以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1及び図2は、本発明の電力変換装置の第1の実施形態の主回路及び制御回路を示す概略構成図である。図1に示すように、前述した図34の構成に、以下に述べる第1の電流配分調整手段と、第2の電流配分調整手段を新たに設けたものである。図1では、第1の電流配分調整手段として第1の抵抗器Ra1を設け、第2の電流配分調整手段として第2の抵抗器Ra2を設けたものである。具体的には、電力変換器CNVの直流負側端子N2と前記整流器RECの直流負側端子N1との間に、整流器RECと電力変換器CNVに流れる電流配分を調整するための抵抗器Ra1を設け、また電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流正側端子P1との間に、整流器RECと電力変換器CNVに流れる電流配分を調整するための抵抗器Ra2を設けたものである。これ以外の点は、前述した図34の従来の電力変換装置と同一構成で、以下のように構成されている。
整流器RECは、複数の電力用ダイオードPD1〜PD6をブリッジ接続してなり、交流電源SUPと変圧器(トランス)TRを介して接続する交流側端子A1、A2、A3と、負荷装置Loadに接続する直流正側端子P1及び直流負側端子N1を有している。
電力変換器CNVは、自己消弧素子S1(S2、S3、S4、S5、S6)と高速ダイオードD1(D2、D3、D4、D5、D6)を逆並列接続したアームを複数個ブリッジ接続してなり、交流電源SUPと接続する交流側端子A4、A5、A6と、整流器RECの直流正側端子P1及び直流負側端子N1並びに負荷装置Loadに接続する直流正側端子P2及び直流負側端子N2を有する。
整流器REC及び電力変換器CNVの交流側端子A1―A4、A2―A5、A3―A6間にそれぞれリカバリ電流抑制用リアクトルLa1、La2、La3(これらの総称をLaと称する)を接続している。リアクトルLa1、La2、La3は、電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6がオンしたときに整流器RECの各ダイオードPD1〜PD6に過大なリカバリ電流が流れ込むのを抑える役目をする。
また、電力変換器CNVを一定のパルスパターンで動作させ、交流電源SUPの電圧に対する電力変換器CNVの交流側端子電圧の位相角を調整することにより交流電源SUPから負荷装置Loadに流れる負荷電流(入力電流)を制御する制御手段例えば、図2に示す制御回路を備えている。
制御回路は、比較器C1、C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCとからなっている。
比較器C1は、図示しない電圧検出器により検出される直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdと、電圧指令値Vd *とを比較し、その偏差εvを出力する。電圧制御補償回路Gv(S)は、偏差εvを積分または比例増幅した値を加算器ADに出力する。フィードフォワード補償器FFは、図1の電流検出器LCTにより検出される負荷装置Loadが消費する直流電流ILを検知し、その直流電流ILに見合った有効電流を供給するようにフィードフォワード補償量IqFFを演算し、このフィードフォワード補償量IqFFを加算器ADに出力する。
加算器ADは、フィードフォワード補償量IqFFと電圧制御補償回路Gv(S)の出力を加算し、この加算結果、すなわち電源SUPから供給される有効電流指令値Iq *として比較器C2に出力する。座標変換回路Zは、図1の交流電源SUPから供給される3相入力電流Ir、Is、Itの検出値を取り込み、dq軸(直流量)、すなわちd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。
比較器C2は、加算器ADからの有効電流指令値Iq *と、座標変換回路Zからの有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)に出力する。電流制御補償回路Gi(S)は、偏差εiを増幅して、位相角指令値φ*を出力する。電源同期位相検出回路PLLは交流電源SUPの電源電圧Vr、Vs、Vtの検出値に同期した位相信号θr、θs、θtを作り、これを位相制御回路PHCに出力する。位相制御回路PHCは、電流制御補償回路Gi(S)からの位相角指令値φ*と、電源同期位相検出回路PLLからの位相信号θr、θs、θtを取り込み、ここで電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を作成する。この結果、電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス、3パルス、5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
以上述べた本発明の電力変換装置の第1の実施形態によれば、以下のような作用効果が得られる。前述のように図34に示す従来の電力変換装置に抵抗器Ra1、Ra2を設けたので、電力変換器CNVの自己消弧素子がオフしたとき、リカバリ電流抑制用リアクトルLaに流れていた電流Iaを速やかに減衰させ、電力変換器CNVを構成する高速ダイオードから整流器RECを構成する電力用ダイオードへ電流を速やかに移すことができる。
例えば、電力変換器CNVの主回路を構成している自己消弧素子(下アーム素子S4)をオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流は、まず、上アーム素子S1に逆並列接続されている高速ダイオードD1を介して流れる。
一般に、高速ダイオードD1の順方向電圧降下VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向電圧降下VFbの方が小さいので、その差電圧(VFa−VFb)によって、高速ダイオードD1に流れていた電流は徐々に電力用ダイオードPD1に移っていく。前記差電圧(VFa−VFb)が大きいほど高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に転流する時間は短くなり、高速ダイオードD1の負担が軽くなる。しかし、VFaとVFbの差があまりない場合には、なかなか電力用ダイオードPD1に電流が移らず、高速ダイオードD1の負担が重くなってしまう。
一般に、自己消弧素子S1と高速ダイオードD1は、同一のパッケージに納められており、高速ダイオードD1だけの順方向電圧降下VFaを大きくするための直列抵抗等は挿入できない場合が多いが、本発明では後述するように、そのような問題を解決できる。
電力変換器CNVの直流負側端子N2と整流器RECの直流負側端子N1との間に接続された第1の抵抗器Ra1は、下アーム素子S4がオフしたとき、リアクトルLa1に流れていた電流を時定数La1/Ra1で減衰させ、高速ダイオードD1に流れていた電流を速やかに減少させる。その結果、電力用ダイオードPD1に大部分の電流が移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。抵抗器Ra1は、他の相の高速ダイオードD2、D3から電力用ダイオードPD2、PD3への転流時にも同様の役目を果たす。
同様に、電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流正側端子P1との間に接続された第2の抵抗器Ra2は、上アーム素子S1がオフしたとき、リアクトルLa1に流れていた電流を時定数La1/Ra2で減衰させ、高速ダイオードD4に流れていた電流を速やかに減少させる。その結果、電力用ダイオードPD4に大部分の電流が移り、高速ダイオードD4の負担を軽減させることができる。抵抗器Ra2は、他の相の高速ダイオードD5、D6から電力用ダイオードPD5、PD6への転流時にも同様の役目を果たす。
さらに、図1の実施形態によれば、従来の電力変換装置と同様に次のような作用効果も得られることは言うまでもない。すなわち、整流器RECと電力変換器CNVを組み合わせたので、力行運転時は大部分の電流が整流器RECを介して流れるように制御しながら、入力電流Isの高調波の低減と入力力率の向上を図る。また、回生運転時は大部分の電流が電力変換器CNVの自己消弧素子に流れるが、入力電流Isのゼロ点付近でスイッチングを行うように制御するため、素子の遮断電流を小さくでき、損失の少ない電力変換装置を提供できる。
電力変換器CNVは、一定のパルスパターンで、交流電源SUPの電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、変圧器TRのもれインダクタンスLsに印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Is=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力が増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力が交流電源SUPに回生される。
因みに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Isの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2または、π−φ/2となり、入力力率は、cos(φ/2)となる。また、入力電流Isと電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2または、π+φ/2となり、変換器力率は、cos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Isと変圧器TRのもれインダクタンスLsの値に依存する。位相角は、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Isの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Isのゼロ点付近でスイッチングが行われ、電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流は小さくて済む。これにより、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
また、電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd *に一致するように交流電源SUPから供給される入力電流Isを制御する。例えば、Vd<Vd *となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを遅らせ、入力電流Isの有効成分を増加させる。この結果、有効電力が交流電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給され、直流電圧Vdが上昇し、Vd=Vd *となるように制御される。
逆に、Vd>Vd *となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを進ませ、入力電流Isの有効成分を負の値にする。この結果、直流平滑コンデンサCdから交流電源SUPへ有効電力が回生され、直流電圧Vdが下降し、Vd=Vd *となるように制御される。
図3は、本発明の電力変換装置の第1の実施形態の制御動作を説明するための交流側等価回路を示す。また、図4は、その電圧・電流ベクトル図を示す。図中、Vsは電源電圧、Vcは電力変換器CNVの交流出力電圧、Isは入力電流、jωLs・Isは交流リアクトルLsによる電圧降下分(ただし、リアクトルLsの抵抗分は十分小さいものとして無視した)を表わす。ベクトル的に、Vs=Vc+jωLs・Isの関係がある。
電源電圧Vsの波高値と電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの基本波波高値は大略一致するように合わせる。直流電圧Vdは負荷側からの要求で決まる場合が多く、パルスパターンを決めると、交流出力電圧Vcの基本波波高値は決まってしまう。そこで、電源側に変圧器TRを設置し、その2次電圧をVsとして、波高値を合わせる。
入力電流Isは、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを調整することにより制御できる。すなわち、位相角φ=0とすると、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Isはゼロとなり、入力電流Isもゼロとなる。位相角(遅れ)φを増やしていくと、jωLs・Isの電圧が増加し、入力電流Isもその値に比例して増加する。入力電流ベクトルIsは、電圧jωLs・Isに対し90°遅れており、電源電圧Vsに対しては、φ/2だけ遅れたベクトルとなる。従って、電源側から見た入力力率は、cos(φ/2)となる。
一方、電力変換器CNVの交流出力電圧をVc’のように位相角φを進み方向に増やしていくと、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Isも負となり、入力電流はIs’のように、電源電圧Vsに対し(π−φ/2)の位相角となる。すなわち、電力Ps=Vs・Isは負となり、電力を電源に回生することができる。電源電圧Vsを基準にして、交流出力電圧Vcを図の破線に沿ってVc’の方向に回していくと、入力電流ベクトルIsは破線に沿ってIs’の方向に変化する。
図2において、有効電流Iqは次のように制御される。
Iq *>Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が増加し、入力電流Isを増加させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが増加し、やがてIq *=Iqとなって落ち着く。逆に、Iq *<Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が減少しまたは負の値になり、入力電流Isを減少させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが減少し、やはりIq *=Iqとなって落ち着く。
また、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは次のように制御される。
Vd *>Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq *が増加し、上記のようにIq *=Iqに制御されるので、有効電力が交流電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給される。その結果、直流電圧Vdが増加し、Vd *=Vdとなるように制御される。
逆に、Vd *<Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq *が減少しまたは負の値となり、有効電力が直流平滑コンデンサCdから交流電源SUP側に回生される。その結果、直流電圧Vdが減少し、やはりVd *=Vdとなるように制御される。
図1、図2の電力変換装置では、負荷がとる直流電流ILを電流検出器LCTが検知し、その量に見合った有効電流を供給するようにフィードフォワード補償器FFで補償量IqFF=k1・ILを演算し、加算器ADに入力している。これにより、負荷が急変した場合、それに見合った入力電流(有効電流)Iqが供給され、直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdの変動を抑えている。
図5は、図2の装置の位相制御回路PHCの実施形態を示す。図中、ADr、ADs、ADtは加減算器、PTN1〜PTN3はパルスパターン発生器を示す。
加減算器ADr〜ADtは、位相信号θr、θs、θtから前記位相角指令値φ*を引き算し、新たな位相信号θcr、θcs、θctを作る。当該新たな位相信号θcr、θcs、θctは、0〜2πの周期関数で、電源周波数に同期して変化する。
パルスパターン発生器PTN1〜PTN3は、前記新たな位相信号θcr、θcs、θctに対して、一定のパルスパターンとなるようにゲート信号g1〜g6を発生する。
パルスパターン発生器PTN1は、位相信号θcrに対するR相素子S1、S4のパルスパターンをテーブル関数として記憶したもので、図6に1パルス動作時の波形を示す。
図6において、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。すなわち、入力θcrに対し、次のようなゲート信号g1(またはg4)を出力する。
0≦θcr<π の範囲で、g1=1、g4=0(S1:オン、S4:オフ)
π≦θcr<2π の範囲で、g1=0、g4=1(S1:オフ、S4:オン)
電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。直流電圧Vdが一定ならば、交流出力電圧Vcrの振幅値は一定となる。Vcrの基本波Vcr *の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φ*だけ遅れている。S相、T相も同様に与えられる。
図7は、図6のパルスパターンで電力変換器CNVを動作させた場合の力行運転時のR相各部動作波形を示す。なお、説明の便宜上、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
図7において、電力変換器CNVの交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ遅れている。また、入力電流Irは電源電圧Vrに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1、IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1、ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、また、IPD1、IPD4は電力用ダイオードPD1、PD4の電流波形をそれぞれ表わしている。以下に、図1、図2を参照しながらそのときの動作を説明する。
入力電流Irが負から正に変るまでは電力用ダイオードPD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irはリカバリ電流抑制用リアクトルLa1と素子S4を介して流れるようになる。次に、素子S4をオフすると、リカバリ電流抑制用リアクトルLa1の作用により、電流Irはまず高速ダイオードD1を介して流れる。高速ダイオードD1の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向降下電圧VFbの方が低いため、その電圧差(VFa−VFb)により、リカバリ電流抑制用リアクトルLa1に流れている電流が徐々に小さくなり、入力電流Irは、高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に移っていく。その転流時間はリカバリ電流抑制用リアクトルLa1のインダクタンス値に比例し、前記差電圧(VFa−VFb)に反比例する。リアクトルLa1を過飽和リアクトルにすることにより、流れる電流の大きいところでインダクタンス値が小さくなり、高速ダイオードに流れていた電流がより速く電力用ダイオードに移り、損失が低減される。
入力電流Irが再び反転するまでその電流は電力用ダイオードPD1に流れる。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4および電力用ダイオードPD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
力行運転時の入力電流Irの大部分は電力用ダイオードPD1、PD4に流れるので、損失が小さく、過負荷耐量の大きな電力変換装置を提供できる。
自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIsmとした場合、Imax=Ism×sin(φ/2)となる。例えば、φ=20°の場合、Imax=0.174×Ism となる。すなわち、自己消弧素子のしゃ断電流が小さいものを用意すればよく、コストの安い電力変換装置を提供できる。
図8は、回生運転時の動作波形を示すもので、IS1、IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1、ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、また、IPD1、IPD4は電力用ダイオードPD1、PD4の電流波形をそれぞれ表わしている。 変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ進んでいる。また、入力電流Irは電源電圧の反転値−Vrに対し、位相角(φ/2)だけ進んで流れる。
入力電流Irが負で、素子S1がオン(S4はオフ)のときは、入力電流Irは素子S1とリカバリ電流抑制用リアクトルLa1を介して流れる。素子S1をオフ(S4をオン)すると、リカバリ電流抑制用リアクトルLa1の作用により、電流Irはまず高速ダイオードD4を介して流れる。高速ダイオードD4の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD4の順方向降下電圧VFbの方が低いため、その電圧差により、リカバリ電流抑制用リアクトルLa1に流れている電流が徐々に小さくなり、入力電流Irは、高速ダイオードD4から電力用ダイオードPD4に移っていく。入力電流Irが反転すると、素子S4に電流が流れ、上記と同様に素子S4をオフすることにより、まず高速ダイオードD1に電流が移り、やがて電力ダイオードPD1に電流が移る。
回生運転時、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIsmとした場合、Imax=Ism×sin(φ/2)となる。例えば、φ=20°の場合、Imax=0.174×Ism となる。S相、T相も同様に制御される。
以上のように、回生運転時の入力電流Irの大部分は自己消弧素子に流れるが、当該素子S1〜S6のしゃ断電流は小さくてすみ、コストの安い電力変換装置を提供できる。
図9は、電力変換器CNVを3パルス動作させた場合の力行運転時のR相各部動作波形を示す。なお、説明を簡略化するため、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
図9において、変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vsに対し、位相角φだけ遅れる。また、入力電流Isは電源電圧Vsに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1、IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1、ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、また、IPD1、IPD4は電力用ダイオードPD1、PD4の電流波形をそれぞれ表わしている。そのときの動作を以下に説明する。
入力電流Irが負から正に変るまでは電力用ダイオードPD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irはリカバリ電流抑制用リアクトルLa1と素子S4を介して流れるようになる。
次に、素子S4をオフすると、リカバリ電流抑制用リアクトルLa1の作用により、電流Irはまず高速ダイオードD1を介して流れる。高速ダイオードD1の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向降下電圧VFbの方が低いため、その電圧差により、リカバリ電流抑制用リアクトルLa1に流れている電流が徐々に小さくなり、入力電流Irは、高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に移っていく。その転流時間はリカバリ電流抑制用リアクトルLa1のインダクタンス値に比例し、前記差電圧(VFa−VFb)に反比例する。
次に、素子S4を再びオンすると、入力電流Irはリカバリ電流抑制用リアクトルLa1と素子S4を介して流れ、電力用ダイオードPD1および高速ダイオードD1の電流はゼロとなる。さらに、図9のθ1で、素子S4をオフすると、上記と同じように、まず高速ダイオードD1に電流が流れ、次に電力用ダイオードPD1に電流が移っていき、入力電流Irが再び反転するまでその電流は電力用ダイオードPD1に流れる。
入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4および電力用ダイオードPD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
3パルス動作の場合、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIsmとした場合、
Imax=Ism×sin(φ/2+θ1)
となる。例えば、φ=20°、θ1=10°とした場合、Imax=0.342×Ism となる。
このように、本発明の電力変換装置の第1の実施形態によれば、力行運転時には大部分の電流が、オン電圧の小さい電力用ダイオードPD1〜PD6を通って流れ、高速ダイオードD1〜D6に流れる電流はわずかとなり、高効率の変換装置を達成できる。また、自己消弧素子S1〜S6のしゃ断電流を小さくでき、装置全体のコストを大幅に低減できる。
図7〜図9の動作説明で、高速ダイオードD1の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向降下電圧VFbの方が低いという前提で説明してきたが、実際の装置では、使われる素子によっては必ずしも上記条件を満足するとは限らない。
一般に、高速ダイオードD1の順方向電圧降下VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向電圧降下VFbの方が小さいので、その差電圧(VFa−VFb)によって、高速ダイオードD1に流れていた電流は徐々に電力用ダイオードPD1に移っていく。前記差電圧(VFa−VFb)が大きいほど高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に転流する時間は短くなり、高速ダイオードD1の負担が軽くなる。しかし、VFaとVFbの差があまりない場合には、なかなか電力用ダイオードPD1に電流が移らず、高速ダイオードD1の負担が重くなってしまう。一般に、自己消弧素子S1と高速ダイオードD1は、同一のパッケージに納められており、高速ダイオードD1だけの順方向電圧降下VFaを大きくするための直列抵抗等は挿入できない場合が多い。これに対して、本実施形態の電力変換装置によれば、そのような問題を解決できる。
図10は、図1、図2の電力変換装置の動作を説明するための1相分の主回路構成を示すもので、PD1、PD4は電力用ダイオード、S1、S4は自己消弧素子、D1、D4は高速ダイオード、La1はリカバリ電流抑制用リアクトル、Ra1、Ra2は抵抗器、Vdは直流平滑コンデンサCdの印加電圧を表す。端子Uは3相変圧器(トランス)線のr相端子に接続される。
図10のモード(1)は、電力用ダイオードPD1を介して入力電流Irが流れていたとき、下アームの自己消弧素子S4をオンした場合の電流の流れを示すもので、素子S4をオンすることにより、リカバリ電流が、Vd(+)→PD1→La1→S4→Ra2→Vd(−)の経路で流れる。このとき、リアクトルLa1および抵抗Ra2は当該リカバリ電流を抑制する役目を果たす。やがて、電力用ダイオードPD1がオフし、リアクトルLa1および自己消弧素子S4を介して流れる電流Iaは入力電流Irと等しくなる。
次にモード(2)において、自己消弧素子S4がオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流Iaは、まず、上アームの高速ダイオードD1および抵抗器Ra1を介して流れる。
さらにモード(3)に移り、電力用ダイオードPD1にも入力電流Irの一部が流れるようになるが、抵抗Ra1は、前記差電圧(VFa−VFb)が小さい場合でも、時定数T=La1/Ra1で、リアクトルLa1の電流Iaを減衰させる役目を果たす。例えば、La=20μH、Ra1=0.01Ωとした場合、時定数T=2msecとなり、50Hz電源の1サイクル周期=20msecに対し、十分速く電流Iaを減衰させることができる。やがて、モード(4)のように、全ての入力電流Irが電力用ダイオードPD1を介して流れるようになる。
これにより、高速ダイオードD1に流れる電流を抑制でき、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、電力変換装置の損失低減を図ることができる。
第1の抵抗器Ra1は、他の相の高速ダイオードD2、D3から電力用ダイオードPD2、PD3への転流時にも同様の役目を果たす。
同様に、電力変換器CNVの直流正側端子と整流器RECの直流正側端子との間に接続された第2の抵抗器Ra2は、前記上アーム素子S1がオフしたとき、リアクトルLa1に流れていた電流を時定数La1/Ra2で減衰させ、高速ダイオードD4に流れていた電流を速やかに減少させる。その結果、電力用ダイオードPD4に電流が移り、高速ダイオードD4の負担を軽減させることができる。抵抗器Ra2は、他の相の高速ダイオードD5、D6から電力用ダイオードPD5、PD6への転流時にも同様の役目を果たす。
以上のように、本発明の電力変換装置の第1の実施形態によれば、自己消弧素子S1〜S6と、高速ダイオードD1〜D6が同一のパッケージに納められている場合でも、高速ダイオードD1〜D6と電力用ダイオードPD1〜PD6の電流分担を調整することが可能となり、高速ダイオードD1〜D6に過大な電流が流れるのを防ぐことができ、かつ、効率の高い電力変換装置を提供できる。
(第2の実施形態)
図11は、本発明の電力変換装置の第2の実施形態の主回路を示す概略構成図である。
前述の第1の実施形態と異なる点は、前述した第1及び第2の電流配分調整手段のみを次のようにした点である。前述の実施形態では、電力変換器CNVの直流負側端子N2と整流器RECの直流負側端子N1との間に第1の抵抗器Ra1を接続し、電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流負側端子P1との間に第2の抵抗器Ra2を接続したものであったが、ここでは当該2つの抵抗器Ra1およびRa2にそれぞれ2つのダイオードDa1、Da2を並列接続した点のみが異なる。具体的には、抵抗器Ra1にダイオードDa1を並列接続し、また抵抗器Ra2にダイオードDa2を並列接続すると共に、ダイオードDa1、Da2は電力変換器CNVの順変換方向の電流を阻止する向きに接続したものである。なお、制御回路は、図2と同一構成となっている。
以下、このような構成の電力変換装置の作用効果について説明する。いま、電力変換器CNVの自己消弧素子(下アーム素子S4)をオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流は、まず、上アーム素子S1に逆並列接続されている高速ダイオードD1を介して流れる。
電力変換器CNVの直流負側端子N2と整流器RECの直流負側端子N1との間に接続された抵抗器Ra1は、下アーム素子S4がオフしたとき、リアクトルLa1に流れていた電流を時定数La/Ra1で減衰させ、高速ダイオードD1に流れていた電流を速やかに減少させる。特に、高速ダイオードD1の順方向電圧降下VFaと電力用ダイオードPD1の順方向電圧降下VFbの差が小さい場合でもリアクトルLa1に流れていた電流を速やかに減衰させることが可能である。その結果、電力用ダイオードPD1に大部分の電流が移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。抵抗器Ra1は、他の相の高速ダイオードD2、D3から電力用ダイオードPD2、PD3への転流時にも同様の役目を果たす。
同様に、電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流正側端子P1との間に接続された第2の抵抗器Ra2は、上アーム素子S1がオフしたとき、リアクトルLa1に流れていた電流を時定数La1/Ra2で減衰させ、高速ダイオードD4に流れていた電流を速やかに減少させる。その結果、電力用ダイオードPD4に大部分の電流が移り、高速ダイオードD4の負担を軽減させることができる。抵抗器Ra2は、他の相の高速ダイオードD5、D6から電力用ダイオードPD5、PD6への転流時にも同様の役目を果たす。
抵抗器Ra1に並列接続されたダイオードDa1は、高速ダイオードD1〜D3が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S1〜S3が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD1〜D3から電力用ダイオードPD1〜PD3への転流を速める役目を保ちながら、自己消弧素子S1〜S3が導通したときに抵抗器Ra1に流れる電流をゼロにして、損失を少なくすることが可能となる。
同じように、抵抗器Ra2に並列接続されたダイオードDa2は、高速ダイオードD4〜D6が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S4〜S6が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD4〜D6から電力用ダイオードPD4〜PD6への転流を速める役目を保ちながら、自己消弧素子S4〜S6が導通したときに抵抗器Ra2に流れる電流をゼロにして、損失を少なくすることが可能となる。特に、回生運転時には、多くの電流が自己消弧素子S1〜S6を介して流れるので、上記バイパスダイオードDa1、Da2による損失低減効果は大きくなる。
図12は、図11の装置の動作を説明するための1相分の主回路構成を示すもので、PD1、PD4は電力用ダイオード、S1、S4は自己消弧素子、D1、D4は高速ダイオード、La1はリカバリ電流抑制用リアクトル、Ra1、Ra2は抵抗器、Da1、Da2はダイオード、Vdは直流平滑コンデンサCdの印加電圧を表す。端子Uは3相変圧器TRの2次巻線のr相端子に接続される。
図12のモード(1)は、電力用ダイオードPD1を介して入力電流Irが流れていたとき、下アームの自己消弧素子S4をオンした場合の電流の流れを示すもので、素子S4をオンすることにより、リカバリ電流が、Vd(+)→PD1→La1→S4→Da2→Vd(−)の経路で流れる。このとき、リアクトルLa1は当該リカバリ電流を抑制する役目を果たす。このとき、自己消弧素子S4に流れる電流IaはバイパスダイオードDa2を介して流れ、抵抗器Ra2には電流が流れない。やがて、電力用ダイオードPD1がオフし、リアクトルLa1および自己消弧素子S4を介して流れる電流Iaは入力電流Irと等しくなる。
次にモード(2)において、自己消弧素子S4がオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流Iaは、まず、上アームの高速ダイオードD1および抵抗器Ra1を介して流れる。
さらにモード(3)に移り、電力用ダイオードPD1にも入力電流Irの一部が流れるようになるが、抵抗器Ra1は、前記差電圧(VFa−VFb)が小さい場合でも、時定数T=La1/Ra1で、リアクトルLa1の電流Iaを減衰させる役目を果たす。例えば、La1=20μH、Ra1=0.01Ωとした場合、時定数T=2msecとなり、50Hz電源の1サイクル周期=20msecに対し、十分速く電流Iaを減衰させることができる。やがて、モード(4)のように、全ての入力電流Irが電力用ダイオードPD1を介して流れるようになる。
これにより、高速ダイオードD1に流れる電流を抑えることが可能となり、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができる。
抵抗器Ra1は、他の相の高速ダイオードD2、D3から電力用ダイオードPD2、PD3への転流時にも同様の役目を果たす。
同様に、電力変換器CNVの直流負側端子と整流器RECの直流負側端子との間に接続された抵抗器Ra2は、上アーム素子S1がオフしたとき、リアクトルLa1に流れていた電流を時定数La1/Ra2で減衰させ、高速ダイオードD4に流れていた電流を速やかに減少させる。その結果、電力用ダイオードPD4に電流が移り、高速ダイオードD4の負担を軽減させることができる。抵抗器Ra2は、他の相の高速ダイオードD5、D6から電力用ダイオードPD5、PD6への転流時にも同様の役目を果たす。
図11において、抵抗器Ra1に並列接続されたダイオードDa1は、高速ダイオードD1〜D3が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S1〜S3が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD1〜D3から電力用ダイオードPD1〜PD3への転流を速める役目を保ちながら、自己消弧素子S1〜S3が導通したときに抵抗器Ra1に流れる電流をゼロにして、損失を少なくすることが可能となる。
同じように、抵抗器Ra2に並列接続されたダイオードDa2は、高速ダイオードD4〜D6が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S4〜S6が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD4〜D6から電力用ダイオードPD4〜PD6への転流を速める役目を保ちながら、自己消弧素子S4〜S6が導通したときに抵抗器Ra2に流れる電流をゼロにして、損失を少なくすることが可能となる。
特に、回生運転時には、自己消弧素子S1〜S6を介して大部分の電流が流れるので、このときに抵抗器Ra1、Ra2の電流をバイパスさせることで、大幅な損失低減の効果が得られ、高効率な電力変換装置を提供できる。
(第3の実施形態)
図13は、本発明の電力変換装置の第3の実施形態を示す概略構成図である。前述した第1の実施形態と、異なる点は、第1の電流配分調整手段として抵抗器Ra1とコンデンサCa1を並列接続し、第2の電流配分調整手段として抵抗器Ra2とコンデンサCa2を並列接続した点のみが異なる。具体的には、電力変換器CNVの直流負側端子N2と整流器RECの直流負側端子N1との間に第1の抵抗器Ra1を接続し、また電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流正側端子P1との間に第2の抵抗器Ra2を接続し、抵抗器Ra1、Ra2にコンデンサCa1、Ca2をそれぞれ並列接続したものである。
以上述べた第3の実施形態によれば。次のような作用効果が得られる。抵抗器Ra1、Ra2およびコンデンサCa1、Ca2は、電力変換器CNVの自己消弧素子がオフしたとき、リカバリ電流抑制リアクトルLa1に流れていた電流Iaを速やかに減衰させ、電力変換器CNVを構成する高速ダイオードから整流器RECを構成する電力用ダイオードへ電流を速やかに移す役目を果たす。
例えば、電力変換器CNVの自己消弧素子(下アーム素子S4)をオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流は、まず、上アーム素子S1に逆並列接続されている高速ダイオードD1を介して流れる。
電力変換器CNVの直流負側端子N2と整流器RECの直流負側端子N1との間に接続された第1の抵抗器Ra1および当該抵抗器Ra1に並列接続されたコンデンサCa1は、下アーム素子S4がオフしたとき、まず、リアクトルLa1のエネルギーをコンデンサCa1に吸収し、高速ダイオードD1に流れていた電流を速やかに減少させる。特に、高速ダイオードD1の順方向電圧降下VFaと、電力用ダイオードPD1の順方向電圧降下VFbの差が小さい場合でもリアクトルLa1に流れていた電流を速やかに減衰させることが可能である。
その結果、電力用ダイオードPD1に電流がすぐに移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。次に、抵抗器Ra1によりコンデンサCa1に蓄積されたエネルギーを徐々に消費する。
コンデンサCa1および抵抗器Ra1は、他の相の高速ダイオードD2、D3から電力用ダイオードPD2、PD3への転流時に同様の役目を果たす。
同様に、電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流正側端子P2との間に接続された第2の抵抗器Ra2および当該抵抗器Ra2に並列接続されたコンデンサCa2は、上アーム素子S1がオフしたとき、まず、リアクトルLa1のエネルギーをコンデンサCa2に吸収し、高速ダイオードD4に流れていた電流を速やかに減少させる。その結果、電力用ダイオードPD4に電流が移り、高速ダイオードD4の負担を軽減させることができる。次に、抵抗器Ra2によりコンデンサCa2に蓄積されたエネルギーを徐々に放電する。
コンデンサCa2および抵抗器Ra2は、他の相の高速ダイオードD5、D6から電力用ダイオードPD5、PD6への転流時に同様の役目を果たす。
なお、図13の制御回路としては、図2と同様に構成されたものを使用する。
図14は、図13の装置の動作を説明するための1相分の主回路構成を示すもので、PD1、PD4は電力用ダイオード、S1、S4は自己消弧素子、D1、D4は高速ダイオード、La1はリカバリ電流抑制用リアクトル、Ra1、Ra2は抵抗器、Ca1、Ca2はコンデンサ、Vdは直流平滑コンデンサCdの印加電圧を表す。端子Uは3相変圧器TRの2次巻線のr相端子に接続される。
図14のモード(1)は、電力用ダイオードPD1を介して入力電流Irが流れていたとき、下アームの自己消弧素子S4をオンした場合の電流の流れを示すもので、素子S4をオンすることにより、リカバリ電流が、Vd(+)→PD1→La1→S4→Ra2(またはCa2)→Vd(−)の経路で流れる。やがて、電力用ダイオードPD1がオフし、リアクトルLa1および自己消弧素子S4を介して流れる電流Iaは入力電流Irと等しくなる。
次にモード(2)において、自己消弧素子S4がオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流Iaは、まず、上アームの高速ダイオードD1およびコンデンサCa1を介して流れ、当該コンデンサCa1を充電する。コンデンサCa1が充電されてくると、抵抗器Ra1にも電流が流れ、コンデンサCa1の電圧を徐々に放電させる。
コンデンサCa1により、リカバリ電流抑制リアクトルLa1に流れていた電流Iaが減衰し、モード(3)のように、電力用ダイオードPD1にも入力電流Irの一部が流れるようになる。すなわち、リアクトルLa1に蓄積されたエネルギーがコンデンサCa1に吸収され、Ia=0となって、やがて、モード(4)のように、全ての入力電流Irが電力用ダイオードPD1を介して流れるようになる。そのとき、コンデンサCa1に蓄積されたエネルギーは抵抗器Ra1によって消費される。
例えば、La1=20μH、Ia=1000A、Ca1=5000μFとした場合、コンデンサCa1に印加される電圧Va1は、(1/2)La・Ia2=(1/2)Ca1・Va12より、
Va1=Ia・√(La1/Ca1)=63.2V
となり、電流Iaがゼロになるまでの時間Δtは、リアクトルLa1とコンデンサCa1の共振周期の1/4で、
Δt=(π/2)√(La1・Ca1)=497μsec
となる。すなわち、50Hz電源の1サイクル周期=20msecに対し、十分速く電流Iaを減衰させることができる。
また、コンデンサCa1の放電時間は、時定数T=Ca1・Ra1で決定され、例えば、Ca1=5000μF、Ra1=0.1Ωとした場合、T=500μsecとなる。
これにより、高速ダイオードの順方向電圧降下VFaと電力用ダイオードの順方向電圧降下VFbの差が小さい場合でも、高速ダイオードD1に流れる電流を速やかに減衰させることができ、当該高速ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
以上述べた作用効果以外に前述した図1の実施形態と同様な作用効果が得られることは言うまでもない。
(第4の実施形態)
図15は、本発明の電力変換装置の第4の実施形態を示す概略構成図である。前述した図1の実施形態と、異なる点は、第1の電流配分調整手段として抵抗器Ra1と、コンデンサCa1と回生時の損失を低減するためのダイオードDa1を並列接続し、第2の電流配分調整手段として抵抗器Ra2とコンデンサCa2と回生時の損失を低減するためのダイオードDa2を並列接続した点のみが異なる。具体的には、電力変換器CNVの直流負側端子N2と整流器RECの直流負側端子N1との間に、抵抗器Ra1とコンデンサCa1とダイオードDa1を並列接続し、また電力変換器CNVの直流正側端子P2と整流器RECの直流正側端子P1との間に、抵抗器Ra2とコンデンサCa2とダイオードDa2を並列接続したものである。この場合の制御回路としては、前述した図2と同一構成である。
図16は、図15の装置の動作を説明するための1相分の主回路構成を示すもので、PD1、PD4は電力用ダイオード、S1、S4は自己消弧素子、D1、D4は高速ダイオード、La1はリカバリ電流抑制用リアクトル、Ra1、Ra2は抵抗器、Ca1、Ca2はコンデンサ、Da1、Da2はダイオード、Vdは直流平滑コンデンサCdの印加電圧を表す。端子Uは3相変圧器TRの2次巻線のr相端子に接続される。
図16のモード(1)は、電力用ダイオードPD1を介して入力電流Irが流れていたとき、下アームの自己消弧素子S4をオンした場合の電流の流れを示すもので、素子S4をオンすることにより、リカバリ電流が、Vd(+)→PD1→La1→S4→Da2→Vd(−)の経路で流れる。やがて、電力用ダイオードPD1がオフし、リアクトルLaおよび自己消弧素子S4を介して流れる電流Iaは入力電流Irと等しくなる。
次にモード(2)において、自己消弧素子S4がオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流Iaは、まず、上アームの高速ダイオードD1およびコンデンサCa1を介して流れ、当該コンデンサCa1を充電する。コンデンサCa1が充電されてくると、抵抗器Ra1にも電流が流れ、コンデンサCa1の電圧を徐々に放電させる。
コンデンサCa1により、リカバリ電流抑制リアクトルLa1に流れていた電流Iaが減衰し、モード(3)のように、電力用ダイオードPD1にも入力電流Irの一部が流れるようになる。すなわち、リアクトルLa1に蓄積されたエネルギーがコンデンサCa1に吸収され、Ia=0となって、やがて、モード(4)のように、全ての入力電流Irが電力用ダイオードPD1を介して流れるようになる。そのとき、コンデンサCa1に蓄積されたエネルギーは抵抗器Ra1によって消費される。
これにより、高速ダイオードの順方向電圧降下VFaと電力用ダイオードの順方向電圧降下VFbの差が小さい場合でも、高速ダイオードD1に流れる電流を速やかに減衰させることができ、当該高速ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
図15の装置において、抵抗器Ra1に並列接続されたダイオードDa1は、高速ダイオードD1〜D3が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S1〜S3が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD1〜D3から電力用ダイオードPD1〜PD3への転流を速める役目を保ちながら、自己消弧素子S1〜S3が導通したときに抵抗器Ra1に流れる電流をゼロにして、損失を少なくすることが可能となる。
同じように、抵抗器Ra2に並列接続されたダイオードDa2は、高速ダイオードD4〜D6が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S4〜S6が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD4〜D6から電力用ダイオードPD4〜PD6への転流を速める役目を保ちながら、自己消弧素子S4〜S6が導通したときに抵抗器Ra2に流れる電流をゼロにして、損失を少なくすることが可能となる。
特に、回生運転時には、自己消弧素子S1〜S6を介して大部分の電流が流れるので、このときに抵抗器Ra1、Ra2の電流をバイパスさせることで、大幅な損失低減の効果が得られ、高効率な電力変換装置を提供できる。
以上述べた作用効果以外に前述した図1の実施形態と同様な作用効果が得られることは言うまでもない。
(第5の実施形態)
図17は、本発明の電力変換装置の第5の実施形態を示す概略構成図である。
第5の実施形態は、前述の第1の電流配分調整手段及び第2の電流配分調整手段を、次のように構成したものであり、これ以外の構成は図1の構成と同一である。すなわち、第1の電流配分調整手段は、整流器RECの直流負側端子N1にそのアノード端子を接続し、かつ電力変換器CNVの直流負側端子N2にそのカソード端子を接続した第1のダイオードDa1と、第1のダイオードDa1のアノード端子にその負側端子を接続した第1の直流電圧源Ea1と、第1の直流電圧源Ea1の正側端子にそのカソード端子を接続し、かつそのアノード端子を第1のダイオードDa1のカソード端子に接続した第3のダイオードDb1とで構成したものである。
また、第2の電流配分調整手段は、整流器RECの直流正側端子P1にそのカソード端子を接続し、かつ電力変換器CNVの直流正側端子P2にそのアノード端子を接続した第2のダイオードDa2と、第2のダイオードDa2のカソード端子にその正側端子を接続した第2の直流電圧源Ea2と、第2の直流電圧源Ea2の負側端子にそのアノード端子を接続し、かつそのカソード端子を第2のダイオードDa2のアノード端子に接続した第4のダイオードDb2で構成したものである。
図17の電力変換装置の実施形態の制御回路は、前述した図2と同様に構成されているので、ここではその説明を省略する。
図18、図19は、図17の装置の動作を説明するための1相分の主回路構成を示すもので、PD1、PD4は電力用ダイオード、S1、S4は自己消弧素子、D1、D4は高速ダイオード、La1はリカバリ電流抑制用リアクトル、Ea1、Ea2は直流電圧源、Da1、Da2は第1および第2のダイオード、Db1、Db2は第3および第4のダイオード、Vdは直流平滑コンデンサCdの印加電圧を表す。端子Uは3相変圧器TRの2次巻線のr相端子に接続される。
図18のモード(1)は、電力用ダイオードPD1を介して入力電流Irが流れていたとき、下アームの自己消弧素子S4をオンした場合の電流の流れを示すもので、素子S4をオンすることにより、リカバリ電流が、Vd(+)→PD1→La1→S4→Da2→Vd(−)の経路で流れる。やがて、電力用ダイオードPD1がオフし、リアクトルLa1および自己消弧素子S4を介して流れる電流Iaは入力電流Irと等しくなる。
次にモード(2)において、自己消弧素子S4がオフすると、リアクトルLa1に流れていた電流Iaは、まず、上アームの高速ダイオードD1、第3のダイオードDb1および直流電圧源Ea1を介して流れ、当該直流電圧源Ea1を充電する。
第1の直流電圧源Ea1により、リカバリ電流抑制リアクトルLa1に流れていた電流Iaが減衰し、図19のモード(3)のように、電力用ダイオードPD1にも入力電流Irの一部が流れるようになる。すなわち、リアクトルLa1に蓄積されたエネルギーが直流電圧源Ea1に吸収され、Ia=0となって、やがて、モード(4)のように、全ての入力電流Irが電力用ダイオードPD1を介して流れるようになる。そのとき、高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に電流が移る(転流する)時間Δtは、
Δt=Ia×La1/Ea1
となる。
例えば、Ia=1000A、La1=20μH、Ea1=100Vとした場合、転流時間Δt=200μsecとなる。交流電源SUPの周波数を50Hzとした場合の周期20msecに比べて、転流時間Δtは十分短くできる。
これにより、高速ダイオードの順方向電圧降下VFaと電力用ダイオードの順方向電圧降下VFbの差が小さい場合でも、高速ダイオードD1に流れる電流を速やかに減衰させることができ、当該高速ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
直流電圧源Ea1と第3のダイオードDb1の直列回路は、他の相の高速ダイオードD2、D3から電力用ダイオードPD2、PD3への転流時に同様の役目を果たす。第3のダイオードDb1は、自己消弧素子S1〜S3がオンしているとき、直流電圧源Ea1からの放電を防ぐ役目を果たす。
また、ダイオードDa1は、高速ダイオードD1〜D3が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S1〜S3が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD1〜D3の電流が直流電圧源Ea1を介して流れるようになり、本発明の目的を達成することが可能となる。
同様に、リアクトルLa1に逆向きに電流Ia流れているとき、自己消弧素子(上アーム素子S1)をオフすると、まず、下アーム素子S4に逆並列接続されている高速ダイオードD4と、ダイオードDb2と直流電圧源Ea2の直列回路を介して流れる。これによって、リアクトルLa1のエネルギーは直流電圧源Ea2に吸収され、高速ダイオードD4に流れていた電流は速やかに減少し、当該電流は電力用ダイオードPD4に移る。その結果、電力用ダイオードPD4に大部分の電流が移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。
直流電圧源Ea2とダイオードDb2の直列回路は、他の相の高速ダイオードD5、D6から電力用ダイオードPD5、PD6への転流時に同様の役目を果たす。ダイオードDb2は、自己消弧素子S4〜S6がオンしているとき、直流電圧源Ea2からの放電を防ぐ役目を果たす。
また、ダイオードDa2は、高速ダイオードD4〜D6が導通する方向の電流は阻止し、自己消弧素子S4〜S6が導通する方向の電流を流す。これにより、高速ダイオードD4〜D6の電流が直流電圧源Ea2を介して流れるようになり、本発明の目的を達成することが可能となる。
図17の電力変換装置によれば、リカバリ電流抑制リアクトルLa1に蓄えられたエネルギーは、直流電圧源Ea1、Ea2に移され、それを別の手段により主回路または交流電源SUPに回生することにより、前記エネルギーを有効利用することが可能となる。これにより、高効率な電力変換装置を提供することが可能となる。
以上述べた作用効果以外に前述した図1の実施形態と同様な作用効果が得られることは言うまでもない。
(第6の実施形態)
図20は、本発明の電力変換装置の第6の実施形態を示す概略構成図であり、図17の実施形態の第1の直流電圧源Ea1及び第2の直流電圧源Ea2の代わりに、第1及び第2の直流コンデンサCd1、Cd2、チョッパ用自己消弧素子Q1、Q2、チョッパ用還流ダイオードDch1、Dch2は、チョッパ用直流リアクトルLch1、Lch2で構成したものである。この点を除けば、図17と同一である。
具体的には、第1の直流コンデンサCd1が図17の装置の第1の直流電圧源Ea1に対応し、当該直流コンデンサCd1に蓄積されたエネルギーを第1のチョッパ回路(自己消弧素子Q1、還流ダイオードDch1、直流リアクトルLch1)により、主直流平滑コンデンサCdに移して有効利用を図る。以下にその動作を簡単に説明する。
前述のように、下アームの自己消弧素子S4〜S6がスイッチングする度に、リカバリ電流抑制リアクトルLa1〜La3のエネルギーは、ダイオードDb1を介して直流コンデンサCd1に移される。その結果、直流コンデンサCd1に印加される電圧Va1は徐々に増加していく。チョッパ用自己消弧素子Q1は、当該直流コンデンサCd1に印加される電圧Va1がほぼ一定になるように直流リアクトルLch1に流れる電流Ich1を制御する。すなわち、電圧Va1が増加した場合、素子Q1をオンし、電流Ich1を増やす。これにより、直流コンデンサCd1のエネルギーが放出され、直流リアクトルLch1に移る。次に、自己消弧素子Q1をオフすると、直流リアクトルLch1の電流Ich1は、Lch1→主直流平滑コンデンサCd→還流ダイオードDch1の経路で流れる。この結果、直流リアクトルLch1に蓄積されたエネルギーが主直流平滑コンデンサCdに移され、有効利用をすることができる。
直流コンデンサCd2および第2のチョッパ回路(自己消弧素子Q2、還流ダイオードDch2、直流リアクトルLch2)も同様に動作する。
これにより、リカバリ電流抑制リアクトルLaに蓄えられたエネルギーは、一旦、直流コンデンサCd1、Cd2に移され、それをチョッパ回路により主回路の直流平滑コンデンサCdに回生され、前記エネルギーを有効利用することが可能となる。
(第7の実施形態)
図21は、本発明の電力変換装置の第7の実施形態を示す概略構成図であり、図11の構成に、共振抑制用の抵抗器Rd、バイパスダイオードDd、直流き電線のインダクタンスLfを追加したものである。具体的には、整流器RECの直流正側端子P1及び直流負側端子N1間に接続された直流平滑コンデンサCdと負荷装置Loadとの間に、共振抑制用の抵抗器RdとバイパスダイオードDdの並列回路を直列接続し、これにより負荷装置Loadと直流平滑コンデンサCdの間の直流き電線のインダクタンスLf、並びに、直流平滑コンデンサCdとにより生ずる共振現象を抑制するようにしたものである。以上の点を除けば図11と同一である。なお、制御回路としては、図2と同一構成のものを用いる。
以上述べた第7の実施形態によれば。次のような作用効果が得られる。
第7の実施形態の電力変換装置を電気鉄道に適用する場合には、直流き電線を介して電車負荷Loadが接続されるが、図21の抵抗器RdとバイパスダイオードDdがない構成の場合には、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。
本実施形態では、これを防ぐために、前述したように直流平滑コンデンサCdに直列に、共振抑制用の抵抗器RdとバイパスダイオードDdの並列回路を接続している。この結果、 抵抗器Rdは、前述のように直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を抑制でき、電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たす。
この場合には、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生するが、抵抗器Rdに並列にバイパスダイオードDdが接続されているので、該損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせることができるからである。
以上述べた例は、図21のように抵抗器Rdに並列にバイパスダイオードDdが接続されている例であるが、バイパスダイオードDdがなく抵抗器Rdのみの場合でも、前述と同様な効果が得られる。この場合には、抵抗器Rdが上記振動現象を減衰させる役目を果たし、電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能となる。なお、図21のようにバイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
以上述べた実施形態の作用効果以外は、図11の実施形態と同一であるので、ここではその説明を省略する。
(第8の実施形態)
図22は、本発明の電力変換装置の第8の実施形態を示す概略構成図であり、図11の構成に、具体的には直流平滑コンデンサCdと負荷装置Loadとの間に、直流リアクトルDCL、直流高速遮断器HSCBの直列回路を挿入したものである。これ以外の点は、図11と同一である。また、制御回路としては、図2と同一構成のものを用いる。
このような構成において、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、直流高速遮断器HSCBは、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。
しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く直流高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは、事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に直流高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能となる。
以上述べた作用効果以外の作用効果は、図11と同一である。
(第9の実施形態)
図23は、本発明の電力変換装置の第9の実施形態を示す主回路構成図であり、図11の構成に、3相交流側開閉器ACSW、直流側開閉器DCSWを追加したものである。具体的には、3相交流側端子A4、A5、A6とリカバリ電流抑制用リアクトルLa1、La2、La3の間に3相交流側開閉器ACSWを接続し、また整流器REC及び変換器CNVの直流負側端子N1、N2の間に直流側開閉器DCSWを接続したものである。これ以外の構成は、図11と同一である。なお、図23の装置の制御回路としては、図示しないが、図2と同一構成のものを使用する。
このような構成の電力変換装置によれば、次のような作用効果が得られる。図23において、電力変換器CNVが故障した場合、3相交流側開閉器ACSWと直流側開閉器DCSWを開放するように構成している。これにより、一旦装置の運転を停止するが、短時間で電力変換器CNVを電気的に切り離し、引き続いて整流器RECのみで、力行負荷車両Loadに電力を供給することができる。この場合、回生車両の回生電力が力行車両の負荷電力より大きくなり、回生失効に至ることが考えられるが、この場合には、従来の運転と同様に機械ブレーキにより列車を減速させ、列車の運転ダイヤを確保する。
電気鉄道では、まず、列車の運行を優先させることが不可欠となる。本実施形態の電力変換装置は、前に述べたように、整流器RECと電力変換器CNVを組み合わせたもので、電力回生ができ、入力力率が高く、入力電流高調波の少ない高効率の電力変換装置を提供できる利点がある。
整流器RECと、電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子および直流側端子を電気的に切り離せるように構成することにより、一旦運転停止はするものの、再び整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能となる。これにより、より冗長性の高いシステムを提供できるようになる。
以上述べた作用効果以外の作用効果は、図11と同一である。
(第10の実施形態)
図24は、本発明の電力変換装置の第10の実施形態を示す概略構成図であり、図11の構成に、3相交流電流検出器ACCT、又は直流電流検出器DCCTを次のように設けた点以外は、図11と同一である。整流器RECの直流負側端子N1と抵抗器Ra1との接続点に、直流電流検出器DCCTを接続する。
また直流電流検出器DCCTを設けず、電力変換器CNVの交流側端子A4−リカバリ電流抑制用リアクトルLa1、交流側端子A5−リカバリ電流抑制用リアクトルLa2、交流側端子A6−リカバリ電流抑制用リアクトルLa3に3相交流電流検出器ACCTを接続する。
制御回路としては、図25に示すように構成したものを用いる。具体的には、図2の構成に過電流検出器OCを追加し、過電流検出器OCの出力を位相制御回路PHCに入力するように構成したものである。
図24の装置において、過電流が発生した場合、3相交流電流検出器ACCTが電力変換器CNVの過電流を検知し、当該電力変換器CNVを構成する自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。すなわち、電力変換器CNVの交流側入力電流Iaを交流電流検出器ACCTで検出し、それを整流して過電流検出器OCに入力する。電流Iaが設定値Iaoを超えた場合には、位相制御回路PHCにゲートブロック信号GBを与え、自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。
なお、電力変換器CNVの交流入力電流Iaを検出する代わりに直流電流検出器DCCTにより直流電流Idcを検出しても同様に過電流検知ができる。
電気鉄道では、1つの変電所から複数の車両に電力供給を行うため、一般に力行運転時の負荷が重く、回生電力は小さくなる。例えば、力行運転時の過負荷耐量として定格出力の300%が要求されるが、回生電力は100%定格を持てばよい。本電力変換装置は、このような力行運転時の過負荷耐量として大きなものに適している。
例えば、定格3,000kWとした場合、力行運転では1分間の過負荷9,000kWが要求される。このとき、大部分の電流は整流器RECに流れ、当該電力用ダイオードPD1〜PD6に流れる電流の最大値Ismは、変圧器TRの2次電圧をV2=1.2kVとした場合、
Ism=√2×9,000kW/(√3×1.2kV)=6.124A
となる。このとき、電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6は、前述のように上記最大電流Ismの約1/3の電流(2.041A)を遮断することになる。
一方、回生運転では3,000kWが最大であり、そのとき大部分の電流は電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6を介して流れ、その最大値はIsm’は、
Ism’=√2×3,000kW/(√3×1.2kV)=2.041A
となる。通常の回生運転では、回生3,000kW時の最大値の約1/3の電流(680A)を自己消弧素子S1〜S6が遮断することになる。
この装置に流れる入力電流の最大値は、上記のようにIsm=6.124Aとなり、従来のように、装置全体の入力電流または直流出力電流を基準にして過電流レベルを決めると、自己消弧素子S1〜S6の最大遮断電流として、例えば、1.2×6.124A=7.350Aの素子を用意しなければならない。
これに対し、本発明の電力変換装置の実施形態によれば、電力変換器CNV自体の交流または直流電流により過電流検知を行うことにより、過電流設定値Iaoとして、上記力行9,000kW運転および回生3,000kW運転時に電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6に流れる電流の最大値(この場合、約2.041A)より少し大きな値、例えば1.2×2.041A=2.450Aに選ぶことが可能となる。すなわち、力行側過負荷耐量が大きく、回生側容量が小さくて済む電気鉄道応用等では、電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の最大遮断電流容量を大幅に低減することができ、経済的な電力変換装置を提供できる。
以上述べた作用効果以外の作用効果は、図11と同一である。
(第11の実施形態)
図26は、本発明装置の第11の実施形態の制御回路の概略構成図を示すもので、図2の構成に、次のような電圧指令演算回路CAL1を、比較器C1の電圧指令値Vd *、C2の入力端子側に設けた点以外は、図2と同じである。
電圧指令演算回路CAL1は、その第1の例として、図27に示すように回生運転時の直流電圧指令は、Vd *=Vdo *=一定とし、力行運転時の直流電圧指令値Vd *を(1)式のように与えている。
Vd *=Vdo *−k1・IL …(1)
ただし、Vdo *は無負荷時の直流電圧指令、ILは負荷電流、k1は比例定数
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは上記指令値Vd *に一致するように制御され、負荷電流ILが増加するに従い、直流電圧Vdは低下する。
図26において、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを図示しない電圧検出器により検出し、比較器C1により、直流電圧指令値Vd *と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分または比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに流れる負荷電流ILを負荷電流検出器LCTにより検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq *が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir、Is、Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq *と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr、θs、θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、前記位相角指令値φ*と位相信号θr、θs、θtを用いて電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス、3パルス、5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
このように、電圧指令演算回路CAL1は、負荷電流ILに応じて直流電圧指令値Vd *を変えている。
図28は、図26の電圧指令演算回路CAL1の第2の例を説明ためのである。図28は、直流電圧Vdを下げた場合の電力変換器CNVの交流側電圧・電流ベクトル図を示すもので、Vsは電源電圧、Vcは電力変換器CNVの交流電圧、Isは入力電流、jωLs・Isは交流リアクトルLs(または変圧器TRのもれインダクタンス)による電圧降下を表す。
Vcの波高値が電源電圧Vsの波高値より小さくなると、入力電流Isのベクトルは、電圧Vcの方に近づく。電源電圧Vsに対してはIsの遅れ位相角θが大きくなり、力率は少し低下する。しかし、電圧Vcと電流Isの位相差(φ−θ)が小さくなるため、電力変換器CNVのスイッチングが入力電流Isのゼロ付近で行われるようになり、自己消弧素子の遮断電流を小さくできる。特に、負荷電流ILが大きいところで前記位相差(φ−θ)がゼロ近くになるように直流電圧Vdを調整すれば、その効果が大きい。
電気鉄道などでは、力行側の過負荷容量が大きいものが要求され、上記のように負荷電流ILに応じて直流電圧Vdを調整することにより、電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくでき、変換器損失を低減できるだけでなく、遮断電流容量の小さい素子を使うことが可能となり、より経済的な電力変換装置を提供できる。
図29は、図26の電圧指令演算回路CAL1の第3の例を説明ためのである。図29は、負荷電流ILによって、直流電圧指令Vd *を次のように与えている。
Vd *=Vd1 *=一定 at IL<0 (回生)
Vd *=Vd2 *=Vdo *−k1・IL at IL>0 (力行)
ただし、Vdo *は無負荷時の直流電圧指令、k1は比例定数
回生運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行運転では特に過負荷領域で電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。
また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、上記直流電圧指令を、Vd1 *>Vd2 *とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
図30は、図26の電圧指令演算回路CAL1の第4の例を示すもので、負荷電流ILによって、直流電圧指令Vd *を次のように与えている。
Vd *=Vd1 *=一定 at IL<0 (回生)
Vd *=Vdo *=一定 at IL<ILo (力行)
Vd *=Vd2 *=Vdo *−k1・(IL−ILo) at IL>ILo (力行)
ただし、k1は比例定数、ILoは定格負荷電流
すなわち、力行定格負荷までは、直流電圧Vdを一定値Vdo *に制御し、力行過負荷運転領域では、負荷電流ILの増加に応じて直流電圧Vdを徐々に下げるように制御している。これにより、力行定格以下の運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行過負荷運転では電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。
また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、回生運転時の直流電圧指令を、Vd1 *>Vdo *とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
(第12の実施形態)
図31は、本発明装置の第12の実施形態を説明するためのものであって、その制御回路の概略構成図であり、図26の電圧指令演算回路CAL1を設けず、以下のように演算する直流電圧指令演算器CAL2を設けたものである。これ以外の構成は図26と同一である。
この場合、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd *と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分または比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq *が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir、Is、Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq *と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr、θs、θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、前記位相角指令値φ*と位相信号θr、θs、θtを用いて電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス、3パルス、5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
図31の制御回路において、直流電圧指令演算器CAL2では、負荷電流ILに対し、力行運転時の直流電圧指令値Vd *を次のように与えている。
Vd *=Vdo *−k1×IL
ただし、k1は比例定数、Vdo *は無負荷時の直流電圧指令値である。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは上記指令値Vd *に一致するように制御され、負荷電流ILが増加するに従い、直流電圧Vdは低下する。
電力変換器CNVは一定のパルスパターンで制御されるので、電力変換器CNVの交流電圧Vcの大きさは直流電圧Vdによって決まる。負荷電流ILの増加により直流電圧Vdが下がれば、交流電圧Vcの波高値も下がる。
Vcの波高値が電源電圧Vsの波高値より小さくなると、図22で説明したように、入力電流Isのベクトルは、電圧Vcの方に近づく。電源電圧Vsに対してはIsの遅れ位相角θが大きくなり、力率は少し低下する。しかし、電圧Vcと電流Isの位相差(φ−θ)が小さくなるため、電力変換器CNVのスイッチングが入力電流Isのゼロ付近で行われるようになり、自己消弧素子の遮断電流を小さくできる。特に、負荷電流ILが大きいところで前記位相差(φ−θ)がゼロ近くになるように直流電圧Vdを調整すれば、その効果が大きい。
電気鉄道などでは、力行側の過負荷容量が大きいものが要求され、上記のように負荷電流ILに応じて直流電圧Vdを調整することにより、電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくでき、電力変換器の損失を低減できるだけでなく、遮断電流容量の小さい素子を使うことが可能となり、より経済的な電力変換装置を提供できる。
また、回生運転時の直流電圧指令値Vd *は、Vd *=Vd1 *=一定とし、このとき、指令値Vd1 *は前記無負荷運転時の電圧指令Vdo *より少し高めに設定する。
回生運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行運転では特に過負荷領域で電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。
また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、上記直流電圧指令を、Vd1 *>Vdo *とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
一方、前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo *は、電源電圧の波高値|Vs|によって、次式のように与える。ただし、k2は比例定数とする。
Vdo *=k2×|Vs|
直流電圧指令値Vd *を電源電圧Vsの変動に関係なくVdo *一定として運転した場合、次のような問題がある。
すなわち、電源電圧Vsが定格値Vsoより高くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|<|Vs|となる。この結果、電源SUPから遅れ無効電流が流れ込み、その分、電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。
反対に、電源電圧Vsが定格値Vsoより低くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|>|Vs|となる。この結果、交流電源SUPから進み無効電流が流れ込み、電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。特に、時間的には短時間であるが電圧低下が大きい、瞬低(瞬時電圧低下)が発生した場合、上記無効電流値が大きいため、過電流により装置の運転停止に至ることがある。
本発明装置では、電源電圧Vsの大きさが変化した場合、Vdo *=k2×|Vs|として、直流電圧指令値Vd *を変えている。すなわち、電源電圧Vsが上昇したときはその上昇分に比例させて直流電圧Vdを高くすることにより、前記遅れ無効電流の増加を抑えている。また、電源電圧Vsが低下した場合、その低下分に比例させて直流電圧Vdを下げることにより、電源SUPから進み無効電流が流れ込むのを抑えている。これにより、電源電圧変動による素子電流の増大を防止することが可能となり、かつ、瞬停が発生しても装置を停止させるとなく、運転継続ができるようになる。
このように、本実施形態によれば、電源電圧Vsが変動した場合でも無駄な無効電流が増加することを防止でき、しいては装置を構成する素子の電流容量が低減され、経済的な電力変換装置を提供でき、また、瞬時電圧低下が発生しても装置を停止させることなく信頼性の高いシステムを提供できる。
図31の制御回路において、装置の運転停止信号STOPが入った場合、まず、位相シフト回路SFを動作させ、位相指令値φ*をゼロに移行させる。次に、遅延回路DLを介してゲートブロック信号GBを与え、全ての自己消弧素子をオフさせるようにしている。
電力変換器CNVをゲートブロックし、電力変換装置の運転を停止する場合、特に、大部分の電流が自己消弧素子に流れている回生運転時に、いきなり電力変換器CNVをゲートブロックすると、最悪、入力電流のピーク値を自己消弧素子が遮断することにもなり、電磁ノイズの増大やスイッチング損失の増加を招く。
本発明装置では、力行/回生の運転状態にかかわらず、まず、交流電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φをゼロに近づけ、入力電流Isを小さくし、その後で、当該電力変換器CNVをゲートブロックする。それにより、当該自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができ、電磁ノイズの発生を抑えることができる。
SUP…三相交流電源、S1、S2、S3、S4、S5、S6…自己消弧素子、CNV…交―直電圧形自励式電力変換器、REC…電力用ダイオード整流器、A1、A2、A3、A4、A5、A6…交流側端子、P、P1、P2…直流正側端子、N、N1、N2…直流負側端子、C1、C2…比較器、Gv(S)…電圧制御補償回路(電圧制御補償器)、ML…乗算器、Gi(S)…電流制御補償回路(電流制御補償器)、PWMC…パルス幅変調制御回路、Cd…直流平滑コンデンサ、C1、C2…比較器、M…交流電動機、TR…変圧器、D1、D2、D3、D4、D5、D6…高速ダイオード、La1、La2、La3…リカバリ電流抑制用リアクトル、Load…負荷装置、Ra1…第1の抵抗器、Ra2…第2の抵抗器、AD…加算器、FF…フィードフォワード補償器、Z…座標変換回路、PLL…電源同期位相検出回路、PHC…位相制御回路、LCT…電流検出器、Da1、Da2…バイパスダイオード、Db1…第3のダイオード、Db2…第4のダイオード、Ea1、Ea2…直流電圧源、Ca1、Ca2…コンデンサ、Q1、Q2…チョッパ用自己消弧素子、Dch1、Dch2…チョッパ用還流ダイオード、Lch1、Lch2…チョッパ用直流リアクトル、Cd1、Cd2…直流コンデンサ、Dch1…還流ダイオード、Rd…抵抗器、Dd…バイパスダイオード、DCL…直流リアクトル、HSCB…直流高速遮断器、ACSW…3相交流側開閉器、DCSW…直流側開閉器、ACCT…3相交流電流検出器、DCCT…直流電流検出器、OC…過電流検出器、LCT…負荷電流検出器、Z…座標変換器、SF…位相シフト回路、DL…遅延回路、PTN1〜PTN3…パルスパターン発生器。