JP2004289986A - 電力変換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】瞬間的な回生大電力を吸収又は蓄積し、その蓄積エネルギーの有効利用を図るとともに前記電力変換器の容量低減を図る。
【解決手段】交流電源SUPに変圧器TR、交流リアクトルLsを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、当該電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、当該直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、前記直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadとを具備し、前記エネルギー蓄積装置EDLCは、前記負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】交流電源SUPに変圧器TR、交流リアクトルLsを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、当該電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、当該直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、前記直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadとを具備し、前記エネルギー蓄積装置EDLCは、前記負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エネルギー蓄積装置及び/又は抵抗装置と、電力回生可能な交流/直流電力変換器とを組み合わせた電力変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気鉄道直流き電システム等では、3相ブリッジ結線された電力用ダイオード整流器により3相交流電力を直流電力に変換する方式が多く採用されている。この方式は過負荷耐量に優れ、変換器コストが安くできる利点を有する。しかし、電車が回生ブレーキをかけたときにその電力を交流電源側に回生できず、しばしば回生失効を起こすという問題点があった。また、負荷電流依存性があり、直流き電電圧が負荷によって大きく変動する欠点があった。
【0003】
図40は、従来の電気鉄道き電システムにおける電力変換装置の一例を示すもので、3相交流電源SUPに変圧器TRを介してダイオード整流器RECが接続され、このダイオード整流器RECに抵抗チョッパ装置R−CHOが接続され、該抵抗チョッパ装置R−CHOに負荷装置Loadが接続された構成となっている。
【0004】
抵抗チョッパ装置R−CHOは、スイッチング素子Qと抵抗器R及び還流ダイオードで構成されており、その制御回路としては、図40に示すように、比較器C、電圧制御回路Gv(S)及びパルス幅変調制御回路PWMからなる。
【0005】
ダイオード整流器RECは、3相交流を直流に変換するもので、負荷装置Loadが力行運転しているときに、その負荷電流ILを供給する。一般に、負荷装置Loadは、複数の列車からなり、力行車両もあれば、回生車両もある。回生車両からの回生電力が力行車両の消費電力より小さければ、電力の不足分はダイオード整流器から供給され、あまり問題なく運転できる。しかし、回生電力が力行車の消費電力より大きくなった場合、直流き電電圧Vdが上昇し、やがて回生失効に至る。
【0006】
そこで、直流電圧Vdが上がってきた場合、抵抗チョッパR−CHOを動作させ、余った回生電力を抵抗器Rに消費させる。すなわち、指令値Vd*に対し、直流電圧Vdが大きくなった場合、比較器Cの出力εv=−Vd*+Vdは正の値となり、電圧制御回路Gv(s)により増幅され、PWM制御回路の指令値e*を増加させる。その結果、抵抗器Rに印加される電圧が大きくなり、流れる電流IRが増加し、直流電圧Vdを下げることができる。余った回生電力が小さくなると、PWM制御回路の指令値e*が小さくなり、抵抗器Rに流れる電流IRも小さくなる。
【0007】
以上のように、図40に示した従来の装置でも回生失効を防止することができるが、あまった回生電力を全て抵抗器に熱エネルギーとして消費させるため、運転効率が悪くなり、地球環境への影響からみても望ましくない。また、回生電力を消費するための抵抗チョッパ装置R−CHOの容量も大きくなり、電力変換装置としてのコストも高くなる等の問題があった。
【0008】
図41は、従来の電気鉄道き電システムにおける電力変換装置の別の例を示すもので、特許文献1に開示されている。図41に示すように、3相交流電源SUPに変圧器TRを介してダイオード整流器RECが接続され、このダイオード整流器RECに双方向チョッパ装置CHO及びエネルギー蓄積装置EDLCが接続され、該双方向チョッパ装置CHOには直流コンデンサ電車Cdが接続され、また負荷装置Loadが接続された構成となっている。
【0009】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qb、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC、例えば、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等への充放電電流Ieを制御する。その制御回路としては、図41に示すように、比較器C1,C2、電圧制御回路Gv(S)、電流制御回路Gi(S)及びパルス幅変調制御回路PWMが用意されている。
【0010】
ダイオード整流器RECは、3相交流を直流に変換するもので、負荷装置Loadが力行運転しているときに、その負荷電流ILを供給する。一般に、負荷装置Loadは、複数の列車からなり、力行車両もあれば、回生車両もある。回生車両からの回生電力が力行車両の消費電力より小さければ、電力の不足分はダイオード整流器から供給され、あまり問題なく運転できる。
【0011】
回生電力が力行車の消費電力より大きくなり、直流き電電圧Vdが上昇した場合、双方向チョッパCHOを動作させ、余った回生電力をエネルギー蓄積装置EDLCに蓄える。
【0012】
すなわち、電圧指令値Vd*に対し直流電圧Vdが大きくなった場合、比較器C1の出力εv=−Vd*+Vdは正の値となり、電圧制御回路Gv(s)により増幅され、電流指令値Ie*を増加させる。比較器C2により、当該指令値Ie*とエネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流の検出値Ieを比較し、その偏差εi=Ie*−Ieを次の電流制御回路Gi(S)で増幅して、PWM制御回路の指令値e*を増加させる。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が大きくなり、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流Ieが増加し、直流電圧Vdを下げることができる。余った回生電力が小さくなると、PWM制御回路の指令値e*が小さくなり、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流Ieも小さくなる。結果的に、Vd=Vd*に制御され、回生失効を防止することができる。
【0013】
図41に示す特許文献1に示す装置では、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えられたエネルギーは、力行車の消費電力が大きくなったときに利用し、回生電力の有効利用ができる。しかし、電車の回生エネルギーは非常に大きく、そのエネルギーを蓄えるエネルギー蓄積装置EDLCの容量も相当大きくなる。最近は、寿命が長く、急速充放電が可能な電気二重層キャパシタがエネルギー蓄積装置EDLCとして注目されているが、容量の大きいものとなるとコストが高く、不経済なシステムとなってしまう。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−260719
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来装置では、余った回生電力を一時蓄え、必要なときにそのエネルギーを放出して有効利用を図ることができるが、エネルギー蓄積装置EDLCの容量が大きくなり、不経済なシステムとなる問題があった。また、交流電源へ電力回生が可能な電力変換器として、従来、パルス幅変調制御による自励式変換器(PWMコンバータと呼ぶ)があるが、入力電流リプルを小さくするにはスイッチング周波数(PWM制御のキャリア周波数)を高くする必要があり、変換器損失が大きくなる。また、変換器の電圧利用率(交流出力電圧/直流電圧)が低いため、変換器トランスの2次電圧が上げられず、その分変換器の電流容量を上げなければならない等の問題があった。
【0016】
本発明の目的は、瞬間的な回生大電力を吸収又は蓄積して蓄積エネルギーの有効利用を図るとともに前記電力変換器の容量低減を図り得又は変換器の電圧利用率が高く、スイッチング素子の最大しゃ断電流が小さく、高効率,高力率で電力回生可能な電力変換装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電力変換装置(請求項1)は、交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して接続された電圧形自励式電力変換器と、この電圧形自励式電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合の超過エネルギーを、前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0018】
電圧形自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように、前記交流電源から供給される電流を制御する。負荷装置は、この直流平滑コンデンサを電圧源とするもので、例えば、電車負荷などがある。力行運転で、当該負荷装置が電力を消費すると、直流電圧が下がるので、指令値に一致させるように上記入力電流を増加させる。定常的に、負荷の消費電力と電源から供給する電力はつりあい、直流電圧も検出値=指令値に制御される。逆に、回生運転では、負荷側から電力が戻され、直流電圧が上がるので、入力電流の位相を反転させ、有効電力を交流電源に回生する。
【0019】
このとき、エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0020】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0021】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。これにより、自励式電力変換器が授受する電力は前記設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0022】
本発明装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置に蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけを自励式電力変換器から供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置に蓄えたエネルギーを自励式電力変換器により、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置の容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。これにより、小さな容量の自励式電力変換器と、小さな容量のエネルギー蓄積装置で、回生失効を防止でき、経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0023】
本発明に係る電力変換装置(請求項5)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御することで前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0024】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0025】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0026】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0027】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0028】
本発明に係る電力変換装置(請求項6)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0029】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0030】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0031】
先の電力変換装置(請求項5)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0032】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0033】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0034】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0035】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0036】
本発明に係る電力変換装置(請求項7)は、3相交流電源に対し1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0037】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0038】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する各変換器出力電圧の和の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスの和に印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0039】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の和の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0040】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、1次巻線を直列接続し、適宜の位相差を持たせた2次巻線を有するn個の3相変圧器を用いて、直列多重運転するように構成したもので、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流のリプルを抑制することができ、自励式電力変換器の自己消弧素子の最大遮断電流を小さくできる利点がある。また、変換器間に横流が流れないので、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能な、高効率・低コストの大容量電力変換装置を提供することができる。
【0041】
本発明に係る電力変換装置(請求項8)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記n個の直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0042】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0043】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。
【0044】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、交流リアクトル(又は、変圧器のもれインダクタンス)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を調整することができる。自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0045】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0046】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0047】
本発明に係る電力変換装置(請求項9)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記n個の直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0048】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0049】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器毎に変圧器を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0050】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0051】
先の電力変換装置(請求項8)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0052】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0053】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0054】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0055】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0056】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0057】
本発明に係る電力変換装置(請求項13)は、交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器と、この電圧形自励式電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0058】
電圧形自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように、前記交流電源から供給される電流を制御する。負荷装置は、この直流平滑コンデンサを電圧源とするもので、例えば、電車負荷などがある。力行運転で、当該負荷装置が電力を消費すると、直流電圧が下がるので、指令値に一致させるように上記入力電流を増加させる。定常的に、負荷の消費電力と電源から供給する電力はつりあい、直流電圧も検出値=指令値に制御される。逆に、回生運転では、負荷側から電力が戻され、直流電圧が上がるので、入力電流の位相を反転させ、有効電力を交流電源に回生する。
【0059】
このとき、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。
【0060】
また、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0061】
本発明に係る電力変換装置(請求項17)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0062】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0063】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0064】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0065】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0066】
本発明に係る電力変換装置(請求項18)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0067】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0068】
先の電力変換装置(請求項17)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0069】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0070】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0071】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0072】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0073】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0074】
本発明に係る電力変換装置(請求項19)は、3相交流電源に1次巻線が各相毎に直列接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0075】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する各変換器出力電圧の和の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスの和に印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0076】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の和の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0077】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、1次巻線を直列接続し、適宜の位相差を持たせた2次巻線を有するn個の3相変圧器を用いて、直列多重運転するように構成したもので、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流のリプルを抑制することができ、自励式電力変換器の自己消弧素子の最大遮断電流を小さくできる利点がある。また、変換器間に横流が流れないので、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能な、高効率・低コストの大容量電力変換装置を提供することができる。
【0078】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0079】
本発明に係る電力変換装置(請求項20)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0080】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。
【0081】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、交流リアクトル(又は、変圧器のもれインダクタンス)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を調整することができる。自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0082】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0083】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0084】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0085】
本発明に係る電力変換装置(請求項21)は、3相交流電源1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0086】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器毎に変圧器を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0087】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0088】
先の電力変換装置(請求項20)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0089】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0090】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0091】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0092】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0093】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0094】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0095】
本発明に係る電力変換装置(請求項25)は、交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器と、この電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御し、前記負荷装置からの回生電力が第2の設定値を超えた場合に前記抵抗装置の開閉器を投入するように制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0096】
電圧形自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように、前記交流電源から供給される電流を制御する。負荷装置は、この直流平滑コンデンサを電圧源とするもので、例えば、電車負荷などがある。力行運転で、当該負荷装置が電力を消費すると、直流電圧が下がるので、指令値に一致させるように上記入力電流を増加させる。定常的に、負荷の消費電力と電源から供給する電力はつりあい、直流電圧も検出値=指令値に制御される。逆に、回生運転では、負荷側から電力が戻され、直流電圧が上がるので、入力電流の位相を反転させ、有効電力を交流電源に回生する。
【0097】
このとき、エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0098】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータなどにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0099】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。これにより、自励式電力変換器が授受する電力は前記第1の設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0100】
回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0101】
本発明装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置に蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけを自励式電力変換器から供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置に蓄えたエネルギーを自励式電力変換器により、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置の容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。また、回生電力が一時的に増加した場合には、抵抗装置に回生電力の一部を消費させることにより、前記双方向チョッパやエネルギー蓄積装置の容量を抑えることができる。これにより、小さな容量の自励式電力変換器と、小さな容量の双方向チョッパと、小さな容量のエネルギー蓄積装置で、回生失効を防止とエネルギーの有効利用ができる経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0102】
本発明に係る電力変換装置(請求項29)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0103】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流1〜Icnを調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0104】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0105】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0106】
また、エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0107】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0108】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。これにより、自励式電力変換器が授受する電力は前記第1の設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0109】
回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0110】
本発明装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置に蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけを自励式電力変換器から供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置に蓄えたエネルギーを自励式電力変換器により、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置の容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。また、回生電力が一時的に増加した場合には、抵抗装置に回生電力の一部を消費させることにより、前記双方向チョッパやエネルギー蓄積装置の容量を抑えることができる。これにより、小さな容量の自励式電力変換器と、小さな容量の双方向チョッパと、小さな容量のエネルギー蓄積装置で、回生失効を防止とエネルギーの有効利用ができる経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0111】
本発明に係る電力変換装置(請求項30)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0112】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0113】
先の電力変換装置(請求項29)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0114】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0115】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0116】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0117】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0118】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0119】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0120】
本発明に係る電力変換装置(請求項31)は、3相交流電源に1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0121】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する各変換器出力電圧の和の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスの和に印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0122】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の和の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0123】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、1次巻線を直列接続し、適宜の位相差を持たせた2次巻線を有するn個の3相変圧器を用いて、直列多重運転するように構成したもので、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流のリプルを抑制することができ、自励式電力変換器の自己消弧素子の最大遮断電流を小さくできる利点がある。また、変換器間に横流が流れないので、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能な、高効率・低コストの大容量電力変換装置を提供することができる。
【0124】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0125】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0126】
本発明に係る電力変換装置(請求項32)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0127】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。
【0128】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、交流リアクトル(又は、変圧器のもれインダクタンス)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を調整することができる。自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0129】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0130】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0131】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0132】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0133】
本発明に係る電力変換装置(請求項33)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0134】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器毎に変圧器を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0135】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0136】
先の電力変換装置(請求項32)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0137】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0138】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0139】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0140】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0141】
自励式変換器を、直流平滑コンデンサに印加されるそれぞれの電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0142】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0143】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0144】
請求項34に対応する電力変換装置は、請求項29〜33に記載された電力変換装置において、前記n個の電圧形自励式電力変換器を、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該各変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内で、スイッチングを行うように制御している。
【0145】
n個の電圧形自励式電力変換器の交流側線間電圧は、多重化により、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器を、3パルス,5パルス,・・と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0146】
また、交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0147】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態:請求項1に対応)
第1実施形態の電力変換装置を、図1を参照して説明する。
【0148】
図1に示すように、3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介して接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、この電圧形自励式電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う構成である。また、3相交流電源SUPには変圧器TRxを介して所内負荷AC−Loadが接続されている。
【0149】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。例えば、エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを使った場合、その蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となり、印加電圧Veの2乗に比例する。
【0150】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。負荷装置Loadは、例えば、電車負荷で、力行及び回生運転が行われる。所内負荷AC−Loadは、電鉄変電所内の負荷で、例えば、照明やエアコン等がある。
【0151】
電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、図1に示すように、直流電圧制御回路AVR,入力電流制御回路ACR1及び位相制御回路PHCなどが用意される。なお、Zは3相電流をdq座標軸の電流に変換する座標変換器である。
【0152】
また、双方向チョッパCHOの制御回路として、図1に示すように、電流指令発生器REF,充放電電流制御回路ACR2,パルス幅変調制御回路PWMが用意されている。
【0153】
以下、順に本実施形態装置の動作を説明する。
【0154】
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがほぼ一定になるように、入力電流Icを制御する。すなわち、直流電圧指令値Vd*と直流電圧検出値Vdを比較し、その偏差を増幅して入力電流Icの有効分の指令値Iq*を与える。入力電流Icは座標変換器Zにより、3相/dq軸変換され、そのq軸成分Iqが有効電流検出値となる。電流制御回路ACR1により、電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差を増幅して、位相制御回路PHCに位相制御信号e*を与える。位相制御回路PHCは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを前記指令値に従って制御するもので、位相角φ(遅れ)を大きくすることにより、入力電流Icの有効分Iqが増加し、交流電源SUPから負荷装置Loadに電力が供給される。逆に、位相角φを負(進み)方向に増やすと、入力電流Icの有効分Iqは負の値となり、負荷装置Loadからの回生電力を交流電源SUPにもどすことができる。もちろん、電圧形自励式電力変換器CNVをパルス幅変調制御することにより、直流電圧Vdがほぼ一定になるように入力電流Icを制御することもできる。
【0155】
一方、双方向チョッパCHOは、次のように制御される。エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieの指令値Ie*は、負荷電流ILと当該EDLCの印加電圧Veの値によって決定する。
【0156】
負荷電流ILが負(回生)で、その電流値が設定値Iaより小さい場合は、電圧形自励式電力変換器CNVによって、当該回生電力PLを交流電源SUPにもどす。IL>Iaとなった場合には、その差分(IL−Ia)の相当する電力(PL−Pa)だけ、エネルギー蓄積装置EDLCに充電するように電流指令値Ie*を与える。
【0157】
図2は、双方向チョッパCHOの制御回路構成実施形態を示す。
【0158】
図中、LIMはリミッタ回路、ADpは加減算器、Keは比例定数、AS1,AS2は切換え回路、COMはレベル比較器、HYSはヒステリシス特性を持つ比較器、Cは比較器、Gie(S)は電流制御回路、PWMはパルス幅変調制御回路をそれぞれ表す。
【0159】
まず、負荷電流ILと直流電圧Vdの積をとり、負荷電力PLを求め、リミッタ回路LIMを介して、交流電源SUPに回生する電力Paを求める。次に、加減算器ADpにより、Pe=Pa−PLを求め、Keで定数倍(1/Ve)することにより、充電電流指令値Ie*を与える。力行運転では、負荷電流ILは図の矢印の方向に流れ、負荷電力PLが正となる。PL>0の場合、リミット回路LIMは、そのまま、Pa=PLを出力する。従って、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−PL=0となる。回生運転では、負荷電流ILは図矢印と反対向きに流れ、負荷電力PLは負となる。PL<0の場合、リミット回路LIMは、設定値−PLOまでは、Pa=PLを出力する。従って、−PLO<PLでは、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−PL=0となる。しかし、−PLO>PLでは、Pa=−PLOとなり、電力指令値Peは、Pe=Pa−PL=−PLO−PL>0(充電)で与えられる。
【0160】
エネルギー蓄積装置EDLCの印加電圧をVeとした場合、充電電流指令値Ie*は、前記電力指令値Peに対し、Ie*=Pe/Veで与えられる。比較器C3により、当該電流指令値Ie*とエネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流検出値Ieを比較し、その偏差εe=Ie*−Ieを次の電流制御回路Gie(S)で増幅し、前記双方向チョッパCHOの電圧指令値e*としてPWM制御回路に入力する。PWM制御回路では、三角波のキャリア信号X(例えば、周波数fc=1kHz)と前記電圧指令値e*を比較し、スイッチング素子Qa,Qbのゲート信号ga,gbを与える。すなわち、
e*≧Xのとき、ga=1(gb=0)で、素子Qa:オン(Qb:オフ)
e*<Xのとき、gb=1(ga=0)で、素子Qb:オン(Qa:オフ)となる。
【0161】
Ie*>Ieとなった場合、偏差εeは正の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を増やす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が上昇し、充電電流Ieを増加させる。逆に、Ie*<Ieとなった場合、偏差εeは負の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を減らす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が低下し、充電電流Ieを減少させる。このようにして、定常的に、Ie*=Ieとなるように制御される。電流指令値Ie*を負にすれば、エネルギー蓄積装置EDLCから放電電流Ie(図の矢印と反対向き)を流すことができる。
【0162】
エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを用いた場合、その蓄積エネルギーは、印加電圧Veの値に関係する。すなわち、キャパシタ容量をCeとした場合、蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となる。ヒステリシス特性を持つ比較器HYSは、電圧Veが設定値Ve1を超えた場合には、出力信号「1」を発生し、切換え回路AS1を接点「1」に切り換える。逆に、電圧Veが設定値Ve2(<Ve1)より小さくなった場合には、出力信号「0」を発生し、切換え回路AS1を接点「0」に切り換える。AS1の接点「0」には、前述の指令値Ie*=Pe/Veが入力され、回生運転時の充電電流指令が与えられる。また、接点「1」には、切り換え回路AS2からの信号が入力され、ゼロ又は放電電流指令が与えられる。
【0163】
(第2実施形態:請求項2に対応)
第2実施形態の電力変換装置を、図2及び図3を参照して説明する。
【0164】
本実施形態においては、電力変換装置の主回路構成は第1実施形態と同様であり、制御回路が相違する。
【0165】
図2において、比較器COMは、負荷電流ILを入力し、IL>0(力行運転)で「1」を出力し、IL<0(回生運転)で「0」を出力する。切り換え回路AS2は、比較器COMからの信号が「0」又は「1」のとき、それぞれ接点「0」又は「1」に接続する。AS2の接点「0」にはゼロ電流指令が与えられ、接点「1」には一定値指令−Ieo*(放電)が与えられる。
【0166】
すなわち、エネルギー蓄積装置EDLCの電圧Veが高くなり、Ve>Ve1となった場合、切り換え回路AS2の出力が電流指令Ie*を与える。そのとき、負荷電流ILが負の場合(回生運転)、前記電流指令値Ie*=0として、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電を止める。負荷電流ILが正の場合(力行運転)、前記電流指令値として、−Ieo*(放電)を与えてEDLCの蓄積エネルギーを放出する。このとき、蓄積エネルギーの有効利用が図れる。次の回生要求が来るまでに、EDLCの蓄積エネルギーを下げればよいので、設定値−Ieo*(放電)をあまり大きくする必要は無い。
【0167】
IL<0で、Ve>Ve1の場合、Ie*=0が与えられ、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電は無く、回生電力は図1の電圧形自励式電力変換器CNVを介して、交流電源SUPへ電力回生される。これにより、エネルギー蓄積装置EDLCの貯蔵容量をむやみに大きくすることなく、回生失効の防止とエネルギーの有効利用が図れ、経済的な電力変換装置を提供できる。
【0168】
図3は、図1の装置の運転特性の一例を示すもので、電車負荷で、列車が停止するまでの時間tに対する列車速度V,電気ブレーキ力F,及び回生電力PLを表す。ブレーキ力Fを一定と仮定した場合、回生電力PLは、PL=F×Vとなり、列車速度が低くなれば、回生電力PLも小さくなることを表している。
【0169】
電圧形自励式電力変換器CNVを介して交流電源SUPに回生する電力Psは、ほぼ一定になるように制御し、残りの電力PL−Psをエネルギー蓄積装置EDLCに蓄える。すなわち、短時間の大きな回生電力はエネルギー蓄積装置EDLCに蓄えるようにし、また、長時間の小さな回生電力は電圧形自励式電力変換器CNVを介して交流電源SUPにもどすようにしている。停止直前では、車両速度Vが低くなるため、電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源SUPにもどす電力が小さくなるので、そのときには、EDLCに蓄えたエネルギーを放出することにより、電源への回生電力が一定に保つことができる。これにより、電源への回生電力が安定化され、電圧形自励式電力変換器CNVの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置EDLCの蓄積容量も低減することが可能となる。
【0170】
(第3実施形態:請求項3に対応)
第3実施形態の電力変換装置を、図4〜図10を参照して説明する。
【0171】
図4は、図1にて示した電力変換装置の具体的な主回路構成例と、電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路例とを示している。
【0172】
図4において、受電端子R,S,Tを持つ3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介し、自己消弧素子S1〜S6、高速ダイオードD1〜D6で構成される電圧形自励式電力変換器CNVが接続され、該電圧形自励式電力変換器CNVの直流側には直流平滑コンデンサCdが並列接続され、双方向チョッパCHO及びエネルギー蓄積装置EDLCを介して負荷装置Loadが接続されている。
【0173】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0174】
一方、電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、図4に示すように、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
【0175】
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷Loadが消費する直流電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ic(Ir,Is,It)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
【0176】
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、前記位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
【0177】
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流を制御する。
【0178】
図5は、本実施形態装置の電圧形自励式電力変換器CNVの制御動作を説明するための交流側等価回路を示す。また、図6はその電圧・電流ベクトル図を示す。
【0179】
図中、Vsは電源電圧,Vcは電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧,Icは入力電流、jωLs・Icは交流リアクトルLsによる電圧降下分(ただし、リアクトルLsの抵抗分は十分小さいものとして無視した)を表わす。ベクトル的に、Vs=Vc+jωLs・Icの関係がある。
【0180】
電源電圧Vsの波高値と電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの基本波波高値は大略一致するように合わせる。直流電圧Vdは負荷側からの要求で決まる場合が多く、前記パルスパターンを決めると、交流出力電圧Vcの基本波波高値は決まってしまう。そこで、電源側に変圧器TRを設置し、その2次電圧をVsとして、波高値を合わせる。
【0181】
入力電流Icは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを調整することにより、制御できる。すなわち、位相角φ=0とすると、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Icはゼロとなり、入力電流Icもゼロとなる。位相角(遅れ)φを増やしていくと、jωLs・Icの電圧が増加し、入力電流Icもその値に比例して増加する。入力電流ベクトルIcは、電圧jωLs・Icに対し電気角90°遅れており、電源電圧Vsに対しては、φ/2だけ遅れたベクトルとなる。従って、電源側から見た入力力率は、cos(φ/2)となる。
【0182】
一方、電圧形自励式電力変換器の交流出力電圧をVc′のように位相角φを進み方向に増やしていくと、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Icも負となり、入力電流はIc′のように、電源電圧Vsに対し(π−φ/2)の位相角となる。すなわち、電力Ps=Vs・Icは負となり、電力を電源に回生することができる。電源電圧Vsを基準にして、交流出力電圧Vcを図の破線に沿ってVc′の方向に回していくと、入力電流ベクトルIcは破線に沿ってIc′の方向に変化する。
【0183】
図4において、有効電流Iqは次のように制御される。
【0184】
Iq*>Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が増加し、入力電流Icを増加させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが増加し、やがてIq*=Iqとなって落ち着く。逆に、Iq*<Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が減少し又は負の値になり、入力電流Icを減少させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが減少し、やはりIq*=Iqとなって落ち着く。
【0185】
また、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは次のように制御される。
【0186】
Vd*>Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq*が増加し、上記のようにIq*=Iqに制御されるので、有効電力が交流電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給される。その結果、直流電圧Vdが増加し、Vd*=Vdとなるように制御される。
【0187】
逆に、Vd*<Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq*が減少し又は負の値となり、有効電力が直流平滑コンデンサCdから交流電源SUP側に回生される。その結果、直流電圧Vdが減少し、やはりVd*=Vdとなるように制御される。
【0188】
図4の装置では、負荷Loadがとる直流電流ILを検知し、その量に見合った有効電流を供給するようにフィードフォワード補償器FFで補償量IqFF=k1・ILを演算し、加算器ADに入力している。これにより、負荷が急変した場合、それに見合った入力電流(有効電流)Iqが供給され、直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdの変動を抑えている。
【0189】
図7は、図4の装置の位相制御回路PHC実施形態を示す。図中、ADr,ADs,ADtは加減算器、PTN1〜PTN3はパルスパターン発生器を示す。
【0190】
加減算器ADr,ADs,ADtは、位相信号θr,θs,θtから前記位相角指令値φ*を引き算し、新たな位相信号θcr,θcs,θctを作る。当該新たな位相信号θcr,θcs,θctは、0〜2πの周期関数で、電源周波数に同期して変化する。
【0191】
パルスパターン発生器PTN1〜PTN3は、前記新たな位相信号θcr,θcs,θctに対して、一定のパルスパターンとなるようにゲート信号g1〜g6を発生する。
【0192】
パルスパターン発生器PTN1は、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンをテーブル関数として記憶したもので、図8に1パルス動作時の波形を示す。
【0193】
図8中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。すなわち、入力θcrに対し、次のようなゲート信号g1(又はg4)を出力する。
【0194】
0≦θcr<πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
π≦θcr<2πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
電圧形自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。直流電圧Vdが一定ならば、交流出力電圧Vcrの振幅値は一定となる。Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φだけ遅れている。S相,T相も同様に与えられる。
【0195】
図9は、図8のパルスパターンで電圧形自励式電力変換器CNVを動作させた場合の力行運転時のR相各部動作波形を示す。なお、説明の便宜上、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
【0196】
電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ遅れている。また、入力電流Irは電源電圧Vrに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、それぞれ表わしている。以下に、そのときの動作を図4を用いて説明する。
【0197】
入力電流Irが負から正に変るまでは高速ダイオードD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irは自己消弧素子S4を介して流れるようになる。次に、素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。入力電流Irが再び反転するまでその電流は高速ダイオードD1に流れる。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
【0198】
自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2)となる。例えば、φ=20°の場合、Imax=0.174×Icmとなる。すなわち、自己消弧素子のしゃ断電流が小さいものを用意すればよく、コストの安い電力変換装置を提供できる。
【0199】
図10は、回生運転時の動作波形を示すもので、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流をそれぞれ表わしている。変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ進んでいる。また、入力電流Irは電源電圧の反転値−Vrに対し、位相角(φ/2)だけ進んで流れる。
【0200】
入力電流Irが負で、自己消弧素子S1がオン(S4はオフ)のときは、入力電流Irは素子S1を介して流れる。素子S1をオフ(S4をオン)すると、電流Irは高速ダイオードD4を介して流れる。入力電流Irが反転すると、自己消弧素子S4に電流が流れ、上記と同様に素子S4をオフすることにより、高速ダイオードD1に電流が移る。
【0201】
回生運転時、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2)となる。
【0202】
以上のように、回生運転時の入力電流Irの大部分は自己消弧素子に流れるが、当該素子S1〜S6のしゃ断電流は小さくてすみ、コストの安い電力変換装置を提供できる。
【0203】
電圧形自励式電力変換器CNVを固定パルスで運転することにより、スイッチング回数が最小になり、変換器効率はさらに向上する。また、交流側出力電圧Vcの基本波成分が大きくなり、電圧形自励式電力変換器の電圧利用率が向上する。また、変換器力率がほぼ1で運転されるため、入力電流Icのゼロ点付近でスイッチングを行うことになり、力行運転時も回生運転時も、自己消弧素子のしゃ断電流は極めて小さくなる。この結果、高効率で低コストな電力変換装置を提供できる。また、大電流をしゃ断しないということは、ソフトスイッチングに近くなり、EMIノイズが小さくなり、環境にもやさしい電力変換装置を提供できる。
【0204】
(第4実施形態:請求項4に対応)
第4実施形態の電力変換装置を、図11〜図15を参照して説明する。
【0205】
本実施形態の電力変換装置の主回路構成は、先の例と同様であり、制御内容が先の例と相違する。
【0206】
図11は、パルスパターン発生器PTN1として、3パルス出力を行ったときの動作波形を示すもので、R相について描いている。図中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。また、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンは次のようになる。
【0207】
0≦θcr<θ1の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)θ1≦θcr<θ2の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ2≦θcr<πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)π≦θcr<θ3の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)θ3≦θcr<θ4の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ4≦θcr<2πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
このとき、電圧形自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。出力電圧Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φだけ遅れている。S相,T相も同様に与えられる。
【0208】
この場合もパルスパターンは固定され、直流電圧Vdを一定とした場合、電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧の基本波波高値は一定となる。
【0209】
図12は、図11のパルスパターンで電圧形自励式電力変換器CNVを動作させた場合の力行運転時のR相の各部動作波形を示す。なお、説明を簡略化するため、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
【0210】
電力変換器CNVの交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vsに対し、位相角φだけ遅れる。また、入力電流Icは電源電圧Vsに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流をそれぞれ表わしている。そのときの動作を以下に説明する。
【0211】
入力電流Irが負から正に変るまでは高速ダイオードD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irは素子S4を介して流れるようになる。次に素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。次に、交流出力電圧Vcrの基本波のゼロクロス点で、自己消弧素子S4を再びオンすると、入力電流Irは素子S4を介して流れ、高速ダイオードD1の電流はゼロとなる。さらに、図12のθ1で、素子S4をオフすると、上記と同じように、高速ダイオードD1に電流が流れ、入力電流Irが再び反転するまでその電流は高速ダイオードD1に流れる。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
【0212】
図12のパルスパターンは3パルスの場合を示したが、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2+θ1)
となる。例えば、φ=20°,θ1=10°とした場合、Imax=0.342×Icmとなる。このように、3パルスで運転した場合でも、自己消弧素子S1〜S6の最大遮断電流Imaxは入力電流波高値Icmの1/3程度に抑えることができ、装置のコストを大幅に低減できる。
【0213】
図13は、パルスパターン発生器PTN1として、5パルス出力運転を行う場合の動作波形を示すもので、R相について描いている。図中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。また、新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。また、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンは次のようになる。
【0214】
0≦θcr<θ1の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)θ1≦θcr<θ2の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ2≦θcr<θ3の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ3≦θcr<θ4の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ4≦θcr<πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)π≦θcr<θ5の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)θ5≦θcr<θ6の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ6≦θcr<θ7の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ7≦θcr<θ8の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ8≦θcr<2πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
電圧形自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。直流電圧Vdが一定ならば、交流出力電圧Vcrの振幅値は一定となる。Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φだけ遅れている。S相,T相も同様に与えられる。
【0215】
図14は、図13のパルスパターンで電圧形自励式電力変換器を動作させた場合の各部動作波形を示すもので、R相について表わしている。なお、説明を簡略化するため、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
【0216】
図14において、変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vsに対し、位相角φだけ遅れている。従って、力行運転となり、入力電流Icは電源電圧Vsに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流をそれぞれ表わしている。以下に、そのときの動作を図1の装置を用いて説明する。
【0217】
入力電流Irが負から正に変るまでは高速ダイオードD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、素子S4を介して流れるようになる。次に素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。
【0218】
次に、自己消弧素子S4を再びオンすると、入力電流Irは素子S4を介して流れ、高速ダイオードD1の電流はゼロとなる。さらに、素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。この後、図13に示したパルスパターンに従って上記動作を繰り返すが、図13のθ2で、素子S4がオフ(素子S1がオン)した後は、高速ダイオードD1に電流が流れ、入力電流Irが再び反転するまでその状態を継続する。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
【0219】
図14のパルスパターンは5パルスの場合を示したが、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2+θ2)となる。
【0220】
例えば、φ=20°,θ1=10°,θ2=15°とした場合、Imax=0.42×Icmとなる。
【0221】
図15は、電圧形自励式電力変換器CNVを5パルスで運転した場合の動作波形を示すもので、Vcrは変換器CNVのR相電圧,VcsはS相電圧,VcrsはR−S線間電圧を表す。
【0222】
電圧形自励式電力変換器CNVは、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角で、0°,±δ1,±δ2の角度でスイッチングを行うようにしており、δ1<δ2で、2×δ1>δ2を満足するように動作させている。なお、図13のパルスパターンに対応すると、δ1=θ1,δ2=θ2となる。
【0223】
変換器CNVの交流出力電圧のR−S線間電圧Vcrsは、R相電圧Vcrより電気角で30°進みとなる。5パルスのパルスパターンで、交流側R相出力電圧Vcrの基本波のゼロクロス点から電気角0,±δ1,±δ2の角度でスイッチングさせた場合(δ1<δ2)、R−S線間電圧Vcrsは、当該電圧Vcrsの基本波のゼロクロス点から、まず、(δ2−δ1)の期間だけ第1の正パルスが出力され、次にδ1の期間だけゼロ電圧があり、さらにδ1の期間だけ第2の正パルスが出力される。ここで、2×δ1>δ2を満足するようにパルスパターンを設定すると、前記第1の正パルスの幅(δ2−δ1)より、前記第2の正パルスの幅δ1が広くなる。すなわち、線間電圧Vcrsが立ち上がるときは、その基本波のゼロクロス点から、前記第1の正パルス,第2の正パルスと、徐々に幅が広くなっていく。逆に、線間電圧Vcrsが立ち下がるときは、まず、第2の正パルス(幅:δ1)を発生し、次に第1の正パルス(幅:δ2−δ1)を発生して、徐々に幅が狭くなってゼロクロス点に至る。線間電圧Vcrsの負側も同様になる。また、他の線間電圧Vcst,Vctrも同様に制御される。この結果、少ないスイッチング回数で、交流電源SUPから供給される入力電流Ir,Is,Itの歪みを小さくすることができ、その高調波成分も小さくできる。
【0224】
以上のように、本実施形態装置で、電圧形自励式電力変換器CNVのパルスパターンを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みを小さくできる。また、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記1パルス動作でのゼロ電圧発生期間(電気角60°)の半分を利用してスイッチングが行われ、他の相のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0225】
(第5実施形態:請求項5に対応)
第5実施形態の電力変換装置を、図16及び図17を参照して説明する。
【0226】
図16において、3相交流電源SUPに、1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流リアクトルLs1,Ls2を介して交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線された電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHO及びエネルギー蓄積装置EDLCを介して負荷装置Loadが接続されている。
【0227】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0228】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0229】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、3相変圧器TRの1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はY結線,第2の2次巻線はΔ結線されたものを用いる。
【0230】
図17は、図16の装置の制御回路実施形態を示すもので、CALは直流電圧指令演算器、C1,C21,C22は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、Z1,Z2は3相/dq座標変換回路、PLL1,PLL2は電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2は位相制御回路をそれぞれ示す。
【0231】
直流電圧指令演算器CALは、電源電圧Vsや負荷電流ILに応じて直流電圧指令Vd*を変えるようにしたもので、例えば、負荷電流ILに対して、比例定数をk,無負荷時の直流電圧指令値をVdo*とした場合、前記直流電圧指令値Vd*を、Vd*=Vdo*−k・ILとして与えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CVN2を構成する自己消弧素子の最大遮断電流を小さくすることができる。また、前記交流電源SUPの電圧Vsが変動した場合、当該電源電圧Vsの実効値の変化に合わせて前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo*を変えることにより、入力電流Icの無効分が増加するのを抑えることが可能となる。
【0232】
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷LOADが消費する直流電流Idcを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。
【0233】
座標変換器Z1は、電源SUPから変換器CNV1へ供給されるの3相入力電流Ic1(Ir1,Is1,It1)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iq1は有効電流検出値を、d軸電流Id1は無効電流検出値を表わす。座標変換器Z2も同様に3相入力電流Ic2(Ir2,Is2,It2)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。
【0234】
比較器C21により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iq1を比較し、その偏差εi1を電流制御補償回路Gi1(S)により増幅して、位相角指令値φ1*とする。電源同期位相検出回路PLL1は変圧器TRの2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に同期した位相信号θr1,θs1,θt1を作り、位相制御回路PHC1に入力する。位相制御回路PHC1は、前記位相角指令値φ1*と位相信号θr1,θs1,θt1を用いて電圧形自励式電力変換器CNV1の自己消弧素子S11〜S16のゲート信号g11〜g16を発生する。
【0235】
同様に、比較器C22により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iq2を比較し、その偏差εi2を電流制御補償回路Gi2(S)により増幅して、位相角指令値φ2*とする。電源同期位相検出回路PLL2は変圧器TRの2次電圧Vr2,Vs2,Vt2に同期した位相信号θr2,θs2,θt2を作り、位相制御回路PHC2に入力する。位相制御回路PHC2は、前記位相角指令値φ2*と位相信号θr2,θs2,θt2を用いて電圧形自励式電力変換器CNV2の自己消弧素子S21〜S26のゲート信号g21〜g26を発生する。
【0236】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流を制御する。
【0237】
本実施形態装置においては、2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、指令値Iq*は同じなので、ほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない正弦波に制御できる。
【0238】
また本実施形態装置においては、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0239】
さらに本実施形態装置においては、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0240】
また同様に、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、並列多重運転するように構成することにより、変換装置の大容量化と、交流電源SUPから供給される入力電流Icの高調波成分の低減を図ることができる。
【0241】
(第6実施形態:請求項6に対応)
第6実施形態の電力変換装置を、図18を参照して説明する。
【0242】
図18に示すように、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2及び交流リアクトルLs1,Ls2を介して接続された3相ブリッジ結線された2台の電圧形自励式電力変換器CNVと、この電圧形自励式電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う構成である。また、3相交流電源SUPには高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(高配負荷)AC−Loadが接続されている。
【0243】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0244】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0245】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、Δ/Δ結線の3相変圧器TR1とΔ/Y結線の3相変圧器TR2が使われる。
【0246】
図18の装置の制御回路は、図17に示した制御回路に順ずる。
【0247】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0248】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器CNV1,CNV2間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs2,Ls1がない場合、直流電圧Vdの値と前記2台の変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0249】
図16のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs2,Ls1を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0250】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0251】
本実施形態装置で2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0252】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0253】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0254】
以上は2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0255】
(第7実施形態:請求項7に対応)
第7実施形の電力変換装置を、図19及び図20を参照して説明する。
【0256】
図19において、本実施形態の電力変換装置は、受電端子R,S,Tを持つ3相交流電源SUPに対し1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成された2台の3相変圧器TR1,TR2と、この3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流リアクトルLs1,Ls2を介して交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う構成である。
【0257】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0258】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0259】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用意し、1次巻線を直列接続し、電気角30°の位相差を持たせた2次巻線を有する2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、直列多重運転するように構成している。
【0260】
ここで、変圧器TR1は1次巻線がオープンスター、2次巻線がΔ結線となっており、変圧器TR2はΔ/Δ結線されている。3相電源SUPのR相端子は、変圧器TR1の1次R相巻線の1つの端子に接続され、1次R相巻線のもう1つの端子(中点側)が変圧器TR2の1次R相端子接続される。S相,T相も同様である。すなわち、変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0261】
この装置では、2台の変圧器のもれインダクタンスを利用することにより、交流リアクトルLsを省略することもできる。もちろん、外部に交流リアクトルLsを設けても原理的には同じになる。
【0262】
図20は、図19の装置の制御回路実施形態を示すもので、CALは直流電圧指令演算器、C1,C2は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi(S)は電流制御補償回路、Zは3相/dq座標変換回路、PLL1,PLL2は電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2は位相制御回路をそれぞれ示す。
【0263】
直流電圧指令演算器CALは、電源電圧Vsや負荷電流ILに応じて直流電圧指令Vd*を変えるようにしたもので、例えば、負荷電流ILに対して、比例定数をk,無負荷時の直流電圧指令値をVdo*とした場合、前記直流電圧指令値Vd*を、Vd*=Vdo*−k・ILとして与えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CVN2を構成する自己消弧素子の最大遮断電流を小さくすることができる。また、前記交流電源SUPの電圧Vsが変動した場合、当該電源電圧Vsの実効値の変化に合わせて前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo*を変えることにより、入力電流Isの無効分が増加するのを抑えることが可能となる。
【0264】
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器C2に入力する。一方、負荷Loadが消費する直流電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。
【0265】
座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ic(Ir,Is,It)の検出値を、dq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
【0266】
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLL1は変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に同期した位相信号θr1,θs1,θt1を作り、位相制御回路PHC1に入力する。位相制御回路PHC1は、前記位相角指令値φ*と位相信号θr1,θs1,θt1を用いて電圧形自励式電力変換器CNV1の自己消弧素子S11〜S16のゲート信号g11〜g16を発生する。同様に、電源同期位相検出回路PLL2により、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2に同期した位相信号θr2,θs2,θt2を作り、位相制御回路PHC2に入力する。位相制御回路PHC2は、前記位相角指令値φ*と位相信号θr2,θs2,θt2を用いて電圧形自励式電力変換器CNV2の自己消弧素子S21〜S26のゲート信号g21〜g26を発生する。
【0267】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する各変換器出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを変えることより、変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスの和Lx=Lx1+Lx2の和に印加される電圧が変化し、入力電流Ic(Ir,Is,It)を制御することができる。この装置では、2台の変圧器TR1とTR2が1次側で直列接続されているので、2台の電力変換器CNV1,CNV2の入力電流は同じになり、高調波の少ない電流となる。また、多重化により、その入力電流Icは、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0268】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0269】
以上は、2台の電力変換装置を用いた例を示したが、3台以上の電力変換装置を用いて直列多重運転できることは言うまでもない。
【0270】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流の高調波成分を低減することができ、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御パルス数を少なくできる利点がある。また、3相変圧器のもれインダクタンス分を利用することにより、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、電力回生が可能で、高効率・低コストな電力変換装置を提供することができる。
【0271】
(第8実施形態:請求項8に対応)
第8実施形の電力変換装置を、図21及び図22を参照して説明する。
【0272】
図21において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2はとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う。
【0273】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ie1,Ie2を制御する。
【0274】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0275】
2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2用い、電気角30°位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成している。本実施形態では、変圧器の1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されている。すなわち、変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0276】
図22は、図21の装置の制御回路実施形態を示すもので、CALは直流電圧指令演算器、C11,C12,C21,C22は比較器、AD1,AD2は加算器、Gv1(S),Gv2(S)は電圧制御補償回路、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、Z1,Z2は3相/dq座標変換回路、PLL1,PLL2は電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2は位相制御回路をそれぞれ示す。
【0277】
直流電圧指令演算器CALは、電源電圧Vsや負荷電流ILに応じて直流電圧指令Vd*を変えるようにしたもので、例えば、負荷電流ILに対して、比例定数をk,無負荷時の直流電圧指令値をVdo*とした場合、前記直流電圧指令値Vd*を、Vd*=Vdo*−k・ILとして与えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CVN2を構成する自己消弧素子の最大遮断電流を小さくすることができる。また、前記交流電源SUPの電圧Vsが変動した場合、当該電源電圧Vsの実効値の変化に合わせて前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo*を変えることにより、入力電流Icの無効分が増加するのを抑えることが可能となる。
【0278】
電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2は、直流平滑コンデンサCd1及びCd2に印加される電圧Vd1,Vd2が指令値(Vd*/2)にそれぞれ一致するように制御する。
【0279】
比較器C11により、電圧検出値Vd1と指令値Vd*と比較し、その偏差εv1を電圧制御補償回路Gv1(S)により、積分又は比例増幅し、加算器AD1に入力する。同様に、比較器C12により、電圧検出値Vd2と指令値Vd*と比較し、その偏差εv2を電圧制御補償回路Gv2(S)により、積分又は比例増幅し、加算器AD2に入力する。一方、負荷LOADが消費する直流電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器AD1及びAD2に入力する。加算器AD1の出力Iq1*が電源SUPから第1の電力変換装置CNV1に供給される有効電流の指令値となり、加算器AD2の出力Iq2*が電源SUPから第2の電力変換装置CNV2に供給される有効電流の指令値となる。
【0280】
座標変換器Z1は、電源SUPから供給される3相入力電流Ic1(Ir1,Is1,It1)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iq1は有効電流検出値を、d軸電流Id1は無効電流検出値を表わす。座標変換器Z2も同様である。
【0281】
比較器C21により、有効電流指令値Iq1*と有効電流検出値Iq1を比較し、その偏差εi1を電流制御補償回路Gi1(S)により増幅して、位相角指令値φ1*とする。電源同期位相検出回路PLL1は変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に同期した位相信号θr1,θs1,θt1を作り、位相制御回路PHC1に入力する。位相制御回路PHC1は、前記位相角指令値φ1*と位相信号θr1,θs1,θt1を用いて電圧形自励式電力変換器CNV1の自己消弧素子S11〜S16のゲート信号g11〜g16を発生する。
【0282】
同様に、比較器C32により、有効電流指令値Iq2*と有効電流検出値Iq2を比較し、その偏差εi2を電流制御補償回路Gi2(S)により増幅して、位相角指令値φ2*とする。電源同期位相検出回路PLL2は変圧器TRの第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2に同期した位相信号θr2,θs2,θt2を作り、位相制御回路PHC2に入力する。位相制御回路PHC2は、前記位相角指令値φ2*と位相信号θr2,θs2,θt2を用いて電圧形自励式電力変換器CNV2の自己消弧素子S21〜S26のゲート信号g21〜g26を発生する。
【0283】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流Ic1,Ic2を制御する。
【0284】
2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、定常状態では直流電圧Vd1及びVd2がほぼ同じになり、有効電流指令値Iq1*と、Iq2*がほぼ等しくなるので、入力電流Ic1,Ic2の波高値はほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない運転ができる。3組以上の電力変換装置を組み合わせて多重運転した場合には、変圧器TRの1次電流リプルをさらに低減することができる。
【0285】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は、変圧器TRのもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0286】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φ1,φ2を遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φ1,φ2を進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0287】
以上のように本実施形態の電力変換装置においては、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNVnは、直流平滑コンデンサCd1,Cdnに印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0288】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。ここに、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnで多重運転した場合、当該電力変換器CNV1〜CNVnは、各直流平滑コンデンサCd1〜Cdnに印加される電圧Vd1〜Vdnがほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2+…+Vdnが一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0289】
(第9実施形態:請求項9に対応)
第9実施形態の電力変換装置を、図23を参照して説明する。
【0290】
図23において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角で30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2とを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う。また、3相交流電源SUPには高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(高配負荷)AC−Loadが接続されている。
【0291】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHO1,CHO2は、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ie1,Ie2を制御する。
【0292】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0293】
変圧器TR1はΔ/Δ結線の3相変圧器、変圧器TR2はΔ/Y結線の3相変圧器で、各2次側電圧は電気角で30°の位相差を持っている。3相ブリッジ結線された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の交流側端子は変圧器TR1の2次巻線に接続され、また、3相ブリッジ結線された第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は変圧器TR2の2次巻線に接続されている。さらに、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、直流側で直列接続するように構成している。
【0294】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2を制御している。
【0295】
交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧Vdの高圧化、及び交流電源から供給される入力電流Icの高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器CNV1,CNV2毎に変圧器TR1,TR2を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0296】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs1,Ls2がない場合、直流電圧Vdの値と前記変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0297】
図21の装置のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、前記変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs1,Ls2を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルLs1,Ls2の分だけコストは高くなってしまう。
【0298】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs1,Ls2無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0299】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vd1及びVd2が一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2に印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また多重化により、その合成入力電流Icは歪みの少ない波形に制御できる。
【0300】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0301】
本実施形態の電力変換装置で、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0302】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、各直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0303】
以上は2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0304】
(第10実施形態:請求項10に対応)
第10実施形態の電力変換装置を、図16〜図22で示した電力変換装置の構成と図24とを参照して説明する。
【0305】
本実施形態の電力変換装置は、第5〜第9実施形態の電力変換装置におけるn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、各電力変換器CNV1〜CNVnの交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うようにしている。
【0306】
このように本実施形態の電力変換装置においてはし、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnを多重化していることにより、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0307】
また、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0308】
図24は、図16〜図22で示した電力変換装置において、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを5パルスで運転した場合の1台の変換器の動作波形を示す。
【0309】
図中、Vcriは変換器CNVi(i=1〜n)のR相電圧,VcsiはS相電圧,VcrsiはR−S線間電圧を表す。
【0310】
電圧形自励式電力変換器CNViの交流出力電圧のR−S線間電圧Vcrsiは、R相電圧Vcriより電気角で30°進みとなる。5パルスのパルスパターンで、交流側R相出力電圧Vcriの基本波のゼロクロス点から電気角0,±δ1,±δ2の角度でスイッチングさせた場合(δ1<δ2<(30°/n))、R−S線間電圧Vcrsiは、当該電圧Vcrsiの基本波のゼロクロス点から、まず、(δ2−δ1)の期間だけ第1の正パルスが出力され、次にδ1の期間だけゼロ電圧があり、さらにδ1の期間だけ第2の正パルスが出力される。ここで、2×δ1>δ2を満足するようにパルスパターンを設定すると、前記第1の正パルスの幅(δ2−δ1)より、前記第2の正パルスの幅δ1が広くなる。すなわち、線間電圧Vcrsiが立ち上がるときは、その基本波のゼロクロス点から、前記第1の正パルス,第2の正パルスと、徐々に幅が広くなっていく。逆に、線間電圧Vcrsiが立ち下がるときは、まず、第2の正パルス(幅:δ1)が発生され、次に第1の正パルス(幅:δ2−δ1)が発生され、徐々に幅が狭くなってゼロクロス点に至る。線間電圧Vcrsiの負側も同様になる。また、他の線間電圧Vcsti,Vctriも同様に制御される。この結果、交流電源SUPから供給される入力電流Ir,Is,Itの歪みが小さくなり、その高調波成分も小さくできる。
【0311】
n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnは、多重化により、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。
【0312】
また、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnは、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0313】
(第11実施形態:請求項11に対応)
第11実施形態の電力変換装置は、第5〜第10実施形態の電力変換装置にけるエネルギー蓄積装置EDLCが負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように、双方向チョッパCHOを制御するものである。
【0314】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0315】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0316】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置EDLCは、負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが授受する電力は前記設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0317】
本実施形態の電力変換装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけをn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnから供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えたエネルギーを前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnにより、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置EDLCの容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。これにより、小さな容量の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnと、小さな容量のエネルギー蓄積装置EDLCで、回生失効を防止でき、経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0318】
(第12実施形態:請求項12に対応)
第12実施形態の電力変換装置は、第5〜第11実施形態の電力変換装置におけるエネルギー蓄積装置EDLCが、エネルギー吸収の要求がない時に蓄積されたエネルギーを放出するように、双方向チョッパCHOを制御している。
【0319】
EDLCに蓄積されるエネルギーは、回生電力P×時間tで決まり、時間tが短ければ、電力Pが大きくても蓄積エネルギーとしてはあまり大きくならない。
【0320】
本実施形態のの電力変換装置においては、上記の蓄積エネルギーをエネルギー吸収の要求がない時に、放出するように双方向チョッパCHOを制御することにより、さらに、EDLCの蓄積エネルギーを減らすことができる。電車負荷等では、回生している時間より、力行時間の方が圧倒的に長く、放出電力が小さくても蓄積エネルギーを十分小さくできる。双方向チョッパCHOにより放出されたエネルギーは、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnにより電源に回生され、所内負荷等に利用される。これにより、エネルギー蓄積装置EDLCの容量を減らすことができ、さらに経済的な電力変換装置を提供できる。
【0321】
(第13実施形態:請求項13に対応)
第13実施形態の電力変換装置を、図25及び図26を参照して説明する。
【0322】
図25において、3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、この電圧形自励式電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。また、3相交流電源SUPに変圧器TRxを介して所内負荷AC−Loadが接続されている。
【0323】
負荷装置Loadは、例えば、電車負荷で、力行及び回生運転が行われる。所内負荷AC−Loadは、電鉄変電所内の負荷で、例えば、照明やエアコン等がある。
【0324】
電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、直流電圧制御回路AVR,入力電流制御回路ACR1及び位相制御回路PHCなどが用意される。なお、Zは3相電流をdq座標軸の電流に変換する座標変換器である。
【0325】
また、抵抗に直列接続された開閉器SW1,SW2の動作タイミングを決める開閉器制御回路SWCが用意されている。
【0326】
以下、順に本実施形態装置の動作を説明する。
【0327】
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがほぼ一定になるように、入力電流Icを制御する。すなわち、直流電圧指令値Vd*と直流電圧検出値Vdを比較し、その偏差を増幅して入力電流Icの有効分の指令値Iq*を与える。入力電流Icは座標変換器Zにより、3相/dq軸変換され、そのq軸成分Iqが有効電流検出値となる。電流制御回路ACR1により、電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差を増幅して、位相制御回路PHCに位相制御信号e*を与える。位相制御回路PHCは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを前記指令値に従って制御するもので、位相角φ(遅れ)を大きくすることにより、入力電流Icの有効分Iqが増加し、交流電源SUPから負荷装置Loadに電力が供給される。逆に、位相角φを負(進み)方向に増やすと、入力電流Icの有効分Iqは負の値となり、負荷装置Loadからの回生電力を交流電源SUPにもどすことができる。もちろん、電圧形自励式電力変換器CNVをパルス幅変調制御することにより、直流電圧Vdがほぼ一定になるように入力電流Icを制御することもできる。
【0328】
一方、抵抗器に直列接続された開閉器SW1,SW2は、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0329】
図26は、負荷電流ILに対する抵抗装置(R1とR2)に流れる電流IRと、電圧形自励式電力変換器CNVの直流出力電流Icnvの関係を示したもので、負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNVから供給される。
【0330】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNVが回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0331】
本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0332】
(第14実施形態:請求項14に対応)
第14実施形態の電力変換装置は、図25で示す第13実施形態の電力変換装置における抵抗装置R及び開閉器SWを、複数個に分割し(図25では2分割している)、負荷装置Loadからの回生電力に応じて、投入個数を変えている。
【0333】
本実施形態の電力変換装置においては、複数個の抵抗装置R1〜Rnと、それぞれに直列接続された複数個の開閉器SW1〜SWnを用意し、回生電力の大きさに応じて、その投入個数を変えることにより、電圧形自励式電力変換器CNVの制御すべき電力を小さくすることが可能となる。例えば、回生電力が、0〜3000kWまで連続的に変化する場合、500kWの抵抗器を5台用意し、順次投入台数を増やすことにより、段階的に回生電力を消費することができる。それを連続的に制御するには、500kWの電圧形自励式電力変換器CNVを1台設置すればよい。抵抗装置Rが無い場合には、3000kWの電圧形自励式電力変換器CNVが必要であったものが、5分割された抵抗装置R1〜R5を設置することにより、変換器CNVの容量を1/6に低減できる。
【0334】
(第15実施形態:請求項15に対応)
第15実施形態の電力変換装置は、第13,第14実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記電源電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、入力電流Icを制御し且つ前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように制御している。
【0335】
電圧形自励式電力変換器CNVは、交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、その交流側出力電圧Vcの電源電圧Vsに対する位相角φを制御することにより、入力電流Icを制御する。
【0336】
パルスパターンを固定すると、直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、交流リアクトルLsに(又は変圧器TRのもれインダクタンス)に印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Ic=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
【0337】
電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。ちなみに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Icの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2又は、π−φ/2となり、入力力率は、cos(φ/2)となる。また、入力電流Icと電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2又は、π+φ/2となり、変換器力率は、cos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Icと交流リアクトルLsの値に依存する。位相角φは、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
【0338】
電圧形自励式電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流は小さくて済む。
【0339】
また、電力変換器CNVの交流側出力電圧の波高値を一定にして位相角φだけを制御するため、変換器の電圧利用率(交流出力電圧の実効値/直流電圧)が高くできる。すなわち、変圧器TRの2次電圧を高くできるため、出力容量が同じならば、変換器の電流容量を小さくでき、自己消弧素子の電流容量の小さいもので済む。
【0340】
回生運転時も電源力率はほぼ1に制御され、同様に自己消弧素子のスイッチングを入力電流Isのゼロクロス付近で行うことにより、素子のしゃ断電流は小さく抑えることができる。故に、スイッチング損失は大幅に軽減され、しゃ断電流の小さい自己消弧素子で電圧形自励式電力変換器CNVを構成できるようになり、経済的な装置を提供できる。
【0341】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0342】
(第16実施形態:請求項16に対応)
第16実施形態の電力変換装置は、第15実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該変換器CNVの交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°以内で、スイッチングを行うようにしている。
【0343】
このような本実施形態の電力変換装置によれば、1パルスで動作する3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNVの交流側線間電圧は、直流電圧Vdに対し、電気角120°期間(+Vd),電気角120°期間(−Vd)の矩形波電圧となり、残りの期間(電気角60°が2回)はゼロ電圧を発生する。3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みを小さくできる。また、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記1パルス動作でのゼロ電圧発生期間(電気角60°)の半分を利用してスイッチングが行われ、他の相のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0344】
(第17実施形態:請求項17に対応)
第17実施形態の電力変換装置を図27を参照して説明する。
【0345】
図27において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線された電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。
【0346】
本実施形態のおいては、抵抗装置R1,R2に直列接続された開閉器SW1,SW2は、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0347】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNVから供給される。
【0348】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNVが回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0349】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、3相変圧器TRの1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されたものを用いる。
【0350】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0351】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0352】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0353】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0354】
以上は、2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0355】
本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置(R1,R2)を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0356】
(第18実施形態:請求項18に対応)
第18実施形態の電力変換装置を、図28を参照して説明する。
【0357】
図28において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。また3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷AC−Loadが接続されている。
【0358】
本実施形態の電力変換装置において抵抗装置R1,R2に直列接続された開閉器SW1,SW2は、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0359】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0360】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNVが回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0361】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、Δ/Δ結線の3相変圧器TR1とΔ/Y結線の3相変圧器TR2が使われる。
【0362】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0363】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器CNV1,CNV2間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs2,Ls1がない場合、直流電圧Vdの値と前記2台の変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0364】
図27のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs2,Ls1を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0365】
本実施形態のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0366】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0367】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0368】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0369】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0370】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置R1,R2を開放/投入するだけの開閉器SW1,SW2を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の容量の低減を達成できる。
【0371】
(第19実施形態:請求項19に対応)
第19実施形態の電力変換装置を、図29を参照して説明する。
【0372】
図29において、受電端子R,S,Tを持つ3相交流電源SUPに1次巻線が各相毎に直列接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成された2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。
【0373】
本実施形態の電力変換装置においては、抵抗装置R1,R2に直列接続された開閉器SW1,SW2を負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御する。
【0374】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0375】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0376】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用意し、1次巻線を直列接続し、電気角30°の位相差を持たせた2次巻線を有する2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、直列多重運転するように構成している。
【0377】
ここで、変圧器TR1は1次巻線がオープンスター、2次巻線がΔ結線となっており、変圧器TR2はΔ/Δ結線されている。3相電源SUPのR相端子は、変圧器TR1の1次R相巻線の1つの端子に接続され、1次R相巻線のもう1つの端子(中点側)が変圧器TR2の1次R相端子接続される。S相,T相も同様である。すなわち、変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0378】
この装置では、2台の変圧器のもれインダクタンスを利用することにより、交流リアクトルLs1,Ls2を省略することもできる。もちろん、外部に交流リアクトルLs1,Ls2を設けても原理的には同じになる。
【0379】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する各変換器出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルの和Ls=Ls1+Ls2の和に印加される電圧が変化し、入力電流Ic(Ir,Is,It)を制御することができる。この装置では、2台の変圧器TR1とTR2が1次側で直列接続されているので、2台の電力変換器CNV1,CNV2の入力電流は同じになり、高調波の少ない電流となる。また、多重化により、その入力電流Icは、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0380】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0381】
以上は、2台の電力変換装置を用いた例を示したが、3台以上の電力変換装置を用いて直列多重運転できることは言うまでもない。
【0382】
本装置によれば、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流の高調波成分を低減することができ、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御パルス数を少なくできる利点がある。また、3相変圧器のもれインダクタンス分を利用することにより、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、電力回生が可能で、高効率・低コストな電力変換装置を提供することができる。
【0383】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置(R1,R2)を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0384】
(第20実施形態:請求項20に対応)
第20実施形態の電力変換装置を、図30を参照して説明する。
【0385】
図30において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(高配負荷)AC−Loadが接続されている。
【0386】
本実施形態の電力変換装置においては抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0387】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0388】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0389】
2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2用い、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成している。本実施形態では、変圧器の1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されている。すなわち、変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0390】
電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2は、直流平滑コンデンサCd1及びCd2に印加される電圧Vd1,Vd2が指令値(Vd*/2)にそれぞれ一致するように制御する。
【0391】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流Ic1,Ic2を制御する。
【0392】
2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、定常状態では直流電圧Vd1及びVd2がほぼ同じになり、有効電流指令値Iq1*と、Iq2*がほぼ等しくなるので、入力電流Ic1,Ic2の波高値はほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない運転ができる。3組以上の電力変換装置を組み合わせて多重運転した場合には、変圧器TRの1次電流リプルをさらに低減することができる。
【0393】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は、変圧器TRのもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Isの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流Isのゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0394】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φ1,φ2を遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φ1,φ2を進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0395】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、それぞれ直流平滑コンデンサCd1,Cdnに印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0396】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0397】
n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnで多重運転した場合、当該電力変換器CNV1〜CNVnは、各直流平滑コンデンサCd1〜Cdnに印加される電圧Vd1〜Vdnがほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2+…+Vdnが一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0398】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0399】
(第21実施形態:請求項21に対応)
第21実施形態の電力変換装置を、図31を参照して説明する。
【0400】
図31において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角で30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。
【0401】
変圧器TR1はΔ/Δ結線の3相変圧器、変圧器TR2はΔ/Y結線の3相変圧器で、各2次側電圧は電気角で30°の位相差を持っている。3相ブリッジ結線された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の交流側端子は変圧器TR1の2次巻線に接続され、また、3相ブリッジ結線された第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は変圧器TR2の2次巻線に接続されている。さらに、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、直流側で直列接続するように構成している。
【0402】
抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0403】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0404】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0405】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2を制御している。
【0406】
交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧Vdの高圧化、及び交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器CNV1,CNV2毎に変圧器TR1,TR2を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0407】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs1,Ls2がない場合、直流電圧Vdの値と前記変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0408】
図30の装置のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、前記変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs1,Ls2を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルLs1,Ls2の分だけコストは高くなってしまう。
【0409】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs1,Ls2無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0410】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vd1及びVd2が一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また多重化により、その合成入力電流Icは歪みの少ない波形に制御できる。
【0411】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0412】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0413】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、各直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0414】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0415】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0416】
(第22実施形態:請求項22に対応)
第22実施形態の電力変換装置は、第17〜第21実施形態の電力変換装置におけるn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、各電力変換器CNV1〜CNVnの交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うようにしている。
【0417】
本実施形態の電力変換装置においては、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnを多重化することにより、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0418】
また、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0419】
(第23実施形態:請求項23に対応)
第23実施形態の電力変換装置は、第17〜第22実施形態の電力変換装置における開閉器SWを負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、抵抗装置Rを平滑コンデンサCdに並列接続するようにしている。
【0420】
本実施形態の電力変換装置においては、開閉器SWを負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、抵抗装置Rを前記直流平滑コンデンサCdに並列接続する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置Rに電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0421】
(第24実施形態:請求項24に対応)
第23実施形態の電力変換装置は、第17〜第23実施形態の電力変換装置における抵抗装置R及び開閉器SWを、複数個に分割し、負荷装置Loadからの回生電力に応じて、投入個数を変えている。
【0422】
本実施形態の電力変換装置においては、複数個の抵抗装置R1〜Rnと、それぞれに直列接続された複数個の開閉器SW1〜SWnを用意し、回生電力の大きさに応じて、その投入個数を変えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御すべき電力を小さくすることが可能となる。例えば、回生電力が、0〜3000kWまで連続的に変化する場合、500kWの抵抗器を5台用意し、順次投入台数を増やすことにより、段階的に回生電力を消費することができる。それを連続的に制御するには、500kWの電圧形自励式電力変換器を設置すればよい。抵抗装置Rが無い場合には、3000kWの電圧形自励式電力変換器が必要であったものが、5分割された抵抗装置R1〜R5を設置することにより、電圧形自励式電力変換器の容量を1/6に低減できる。
【0423】
(第25実施形態:請求項25に対応)
第25実施形態の電力変換装置を、図32〜図34を参照して説明する。
【0424】
図32において、3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、この電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには変圧器TRxを介して所内負荷AC−Loadが接続されている。
【0425】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。例えば、エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを使った場合、その蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となり、印加電圧Veの2乗に比例する。
【0426】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。負荷装置Loadは、例えば、電車負荷で、力行及び回生運転が行われる。所内負荷AC−Loadは、電鉄変電所内の負荷で、例えば、照明やエアコン等がある。
【0427】
電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、直流電圧制御回路AVR,入力電流制御回路ACR1及び位相制御回路PHCなどが用意される。なお、Zは3相電流をdq座標軸の電流に変換する座標変換器である。
【0428】
また、双方向チョッパCHOの制御回路として、電流指令発生器REF,充放電電流制御回路ACR2,パルス幅変調制御回路PWMが用意されている。
【0429】
さらに、抵抗に直列接続された開閉器SWの動作タイミングを決める開閉器制御回路SWCが用意されている。
【0430】
以下、順に本実施形態装置の動作を説明する。
【0431】
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがほぼ一定になるように、入力電流Icを制御する。すなわち、直流電圧指令値Vd*と直流電圧検出値Vdを比較し、その偏差を増幅して入力電流Icの有効分の指令値Iq*を与える。入力電流Icは座標変換器Zにより、3相/dq軸変換され、そのq軸成分Iqが有効電流検出値となる。電流制御回路ACR1により、電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差を増幅して、位相制御回路PHCに位相制御信号e*を与える。位相制御回路PHCは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを前記指令値に従って制御するもので、位相角φ(遅れ)を大きくすることにより、入力電流Icの有効分Iqが増加し、交流電源SUPから負荷装置Loadに電力が供給される。逆に、位相角φを負(進み)方向に増やすと、入力電流Icの有効分Iqは負の値となり、負荷装置Loadからの回生電力を交流電源SUPにもどすことができる。もちろん、電圧形自励式電力変換器CNVをパルス幅変調制御することにより、直流電圧Vdがほぼ一定になるように入力電流Icを制御することもできる。
【0432】
一方、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0433】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV又はエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0434】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV及びエネルギー蓄積装置EDLCへ回生する最大電力を小さく抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0435】
また、双方向チョッパCHOは、次のように制御される。エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieの指令値Ie*は、負荷電流ILと抵抗装置の電流IRとの和(IL+IR)及び前記EDLCの印加電圧Veの値によって決定する。
【0436】
和電流(IL+IR)が負で、その電流値が設定値Iaより小さい場合は、電圧形自励式電力変換器CNVによって、当該回生電力PLを交流電源SUPにもどす。(IL+IR)>Iaとなった場合には、その差分(IL+IR−Ia)の相当する電力(PL+PR−Pa)だけ、エネルギー蓄積装置EDLCに充電するように電流指令値Ie*を与える。
【0437】
図33は、双方向チョッパCHOの制御回路構成実施形態を示すもので、当該双方向チョッパCHOとエネルギー蓄積装置EDLC及び抵抗装置Rの主回路構成も示す。
【0438】
図中、LIMはリミッタ回路、ADpは加減算器、Keは比例定数、AS1,AS2は切換え回路、COMはレベル比較器、HYSはヒステリシス特性を持つ比較器、Cは比較器、Gie(S)は電流制御回路、PWMはパルス幅変調制御回路をそれぞれ表す。
【0439】
まず、負荷電力PLと抵抗装置の消費電力PRの和(PL+PR)求め、リミッタ回路LIMを介して、交流電源SUPに回生する電力Paを求める。次に、加減算器ADpにより、Pe=Pa−(PL+PR)を求め、Keで定数倍(1/Ve)することにより、充電電流指令値Ie*を与える。力行運転では、負荷電流ILは図の矢印の方向に流れ、負荷電力PLが正となる。(PL+PR)>0の場合、リミット回路LIMは、そのまま、Pa=(PL+PR)を出力する。従って、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−(PL+PR)=0となる。ただし、PL>0の場合、開閉器SWは開放しているので、PR=0となっている。
【0440】
回生運転では、負荷電流ILは図矢印と反対向きに流れ、負荷電力PLは負となる。(PL+PR)<0の場合、リミット回路LIMは、設定値−PLOまでは、Pa=(PL+PR)を出力する。従って、−PLO<(PL+PR)では、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−(PL+PR)=0となる。しかし、−PLO>(PL+PR)では、Pa=−PLOとなり、エネルギー蓄積装置EDLCに充電する電力指令値Peは、Pe=Pa−(PL+PR)=−PLO−(PL+PR)で与えられる。
【0441】
エネルギー蓄積装置EDLCの印加電圧をVeとした場合、充電電流指令値Ie*は、前記電力指令値Peに対し、Ie*=Pe/Veで与えられる。比較器C3により、当該電流指令値Ie*とエネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流検出値Ieを比較し、その偏差εe=Ie*−Ieを次の電流制御回路Gie(S)で増幅し、前記双方向チョッパCHOの電圧指令値e*としてPWM制御回路に入力する。PWM制御回路では、三角波のキャリア信号X(例えば、周波数fc=1kHz)と前記電圧指令値e*を比較し、スイッチング素子Qa,Qbのゲート信号ga,gbを与える。すなわち、
e*≧Xのとき、ga=1(gb=0)で、素子Qa:オン(Qb:オフ)
e*<Xのとき、gb=1(ga=0)で、素子Qb:オン(Qa:オフ)
となる。
【0442】
Ie*>Ieとなった場合、偏差εeは正の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を増やす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が上昇し、充電電流Ieを増加させる。逆に、Ie*<Ieとなった場合、偏差εeは負の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を減らす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が低下し、充電電流Ieを減少させる。このようにして、定常的に、Ie*=Ieとなるように制御される。電流指令値Ie*を負にすれば、エネルギー蓄積装置EDLCから放電電流Ie(図の矢印と反対向き)を流すことができる。
【0443】
エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを用いた場合、その蓄積エネルギーは、印加電圧Veの値に関係する。すなわち、キャパシタ容量をCeとした場合、蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となる。ヒステリシス特性を持つ比較器HYSは、電圧Veが設定値Ve1を超えた場合には、出力信号「1」を発生し、切換え回路AS1を接点「1」に切り換える。逆に、電圧Veが設定値Ve2(<Ve1)より小さくなった場合には、出力信号「0」を発生し、切換え回路AS1を接点「0」に切り換える。AS1の接点「0」には、前述の指令値Ie*=Pe/Veが入力され、回生運転時の充電電流指令が与えられる。また、接点「1」には、切り換え回路AS2からの信号が入力され、ゼロ又は放電電流指令が与えられる。
【0444】
図34は、図32の装置の運転特性の一例を示すもので、電車負荷で、列車が停止するまでの時間tに対する列車速度V,電気ブレーキ力F,及び回生電力PLを表す。ブレーキ力Fを一定と仮定した場合、回生電力PLは、PL=F×Vとなり、列車速度が低くなれば、回生電力PLも小さくなることを表している。
【0445】
負荷Loadからの回生電力PLが第1の設定値P1より小さい場合は、その全てを電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源に回生する。
【0446】
回生電力PLが第1の設定値P1より大きく、第2の設定値P2より小さい場合には、電圧形自励式電力変換器CNVによりP1だけ電源SUPに回生し、残りの電力(PL−P1)をエネルギー蓄積装置EDLCに充電する。
【0447】
この第1の設定値P1を所内負荷AC−Loadが消費する電力程度に合わせることにより、より効率的に電気料金を節約することが可能となる。
【0448】
さらに、回生電力PLが第2の設定値P2より大きくなった場合には、開閉器SWを投入し、抵抗装置Rにより電力PRを消費させ、残りの電力(PL−PR)を電圧形自励式電力変換器CNV及びエネルギー蓄積装置EDLCにより回生する。この場合でも、まず、P1だけ自励式電力変換装置CNVにより電源SUPに回生し、最後に残った分(PL−PR−P1)をエネルギー蓄積装置EDLCに回生する。
【0449】
すなわち、電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源SUPに回生される電力はほぼ一定しており、当該電力変換器CNVの容量は設定値P1分だけ用意すればよい。
【0450】
また、抵抗装置Rによって消費する電力はPRであるが、回生電力PLが第2の設定値P2を超えたときだけ開閉器SWが投入されるので、時間的には短く、熱容量としては大きなものは必要ない。
【0451】
さらに、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄積される電力は、(PL−P1)又は(PL+PR−P1)となり、双方向チョッパCHOの容量が低減でき、同時に、エネルギー蓄積装置EDLCの蓄積容量も低減することが可能となる。。
【0452】
停止直前では、車両速度Vが低くなるため、電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源SUPにもどす電力が小さくなるので、そのときには、EDLCに蓄えたエネルギーを放出することにより、電源への回生電力が一定に保つことができる。
【0453】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、電源SUPへの回生電力が安定化され、電圧形自励式電力変換器CNVの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置EDLCの蓄積容量も低減することが可能となる。
【0454】
(第26実施形態:請求項26に対応)
第26実施形態の電力変換装置は、第25実施形態の電力変換装置におけるエネルギー蓄積装置EDLCを、エネルギー吸収の要求がない時に、蓄積されたエネルギーを放出するように前記双方向チョッパCHOを制御している。
【0455】
図33において、比較器COMは、負荷電流ILを入力し、IL>0(力行運転)で「1」を出力し、IL<0(回生運転)で「0」を出力する。切り換え回路AS2は、比較器COMからの信号が「0」又は「1」のとき、それぞれ接点「0」又は「1」に接続する。AS2の接点「0」にはゼロ電流指令が与えられ、接点「1」には一定値指令−Ieo*(放電)が与えられる。
【0456】
すなわち、エネルギー蓄積装置EDLCの電圧Veが高くなり、Ve>Ve1となった場合、切り換え回路AS2の出力が電流指令Ie*を与える。そのとき、負荷電流ILが負の場合(回生運転)、前記電流指令値Ie*=0として、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電を止める。負荷電流ILが正の場合(力行運転)、前記電流指令値として、−Ieo*(放電指令)を与えてEDLCの蓄積エネルギーを放出する。このとき、蓄積エネルギーの有効利用が図れる。次の回生要求が来るまでに、EDLCの蓄積エネルギーを下げればよいので、前記設定値−Ieo*(放電指令)をあまり大きくする必要は無い。
【0457】
IL<0で、Ve>Ve1の場合、Ie*=0が与えられ、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電は無く、回生電力は電圧形自励式電力変換器CNVを介して、交流電源SUPへ電力回生される。
【0458】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、エネルギー蓄積装置EDLCの貯蔵容量をむやみに大きくすることなく、回生失効の防止とエネルギーの有効利用が図れ、経済的な電力変換装置を提供できる。
【0459】
(第27実施形態:請求項27に対応)
第27実施形態の電力変換装置は、第25及び第26実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記電源電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、入力電流Icを制御し且つ前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように制御している。
【0460】
電圧形自励式電力変換器CNVは、交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、その交流側出力電圧Vcの電源電圧Vsに対する位相角φを制御することにより、入力電流Icを制御する。
【0461】
パルスパターンを固定すると、直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、交流リアクトルLs(又は変圧器TRのもれインダクタンス)に印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Ic=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
【0462】
電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。ちなみに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Icの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2又は、π−φ/2となり、入力力率は、cos(φ/2)となる。また、入力電流Icと電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2又は、π+φ/2となり、変換器力率は、cos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Icと交流リアクトルLsの値に依存する。位相角φは、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
【0463】
電圧形自励式電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流は小さくて済む。
【0464】
また、電力変換器CNVの交流側出力電圧の波高値を一定にして位相角φだけを制御するため、変換器の電圧利用率(交流出力電圧の実効値/直流電圧)が高くできる。すなわち、変圧器TRの2次電圧を高くできるため、出力容量が同じならば、変換器の電流容量を小さくでき、自己消弧素子の電流容量の小さいもので済む。
【0465】
回生運転時も電源力率はほぼ1に制御され、同様に自己消弧素子のスイッチングを入力電流Icのゼロクロス付近で行うことにより、素子のしゃ断電流は小さく抑えることができる。故に、スイッチング損失は大幅に軽減され、しゃ断電流の小さい自己消弧素子で電圧形自励式電力変換器CNVを構成できるようになり、経済的な装置を提供できる。
【0466】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0467】
(第28実施形態:請求項28に対応)
第28実施形態の電力変換装置は、第27実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該変換器CNVの交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°以内で、スイッチングを行うようにしている。
【0468】
本実施形態の電力変換装置によれば、1パルスで動作する3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNVの交流側線間電圧は、直流電圧Vdに対し、電気角120°期間(+Vd),電気角120°期間(−Vd)の矩形波電圧となり、残りの期間(電気角60°が2回)はゼロ電圧を発生する。3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みを小さくできる。また、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記1パルス動作でのゼロ電圧発生期間(電気角60°)の半分を利用してスイッチングが行われ、他の相のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0469】
(第29実施形態:請求項29に対応)
第29実施形態の電力変換装置を、図35を参照して説明する。
【0470】
図35は、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0471】
本実施形態の電力変換装置において、手抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0472】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2又はエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0473】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該回生電力P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0474】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。例えば、エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを使った場合、その蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となり、印加電圧Veの2乗に比例する。
【0475】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0476】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0477】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、3相変圧器TRの1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されたものを用いる。
【0478】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0479】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0480】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0481】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0482】
以上は、2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0483】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減とエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0484】
(第30実施形態:請求項30に対応)
第30実施形態の電力変換装置を、図36を参照して説明する。
【0485】
図36において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0486】
本実施形態の電力変換装置において、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0487】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0488】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0489】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器SWを設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減とエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0490】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0491】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0492】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、Δ/Δ結線の3相変圧器TR1とΔ/Y結線の3相変圧器TR2が使われる。
【0493】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0494】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器CNV1,CNV2間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧Vdの値と前記2台の変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2(又は交流リアクトルLs1,Ls2)によってほぼ決定される。
【0495】
図35のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、交流リアクトルLs2,Ls1がない場合、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs2,Ls1を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0496】
本実施形態のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0497】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0498】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0499】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。
【0500】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0501】
以上は、2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0502】
(第31実施形態:請求項31に対応)
第31実施形態の電力変換装置を、図37を参照して説明する。
【0503】
図37において、3相交流電源SUPに1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成された2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。
【0504】
本実施形態の電力変換装置において、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0505】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0506】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0507】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器SWを設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0508】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0509】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0510】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用意し、1次巻線を直列接続し、電気角30°の位相差を持たせた2次巻線を有する2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、直列多重運転するように構成している。
【0511】
ここで、変圧器TR1は1次巻線がオープンスター、2次巻線がΔ結線となっており、変圧器TR2はΔ/Δ結線されている。3相電源SUPのR相端子は、変圧器TR1の1次R相巻線の1つの端子に接続され、1次R相巻線のもう1つの端子(中点側)が変圧器TR2の1次R相端子接続される。S相,T相も同様である。すなわち、変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0512】
この装置では、2台の変圧器のもれインダクタンスを利用することにより、交流リアクトルLs1,Ls2を省略することもできる。もちろん、外部に交流リアクトルLs1,Ls2を設けても原理的には同じになる。
【0513】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する各変換器出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルの和Ls=Ls1+Ls2の和に印加される電圧が変化し、入力電流Ic(Ir,Is,It)を制御することができる。この装置では、2台の変圧器TR1とTR2が1次側で直列接続されているので、2台の電力変換器CNV1,CNV2の入力電流は同じになり、高調波の少ない電流となる。また、多重化により、その入力電流Icは、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0514】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0515】
以上は、2台の電力変換装置を用いた例を示したが、3台以上の電力変換装置を用いて直列多重運転できることは言うまでもない。
【0516】
本実施形態の電力変換装置によれば、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流Icの高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流の高調波成分を低減することができ、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御パルス数を少なくできる利点がある。また、3相変圧器のもれインダクタンス分を利用することにより、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、電力回生が可能で、高効率・低コストな電力変換装置を提供することができる。
【0517】
(第32実施形態:請求項32に対応)
第32実施形態の電力変換装置を、図38を参照して説明する。
【0518】
図38において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2と、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadはからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0519】
本実施形態の電力変換装置において、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0520】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2から供給される。
【0521】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0522】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器SWを設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0523】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ieを制御する。
【0524】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0525】
2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2用い、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成している。本実施形態では、変圧器の1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されている。すなわち、変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0526】
電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2は、直流平滑コンデンサCd1及びCd2に印加される電圧Vd1,Vd2が指令値(Vd*/2)にそれぞれ一致するように制御する。
【0527】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流Ic1,Ic2を制御する。
【0528】
2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、定常状態では直流電圧Vd1及びVd2がほぼ同じになり、有効電流指令値Iq1*と、Iq2*がほぼ等しくなるので、入力電流Ic1,Ic2の波高値はほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない運転ができる。3組以上の電力変換装置を組み合わせて多重運転した場合には、変圧器TRの1次電流リプルをさらに低減することができる。
【0529】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は、変圧器TRのもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0530】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φ1,φ2を遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φ1,φ2を進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0531】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、それぞれ直流平滑コンデンサCd1,Cdnに印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。
【0532】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0533】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0534】
(第33実施形態:請求項33に対応)
第33実施形態の電力変換装置を、図39を参照して説明する。
【0535】
図39において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角で30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2と、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0536】
変圧器TR1はΔ/Δ結線の3相変圧器、変圧器TR2はΔ/Y結線の3相変圧器で、各2次側電圧は電気角で30°の位相差を持っている。3相ブリッジ結線された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の交流側端子は変圧器TR1の2次巻線に接続され、また、3相ブリッジ結線された第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は変圧器TR2の2次巻線に接続されている。さらに、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、直流側で直列接続するように構成している。
【0537】
抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0538】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2から供給される。
【0539】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0540】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0541】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ieを制御する。
【0542】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0543】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2を制御している。
【0544】
交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧Vdの高圧化、及び交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器CNV1,CNV2毎に変圧器TR1,TR2を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0545】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs1,Ls2がない場合、直流電圧Vdの値と前記変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0546】
図38の装置のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、前記変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs1,Ls2を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルLs1,Ls2の分だけコストは高くなってしまう。
【0547】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs1,Ls2無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0548】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vd1及びVd2が一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また多重化により、その合成入力電流Icは歪みの少ない波形に制御できる。
【0549】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0550】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0551】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、各直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。
【0552】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0553】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0554】
(第34実施形態:請求項34に対応)
第34実施形態の電力変換装置は、第29〜第33実施形態の電力変換装置におけるn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、各電力変換器CNV1〜CNVnの交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うようにしている。
【0555】
本実施形態の電力変換装置によれば、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnを多重化して、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0556】
また、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0557】
(第35実施形態:請求項35に対応)
第35実施形態の電力変換装置は、第29〜第34実施形態の電力変換装置におけるエネルギー蓄積装置EDLCを、負荷装置Loadからの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御し且つ抵抗装置Rの開閉器SWは、負荷装置Loadからの回生電力が第2の設定値を超えた場合に投入するように制御している。
【0558】
本実施形態の電力変換装置において、エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生電力が第1の設定値P1を超えた場合に、その超過エネルギーを吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0559】
電気鉄道の変電所などでは、電圧形自励式電力変換器CNVにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内負荷(高圧配電負荷)AC−Loadに供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0560】
そのため、所内負荷AC−Loadが定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置EDLCは、前記負荷装置LOADからの回生電力が第1の設定値P1を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが授受する電力は前記設定値P1に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の消費電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0561】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけをn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnから供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えたエネルギーを前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnにより、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置EDLCの容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。これにより、小さな容量の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnと、小さな容量のエネルギー蓄積装置EDLCで、回生失効を防止でき、経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0562】
一方、開閉器SWを負荷装置Loadからの回生電力が第2の設定値P2を超えた場合に投入することにより、抵抗装置Rを前記直流平滑コンデンサCdに並列接続する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVn及び双方向チョッパCHOが回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置Rに電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0563】
(第36実施形態:請求項36に対応)
第36実施形態の電力変換装置は、第29〜第35実施形態の電力変換装置における抵抗装置R及び開閉器SWを、複数個に分割し、負荷装置Loadからの回生電力に応じて、投入個数を変えている。
【0564】
本実施形態の電力変換装置においては、複数個の抵抗装置R1〜Rnと、それぞれに直列接続された複数個の開閉器SW1〜SWnを用意し、回生電力の大きさに応じて、その投入個数を変えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御すべき電力を小さくすることが可能となる。例えば、回生電力が、0〜3000kWまで連続的に変化する場合、500kWの抵抗器を5台用意し、順次投入台数を増やすことにより、段階的に回生電力を消費することができる。それを連続的に制御するには、500kWの電圧形自励式電力変換器を設置すればよい。抵抗装置Rが無い場合には、3000kWの電圧形自励式電力変換器が必要であったものが、5分割された抵抗装置R1〜R5を設置することにより、電圧形自励式電力変換器の容量を1/6に低減できる。
【0565】
【発明の効果】
以上のように、本実施形態の電力変換装置によれば、電力回生可能な電圧形自励式電力変換器と、エネルギー蓄積装置EDLCあるいは抵抗器と組み合わせることにより、瞬間的な回生大電力を吸収又は蓄積し、その蓄積エネルギーの有効利用を図るとともに前記電圧形自励式電力変換器の容量低減及び前記エネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を図ることが可能となる。
【0566】
また、当該電圧形自励式電力変換器のスイッチング周波数を高くすることなく入力電流歪みを小さくし、変換器の電圧利用率が高く、スイッチング素子の最大しゃ断電流が小さく、高効率,高力率で電力回生可能な交流/直流電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電力変換装置の実施形態を示す構成図。
【図2】図1の装置の双方向チョッパの制御回路の実施形態を示す構成図。
【図3】図1の装置の動作を説明するための運転特性図。
【図4】本発明装置の具体的な主回路構成図と、当該装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図5】本発明装置の制御動作を説明するための交流側等価回路を示す図。
【図6】本発明装置の制御動作を説明するための交流側電圧・電流ベクトル図。
【図7】本発明装置の位相制御動作を説明するための制御ブロック図。
【図8】本発明装置の位相制御動作(1パルス)を説明するためのタイムチャート図。
【図9】本発明装置の制御動作を説明するための1パルス力行運転時の各部動作波形図。
【図10】本発明装置の制御動作を説明するための1パルス回生運転時の各部動作波形図。
【図11】本発明装置の別の位相制御動作(3パルス)を説明するためのタイムチャート図。
【図12】本発明装置の別の制御動作を説明するための3パルス力行運転時の各部動作波形図。
【図13】本発明装置の別の位相制御動作(5パルス)を説明するためのタイムチャート図。
【図14】本発明装置の別の制御動作を説明するための5パルス力行運転時の各部動作波形図。
【図15】本発明装置の動作(5パルス)を説明するための交流側出力電圧波形図。
【図16】本発明の電力変換装置の別の実施形態を示す構成図。
【図17】図16の装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図18】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図19】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図20】図19の装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図21】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図22】図21の装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図23】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図24】本発明装置の制御動作を説明するための別の交流側出力電圧波形図。
【図25】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図26】図25の装置の動作を説明するための特性図。
【図27】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図28】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図29】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図30】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図31】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図32】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図33】図32の装置の双方向チョッパの制御回路の実施形態を示す構成図。
【図34】図32の装置の動作を説明するための運転特性図。
【図35】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図36】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図37】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図38】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図39】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図40】従来の電力変換装置の構成図。
【図41】従来の電力変換装置の別の構成図。
【符号の説明】
SUP…交流電源、TRx…高圧配電用変圧器、AC−Load…高圧配電負荷(所内負荷)、TR,TR1,TR2…変換器用変圧器、Ls,Ls1,Ls2…交流リアクトル、CNV,CNV1,CNV2…電圧形自励式電力変換器、Cd,Cd1,Cd2…直流平滑コンデンサ、CHO,CHO1,CHO2…双方向チョッパ、EDLC,EDLC1,EDLC2…エネルギー蓄積装置EDLC、SW,SW1,SW2…開閉器、R,R1,R2…抵抗装置、Load…負荷、Qa,Qb…スイッチング素子、Da,Db…還流ダイオード、Le…直流リアクトル、ACR1,ACR2…電流制御回路、AVR…直流電圧制御回路、REF…充放電電流指令発生器、PHC…位相制御回路、PWM…パルス幅変調制御回路、LIM…リミッタ回路、AS1,AS2…切り換え回路、Ke…比例定数、COM…レベル比較器、HYS…ヒステリシス回路、SWC…開閉器制御回路、CAL…演算回路、C1,C2,C11,C12,C21,C22,C3…比較器、AD,AD1,AD2,ADp…加算器、ADr,ADs,ADt…加減算器、PTN1〜PTN3…パターン発生器、Gv(S),Gv1(S),Gv2(S)…電圧制御補償回路、Gi(S),Gi1(S),Gi2(S),Gie(S)…電流制御補償回路、FF…フィードフォワード補償器、Z,Z1,Z2…3相/dq座標変換回路、PLL,PLL1,PLL2…電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2…位相制御回路。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エネルギー蓄積装置及び/又は抵抗装置と、電力回生可能な交流/直流電力変換器とを組み合わせた電力変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気鉄道直流き電システム等では、3相ブリッジ結線された電力用ダイオード整流器により3相交流電力を直流電力に変換する方式が多く採用されている。この方式は過負荷耐量に優れ、変換器コストが安くできる利点を有する。しかし、電車が回生ブレーキをかけたときにその電力を交流電源側に回生できず、しばしば回生失効を起こすという問題点があった。また、負荷電流依存性があり、直流き電電圧が負荷によって大きく変動する欠点があった。
【0003】
図40は、従来の電気鉄道き電システムにおける電力変換装置の一例を示すもので、3相交流電源SUPに変圧器TRを介してダイオード整流器RECが接続され、このダイオード整流器RECに抵抗チョッパ装置R−CHOが接続され、該抵抗チョッパ装置R−CHOに負荷装置Loadが接続された構成となっている。
【0004】
抵抗チョッパ装置R−CHOは、スイッチング素子Qと抵抗器R及び還流ダイオードで構成されており、その制御回路としては、図40に示すように、比較器C、電圧制御回路Gv(S)及びパルス幅変調制御回路PWMからなる。
【0005】
ダイオード整流器RECは、3相交流を直流に変換するもので、負荷装置Loadが力行運転しているときに、その負荷電流ILを供給する。一般に、負荷装置Loadは、複数の列車からなり、力行車両もあれば、回生車両もある。回生車両からの回生電力が力行車両の消費電力より小さければ、電力の不足分はダイオード整流器から供給され、あまり問題なく運転できる。しかし、回生電力が力行車の消費電力より大きくなった場合、直流き電電圧Vdが上昇し、やがて回生失効に至る。
【0006】
そこで、直流電圧Vdが上がってきた場合、抵抗チョッパR−CHOを動作させ、余った回生電力を抵抗器Rに消費させる。すなわち、指令値Vd*に対し、直流電圧Vdが大きくなった場合、比較器Cの出力εv=−Vd*+Vdは正の値となり、電圧制御回路Gv(s)により増幅され、PWM制御回路の指令値e*を増加させる。その結果、抵抗器Rに印加される電圧が大きくなり、流れる電流IRが増加し、直流電圧Vdを下げることができる。余った回生電力が小さくなると、PWM制御回路の指令値e*が小さくなり、抵抗器Rに流れる電流IRも小さくなる。
【0007】
以上のように、図40に示した従来の装置でも回生失効を防止することができるが、あまった回生電力を全て抵抗器に熱エネルギーとして消費させるため、運転効率が悪くなり、地球環境への影響からみても望ましくない。また、回生電力を消費するための抵抗チョッパ装置R−CHOの容量も大きくなり、電力変換装置としてのコストも高くなる等の問題があった。
【0008】
図41は、従来の電気鉄道き電システムにおける電力変換装置の別の例を示すもので、特許文献1に開示されている。図41に示すように、3相交流電源SUPに変圧器TRを介してダイオード整流器RECが接続され、このダイオード整流器RECに双方向チョッパ装置CHO及びエネルギー蓄積装置EDLCが接続され、該双方向チョッパ装置CHOには直流コンデンサ電車Cdが接続され、また負荷装置Loadが接続された構成となっている。
【0009】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qb、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC、例えば、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等への充放電電流Ieを制御する。その制御回路としては、図41に示すように、比較器C1,C2、電圧制御回路Gv(S)、電流制御回路Gi(S)及びパルス幅変調制御回路PWMが用意されている。
【0010】
ダイオード整流器RECは、3相交流を直流に変換するもので、負荷装置Loadが力行運転しているときに、その負荷電流ILを供給する。一般に、負荷装置Loadは、複数の列車からなり、力行車両もあれば、回生車両もある。回生車両からの回生電力が力行車両の消費電力より小さければ、電力の不足分はダイオード整流器から供給され、あまり問題なく運転できる。
【0011】
回生電力が力行車の消費電力より大きくなり、直流き電電圧Vdが上昇した場合、双方向チョッパCHOを動作させ、余った回生電力をエネルギー蓄積装置EDLCに蓄える。
【0012】
すなわち、電圧指令値Vd*に対し直流電圧Vdが大きくなった場合、比較器C1の出力εv=−Vd*+Vdは正の値となり、電圧制御回路Gv(s)により増幅され、電流指令値Ie*を増加させる。比較器C2により、当該指令値Ie*とエネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流の検出値Ieを比較し、その偏差εi=Ie*−Ieを次の電流制御回路Gi(S)で増幅して、PWM制御回路の指令値e*を増加させる。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が大きくなり、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流Ieが増加し、直流電圧Vdを下げることができる。余った回生電力が小さくなると、PWM制御回路の指令値e*が小さくなり、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流Ieも小さくなる。結果的に、Vd=Vd*に制御され、回生失効を防止することができる。
【0013】
図41に示す特許文献1に示す装置では、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えられたエネルギーは、力行車の消費電力が大きくなったときに利用し、回生電力の有効利用ができる。しかし、電車の回生エネルギーは非常に大きく、そのエネルギーを蓄えるエネルギー蓄積装置EDLCの容量も相当大きくなる。最近は、寿命が長く、急速充放電が可能な電気二重層キャパシタがエネルギー蓄積装置EDLCとして注目されているが、容量の大きいものとなるとコストが高く、不経済なシステムとなってしまう。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−260719
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来装置では、余った回生電力を一時蓄え、必要なときにそのエネルギーを放出して有効利用を図ることができるが、エネルギー蓄積装置EDLCの容量が大きくなり、不経済なシステムとなる問題があった。また、交流電源へ電力回生が可能な電力変換器として、従来、パルス幅変調制御による自励式変換器(PWMコンバータと呼ぶ)があるが、入力電流リプルを小さくするにはスイッチング周波数(PWM制御のキャリア周波数)を高くする必要があり、変換器損失が大きくなる。また、変換器の電圧利用率(交流出力電圧/直流電圧)が低いため、変換器トランスの2次電圧が上げられず、その分変換器の電流容量を上げなければならない等の問題があった。
【0016】
本発明の目的は、瞬間的な回生大電力を吸収又は蓄積して蓄積エネルギーの有効利用を図るとともに前記電力変換器の容量低減を図り得又は変換器の電圧利用率が高く、スイッチング素子の最大しゃ断電流が小さく、高効率,高力率で電力回生可能な電力変換装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電力変換装置(請求項1)は、交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して接続された電圧形自励式電力変換器と、この電圧形自励式電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合の超過エネルギーを、前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0018】
電圧形自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように、前記交流電源から供給される電流を制御する。負荷装置は、この直流平滑コンデンサを電圧源とするもので、例えば、電車負荷などがある。力行運転で、当該負荷装置が電力を消費すると、直流電圧が下がるので、指令値に一致させるように上記入力電流を増加させる。定常的に、負荷の消費電力と電源から供給する電力はつりあい、直流電圧も検出値=指令値に制御される。逆に、回生運転では、負荷側から電力が戻され、直流電圧が上がるので、入力電流の位相を反転させ、有効電力を交流電源に回生する。
【0019】
このとき、エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0020】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0021】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。これにより、自励式電力変換器が授受する電力は前記設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0022】
本発明装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置に蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけを自励式電力変換器から供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置に蓄えたエネルギーを自励式電力変換器により、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置の容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。これにより、小さな容量の自励式電力変換器と、小さな容量のエネルギー蓄積装置で、回生失効を防止でき、経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0023】
本発明に係る電力変換装置(請求項5)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御することで前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0024】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0025】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0026】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0027】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0028】
本発明に係る電力変換装置(請求項6)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0029】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0030】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0031】
先の電力変換装置(請求項5)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0032】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0033】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0034】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0035】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0036】
本発明に係る電力変換装置(請求項7)は、3相交流電源に対し1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0037】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0038】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する各変換器出力電圧の和の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスの和に印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0039】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の和の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0040】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、1次巻線を直列接続し、適宜の位相差を持たせた2次巻線を有するn個の3相変圧器を用いて、直列多重運転するように構成したもので、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流のリプルを抑制することができ、自励式電力変換器の自己消弧素子の最大遮断電流を小さくできる利点がある。また、変換器間に横流が流れないので、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能な、高効率・低コストの大容量電力変換装置を提供することができる。
【0041】
本発明に係る電力変換装置(請求項8)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記n個の直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0042】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0043】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。
【0044】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、交流リアクトル(又は、変圧器のもれインダクタンス)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を調整することができる。自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0045】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0046】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0047】
本発明に係る電力変換装置(請求項9)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記n個の直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0048】
エネルギー蓄積装置は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0049】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器毎に変圧器を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0050】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0051】
先の電力変換装置(請求項8)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0052】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0053】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0054】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0055】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0056】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0057】
本発明に係る電力変換装置(請求項13)は、交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器と、この電圧形自励式電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0058】
電圧形自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように、前記交流電源から供給される電流を制御する。負荷装置は、この直流平滑コンデンサを電圧源とするもので、例えば、電車負荷などがある。力行運転で、当該負荷装置が電力を消費すると、直流電圧が下がるので、指令値に一致させるように上記入力電流を増加させる。定常的に、負荷の消費電力と電源から供給する電力はつりあい、直流電圧も検出値=指令値に制御される。逆に、回生運転では、負荷側から電力が戻され、直流電圧が上がるので、入力電流の位相を反転させ、有効電力を交流電源に回生する。
【0059】
このとき、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。
【0060】
また、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0061】
本発明に係る電力変換装置(請求項17)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0062】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0063】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0064】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0065】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0066】
本発明に係る電力変換装置(請求項18)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0067】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0068】
先の電力変換装置(請求項17)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0069】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0070】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0071】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0072】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0073】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0074】
本発明に係る電力変換装置(請求項19)は、3相交流電源に1次巻線が各相毎に直列接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0075】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する各変換器出力電圧の和の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスの和に印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0076】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の和の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0077】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、1次巻線を直列接続し、適宜の位相差を持たせた2次巻線を有するn個の3相変圧器を用いて、直列多重運転するように構成したもので、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流のリプルを抑制することができ、自励式電力変換器の自己消弧素子の最大遮断電流を小さくできる利点がある。また、変換器間に横流が流れないので、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能な、高効率・低コストの大容量電力変換装置を提供することができる。
【0078】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0079】
本発明に係る電力変換装置(請求項20)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0080】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。
【0081】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、交流リアクトル(又は、変圧器のもれインダクタンス)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を調整することができる。自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0082】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0083】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0084】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0085】
本発明に係る電力変換装置(請求項21)は、3相交流電源1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0086】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器毎に変圧器を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0087】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0088】
先の電力変換装置(請求項20)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0089】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0090】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0091】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0092】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0093】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0094】
また、前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置に電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、本発明装置によれば、抵抗装置を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0095】
本発明に係る電力変換装置(請求項25)は、交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器と、この電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御し、前記負荷装置からの回生電力が第2の設定値を超えた場合に前記抵抗装置の開閉器を投入するように制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0096】
電圧形自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように、前記交流電源から供給される電流を制御する。負荷装置は、この直流平滑コンデンサを電圧源とするもので、例えば、電車負荷などがある。力行運転で、当該負荷装置が電力を消費すると、直流電圧が下がるので、指令値に一致させるように上記入力電流を増加させる。定常的に、負荷の消費電力と電源から供給する電力はつりあい、直流電圧も検出値=指令値に制御される。逆に、回生運転では、負荷側から電力が戻され、直流電圧が上がるので、入力電流の位相を反転させ、有効電力を交流電源に回生する。
【0097】
このとき、エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0098】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータなどにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0099】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。これにより、自励式電力変換器が授受する電力は前記第1の設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0100】
回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0101】
本発明装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置に蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけを自励式電力変換器から供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置に蓄えたエネルギーを自励式電力変換器により、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置の容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。また、回生電力が一時的に増加した場合には、抵抗装置に回生電力の一部を消費させることにより、前記双方向チョッパやエネルギー蓄積装置の容量を抑えることができる。これにより、小さな容量の自励式電力変換器と、小さな容量の双方向チョッパと、小さな容量のエネルギー蓄積装置で、回生失効を防止とエネルギーの有効利用ができる経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0102】
本発明に係る電力変換装置(請求項29)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0103】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流1〜Icnを調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0104】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0105】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0106】
また、エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0107】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0108】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。これにより、自励式電力変換器が授受する電力は前記第1の設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0109】
回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0110】
本発明装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置に蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけを自励式電力変換器から供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置に蓄えたエネルギーを自励式電力変換器により、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置の容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。また、回生電力が一時的に増加した場合には、抵抗装置に回生電力の一部を消費させることにより、前記双方向チョッパやエネルギー蓄積装置の容量を抑えることができる。これにより、小さな容量の自励式電力変換器と、小さな容量の双方向チョッパと、小さな容量のエネルギー蓄積装置で、回生失効を防止とエネルギーの有効利用ができる経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0111】
本発明に係る電力変換装置(請求項30)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0112】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0113】
先の電力変換装置(請求項29)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0114】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0115】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0116】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0117】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0118】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0119】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0120】
本発明に係る電力変換装置(請求項31)は、3相交流電源に1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0121】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する各変換器出力電圧の和の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスの和に印加される電圧が変化し、入力電流を調整することができる。また、多重化により、その入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0122】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の和の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0123】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、1次巻線を直列接続し、適宜の位相差を持たせた2次巻線を有するn個の3相変圧器を用いて、直列多重運転するように構成したもので、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流のリプルを抑制することができ、自励式電力変換器の自己消弧素子の最大遮断電流を小さくできる利点がある。また、変換器間に横流が流れないので、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能な、高効率・低コストの大容量電力変換装置を提供することができる。
【0124】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0125】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0126】
本発明に係る電力変換装置(請求項32)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0127】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。
【0128】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、交流リアクトル(又は、変圧器のもれインダクタンス)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を調整することができる。自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0129】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0130】
自励式変換器を各直流平滑コンデンサに印加される電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0131】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0132】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0133】
本発明に係る電力変換装置(請求項33)は、3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする。
【0134】
本装置は、電圧形自励式電力変換器を複数台(n個)用意し、各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧の高圧化、及び交流電源から供給される入力電流の高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器毎に変圧器を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0135】
n個の電圧形自励式電力変換器を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧の値と前記変圧器のもれインダクタンス値によってほぼ決定される。
【0136】
先の電力変換装置(請求項32)のように、1台の変圧器に複数の2次巻線を設けて、それぞれに自励式電力変換器を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器のもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルを挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0137】
本発明のように、各変換器毎に、変圧器を分けることにより、各変圧器の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトル無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0138】
電圧形自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧に同期したスイッチングを行う。直流電圧が一定ならば、自励式変換器の交流出力電圧の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧に対する出力電圧の位相角を変えることより、変圧器のもれインダクタンスに印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流を調整することができる。また、多重化により、その合成入力電流は、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0139】
電源電圧に対する各変換器の出力電圧の位相角を遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力が増加する。逆に位相角を進み方向に増やすと、有効電力が交流電源に回生される。
【0140】
自励式変換器を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流のゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式変換器を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0141】
自励式変換器を、直流平滑コンデンサに印加されるそれぞれの電圧がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0142】
エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御する。すなわち、回生エネルギーの一部を吸収・蓄積し、力行運転時に蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記電圧形自励式電力変換器が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0143】
また、回生電車からの回生電力がさらに大きくなり、第2の設定値を超えた場合には、前記抵抗装置の開閉器を投入し、回生電力の一部を消費させる。これにより、エネルギー蓄積装置の電力を授受する双方向チョッパの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置そのものの容量も低減することが可能となる。これにより、全体システムのコストを低減でき、経済的な電力変換装置を提供できる。また、この抵抗装置を動作させる時間はわずかであり、短時間定格で設計された抵抗装置を用意すればよく、装置の小型軽量化を図ることができる。
【0144】
請求項34に対応する電力変換装置は、請求項29〜33に記載された電力変換装置において、前記n個の電圧形自励式電力変換器を、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該各変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内で、スイッチングを行うように制御している。
【0145】
n個の電圧形自励式電力変換器の交流側線間電圧は、多重化により、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器を、3パルス,5パルス,・・と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0146】
また、交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0147】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態:請求項1に対応)
第1実施形態の電力変換装置を、図1を参照して説明する。
【0148】
図1に示すように、3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介して接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、この電圧形自励式電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う構成である。また、3相交流電源SUPには変圧器TRxを介して所内負荷AC−Loadが接続されている。
【0149】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。例えば、エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを使った場合、その蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となり、印加電圧Veの2乗に比例する。
【0150】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。負荷装置Loadは、例えば、電車負荷で、力行及び回生運転が行われる。所内負荷AC−Loadは、電鉄変電所内の負荷で、例えば、照明やエアコン等がある。
【0151】
電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、図1に示すように、直流電圧制御回路AVR,入力電流制御回路ACR1及び位相制御回路PHCなどが用意される。なお、Zは3相電流をdq座標軸の電流に変換する座標変換器である。
【0152】
また、双方向チョッパCHOの制御回路として、図1に示すように、電流指令発生器REF,充放電電流制御回路ACR2,パルス幅変調制御回路PWMが用意されている。
【0153】
以下、順に本実施形態装置の動作を説明する。
【0154】
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがほぼ一定になるように、入力電流Icを制御する。すなわち、直流電圧指令値Vd*と直流電圧検出値Vdを比較し、その偏差を増幅して入力電流Icの有効分の指令値Iq*を与える。入力電流Icは座標変換器Zにより、3相/dq軸変換され、そのq軸成分Iqが有効電流検出値となる。電流制御回路ACR1により、電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差を増幅して、位相制御回路PHCに位相制御信号e*を与える。位相制御回路PHCは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを前記指令値に従って制御するもので、位相角φ(遅れ)を大きくすることにより、入力電流Icの有効分Iqが増加し、交流電源SUPから負荷装置Loadに電力が供給される。逆に、位相角φを負(進み)方向に増やすと、入力電流Icの有効分Iqは負の値となり、負荷装置Loadからの回生電力を交流電源SUPにもどすことができる。もちろん、電圧形自励式電力変換器CNVをパルス幅変調制御することにより、直流電圧Vdがほぼ一定になるように入力電流Icを制御することもできる。
【0155】
一方、双方向チョッパCHOは、次のように制御される。エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieの指令値Ie*は、負荷電流ILと当該EDLCの印加電圧Veの値によって決定する。
【0156】
負荷電流ILが負(回生)で、その電流値が設定値Iaより小さい場合は、電圧形自励式電力変換器CNVによって、当該回生電力PLを交流電源SUPにもどす。IL>Iaとなった場合には、その差分(IL−Ia)の相当する電力(PL−Pa)だけ、エネルギー蓄積装置EDLCに充電するように電流指令値Ie*を与える。
【0157】
図2は、双方向チョッパCHOの制御回路構成実施形態を示す。
【0158】
図中、LIMはリミッタ回路、ADpは加減算器、Keは比例定数、AS1,AS2は切換え回路、COMはレベル比較器、HYSはヒステリシス特性を持つ比較器、Cは比較器、Gie(S)は電流制御回路、PWMはパルス幅変調制御回路をそれぞれ表す。
【0159】
まず、負荷電流ILと直流電圧Vdの積をとり、負荷電力PLを求め、リミッタ回路LIMを介して、交流電源SUPに回生する電力Paを求める。次に、加減算器ADpにより、Pe=Pa−PLを求め、Keで定数倍(1/Ve)することにより、充電電流指令値Ie*を与える。力行運転では、負荷電流ILは図の矢印の方向に流れ、負荷電力PLが正となる。PL>0の場合、リミット回路LIMは、そのまま、Pa=PLを出力する。従って、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−PL=0となる。回生運転では、負荷電流ILは図矢印と反対向きに流れ、負荷電力PLは負となる。PL<0の場合、リミット回路LIMは、設定値−PLOまでは、Pa=PLを出力する。従って、−PLO<PLでは、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−PL=0となる。しかし、−PLO>PLでは、Pa=−PLOとなり、電力指令値Peは、Pe=Pa−PL=−PLO−PL>0(充電)で与えられる。
【0160】
エネルギー蓄積装置EDLCの印加電圧をVeとした場合、充電電流指令値Ie*は、前記電力指令値Peに対し、Ie*=Pe/Veで与えられる。比較器C3により、当該電流指令値Ie*とエネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流検出値Ieを比較し、その偏差εe=Ie*−Ieを次の電流制御回路Gie(S)で増幅し、前記双方向チョッパCHOの電圧指令値e*としてPWM制御回路に入力する。PWM制御回路では、三角波のキャリア信号X(例えば、周波数fc=1kHz)と前記電圧指令値e*を比較し、スイッチング素子Qa,Qbのゲート信号ga,gbを与える。すなわち、
e*≧Xのとき、ga=1(gb=0)で、素子Qa:オン(Qb:オフ)
e*<Xのとき、gb=1(ga=0)で、素子Qb:オン(Qa:オフ)となる。
【0161】
Ie*>Ieとなった場合、偏差εeは正の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を増やす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が上昇し、充電電流Ieを増加させる。逆に、Ie*<Ieとなった場合、偏差εeは負の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を減らす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が低下し、充電電流Ieを減少させる。このようにして、定常的に、Ie*=Ieとなるように制御される。電流指令値Ie*を負にすれば、エネルギー蓄積装置EDLCから放電電流Ie(図の矢印と反対向き)を流すことができる。
【0162】
エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを用いた場合、その蓄積エネルギーは、印加電圧Veの値に関係する。すなわち、キャパシタ容量をCeとした場合、蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となる。ヒステリシス特性を持つ比較器HYSは、電圧Veが設定値Ve1を超えた場合には、出力信号「1」を発生し、切換え回路AS1を接点「1」に切り換える。逆に、電圧Veが設定値Ve2(<Ve1)より小さくなった場合には、出力信号「0」を発生し、切換え回路AS1を接点「0」に切り換える。AS1の接点「0」には、前述の指令値Ie*=Pe/Veが入力され、回生運転時の充電電流指令が与えられる。また、接点「1」には、切り換え回路AS2からの信号が入力され、ゼロ又は放電電流指令が与えられる。
【0163】
(第2実施形態:請求項2に対応)
第2実施形態の電力変換装置を、図2及び図3を参照して説明する。
【0164】
本実施形態においては、電力変換装置の主回路構成は第1実施形態と同様であり、制御回路が相違する。
【0165】
図2において、比較器COMは、負荷電流ILを入力し、IL>0(力行運転)で「1」を出力し、IL<0(回生運転)で「0」を出力する。切り換え回路AS2は、比較器COMからの信号が「0」又は「1」のとき、それぞれ接点「0」又は「1」に接続する。AS2の接点「0」にはゼロ電流指令が与えられ、接点「1」には一定値指令−Ieo*(放電)が与えられる。
【0166】
すなわち、エネルギー蓄積装置EDLCの電圧Veが高くなり、Ve>Ve1となった場合、切り換え回路AS2の出力が電流指令Ie*を与える。そのとき、負荷電流ILが負の場合(回生運転)、前記電流指令値Ie*=0として、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電を止める。負荷電流ILが正の場合(力行運転)、前記電流指令値として、−Ieo*(放電)を与えてEDLCの蓄積エネルギーを放出する。このとき、蓄積エネルギーの有効利用が図れる。次の回生要求が来るまでに、EDLCの蓄積エネルギーを下げればよいので、設定値−Ieo*(放電)をあまり大きくする必要は無い。
【0167】
IL<0で、Ve>Ve1の場合、Ie*=0が与えられ、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電は無く、回生電力は図1の電圧形自励式電力変換器CNVを介して、交流電源SUPへ電力回生される。これにより、エネルギー蓄積装置EDLCの貯蔵容量をむやみに大きくすることなく、回生失効の防止とエネルギーの有効利用が図れ、経済的な電力変換装置を提供できる。
【0168】
図3は、図1の装置の運転特性の一例を示すもので、電車負荷で、列車が停止するまでの時間tに対する列車速度V,電気ブレーキ力F,及び回生電力PLを表す。ブレーキ力Fを一定と仮定した場合、回生電力PLは、PL=F×Vとなり、列車速度が低くなれば、回生電力PLも小さくなることを表している。
【0169】
電圧形自励式電力変換器CNVを介して交流電源SUPに回生する電力Psは、ほぼ一定になるように制御し、残りの電力PL−Psをエネルギー蓄積装置EDLCに蓄える。すなわち、短時間の大きな回生電力はエネルギー蓄積装置EDLCに蓄えるようにし、また、長時間の小さな回生電力は電圧形自励式電力変換器CNVを介して交流電源SUPにもどすようにしている。停止直前では、車両速度Vが低くなるため、電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源SUPにもどす電力が小さくなるので、そのときには、EDLCに蓄えたエネルギーを放出することにより、電源への回生電力が一定に保つことができる。これにより、電源への回生電力が安定化され、電圧形自励式電力変換器CNVの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置EDLCの蓄積容量も低減することが可能となる。
【0170】
(第3実施形態:請求項3に対応)
第3実施形態の電力変換装置を、図4〜図10を参照して説明する。
【0171】
図4は、図1にて示した電力変換装置の具体的な主回路構成例と、電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路例とを示している。
【0172】
図4において、受電端子R,S,Tを持つ3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介し、自己消弧素子S1〜S6、高速ダイオードD1〜D6で構成される電圧形自励式電力変換器CNVが接続され、該電圧形自励式電力変換器CNVの直流側には直流平滑コンデンサCdが並列接続され、双方向チョッパCHO及びエネルギー蓄積装置EDLCを介して負荷装置Loadが接続されている。
【0173】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0174】
一方、電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、図4に示すように、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
【0175】
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷Loadが消費する直流電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ic(Ir,Is,It)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
【0176】
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、前記位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
【0177】
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流を制御する。
【0178】
図5は、本実施形態装置の電圧形自励式電力変換器CNVの制御動作を説明するための交流側等価回路を示す。また、図6はその電圧・電流ベクトル図を示す。
【0179】
図中、Vsは電源電圧,Vcは電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧,Icは入力電流、jωLs・Icは交流リアクトルLsによる電圧降下分(ただし、リアクトルLsの抵抗分は十分小さいものとして無視した)を表わす。ベクトル的に、Vs=Vc+jωLs・Icの関係がある。
【0180】
電源電圧Vsの波高値と電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの基本波波高値は大略一致するように合わせる。直流電圧Vdは負荷側からの要求で決まる場合が多く、前記パルスパターンを決めると、交流出力電圧Vcの基本波波高値は決まってしまう。そこで、電源側に変圧器TRを設置し、その2次電圧をVsとして、波高値を合わせる。
【0181】
入力電流Icは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを調整することにより、制御できる。すなわち、位相角φ=0とすると、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Icはゼロとなり、入力電流Icもゼロとなる。位相角(遅れ)φを増やしていくと、jωLs・Icの電圧が増加し、入力電流Icもその値に比例して増加する。入力電流ベクトルIcは、電圧jωLs・Icに対し電気角90°遅れており、電源電圧Vsに対しては、φ/2だけ遅れたベクトルとなる。従って、電源側から見た入力力率は、cos(φ/2)となる。
【0182】
一方、電圧形自励式電力変換器の交流出力電圧をVc′のように位相角φを進み方向に増やしていくと、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Icも負となり、入力電流はIc′のように、電源電圧Vsに対し(π−φ/2)の位相角となる。すなわち、電力Ps=Vs・Icは負となり、電力を電源に回生することができる。電源電圧Vsを基準にして、交流出力電圧Vcを図の破線に沿ってVc′の方向に回していくと、入力電流ベクトルIcは破線に沿ってIc′の方向に変化する。
【0183】
図4において、有効電流Iqは次のように制御される。
【0184】
Iq*>Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が増加し、入力電流Icを増加させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが増加し、やがてIq*=Iqとなって落ち着く。逆に、Iq*<Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が減少し又は負の値になり、入力電流Icを減少させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが減少し、やはりIq*=Iqとなって落ち着く。
【0185】
また、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは次のように制御される。
【0186】
Vd*>Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq*が増加し、上記のようにIq*=Iqに制御されるので、有効電力が交流電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給される。その結果、直流電圧Vdが増加し、Vd*=Vdとなるように制御される。
【0187】
逆に、Vd*<Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq*が減少し又は負の値となり、有効電力が直流平滑コンデンサCdから交流電源SUP側に回生される。その結果、直流電圧Vdが減少し、やはりVd*=Vdとなるように制御される。
【0188】
図4の装置では、負荷Loadがとる直流電流ILを検知し、その量に見合った有効電流を供給するようにフィードフォワード補償器FFで補償量IqFF=k1・ILを演算し、加算器ADに入力している。これにより、負荷が急変した場合、それに見合った入力電流(有効電流)Iqが供給され、直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdの変動を抑えている。
【0189】
図7は、図4の装置の位相制御回路PHC実施形態を示す。図中、ADr,ADs,ADtは加減算器、PTN1〜PTN3はパルスパターン発生器を示す。
【0190】
加減算器ADr,ADs,ADtは、位相信号θr,θs,θtから前記位相角指令値φ*を引き算し、新たな位相信号θcr,θcs,θctを作る。当該新たな位相信号θcr,θcs,θctは、0〜2πの周期関数で、電源周波数に同期して変化する。
【0191】
パルスパターン発生器PTN1〜PTN3は、前記新たな位相信号θcr,θcs,θctに対して、一定のパルスパターンとなるようにゲート信号g1〜g6を発生する。
【0192】
パルスパターン発生器PTN1は、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンをテーブル関数として記憶したもので、図8に1パルス動作時の波形を示す。
【0193】
図8中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。すなわち、入力θcrに対し、次のようなゲート信号g1(又はg4)を出力する。
【0194】
0≦θcr<πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
π≦θcr<2πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
電圧形自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。直流電圧Vdが一定ならば、交流出力電圧Vcrの振幅値は一定となる。Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φだけ遅れている。S相,T相も同様に与えられる。
【0195】
図9は、図8のパルスパターンで電圧形自励式電力変換器CNVを動作させた場合の力行運転時のR相各部動作波形を示す。なお、説明の便宜上、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
【0196】
電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ遅れている。また、入力電流Irは電源電圧Vrに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、それぞれ表わしている。以下に、そのときの動作を図4を用いて説明する。
【0197】
入力電流Irが負から正に変るまでは高速ダイオードD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irは自己消弧素子S4を介して流れるようになる。次に、素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。入力電流Irが再び反転するまでその電流は高速ダイオードD1に流れる。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
【0198】
自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2)となる。例えば、φ=20°の場合、Imax=0.174×Icmとなる。すなわち、自己消弧素子のしゃ断電流が小さいものを用意すればよく、コストの安い電力変換装置を提供できる。
【0199】
図10は、回生運転時の動作波形を示すもので、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流をそれぞれ表わしている。変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ進んでいる。また、入力電流Irは電源電圧の反転値−Vrに対し、位相角(φ/2)だけ進んで流れる。
【0200】
入力電流Irが負で、自己消弧素子S1がオン(S4はオフ)のときは、入力電流Irは素子S1を介して流れる。素子S1をオフ(S4をオン)すると、電流Irは高速ダイオードD4を介して流れる。入力電流Irが反転すると、自己消弧素子S4に電流が流れ、上記と同様に素子S4をオフすることにより、高速ダイオードD1に電流が移る。
【0201】
回生運転時、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2)となる。
【0202】
以上のように、回生運転時の入力電流Irの大部分は自己消弧素子に流れるが、当該素子S1〜S6のしゃ断電流は小さくてすみ、コストの安い電力変換装置を提供できる。
【0203】
電圧形自励式電力変換器CNVを固定パルスで運転することにより、スイッチング回数が最小になり、変換器効率はさらに向上する。また、交流側出力電圧Vcの基本波成分が大きくなり、電圧形自励式電力変換器の電圧利用率が向上する。また、変換器力率がほぼ1で運転されるため、入力電流Icのゼロ点付近でスイッチングを行うことになり、力行運転時も回生運転時も、自己消弧素子のしゃ断電流は極めて小さくなる。この結果、高効率で低コストな電力変換装置を提供できる。また、大電流をしゃ断しないということは、ソフトスイッチングに近くなり、EMIノイズが小さくなり、環境にもやさしい電力変換装置を提供できる。
【0204】
(第4実施形態:請求項4に対応)
第4実施形態の電力変換装置を、図11〜図15を参照して説明する。
【0205】
本実施形態の電力変換装置の主回路構成は、先の例と同様であり、制御内容が先の例と相違する。
【0206】
図11は、パルスパターン発生器PTN1として、3パルス出力を行ったときの動作波形を示すもので、R相について描いている。図中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。また、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンは次のようになる。
【0207】
0≦θcr<θ1の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)θ1≦θcr<θ2の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ2≦θcr<πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)π≦θcr<θ3の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)θ3≦θcr<θ4の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ4≦θcr<2πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
このとき、電圧形自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。出力電圧Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φだけ遅れている。S相,T相も同様に与えられる。
【0208】
この場合もパルスパターンは固定され、直流電圧Vdを一定とした場合、電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧の基本波波高値は一定となる。
【0209】
図12は、図11のパルスパターンで電圧形自励式電力変換器CNVを動作させた場合の力行運転時のR相の各部動作波形を示す。なお、説明を簡略化するため、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
【0210】
電力変換器CNVの交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vsに対し、位相角φだけ遅れる。また、入力電流Icは電源電圧Vsに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流をそれぞれ表わしている。そのときの動作を以下に説明する。
【0211】
入力電流Irが負から正に変るまでは高速ダイオードD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irは素子S4を介して流れるようになる。次に素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。次に、交流出力電圧Vcrの基本波のゼロクロス点で、自己消弧素子S4を再びオンすると、入力電流Irは素子S4を介して流れ、高速ダイオードD1の電流はゼロとなる。さらに、図12のθ1で、素子S4をオフすると、上記と同じように、高速ダイオードD1に電流が流れ、入力電流Irが再び反転するまでその電流は高速ダイオードD1に流れる。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
【0212】
図12のパルスパターンは3パルスの場合を示したが、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2+θ1)
となる。例えば、φ=20°,θ1=10°とした場合、Imax=0.342×Icmとなる。このように、3パルスで運転した場合でも、自己消弧素子S1〜S6の最大遮断電流Imaxは入力電流波高値Icmの1/3程度に抑えることができ、装置のコストを大幅に低減できる。
【0213】
図13は、パルスパターン発生器PTN1として、5パルス出力運転を行う場合の動作波形を示すもので、R相について描いている。図中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。また、新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。また、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンは次のようになる。
【0214】
0≦θcr<θ1の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)θ1≦θcr<θ2の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ2≦θcr<θ3の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ3≦θcr<θ4の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ4≦θcr<πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)π≦θcr<θ5の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)θ5≦θcr<θ6の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ6≦θcr<θ7の範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
θ7≦θcr<θ8の範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
θ8≦θcr<2πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
電圧形自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
S1:オン(S4:オフ)のとき、Vcr=+Vd/2
S1:オフ(S4:オン)のとき、Vcr=−Vd/2
となる。直流電圧Vdが一定ならば、交流出力電圧Vcrの振幅値は一定となる。Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φだけ遅れている。S相,T相も同様に与えられる。
【0215】
図14は、図13のパルスパターンで電圧形自励式電力変換器を動作させた場合の各部動作波形を示すもので、R相について表わしている。なお、説明を簡略化するため、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。
【0216】
図14において、変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vsに対し、位相角φだけ遅れている。従って、力行運転となり、入力電流Icは電源電圧Vsに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流をそれぞれ表わしている。以下に、そのときの動作を図1の装置を用いて説明する。
【0217】
入力電流Irが負から正に変るまでは高速ダイオードD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、素子S4を介して流れるようになる。次に素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。
【0218】
次に、自己消弧素子S4を再びオンすると、入力電流Irは素子S4を介して流れ、高速ダイオードD1の電流はゼロとなる。さらに、素子S4をオフすると、電流Irは高速ダイオードD1を介して流れる。この後、図13に示したパルスパターンに従って上記動作を繰り返すが、図13のθ2で、素子S4がオフ(素子S1がオン)した後は、高速ダイオードD1に電流が流れ、入力電流Irが再び反転するまでその状態を継続する。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
【0219】
図14のパルスパターンは5パルスの場合を示したが、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIcmとした場合、Imax=Icm×sin(φ/2+θ2)となる。
【0220】
例えば、φ=20°,θ1=10°,θ2=15°とした場合、Imax=0.42×Icmとなる。
【0221】
図15は、電圧形自励式電力変換器CNVを5パルスで運転した場合の動作波形を示すもので、Vcrは変換器CNVのR相電圧,VcsはS相電圧,VcrsはR−S線間電圧を表す。
【0222】
電圧形自励式電力変換器CNVは、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角で、0°,±δ1,±δ2の角度でスイッチングを行うようにしており、δ1<δ2で、2×δ1>δ2を満足するように動作させている。なお、図13のパルスパターンに対応すると、δ1=θ1,δ2=θ2となる。
【0223】
変換器CNVの交流出力電圧のR−S線間電圧Vcrsは、R相電圧Vcrより電気角で30°進みとなる。5パルスのパルスパターンで、交流側R相出力電圧Vcrの基本波のゼロクロス点から電気角0,±δ1,±δ2の角度でスイッチングさせた場合(δ1<δ2)、R−S線間電圧Vcrsは、当該電圧Vcrsの基本波のゼロクロス点から、まず、(δ2−δ1)の期間だけ第1の正パルスが出力され、次にδ1の期間だけゼロ電圧があり、さらにδ1の期間だけ第2の正パルスが出力される。ここで、2×δ1>δ2を満足するようにパルスパターンを設定すると、前記第1の正パルスの幅(δ2−δ1)より、前記第2の正パルスの幅δ1が広くなる。すなわち、線間電圧Vcrsが立ち上がるときは、その基本波のゼロクロス点から、前記第1の正パルス,第2の正パルスと、徐々に幅が広くなっていく。逆に、線間電圧Vcrsが立ち下がるときは、まず、第2の正パルス(幅:δ1)を発生し、次に第1の正パルス(幅:δ2−δ1)を発生して、徐々に幅が狭くなってゼロクロス点に至る。線間電圧Vcrsの負側も同様になる。また、他の線間電圧Vcst,Vctrも同様に制御される。この結果、少ないスイッチング回数で、交流電源SUPから供給される入力電流Ir,Is,Itの歪みを小さくすることができ、その高調波成分も小さくできる。
【0224】
以上のように、本実施形態装置で、電圧形自励式電力変換器CNVのパルスパターンを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みを小さくできる。また、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記1パルス動作でのゼロ電圧発生期間(電気角60°)の半分を利用してスイッチングが行われ、他の相のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0225】
(第5実施形態:請求項5に対応)
第5実施形態の電力変換装置を、図16及び図17を参照して説明する。
【0226】
図16において、3相交流電源SUPに、1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流リアクトルLs1,Ls2を介して交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線された電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHO及びエネルギー蓄積装置EDLCを介して負荷装置Loadが接続されている。
【0227】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0228】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0229】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、3相変圧器TRの1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はY結線,第2の2次巻線はΔ結線されたものを用いる。
【0230】
図17は、図16の装置の制御回路実施形態を示すもので、CALは直流電圧指令演算器、C1,C21,C22は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、Z1,Z2は3相/dq座標変換回路、PLL1,PLL2は電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2は位相制御回路をそれぞれ示す。
【0231】
直流電圧指令演算器CALは、電源電圧Vsや負荷電流ILに応じて直流電圧指令Vd*を変えるようにしたもので、例えば、負荷電流ILに対して、比例定数をk,無負荷時の直流電圧指令値をVdo*とした場合、前記直流電圧指令値Vd*を、Vd*=Vdo*−k・ILとして与えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CVN2を構成する自己消弧素子の最大遮断電流を小さくすることができる。また、前記交流電源SUPの電圧Vsが変動した場合、当該電源電圧Vsの実効値の変化に合わせて前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo*を変えることにより、入力電流Icの無効分が増加するのを抑えることが可能となる。
【0232】
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷LOADが消費する直流電流Idcを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。
【0233】
座標変換器Z1は、電源SUPから変換器CNV1へ供給されるの3相入力電流Ic1(Ir1,Is1,It1)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iq1は有効電流検出値を、d軸電流Id1は無効電流検出値を表わす。座標変換器Z2も同様に3相入力電流Ic2(Ir2,Is2,It2)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。
【0234】
比較器C21により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iq1を比較し、その偏差εi1を電流制御補償回路Gi1(S)により増幅して、位相角指令値φ1*とする。電源同期位相検出回路PLL1は変圧器TRの2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に同期した位相信号θr1,θs1,θt1を作り、位相制御回路PHC1に入力する。位相制御回路PHC1は、前記位相角指令値φ1*と位相信号θr1,θs1,θt1を用いて電圧形自励式電力変換器CNV1の自己消弧素子S11〜S16のゲート信号g11〜g16を発生する。
【0235】
同様に、比較器C22により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iq2を比較し、その偏差εi2を電流制御補償回路Gi2(S)により増幅して、位相角指令値φ2*とする。電源同期位相検出回路PLL2は変圧器TRの2次電圧Vr2,Vs2,Vt2に同期した位相信号θr2,θs2,θt2を作り、位相制御回路PHC2に入力する。位相制御回路PHC2は、前記位相角指令値φ2*と位相信号θr2,θs2,θt2を用いて電圧形自励式電力変換器CNV2の自己消弧素子S21〜S26のゲート信号g21〜g26を発生する。
【0236】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流を制御する。
【0237】
本実施形態装置においては、2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、指令値Iq*は同じなので、ほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない正弦波に制御できる。
【0238】
また本実施形態装置においては、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0239】
さらに本実施形態装置においては、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0240】
また同様に、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを用意し、適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、並列多重運転するように構成することにより、変換装置の大容量化と、交流電源SUPから供給される入力電流Icの高調波成分の低減を図ることができる。
【0241】
(第6実施形態:請求項6に対応)
第6実施形態の電力変換装置を、図18を参照して説明する。
【0242】
図18に示すように、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2及び交流リアクトルLs1,Ls2を介して接続された3相ブリッジ結線された2台の電圧形自励式電力変換器CNVと、この電圧形自励式電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う構成である。また、3相交流電源SUPには高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(高配負荷)AC−Loadが接続されている。
【0243】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0244】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0245】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、Δ/Δ結線の3相変圧器TR1とΔ/Y結線の3相変圧器TR2が使われる。
【0246】
図18の装置の制御回路は、図17に示した制御回路に順ずる。
【0247】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0248】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器CNV1,CNV2間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs2,Ls1がない場合、直流電圧Vdの値と前記2台の変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0249】
図16のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs2,Ls1を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0250】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0251】
本実施形態装置で2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0252】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0253】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0254】
以上は2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0255】
(第7実施形態:請求項7に対応)
第7実施形の電力変換装置を、図19及び図20を参照して説明する。
【0256】
図19において、本実施形態の電力変換装置は、受電端子R,S,Tを持つ3相交流電源SUPに対し1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成された2台の3相変圧器TR1,TR2と、この3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流リアクトルLs1,Ls2を介して交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う構成である。
【0257】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0258】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0259】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用意し、1次巻線を直列接続し、電気角30°の位相差を持たせた2次巻線を有する2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、直列多重運転するように構成している。
【0260】
ここで、変圧器TR1は1次巻線がオープンスター、2次巻線がΔ結線となっており、変圧器TR2はΔ/Δ結線されている。3相電源SUPのR相端子は、変圧器TR1の1次R相巻線の1つの端子に接続され、1次R相巻線のもう1つの端子(中点側)が変圧器TR2の1次R相端子接続される。S相,T相も同様である。すなわち、変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0261】
この装置では、2台の変圧器のもれインダクタンスを利用することにより、交流リアクトルLsを省略することもできる。もちろん、外部に交流リアクトルLsを設けても原理的には同じになる。
【0262】
図20は、図19の装置の制御回路実施形態を示すもので、CALは直流電圧指令演算器、C1,C2は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi(S)は電流制御補償回路、Zは3相/dq座標変換回路、PLL1,PLL2は電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2は位相制御回路をそれぞれ示す。
【0263】
直流電圧指令演算器CALは、電源電圧Vsや負荷電流ILに応じて直流電圧指令Vd*を変えるようにしたもので、例えば、負荷電流ILに対して、比例定数をk,無負荷時の直流電圧指令値をVdo*とした場合、前記直流電圧指令値Vd*を、Vd*=Vdo*−k・ILとして与えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CVN2を構成する自己消弧素子の最大遮断電流を小さくすることができる。また、前記交流電源SUPの電圧Vsが変動した場合、当該電源電圧Vsの実効値の変化に合わせて前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo*を変えることにより、入力電流Isの無効分が増加するのを抑えることが可能となる。
【0264】
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器C2に入力する。一方、負荷Loadが消費する直流電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。
【0265】
座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ic(Ir,Is,It)の検出値を、dq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
【0266】
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLL1は変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に同期した位相信号θr1,θs1,θt1を作り、位相制御回路PHC1に入力する。位相制御回路PHC1は、前記位相角指令値φ*と位相信号θr1,θs1,θt1を用いて電圧形自励式電力変換器CNV1の自己消弧素子S11〜S16のゲート信号g11〜g16を発生する。同様に、電源同期位相検出回路PLL2により、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2に同期した位相信号θr2,θs2,θt2を作り、位相制御回路PHC2に入力する。位相制御回路PHC2は、前記位相角指令値φ*と位相信号θr2,θs2,θt2を用いて電圧形自励式電力変換器CNV2の自己消弧素子S21〜S26のゲート信号g21〜g26を発生する。
【0267】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する各変換器出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを変えることより、変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスの和Lx=Lx1+Lx2の和に印加される電圧が変化し、入力電流Ic(Ir,Is,It)を制御することができる。この装置では、2台の変圧器TR1とTR2が1次側で直列接続されているので、2台の電力変換器CNV1,CNV2の入力電流は同じになり、高調波の少ない電流となる。また、多重化により、その入力電流Icは、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0268】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0269】
以上は、2台の電力変換装置を用いた例を示したが、3台以上の電力変換装置を用いて直列多重運転できることは言うまでもない。
【0270】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流の高調波成分を低減することができ、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御パルス数を少なくできる利点がある。また、3相変圧器のもれインダクタンス分を利用することにより、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、電力回生が可能で、高効率・低コストな電力変換装置を提供することができる。
【0271】
(第8実施形態:請求項8に対応)
第8実施形の電力変換装置を、図21及び図22を参照して説明する。
【0272】
図21において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2はとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う。
【0273】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ie1,Ie2を制御する。
【0274】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0275】
2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2用い、電気角30°位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成している。本実施形態では、変圧器の1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されている。すなわち、変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0276】
図22は、図21の装置の制御回路実施形態を示すもので、CALは直流電圧指令演算器、C11,C12,C21,C22は比較器、AD1,AD2は加算器、Gv1(S),Gv2(S)は電圧制御補償回路、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、Z1,Z2は3相/dq座標変換回路、PLL1,PLL2は電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2は位相制御回路をそれぞれ示す。
【0277】
直流電圧指令演算器CALは、電源電圧Vsや負荷電流ILに応じて直流電圧指令Vd*を変えるようにしたもので、例えば、負荷電流ILに対して、比例定数をk,無負荷時の直流電圧指令値をVdo*とした場合、前記直流電圧指令値Vd*を、Vd*=Vdo*−k・ILとして与えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CVN2を構成する自己消弧素子の最大遮断電流を小さくすることができる。また、前記交流電源SUPの電圧Vsが変動した場合、当該電源電圧Vsの実効値の変化に合わせて前記無負荷時の直流電圧指令値Vdo*を変えることにより、入力電流Icの無効分が増加するのを抑えることが可能となる。
【0278】
電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2は、直流平滑コンデンサCd1及びCd2に印加される電圧Vd1,Vd2が指令値(Vd*/2)にそれぞれ一致するように制御する。
【0279】
比較器C11により、電圧検出値Vd1と指令値Vd*と比較し、その偏差εv1を電圧制御補償回路Gv1(S)により、積分又は比例増幅し、加算器AD1に入力する。同様に、比較器C12により、電圧検出値Vd2と指令値Vd*と比較し、その偏差εv2を電圧制御補償回路Gv2(S)により、積分又は比例増幅し、加算器AD2に入力する。一方、負荷LOADが消費する直流電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器AD1及びAD2に入力する。加算器AD1の出力Iq1*が電源SUPから第1の電力変換装置CNV1に供給される有効電流の指令値となり、加算器AD2の出力Iq2*が電源SUPから第2の電力変換装置CNV2に供給される有効電流の指令値となる。
【0280】
座標変換器Z1は、電源SUPから供給される3相入力電流Ic1(Ir1,Is1,It1)の検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iq1は有効電流検出値を、d軸電流Id1は無効電流検出値を表わす。座標変換器Z2も同様である。
【0281】
比較器C21により、有効電流指令値Iq1*と有効電流検出値Iq1を比較し、その偏差εi1を電流制御補償回路Gi1(S)により増幅して、位相角指令値φ1*とする。電源同期位相検出回路PLL1は変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に同期した位相信号θr1,θs1,θt1を作り、位相制御回路PHC1に入力する。位相制御回路PHC1は、前記位相角指令値φ1*と位相信号θr1,θs1,θt1を用いて電圧形自励式電力変換器CNV1の自己消弧素子S11〜S16のゲート信号g11〜g16を発生する。
【0282】
同様に、比較器C32により、有効電流指令値Iq2*と有効電流検出値Iq2を比較し、その偏差εi2を電流制御補償回路Gi2(S)により増幅して、位相角指令値φ2*とする。電源同期位相検出回路PLL2は変圧器TRの第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2に同期した位相信号θr2,θs2,θt2を作り、位相制御回路PHC2に入力する。位相制御回路PHC2は、前記位相角指令値φ2*と位相信号θr2,θs2,θt2を用いて電圧形自励式電力変換器CNV2の自己消弧素子S21〜S26のゲート信号g21〜g26を発生する。
【0283】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流Ic1,Ic2を制御する。
【0284】
2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、定常状態では直流電圧Vd1及びVd2がほぼ同じになり、有効電流指令値Iq1*と、Iq2*がほぼ等しくなるので、入力電流Ic1,Ic2の波高値はほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない運転ができる。3組以上の電力変換装置を組み合わせて多重運転した場合には、変圧器TRの1次電流リプルをさらに低減することができる。
【0285】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は、変圧器TRのもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0286】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φ1,φ2を遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φ1,φ2を進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0287】
以上のように本実施形態の電力変換装置においては、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNVnは、直流平滑コンデンサCd1,Cdnに印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0288】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。ここに、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnで多重運転した場合、当該電力変換器CNV1〜CNVnは、各直流平滑コンデンサCd1〜Cdnに印加される電圧Vd1〜Vdnがほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2+…+Vdnが一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0289】
(第9実施形態:請求項9に対応)
第9実施形態の電力変換装置を、図23を参照して説明する。
【0290】
図23において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角で30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2とを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積を行う。また、3相交流電源SUPには高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(高配負荷)AC−Loadが接続されている。
【0291】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHO1,CHO2は、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ie1,Ie2を制御する。
【0292】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0293】
変圧器TR1はΔ/Δ結線の3相変圧器、変圧器TR2はΔ/Y結線の3相変圧器で、各2次側電圧は電気角で30°の位相差を持っている。3相ブリッジ結線された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の交流側端子は変圧器TR1の2次巻線に接続され、また、3相ブリッジ結線された第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は変圧器TR2の2次巻線に接続されている。さらに、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、直流側で直列接続するように構成している。
【0294】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2を制御している。
【0295】
交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧Vdの高圧化、及び交流電源から供給される入力電流Icの高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器CNV1,CNV2毎に変圧器TR1,TR2を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0296】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs1,Ls2がない場合、直流電圧Vdの値と前記変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0297】
図21の装置のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、前記変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs1,Ls2を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルLs1,Ls2の分だけコストは高くなってしまう。
【0298】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs1,Ls2無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0299】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vd1及びVd2が一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2に印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また多重化により、その合成入力電流Icは歪みの少ない波形に制御できる。
【0300】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0301】
本実施形態の電力変換装置で、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0302】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、各直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0303】
以上は2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0304】
(第10実施形態:請求項10に対応)
第10実施形態の電力変換装置を、図16〜図22で示した電力変換装置の構成と図24とを参照して説明する。
【0305】
本実施形態の電力変換装置は、第5〜第9実施形態の電力変換装置におけるn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、各電力変換器CNV1〜CNVnの交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うようにしている。
【0306】
このように本実施形態の電力変換装置においてはし、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnを多重化していることにより、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0307】
また、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0308】
図24は、図16〜図22で示した電力変換装置において、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを5パルスで運転した場合の1台の変換器の動作波形を示す。
【0309】
図中、Vcriは変換器CNVi(i=1〜n)のR相電圧,VcsiはS相電圧,VcrsiはR−S線間電圧を表す。
【0310】
電圧形自励式電力変換器CNViの交流出力電圧のR−S線間電圧Vcrsiは、R相電圧Vcriより電気角で30°進みとなる。5パルスのパルスパターンで、交流側R相出力電圧Vcriの基本波のゼロクロス点から電気角0,±δ1,±δ2の角度でスイッチングさせた場合(δ1<δ2<(30°/n))、R−S線間電圧Vcrsiは、当該電圧Vcrsiの基本波のゼロクロス点から、まず、(δ2−δ1)の期間だけ第1の正パルスが出力され、次にδ1の期間だけゼロ電圧があり、さらにδ1の期間だけ第2の正パルスが出力される。ここで、2×δ1>δ2を満足するようにパルスパターンを設定すると、前記第1の正パルスの幅(δ2−δ1)より、前記第2の正パルスの幅δ1が広くなる。すなわち、線間電圧Vcrsiが立ち上がるときは、その基本波のゼロクロス点から、前記第1の正パルス,第2の正パルスと、徐々に幅が広くなっていく。逆に、線間電圧Vcrsiが立ち下がるときは、まず、第2の正パルス(幅:δ1)が発生され、次に第1の正パルス(幅:δ2−δ1)が発生され、徐々に幅が狭くなってゼロクロス点に至る。線間電圧Vcrsiの負側も同様になる。また、他の線間電圧Vcsti,Vctriも同様に制御される。この結果、交流電源SUPから供給される入力電流Ir,Is,Itの歪みが小さくなり、その高調波成分も小さくできる。
【0311】
n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnは、多重化により、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。
【0312】
また、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnは、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0313】
(第11実施形態:請求項11に対応)
第11実施形態の電力変換装置は、第5〜第10実施形態の電力変換装置にけるエネルギー蓄積装置EDLCが負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように、双方向チョッパCHOを制御するものである。
【0314】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0315】
電気鉄道の変電所などでは、回生インバータにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内の負荷に供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0316】
そのため、所内負荷が定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置EDLCは、負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが授受する電力は前記設定値に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0317】
本実施形態の電力変換装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけをn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnから供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えたエネルギーを前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnにより、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置EDLCの容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。これにより、小さな容量の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnと、小さな容量のエネルギー蓄積装置EDLCで、回生失効を防止でき、経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0318】
(第12実施形態:請求項12に対応)
第12実施形態の電力変換装置は、第5〜第11実施形態の電力変換装置におけるエネルギー蓄積装置EDLCが、エネルギー吸収の要求がない時に蓄積されたエネルギーを放出するように、双方向チョッパCHOを制御している。
【0319】
EDLCに蓄積されるエネルギーは、回生電力P×時間tで決まり、時間tが短ければ、電力Pが大きくても蓄積エネルギーとしてはあまり大きくならない。
【0320】
本実施形態のの電力変換装置においては、上記の蓄積エネルギーをエネルギー吸収の要求がない時に、放出するように双方向チョッパCHOを制御することにより、さらに、EDLCの蓄積エネルギーを減らすことができる。電車負荷等では、回生している時間より、力行時間の方が圧倒的に長く、放出電力が小さくても蓄積エネルギーを十分小さくできる。双方向チョッパCHOにより放出されたエネルギーは、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnにより電源に回生され、所内負荷等に利用される。これにより、エネルギー蓄積装置EDLCの容量を減らすことができ、さらに経済的な電力変換装置を提供できる。
【0321】
(第13実施形態:請求項13に対応)
第13実施形態の電力変換装置を、図25及び図26を参照して説明する。
【0322】
図25において、3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、この電圧形自励式電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。また、3相交流電源SUPに変圧器TRxを介して所内負荷AC−Loadが接続されている。
【0323】
負荷装置Loadは、例えば、電車負荷で、力行及び回生運転が行われる。所内負荷AC−Loadは、電鉄変電所内の負荷で、例えば、照明やエアコン等がある。
【0324】
電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、直流電圧制御回路AVR,入力電流制御回路ACR1及び位相制御回路PHCなどが用意される。なお、Zは3相電流をdq座標軸の電流に変換する座標変換器である。
【0325】
また、抵抗に直列接続された開閉器SW1,SW2の動作タイミングを決める開閉器制御回路SWCが用意されている。
【0326】
以下、順に本実施形態装置の動作を説明する。
【0327】
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがほぼ一定になるように、入力電流Icを制御する。すなわち、直流電圧指令値Vd*と直流電圧検出値Vdを比較し、その偏差を増幅して入力電流Icの有効分の指令値Iq*を与える。入力電流Icは座標変換器Zにより、3相/dq軸変換され、そのq軸成分Iqが有効電流検出値となる。電流制御回路ACR1により、電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差を増幅して、位相制御回路PHCに位相制御信号e*を与える。位相制御回路PHCは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを前記指令値に従って制御するもので、位相角φ(遅れ)を大きくすることにより、入力電流Icの有効分Iqが増加し、交流電源SUPから負荷装置Loadに電力が供給される。逆に、位相角φを負(進み)方向に増やすと、入力電流Icの有効分Iqは負の値となり、負荷装置Loadからの回生電力を交流電源SUPにもどすことができる。もちろん、電圧形自励式電力変換器CNVをパルス幅変調制御することにより、直流電圧Vdがほぼ一定になるように入力電流Icを制御することもできる。
【0328】
一方、抵抗器に直列接続された開閉器SW1,SW2は、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0329】
図26は、負荷電流ILに対する抵抗装置(R1とR2)に流れる電流IRと、電圧形自励式電力変換器CNVの直流出力電流Icnvの関係を示したもので、負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNVから供給される。
【0330】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNVが回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0331】
本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0332】
(第14実施形態:請求項14に対応)
第14実施形態の電力変換装置は、図25で示す第13実施形態の電力変換装置における抵抗装置R及び開閉器SWを、複数個に分割し(図25では2分割している)、負荷装置Loadからの回生電力に応じて、投入個数を変えている。
【0333】
本実施形態の電力変換装置においては、複数個の抵抗装置R1〜Rnと、それぞれに直列接続された複数個の開閉器SW1〜SWnを用意し、回生電力の大きさに応じて、その投入個数を変えることにより、電圧形自励式電力変換器CNVの制御すべき電力を小さくすることが可能となる。例えば、回生電力が、0〜3000kWまで連続的に変化する場合、500kWの抵抗器を5台用意し、順次投入台数を増やすことにより、段階的に回生電力を消費することができる。それを連続的に制御するには、500kWの電圧形自励式電力変換器CNVを1台設置すればよい。抵抗装置Rが無い場合には、3000kWの電圧形自励式電力変換器CNVが必要であったものが、5分割された抵抗装置R1〜R5を設置することにより、変換器CNVの容量を1/6に低減できる。
【0334】
(第15実施形態:請求項15に対応)
第15実施形態の電力変換装置は、第13,第14実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記電源電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、入力電流Icを制御し且つ前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように制御している。
【0335】
電圧形自励式電力変換器CNVは、交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、その交流側出力電圧Vcの電源電圧Vsに対する位相角φを制御することにより、入力電流Icを制御する。
【0336】
パルスパターンを固定すると、直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、交流リアクトルLsに(又は変圧器TRのもれインダクタンス)に印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Ic=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
【0337】
電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。ちなみに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Icの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2又は、π−φ/2となり、入力力率は、cos(φ/2)となる。また、入力電流Icと電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2又は、π+φ/2となり、変換器力率は、cos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Icと交流リアクトルLsの値に依存する。位相角φは、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
【0338】
電圧形自励式電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流は小さくて済む。
【0339】
また、電力変換器CNVの交流側出力電圧の波高値を一定にして位相角φだけを制御するため、変換器の電圧利用率(交流出力電圧の実効値/直流電圧)が高くできる。すなわち、変圧器TRの2次電圧を高くできるため、出力容量が同じならば、変換器の電流容量を小さくでき、自己消弧素子の電流容量の小さいもので済む。
【0340】
回生運転時も電源力率はほぼ1に制御され、同様に自己消弧素子のスイッチングを入力電流Isのゼロクロス付近で行うことにより、素子のしゃ断電流は小さく抑えることができる。故に、スイッチング損失は大幅に軽減され、しゃ断電流の小さい自己消弧素子で電圧形自励式電力変換器CNVを構成できるようになり、経済的な装置を提供できる。
【0341】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0342】
(第16実施形態:請求項16に対応)
第16実施形態の電力変換装置は、第15実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該変換器CNVの交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°以内で、スイッチングを行うようにしている。
【0343】
このような本実施形態の電力変換装置によれば、1パルスで動作する3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNVの交流側線間電圧は、直流電圧Vdに対し、電気角120°期間(+Vd),電気角120°期間(−Vd)の矩形波電圧となり、残りの期間(電気角60°が2回)はゼロ電圧を発生する。3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みを小さくできる。また、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記1パルス動作でのゼロ電圧発生期間(電気角60°)の半分を利用してスイッチングが行われ、他の相のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0344】
(第17実施形態:請求項17に対応)
第17実施形態の電力変換装置を図27を参照して説明する。
【0345】
図27において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線された電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。
【0346】
本実施形態のおいては、抵抗装置R1,R2に直列接続された開閉器SW1,SW2は、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0347】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNVから供給される。
【0348】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNVが回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0349】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、3相変圧器TRの1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されたものを用いる。
【0350】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0351】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0352】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0353】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0354】
以上は、2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0355】
本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置(R1,R2)を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0356】
(第18実施形態:請求項18に対応)
第18実施形態の電力変換装置を、図28を参照して説明する。
【0357】
図28において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。また3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷AC−Loadが接続されている。
【0358】
本実施形態の電力変換装置において抵抗装置R1,R2に直列接続された開閉器SW1,SW2は、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0359】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0360】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNVが回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0361】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、Δ/Δ結線の3相変圧器TR1とΔ/Y結線の3相変圧器TR2が使われる。
【0362】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0363】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器CNV1,CNV2間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs2,Ls1がない場合、直流電圧Vdの値と前記2台の変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0364】
図27のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs2,Ls1を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0365】
本実施形態のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0366】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0367】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0368】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Ic=Ic1+Ic2の高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0369】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0370】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置R1,R2を開放/投入するだけの開閉器SW1,SW2を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の容量の低減を達成できる。
【0371】
(第19実施形態:請求項19に対応)
第19実施形態の電力変換装置を、図29を参照して説明する。
【0372】
図29において、受電端子R,S,Tを持つ3相交流電源SUPに1次巻線が各相毎に直列接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成された2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに開閉器SW1,SW2を介して並列接続された抵抗装置R1,R2とを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。
【0373】
本実施形態の電力変換装置においては、抵抗装置R1,R2に直列接続された開閉器SW1,SW2を負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御する。
【0374】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SW1,SW2は開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0375】
回生運転(IL<0)では、例えば、−100%までは、開閉器SW1,SW2は開放しておき、−100%を超えたら開閉器SW1を投入する。さらに、−200%を超えたら開閉器SW2も投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が回生する電力は、最大で−100%に抑えることができる。しかも、抵抗装置(R1,R2)に流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SW1,SW2を用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0376】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用意し、1次巻線を直列接続し、電気角30°の位相差を持たせた2次巻線を有する2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、直列多重運転するように構成している。
【0377】
ここで、変圧器TR1は1次巻線がオープンスター、2次巻線がΔ結線となっており、変圧器TR2はΔ/Δ結線されている。3相電源SUPのR相端子は、変圧器TR1の1次R相巻線の1つの端子に接続され、1次R相巻線のもう1つの端子(中点側)が変圧器TR2の1次R相端子接続される。S相,T相も同様である。すなわち、変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0378】
この装置では、2台の変圧器のもれインダクタンスを利用することにより、交流リアクトルLs1,Ls2を省略することもできる。もちろん、外部に交流リアクトルLs1,Ls2を設けても原理的には同じになる。
【0379】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する各変換器出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルの和Ls=Ls1+Ls2の和に印加される電圧が変化し、入力電流Ic(Ir,Is,It)を制御することができる。この装置では、2台の変圧器TR1とTR2が1次側で直列接続されているので、2台の電力変換器CNV1,CNV2の入力電流は同じになり、高調波の少ない電流となる。また、多重化により、その入力電流Icは、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0380】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0381】
以上は、2台の電力変換装置を用いた例を示したが、3台以上の電力変換装置を用いて直列多重運転できることは言うまでもない。
【0382】
本装置によれば、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流の高調波成分を低減することができ、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御パルス数を少なくできる利点がある。また、3相変圧器のもれインダクタンス分を利用することにより、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、電力回生が可能で、高効率・低コストな電力変換装置を提供することができる。
【0383】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置(R1,R2)を開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0384】
(第20実施形態:請求項20に対応)
第20実施形態の電力変換装置を、図30を参照して説明する。
【0385】
図30において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(高配負荷)AC−Loadが接続されている。
【0386】
本実施形態の電力変換装置においては抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0387】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0388】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0389】
2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2用い、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成している。本実施形態では、変圧器の1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されている。すなわち、変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0390】
電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2は、直流平滑コンデンサCd1及びCd2に印加される電圧Vd1,Vd2が指令値(Vd*/2)にそれぞれ一致するように制御する。
【0391】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流Ic1,Ic2を制御する。
【0392】
2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、定常状態では直流電圧Vd1及びVd2がほぼ同じになり、有効電流指令値Iq1*と、Iq2*がほぼ等しくなるので、入力電流Ic1,Ic2の波高値はほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない運転ができる。3組以上の電力変換装置を組み合わせて多重運転した場合には、変圧器TRの1次電流リプルをさらに低減することができる。
【0393】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は、変圧器TRのもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Isの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流Isのゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0394】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φ1,φ2を遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φ1,φ2を進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0395】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、それぞれ直流平滑コンデンサCd1,Cdnに印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0396】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0397】
n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnで多重運転した場合、当該電力変換器CNV1〜CNVnは、各直流平滑コンデンサCd1〜Cdnに印加される電圧Vd1〜Vdnがほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2+…+Vdnが一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Isの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0398】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0399】
(第21実施形態:請求項21に対応)
第21実施形態の電力変換装置を、図31を参照して説明する。
【0400】
図31において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角で30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の制御を行う。
【0401】
変圧器TR1はΔ/Δ結線の3相変圧器、変圧器TR2はΔ/Y結線の3相変圧器で、各2次側電圧は電気角で30°の位相差を持っている。3相ブリッジ結線された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の交流側端子は変圧器TR1の2次巻線に接続され、また、3相ブリッジ結線された第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は変圧器TR2の2次巻線に接続されている。さらに、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、直流側で直列接続するように構成している。
【0402】
抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0403】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは全て電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給される。
【0404】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0405】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2を制御している。
【0406】
交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧Vdの高圧化、及び交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器CNV1,CNV2毎に変圧器TR1,TR2を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0407】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs1,Ls2がない場合、直流電圧Vdの値と前記変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0408】
図30の装置のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、前記変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs1,Ls2を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルLs1,Ls2の分だけコストは高くなってしまう。
【0409】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs1,Ls2無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0410】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vd1及びVd2が一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また多重化により、その合成入力電流Icは歪みの少ない波形に制御できる。
【0411】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0412】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0413】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、各直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。これにより、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流の高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0414】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0415】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0416】
(第22実施形態:請求項22に対応)
第22実施形態の電力変換装置は、第17〜第21実施形態の電力変換装置におけるn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、各電力変換器CNV1〜CNVnの交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うようにしている。
【0417】
本実施形態の電力変換装置においては、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnを多重化することにより、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0418】
また、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0419】
(第23実施形態:請求項23に対応)
第23実施形態の電力変換装置は、第17〜第22実施形態の電力変換装置における開閉器SWを負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、抵抗装置Rを平滑コンデンサCdに並列接続するようにしている。
【0420】
本実施形態の電力変換装置においては、開閉器SWを負荷装置Loadからの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、抵抗装置Rを前記直流平滑コンデンサCdに並列接続する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置Rに電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減を達成できる。
【0421】
(第24実施形態:請求項24に対応)
第23実施形態の電力変換装置は、第17〜第23実施形態の電力変換装置における抵抗装置R及び開閉器SWを、複数個に分割し、負荷装置Loadからの回生電力に応じて、投入個数を変えている。
【0422】
本実施形態の電力変換装置においては、複数個の抵抗装置R1〜Rnと、それぞれに直列接続された複数個の開閉器SW1〜SWnを用意し、回生電力の大きさに応じて、その投入個数を変えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御すべき電力を小さくすることが可能となる。例えば、回生電力が、0〜3000kWまで連続的に変化する場合、500kWの抵抗器を5台用意し、順次投入台数を増やすことにより、段階的に回生電力を消費することができる。それを連続的に制御するには、500kWの電圧形自励式電力変換器を設置すればよい。抵抗装置Rが無い場合には、3000kWの電圧形自励式電力変換器が必要であったものが、5分割された抵抗装置R1〜R5を設置することにより、電圧形自励式電力変換器の容量を1/6に低減できる。
【0423】
(第25実施形態:請求項25に対応)
第25実施形態の電力変換装置を、図32〜図34を参照して説明する。
【0424】
図32において、3相交流電源SUPに変圧器TR及び交流リアクトルLsを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器CNVと、この電力変換器CNVの直流側端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには変圧器TRxを介して所内負荷AC−Loadが接続されている。
【0425】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。例えば、エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを使った場合、その蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となり、印加電圧Veの2乗に比例する。
【0426】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。負荷装置Loadは、例えば、電車負荷で、力行及び回生運転が行われる。所内負荷AC−Loadは、電鉄変電所内の負荷で、例えば、照明やエアコン等がある。
【0427】
電圧形自励式電力変換器CNVの制御回路として、直流電圧制御回路AVR,入力電流制御回路ACR1及び位相制御回路PHCなどが用意される。なお、Zは3相電流をdq座標軸の電流に変換する座標変換器である。
【0428】
また、双方向チョッパCHOの制御回路として、電流指令発生器REF,充放電電流制御回路ACR2,パルス幅変調制御回路PWMが用意されている。
【0429】
さらに、抵抗に直列接続された開閉器SWの動作タイミングを決める開閉器制御回路SWCが用意されている。
【0430】
以下、順に本実施形態装置の動作を説明する。
【0431】
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがほぼ一定になるように、入力電流Icを制御する。すなわち、直流電圧指令値Vd*と直流電圧検出値Vdを比較し、その偏差を増幅して入力電流Icの有効分の指令値Iq*を与える。入力電流Icは座標変換器Zにより、3相/dq軸変換され、そのq軸成分Iqが有効電流検出値となる。電流制御回路ACR1により、電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差を増幅して、位相制御回路PHCに位相制御信号e*を与える。位相制御回路PHCは、電源電圧Vsに対する電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの位相角φを前記指令値に従って制御するもので、位相角φ(遅れ)を大きくすることにより、入力電流Icの有効分Iqが増加し、交流電源SUPから負荷装置Loadに電力が供給される。逆に、位相角φを負(進み)方向に増やすと、入力電流Icの有効分Iqは負の値となり、負荷装置Loadからの回生電力を交流電源SUPにもどすことができる。もちろん、電圧形自励式電力変換器CNVをパルス幅変調制御することにより、直流電圧Vdがほぼ一定になるように入力電流Icを制御することもできる。
【0432】
一方、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0433】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV又はエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0434】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV及びエネルギー蓄積装置EDLCへ回生する最大電力を小さく抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0435】
また、双方向チョッパCHOは、次のように制御される。エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieの指令値Ie*は、負荷電流ILと抵抗装置の電流IRとの和(IL+IR)及び前記EDLCの印加電圧Veの値によって決定する。
【0436】
和電流(IL+IR)が負で、その電流値が設定値Iaより小さい場合は、電圧形自励式電力変換器CNVによって、当該回生電力PLを交流電源SUPにもどす。(IL+IR)>Iaとなった場合には、その差分(IL+IR−Ia)の相当する電力(PL+PR−Pa)だけ、エネルギー蓄積装置EDLCに充電するように電流指令値Ie*を与える。
【0437】
図33は、双方向チョッパCHOの制御回路構成実施形態を示すもので、当該双方向チョッパCHOとエネルギー蓄積装置EDLC及び抵抗装置Rの主回路構成も示す。
【0438】
図中、LIMはリミッタ回路、ADpは加減算器、Keは比例定数、AS1,AS2は切換え回路、COMはレベル比較器、HYSはヒステリシス特性を持つ比較器、Cは比較器、Gie(S)は電流制御回路、PWMはパルス幅変調制御回路をそれぞれ表す。
【0439】
まず、負荷電力PLと抵抗装置の消費電力PRの和(PL+PR)求め、リミッタ回路LIMを介して、交流電源SUPに回生する電力Paを求める。次に、加減算器ADpにより、Pe=Pa−(PL+PR)を求め、Keで定数倍(1/Ve)することにより、充電電流指令値Ie*を与える。力行運転では、負荷電流ILは図の矢印の方向に流れ、負荷電力PLが正となる。(PL+PR)>0の場合、リミット回路LIMは、そのまま、Pa=(PL+PR)を出力する。従って、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−(PL+PR)=0となる。ただし、PL>0の場合、開閉器SWは開放しているので、PR=0となっている。
【0440】
回生運転では、負荷電流ILは図矢印と反対向きに流れ、負荷電力PLは負となる。(PL+PR)<0の場合、リミット回路LIMは、設定値−PLOまでは、Pa=(PL+PR)を出力する。従って、−PLO<(PL+PR)では、加減算器ADpの出力は、Pe=Pa−(PL+PR)=0となる。しかし、−PLO>(PL+PR)では、Pa=−PLOとなり、エネルギー蓄積装置EDLCに充電する電力指令値Peは、Pe=Pa−(PL+PR)=−PLO−(PL+PR)で与えられる。
【0441】
エネルギー蓄積装置EDLCの印加電圧をVeとした場合、充電電流指令値Ie*は、前記電力指令値Peに対し、Ie*=Pe/Veで与えられる。比較器C3により、当該電流指令値Ie*とエネルギー蓄積装置EDLCへの充電電流検出値Ieを比較し、その偏差εe=Ie*−Ieを次の電流制御回路Gie(S)で増幅し、前記双方向チョッパCHOの電圧指令値e*としてPWM制御回路に入力する。PWM制御回路では、三角波のキャリア信号X(例えば、周波数fc=1kHz)と前記電圧指令値e*を比較し、スイッチング素子Qa,Qbのゲート信号ga,gbを与える。すなわち、
e*≧Xのとき、ga=1(gb=0)で、素子Qa:オン(Qb:オフ)
e*<Xのとき、gb=1(ga=0)で、素子Qb:オン(Qa:オフ)
となる。
【0442】
Ie*>Ieとなった場合、偏差εeは正の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を増やす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が上昇し、充電電流Ieを増加させる。逆に、Ie*<Ieとなった場合、偏差εeは負の値となり、スイッチング素子Qaのオン期間を減らす。その結果、直流リアクトルLeに印加される電圧が低下し、充電電流Ieを減少させる。このようにして、定常的に、Ie*=Ieとなるように制御される。電流指令値Ie*を負にすれば、エネルギー蓄積装置EDLCから放電電流Ie(図の矢印と反対向き)を流すことができる。
【0443】
エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを用いた場合、その蓄積エネルギーは、印加電圧Veの値に関係する。すなわち、キャパシタ容量をCeとした場合、蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となる。ヒステリシス特性を持つ比較器HYSは、電圧Veが設定値Ve1を超えた場合には、出力信号「1」を発生し、切換え回路AS1を接点「1」に切り換える。逆に、電圧Veが設定値Ve2(<Ve1)より小さくなった場合には、出力信号「0」を発生し、切換え回路AS1を接点「0」に切り換える。AS1の接点「0」には、前述の指令値Ie*=Pe/Veが入力され、回生運転時の充電電流指令が与えられる。また、接点「1」には、切り換え回路AS2からの信号が入力され、ゼロ又は放電電流指令が与えられる。
【0444】
図34は、図32の装置の運転特性の一例を示すもので、電車負荷で、列車が停止するまでの時間tに対する列車速度V,電気ブレーキ力F,及び回生電力PLを表す。ブレーキ力Fを一定と仮定した場合、回生電力PLは、PL=F×Vとなり、列車速度が低くなれば、回生電力PLも小さくなることを表している。
【0445】
負荷Loadからの回生電力PLが第1の設定値P1より小さい場合は、その全てを電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源に回生する。
【0446】
回生電力PLが第1の設定値P1より大きく、第2の設定値P2より小さい場合には、電圧形自励式電力変換器CNVによりP1だけ電源SUPに回生し、残りの電力(PL−P1)をエネルギー蓄積装置EDLCに充電する。
【0447】
この第1の設定値P1を所内負荷AC−Loadが消費する電力程度に合わせることにより、より効率的に電気料金を節約することが可能となる。
【0448】
さらに、回生電力PLが第2の設定値P2より大きくなった場合には、開閉器SWを投入し、抵抗装置Rにより電力PRを消費させ、残りの電力(PL−PR)を電圧形自励式電力変換器CNV及びエネルギー蓄積装置EDLCにより回生する。この場合でも、まず、P1だけ自励式電力変換装置CNVにより電源SUPに回生し、最後に残った分(PL−PR−P1)をエネルギー蓄積装置EDLCに回生する。
【0449】
すなわち、電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源SUPに回生される電力はほぼ一定しており、当該電力変換器CNVの容量は設定値P1分だけ用意すればよい。
【0450】
また、抵抗装置Rによって消費する電力はPRであるが、回生電力PLが第2の設定値P2を超えたときだけ開閉器SWが投入されるので、時間的には短く、熱容量としては大きなものは必要ない。
【0451】
さらに、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄積される電力は、(PL−P1)又は(PL+PR−P1)となり、双方向チョッパCHOの容量が低減でき、同時に、エネルギー蓄積装置EDLCの蓄積容量も低減することが可能となる。。
【0452】
停止直前では、車両速度Vが低くなるため、電圧形自励式電力変換器CNVを介して電源SUPにもどす電力が小さくなるので、そのときには、EDLCに蓄えたエネルギーを放出することにより、電源への回生電力が一定に保つことができる。
【0453】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、電源SUPへの回生電力が安定化され、電圧形自励式電力変換器CNVの容量を抑えることができ且つエネルギー蓄積装置EDLCの蓄積容量も低減することが可能となる。
【0454】
(第26実施形態:請求項26に対応)
第26実施形態の電力変換装置は、第25実施形態の電力変換装置におけるエネルギー蓄積装置EDLCを、エネルギー吸収の要求がない時に、蓄積されたエネルギーを放出するように前記双方向チョッパCHOを制御している。
【0455】
図33において、比較器COMは、負荷電流ILを入力し、IL>0(力行運転)で「1」を出力し、IL<0(回生運転)で「0」を出力する。切り換え回路AS2は、比較器COMからの信号が「0」又は「1」のとき、それぞれ接点「0」又は「1」に接続する。AS2の接点「0」にはゼロ電流指令が与えられ、接点「1」には一定値指令−Ieo*(放電)が与えられる。
【0456】
すなわち、エネルギー蓄積装置EDLCの電圧Veが高くなり、Ve>Ve1となった場合、切り換え回路AS2の出力が電流指令Ie*を与える。そのとき、負荷電流ILが負の場合(回生運転)、前記電流指令値Ie*=0として、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電を止める。負荷電流ILが正の場合(力行運転)、前記電流指令値として、−Ieo*(放電指令)を与えてEDLCの蓄積エネルギーを放出する。このとき、蓄積エネルギーの有効利用が図れる。次の回生要求が来るまでに、EDLCの蓄積エネルギーを下げればよいので、前記設定値−Ieo*(放電指令)をあまり大きくする必要は無い。
【0457】
IL<0で、Ve>Ve1の場合、Ie*=0が与えられ、エネルギー蓄積装置EDLCへの充電は無く、回生電力は電圧形自励式電力変換器CNVを介して、交流電源SUPへ電力回生される。
【0458】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、エネルギー蓄積装置EDLCの貯蔵容量をむやみに大きくすることなく、回生失効の防止とエネルギーの有効利用が図れ、経済的な電力変換装置を提供できる。
【0459】
(第27実施形態:請求項27に対応)
第27実施形態の電力変換装置は、第25及び第26実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記電源電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、入力電流Icを制御し且つ前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように制御している。
【0460】
電圧形自励式電力変換器CNVは、交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、その交流側出力電圧Vcの電源電圧Vsに対する位相角φを制御することにより、入力電流Icを制御する。
【0461】
パルスパターンを固定すると、直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、交流リアクトルLs(又は変圧器TRのもれインダクタンス)に印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Ic=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
【0462】
電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。ちなみに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Icの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2又は、π−φ/2となり、入力力率は、cos(φ/2)となる。また、入力電流Icと電圧形自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2又は、π+φ/2となり、変換器力率は、cos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Icと交流リアクトルLsの値に依存する。位相角φは、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
【0463】
電圧形自励式電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流は小さくて済む。
【0464】
また、電力変換器CNVの交流側出力電圧の波高値を一定にして位相角φだけを制御するため、変換器の電圧利用率(交流出力電圧の実効値/直流電圧)が高くできる。すなわち、変圧器TRの2次電圧を高くできるため、出力容量が同じならば、変換器の電流容量を小さくでき、自己消弧素子の電流容量の小さいもので済む。
【0465】
回生運転時も電源力率はほぼ1に制御され、同様に自己消弧素子のスイッチングを入力電流Icのゼロクロス付近で行うことにより、素子のしゃ断電流は小さく抑えることができる。故に、スイッチング損失は大幅に軽減され、しゃ断電流の小さい自己消弧素子で電圧形自励式電力変換器CNVを構成できるようになり、経済的な装置を提供できる。
【0466】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0467】
(第28実施形態:請求項28に対応)
第28実施形態の電力変換装置は、第27実施形態の電力変換装置における電圧形自励式電力変換器CNVを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該変換器CNVの交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°以内で、スイッチングを行うようにしている。
【0468】
本実施形態の電力変換装置によれば、1パルスで動作する3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNVの交流側線間電圧は、直流電圧Vdに対し、電気角120°期間(+Vd),電気角120°期間(−Vd)の矩形波電圧となり、残りの期間(電気角60°が2回)はゼロ電圧を発生する。3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みを小さくできる。また、交流側出力電圧Vcの基本波のゼロクロス点から電気角30°の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記1パルス動作でのゼロ電圧発生期間(電気角60°)の半分を利用してスイッチングが行われ、他の相のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0469】
(第29実施形態:請求項29に対応)
第29実施形態の電力変換装置を、図35を参照して説明する。
【0470】
図35は、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0471】
本実施形態の電力変換装置において、手抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0472】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2又はエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0473】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該回生電力P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0474】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。例えば、エネルギー蓄積装置EDLCとして電気二重層キャパシタを使った場合、その蓄積エネルギーは、(1/2)Ce×Ve2となり、印加電圧Veの2乗に比例する。
【0475】
双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0476】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0477】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、3相変圧器TRの1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されたものを用いる。
【0478】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0479】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0480】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0481】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0482】
以上は、2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0483】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減とエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0484】
(第30実施形態:請求項30に対応)
第30実施形態の電力変換装置を、図36を参照して説明する。
【0485】
図36において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0486】
本実施形態の電力変換装置において、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0487】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0488】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0489】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器SWを設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減とエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0490】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0491】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0492】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2に対し、2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で並列接続するように構成している。例えば、Δ/Δ結線の3相変圧器TR1とΔ/Y結線の3相変圧器TR2が使われる。
【0493】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源SUPの周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、交流入力電流Icを制御している。
【0494】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器CNV1,CNV2間に横流が流れる。この横流の大きさは、直流電圧Vdの値と前記2台の変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2(又は交流リアクトルLs1,Ls2)によってほぼ決定される。
【0495】
図35のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、交流リアクトルLs2,Ls1がない場合、変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs2,Ls1を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルの分だけコストは高くなってしまう。
【0496】
本実施形態のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0497】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2に印加される電圧が変化し、入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また、多重化により、その合成電流Ic=Ic1+Ic2は、歪みの少ない波形に制御できる。
【0498】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0499】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。
【0500】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0501】
以上は、2台の変換器を用いて2並列多重運転実施形態について説明したが、n個の変換器とn個の変圧器を用いて、n並列多重運転を行うことにより、変換装置の大容量化と、さらなる入力電流高調波の低減が図れることは言うまでもない。
【0502】
(第31実施形態:請求項31に対応)
第31実施形態の電力変換装置を、図37を参照して説明する。
【0503】
図37において、3相交流電源SUPに1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が電気角30°の位相差を持つように構成された2台の3相変圧器TR1,TR2と、この2台の3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサCdと、この直流平滑コンデンサCdに双方向チョッパCHOを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLCと、直流平滑コンデンサCdに開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCdに並列接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。
【0504】
本実施形態の電力変換装置において、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0505】
負荷電流IL>0(力行運転)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLCから供給される。
【0506】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、当該設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0507】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器SWを設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0508】
エネルギー蓄積装置EDLCとして、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLCの充放電電流Ieを制御する。
【0509】
エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0510】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を用意し、1次巻線を直列接続し、電気角30°の位相差を持たせた2次巻線を有する2台の3相変圧器TR1,TR2を用いて、直列多重運転するように構成している。
【0511】
ここで、変圧器TR1は1次巻線がオープンスター、2次巻線がΔ結線となっており、変圧器TR2はΔ/Δ結線されている。3相電源SUPのR相端子は、変圧器TR1の1次R相巻線の1つの端子に接続され、1次R相巻線のもう1つの端子(中点側)が変圧器TR2の1次R相端子接続される。S相,T相も同様である。すなわち、変圧器TR1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、変圧器TR2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0512】
この装置では、2台の変圧器のもれインダクタンスを利用することにより、交流リアクトルLs1,Ls2を省略することもできる。もちろん、外部に交流リアクトルLs1,Ls2を設けても原理的には同じになる。
【0513】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する各変換器出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルの和Ls=Ls1+Ls2の和に印加される電圧が変化し、入力電流Ic(Ir,Is,It)を制御することができる。この装置では、2台の変圧器TR1とTR2が1次側で直列接続されているので、2台の電力変換器CNV1,CNV2の入力電流は同じになり、高調波の少ない電流となる。また、多重化により、その入力電流Icは、極めて歪みの少ない波形に制御できる。
【0514】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧の和Vc=Vc1+Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0515】
以上は、2台の電力変換装置を用いた例を示したが、3台以上の電力変換装置を用いて直列多重運転できることは言うまでもない。
【0516】
本実施形態の電力変換装置によれば、変換装置の大容量化と、交流電源から供給される入力電流Icの高調波成分の低減を図ることができる。特に、直列多重運転により、各変換器に流れる交流側入力電流の高調波成分を低減することができ、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御パルス数を少なくできる利点がある。また、3相変圧器のもれインダクタンス分を利用することにより、従来の交流リアクトルを省略することが可能となる。これにより、電力回生が可能で、高効率・低コストな電力変換装置を提供することができる。
【0517】
(第32実施形態:請求項32に対応)
第32実施形態の電力変換装置を、図38を参照して説明する。
【0518】
図38において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ電気角30°の位相差を持たせた2組の2次巻線を有する3相変圧器TRと、この3相変圧器TRそれぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2と、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadはからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0519】
本実施形態の電力変換装置において、抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0520】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2から供給される。
【0521】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0522】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器SWを設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0523】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ieを制御する。
【0524】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0525】
2台の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2用い、電気角30°の位相差を持たせた2台の2次巻線を有する3相変圧器TRを用いて、交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成している。本実施形態では、変圧器の1次巻線はΔ結線され、第1の2次巻線はΔ結線,第2の2次巻線はY結線されている。すなわち、変圧器TRの第1の2次電圧Vr1,Vs1,Vt1に対し、第2の2次電圧Vr2,Vs2,Vt2はそれぞれ、電気角で30°ずつ位相がずれている。
【0526】
電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2は、直流平滑コンデンサCd1及びCd2に印加される電圧Vd1,Vd2が指令値(Vd*/2)にそれぞれ一致するように制御する。
【0527】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φ1,φ2を制御することにより、入力電流Ic1,Ic2を制御する。
【0528】
2台の電力変換装置の入力電流(変圧器TRの2次電流)Ic1,Ic2は独立に制御されるが、定常状態では直流電圧Vd1及びVd2がほぼ同じになり、有効電流指令値Iq1*と、Iq2*がほぼ等しくなるので、入力電流Ic1,Ic2の波高値はほぼ同じ値に制御される。その結果、変圧器の1次電流の高調波が互いに打ち消し合い電流リプルの少ない運転ができる。3組以上の電力変換装置を組み合わせて多重運転した場合には、変圧器TRの1次電流リプルをさらに低減することができる。
【0529】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は、変圧器TRのもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いところで動作させることにより、電流Icのゼロ点付近でスイッチングが行われ、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流を小さくすることができる。
【0530】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φ1,φ2を遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φ1,φ2を進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0531】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、それぞれ直流平滑コンデンサCd1,Cdnに印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。
【0532】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0533】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0534】
(第33実施形態:請求項33に対応)
第33実施形態の電力変換装置を、図39を参照して説明する。
【0535】
図39において、3相交流電源SUPに1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が電気角で30°の位相差を持つように構成した2台の3相変圧器TR1,TR2と、この3相変圧器TR1,TR2それぞれの2次巻線に交流側端子が接続された2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2と、この2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子それぞれに接続された2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2と、この2つの直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に双方向チョッパCHO1,CHO2を介して並列接続されたエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2と、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に開閉器SWを介して並列接続された抵抗装置Rとを備え、直流平滑コンデンサCd1,Cd2を直列接続した両端に接続された負荷装置Loadへの力行電力の供給及び負荷装置Loadからの回生電力の蓄積・制御を行う。また、3相交流電源SUPには、高圧配電負荷用変圧器TRxを介して高圧配電負荷(所内負荷)AC−Loadが接続されている。
【0536】
変圧器TR1はΔ/Δ結線の3相変圧器、変圧器TR2はΔ/Y結線の3相変圧器で、各2次側電圧は電気角で30°の位相差を持っている。3相ブリッジ結線された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の交流側端子は変圧器TR1の2次巻線に接続され、また、3相ブリッジ結線された第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は変圧器TR2の2次巻線に接続されている。さらに、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、直流側で直列接続するように構成している。
【0537】
抵抗装置Rに直列接続された開閉器SWは、負荷電流ILの大きさに応じて次のように制御される。
【0538】
力行運転(負荷電流IL>0)では、開閉器SWは開放しておく。そのとき、負荷電流ILは電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及びエネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2から供給される。
【0539】
回生運転(IL<0)では、例えば、一定の回生電力P2までは、開閉器SWは開放しておき、回生電力が設定値P2を超えたら開閉器SWを投入する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2及び双方向チョッパCHOが回生する最大電力を抑えることができる。しかも、抵抗装置Rに流れる電流は段階的に切り換えるだけでよく、従来抵抗チョッパ等が必要であったものが、開閉器SWを用意するだけで、回生電力を連続的に制御できるようになる。
【0540】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0541】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2として、鉛蓄電池や電気二重層キャパシタ等がある。双方向チョッパCHOは、スイッチング素子Qa,Qbと、還流ダイオードDa,Db及び直流リアクトルLeで構成され、エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2の充放電電流Ieを制御する。
【0542】
エネルギー蓄積装置EDLC1,EDLC2は、回生運転時に、その回生エネルギーの一部を吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2が授受する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0543】
前記2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧Vsに対する位相角φを調整することにより、各電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2を制御している。
【0544】
交流側で並列多重運転し、直流側で直列接続するように構成したもので、変換装置の大容量化と、直流出力電圧Vdの高圧化、及び交流電源から供給される入力電流Isの高調波成分の低減を図ることができる。特に、各変換器CNV1,CNV2毎に変圧器TR1,TR2を設けることにより、並列多重運転で流れる横流を低減することができる。
【0545】
2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を並列多重運転する場合、当該変換器間に横流が流れる。この横流の大きさは、交流リアクトルLs1,Ls2がない場合、直流電圧Vdの値と前記変圧器TR1,TR2のもれインダクタンス値Lx1,Lx2によってほぼ決定される。
【0546】
図38の装置のように、1台の変圧器TRに複数の2次巻線を設けて、それぞれに電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を接続する並列多重運転では、前記変換器間の横流を抑制するのは、2次側のもれインダクタンス値が関係する。しかし、変圧器TRのもれインダクタンス値を2次側だけ大きくするのは難しく、コストも高くなる。変圧器の2次側に外部交流リアクトルLs1,Ls2を挿入することにより、横流を抑制することができるが、当該外部リアクトルLs1,Ls2の分だけコストは高くなってしまう。
【0547】
本実施形態装置のように、各変換器CNV1,CNV2毎に、変圧器TR1,TR2を分けることにより、各変圧器TR1,TR2の1次と2次のもれインダクタンス値の和が横流を抑制する作用を果たし、外部リアクトルLs1,Ls2無しで、横流を十分小さな値に抑えることが可能となる。
【0548】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、一定のパルスパターンで動作し、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vd1及びVd2が一定ならば、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流出力電圧Vc1,Vc2の振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを変えることより、交流リアクトルLs1,Ls2(又は変圧器TR1,TR2のもれインダクタンスLx1,Lx2)に印加される電圧が変化し、各変換器の入力電流Ic1,Ic2を調整することができる。また多重化により、その合成入力電流Icは歪みの少ない波形に制御できる。
【0549】
電源電圧Vsに対する各変換器の出力電圧Vc1,Vc2の位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源から供給される有効電力Psが増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力Psが交流電源に回生される。
【0550】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を一定のパルスパターンで制御する場合、合成入力電流Icの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、変換器力率が1に近いため、各変換器の入力電流Ic1,Ic2のゼロ点付近でスイッチングが行われ、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子のしゃ断電流は小さくて済む。これにより、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0551】
電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、各直流平滑コンデンサCd1,Cd2に印加される電圧Vd1,Vd2がほぼ一定になるように制御する。その結果、その和電圧Vdo=Vd1+Vd2が一定に制御される。
【0552】
以上により本実施形態の電力変換装置によれば、直流出力電圧の高圧化を図ることができ、入力電流Icの高調波成分が小さく、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を提供できる。
【0553】
以上は、2台の電圧形自励式電力変換器を用いた場合について説明したが、3台以上の電圧形自励式電力変換器を用いて多重運転できることは言うまでもない。
【0554】
(第34実施形態:請求項34に対応)
第34実施形態の電力変換装置は、第29〜第33実施形態の電力変換装置におけるn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、各電力変換器CNV1〜CNVnの交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うようにしている。
【0555】
本実施形態の電力変換装置によれば、n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの交流側線間電圧Vc1〜Vcnを多重化して、それぞれ(60°/n)の位相差を有し、入力電流の高調波を低減している。また、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnを、3パルス,5パルス,…と奇数パルスで動作させることにより、少ない回数のスイッチングで入力電流歪みをさらに小さくできる。
【0556】
また、交流側出力電圧Vc1〜Vcnの基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)の範囲内でスイッチングを行うことにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの間で、他の変換器のスイッチングと干渉することなく、入力電流高調波を小さくできる。また、パルス数が増えても、入力電流のゼロクロス付近でスイッチングを行うことができ、自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができる。
【0557】
(第35実施形態:請求項35に対応)
第35実施形態の電力変換装置は、第29〜第34実施形態の電力変換装置におけるエネルギー蓄積装置EDLCを、負荷装置Loadからの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御し且つ抵抗装置Rの開閉器SWは、負荷装置Loadからの回生電力が第2の設定値を超えた場合に投入するように制御している。
【0558】
本実施形態の電力変換装置において、エネルギー蓄積装置EDLCは、回生運転時に、その回生電力が第1の設定値P1を超えた場合に、その超過エネルギーを吸収し、力行運転時に、蓄積されたエネルギーを放出する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。また、回生エネルギーの有効利用が可能となる。
【0559】
電気鉄道の変電所などでは、電圧形自励式電力変換器CNVにより電力を回生した場合、その電力はもっぱら所内負荷(高圧配電負荷)AC−Loadに供給する。その所内負荷以上の電力を回生した場合には、余った電力を系統にもどすが、契約上、電気料金には反映されない。
【0560】
そのため、所内負荷AC−Loadが定常的に消費する電力を回生してやるのが最良の運用方法となる。しかし、回生車両からくる電力は一定ではなく、常に変化しており、回生電力を制限してしまうと、直流き電電圧が上がって回生失効に至る。そこで、前記エネルギー蓄積装置EDLCは、前記負荷装置LOADからの回生電力が第1の設定値P1を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパCHOを制御する。これにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnが授受する電力は前記設定値P1に抑えられ、しかも、その設定値を所内負荷の消費電力程度にすることにより、電気料金を効率的に節約することができる。
【0561】
以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、余った回生電力を一旦エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えることにより、回生失効を防止し且つ所内負荷に必要な電力だけをn個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnから供給できる。さらに、エネルギー蓄積装置EDLCに蓄えたエネルギーを前記n個の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnにより、徐々に所内負荷に供給でき、次の回生までにできるだけ多くエネルギーを放出することにより、エネルギー蓄積装置EDLCの容量を低減することが可能となる。当然のことながら、当該蓄積エネルギーは力行車両への供給電力としても有効利用が可能となる。これにより、小さな容量の電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnと、小さな容量のエネルギー蓄積装置EDLCで、回生失効を防止でき、経済的な電力変換装置を提供することが可能となる。
【0562】
一方、開閉器SWを負荷装置Loadからの回生電力が第2の設定値P2を超えた場合に投入することにより、抵抗装置Rを前記直流平滑コンデンサCdに並列接続する。これにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVn及び双方向チョッパCHOが回生する電力が小さくなり、変換器容量が低減される。さらに、従来抵抗装置Rに電力を消費させる場合、その消費電力を制御するために大容量の抵抗チョッパ装置が必要とされたが、以上のように本実施形態の電力変換装置によれば、抵抗装置Rを開放/投入するだけの開閉器を設置すればよく、非常に安価な装置で、回生失効の防止と、電圧形自励式電力変換器容量の低減及びエネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を達成できる。
【0563】
(第36実施形態:請求項36に対応)
第36実施形態の電力変換装置は、第29〜第35実施形態の電力変換装置における抵抗装置R及び開閉器SWを、複数個に分割し、負荷装置Loadからの回生電力に応じて、投入個数を変えている。
【0564】
本実施形態の電力変換装置においては、複数個の抵抗装置R1〜Rnと、それぞれに直列接続された複数個の開閉器SW1〜SWnを用意し、回生電力の大きさに応じて、その投入個数を変えることにより、電圧形自励式電力変換器CNV1〜CNVnの制御すべき電力を小さくすることが可能となる。例えば、回生電力が、0〜3000kWまで連続的に変化する場合、500kWの抵抗器を5台用意し、順次投入台数を増やすことにより、段階的に回生電力を消費することができる。それを連続的に制御するには、500kWの電圧形自励式電力変換器を設置すればよい。抵抗装置Rが無い場合には、3000kWの電圧形自励式電力変換器が必要であったものが、5分割された抵抗装置R1〜R5を設置することにより、電圧形自励式電力変換器の容量を1/6に低減できる。
【0565】
【発明の効果】
以上のように、本実施形態の電力変換装置によれば、電力回生可能な電圧形自励式電力変換器と、エネルギー蓄積装置EDLCあるいは抵抗器と組み合わせることにより、瞬間的な回生大電力を吸収又は蓄積し、その蓄積エネルギーの有効利用を図るとともに前記電圧形自励式電力変換器の容量低減及び前記エネルギー蓄積装置EDLCの容量低減を図ることが可能となる。
【0566】
また、当該電圧形自励式電力変換器のスイッチング周波数を高くすることなく入力電流歪みを小さくし、変換器の電圧利用率が高く、スイッチング素子の最大しゃ断電流が小さく、高効率,高力率で電力回生可能な交流/直流電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電力変換装置の実施形態を示す構成図。
【図2】図1の装置の双方向チョッパの制御回路の実施形態を示す構成図。
【図3】図1の装置の動作を説明するための運転特性図。
【図4】本発明装置の具体的な主回路構成図と、当該装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図5】本発明装置の制御動作を説明するための交流側等価回路を示す図。
【図6】本発明装置の制御動作を説明するための交流側電圧・電流ベクトル図。
【図7】本発明装置の位相制御動作を説明するための制御ブロック図。
【図8】本発明装置の位相制御動作(1パルス)を説明するためのタイムチャート図。
【図9】本発明装置の制御動作を説明するための1パルス力行運転時の各部動作波形図。
【図10】本発明装置の制御動作を説明するための1パルス回生運転時の各部動作波形図。
【図11】本発明装置の別の位相制御動作(3パルス)を説明するためのタイムチャート図。
【図12】本発明装置の別の制御動作を説明するための3パルス力行運転時の各部動作波形図。
【図13】本発明装置の別の位相制御動作(5パルス)を説明するためのタイムチャート図。
【図14】本発明装置の別の制御動作を説明するための5パルス力行運転時の各部動作波形図。
【図15】本発明装置の動作(5パルス)を説明するための交流側出力電圧波形図。
【図16】本発明の電力変換装置の別の実施形態を示す構成図。
【図17】図16の装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図18】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図19】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図20】図19の装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図21】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図22】図21の装置の自励式電力変換器の制御回路の実施形態を示す構成図。
【図23】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図24】本発明装置の制御動作を説明するための別の交流側出力電圧波形図。
【図25】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図26】図25の装置の動作を説明するための特性図。
【図27】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図28】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図29】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図30】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図31】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図32】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図33】図32の装置の双方向チョッパの制御回路の実施形態を示す構成図。
【図34】図32の装置の動作を説明するための運転特性図。
【図35】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図36】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図37】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図38】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図39】本発明の電力変換装置のさらに別の実施形態を示す構成図。
【図40】従来の電力変換装置の構成図。
【図41】従来の電力変換装置の別の構成図。
【符号の説明】
SUP…交流電源、TRx…高圧配電用変圧器、AC−Load…高圧配電負荷(所内負荷)、TR,TR1,TR2…変換器用変圧器、Ls,Ls1,Ls2…交流リアクトル、CNV,CNV1,CNV2…電圧形自励式電力変換器、Cd,Cd1,Cd2…直流平滑コンデンサ、CHO,CHO1,CHO2…双方向チョッパ、EDLC,EDLC1,EDLC2…エネルギー蓄積装置EDLC、SW,SW1,SW2…開閉器、R,R1,R2…抵抗装置、Load…負荷、Qa,Qb…スイッチング素子、Da,Db…還流ダイオード、Le…直流リアクトル、ACR1,ACR2…電流制御回路、AVR…直流電圧制御回路、REF…充放電電流指令発生器、PHC…位相制御回路、PWM…パルス幅変調制御回路、LIM…リミッタ回路、AS1,AS2…切り換え回路、Ke…比例定数、COM…レベル比較器、HYS…ヒステリシス回路、SWC…開閉器制御回路、CAL…演算回路、C1,C2,C11,C12,C21,C22,C3…比較器、AD,AD1,AD2,ADp…加算器、ADr,ADs,ADt…加減算器、PTN1〜PTN3…パターン発生器、Gv(S),Gv1(S),Gv2(S)…電圧制御補償回路、Gi(S),Gi1(S),Gi2(S),Gie(S)…電流制御補償回路、FF…フィードフォワード補償器、Z,Z1,Z2…3相/dq座標変換回路、PLL,PLL1,PLL2…電源同期位相検出回路、PHC1,PHC2…位相制御回路。
Claims (36)
- 交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して接続された電圧形自励式電力変換器と、この電圧形自励式電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合の超過エネルギーを、前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 前記エネルギー蓄積装置によるエネルギー吸収の要求がないとき、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されたエネルギーを放出するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
- 前記電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記電源電圧に対する位相角を調整することにより、入力電流を制御し且つ前記直流平滑コンデンサに印加される電圧が指令値に一致するように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
- 前記電圧形自励式電力変換器を奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、前記電圧形自励式電力変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角30°以内でスイッチングを行うように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御することで前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に対し1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記n個の直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記3相交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記3相交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、前記n個の電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記n個の直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 前記n個の電圧形自励式電力変換器を奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、前記n個の電圧形自励式電力変換器それぞれの交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行うように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項5乃至9のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合の超過エネルギーを、前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項5乃至10のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 前記エネルギー蓄積装置によるエネルギー吸収の要求がないとき、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されたエネルギーを放出するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項5乃至11のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器と、この電圧形自励式電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記開閉器を前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 前記抵抗装置及び開閉器は複数個に分割されており、当該分割された前記複数個の抵抗装置及び開閉器の投入個数を前記負荷装置からの回生電力に応じて変える手段を具備することを特徴とする請求項13記載の電力変換装置。
- 前記電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に前記電源電圧に対する位相角を調整することにより、前記電圧形自励式電力変換器への入力電流を制御し且つ前記直流平滑コンデンサに印加される電圧が指令値に一致するように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項13又は14記載の電力変換装置。
- 前記電圧形自励式電力変換器を奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、前記電圧形自励式電力変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角30°以内でスイッチングを行うように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項15記載の電力変換装置。
- 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。
- 3相交流電源に1次巻線が各相毎に直列接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御し、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 前記n個の電圧形自励式電力変換器を奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該各変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行う手段を具備することを特徴とする請求項17乃至21のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 前記開閉器は、前記負荷装置からの回生電力が設定値を超えた場合に投入することにより、前記抵抗装置を前記直流平滑コンデンサに並列接続したことを特徴とする請求項17乃至22のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 前記抵抗装置及び開閉器は、複数個に分割し、前記負荷装置からの回生電力に応じて、投入個数を変えたことを特徴とする請求項17乃至23のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 交流電源に変圧器及び/又は交流リアクトルを介して交流側端子が接続された電圧形自励式電力変換器と、この電力変換器の直流側端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを前記エネルギー蓄積装置により吸収するように前記双方向チョッパを制御し、前記負荷装置からの回生電力が第2の設定値を超えた場合に前記抵抗装置の開閉器を投入するように制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 前記エネルギー蓄積装置によるエネルギー吸収の要求がないとき、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されたエネルギーを放出するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項25記載の電力変換装置。
- 前記電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記電源電圧に対する位相角を調整することにより、入力電流を制御し且つ前記直流平滑コンデンサに印加される電圧が指令値に一致するように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項25又は26記載の電力変換装置。
- 前記電圧形自励式電力変換器を奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角30°以内でスイッチングを行うように制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項27記載の電力変換装置。
- 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が各相毎に直列接続され且つ2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成されたn個の3相変圧器と、このn個の3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の3相ブリッジ結線の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側共通端子に接続された直流平滑コンデンサと、この直流平滑コンデンサに双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記直流平滑コンデンサに開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記直流平滑コンデンサに並列接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、交流入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ適宜の位相差を持たせたn組の2次巻線を有する3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。
- 3相交流電源に1次巻線が接続され且つ各2次巻線の出力電圧が適宜の位相差を持つように構成したn個の3相変圧器と、この3相変圧器それぞれの2次巻線に交流側端子が接続されたn個の電圧形自励式電力変換器と、このn個の電圧形自励式電力変換器の直流側端子それぞれに接続されたn個の直流平滑コンデンサと、このn個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に双方向チョッパを介して並列接続されたエネルギー蓄積装置と、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に開閉器を介して並列接続された抵抗装置とを備え、前記n個の直流平滑コンデンサを直列接続した両端に接続された負荷装置への力行電力の供給及び前記負荷装置からの回生電力の蓄積・制御を行う電力変換装置において、
前記n個の電圧形自励式電力変換器を前記交流電源の周波数に同期した一定のパルスパターンで動作させると共に、前記交流電源の電圧に対する位相角を調整することにより、各電圧形自励式電力変換器の入力電流を制御して前記直流平滑コンデンサに印加される電圧を制御する制御手段を具備したことを特徴とする電力変換装置。 - 前記n個の電圧形自励式電力変換器を奇数パルスのパルスパターンで動作させると共に、当該各変換器の交流側出力電圧の基本波のゼロクロス点から電気角(30°/n)以内でスイッチングを行う制御手段を具備したことを特徴とする請求項29乃至33のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 前記エネルギー蓄積装置は、前記負荷装置からの回生電力が第1の設定値を超えた場合にその超過エネルギーを吸収するように双方向チョッパを制御し且つ前記抵抗装置の開閉器は、前記負荷装置からの回生電力が第2の設定値を超えた場合に投入するように制御したことを特徴とする請求項29乃至34のいずれか一項記載の電力変換装置。
- 前記エネルギー蓄積装置によるエネルギー吸収の要求がないとき、前記エネルギー蓄積装置に蓄積されたエネルギーを放出するように前記双方向チョッパを制御する制御手段を具備したことを特徴とする請求項29乃至35のいずれか一項記載の電力変換装置。
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