JP2008053217A - リチウム二次電池用電極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウム二次電池のサイクル特性およびレート特性を改善する。
【解決手段】水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能である活物質を集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、前記減圧雰囲気における水蒸気の圧力が前記減圧雰囲気の圧力の17分の1以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能である活物質を集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、前記減圧雰囲気における水蒸気の圧力が前記減圧雰囲気の圧力の17分の1以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、サイクル特性またはレート特性に優れたリチウム二次電池を与える電極の製造方法に関する。
近年、携帯機器等の電子機器の発達に伴い、電子機器に対する高機能化および小型化のニーズが高まっている。これに伴い、電子機器の電源に用いられるリチウム二次電池に対しても、更なる高容量化とサイクル特性の向上が求められている。現在市販されているリチウム二次電池は、負極に黒鉛を用い、正極にLiCoO2などのリチウム含有複合酸化物を用いている。
負極に用いる黒鉛は、理論容量が843mAh/cm3と小さいため、理論容量が9767mAh/cm3と大きなケイ素を用いる検討が盛んである。しかし、ケイ素が、リチウムを吸蔵または放出する際には、膨張または収縮による大きな応力が発生する。よって、電池の充放電を繰り返すと、ケイ素と集電体との電気的接合を保持できなくなり、容量が減少する。
そこで、表面が粗面化された電解銅箔を集電体として用い、空隙を有する活物質薄膜を形成し、サイクル特性を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。また、集電体の表面に、規則的に配列した微小な凹凸パターンを形成し、その上に所定パターンの活物質薄膜を形成し、薄膜に空隙を持たせることが提案されている(特許文献2参照)。
正極については、リチウム含有複合酸化物を、集電体の表面に、その法線方向となす角θが0<θ<90°となるように柱状に成長させることが提案されている。柱状粒子と柱状粒子との間には、微小な空隙が形成される。この空隙にはリチウムイオンの移動を担う電解質が浸透する。よって、正極活物質(リチウム含有複合酸化物)と電解質との接触面積が飛躍的に増大し、正極活物質と電解質との間でリチウムイオンの授受が容易となる。その結果、良好なサイクル特性またはレート特性を得ることが可能となる(特許文献3参照)。
特開2002−313319号公報
特開2004−127561号公報
特開平6−187994号公報
しかし、特許文献1、2が提案するように、集電体の表面に凹凸を形成すると、集電体の厚みが大きくなる。よって、従来と同じ厚さの活物質薄膜を形成した場合、従来よりも電極の厚みが大きくなり、リチウム二次電池のエネルギー密度が低下してしまう。また、特許文献3の提案では、柱状粒子間に形成される空隙が微小であり、かつ形成される空隙が少ない。そのため、電解質のリチウムイオン伝導度が10-2〜10-3S/cmである場合には、活物質層の内部から表面方向および負極方向へのリチウムイオンの移動(拡散)が不十分となり、電池のレート特性が低下してしまう。
リチウム二次電池のエネルギー密度を大きくするためには、表面ができるだけ平滑な集電体を用いることが望まれる。また、リチウム二次電池のレート特性を維持するためには、活物質薄膜中の空隙の状態を適正に制御する必要がある。
本発明は、上記を鑑み、集電体の厚みの増加を抑制しつつ活物質薄膜中の空隙の状態を適正化することにより、サイクル特性またはレート特性が改善されたリチウム二次電池を与える電極と、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能である活物質を集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、減圧雰囲気における水蒸気の圧力が減圧雰囲気の圧力の17分の1以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法に関する。
減圧雰囲気における水蒸気の圧力は、0.03Pa以上、10Pa以下であることが好ましい。水蒸気の圧力は、例えば0.1Pa以上であることが好ましい。
減圧雰囲気の圧力は、0.51Pa以上、170Pa以下であることが好ましい。減圧雰囲気の圧力は、例えば1.4Pa以上であることが好ましい。
減圧雰囲気の圧力は、0.51Pa以上、170Pa以下であることが好ましい。減圧雰囲気の圧力は、例えば1.4Pa以上であることが好ましい。
活物質は、プラズマ発生下で、集電体上に堆積させることが好ましい。
活物質は、スパッタリングまたは蒸着により、集電体上に堆積させることが好ましい。スパッタリングによるときは、減圧雰囲気は、不活性ガスを含む。
活物質は、スパッタリングまたは蒸着により、集電体上に堆積させることが好ましい。スパッタリングによるときは、減圧雰囲気は、不活性ガスを含む。
本発明の製造方法は、様々な活物質、例えばケイ素元素を含む活物質や、リチウム含有複合酸化物を含む活物質を用いる場合に適用できる。
本発明の一形態ではスパッタリングまたは蒸着において、真密度の85%以下の密度を有するターゲットまたは蒸発源を用いる。本発明の別の一形態では、スパッタリングまたは蒸着において、粉末のターゲットまたは蒸発源を用いる。粉末のターゲットまたは蒸発源は、例えばターゲットまたは蒸発源を保持するための基板上に配置された状態(例えば基板上に敷き詰めた状態)で用いる。
本発明は、特に、水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能であり、かつケイ素元素を含有する活物質を、スパッタリングまたは蒸着により、集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、減圧雰囲気における水蒸気の圧力が、前記減圧雰囲気の圧力の17分の1以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法に関する。
本発明は、特に、水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能であるリチウム含有複合酸化物を含む活物質を、スパッタリングまたは蒸着により、集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、スパッタリングまたは蒸着が、真密度の85%以下の密度を有するターゲットもしくは蒸発源、または、粉末のターゲットもしくは蒸発源を用いる、リチウム二次電池用電極の製造方法に関する。このとき、減圧雰囲気の圧力は、0.51Pa以上、170Pa以下であり、減圧雰囲気における水蒸気の圧力は、0.03Pa以上、10Pa以下であることが好ましい。
本発明は、集電体の表面算術粗さRaが、0.3μm以下と非常に小さい場合でも適用できる。すなわち、集電体の表面に凹凸がなくても、良好な空隙を有する活物質の薄膜を得ることができる。
また、本発明は、上記の製造方法で作製されたリチウム二次電池用電極であって、活物質が、略柱状の粒子を含み、略柱状の粒子は多孔体からなり、略柱状の粒子間に空隙が形成されている、リチウム二次電池用電極に関する。
集電体表面に活物質を堆積させて薄膜(以下、活物質薄膜とも称する)を形成する際、減圧雰囲気中に水を導入すると、水がガス化する。ガス化された水、すなわち水蒸気は、活物質薄膜内に取り込まれ、集電体表面と平行な方向への活物質薄膜の成長を阻害する。あるいは、減圧雰囲気中に水蒸気が存在すると、活物質粒子が集電体上に付着する前に水分子と衝突し、活物質粒子のエネルギーが失われる。エネルギーが減少した活物質粒子は、平滑な活物質薄膜を形成しにくい。その結果、活物質薄膜の内部において適度な空隙が形成される。また、活物質は、略柱状の粒子を形成しやすく、略柱状の粒子の内部にも空隙が形成されやすい。
活物質薄膜の内部における空隙は、活物質がリチウムを吸蔵または放出する際の膨張または収縮による応力を緩和する。これにより活物質薄膜の破損や、活物質薄膜の集電体からの剥離が抑制される。よって、優れたサイクル特性を有する電池を与える電極が得られる。
活物質薄膜の内部における空隙には電解質が浸透するため、集電体と活物質との界面付近や、略柱状の粒子の内部まで電解質が容易に到達する。このようにリチウムイオンが容易に移動できるようになるため、電池のレート特性が改善する。
よって、本発明によれば、サイクル特性またはレート特性に優れたリチウム二次電池を与える電極が得られる。
よって、本発明によれば、サイクル特性またはレート特性に優れたリチウム二次電池を与える電極が得られる。
本発明においては、少なくとも水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能である活物質を集電体上に堆積させて薄膜(活物質薄膜)を形成する。得られた薄膜は、リチウム二次電池用電極の活物質層として機能する。本発明において活物質層は、例えば略柱状の粒子を含み、略柱状の粒子は多孔体からなる。略柱状の粒子間には空隙が形成されている。
略柱状の粒子(多孔体)は、その長手方向が膜厚方向と略同一であり、集電体上に例えばランダムに配列されている。基板の凹凸を制御することで、略柱状の粒子を集電体上に規則的に配列させることもできる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。
本発明を実施するためには、減圧雰囲気が必要である。本発明における減圧雰囲気とは、標準大気圧より低い圧力、つまり負圧の状態をいう。減圧雰囲気は、少なくとも水蒸気を含む。減圧雰囲気における水蒸気の圧力を減圧雰囲気の圧力の17分の1以上に制御することで、空隙を有する活物質薄膜を、集電体上に形成することができる。なかでも、減圧雰囲気における水蒸気の圧力が減圧雰囲気の圧力の14分の1以上であることが更に好ましい。
減圧雰囲気における水蒸気の圧力は、0.03Pa以上、もしくは0.1Pa以上であることが好ましい。水蒸気の圧力が0.03Pa以上であれば、集電体の表面算術粗さに関係なく、活物質薄膜に適度な空隙が形成される。水蒸気の圧力が0.03Pa未満では、活物質薄膜に適度な空隙を形成できない場合がある。より良好な空隙を有する活物質薄膜が得られることから、水蒸気の圧力は0.1Pa〜10Pa、もしくは0.2Pa〜5Paであることが好ましい。
減圧雰囲気の圧力は、成膜速度の観点から、できるだけ低いことが好ましく、例えば0.001Pa程度が好ましい。これにより、飛行分子の平均自由行程が大きくなるため、成膜速度が向上する。ただし、安定して多孔体を得るためには、減圧雰囲気の圧力が0.51Pa以上であることが好ましい。例えば、減圧雰囲気の圧力は、0.51Pa〜170Pa、0.51Pa〜20Pa、1.4Pa〜20Paもしくは1.4Pa〜10Paであることが好ましい。
活物質を集電体に堆積させる方法として、スパッタリング法を採用する場合、減圧雰囲気は、さらに不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスには、例えば、Ar、Ne、He等を用いることができる。また、減圧雰囲気は、活物質組成を制御するために、例えば、酸素、窒素等を含んでもよい。ただし、不活性ガスの分圧は、成膜速度をより大きくする観点から、全圧の50%以上であることが望ましい。
本発明の製造方法では、従来公知の様々な活物質を用いることができる。例えば、ケイ素元素を含む活物質、または、リチウム含有複合酸化物もしくはリチウム含有複合リン酸塩を含む活物質を用いることができる。
ケイ素を含む活物質は、例えば、ケイ素単体、ケイ素合金、ケイ素酸化物などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リチウム含有複合酸化物としては、リチウムを含有し、かつ遷移金属を含む複合酸化物が好ましく、リチウム含有複合リン酸塩としては、リチウムを含有し、かつ遷移金属を含む複合リン酸塩が好ましい。遷移金属としては、Co、Ni、Mn、Ti、Feなどが挙げられる。具体的には、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、リチウムコバルトリン酸塩などを用いることができる。
集電体には、従来公知のものを用いることができる。
電極が負極である場合、例えば、圧延銅箔、シリコン基板などが集電体として好適である。シリコン基板は、例えば、熱酸化皮膜を有し、その表面は鏡面状である。
電極が正極である場合、例えばアルミニウム箔、ステンレス鋼箔、などが、集電体として好適である。
電極が負極である場合、例えば、圧延銅箔、シリコン基板などが集電体として好適である。シリコン基板は、例えば、熱酸化皮膜を有し、その表面は鏡面状である。
電極が正極である場合、例えばアルミニウム箔、ステンレス鋼箔、などが、集電体として好適である。
集電体の厚さは、例えば7μm〜20μmが好適である。集電体の表面算術粗さ(Ra)は、特に限定されないが、例えば0.3μm以下の表面算術粗さ(Ra)を有する集電体を用いることができる。
表面算術粗さ(Ra)は、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に準拠した市販の表面粗さ計により測定することができる。
本発明の製造方法では、表面算術粗さが0.3μm以下(例えば0.01〜0.3μm)と小さい集電体を用いる場合でも、活物質薄膜中の空隙の状態を適正に制御することができる。よって、集電体の表面に凹凸を形成する必要がなく、集電体の製造コストが低い。また、Raの小さい集電体は、活物質薄膜を成膜する面が平滑であるため、集電体と活物質薄膜からなる電極の厚みが薄くなる。厚みの薄い電極を用いることで、高エネルギー密度を有する小型もしくは薄型の電池を得ることが容易となる。
活物質は、プラズマ発生下で、集電体上に堆積させてもよい。ここで、プラズマは、アルゴン(Ar)、酸素、窒素、水蒸気等に由来するイオンやラジカルを含む。プラズマを発生させる方法は、特に限定されない。例えば、減圧雰囲気中で、13.56MHzの高周波をコイル電極に印加する方法、2極の電極間に高周波を印加するなどの方法などが挙げられ、一般的な真空成膜方法として、RFスパッタリング法、高周波励起イオンプレーティング法、レーザー蒸着(レーザーアブレーション)法などが挙げられる。
活物質薄膜に含まれる活物質の組成、例えば酸素の含有率は、減圧雰囲気のアルゴンと酸素の導入量、またはアルゴンと水の導入量により制御可能である。アルゴンと酸素の導入量は、例えば、それぞれのボンベに接続されたマスフローコントローラにより調節可能である。減圧雰囲気に水蒸気を導入することにより、活物質の酸化が促進される。よって、還元雰囲気が必要な活物質を用いる場合、例えば微量の水素を不活性ガス(例えばアルゴン)と同時に減圧雰囲気に導入すればよい。
水蒸気は、例えばアルゴンとともに減圧雰囲気に導入する。純水を入れた圧送ボトルにアルゴンを導入し、ボトルに超音波を照射することで、アルゴンを加湿できる。加湿されたアルゴンガスの導入量は、マスフローコントローラで調節する。この場合、水蒸気の圧力は、圧送ボトルに水を入れない状態と、圧送ボトルに水を入れた状態との成膜中の減圧雰囲気の圧力差から求められる。
活物質を集電体上に堆積させる方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンビーム蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、レーザー蒸着法、CVD法、プラズマCVD法などが挙げられる。例えば、スパッタリング法は、堆積させる活物質などの粒子のエネルギーが大きいため、集電体と活物質薄膜との密着性が高くなる。また、スパッタリング法は、導入ガスの分圧のコントロール、および、活物質の組成のコントロールが簡便である。例えば、ケイ素元素と酸素とを含む活物質(SiOxなど)を堆積させる場合、ケイ素と酸素との元素比率のコントロールが簡便である。このとき、ケイ素と酸素との好ましい元素比率は、成膜速度によって異なるが、水蒸気以外に酸素または還元性のガスを減圧雰囲気に導入することで調整できる。ガスの導入量は、当業者であれば適宜調整することができる。
活物質を堆積させるときの集電体の温度は、例えばケイ素元素と酸素とを含む活物質の場合30〜300℃、リチウム含有複合酸化物(例えばコバルト酸リチウム)の場合100〜550℃である。成膜速度(単位時間あたりに増加する活物質の厚さ)は、成膜方法や材料によっても異なるが、当業者であれば適宜調節可能である。例えばケイ素元素と酸素とを含む活物質の場合、スパッタリング法では0.2〜50nm/秒、好ましくは2〜50nm/秒である。蒸着法では5〜2000nm/秒、好ましくは50〜1000nm/秒である。リチウム含有複合酸化物(例えばコバルト酸リチウム)の場合、スパッタリング法、蒸着法ともに0.15〜30nm/秒、好ましくは1.5〜30nm/秒であるが、特に限定されない。
スパッタリングまたは蒸着で用いるターゲットまたは蒸発源としては、例えば、粉末状またはインゴット状の材料を用いる。粉末状の材料は、そのまま粉末として用いてもよいが、例えば、所定の密度に成形(圧粉)したもの、または成形後に焼結を行い、所望の密度に調節したものを用いることができる。
ターゲットまたは蒸発源の密度により、減圧雰囲気中の水蒸気の圧力を制御することができる。例えば、真密度の85%以下の密度を有するターゲットもしくは蒸発源や、粉末のターゲットもしくは蒸発源を用いる場合、ターゲットや蒸発源には適度な水分が含まれている。よって、マスフローコントローラを介して水蒸気を導入しなくても、減圧雰囲気における水蒸気の圧力を、0.03Pa以上、もしくは0.1Pa以上にすることが可能である。ただし、水蒸気を導入しない場合、成膜時間は短時間(例えば4時間以内)であることが好ましい。
例えばケイ素元素を含む活物質の場合、ターゲットまたは蒸発源の密度は真密度の95%〜100%が好適である。リチウム含有複合酸化物を用いる場合、ターゲットまたは蒸発源の密度は真密度の70%〜85%が好適である。
ターゲットまたは蒸発源として用いる粉末を、例えば、1日〜一週間、露点10℃〜−20℃の雰囲気で保管し、水を吸着させることで、成膜条件を制御することができる。水の吸着量は、例えば、粉末の比表面積により、制御することができる。粉末の比表面積は、例えば、粉末の平均粒径や粉末の焼結度合いによって制御することができる。焼結度合いが大きいほど、比表面積が減少するが、熱伝導性は良好である。
ケイ素元素を含む活物質の場合、粉末の比表面積は、例えば0.3〜5m2/gであり、平均粒径(体積基準の粒度分布におけるメジアン径)は、例えば10〜0.5μmが好適である。
リチウム含有複合酸化物の場合、粉末の比表面積は、例えば0.2〜10m2/gであり、平均粒径(体積基準の粒度分布におけるメジアン径)は、例えば12〜0.4μmが好適である。
上記のように、活物質薄膜を成膜する際に減圧雰囲気が水蒸気を含むことで、膜厚方向に筋状の空隙を有する活物質薄膜を得ることができる。
上記のように、活物質薄膜を成膜する際に減圧雰囲気が水蒸気を含むことで、膜厚方向に筋状の空隙を有する活物質薄膜を得ることができる。
活物質薄膜の空隙の状態は、試料の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、例えば斜視方向から観察することにより評価できる。このとき、例えば試料を破断してその断面を観察すればよい。より精密な評価を行う観点から、FIB(集束イオンビーム)加工や、CP(クロスセクションポリッシャ)加工などを行って断面を観察することが好ましい。これらの加工法によれば、試料の断面を正確に切断することができる。そのため、試料の断面に対してナノレベルまたはミクロンレベルでの精密な観察および評価を行うことができる。
次に、上記の方法で得られる電極を含むリチウム二次電池の構造の一例について述べる。図1はコイン型のリチウム二次電池の概略断面図である。図1において、コイン型電池10は、正極12と、負極14と、これらの間に介在するセパレータ13とからなる電極群を有する。電極群にはリチウムイオン伝導性を有する電解質(図示せず)が含浸されている。正極12は正極端子を兼ねた正極ケース11と電気的に接続しており、負極14は負極端子を兼ねた封口板16と電気的に接続している。電池全体は、ガスケット15により密閉されている。ただし、負極の容量評価を行う場合は、正極12の代わりに金属リチウムを用いることもできる。
なお、リチウム二次電池の形態は、特に制限を受けるものではない。上記のコイン型電池の他に、ボタン、シート、シリンダ、扁平、角形等の何れであっても、本発明を適用することができる。電解質、セパレータ等は、リチウム二次電池に通常使われている公知のものを使用することができる。
電解質としては、例えば、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた非水電解質、ポリマー電解質等を使用できる。非水電解質の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の炭酸エステル類、γ−ブチルラクトン等のγ−ラクトン類、1、2−ジメトキシエタン、1、2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム塩としては、例えば、LiBF4、LiPF6等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セパレータとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンからなる多孔性薄膜、ガラスフィルタや不織布等の多孔性材料を適宜使用できる。
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
《実施例1》
ケイ素酸化物を含む活物質薄膜を作製した。集電体には、成膜後の電極の厚みを薄くするために、表面算術粗さが0.3μmで、厚さ10μmの平滑な圧延銅箔を用いた。表面算術粗さ(Ra)は、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に準拠した表面粗さ計を用いて測定した。
ケイ素酸化物を含む活物質薄膜を作製した。集電体には、成膜後の電極の厚みを薄くするために、表面算術粗さが0.3μmで、厚さ10μmの平滑な圧延銅箔を用いた。表面算術粗さ(Ra)は、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に準拠した表面粗さ計を用いて測定した。
ケイ素を溶融し、インゴットとしたものを、直径10インチの大きさに切断した。これを、銅のバッキングプレートに接着し、ターゲットを得た。得られたターゲット(ケイ素純度99.99%)は、集電体となる圧延銅箔との距離が7cmとなるように、基板ホルダーにセットした。
減圧雰囲気にアルゴン75sccmと水蒸気とを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が2Pa、水蒸気の圧力が0.4Paとなるように、マスフローコントローラで調節した。アルゴンと水蒸気とを導入した減圧雰囲気に、さらに酸素を導入した。酸素の導入量は、ケイ素原子と酸素原子とのモル比(Si:O)が、1:0.5となるようにマスフローコントローラで調節した。このようにして、減圧雰囲気の圧力(全圧)を2.4Paとした。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の6分の1であった。
アルゴンには、純度99.9999%のものを用い、露点は−74℃(水分量1.4ppm)以下とした。水蒸気の圧力は検出されなかった。
酸素には、純度99.999%のものを用い、露点は−76℃(水分量1ppm)以下とした。アルゴンと同様に水蒸気の圧力は検出されなかった。
以下の実施例および比較例において、アルゴンおよび酸素は、全て同様のものを用いた。
以下の実施例および比較例において、アルゴンおよび酸素は、全て同様のものを用いた。
スパッタリング条件は、印加電力1.3kW、成膜時間4時間とした。RFスパッタリング法により、約1μm厚のケイ素酸化物を含む活物質薄膜を、圧延銅箔上に成膜した。
《実施例2》
減圧雰囲気にアルゴン50sccmと水蒸気とを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が1.3Pa、水蒸気の圧力が0.1Paとなるように、マスフローコントローラで調節した。アルゴンと水蒸気とを導入した減圧雰囲気に、さらに酸素を導入した。酸素の導入量が、ケイ素原子と酸素原子とのモル比(Si:O)が、1:0.5となるようにマスフローコントローラで調節した。このようにして、減圧雰囲気の圧力(全圧)を1.4Paとした。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の14分の1であった。ターゲットおよび集電体には、実施例1と同じものを用いた。スパッタリング条件は、印加電力1.3kW、成膜時間3時間として、約1μm厚のケイ素酸化物を含む活物質薄膜を、実施例1と同様に圧延銅箔上に成膜した。
減圧雰囲気にアルゴン50sccmと水蒸気とを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が1.3Pa、水蒸気の圧力が0.1Paとなるように、マスフローコントローラで調節した。アルゴンと水蒸気とを導入した減圧雰囲気に、さらに酸素を導入した。酸素の導入量が、ケイ素原子と酸素原子とのモル比(Si:O)が、1:0.5となるようにマスフローコントローラで調節した。このようにして、減圧雰囲気の圧力(全圧)を1.4Paとした。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の14分の1であった。ターゲットおよび集電体には、実施例1と同じものを用いた。スパッタリング条件は、印加電力1.3kW、成膜時間3時間として、約1μm厚のケイ素酸化物を含む活物質薄膜を、実施例1と同様に圧延銅箔上に成膜した。
《比較例1》
減圧雰囲気にアルゴンと酸素とを導入した。アルゴンおよび酸素の導入量が、それぞれ25sccmおよび2.3sccmとなるように、マスフローコントローラで調節し、減圧雰囲気の圧力(全圧)を1Paとした。水蒸気の圧力は測定することができなかった。すなわち、水蒸気を実質的に含まない減圧雰囲気下で成膜を行った。ターゲットおよび集電体には、実施例1と同じものを用いた。スパッタリング条件は、印加電力1.3kW、成膜時間3時間として、約1μm厚のケイ素酸化物を含む活物質薄膜を、実施例1と同様に圧延銅箔上に成膜した。
減圧雰囲気にアルゴンと酸素とを導入した。アルゴンおよび酸素の導入量が、それぞれ25sccmおよび2.3sccmとなるように、マスフローコントローラで調節し、減圧雰囲気の圧力(全圧)を1Paとした。水蒸気の圧力は測定することができなかった。すなわち、水蒸気を実質的に含まない減圧雰囲気下で成膜を行った。ターゲットおよび集電体には、実施例1と同じものを用いた。スパッタリング条件は、印加電力1.3kW、成膜時間3時間として、約1μm厚のケイ素酸化物を含む活物質薄膜を、実施例1と同様に圧延銅箔上に成膜した。
図2〜図4は、それぞれ実施例1〜2および比較例1で成膜したケイ素酸化物を含む活物質薄膜の断面を、斜視方向から観察したSEM写真である。厚さ10μmの圧延銅箔からなる集電体3の表面には、膜厚1μm程度の活物質薄膜1が形成されている。減圧雰囲気が成膜時に水蒸気を含まない比較例1(図4)では、活物質薄膜1に空隙を観察することはできない。一方、減圧雰囲気が成膜時に水蒸気を含む実施例2(図3)では、空隙2からなる膜厚方向の筋が多数見られる。水蒸気の導入量を実施例2よりも多くした実施例1(図2)でも、膜厚方向の筋状の空隙2が観察でき、かつ実施例2に比べて空隙2が大きくなっていることがわかる。
活物質薄膜中に、膜厚方向の筋状の空隙が形成される理由については明確になっていないが、以下のように推察される。
すなわち、ケイ素原子またはそのクラスタなどの粒子は、水と反応しながら酸化される。酸化された粒子が基板(集電体)上に到達するときには、粒子のエネルギーが小さくなっている。さらに、基板上には吸着水が存在する。よって、基板表面上での粒子の拡散は抑制される。その結果、飛来してくる粒子は島状の核を形成する。形成された島状の核の側面部分にも水が付着するため、側面部分での粒子の拡散は抑制される。特にプラズマ中で成膜する場合には、核の上面温度は、側面温度よりも高くなるため、上面に選択的に粒子が付着する。膜の自己陰影効果なども加わって、粒子は柱状に成長し、膜厚方向に筋状の空隙を有する膜が形成されるものと考えられる。
すなわち、ケイ素原子またはそのクラスタなどの粒子は、水と反応しながら酸化される。酸化された粒子が基板(集電体)上に到達するときには、粒子のエネルギーが小さくなっている。さらに、基板上には吸着水が存在する。よって、基板表面上での粒子の拡散は抑制される。その結果、飛来してくる粒子は島状の核を形成する。形成された島状の核の側面部分にも水が付着するため、側面部分での粒子の拡散は抑制される。特にプラズマ中で成膜する場合には、核の上面温度は、側面温度よりも高くなるため、上面に選択的に粒子が付着する。膜の自己陰影効果なども加わって、粒子は柱状に成長し、膜厚方向に筋状の空隙を有する膜が形成されるものと考えられる。
《実施例3》
リチウム含有複合酸化物を含む活物質薄膜を作製した。集電体には、厚さ1μmの熱酸化皮膜を有する、厚さ500μmのシリコン基板を用いた。このシリコン基板は表面が鏡面状であった。シリコン基板の表面算術粗さを、実施例1と同様に表面粗さ計を用いて測定したところ、表面算術粗さは0.1μm以下であった。
リチウム含有複合酸化物を含む活物質薄膜を作製した。集電体には、厚さ1μmの熱酸化皮膜を有する、厚さ500μmのシリコン基板を用いた。このシリコン基板は表面が鏡面状であった。シリコン基板の表面算術粗さを、実施例1と同様に表面粗さ計を用いて測定したところ、表面算術粗さは0.1μm以下であった。
活物質材料となるリチウム含有複合酸化物には、コバルト酸リチウムを用いた。コバルト酸リチウム粉末は、プレス機で圧縮して密度約3.3g/cm3まで圧粉した。コバルト酸リチウムの真密度は5.04g/cm3である。よって、得られた圧粉体の密度は真密度の約65%であった。得られた圧粉体を1週間、露点−20℃の保管庫で保管し、圧粉体に水を吸着させた。こうして水を吸着させた圧粉体をターゲットとした。
圧粉体への水の吸着量は、コバルト酸リチウム粉末の比表面積に依存する。粉末の比表面積は、粉末の平均粒径に依存する。本実施例では、比表面積0.3m2/g、平均粒径(体積基準の粒度分布のメジアン径)10μmのコバルト酸リチウム粉末を用いた。
減圧雰囲気にアルゴン50sccmを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が1.3Paとなるように、マスフローコントローラで導入量を調節した。シリコン基板と、水を吸着させたターゲットとを、シリコン基板とターゲットとの距離が7cmとなるように基板ホルダーにセットした。スパッタリング条件は、印加電力1kW、成膜時間15時間とした。活物質がケイ素酸化物である時と同様に、RFスパッタリング法により、約10μm厚のコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜を、シリコン基板上に成膜した。減圧雰囲気の成膜中の圧力は3.3Paであった。よって、ターゲットが吸着した水に由来する減圧雰囲気中の水蒸気の圧力は2Paと考えられる。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の約1.7分の1であった。
《実施例4》
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.3g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約85%であった。得られた焼結体は、実施例3と同様に水を吸着させ、ターゲットとした。
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.3g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約85%であった。得られた焼結体は、実施例3と同様に水を吸着させ、ターゲットとした。
減圧雰囲気にアルゴン50sccmを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が1.3Paとなるように、マスフローコントローラで導入量を調節した。上記で得られたターゲットとシリコン基板とを、実施例3と同様にセットした。スパッタリング条件は、印加電力1kW、成膜時間15時間とした。約11μm厚のコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜を、シリコン基板上に実施例3と同様に成膜した。減圧雰囲気の成膜中の圧力は1.8Paであった。よって、ターゲットが吸着した水に由来する減圧雰囲気中の水蒸気の圧力は0.5Paと考えられる。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の3.6分の1であった。
《比較例2》
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.9g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約97%であった。得られた焼結体は、実施例3と同様に水を吸着させ、ターゲットとした。
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.9g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約97%であった。得られた焼結体は、実施例3と同様に水を吸着させ、ターゲットとした。
減圧雰囲気にアルゴン50sccmを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が1.3Paとなるように、マスフローコントローラで導入量を調節した。上記で得られたターゲットとシリコン基板とを、実施例3と同様にセットした。スパッタリング条件は、印加電力1kW、成膜時間15時間とした。約12μm厚のコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜を、シリコン基板上に実施例3と同様に成膜した。減圧雰囲気の成膜中の圧力は1.37Paであった。よって、ターゲットが吸着した水に由来する減圧雰囲気中の水蒸気の圧力は0.07Paと考えられる。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の約20分の1であった。
図5〜図7は、それぞれ実施例3、実施例4および比較例2で成膜したコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜の断面を、斜視方向から観察したSEM写真である。図5〜図7には、コバルト酸リチウムからなる厚さ10μm程度の活物質薄膜1を観測することができる。水の吸着量が最も小さいと思われる比較例1(図7)に比べて、実施例4(図6)では筋状の空隙2が大きくなっている。水の吸着量が最も大きいと思われる図5(実施例3)においては、空隙を有する柱状粒子が形成されている。また、柱状粒子の表面には、大きな空隙2が形成されている。このことから、実施例3では、成膜時に水蒸気を導入したことによる効果が最も大きいことがわかる。
柱状粒子の中では、コバルト酸リチウムの粒子1つ1つが結合されているため、抵抗が低く、電極は必ずしもカーボンなどの導電助剤を含む必要がない。また、柱状粒子間に電解質の浸透する空隙を十分に有することから、電解質内のリチウムイオンが容易に移動できる。
以上より、本発明の製造方法を用いて作製した電極は、良好なサイクル特性、およびレート特性を有するリチウム二次電池を与えるものと推測される。また、本発明の製造方法を用いることで、表面が鏡面状である集電体上においても、空隙を有する活物質薄膜が形成できることがわかる。
《実施例5》
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.9g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約97%であった。得られた焼結体をターゲットとした。
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.9g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約97%であった。得られた焼結体をターゲットとした。
減圧雰囲気にアルゴン20sccmを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が0.48Paとなるように、マスフローコントローラで導入量を調節した。上記で得られたターゲットとシリコン基板とを、実施例3と同様にセットした。スパッタリング条件は、印加電力1kW、成膜時間15時間とした。約12μm厚のコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜を、シリコン基板上に成膜した。減圧雰囲気の成膜中の圧力は0.51Paであった。よって、ターゲットが吸着した水に由来する減圧雰囲気中の水蒸気の圧力は0.03Paと考えられる。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の17分の1であった。
図8は、実施例5で成膜したコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜の断面を、斜視方向から観察したSEM写真である。実施例4(図6)と同様に、筋状の空隙2が形成されていることがわかる。
《比較例3》
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.9g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約97%であった。得られた焼結体をターゲットとした。
コバルト酸リチウム粉末を圧粉した後、焼結し、密度約4.9g/cm3の焼結体を得た。焼結体の密度は、真密度の約97%であった。得られた焼結体をターゲットとした。
減圧雰囲気にアルゴン50sccmを導入した。減圧雰囲気中のアルゴンの分圧が1.3Paとなるように、マスフローコントローラで導入量を調節した。上記で得られたターゲットとシリコン基板とを、実施例3と同様にセットした。スパッタリング条件は、印加電力1kW、成膜時間15時間とした。約12μm厚のコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜を、シリコン基板上に成膜した。減圧雰囲気の成膜中の圧力は1.32Paであった。よって、ターゲットが吸着した水に由来する減圧雰囲気中の水蒸気の圧力は0.02Paと考えられる。すなわち、水蒸気の圧力は、減圧雰囲気の圧力の66分の1であった。
図9は、実施例3で成膜したコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜に対してFIB加工を行った断面のSEM写真である。
実施例3の柱状粒子の内部では、コバルト酸リチウムの粒子1つ1つが結合されている。そのため、活物質薄膜内の抵抗が低く、カーボンなどの導電助剤を電極に添加しなくても、良好な特性が得られると考えられる。また、実施例3の活物質薄膜においては、柱状粒子間に空隙を十分に有するため、電解質が活物質薄膜の内部に十分に浸透し、リチウムイオンの移動が容易であると考えられる。
実施例3の柱状粒子の内部では、コバルト酸リチウムの粒子1つ1つが結合されている。そのため、活物質薄膜内の抵抗が低く、カーボンなどの導電助剤を電極に添加しなくても、良好な特性が得られると考えられる。また、実施例3の活物質薄膜においては、柱状粒子間に空隙を十分に有するため、電解質が活物質薄膜の内部に十分に浸透し、リチウムイオンの移動が容易であると考えられる。
図10は、比較例3で成膜したコバルト酸リチウムを含む活物質薄膜に対して、FIB加工を行った断面のSEM写真である。比較例3のように、水の分圧が小さすぎる場合でも、スパッタリングで得られる薄膜の内部に微小な空隙が形成されていた。しかし、空隙が実施例の活物質薄膜に比べて小さいため電解質が薄膜の内部に十分に浸透せず、リチウムイオンの移動が困難であると考えられる。
《評価試験》
実施例1〜2および比較例1で得られた電極を直径13.5mmの円形に切り出し、作用電極とした。金属リチウムを対極に用い、評価用セルとして、図1に示すコイン型リチウム二次電池を作製した。作製したコイン型電池について、充放電サイクル数と容量比率との関係を測定した。ここで、容量比率とは、初回充放電で得られる容量に対するn回目(n=1、5、10、15および20)の充放電で得られる容量の割合をいう。
実施例1〜2および比較例1で得られた電極を直径13.5mmの円形に切り出し、作用電極とした。金属リチウムを対極に用い、評価用セルとして、図1に示すコイン型リチウム二次電池を作製した。作製したコイン型電池について、充放電サイクル数と容量比率との関係を測定した。ここで、容量比率とは、初回充放電で得られる容量に対するn回目(n=1、5、10、15および20)の充放電で得られる容量の割合をいう。
電解質には、1モルのLiPF6を、エチレンカーボネートと、メチルエチルカーボネートと、ジエチルカーボネートとの混合溶媒1リットル(混合比:体積比3:5:2)に溶解させたものを用いた。
また、セパレータには、セルガード(株)製のポリプロピレンとポリエチレンの多孔質フィルムを用いた。
また、セパレータには、セルガード(株)製のポリプロピレンとポリエチレンの多孔質フィルムを用いた。
上記の作用電極、対極、電解質およびセパレータを用いて、図1に示すような、コイン型電池10を作製した。
ケース11の内面に作用電極12を配した。セパレータ13は、作用電極12の上面を覆うように配置した。その後、電解質を注液した。封口板16の周辺部にガスケット15を配し、対極14をケース16の内面に貼り付けた。セパレータ13を介して作用電極12と対極14とを対向させ、ケース11の開口を封口板16で封口した。こうしてコイン型電池10を得た。得られたコイン型電池の外径は20mm、高さは1.6mmであった。
ケース11の内面に作用電極12を配した。セパレータ13は、作用電極12の上面を覆うように配置した。その後、電解質を注液した。封口板16の周辺部にガスケット15を配し、対極14をケース16の内面に貼り付けた。セパレータ13を介して作用電極12と対極14とを対向させ、ケース11の開口を封口板16で封口した。こうしてコイン型電池10を得た。得られたコイン型電池の外径は20mm、高さは1.6mmであった。
充放電条件は、充電電流、放電電流ともに0.05mA、充電停止電圧1V、放電停止電圧0V、充電と放電との間の休止時間は10分、計測環境温度は20℃とした。
表1に、サイクル数と容量比率との関係を示す。
表1に、サイクル数と容量比率との関係を示す。
表1から、実施例1および実施例2と、比較例1とを比較すると、10サイクル以降で容量比率に差が見られた。すなわち、成膜時に水蒸気を導入することで形成された、活物質薄膜中の空隙の効果で、リチウム二次電池のサイクル特性が改善されていることがわかる。
本発明のリチウム二次電池用電極の製造方法は、リチウム二次電池のサイクル特性およびレート特性を向上させることができる点で有用である。本発明は、センサなどの電気化学素子の電極にも適用可能であり、空隙を有する電極を製造することが可能なので、セラミック多孔質体などの製造方法としても利用可能である。
1 活物質薄膜
2 空隙
3 集電体
10 コイン型電池
11 ケース
12 正極、作用極
13 セパレータ
14 負極、対極
15 ガスケット
16 封口板
2 空隙
3 集電体
10 コイン型電池
11 ケース
12 正極、作用極
13 セパレータ
14 負極、対極
15 ガスケット
16 封口板
Claims (14)
- 水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能である活物質を集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、前記減圧雰囲気における水蒸気の圧力が、前記減圧雰囲気の圧力の17分の1以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記減圧雰囲気における水蒸気の圧力が、0.03Pa以上、10Pa以下である、請求項1記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記減圧雰囲気の圧力が、0.51Pa以上、170Pa以下である、請求項1または2記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記活物質を、プラズマ発生下で、前記集電体上に堆積させる、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記活物質を、スパッタリングまたは蒸着により、前記集電体上に堆積させる、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記スパッタリングまたは蒸着が、真密度の85%以下の密度を有するターゲットまたは蒸発源を用いる、請求項5記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記スパッタリングまたは蒸着が、粉末のターゲットまたは蒸発源を用いる、請求項5または6記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記活物質が、ケイ素元素を含有している、請求項1〜7のいずれかに記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記活物質が、リチウム含有複合酸化物を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能であり、かつケイ素元素を含有する活物質を、スパッタリングまたは蒸着により、集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、
前記減圧雰囲気における水蒸気の圧力が、前記減圧雰囲気の圧力の17分の1以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法。 - 水蒸気を含む減圧雰囲気下で、リチウムを吸蔵および放出可能であるリチウム含有複合酸化物を含む活物質を、スパッタリングまたは蒸着により、集電体上に堆積させて薄膜を形成する工程を含み、
前記スパッタリングまたは蒸着が、真密度の85%以下の密度を有するターゲットもしくは蒸発源、または、粉末のターゲットもしくは蒸発源を用いる、リチウム二次電池用電極の製造方法。 - 前記減圧雰囲気の圧力が、0.51Pa以上、170Pa以下であり、前記減圧雰囲気における水蒸気の圧力が0.03Pa以上、10Pa以下である、請求項11記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 前記集電体の表面算術粗さRaが、0.3μm以下である、請求項1〜12のいずれかに記載のリチウム二次電池用電極の製造方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載のリチウム二次電池用電極の製造方法で作製されたリチウム二次電池用電極であって、
前記活物質が、略柱状の粒子を含み、
前記略柱状の粒子は多孔体からなり、
前記略柱状の粒子間に空隙が形成されている、リチウム二次電池用電極。
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JP2010123463A (ja) * | 2008-11-20 | 2010-06-03 | Toyota Motor Corp | 全固体電池と全固体電池用電極およびその製造方法 |
WO2011086649A1 (ja) * | 2010-01-15 | 2011-07-21 | 株式会社アルバック | LiCoO2焼結体の製造方法及びスパッタリングターゲット |
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-
2007
- 2007-07-17 JP JP2007185779A patent/JP2008053217A/ja active Pending
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