JP5148051B2 - リチウム電池用負極電極、その製法及び装置、リチウム電池の製法、リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、黒鉛系は、理論容量密度が372mAh/gと小さく、更に容量の大きい負極活物質が求められている。
シリコンは、リチウムとの電池反応によりLi4.4Si(Li22Si5)なる化合物を形成し、約4200mAh/gもの理論容量密度を有することが知られている。
スパッタによる成膜の場合、Cu集電板上に微細なSiの柱状結晶が成長し、その粒界が体積膨張を緩衝し高サイクル特性を発揮させている。
したがって、シリコンの理論容量は約4200mAh/gと大きいものの、シリコン膜を基板上に生成した場合、その膜厚は数μmであり、記載されている単位面積当たりの電流密度は、0.04mA/cm2程度であり、シリコンの導電性不足からあまり大きくできないようになっていると考えられる。
また、導電性を良くするために、炭素を混入或いはシリコン表面に塗布するものでは、シリコンと炭素との結合度が弱く、充放電を繰返すと負極活物質が負極基板から剥離する可能性があるという問題がある。
更に、微粒子SiとCの比率が小さくなると負極としての容量が小さくなり、理論容量密度が約4200mAh/gと大きいというシリコンの特性を十分に生かすことができないという問題がある。
したがって、充電時において、リチウム等の電解物質は、この間隙を通り負極基板付近まで速やかに侵入するため、負極活物質膜の膜厚を大幅に厚くすることが可能となる。
また、負極活物質膜の表面から負極基板への電気導通路が形成されるため、電池の内部抵抗が低くなり、大電流を流すことが可能となる。
したがって、大容量、大電流、且つ急速充放電可能な負極電極を得ることができる。
また、間隙が形成されている場合には、充電時に、シリコンとリチウムが結合してLi4.4Siとなるとき、体積膨張の吸収をより多くすることができる。
〔製造装置〕
先ず、図1に基づき、本発明の第1の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置につき説明する。
なお、図1は、本発明の第1、2の実施の形態に係わるリチウム電池の負極電極の製造装置の概略図を示しているが、加熱炉24を備えた(還元炉26がない)ものが第1の実施の形態に係るものである。
図1に示すように、負極活物質膜生成容器(真空容器)1内の上方に、基板載置架台2が、図示略の移動手段により左右に移動可能に設置されている。
負極活物質膜生成容器1内の基板載置架台2の下方には、負極基板39に対向するように粒子噴出ノズル3が設置されている。
粒子噴出ノズル3の入口は、混合流体搬送管7に接続されている。
混合流体搬送管7は、負極活物質膜生成容器1の壁を気密に貫通して、エジェクタ8の吐出口に接続されている。
そして、粒子噴出ノズル3から噴出された原料粉末が、負極基板39に付着して処理前の負極活物質膜34aが形成されるが、付着しなかったものは、この落下粉末回収管9を通して図示略のポンプ等により吸引、回収される。
排気手段4により、作業準備段階における負極活物質膜生成容器1内の空気、作業中における搬送ガス等が排気される。
なお、負極活物質膜生成容器1内の圧力は、後記する搬送ガス供給手段18により粒子噴出ノズル3から噴出される5〜15リットル/分の搬送ガスとの関係から、原料粉末が噴出して負極基板39に衝突させるのに邪魔にならない程度の圧力に保持されている。
原料粉末供給管13aは、原料粉末貯留槽12(ホッパ)の下端に接続されている。
更に、原料粉末貯留槽12の上部には、開閉弁16を有する原料粉末供給管13bが接続され、原料粉末供給管13bは原料粉末供給槽15の下端に接続されている。
そして、この原料粉末供給槽15には、図示略の原料投入口が設けられると共に、排気管17が接続されている。
そして、原料粉末を供給する場合は、先ず原料粉末供給槽15の図示略の原料投入口より原料粉末を投入する。
この時、開閉弁16は閉じている。
原料粉末を投入し原料投入口を閉じた後、排気管17を通じて原料粉末供給槽15内の空気を排出して、原料粉末供給槽15内を真空にする。
なお、原料粉末貯留槽12内も真空となっている。
そして、原料粉末貯留槽12内に供給された原料粉末は、原料粉末供給管13aを通り原料粉末流量調整弁14により流量が調整されて、エジェクタ8に吸引される。
なお、原料粉末貯留槽12内及び原料粉末供給槽15内は、必ずしも真空にする必要はなく、搬送ガスを注入して、原料粉末が容易にエジェクタ8に吸引しやすい圧力としても良い。
搬送ガス貯留槽22内には、高圧或いは液状のヘリウム、アルゴン、窒素等の搬送ガスが貯留されている。
なお、この搬送ガスは、上述の不活性ガスに限らず乾燥した空気も使用することが可能である。
搬送ガス供給管19内を流れるアルゴン等の搬送ガスの流量は、この搬送ガス流量制御装置20により、5〜15リットル/分、好ましくは10リットル/分程度に制御される。
なお、この制御流量、調整圧力は、粒子噴出ノズル3から噴出する原料粉末(粒子)の速度が、700〜1200m/秒になるように、製造装置の規模等により各々適正な値に設定されるものである。
また、止め弁23a、23b、23cは、配管類の着脱時等に使用される弁である。
この加熱炉24内或いはその壁面には、加熱炉24内を加熱するヒータ25が設けられている。
更に、材料搬出入するための図示略の密閉扉が設けられ、図示略の排気手段、不活性ガス供給手段が接続されている。
本発明の第2の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置は、第1の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置において、加熱炉24に換えて還元炉26が設けられている。
その他の負極活物質膜生成容器1、排気手段4、落下粉末回収管9、開閉弁10、エジェクタ8、原料粉末供給手段11、搬送ガス供給手段18、搬送ガス貯留槽22等は、第1の実施の形態のものと同様に設けられている。
但し、上述の第1に実施の形態で述べた、搬送ガス供給管19の途中の図示略の水素ガス供給装置は設ける必要はない。
この還元炉26内或いはその壁面には、還元炉26内を加熱するヒータ25が設けられている。
また、還元炉26には、水素ガス流量調整弁29が介装された水素ガス供給管28、及び水素ガス貯留槽27が接続されている。
更に、材料搬出入するための図示略の密閉扉が設けられ、図示略の排気手段、不活性ガス供給手段が接続されている。
また、負極活物質膜生成容器1と還元炉26とを個別に設ける場合、負極活物質膜34aは空気に触れても問題ないので、密閉された搬送通路は必ずしも必要ない。
次に、図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7に基づき、製造方法につき説明する。
図2は、本発明の第3の実施の形態に係わるリチウム電池の負極電極の製造工程を示すブロック図、図3は、本発明の第4の実施の形態に係わるリチウム電池の負極電極の製造工程を示すブロック図、図4は、本発明の第5の実施の形態に係わるリチウム電池の負極電極の製造工程を示すブロック図である。
図5は、本発明の第3の実施の形態に係わる負極活物質膜の形成原理を示す想定模式図、図6は、本発明の第4の実施の形態に係わる負極活物質膜の形成原理を示す想定模式図である。
図7は、本発明の各実施の形態における導電性物質の含有率と出力特性との関係を示す図である。
この製造方法は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置(図1において加熱炉24を備えたもの)を用いて行われる。
この負極活物質の粒子32は、粒径が1〜20μm(平均粒径5μm)程度の、結晶シリコン、微結晶シリコン或いは非結晶シリコン、或いは錫と銅の合金の少なくともいずれかの粒子である。
このようにして、図5(a)に図示の、負極活物質の粒子32の表面に導電性物質膜33がコーティングされた負極用粒子31が生成される。
このコーティングは、負極活物質の粒子32の表面全体に施されていることが望ましいが、部分的にコーティングされたものでも良い。
なお、負極活物質の粒子32の表面への導電性物質のコーティングは、CVD法、スパッタリング法、溶射法、又は真空蒸着法、又はメッキ法等により行われる。
また、負極用粒子31において、銅等の導電性物質膜33の体積は、図7に図示のように、0.2≦導電性物質膜33の体積/(導電性物質膜33の体積+負極活物質の粒子32の体積)≦0.5、即ち30%±20%の20〜50%とすることが好ましい。
銅等の導電性物質の量が多い場合(30〜50%)には、電池の容量は減少するものの、充放電特性の優れたものとなる。
また、銅等の導電性物質の量が少ない場合(20〜30%)には、充放電特性は多少減少するものの、電池の容量の大きなものとなる。
そして、真空ポンプ6により、負極活物質膜生成容器1内の空気を排出し真空にする。
流量及び圧力が調整された搬送ガスは、搬送ガス供給管19内を流れ、エジェクタ8の作動流体投入口に導入される。
そして、負極用粒子31が混入された搬送ガスは、混合流体搬送管7内を流れて、粒子噴出ノズル3から負極基板39に向って吹き付けられる。
このようにして、負極基板39上(図1では下面側)に、図5(a)に図示のように、処理前の負極活物質膜34aが形成される。
なお、本実施の形態における基板載置架台2及び負極基板39の常温とは、通常の大気或いは室内の温度(0〜40度)のみならず、負極基板39および処理前の負極活物質膜34aを構成する負極活物質片36、導電性物質膜片37(図5(a)参照)中の金属等が、溶融しない温度(数百度)以下も含まれるものとする。
また、負極基板39に吹き付けられた負極用粒子31の内、負極基板39に密着しなかった負極用粒子31は、下方に落下し落下粉末回収管9により吸引されて、負極活物質膜生成容器1外に排出される。
図1に図示の製造装置にて、粒子噴出ノズル3より負極基板39に向って、次々と負極用粒子31(原料粉末)が吹き付けられる。
なお、負極用粒子31は、負極活物質の粒子32の外面の全部或いは一部に導電性物質膜33が、CVD法、スパッタリング法、溶射法、真空蒸着法、又はメッキ法等によりコーティングされている。
そして、負極活物質の粒子32が、セラミックス、即ちアモルファス(非結晶)シリコン等の脆性材料の場合、負極基板39に衝突した負極用粒子31は、破砕されて負極基板39の表面に密着する。
この時、負極活物質の表面は露出する。
また、各々の負極活物質片36の一面には、切断された導電性物質膜片37が付着している。
そして、負極基板39から処理前の負極活物質膜34a表面に渡って、導電性物質膜片37が散在し、ある部分においては導電性物質膜片37同士が接している。
例えば、処理前の負極活物質膜34の膜厚が10μmの場合、負極基板39の表面から処理前の負極活物質膜34の表面までの電流流路の内、80%程度が導電性物質膜片37で繋がっていれば、従来の導電性物質膜片37の無い場合の2μmと同程度以上の性能が得られることになる。
従って、処理前の負極活物質膜34の膜厚を大幅に厚くすることが可能となる。
この処理前の負極活物質膜34の膜厚は、少なくとも5μm、例えば10μm以上とすることができる。
更には、導電性物質の含有量を増加させることにより、更に電気抵抗を少なくし、15μm或いは20μmとすることも可能である。
そして、図2に図示の加熱処理工程(ステップS4)において、加熱炉24にて加熱処理が行われる。
加熱炉24内には、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。
このとき、加熱温度を500度にて、30分間加熱することにより、図5(b)に図示のように、負極活物質片36又は加熱処理された導電性物質膜片40間に間隙が生じた負極活物質膜35aが生成される。
なお、この加熱温度及び過熱時間は、負極活物質(シリコン)や導電性物質(銅)が酸化しない雰囲気であれば制限するものではない。
また、導電性物質膜片37が軟化或いは若干溶融し、物質移動が起こって隣接する導電性物質膜片37同士が連結する程度とすべきである。
温度が低すぎると、物質移動が起こりにくく、且つ、間隙が形成されなくなる。
逆に、高すぎると、負極活物質と導電性物質の間で反応生成物が形成され、活物質の欠落や剥離が生じ、或いは、導電性物質膜片37同士が溶融結合して団塊状になり、負極活物質膜35aの表面から負極基板39への電気導通路が消滅する可能性がある。
加熱温度は400〜600℃、加熱時間は25〜35分が適している。
このようにして、負極電極30aが生成される(図2のステップS5)。
したがって、充電時において、リチウム等の電解物質は、この間隙を通り負極基板39付近まで速やかに侵入するため、負極活物質膜35aの膜厚を大幅に厚くすることが可能となる。
また、負極活物質膜35aの表面から負極基板39への電気導通路が形成されるため、電池の内部抵抗が低くなり、大電流を流すことが可能となる。
したがって、大容量、大電流、且つ急速充放電可能な負極電極を得ることができる。
また、充電時に、シリコンとリチウムが結合してLi4.4Siとなるときの体積膨張を吸収することができる。
更に、この電気導通路は、負極活物質の脱落防止効果も奏すると考えられる。
この製造方法は、上述の本発明の第2の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置(図1において還元炉26を備えたもの)を用いて行われる。
この導電性物質の酸化物粒子38は、例えば酸化銅(CuO、CuO2)を用いることにより、還元後に金属銅(Cu)となり、電気導通路としての役割が期待できる。
これ以外にも、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、マグネシウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、クロム、炭素、ニオブの少なくともいずれか1種の導電性物質の酸化物粒子38を使用することができる。
なお、導電性物質の酸化物粒子38は、導電性物質膜33と同じ物質とすることが好ましい。
このとき、第3の実施の形態(図5(b))と異なり、負極活物質膜34bには、導電性物質の酸化物粒子38が含まれている。
そして、図3に図示の還元処理工程(ステップS11)において、還元炉26にて還元処理が行われる。
このとき、加熱温度を500度にて、30分間加熱することにより、図6(b)に図示のように、負極活物質片36又は熱処理された導電性物質膜片40間に間隙が生じた負極活物質膜35bが生成される。
この水素ガス量は、特定されるものではなく、導電性物質の酸化物粒子38を充分に還元できる量以上であれば良い。
この水素ガスにより、酸化物粒子38中の酸素は還元され水となり、還元され体積が縮小した導電性物質41となり、また、酸素が除去されることにより間隙が形成される。
なお、還元処理の場合、加熱温度は、酸化銅を還元することができる雰囲気であればこれを制限するものではなく、温度としては400〜600℃が適している。
このようにして、間隙の多い負極活物質膜35bが生成された負極電極30bが生成される(ステップS5)。
したがって、充電時において、リチウム等の電解物質は、この間隙を通り負極基板39付近まで速やかに侵入するため、負極活物質膜35bの膜厚を大幅に厚くすることが可能となる。
したがって、大容量、大電流、且つ急速充放電可能な負極電極を得ることができる。
また、間隙が形成されているので、充電時に、シリコンとリチウムが結合してLi4.4Siとなるとき、体積膨張の吸収をより多くすることができる。
更に、この電気導通路は、負極活物質の脱落防止効果も奏すると考えられる。
この製造方法は、上述の本発明の第2の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置(図1において還元炉26を備えたもの)を用いて行われる。
その他の条件、成分等については、第3、4の実施の形態と同様である。
したがって、充電時において、リチウム等の電解物質は、この間隙を通り負極基板39付近まで速やかに侵入するため、負極活物質膜の膜厚を大幅に厚くすることが可能となる。
また、負極活物質膜の表面から負極基板への電気導通路が形成されるため、電池の内部抵抗が低くなり、大電流を流すことが可能となる。
したがって、大容量、大電流、且つ急速充放電可能な負極電極を得ることができる。
また、充電時に、シリコンとリチウムが結合してLi4.4Siとなるときの体積膨張を吸収することができる。
更に、この電気導通路は、負極活物質の脱落防止効果も奏すると考えられる。
上述の製造装置、製造方法により生成された間隙を有する負極活物質膜35(35a、35b)は、後述するように、粒径が100nm以下の負極活物質片36が生成されていることが分かる。
また、得られるシリコン性の負極活物質膜35の組織は、シリコンの負極活物質片36と、それにコーティング、熱処理された導電性物質膜片40或いは還元された導電性物質41との超微細な複合組織よりなる粒界が無数に結合すると共に、多くの間隙を有する膜であり、多くの粒界を有するものとなっている。
銅製の負極基板39との接合も強固であり、数10μmの膜厚の間隙を有する負極活物質膜35の成膜も可能である。
また、表面に薄く導電性物質膜33をコーティングしたシリコン製の負極用粒子31、或いは、これに導電性物質の酸化物粒子38を混入したもの、又は、負極活物質の粒子32と導電性物質の酸化物粒子38とを混ぜたものを、負極基板39に吹き付け、加熱処理或いは還元処理することによって、負極基板39又は導電性物質膜片37等の導電相とシリコン等の負極活物質片36との複合組織となり、スムーズな集電が可能となり、且つ、間隙を有するので、充電時にリチウムイオンが奥(負極基板39付近)までスムーズに移動するので、出力特性に優れるシリコン系負極とすることができる。
更に、この導電性物質に、銅等の柔らかい金属を用いると、体積膨張の際の緩衝作用や負極基板39とシリコン等の負極活物質片36との密着性を向上させる働きもある。
負極活物質の粒子32は、シリコン粉末で、平均粒径5μmのものを用いた。
先ず、図2、図3、図4に図示の負極基板への吹き付け工程(ステップS3)により、負極基板39及び処理前の負極活物質膜34aからなる図8に図示の各中間体を生成した。
なお、導電性物質膜33として、炭素(中間体B1)、鉄(中間体B2)、コバルト(中間体B3)、ニッケル(中間体B4)、銅(中間体B5)、マンガン(中間体B6)、マグネシウム(中間体B7)、チタン(中間体B8)、バナジウム(中間体B9)、クロム(中間体B10)、ニオブ(中間体B11)を使用して、負極活物質の粒子32の表面に、薄膜を蒸着、スパッタ、及びメッキにてコートした。
これを、負極基板39に吹き付け、衝突、破砕させて、処理前の負極活物質膜34の膜厚が10μm程度の負極電極の各中間体を製作した。
電解液は、エチレンカーボネート(EC)50容量%とジエチルカーボネート(DEC)50容量%の混合溶媒に過塩素酸リチウム(LiClO4)を1mol/リットルの濃度となるように溶解させたものを用いた。
上述の各中間体からなる電極及び正極でセパレータを挟み、コイン型電池を作製し、電解液に入れて電池特性を調べた。
比較例X1として、負極に黒鉛を用い、上記実施例と同様にして評価用電池を構成した。
なお、単極の試験セルでは、作用極の還元を充電とし、酸化を放電としている。
上記の各試験セルを、25度にて、0.5mAの定電流で、参照極を基準とする電位が0Vに達するまで充電した後、2Vに達するまで放電を行った。
これを1サイクルの充放電とし、1サイクル(初期)目の放電容量と、10サイクル目の放電容量劣化率(%)を測定した。
このように、導電性物質をコーティングしたシリコン粒子により製作した場合(中間体B1〜B11)は、コート材なしの場合に比べて初期放電容量が小さいが、10サイクル後の放電容量劣化率はある程度小さくなっている。
次に、上述の各中間体の内、中間体A1、B5を、図9に図示のように、加熱処理、或いは還元処理し負極電極30を生成した。
実施例1は、中間体B5を加熱処理したものであり、本発明の第1の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置(図1において加熱炉24を備えたもの)を使用し、第3の実施の形態に係わるリチウム電池の負極電極の製造工程(図2)により、窒素ガス中において、加熱温度500度にて30分間加熱処理し、負極電極30を生成したものである。
また、実施例2は、中間体A1を還元処理したものであり、本発明の第2の実施の形態に係るリチウム電池の負極電極の製造装置(図1において還元炉26を備えたもの)を使用し、第5の実施の形態に係わるリチウム電池の負極電極の製造工程(図4)により、水素ガスを3%含むアルゴンガス中で、加熱温度500度にて30分間加熱し、還元処理し、負極電極30を生成したものである。
なお、比較例Y1は、中間体B5そのものを負極電極とした例、比較例Y2は、中間体A1そのものを負極電極とした例である。
また、図14は、負極電極を、実施例1、実施例2、比較例Y1、比較例Y2、比較例X1のものを用いた各リチウム二次電池の性能確認結果を示す。
またX線回折により銅とシリコンの物質から構成されていることが確認されることから、実施例1及び実施例2で得られた負極電極30の組織はシリコンと銅と間隙からなる微細組織である。
一方、実施例1及び実施例2で得られた負極活物質膜35は銅製の負極基板39との接合も強固であり、数10μmの膜厚の成膜も可能である。
出力特性を評価するため、電流密度を変えクーロン効率(放電容量/充電容量×100(%))を求めた結果を図14に示す。
以上のように本発明では、負極活物質を高速ガスで吹き付けることで成膜したものに熱処理や還元処理することで負極活物質膜35内に間隙を付与し、出力特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
次に、図15、16に基づき、本発明の実施形態である角型リチウム二次電池の一例を示す。
このリチウム二次電池60aは、いわゆる角型と呼ばれるもので、図15に図示のように、複数の負極電極30(30a、30b)と、複数の正極電極50aと、負極電極30と正極電極50aとの間にそれぞれ配置されたセパレータ64aと、非水電解液(非水電解質)とを主体として構成されている。
そして電池ケース61aの上部には封口板63aが取り付けられている。
この封口板63aのほぼ中央には、電池の内圧上昇を防止する安全弁62が設けられている。
セパレータ64aには、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔性高分子材料膜、ガラス繊維、各種高分子繊維からなる不織布等が用いられる。
この負極リード56aには、封口板63aを貫通する負極端子57が取り付けられている。
同様に、正極電極50aの一端には正極タブ53が形成され、正極タブ53の上部には正極タブ53を連結する正極リード54aが取り付けられている。
この正極リード54aには、封口板63aを貫通する正極端子55aが取り付けられている。
上記構成により、負極端子57及び正極端子55aから電流を取り出せるようになっている。
負極基板39の一端に、前述の負極タブ58が突出して形成されている。
正極基板51の一端に、前述の正極タブ53が突出して形成されている。
正極電極膜52は、固形分と結着材とが混合されて膜状に成形されたもので、固形分には少なくとも正極活物質粉末(電極活物質)及び導電助材粉末が含まれている。
なお、図16においては説明を簡略にするために、負極基板39、正極基板51の片面に負極活物質膜35、正極電極膜52を成膜した形態を示しているが、負極活物質膜35、正極電極膜52を、負極基板39、正極基板51の両面に成膜してもよいのはもちろんである。
リチウム二次電池60bは、長い帯状の正極電極50bと長い帯状の負極電極30の間に、長い帯状のセパレータ64bを挟みつけ、さらに正極電極50bの外側に別の長い帯状のセパレータ64bを配置し、この状態でスパイラル状に巻きつけた電池ユニットを、円筒状の電池ケース61b内に挿入している。
また、正極電極50bとしては、アルミニウム箔の両面上に正極活物質層を形成したものを用いている。
負極電極30は、図示略の負極タブにより負極リード56bを介して電池ケース61bに電気的に接続されて、正極電極50bは、図示略の正極タブにより正極リード54bを介して封口板63bを貫通する正極端子55bに電気的に接続されている。
上述の負極材料、負極電極、電池及びその製造方法、装置は、リチウム電池のみならず、リチウム二次電池にも採用可能である。
2 基板載置架台
3 粒子噴出ノズル
4 排気手段
5 排気管
6 真空ポンプ
7 混合流体搬送管
8 エジェクタ
9 落下粉末回収管
10 開閉弁
11 原料粉末供給手段
12 原料粉末貯留槽
13a、13b 原料粉末供給管
14 原料粉末流量調整弁
15 原料粉末供給槽
16 開閉弁
17 排気管
18 搬送ガス供給手段
19 搬送ガス供給管
20 搬送ガス流量制御装置
21 搬送ガス圧力調整弁
22 搬送ガス貯留槽
23a、23b、23c 止め弁
24 加熱炉
25 ヒータ
26 還元炉
27 水素ガス貯留槽
28 水素ガス供給管
29 水素ガス流量調整弁
30、30a、30b 負極電極
31 負極用粒子
32 負極活物質の粒子
33 導電性物質膜
34、34a、34b (処理前の)負極活物質膜
35、35a、35b (間隙を有する)負極活物質膜
36 負極活物質片
37 導電性物質膜片
38 導電性物質の酸化物粒子
39 負極基板
40 熱処理された導電性物質膜片
41 還元された導電性物質
50a、50b 正極電極
51 正極基板
52 正極電極膜
53 正極タブ
54a、54b 正極リード
55a、55b 正極端子
56a、56b 負極リード
57 負極端子
58 負極タブ
60a、60b リチウム二次電池
61a、61b 電池ケース
62 安全弁
63a、63b 封口板
64a、64b セパレータ
Claims (34)
- シリコンの粒子の表面に導電性物質膜がコーティングされた負極用粒子を、搬送ガスにより搬送して負極基板に高速で吹き付けた後、熱処理することにより、負極基板上に間隙を有する負極活物質膜を形成して負極電極を製造することを特徴とするリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極用粒子は、前記シリコンの粒子に前記導電性物質膜を、CVD法、スパッタリング法、溶射法、真空蒸着法、又はメッキ法により形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極基板上に形成された前記間隙を有する前記負極活物質膜における導電性物質の容積の割合が20〜50容積%となるように、前記導電性物質膜がコーティングされることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極基板を負極活物質膜生成容器内に設置し、
常温で、
前記負極活物質膜生成容器内の前記搬送ガスを排気しながら、
前記負極基板に向けて前記負極用粒子を前記搬送ガスにより700〜1200m/秒の速度で吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。 - シリコンの粒子の表面に導電性物質膜がコーティングされた負極用粒子及び導電性物質の酸化物の粒子を混合し、搬送ガスにより搬送して負極基板に高速で吹き付けた後、水素ガス雰囲気で前記導電性物質の酸化物を還元処理することにより、負極基板上に間隙を有する負極活物質膜を形成して負極電極を製造することを特徴とするリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極用粒子は、前記シリコンの粒子に前記導電性物質膜を、CVD法、スパッタリング法、溶射法、真空蒸着法、又はメッキ法により形成されたものであることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極基板上に形成された前記間隙を有する負極活物質膜における導電性物質の容積の割合が20〜50容積%となるように、前記導電性物質膜がコーティングされると共に前記導電性物質の酸化物の粒子が混入されることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極基板を負極活物質膜生成容器内に設置し、
常温で、
前記負極活物質膜生成容器内の前記搬送ガスを排気しながら、
前記負極基板に向けて前記負極用粒子及び前記導電性物質の酸化物の粒子を前記搬送ガスにより700〜1200m/秒の速度で吹き付けることを特徴とする請求項5に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。 - 前記導電性物質膜がコーティングされた前記負極用粒子を前記負極基板に吹き付ける時に、前記負極用粒子を破砕して、前記負極基板上に負極活物質膜を形成することを特徴とする請求項4又は8に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- シリコンの粒子及び導電性物質の酸化物の粒子を混合し、搬送ガスにより搬送して負極基板に高速で吹き付けた後、水素ガス雰囲気で前記導電性物質の酸化物を還元処理することにより、負極基板上に間隙を有する負極活物質膜を形成して負極電極を製造することを特徴とするリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極基板上に形成された前記間隙を有する負極活物質膜における前記導電性物質の容積の割合が20〜50容積%となるように、前記酸化物の粒子が混入されることを特徴とする請求項10に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記負極基板を負極活物質膜生成容器内に設置し、
常温で、
前記負極活物質膜生成容器内の前記搬送ガスを排気しながら、
前記負極基板に向けて前記シリコンの粒子及び前記導電性物質の酸化物の粒子を前記搬送ガスにより700〜1200m/秒の速度で吹き付けることを特徴とする請求項10に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。 - 前記シリコンの粒子及び前記導電性物質の酸化物の粒子を前記負極基板に吹き付ける時に、前記シリコンの粒子を破砕して、前記負極基板上に負極活物質膜を形成することを特徴とする請求項12に記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記導電性物質は、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、マグネシウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、クロム、ニオブの少なくともいずれか1種の酸化物であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記熱処理、又は還元処理は、加熱温度を400〜550度の範囲、加熱時間を25〜35分の条件にて行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記シリコンの粒子は、結晶シリコン、微結晶シリコン或いは非結晶シリコンの少なくともいずれかの粒子であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 前記搬送ガスはヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス或いは乾燥空気であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- リチウム二次電池用負極電極の製造方法であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のリチウム電池用負極電極の製造方法。
- 請求項1乃至18のいずれかにより製造された負極電極と、正極電極とをセパレータを挟んで形成することを特徴とするリチウム電池の製造方法。
- 請求項19に記載の製造方法は、リチウム二次電池の製造方法であることを特徴とするリチウム電池の製造方法。
- 負極基板上に負極活物質片が積層されて負極活物質膜が形成された負極電極において、
前記負極活物質膜の活物質は、シリコンの微細多結晶からなり、リチウムを吸蔵、放出する活物質であって、
前記負極活物質片の一面には導電性物質膜片が形成され、
前記活物質片の粒子間に間隙が形成されている
ことを特徴とするリチウム電池用の負極電極。 - 前記負極基板の材質は、銅、ニッケル、ステンレスの少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項21に記載のリチウム電池用の負極電極。
- 前記導電性物質膜片の材質は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、マグネシウム、チタン、バナジウム、ジルコニウム、クロム、炭素、ニオブの少なくともいずれか1種であることを特徴とする請求項21又は22に記載のリチウム電池用の負極電極。
- 前記負極基板上に形成された前記負極活物質膜における導電性物質の容積の割合が20〜50容積%であることを特徴とする請求項21乃至23のいずれかに記載のリチウム電池用の負極電極。
- 前記負極基板上に積層して形成された前記負極活物質膜の厚さは、5μm以上であることを特徴とする請求項21乃至24のいずれかに記載のリチウム電池用の負極電極。
- 請求項25に記載の負極電極は、リチウム二次電池用の負極電極であることを特徴とするリチウム電池用の負極電極。
- 請求項21乃至26のいずれかに記載の負極電極と、
正極電極と、
前記負極電極と前記正極電極との間に配設されたセパレータと、
非水電解液とを備えたことを特徴とするリチウム二次電池。 - 負極活物質膜生成容器と、
該負極活物質膜生成容器に接続された排気手段と、
前記負極活物質膜生成容器内に設置された基板載置架台と、
前記負極活物質膜生成容器内に前記基板載置架台に対向して設置された粒子噴出ノズルと、
該粒子噴出ノズルに搬送管を介して接続されたエジェクタと、
該エジェクタの吸入口に接続された原料粉末供給手段と、
前記エジェクタの作動流体投入口に接続され搬送用の搬送ガスを供給する搬送ガス供給手段と、
前記負極活物質膜生成容器にて形成された負極電極を加熱する加熱炉と
を備え、
請求項21乃至26のいずれかに記載のリチウム二次電池用の負極電極を製造するために用いることを特徴とするリチウム電池用の負極電極の製造装置。 - 負極活物質膜生成容器と、
該負極活物質膜生成容器に接続された排気手段と、
前記負極活物質膜生成容器内に設置された基板載置架台と、
前記負極活物質膜生成容器内に前記基板載置架台に対向して設置された粒子噴出ノズルと、
該粒子噴出ノズルに搬送管を介して接続されたエジェクタと、
該エジェクタの吸入口に接続された原料粉末供給手段と、
前記エジェクタの作動流体投入口に接続され搬送用の搬送ガスを供給する搬送ガス供給手段と、
前記負極活物質膜生成容器にて形成された負極電極を水素ガス雰囲気で還元する還元炉と
を備え、
請求項21乃至26のいずれかに記載のリチウム二次電池用の負極電極を製造するために用いることを特徴とするリチウム電池用の負極電極の製造装置。 - 前記加熱炉又は還元炉での処理は、
加熱温度を400〜600度の範囲、加熱時間を25〜35分の条件にて行われるものであることを特徴とする請求項28又は29に記載のリチウム電池用の負極電極の製造装置。 - 前記原料粉末供給手段は、
原料粉末貯留槽と、
該原料粉末貯留槽と前記エジェクタの吸入口との間の配管上に設置された原料粉末流量調整弁とを備え、
前記搬送ガス供給手段は、
高圧の搬送ガス貯留槽と、
該搬送ガス貯留槽と前記エジェクタの作動流体投入口との間の配管上に設けられた搬送ガス圧力調整弁と搬送ガス流量制御装置とを備えたことを特徴とする請求項28乃至30のいずれかに記載のリチウム電池用の負極電極の製造装置。 - 前記基板載置架台を前後或いは左右方向に移動させる架台移動手段を備えたことを特徴とする請求項28乃至31のいずれかに記載のリチウム電池用の負極電極の製造装置。
- 前記基板載置架台の一方端部に設けられリチウム電池の負極基板の薄膜が巻き取られた基板供給手段と、
前記基板載置架台の他方端部に設けられ前記原料粉末が前記負極基板上に吹き付けられて形成された前記負極電極を巻き取る負極電極巻取り手段とを備えたことを特徴とする請求項28乃至32のいずれかに記載のリチウム電池用の負極電極の製造装置。 - 請求項28乃至33のいずれかに記載のリチウム電池用の負極電極の製造装置は、リチウム二次電池用の負極電極を製造する製造装置であることを特徴とするリチウム電池用の負極電極の製造装置。
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