた圧延ロールによりロールプレスして、本発明による負極活物質粒子5が適用された負極を作製した。このようにして作製された負極は、図3に示される実施例1の負極活物質粒子5より少し緻密な状態で、負極活物質粒子5がSn−Pb合金により結合し連結されていることが観察された。
この負極を使用して、実施例1と同様にリチウム二次電池1を作製した。その時の設計上の理論電池容量は1,950mAhであった。
なお、この時作製された実施例1および2における他の主なリチウム二次電池1の作製条件は、以下のとおりである。
(1)負極
負極活物質に、溶剤(ポリビニルアルコール5%)の適量を加えることにより溶解してペースト状とし、これを負極集電体4(厚さ8μmの銅箔)に乾燥塗工膜の厚みが約60μmとなるように塗工した。
(2)セパレーター
厚さ約20μmの多層ポリエチレンフィルムを用いた。
(3)正極
コバルト酸リチウム40wt%、鉄リン酸リチウム10wt%、ニッケル−コバルト酸リチウム40wt%よりなる正極活物質90wt%と、導電剤(ケッチェンブラック)5wt%とバインダー(ポリフッ化ビニリデン)5wt%とを混合し、適量の溶剤(N−メチルピロリドン)を加えることにより溶解してペースト状とし、これを正極集電体(厚み約15μmのアルミ箔)に、プレス後の乾燥塗工膜の比重が3、厚みが約60μmとなるように塗工した。
(4)電解液
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとが1:1の混合液に、LiPFを1M濃度となるように溶解した。
図4には、上記の本発明による負極活物質粒子および負極が適用されたリチウム二次電池の5時間率での充放電サイクルした場合の結果と、その比較例として、低融点金属および炭素材料で表面改質複合化処理がなされていないシリコン合金粒子とケッチェンブラックからなる導電材およびバインダーとを混錬した溶液を塗工機で所定厚みに塗工し、約150℃で約10分間乾燥した後、プレス処理を施して作製された負極を用いたリチウム二次電池による5時間率での充放電サイクルした場合の電池の特性を示す。
ここで、図4の中のA1及びA2で示される曲線は本発明による実施例1におけるリチウム二次電池の5サイクル目の充電特性と放電特性であり、A3及びA4で示される曲線は45サイクル目の充電特性と放電特性である。また、B1及びB2は本発明による実施例2におけるリチウム二次電池の5サイクル目の充電特性と放電特性であり、B3及びB4で示される曲線は45サイクル目の充電特性と放電特性である。一方、これに対し、C1及びC2で示される曲線は比較例2であるリチウム二次電池の5サイクル目の充電特性と放電特性であり、C3及びC4で示される曲線は45サイクル目の充電特性と放電特性を示している。
図4によれば、本発明による実施例1のリチウム二次電池は、特性Aにより当初設計値通りの電池容量2,020mAhが得られていることが判った。また、45サイクル目の経過後においても約2,010mAhの電池容量を示していることから、45サイクル目の経過後においても当初設計値の約99.5%の電池容量を維持できることが証明された。
また、本発明による実施例2のリチウム二次電池は、特性Bにより当初設計値通りの電池容量1,950mAhが得られていることが判った。さらに、45サイクル目の経過後においても約1,900mAhの電池容量を示していることから、45サイクル目の経過後においても当初実測値の約97.4%の電池容量を維持できることが証明された。
ここで、実施例2のリチウム二次電池の電池容量が実施例1のリチウム二次電池に比べて少なく、しかも、充放電サイクル経過後においても電池容量が大きく減少した原因としては、実施例2の負極は溶射法を用いて負極活物質粒子を被覆したために負極内に酸化物が生成され、充放電に際しリチウムイオンがこの酸化物を還元することにより消費されて炭酸リチウムとして不動態化した結果、実施例2のリチウム二次電池の電池容量を減少させたものと推察される。
さらに他の実施例として、錫を主成分とする負極活物質粒子が適用された負極を作製した。平均粒子径6μmの錫粒子80wt%、平均粒子径2μmのコバルト粒子15wt%及び平均粒子径5μmのニッケル粒子5wt%をアルゴンガス雰囲気下で遊星ボールミル容器に総量約20ccとなるように装填し、密封して約150Gの加速度を印加して約70分間、同装置を運転しMA化処理した。
つぎに、得られた非晶質化された錫からなる合金粒子を平均粒径7μmとなるように分級し、これに低融点合金元素としての平均粒子径3μmのSn−Zn合金粒子を混合して遊星ボールミル装置で200rpm、20分間の条件で表面改質処理を行い、錫からなる合金粒子の表面にSn−Zn合金粒子を固着させた。
このようにして作製された負極活物質粒子を平均粒子径が6μmとなるように分級した後、厚み10μmの銅箔からなる負極集電体の表面にバインダーを用いることなく配置し、約280℃に加熱して負極集電体の表面に固着させ、さらに加圧ロールで表面を平滑にして本発明による負極活物質粒子が適用された負極を作製した。
さらに前述の実施例と同じ条件を用いて作製された正極、セパレータおよび電解液を用いて理論電池容量が約1,800mAhとなるリチウム二次電池を作製し、23℃で0.2Cの電流値で充放電サイクル試験を実施したところ、初期の電池容量が1,790mAhに対して、45サイクル目では約1,710mAhと約95%の利用率を示した。
一方、これに対して比較例によるリチウム二次電池の特性Cは、当初設計電池容量値の約2,000mAhに対して、最初の充電では約1,970mAhとほぼ設計値通りの電池容量を示したが、5サイクル目では約1,750mAh、45サイクル目では約950mAhと電池容量の減衰が著しいことが判明した。これは、リチウム二次電池の充放電サイクルと共に負極活物質粒子の表面に抵抗層が形成されたり、各粒子間での電気的な繋がりが膨張・収縮を繰り返す間に破壊されて乏しくなったものと考えられる。
このように、本発明よるリチウム二次電池の充放電サイクル経過後における電池容量の減少が小さいのは、負極内での本発明による負極活物質粒子からなる被覆層のリチウムイオン吸蔵・放出による体積膨張・収縮の変化が小さく、かつ、前記被覆層がその体積変化による応力歪に対抗できる強度を有しているからと考えられる。
さらに重要なことは、負極活物質粒子表面の全部または一部に低融点合金元素と、および/またはカーボン又は黒鉛からなる炭素材料が固着されて網目状の電導性ネットワークを形成し、個々の粒子および負極集電体との連結を低融点金属元素と、および/または炭素材料により強化できたことにある。この結果、充放電サイクルに伴う膨張・収縮の繰り返しにより負極活物質粒子の微細化が進んだとしても、表面改質複合化処理効果により複雑形状化された負極活物質粒子の表面は導電機能を維持することができ、たとえ負極活物質粒子が負極集電体から離脱しても負極内での電気的接続ネットワークが確保されて、充放電時の十分な電子の移動を可能とすることができた。
なお、負極活物質粒子としてシリコン又は錫と他の金属元素とを混合してその全部または一部を合金化して調整する場合には、他の金属元素を複数種類混合してより高い充放電効率を示す最適な他の金属元素の組み合せがあることが認められた。
例えば、アルミニウム、銅および錫は他の金属元素と合金化し易く、鉛およびアンチモンなどは他の金属元素との合金化を促進し、かつ、マグネシウムはリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積膨張収縮に対してもシリコン又は錫からなる合金粒子の微細化を抑制して導電機構を維持する傾向が強いことが判明した。
一方、これに対してアルミニウム、鉄、マグネシウムおよびニッケルは非常に活性な金属元素であるために、特にシリコン又は錫と合金化する際の雰囲気に注意を払わないと酸化による発熱が起こり、その結果、リチウム二次電池の充放電効率を低下させるのでその取り扱いには注意を要する。金属酸化物がシリコン又は錫からなる合金粒子内で一部にでも存在すると、リチウムイオンを吸蔵した場合にリチウムイオンが酸化して不活性化してしまい、惹いてはリチウムイオン電池の容量を減少させることになる。なお、リチウム二次電池に用いられる全ての材料の水分率は、10ppm以下とすることによりリチウム二次電池の寿命が向上することが判った。
本発明による負極活物質を用いた薄型パック電池の斜視図を示す。 本発明による負極活物質を塗工した負極の斜視図を示す。 本発明による負極の要部拡大モデル構造断面図(ただし、粒子は表面形態を示す)を示す。 本発明による負極が適用されたリチウム二次電池と比較例とのリチウム二次電池の充放電サイクル特性を示す。
符号の説明
1 薄型パック電池
2 負極端子
3 正極端子
4 負極集電体
5 負極活物質
6 シリコン合金粒子
7 Sn−Zn−Al合金
8 溶融したSn−Zn−Al合金
9 カーボン繊維
10 カーボン

Claims (5)

  1. 電気的化学にリチウムを吸蔵および放出するリチウム二次電池用の負極活物質粒子を製造する方法であって、
    シリコン又は錫の全部または一部に前記シリコン又は錫に対し0.1重量%以下の第1の他の金属元素を合金化させてシリコン又は錫からなる合金粒子を製造するための第1のステップと、
    前記合金粒子表面の全部または一部を第2の他の金属元素で合金化および/または表面処理し、非晶質領域を有するシリコン又は錫と他の金属元素とからなる合金粒子に改質するための第2のステップと、そして、前記非晶質領域を有するシリコン又は錫と他の金属元素とからなる合金粒子に低融点金属元素またはこれとカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を固着させて負極活物貿粒子を形成させるための第3のステップとを含み、前記第3のステップは、少なくともメカニカルアロイング法、メカニカルグライディング法、メカノフュージョン法、ハイブリダイジング法および焼結法より選ばれた1又は2以上の製法により合金化および/または表面処理するものであり、
    かつ前記第1の他の金属元素は、鉄、アルミニウム、クロム、マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、第2の他の金属元素は、鉄、アルミニウム、コバルト、銅、ニッケル、クロム、マグネシウム、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモンおよび錫(ただし、錫が使用されるのは第1のステップでシリコンが使用される場合)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記低融点金属元素は、錫(Sn)−鉛(Pb)合金、錫(Sn)−アンチモン(Sb)合金、錫(Sn)−銀(Ag)合金、錫(Sn)−ビスマス(Bi)合金、錫(Sn)−インジウム(In)合金、錫(Sn)−亜鉛(Zn)合金、錫(Sn)−亜鉛(Zn)−アルミニウム(Al)合金、錫(Sn)−銀(Ag)−インジウム(In)−ビスマス(Bi)合金、銀ロウ、ビスマス、アンチモン及びセレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、リチウム二次電池用負極活物質粒子の製造方法。
  2. 電気化学的にリチウムを吸蔵および放出するリチウム二次電池用負極を製造する方法であって、
    シリコン又は錫の全部または一部に前記シリコン又は錫に対し0.1重量%以下の第1の他の金属元素を合金化させてシリコン又は錫からなる合金粒子を製造するための第1のステップと、
    前記合金粒子表面の全部または一部を第2の他の金属元素でさらに合金化および/または表面処理し、非晶質領域を有するシリコン又は錫と他の金属元素とからなる合金粒子に改質するための第2のステップと、前記非晶質領域を有するシリコン又は錫と他の金属元素とからなる合金粒子に低融点金属元素またはこれとカーボン又は黒鉛からなる炭素材料を固着させて負極活物質粒子を形成させるための第3のステップと、前記第3のステップは、少なくともメカニカルアロイング法、メカニカルグライディング法、メカノフュージョン法、ハイブリダイジング法および焼結法より選ばれた1又は2以上の製法により合金化および/または表面処理するものであり、
    前記負極活物質粒子を含む被覆材料を負極集電体に表面処理し、負極を形成させるための第4のステップとを含み、
    かつ前記第1の他の金属元素は、鉄、アルミニウム、クロム、マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、第2の他の金属元素は、鉄、アルミニウム、コバルト、銅、ニッケル、クロム、マグネシウム、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモンおよび錫(ただし、錫が使用されるのは第1のステップでシリコンが使用される場合)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記低融点金属元素は、錫(Sn)−鉛(Pb)合金、錫(Sn)−アンチモン(Sb)合金、錫(Sn)−銀(Ag)合金、錫(Sn)−ビスマス(Bi)合金、錫(Sn)−インジウム(In)合金、錫(Sn)−亜鉛(Zn)合金、錫(Sn)−亜鉛(Zn)−アルミニウム(Al)合金、錫(Sn)−銀(Ag)−インジウム(In)−ビスマス(Bi)合金、銀ロウ、ビスマス、アンチモン及びセレンからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    さらに、前記第4のステップは、前記負極活物質粒子を含む被覆材料を冷間圧延法、塗工法、焼結法、溶融滴下法又は溶射法により負極集電体に表面処理した後プレス処理する製法、または加熱プレスする製法であることを特徴とする、リチウム二次電池用負極の製造方法。
  3. 前記炭素材料は、少なくとも600℃〜800℃の範囲の温度で焼成された低温焼成カーボン、カーボン繊維及び黒鉛よりなる群から選ばれた1種又は2種以上の炭素材料であることを特徴とする、請求項1または2記載のリチウム二次電池用負極活物質粒子または負極の製造方法。
  4. 前記第4のステップは、前記負極活物質粒子と高分子有機材料溶液とを含む被覆材料を不活性ガス雰囲気の中で負極集電体に加熱プレス法で表面処理することにより、前記高分子有機材料溶液をカーボン化または揮発化させて負極を形成させることを特徴とする、請求項2または3記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の方法により得られたリチウム二次電池用負極を用いることを特徴とする、リチウム二次電池の製造方法。
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