JP4677049B1 - リチウムイオン二次電池用負極板、及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】放電レート特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極板を提供すること。
【解決手段】集電体上に負極活物質層が設けられてなるリチウムイオン二次電池用負極板であって、負極活物質層は、少なくとも負極活物質粒子と、金属含有粒子を含み、負極活物質粒子は、金属含有粒子によって集電体上に固着されており、また、負極活物質粒子同士も、金属含有粒子によって固着されている。
【選択図】図1
【解決手段】集電体上に負極活物質層が設けられてなるリチウムイオン二次電池用負極板であって、負極活物質層は、少なくとも負極活物質粒子と、金属含有粒子を含み、負極活物質粒子は、金属含有粒子によって集電体上に固着されており、また、負極活物質粒子同士も、金属含有粒子によって固着されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極板、及びリチウムイオン二次電池に関し、さらに詳しくは放電レート特性、出入力特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極板、及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高エネルギー密度、高電圧を有し、また充放電時におけるメモリ効果(完全に放電させる前に電池の充電を行なうと次第に電池容量が減少していく現象)が無いことから、携帯機器、及び大型機器など様々な分野で用いられている。
現在、地球温暖化防止の対策として、世界規模でCO2排出抑制の取り組みが行われており、石油依存度を低減し、低環境負荷で走行可能とすることで、CO2削減に大いに寄与することができるプラグインハイブリッド自動車、電気自動車に代表される次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及が急務とされている。これらの次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及には、ガソリンに依存しない駆動力が必須であり、近時、ガソリンに依存しない駆動力としてリチウムイオン二次電池が期待されている。リチウムイオン二次電池をこれらの次世代クリーンエネルギー自動車の駆動力として利用することができれば、ガソリンに依存する必要がなく、CO2削減に大いに寄与することができる。一方で、次世代クリーンエネルギー自動車の駆動力としてリチウムイオン二次電池が利用されるためには、ガソリンに並ぶ出力要求を満たすことが必要であり、リチウムイオン二次電池には、高い出入力特性が要求されている。
また、近時の省エネルギー効果に対する要求に対応するため、リチウムイオン二次電池には、放電レート特性の向上が期待されている。さらに、携帯電話等の比較的小型の装置に用いられるリチウムイオン二次電池であっても、装置が多機能化される傾向にあるために、放電レート特性のみならず出入力特性の向上が期待されている。このとき、インピーダンスが高いリチウムイオン二次電池では、高速充放電時(大電流で充放電を行った時)にその容量を充分に生かすことができない問題や、容量がロスしてしまう問題が生ずる。リチウムイオン二次電池において、放電レート特性や、出入力特性の向上を実現するためには、電池のインピーダンスを下げる必要があり、インピーダンスの低い二次電池に対する市場の要求は高い。
現在、各種の提案がされているリチウムイオン二次電池は、正極板、負極板、セパレータ、及び有機電解液から構成される。上記負極板としては、金属箔(例えば、銅箔)などの集電体表面に、負極活物質粒子を含む電極活物質層を備えたものが知られている。この負極板は、例えば、特許文献1、特許文献2に提案されているように、リチウムイオン挿入脱離反応を示すことにより充放電可能な負極活物質粒子、該負極活物質粒子を集電体上に固着させるとともに、該負極活物質粒子同士を固着させるための樹脂からなる結着物質(以下、樹脂製の結着物質という)、及び導電材(但し活物質粒子が導電効果も発揮する場合などには、導電材は省略される場合がある)、あるいはさらに、必要に応じてその他の材料を用い、有機溶媒中で混練及び/又は分散させて、スラリー状の電極活物質層形成溶液を調製し、この電極活物質層形成溶液を集電体表面に塗布・乾燥して集電体上に塗膜を形成し、必要に応じてプレスすることにより製造される。
このとき、電極活物質層形成溶液に含有される負極活物質粒子は、該溶液中に分散する粒子状の化合物であって、集電体表面に塗布されただけでは該集電体表面に固着され難い材料である。したがって、樹脂製の結着物質を含まない電極活物質層形成溶液を集電体に塗布して乾燥して塗膜を形成しても、該塗膜は集電体から容易に剥離してしまう。そのため、従来の負極板は、特許文献1、2に提案されているように、樹脂製の結着物質によって、負極活物質粒子同士を固着させるとともに、樹脂製の結着物質によって、負極活物質粒子を集電体表面に固着させている。すなわち、樹脂製の結着物質は実質的には、必須の構成物質であった。
しかしながら、上記特許文献1、特許文献2に提案されている方法により、負極活物質粒子と、樹脂製の結着物質を用いて電極活物質層を形成した場合には、樹脂製の結着物質の存在により、放電レート特性や高出入力特性が必要とされる分野における要求を満足できる程度までインピーダンスを下げることができない。これは、電極活物質層中に樹脂製の結着物質が存在することにより、リチウムイオン等の負極活物質イオン及び電子の移動距離が長くなり、また、電極活物質層における電解液の浸透性が低くなり、かつ電解液と負極活物質粒子との接触面積が小さくなることでインピーダンスが上がることによるものと考えられる。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、放電レート特性、及び出入力特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極板、及びリチウムイオン二次電池を提供することを主たる課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、集電体上に負極活物質層が設けられてなるリチウムイオン二次電池用負極板であって、前記負極活物質層は、少なくとも負極活物質粒子と、金属含有粒子を含み、前記負極活物質粒子は、前記金属含有粒子によって集電体上に固着されており、また、負極活物質粒子同士も、前記金属含有粒子によって固着されていることを特徴とする。
また、前記金属含有粒子が、金属粒子又は金属酸化物粒子であってもよい。また、前記金属粒子が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属粒子であり、前記金属酸化物粒子が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属酸化物粒子であってもよい。また、前記金属粒子が、銅粒子、ニッケル粒子又はリチウム粒子であり、前記金属酸化物粒子が、酸化銅粒子、酸化ニッケル粒子又は酸化リチウム粒子であってもよい。
また、前記金属含有粒子の大きさが、前記負極活物質粒子よりも小さくてもよく、前記金属含有粒子の平均粒子径が、0.05〜2μmであってもよい。また、前記金属含有粒子の平均体積が、0.00006〜5μm3であってもよい。また、1つの負極活物質粒子と固着している全ての金属含有粒子において、該1つの負極活物質粒子と固着している部分の合計面積が、該1つの負極活物質粒子の全表面積の20〜85%の範囲であってもよい。
また、上記課題を解決するための本発明は、正極板と、負極板と、該正極板と負極板との間に設けられるセパレータと、電解液とを備えるリチウムイオン二次電池であって、前記負極板が上記の特徴を有するリチウムイオン二次電池用負極板であることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極板、及びリチウムイオン二次電池によれば、放電レート特性、及び出入力特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極板、及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極板について、図1、図2を用いて具体的に説明する。なお、図1は本発明のリチウムイオン二次電池用負極板の断面図であり、図2は、本発明のリチウムイオン二次電池用負極板の負極活物質粒子と、金属含有粒子との固着を説明するための概念図である。図1に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池用負極板10は、集電体1上に、負極活物質層2が設けられた構成をとる。また、図1、図2に示すように負極活物質層2は、複数の負極活物質粒子21と、複数の金属含有粒子22とを少なくとも含む。また、負極活物質粒子21は、金属含有粒子22によって集電体1上に固着されており、また、負極活物質粒子21同士も、金属含有粒子22によって固着されている(図2に示す場合にあっては、負極活物質粒子同士が、金属含有粒子22によって固着されている)。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極板(以下、単に負極板という場合がある)の説明するに際し、負極活物質層における電子の授与と、放電レート特性及び出入力特性との関係について説明する。リチウムイオン二次電池内では、正極板における正極活物質中のリチウムが電解液に染み出し、電解液と溶媒和し、リチウムイオンの状態で電解液中に拡散し、負極板における負極活物質層に到達する。そしてリチウムイオンは、脱溶媒和するとともに、負極活物質粒子の層間へ挿入し、電子の授与が行われるものと考えられている。負極板における電解液に溶媒和したリチウムイオンが脱溶媒和し、電子の授与を行うメカニズムの詳細はいまだ明らかではないが、本発明者は、負極活物質層において、界面電荷移動抵抗が小さいほど、脱溶媒和反応がスムーズにおこなわれ、負極板における放電レート特性及び出入力特性が向上することを見出した。また、この場合において、樹脂製の結着物質を用いて負極活物質粒子を集電体上に固着させた場合には、この樹脂製の結着物質が脱溶媒和反応に対し阻害的に働き、放電レート特性及び出入力特性を低下させてしまうとの知見を得た。特に、図3に示すように、樹脂製の結着物質は、負極活物質層中に被膜の状態で存在しており、この被膜の状態で、集電体と負極活物質粒子とを固着させ、負極活物質粒子同士を固着させている。これにより、界面電荷移動抵抗が大きくなり、また、電解液と負極活物質粒子との接触面積が小さくなり放電レート特性及び出入力特性を低下させることとなる。なお、図3は、樹脂製の結着物質としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂を用いて作製した電極表面のSEM像である。
本発明者らは、さらに結着物質について鋭意研究した結果、集電体上に負極活物質粒子を固着させるとともに、負極活物質粒子同士を固着させるための結着物質として、金属含有粒子を採用し、該金属含有粒子によって集電体上に負極活物質粒子を固着させるとともに、該金属含有粒子によって負極活物質粒子同士を固着させることで、放電レート特性、及び出入力特性が向上することを見出した。
そこで、図1に示すように、本発明の負極板10は、集電体1上に、負極活物質層2が設けられてなり、負極活物質層2は、少なくとも負極活物質粒子21と、金属含有粒子22を含み、負極活物質粒子21は、金属含有粒子22によって集電体1上に固着されており、また、負極活物質粒子21同士も、金属含有粒子22によって固着されていることを特徴とする。つまり、本発明は、集電体1上に負極活物質粒子21を固着させるとともに、負極活物質粒子21同士を固着させる結着物質として、金属含有粒子22を採用した点に特徴を有するものである。
上記特徴を有する本発明によれば、樹脂製の結着物質に依らず、金属含有粒子22によって、負極活物質粒子21が集電体1上に固着されているとともに、金属含有粒子22によって、負極活物質粒子21同士も固着されていることから脱溶媒和反応に対する阻害作用がなく、電子の授与が非常にスムーズに行うことができ、その結果、放電レート特性、及び出入力特性を向上させることが可能となる。以下、本発明の負極板10を構成する集電体1、及び負極活物質層2について更に具体的に説明する。
(集電体)
集電体1について特に限定はなく、リチウムイオン二次電池用負極板に用いられる従来公知の集電体1を適宜選択して用いることができる。例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔などの単体又は合金から形成された集電体を好ましく用いることができる。
集電体1について特に限定はなく、リチウムイオン二次電池用負極板に用いられる従来公知の集電体1を適宜選択して用いることができる。例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔などの単体又は合金から形成された集電体を好ましく用いることができる。
集電体1の厚みは、一般にリチウムイオン二次電池用負極板の集電体として使用可能な厚みであれば特に限定されないが、3〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
(負極活物質層)
集電体1上に形成される負極活物質層2は、図1に示すように、負極活物質粒子21と、金属含有粒子22とから構成されている。また、負極活物質層2に含有される負極活物質粒子21は、金属含有粒子22によって、集電体1上に固着されているか、又は金属含有粒子22によって他の負極活物質粒子21と固着している。また、負極活物質粒子21は、金属含有粒子22を介して積層される構成をとっている。この構成により、負極活物質層2全体における界面電荷移動抵抗を小さくすることができ、負極板10における放電レート特性及び出入力特性を向上させることができる。なお、図1に示す金属含有粒子22a、22bは、集電体1と負極活物質粒子21とを固着させ、負極活物質粒子21同士を固着させるための金属含有粒子22であり、金属含有粒子22aによって、負極活物質粒子21と、集電体1とが固着されており、金属含有粒子22bによって、負極活物質粒子21同士が固着されている。
集電体1上に形成される負極活物質層2は、図1に示すように、負極活物質粒子21と、金属含有粒子22とから構成されている。また、負極活物質層2に含有される負極活物質粒子21は、金属含有粒子22によって、集電体1上に固着されているか、又は金属含有粒子22によって他の負極活物質粒子21と固着している。また、負極活物質粒子21は、金属含有粒子22を介して積層される構成をとっている。この構成により、負極活物質層2全体における界面電荷移動抵抗を小さくすることができ、負極板10における放電レート特性及び出入力特性を向上させることができる。なお、図1に示す金属含有粒子22a、22bは、集電体1と負極活物質粒子21とを固着させ、負極活物質粒子21同士を固着させるための金属含有粒子22であり、金属含有粒子22aによって、負極活物質粒子21と、集電体1とが固着されており、金属含有粒子22bによって、負極活物質粒子21同士が固着されている。
負極活物質層2の層厚は、負極板10に求められる電気容量や出入力特性を勘案して、適宜設計することができるが、放電レート特性及び出入力特性を向上させつつも高容量を得るためには、層厚は、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。負極活物質層2の層厚を当該範囲とすることで、負極活物質層2と集電体1との距離を短くすることができ負極板10のインピーダンスを下げることができる。
なお、本発明において負極活物質層2の層厚の下限は、主として用いられる負極活物質粒子21の粒子径に依存し、使用可能な負極活物質粒子21の粒子径の縮小化に伴い、さらに層厚を薄くすることも可能である。
また、負極活物質層は、電解液が浸透可能な程度に空隙が存在していることが好ましい。電解液が浸透可能な範囲であれば、空隙率について特に限定はないが、空隙率が10%未満である場合には、電解液が浸透せずスムーズな充放電を行うことが困難となる虞がある。この点を考慮すると、負極活物質層の空隙率は、10%以上であることが好ましい。また、空隙率が70%より大きい場合には、体積エネルギー密度を下げることができず、リチウムイオン二次電池を小型化する際の支障となる虞がある。この点を考慮すると、空隙率は70%以下であることが好ましい。なお、空隙率の測定は、島津製作所製 オートポアIV 9500等で測定可能である。
(負極活物質粒子)
負極活物質層2には、負極活物質粒子21が含まれる。なお、負極活物質粒子21は本発明における必須の構成である。負極活物質粒子21について特に限定はなく、リチウムイオン二次電池の分野で従来公知の負極活物質粒子21を適宜選択して用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファス炭素、カーボンブラック、またはこれらの成分に異種元素を添加した炭素材料や、金属リチウム及びその合金、スズ、珪素及びそれらの合金や、珪素、チタンコバルトの酸化物、マンガン、鉄、コバルトの窒化物など、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を挙げることができる。中でも、炭素材料はコストが安く、取り扱い性容易な上、単位質量あたりに取り出せるエネルギーが大きく、放電電位が卑であり、平坦性がよいなどの理由から負極活物質粒子として特に好適に使用可能である。
負極活物質層2には、負極活物質粒子21が含まれる。なお、負極活物質粒子21は本発明における必須の構成である。負極活物質粒子21について特に限定はなく、リチウムイオン二次電池の分野で従来公知の負極活物質粒子21を適宜選択して用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、アモルファス炭素、カーボンブラック、またはこれらの成分に異種元素を添加した炭素材料や、金属リチウム及びその合金、スズ、珪素及びそれらの合金や、珪素、チタンコバルトの酸化物、マンガン、鉄、コバルトの窒化物など、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を挙げることができる。中でも、炭素材料はコストが安く、取り扱い性容易な上、単位質量あたりに取り出せるエネルギーが大きく、放電電位が卑であり、平坦性がよいなどの理由から負極活物質粒子として特に好適に使用可能である。
負極活物質粒子の形状について特に限定はなく、例えば、鱗片形状、偏平形状、紡錘形状、球形状の負極活物質粒子21を好適に用いることができる。中でも、本発明においては、鱗片状の負極活物質粒子21を特に好適に用いることができる。
負極活物質粒子21の粒子径について特に限定はなく、設計される負極活物質層の厚みや、求められる電池性能などを勘案して、任意の大きさのものを適宜選択して使用することができる。たとえば、本発明では、負極活物質粒子21として、そのメジアン径が20μm以下のものを使用することができる。なお、本発明及び本明細書に示す負極活物質粒子21のメジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定により測定される平均粒子径(体積中位粒径:D50)である。また、負極活物質層中に含有された負極活物質粒子21、及び後述する金属含有粒子22の平均粒子径は、測定された電子顕微鏡観察結果のデータを、粒子認識ツールを用いて識別し、認識された粒子の画像から取得した形状データをもとに粒度分布のグラフを作成し、この粒度分布のグラフから算出される体積中位粒径である。なお、粒度分布のグラフは、例えば、電子顕微鏡観察結果を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて作成することができる。
負極活物質層における負極活物質粒子の含有量は、負極活物質層2の総質量に対し、50質量%以上が好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
(金属含有粒子)
負極活物質層2には、金属含有粒子22が含まれる。金属含有粒子22は、本発明における必須の構成であり、負極活物質粒子21を集電体1上に固着させるとともに、負極活物質粒子21同士を固着させる結着物質としての機能を果たす。本発明においては、この結着物質としての機能のほか、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない機能を有する金属含有粒子22を適宜選択して用いることができる。
負極活物質層2には、金属含有粒子22が含まれる。金属含有粒子22は、本発明における必須の構成であり、負極活物質粒子21を集電体1上に固着させるとともに、負極活物質粒子21同士を固着させる結着物質としての機能を果たす。本発明においては、この結着物質としての機能のほか、リチウムイオン挿入脱離反応を示さない機能を有する金属含有粒子22を適宜選択して用いることができる。
負極活物質層2に、結着物質としての金属含有粒子22を含む本発明は、従来、用いられてきた樹脂製の結着物質に依らず、負極活物質粒子21は、金属含有粒子22によって集電体1上に固着されており、また、負極活物質粒子21同士も、金属含有粒子22によって固着されていることから、電子の移動距離を短くすることができるほか、負極活物質層における電解液の浸透性を高くし、電解液と負極活物質粒子21との接触面積を大きくすることができる。
負極活物質層2に含まれる金属含有粒子22は、金属元素を含む粒子であればよく、金属粒子であっても、金属化合物粒子であってもよい。金属化合物粒子としては、例えば、金属酸化物粒子を挙げることができる。金属元素について特に限定はないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属は、酸化還元電位が低いことから、リチウムイオン二次電池の負極板に用いた場合でも安定である。また、周期律表第4周期に属する遷移金属は、化学的に安定で、複数の酸化数を形成することが可能であり、同じ元素でも複数の錯体を形成する。そのため、リチウムイオン二次電池用負極板に含有される金属粒子としての利便性が高い。このような点を考慮すると、金属含有粒子22として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属粒子を好ましく用いることができる。
中でも、銅、ニッケルは負極板の集電体として用いることが可能な金属であり、また、リチウムはリチウムイオン二次電池の構成材料である。また、これらの銅、ニッケル、リチウムは、リチウムイオン二次電池の負極板における電子伝導性の向上に寄与し、充放電反応時に副反応を生じない材料である。このような点を考慮すると、金属含有粒子22として、銅粒子、ニッケル粒子、リチウム粒子のいずれかの金属粒子を特に好ましく用いることができる。
また、金属含有粒子22として、金属化合物粒子である金属酸化物粒子を用いる場合には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属酸化物粒子を好ましく用いることができる。中でも、酸化銅粒子、酸化ニッケル粒子、酸化リチウム粒子を特に好ましく用いることができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属酸化物粒子が好ましい点、また、酸化銅粒子、酸化ニッケル粒子、酸化リチウム粒子が好ましい点は、上記で説明した理由と同じでありここでの説明は省略する。
また、金属含有粒子が、金属酸化物を還元処理することで得られる金属粒子であってもよい。還元処理の方法については後述する。
金属含有粒子22の大きさについて特に限定はないが、金属含有粒子22の大きさが、負極活物質粒子21よりも大きい場合には、リチウムイオン等の負極活物質イオン及び電子の移動距離が長く、また電解液と負極活物質粒子21との接触面積が小さくなることから、インピーダンスが上がり放電レート特性、及び出入力特性が低下する傾向となる。このような点を考慮すると、金属含有粒子22の大きさは、負極活物質粒子21の大きさよりも小さいことが好ましい。負極活物質粒子21よりも小さい金属含有粒子22を用いることで、リチウムイオン等の負極活物質イオン及び電子の移動距離が短くなり、また、電解液と負極活物質粒子21との接触面積が大きくなることから、放電レート特性、及び出入力特性を向上させることができる。
また、金属含有粒子22は、粒子形状であればよく、例えば、棒状、偏平形状、球形状、柱状などの各種の粒子形状を挙げることができる。
金属含有粒子22の粒子径は、金属含有粒子22の粒子形状によって異なり、その粒子径について特に限定はないが、平均粒子径が0.05μm〜2μmの金属含有粒子22であることが好ましい。当該範囲の平均粒子径の金属含有粒子22を用いることで、負極活物質粒子21と集電体1との密着性を向上させることができる。また、負極活物質層2の層厚を薄くすることができ、電子の移動距離を短くすることができるほか、電解液と負極活物質粒子21との接触面積を大きくすることができる。
また、金属含有粒子22の平均体積について特に限定はないが、0.00006〜5μm3であることが好ましい。当該範囲の平均体積の金属含有粒子22を用いることで、負極活物質粒子21と集電体1との密着性を向上させることができる。また、負極活物質層2の層厚を薄くすることができ、電子の移動距離を短くすることができるほか、電解液と負極活物質粒子21との接触面積を大きくすることができる。なお、本発明及び本明細書に示す金属含有粒子22の平均体積は、金属含有粒子を球体と仮定し、上記で説明した体積中位粒径を直径として球の体積を算出することで得られる平均体積である。
また、金属含有粒子22の平均粒子径、平均体積を上記で説明した好ましい範囲内に調節する方法について特に限定はないが、例えば、金属含有粒子22に、水素プラズマ処理を施すことで、金属含有粒子22の平均粒子径、平均体積を容易に調節することができる。例えば、照射条件(照射時間、プラズマ源からの距離等)を適宜設計することで、平均粒子径、平均体積を調節することができる。具体的には、キャリアガスである水素ガスの濃度を増大させる、照射時間を長くする、プラズマ源から金属含有粒子22までの距離を短くする等により、平均粒径、及び平均体積の小さい金属含有粒子22とすることができる。一方、水素ガスの濃度を低下させる、照射時間を短くする、プラズマ源から金属含有粒子22までの距離を長くする等により、平均粒径、及び平均体積の大きい金属含有粒子22とすることができる。
次に、図2を用いて、集電体1と負極活物質粒子21との固着、及び負極活物質粒子21同士の固着について具体的に説明する。図2に示すように、負極活物質層2中には、複数の負極活物質粒子21と、複数の金属含有粒子22が含まれ、1つの負極活物質粒子は、1又は複数の金属含有粒子22と固着している。また、この1つの負極活物質粒子と固着している1又は複数の金属含有粒子22は、集電体1と固着しているか、又は他の負極活物質粒子と固着している。これにより、負極活物質粒子21は、金属含有粒子22によって集電体1上に固着され、負極活物質粒子21同士も、金属含有粒子22によって固着される。
なお、負極活物質層2に含有される全ての金属含有粒子22が、集電体1と負極活物質粒子21との固着、又は負極活物質同士の固着に寄与されている必要はない。例えば、負極活物質粒子21と固着している金属含有粒子22が、集電体1、又は他の負極活物質粒子21と固着しないように存在していても良い。
ここで、任意に選択される1つの負極活物質粒子21(図中の負極活物質粒子21A)に着目すると、負極活物質粒子21Aは、1又は複数の金属含有粒子22によって負極活物質粒子21Aの近傍に位置する他の負極活物質粒子21Bと固着されている。具体的には、負極活物質粒子21Aの表面には複数の金属含有粒子22が固着しており、この金属含有粒子は、負極活物質粒子21Aの近傍に位置する他の負極活物質粒子21Bとも固着している。これにより、負極活物質粒子21Aと、負極活物質粒子21Aの近傍に位置する他の負極活物質粒子21Bとが固着される。
なお、図示しないが、図2と同様に集電体1の近傍に位置する負極活物質粒子21は、1又は複数の金属含有粒子22と固着しており、この金属含有粒子22は集電体1とも固着している。これにより、負極活物質粒子21と、集電体とが固着される。
ここで、1つの負極活物質粒子21と固着している全ての金属含有粒子22において、該1つの負極活物質粒子21と固着している部分(負極活物質粒子の表面と金属含有粒子とが接触している部分)の合計面積が、該1つの負極活物質粒子21の全表面積の85%を超える場合には、電解液と負極活物質粒子21との接触面積が小さくなってしまい、インピーダンスが低下してしまう虞がある。また、合計面積が、全表面積の20%未満である場合には、集電体と負極活物質粒子とを強固に固着させるとともに、負極活物質粒子21同士を強固に固着させることができない虞が生ずる。このような点を考慮すると、1つの負極活物質粒子21と固着している全ての金属含有粒子22において、該1つの負極活物質粒子21と固着している部分の合計面積が、該1つの負極活物質粒子21の全表面積の20〜85%であることが好ましい。当該範囲とすることで、電解液と負極活物質粒子21との接触面積を十分に大きくすることができ、かつ、集電体と負極活物質粒子とを強固に固着させるとともに、負極活物質粒子21同士を強固に固着させることができる。
具体的に、負極活物質粒子21Aを例にとると、負極活物質粒子21Aに固着している金属含有粒子22の固着部分30の合計面積(付着領域30a〜30mの合計面積)が、負極活物質粒子21Aの全表面積の20〜85%であることが好ましい。なお、図中の30k〜30mは、30j〜30iの反対側で、負極活物質粒子21Aと固着している金属含有粒子22の固着部分(負極活物質粒子の表面における金属含有粒子が接触している部分)を示す。
1つの負極活物質粒子21と固着している全ての金属含有粒子22において、該1つの負極活物質粒子21と固着している部分の合計面積を、該1つの負極活物質粒子21の全表面積の20〜85%の範囲とする方法について特に限定はないが、例えば、リチウムイオン二次電池用負極板を製造する際に、塗工液中に含まれる結着物質前駆体の含有量を適宜設計することで、合計面積の調節が可能である。具体的には、結着物質前駆体の含有量を増やすことで、合計面積を大きくすることができ、一方、結着物質前駆体の含有量を減少させることで、合計面積を小さくすることができる。
負極活物質層2に含まれる金属含有粒子22の含有量は、負極活物質層の総質量に対し、50質量%以下が好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
(その他の材料)
上記負極活物質層2は、上述する負極活物質粒子21及び金属含有粒子22のみから構成されていてもよいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる添加剤を含有させて形成してもよい。たとえば、本発明において導電材を使用することなく良好な導電性を発揮させることが可能であるが、より優れた導電性が望まれる場合や、負極活物質粒子の種類などによっては、導電材を使用することとしてもよい。
上記負極活物質層2は、上述する負極活物質粒子21及び金属含有粒子22のみから構成されていてもよいが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる添加剤を含有させて形成してもよい。たとえば、本発明において導電材を使用することなく良好な導電性を発揮させることが可能であるが、より優れた導電性が望まれる場合や、負極活物質粒子の種類などによっては、導電材を使用することとしてもよい。
また本発明は、樹脂製の結着物質を使用せずに、金属含有粒子22によって負極活物質粒子が集電体上に固着されているとともに、金属含有粒子22によって負極活物質粒子21同士が固着されているものであるが、これは負極活物質層に樹脂成分が含有されることを禁止する趣旨ではない。
<負極板の形成方法>
次に、本発明の負極板の形成方法について説明する。負極活物質層2の形成方法について特に限定はなく、例えば、溶媒中に、負極活物質粒子21と、金属含有粒子22を均一に分散させた塗工液を調製し、該塗工液を乾燥することで、金属含有粒子22によって、集電体1と負極活物質粒子21が固着され、金属含有粒子22によって負極活物質粒子21同士が固着されてなる負極活物質層2を形成することができる。
次に、本発明の負極板の形成方法について説明する。負極活物質層2の形成方法について特に限定はなく、例えば、溶媒中に、負極活物質粒子21と、金属含有粒子22を均一に分散させた塗工液を調製し、該塗工液を乾燥することで、金属含有粒子22によって、集電体1と負極活物質粒子21が固着され、金属含有粒子22によって負極活物質粒子21同士が固着されてなる負極活物質層2を形成することができる。
特に、本発明においては、負極活物質粒子21、金属含有粒子22の金属元素を含む結着物質前駆体、溶媒、必要に応じて上記で説明した他の材料とを用いて、塗工液を調製し、該塗工液を集電体1上に塗工した後に、塗工液を加熱して塗膜を形成し、次いで該塗膜を還元処理して負極板を形成する方法を好ましく用いることができる。以下、この形成方法について具体的に説明する。
(塗工液の調製)
塗工液の調製に用いられる、結着物質前駆体は、金属含有粒子22の金属元素を含む前駆体であり、金属含有粒子22の金属元素の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等の金属塩や、これらの金属塩の水和物等を挙げることができる。中でも、塩化物、硝酸塩、酢酸塩は汎用品としての入手が容易であるほか、これらの結着物質前駆体を溶媒に溶解させ、塗工液を集電体1上に塗工して塗膜を形成し、加熱すると、塩素イオン、硝酸イオン、酢酸イオンを容易に塗膜中から消失させることができることから、これらを特に好適に用いることができる。
塗工液の調製に用いられる、結着物質前駆体は、金属含有粒子22の金属元素を含む前駆体であり、金属含有粒子22の金属元素の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、臭素酸塩等の金属塩や、これらの金属塩の水和物等を挙げることができる。中でも、塩化物、硝酸塩、酢酸塩は汎用品としての入手が容易であるほか、これらの結着物質前駆体を溶媒に溶解させ、塗工液を集電体1上に塗工して塗膜を形成し、加熱すると、塩素イオン、硝酸イオン、酢酸イオンを容易に塗膜中から消失させることができることから、これらを特に好適に用いることができる。
これらの結着物質前駆体の具体的な例としては、例えば、金属含有粒子22の金属元素が銅である場合には、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、酢酸銅(II)一水和物等を挙げることができ、金属含有粒子の金属元素がニッケルである場合には、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル(II)六水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物等を挙げることができ、金属含有粒子22の金属元素がリチウムである場合には、塩化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、酢酸リチウム三水和物等を挙げることができる。
上記結着物質前駆体を溶解させるための溶媒は、該前駆体を溶解することができるものであればよく、従来公知の溶媒を適宜選択して用いることができる。例えば、水、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
結着物質前駆体を溶媒中に溶解した溶解液に、上述した負極活物質粒子21を混合させることにより塗工液が調製される。塗工液において、結着物質前駆体、及び負極活物質粒子の配合量は、負極板に要求される性能や電気容量、あるいは負極板と組み合わせて用いられる正極板の性能や電気容量を勘案して決定することができる。中でも、集電体上に形成される負極活物質層2に含まれる負極活物質粒子21及び金属含有粒子22が、負極活物質層の総質量に対し、上記で説明した好ましい範囲内で含まれるような量で含有されるように、負極活物質粒子及び結着物質前駆体が配合されていることが好ましい。
上述する塗工液において、溶媒に対し、添加される1種または2種以上の結着物質前駆体の添加量の合計の比率は、0.01〜20mol/L、特に0.1〜10mol/Lが好ましい。上記濃度を0.01mol/L以上とすることにより、集電体1と該集電体表面で生成される負極活物質層2とを良好に密着させることができ、負極活物質粒子21の集電体への固着が充分に図られる。また、上記濃度を、20mol/L以下とすることにより、上記塗工液を集電体表面へ良好に塗布できる程度の良好な粘度を維持することができ、均一な塗膜を形成することができる。
(塗工液の塗工)
塗工液を集電体上に塗工する方法について特に限定はなく、一般的な塗工方法を適宜選択して用いることができる。例えば、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等によって、集電体表面の任意の領域に塗工液を塗工することができる。また、集電体の表面が多孔質であったり、凹凸が多数設けられていたり、三次元立体構造を有したりする場合には、上記の方法以外に手動で塗布することも可能である。なお、本発明において使用する集電体は、必要に応じて、予めコロナ処理や酸素プラズマ処理等を行うことで、負極活物質層の成膜性をさらに改善することができる。
塗工液を集電体上に塗工する方法について特に限定はなく、一般的な塗工方法を適宜選択して用いることができる。例えば、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等によって、集電体表面の任意の領域に塗工液を塗工することができる。また、集電体の表面が多孔質であったり、凹凸が多数設けられていたり、三次元立体構造を有したりする場合には、上記の方法以外に手動で塗布することも可能である。なお、本発明において使用する集電体は、必要に応じて、予めコロナ処理や酸素プラズマ処理等を行うことで、負極活物質層の成膜性をさらに改善することができる。
また、塗工液の塗工量について特に限定はないが、加熱後の厚みが、上記で説明した負極活物質層の厚みとなるような範囲で塗工されていることが好ましい。
(塗工液の加熱)
塗工液中に含まれる結着物質前駆体を加熱することで、負極活物質粒子と、結着物質前駆体の金属が化学反応により酸化されてなる金属酸化物が含まれる塗膜が形成される。形成された塗膜は、負極活物質粒子の表面全体を覆うように、金属酸化物の被膜が形成されてなる塗膜であり、化学反応により酸化する際の凝集力により、被膜の状態で、集電体1と負極活物質粒子21とを強固に固着させ、かつ負極活物質粒子21同士を強固に固着させている。つまり、この段階では、金属含有粒子22とはなっていない。
塗工液中に含まれる結着物質前駆体を加熱することで、負極活物質粒子と、結着物質前駆体の金属が化学反応により酸化されてなる金属酸化物が含まれる塗膜が形成される。形成された塗膜は、負極活物質粒子の表面全体を覆うように、金属酸化物の被膜が形成されてなる塗膜であり、化学反応により酸化する際の凝集力により、被膜の状態で、集電体1と負極活物質粒子21とを強固に固着させ、かつ負極活物質粒子21同士を強固に固着させている。つまり、この段階では、金属含有粒子22とはなっていない。
この金属酸化物の被膜は、初期充電時の還元反応により金属酸化物の被膜が還元された場合であっても、その形態が変わることはないため、負極活物質粒子と、電解液との接触面積が著しく小さくなり、この塗膜の状態で放電レート特性を向上させることはできない。
塗工液の加熱は、塗工液を加熱することができる加熱方法あるいは加熱装置を、適宜選択して実施することができる。具体的な例としては、ホットプレート、オーブン、減圧オーブン、加熱炉、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、熱風送風機等のいずれかを使用するか、あるいは2以上を組み合わせて使用する方法を挙げることができる。加熱温度は、結着物質前駆体に含まれる金属を酸化させることができる温度以上であればよく、結着物質前駆体に含まれる金属の種類によって異なるが、通常120℃〜800℃の温度範囲である。
(塗膜の還元処理)
初期充電を行う前に予め還元処理を施すことで、負極活物質粒子21の表面を覆うように被膜の状態で存在している金属酸化物は、金属含有粒子22としての金属粒子に還元され、集電体1と負極活物質粒子21、及び負極活物質粒子21同士は、この金属含有粒子22としての金属粒子によって固着される。なお、上記の加熱処理による酸化反応で金属酸化物が生成されるときの凝集力は、還元処理によって低下することはない。したがって、金属酸化物の被膜で固着させているときと同様の固着力をもって、集電体1と負極活物質粒子21、及び負極活物質粒子21同士は、金属含有粒子22としての金属粒子によって強固に固着される。
初期充電を行う前に予め還元処理を施すことで、負極活物質粒子21の表面を覆うように被膜の状態で存在している金属酸化物は、金属含有粒子22としての金属粒子に還元され、集電体1と負極活物質粒子21、及び負極活物質粒子21同士は、この金属含有粒子22としての金属粒子によって固着される。なお、上記の加熱処理による酸化反応で金属酸化物が生成されるときの凝集力は、還元処理によって低下することはない。したがって、金属酸化物の被膜で固着させているときと同様の固着力をもって、集電体1と負極活物質粒子21、及び負極活物質粒子21同士は、金属含有粒子22としての金属粒子によって強固に固着される。
還元処理方法としては、塗膜中に含まれる金属酸化物を還元させ、金属粒子とすることができる処理方法であれば特に限定はないが、金属酸化物の被膜を均一に還元し、容易に粒子状の金属とすることがすることができる水素プラズマ雰囲気下で還元処理を行う還元処理方法や、水素、一酸化炭素等、もしくは水素、一酸化炭素を窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスで希釈した還元ガスを用い、該還元ガス雰囲気下で還元を行う還元処理方法を好適に用いることができる。還元ガスは1種の還元ガスを単独で使用してもよく、2種以上のガスを混合して用いることとしてもよい。
また、還元処理を経ることで形成された負極板は、負極活物質層2中に酸化物が含まれておらず、初期充電時に還元反応が生ずることもない。これにより、初期充電時における還元反応により、充電反応が妨げられ初期充放電効率が低下することを防止することができる。以下、初期充電時に還元反応が生ずることによる初期充放電効率の低下について、負極活物質粒子としてのグラファイトと、金属酸化物の被膜とを含む負極活物質層が集電体上に形成されてなる負極板(以下、グラファイト負極という場合がある)を例に挙げて説明する。なお、初期充放電効率は、初回充放電時の充電容量に対する放電容量の比×100から求めることができる。
高い初期充放電効率を得るためには、初期充電時に充放電反応以外の不可逆反応成分を低減させることが必要である。例えば、Li/Li+電極電位で0.1V以下に電位平坦部を有するグラファイト負極において、高い初期充放電効率を得るためには、図4(a)に示すようにグラファイト負極への初期充電開始後、直ちに、グラフェン層間にインターカレートされるプラトー電位に達することが望ましい。
しかしながら、充電反応を開始した際に、金属酸化物の被膜が含まれるグラファイト負極においては、図4(b)に示すように、初期充電時に、インターカレーション反応が生じる電位よりも高い電位(図中の0.8V〜0.2V付近)において、優先的に金属酸化物の還元反応が生じる。初期充放電効率の低下は、この還元反応により、初期充電時の不可逆な反応が増大することによるものと考えられる。
<リチウムイオン二次電池>
次に、図5を用いて本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。なお、図5は、本発明のリチウムイオン二次電池100の一例を示す概略図である。図5に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極板50、及び負極板10と、セパレータ70から構成され、これらが、外装81、82で構成される容器内に収容され、かつ、容器内に電解液90が充填された状態で密封された構成をとる。
次に、図5を用いて本発明のリチウムイオン二次電池について説明する。なお、図5は、本発明のリチウムイオン二次電池100の一例を示す概略図である。図5に示すように、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極板50、及び負極板10と、セパレータ70から構成され、これらが、外装81、82で構成される容器内に収容され、かつ、容器内に電解液90が充填された状態で密封された構成をとる。
ここで、本発明のリチウムイオン二次電池は、負極板として上記で説明した集電体1と負極活物質層2を備える本発明のリチウムイオン二次電池用負極板10を必須の構成として用いている点に特徴を有する。本発明のリチウムイオン二次電池は、この要件を具備するものであれば他の要件について特に限定はなく、従来公知の正極板、電解液、容器を適宜選択して用いることができ、図5に示す形態に限定されるものではない。なお、本発明のリチウムイオン二次電池用負極板については、上記で説明した通りであり、詳細な説明は省略する。
(正極板)
本発明のリチウムイオン二次電池を構成する正極板50について特に限定はなく、リチウムイオン二次電池の分野で使用される従来公知の正極板を適宜選択して用いることができる。例えば、このような正極板としては、本発明の負極板において用いられる集電体と同様の集電体55の表面の一部に、リチウム遷移金属複合酸化物などの正極活物質粒子、導電材、樹脂製の結着物質などが分散された溶液を塗布・乾燥し、必要に応じてプレスすることで正極活物質層54が形成されてなる正極板等を挙げることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池を構成する正極板50について特に限定はなく、リチウムイオン二次電池の分野で使用される従来公知の正極板を適宜選択して用いることができる。例えば、このような正極板としては、本発明の負極板において用いられる集電体と同様の集電体55の表面の一部に、リチウム遷移金属複合酸化物などの正極活物質粒子、導電材、樹脂製の結着物質などが分散された溶液を塗布・乾燥し、必要に応じてプレスすることで正極活物質層54が形成されてなる正極板等を挙げることができる。
(電解液)
本発明に用いられる電解液90は、一般的に、リチウムイオン二次電池用の電解液として用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
本発明に用いられる電解液90は、一般的に、リチウムイオン二次電池用の電解液として用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
上記リチウム塩の例としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、及びLiBr等の無機リチウム塩;LiB(C6H5)4、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiOSO2CF3、LiOSO2C2F5、LiOSO2C4F9、LiOSO2C5F11、LiOSO2C6F13、及びLiOSO2C7F15等の有機リチウム塩等が代表的に挙げられる。
リチウム塩の溶解に用いられる有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、及び鎖状エーテル類等が挙げられる。
正極板50、負極板10、セパレータ70を用いて製造される電池100の構造としては、従来公知の構造を適宜選択して用いることができる。例えば、正極板50及び負極板10を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータ70を介して渦巻状に巻き回して、電池容器内に収納する構造が挙げられる。また別の態様としては、所定の形状に切り出した正極板50及び負極板10をセパレータ70を介して積層して固定し、これを電池容器内に収納する構造を採用してもよい。いずれの構造においても、正極板及び負極板を電池容器内に収納後、正極板に取り付けられたリード線を外装容器に設けられた正極端子に接続し、一方、負極板に取り付けられたリード線を外装容器内に設けられた負極端子に接続し、さらに電池容器内に電解液を充填した後、密閉することによってリチウムイオン二次電池が製造される。
(放電レート特性の評価方法)
本発明のリチウムイオン二次電池用負極板の放電レート特性は、放電容量維持率(%)を求めることにより評価することができる。放電容量維持率は、放電レート特性を評価するものであり、放電レート特性が向上した電極板においては、一般的に、充電レート特性も同様に向上していると理解される。したがって、望ましい放電容量維持率が示される場合には、充放電レート特性が向上したと評価するものである。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値を1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、以下の数1に示す式によって放電容量維持率(%)を求めることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極板の放電レート特性は、放電容量維持率(%)を求めることにより評価することができる。放電容量維持率は、放電レート特性を評価するものであり、放電レート特性が向上した電極板においては、一般的に、充電レート特性も同様に向上していると理解される。したがって、望ましい放電容量維持率が示される場合には、充放電レート特性が向上したと評価するものである。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値を1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、以下の数1に示す式によって放電容量維持率(%)を求めることができる。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
(実施例1)
エタノール溶媒100部に対して、結着物質前駆体として硝酸銅を25部添加し、さらに負極活物質粒子として平均粒子径6μmの人造黒鉛粒子を35部混合させて、負極活物質層形成用塗工液を調製した。次に、集電体として、厚さ10μm、25cm×30cmの電解銅箔を置き、当該集電体の一面側に、上記負極活物質層形成用塗工液を、アプリケーターで5Mil塗布して塗工膜を形成した。そして、上記塗工膜を備える集電体を大気雰囲気下のオーブン内に設置し、270℃5時間加熱することで、酸化銅とグラファイトとが含有される厚さ約26μmの負極活物質層を形成した。次いで、作製されたリチウムイオン二次電池用負極板を、水素をキャリアガスとしたマイクロ波表面波プラズマ照射装置で還元処理を施して酸化銅を、金属粒子としての銅粒子に還元することでリチウムイオン二次電池用負極板を作製し、これを実施例1の負極板とした。このときの還元処理条件を以下に示す。
エタノール溶媒100部に対して、結着物質前駆体として硝酸銅を25部添加し、さらに負極活物質粒子として平均粒子径6μmの人造黒鉛粒子を35部混合させて、負極活物質層形成用塗工液を調製した。次に、集電体として、厚さ10μm、25cm×30cmの電解銅箔を置き、当該集電体の一面側に、上記負極活物質層形成用塗工液を、アプリケーターで5Mil塗布して塗工膜を形成した。そして、上記塗工膜を備える集電体を大気雰囲気下のオーブン内に設置し、270℃5時間加熱することで、酸化銅とグラファイトとが含有される厚さ約26μmの負極活物質層を形成した。次いで、作製されたリチウムイオン二次電池用負極板を、水素をキャリアガスとしたマイクロ波表面波プラズマ照射装置で還元処理を施して酸化銅を、金属粒子としての銅粒子に還元することでリチウムイオン二次電池用負極板を作製し、これを実施例1の負極板とした。このときの還元処理条件を以下に示す。
<還元処理条件>
H2圧:20Pa
マイクロ波出力:1000W
照射時間:30sec
H2圧:20Pa
マイクロ波出力:1000W
照射時間:30sec
(実施例2)
実施例1の人造黒鉛粒子を、平均粒子径7μmの天然黒鉛粒子に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例2の負極板を作製した。
実施例1の人造黒鉛粒子を、平均粒子径7μmの天然黒鉛粒子に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例2の負極板を作製した。
(実施例3)
実施例1の硝酸銅を、硝酸ニッケル(II)六水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例3の負極板を作製した。
実施例1の硝酸銅を、硝酸ニッケル(II)六水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例3の負極板を作製した。
(実施例4)
実施例3の人造黒鉛粒子を、平均粒子径7μmの天然黒鉛粒子に変更した以外は、全て実施例3と同じ条件で、実施例4の負極板を作製した。
実施例3の人造黒鉛粒子を、平均粒子径7μmの天然黒鉛粒子に変更した以外は、全て実施例3と同じ条件で、実施例4の負極板を作製した。
(実施例5)
実施例1の硝酸銅を、硝酸リチウムに変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例5の負極板を作製した。
実施例1の硝酸銅を、硝酸リチウムに変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例5の負極板を作製した。
(実施例6)
実施例5の人造黒鉛粒子を、平均粒子径7μmの天然黒鉛粒子に変更した以外は、全て実施例5と同じ条件で、実施例6の負極板を作製した。
実施例5の人造黒鉛粒子を、平均粒子径7μmの天然黒鉛粒子に変更した以外は、全て実施例5と同じ条件で、実施例6の負極板を作製した。
(実施例7)
実施例1の硝酸銅を、酢酸銅(II)一水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例7の負極板を作製した。
実施例1の硝酸銅を、酢酸銅(II)一水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例7の負極板を作製した。
(実施例8)
実施例1の硝酸銅を、酢酸ニッケル(II)四水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例8の負極板を作製した。
実施例1の硝酸銅を、酢酸ニッケル(II)四水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例8の負極板を作製した。
(実施例9)
実施例1の硝酸銅を、酢酸リチウム三水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例9の負極板を作製した。
実施例1の硝酸銅を、酢酸リチウム三水和物に変更した以外は、全て実施例1と同じ条件で、実施例9の負極板を作製した。
(実施例10〜15)
実施例1、3、5、7〜9の負極板を、水素をキャリアガスとしたマイクロ波表面波プラズマ照射装置を用いる代わりに、水素ガスを窒素ガスで希釈した混合ガスで置換したボックス炉(光洋サーモ社製:小型ボックス炉 KBF542N1)を用いて還元処理を行った以外は、全て実施例1、3、5、7〜9と同じ条件で、実施例10〜15の負極板をそれぞれ作製した。
実施例1、3、5、7〜9の負極板を、水素をキャリアガスとしたマイクロ波表面波プラズマ照射装置を用いる代わりに、水素ガスを窒素ガスで希釈した混合ガスで置換したボックス炉(光洋サーモ社製:小型ボックス炉 KBF542N1)を用いて還元処理を行った以外は、全て実施例1、3、5、7〜9と同じ条件で、実施例10〜15の負極板をそれぞれ作製した。
(実施例16〜21)
実施例1、3、5、7〜9の負極板を、水素をキャリアガスとしたマイクロ波表面波プラズマ照射装置を用いる代わりに、一酸化炭素ガスを窒素ガスで希釈した混合ガスで置換したボックス炉(光洋サーモ社製:小型ボックス炉 KBF542N1)を用いて還元処理を行った以外は、全て実施例1、3、5、7〜9と同じ条件で、実施例16〜21の負極板をそれぞれ作製した。
実施例1、3、5、7〜9の負極板を、水素をキャリアガスとしたマイクロ波表面波プラズマ照射装置を用いる代わりに、一酸化炭素ガスを窒素ガスで希釈した混合ガスで置換したボックス炉(光洋サーモ社製:小型ボックス炉 KBF542N1)を用いて還元処理を行った以外は、全て実施例1、3、5、7〜9と同じ条件で、実施例16〜21の負極板をそれぞれ作製した。
(比較例1)
硝酸銅を添加しなかった以外は、全て実施例1と同じ条件で、比較例1の負極板を作製した。
硝酸銅を添加しなかった以外は、全て実施例1と同じ条件で、比較例1の負極板を作製した。
(比較例2)
還元処理を施さなかった以外は、全て実施例1と同じ条件で、比較例2の負極板を作製した。
還元処理を施さなかった以外は、全て実施例1と同じ条件で、比較例2の負極板を作製した。
(負極板表面の確認)
実施例の負極板、及び比較例の負極板の表面状態をSEM像により確認した。実施例1、10、16及び比較例2の負極板表面のSEM像を、それぞれ図6〜図9に示す。図6〜図9に示すように実施例1、10、16の負極板は、負極活物質層中に、粒子の状態で金属が存在しており、この金属粒子により集電体上に負極活物質粒子が固着されているとともに、負極活物質粒子同士が固着されていることが確認された。また、実施例2〜9の負極板は、実施例1と同様に、金属粒子により集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されており、実施例11〜15の負極板は、実施例10と同様に、金属粒子により集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されており、実施例17〜21の負極板は、実施例16と同様に、金属粒子により集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されていることが確認された。一方、図9に示すように比較例2の負極板は、金属が被膜の状態で存在しており、被膜状の金属により、集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されていることが確認された。
実施例の負極板、及び比較例の負極板の表面状態をSEM像により確認した。実施例1、10、16及び比較例2の負極板表面のSEM像を、それぞれ図6〜図9に示す。図6〜図9に示すように実施例1、10、16の負極板は、負極活物質層中に、粒子の状態で金属が存在しており、この金属粒子により集電体上に負極活物質粒子が固着されているとともに、負極活物質粒子同士が固着されていることが確認された。また、実施例2〜9の負極板は、実施例1と同様に、金属粒子により集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されており、実施例11〜15の負極板は、実施例10と同様に、金属粒子により集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されており、実施例17〜21の負極板は、実施例16と同様に、金属粒子により集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されていることが確認された。一方、図9に示すように比較例2の負極板は、金属が被膜の状態で存在しており、被膜状の金属により、集電体と負極活物質粒子、及び負極活物質粒子同士が固着されていることが確認された。
(金属含有粒子の平均粒子径の測定)
実施例1、10の負極板の負極活物質層に含まれる金属含有粒子の平均粒子径の測定を行った。平均粒子径の測定は、電極表面のSEM像の3μm×3μmを切り取り、このSEM像の粒度分布のグラフを、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて作成し、粒度分布のグラフから、体積中位粒径を算出し、これを平均粒子径とした。
実施例1、10の負極板の負極活物質層に含まれる金属含有粒子の平均粒子径の測定を行った。平均粒子径の測定は、電極表面のSEM像の3μm×3μmを切り取り、このSEM像の粒度分布のグラフを、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて作成し、粒度分布のグラフから、体積中位粒径を算出し、これを平均粒子径とした。
(金属含有粒子の平均体積の測定)
実施例1、10の負極板の負極活物質層に含まれる金属含有粒子の平均体積の測定を行った。平均体積は、金属含有粒子の平均粒子径の測定で算出された平均粒子径(体積中位粒径)を、金属含有粒子の直径とし、金属含有粒子を球体と仮定することで算出した。
実施例1、10の負極板の負極活物質層に含まれる金属含有粒子の平均体積の測定を行った。平均体積は、金属含有粒子の平均粒子径の測定で算出された平均粒子径(体積中位粒径)を、金属含有粒子の直径とし、金属含有粒子を球体と仮定することで算出した。
(占有率の測定)
また、実施例1〜21、及び比較例1〜2の負極板における、1つの負極活物質粒子の全表面積に対する該1つの負極活物質粒子と金属粒子とが付着している部分(付着している領域)の合計面積の割合を算出した。負極活物質粒子の表面積、及び付着面積の測定は、SEM像に基づいて算出を行った。
また、実施例1〜21、及び比較例1〜2の負極板における、1つの負極活物質粒子の全表面積に対する該1つの負極活物質粒子と金属粒子とが付着している部分(付着している領域)の合計面積の割合を算出した。負極活物質粒子の表面積、及び付着面積の測定は、SEM像に基づいて算出を行った。
<三極式コインセルの作製>
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、当該溶質であるLiPF6の濃度が、1mol/Lとなるように濃度調製して、非水電解液を調製した。
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、当該溶質であるLiPF6の濃度が、1mol/Lとなるように濃度調製して、非水電解液を調製した。
上述のとおり作製した実施例1〜実施例21、比較例1〜2の負極板を15mmφサイズに打ち抜き、これを作用極板とした。また、対極板及び参照極板として金属リチウム板、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、三極式コインセルを組み立て、これを実施例の試験セル1〜21、及び比較例の試験セル1〜2とした。そして、実施例、及び比較例のそれぞれの試験セルを、下記充放電試験に供した。
<充放電試験>
上述のとおり作成した三極式コインセルである実施例の試験セル1〜21、比較例の試験セル1〜2において、作用極板の放電試験を実施するために、各実施例、及び比較例の試験セルを下記充電試験のとおり満充電させた。
上述のとおり作成した三極式コインセルである実施例の試験セル1〜21、比較例の試験セル1〜2において、作用極板の放電試験を実施するために、各実施例、及び比較例の試験セルを下記充電試験のとおり満充電させた。
充電試験:
各実施例、及び比較例の試験セルを、25℃の環境下で、電圧が0.03Vに達するまで定電流(充電レート:0.2C)で定電流充電した。当該電圧が0.03Vに達した後は、電圧が0.03Vを下回らないように、当該電流(充電レート:0.2C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行い、満充電させた後、10分間休止させた。ここで、上記「0.2C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、5時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極板において、活物質であるグラファイトの理論放電量372mAh/gが5時間で放電されるよう設定した。
各実施例、及び比較例の試験セルを、25℃の環境下で、電圧が0.03Vに達するまで定電流(充電レート:0.2C)で定電流充電した。当該電圧が0.03Vに達した後は、電圧が0.03Vを下回らないように、当該電流(充電レート:0.2C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行い、満充電させた後、10分間休止させた。ここで、上記「0.2C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、5時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極板において、活物質であるグラファイトの理論放電量372mAh/gが5時間で放電されるよう設定した。
放電試験:
その後、満充電された各実施例、及び比較例の試験セルを、25℃の環境下で、電圧が0.03V(満充電電圧)から2.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(放電レート:0.2C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極(実施例1〜21、比較例1〜2である負極板)の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位活物質質量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
その後、満充電された各実施例、及び比較例の試験セルを、25℃の環境下で、電圧が0.03V(満充電電圧)から2.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(放電レート:0.2C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極(実施例1〜21、比較例1〜2である負極板)の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位活物質質量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
続いて、各実施例、及び比較例の試験セルについて定電流(放電レート:1C、放電終了時間:1時間)での定電流放電試験を行い、1Cレートにおける作用極の放電容量を求め、単位活物質質量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。次いで、1Cレートにおける定電流放電試験を基準として、10倍の定電流(放電レート10C、放電終了時間:6分)、20倍の定電流(放電レート20C、放電終了時間:3分)、30倍の定電流(放電レート30C、放電終了時間:2分)、40倍の定電流(放電レート40C、放電終了時間:90秒)の定電流放電試験を行い、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、単位活物質質量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
<放電容量維持率(%)の算出>
作用極板の放電レート特性を評価するため、上述のとおり得られた各放電レートにおける単位質量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、上述で示した数1により放電容量維持率(%)を求めた。上記放電試験により得られた単位質量当たりの放電容量(mAh/g)及び放電容量維持率(%)を表1に示す。
作用極板の放電レート特性を評価するため、上述のとおり得られた各放電レートにおける単位質量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、上述で示した数1により放電容量維持率(%)を求めた。上記放電試験により得られた単位質量当たりの放電容量(mAh/g)及び放電容量維持率(%)を表1に示す。
<初期充放電効率(%)の算出>
初期充放電効率を評価するため、実施例、及び比較例の試験セルに0.2Cレートの電流を印加して、定電流(CC)+定電圧(CV)充電を1サイクル行い、その後、定電流放電を1サイクル行った。このときの放電容量、充電容量を算出し、実施例、及び比較例の初期充放電効率(%)を求めた。実施例、及び比較例の初期充放電効率(%)を表1に併せて示す。なお、上記充放電試験は、Bio Logic社製のVMP3を用いて実施した。
初期充放電効率を評価するため、実施例、及び比較例の試験セルに0.2Cレートの電流を印加して、定電流(CC)+定電圧(CV)充電を1サイクル行い、その後、定電流放電を1サイクル行った。このときの放電容量、充電容量を算出し、実施例、及び比較例の初期充放電効率(%)を求めた。実施例、及び比較例の初期充放電効率(%)を表1に併せて示す。なお、上記充放電試験は、Bio Logic社製のVMP3を用いて実施した。
表1からも明らかなように、金属含有粒子によって集電体上に負極活物質粒子を固着させるとともに、金属含有粒子によって負極活物質粒子同士を固着させた実施例1〜21の負極板は、放電容量維持率(放電レート)に優れた結果となった。さらに、金属粒子によって集電体上に負極活物質粒子を固着させるとともに、金属粒子によって負極活物質粒子同士を固着させた実施例1〜21の負極板は、初期充放電効率においても優れた結果となった。一方、結着物質を用いなかった比較例1、及び金属酸化物の被膜で、集電体上に負極活物質粒子を固着させるとともに、負極活物質粒子同士を固着させた比較例2の負極板は、放電容量維持率(放電レート特性)が著しく低下することが確認された。
1・・・集電体
2・・・負極活物質層
10・・・リチウムイオン二次電池用負極板
21・・・負極活物質粒子
22・・・金属含有粒子
30・・・固着部分
50・・・正極板
70・・・セパレータ
81、82・・・外装
90・・・電解液
100・・・リチウムイオン二次電池
2・・・負極活物質層
10・・・リチウムイオン二次電池用負極板
21・・・負極活物質粒子
22・・・金属含有粒子
30・・・固着部分
50・・・正極板
70・・・セパレータ
81、82・・・外装
90・・・電解液
100・・・リチウムイオン二次電池
Claims (6)
- 集電体上に負極活物質層が設けられてなるリチウムイオン二次電池用負極板であって、
前記負極活物質層は、少なくとも負極活物質粒子と、金属含有粒子を含み、
前記負極活物質粒子は、前記金属含有粒子によって集電体上に固着されており、また、負極活物質粒子同士も、前記金属含有粒子によって固着されており、
かつ、1つの負極活物質粒子と固着している全ての金属含有粒子において、該1つの負極活物質粒子と固着している部分の合計面積が、該1つの負極活物質粒子の全表面積の20〜85%の範囲であり、
前記負極活物質粒子は、炭素材料からなり、
前記金属含有粒子は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属粒子、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、周期律表第4周期に属する遷移金属のいずれかの金属酸化物粒子である
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極板。 - 前記金属粒子が、銅粒子、ニッケル粒子又はリチウム粒子であり、前記金属酸化物粒子が、酸化銅粒子、酸化ニッケル粒子又は酸化リチウム粒子であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極板。
- 前記金属含有粒子の大きさが、前記負極活物質粒子の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極板。
- 前記金属含有粒子の平均粒子径が、0.05〜2μmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極板。
- 前記金属含有粒子の平均体積が、0.00006〜5μm 3 であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極板。
- 正極板と、負極板と、該正極板と負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒とを含む電解液とを備えるリチウムイオン二次電池であって、
前記負極板が、請求項1乃至5の何れか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極板であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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