以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳説する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の電気鉄道交流き電システムの第1の実施形態を示すブロック構成図である。図中、SUP1は3相交流電源、SS1〜SS3は変電所、CB1〜CB3は3相交流開閉器、CBm1〜CBm6は単相交流開閉器、S-TR1〜S-TR3はスコット結線変圧器、PPC1〜PPC3は二相電力連続融通装置(又は二相電力連続供給装置)、Fa,Fbは単相引き通し交流き電線、KS1〜KS4はセクションスイッチ、Trainは列車負荷をそれぞれ示す。
変電所SS1では、交流電源SUP1から3相−60Hzを受電し、スコット結線変圧器S-TR1により、3相交流電圧を2相交流電圧に変換し、M座およびT座の2相交流を作る。スコット結線変圧器S-TR1の2相出力電圧のうち、1相(M座)のみを単相交流き電線Fa,Fbに接続する。CBm1,CBm2は単相交流開閉器で、Faは上りの交流き電線,Fbは下りの交流き電線である。
二相電力融通装置PPC1は、第1の電力変換器例えば電圧形自励式電力変換器CNV11、第2の電力変換器例えば電圧形自励式電力変換器CNV12、直流平滑コンデンサCd1および単相変圧TRm1,TRt1で構成されており、前記スコット結線変圧器S-TR1のM座,T座間の電力を連続融通可能である。
変電所SS2でも同様に構成されており、スコット結線変圧器S-TR2のM座出力のみ交流き電線に接続され、T座は無負荷となる。このとき、二相電力融通装置PPC2は、スコット結線変圧器S-TR2のM座,T座間の電力を連続融通可能である。
変電所SS3でも同様に構成されており、スコット結線変圧器S-TR3のM座出力のみ交流き電線に接続され、T座は無負荷となる。このとき、二相電力融通装置PPC3は、スコット結線変圧器S-TR3のM座,T座間の電力を連続融通可能である。
セクションスイッチKS1〜KS4は、単相引き通しの交流き電線を各変電所SS1〜SS3間を区分するもので、スイッチKS1〜KS4を閉じることにより、変電所間の並列運転や延長給電を行うことができる。
以上のように、本発明の第1の実施形態では、既存設備の大部分を有効に活用しながら、単相引き通しの交流き電システムが実現でき、次のような効果が得られる。
まず、この交流き電線を利用する電車から見た場合、従来のM座/T座間の切換えが不要となり、デッドセクション区間の停電が無くなる。この結果、車両側の制御(特に位相同期信号の切換えや車上コンバータ/インバータの制御停止と再起動など)が簡略化され、列車の加速/減速性能が向上するだけでなく、乗り心地の改善が図れる。
次に、地上側では、既存設備の大部分を活用でき、3相/2相変換を行うスコット結線変圧器等が老朽化した場合、順次入れ替えまたは静止化することができ、運用面からも経済的なシステムを提供することができる。
さらに、2相平衡化が図られ、無効電力や高調波電流が補償できるので、スコット結線変圧器や交流電源SUP1にとって理想的な負荷となり、電源系統にやさしい電気鉄道き電システムを提供できる。
図2は、図1の実施形態の要部のみを示す電気鉄道交流き電システムの構成図である。 図中、SUP1は3相交流電源、TRはスコット結線変圧器、Faは単相交流き電線、Loadは電車負荷、TRm,TRtは単相変圧器、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、Cdは直流平滑コンデンサ、CONTは電力変換器CNV1,CNV2及び単相変圧器TRm,TRtを介して出力され、前述した二相不平衡をバランス(補償)させる補償電流(補償電流検出値)IMc,ITcの制御手段を示す。補償電流IMc,Itcは、図示しないホールCTのごとき電流検出器を各々、例えば図2の矢印の位置に配置することで検出できる。
スコット結線変圧器TRは、3相交流電圧Vu,Vv,Vwを2相交流電圧VM,VTに変換するもので、当該2相電圧VMとVTは90°の位相差がある。スコット結線変圧器TR以外に、3相電圧を2相電圧に変換する変圧器の結線法として、変形ウッドブリッジ結線変圧器等がある。
M座出力は単相交流き電線Faに接続し、T座はオープン(無負荷)とする。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の単相出力端子は単相変圧器TRmを介してM座端子に接続し、第2の電圧形自励式電力変換器CNV2の単相出力端子は単相変圧器TRtを介してT座端子に接続する。電力変換器CNV1,CNV2および直流平滑コンデンサCdは、2相電力融通装置PPCを構成する。
補償電流制御手段CONTは、直流電圧制御回路Vd-Cont、補償電流指令回路Ic-Ref、電流制御回路IMc-Cont,ITc-Contおよびパルス幅変調制御回路PWM1,PWM2で構成されている。
直流電圧制御回路Vd-Contは、前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、指令値Vd*と電圧Vdを比較して、その偏差を増幅することにより、入力電流の波高値指令Ism*とする。
補償電流指令回路Ic-Refは、当該波高値指令Ism*に前記2相電圧VM,VTに同期した単位正弦波sinωt,cosωtを乗ずることにより、入力電流指令値IMs*とIts*を作る。
IMs*=Ism*×sinωt
ITs*=Ism*×cosωt
次に、2相負荷電流IML,ITLを検出し、当該負荷電流検出値IML,ITLからそれぞれ前記入力電流指令値IMs*,ITs*を差し引くことにより、電力変換器CNV1およびCNV2から発生する補償電流の指令値IMc*,ITc*を作る。
IMc*=IML−IMs*
ITc*=ITL−ITs*
ただし、この場合、T座の負荷電流ITL=0なので、ITc*=−ITs*となる。
電流制御回路IMc-Contは、補償電流IMcと前記指令値IMc*を比較し、その偏差を増幅して電圧指令値e1*を作り、電力変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。電力変換器CNV1は、前記電圧指令値e1*に比例した電圧VMcを出力し、補償電流IMcがその指令値IMc*に一致するように制御する。その結果、M座の入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IMs*に制御される。
T座の電流制御回路ITc-Contも同様に制御され、補償電流検出値ITcと前記指令値ITc*を比較し、その偏差を増幅して電圧指令値e2*を作り、電力変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。電力変換器CNV2は、前記電圧指令値e2*に比例した電圧VTcを出力し、補償電流ITcがその指令値ITc*に一致するように制御する。ITc=ITc*となり、T座の入力電流ITsは、やはり、ITs=ITs*となる。
すなわち、スコット結線変圧器TRのM座およびT座の電流IMs,ITsは、波高値が同じIsm*で、それぞれの電圧VM,VTに同相の正弦波電流に制御されることとなる。その結果、3相平衡化された力率=1の正弦波電流のみが前記交流電源SUP1から供給されることになり、電源系統にやさしいシステムを構築できる。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、前記波高値指令Ism*が増加し、交流電源SUP1からの供給電力Psが増加し、負荷電力PLより大きくなり、Ps−PLの分が前記直流平滑コンデンサCdにエネルギーとして蓄えられる。その結果、Vdが増加し、Vd=Vd*となるように制御される。逆に、Vd>Vd*となった場合、波高値指令Ism*が減少し、Ps<PLとなって、直流平滑コンデンサCdの蓄積エネルギーを減らし、やはり、Vd=Vd*となるように制御される。
図3は、二相電力融通装置PPCの具体的な主回路構成例を示すものである。図中、CNVm1〜CNVmnは第1の電圧形自励式電力変換器CNV1を構成するn台の単相フルブリッジ結線の電圧形変換器、Trm1〜Trmnはn台の単相変圧器で、1次巻線は直列接続され、スコット結線変圧器TRのM座巻線端子に接続されている。当該単相変圧器Trm1〜Trmnの2次巻線は各電圧形変換器CNVm1〜CNVmnの交流端子に接続されている。
また、CNVt1〜CNVtnは第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を構成するn台の単相フルブリッジ結線の電圧形変換器、Trt1〜Trtnはn台の単相変圧器で、1次巻線は直列接続され、スコット結線変圧器TRのT座巻線端子に接続されている。当該単相変圧器Trt1〜Trtn の2次巻線は各電圧形変換器CNVt1〜CNVtnの交流端子に接続されている。
Cd1〜Cdnは直流平滑コンデンサで、単相フルブリッジ結線の電圧形変換器CNVm1〜CNVmn、CNVt1〜CNVtnの直流側端子に分割して接続されている。また、当該直流側端子は並列接続されている。
n台の単相出力変換器を直列多重結線することにより、電力変換器CNV1,CNV2の大容量化を図り、より低いスイッチング周波数で、補償電流IMc,ITcの電流制御応答を改善し、PWM制御に伴う電流高調波を減らすことができる。
図4は、単相フルブリッジ結線の電圧形変換器CNVm1の具体的な主回路構成例を示すものである。図中、Sa,Sb,Sc,Sdは自己消弧素子、Da,Db,Dc,Ddは高速ダイオード、Trm1は単相変圧器、Cd1は直流平滑コンデンサをそれぞれ表す。
図5は、単相フルブリッジ結線の電圧形変換器CNVm1の交流出力電圧Vc1の波形(1パルス)を表すもので、次のようになる。
SaとSdがオン(SbとScはオフ)のとき、Vc1=+Vd
SbとScがオン(SaとSdはオフ)のとき、Vc1=−Vd
SaとScがオン(SbとSdはオフ)のとき、Vc1=0
SbとSdがオン(SaとSchaオフ)のとき、Vc1=0
すなわち、3段階(+Vd,0,−Vd)の電圧を発生することができ、さらに、パルス数を増やすことにより、よりきめ細かな制御と高調波低減が図られる。
また、図3のように、直列多重結線することにより、変換器の大容量化と高調波低減が可能となる。
図6は、本発明システムの補償電流制御手段CONTの具体的な構成例を示す。図中、C1〜C3は比較器、Gv(S)は電圧制御補償回路、M1,M2は乗算器、AD1〜AD4は加減算器、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、PWM1,PWM2はパルス幅変調制御回路を表す。
比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、入力電流の波高値指令Ism*を作る。
乗算器M1は、スコット結線変圧器TRのM座電圧VMに同期した単位正弦波sinωtを求め、前記入力電流波高値指令Ism*を乗じ、入力電流指令IMs*=Ism*×sinωtを出力する。
乗算器M2は、スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、前記入力電流波高値指令Ism*を乗じ、入力電流指令ITs*=Ism*×cosωtを出力する。
加減算器AD1により、M座負荷電流IMLの検出値から前記M座入力電流指令値IMs*を引き算し、M座補償電流指令値IMc*=IML−IMs*を求める。
同様に、加減算器AD3により、T座負荷電流ITLの検出値から前記T座入力電流指令値ITs*を引き算し、T座補償電流指令値ITc*=ITL−ITs*を求める。
比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加減算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。当然のことながら、前記単相変圧器TRmの漏れインダクタンスが小さい場合には、当該変圧器TRmの1次または2次巻線に直列にリアクトルLsmoを挿入する場合もある。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IML−(IML−IMs*)=IMs*となるように制御される。この入力電流IMsは、M座電圧VMと同相(力率=1)の正弦波電流となる。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、上記補償電流指令値ITc*を比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを、次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流IMcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=ITL−ITc*=ITL−(ITL−ITs*)=ITs*となるように制御される。この入力電流ITsは、T座電圧VTと同相(力率=1)の正弦波電流となる。ただし、T座負荷電流ITL=0となっている。
上記スコット結線変圧器TRのM座,T座の電流IMsとITsは、同じ振幅値Ism*で、位相が90°ずれた2相平衡化電流となる。この結果、3相交流電源SUP1から供給される電流も3相平衡化された力率=1の正弦波電流となる。
図7は、交流き電線Faにつながれた電車が力行運転している場合のM座,T座の電圧・電流ベクトル図を示す。T座負荷電流ITL=0で、M座負荷電流IMLは、電圧VMに対し若干の遅れ位相θとなっている。負荷電力PL=VM×IML×cosθで、損失が十分小さいと仮定すれば、入力電力Ps=VM×IMs+VT×ITsに等しくなる。M座の有効電力PMsとT座の有効電力PTsは等しくなり、負荷電力PLの半分をスコット結線変圧器のM座巻線から供給し、あとの半分をT座巻線から供給するようになる。
T座巻線から供給される電力PTs=PL/2は、第2の電圧形自励式電力変換器CNV2によって回生され、直流平滑コンデンサCdに供給される。すなわち、ITc=−ITsとなる。
さらに、その電力PL/2は、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1を介して単相交流き電線Faに供給される。そのとき、負荷の無効電力QL=VM×ILM×sinθも含めて前記第1の電圧形自励式電力変換器CNV1から供給され、スコット結線変圧器TRのM座巻線からは有効電力PMs=PL/2だけが供給されることになる。
図8は、交流き電線Faにつながれた電車Loadが回生運転している場合のM座,T座の電圧・電流ベクトル図を示す。回生電力PLの半分はスコット結線変圧器TRのM座巻線に流れ、あとの半分は、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1→直流平滑コンデンサCd→第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を介してT座巻線に流れる。このとき、負荷の無効電力QLは、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1によって補償される。
図9は、M座に力行負荷をとった場合の、シミュレーション結果を示すもので、(a)の波形はM座の電圧VM、T座の電圧VT、(b)の波形はM座の負荷電流ILM、T座の負荷電流ILT、(c)の波形はM座の補償電流IMc、T座の補償電流ITc、(d)の波形はM座の入力電流IMs、T座の入力電流ITsを示す。この(b)の波形で示すように、T座の負荷電流ILT T座の負荷電流ITL≒0となっており、M座補償電流IMcは力行、T座補償電流ITcは回生電流となる。この結果、スコット結線変圧器TRのM座の巻線電流IMsと、T座の巻線電流ITsは、振幅が等しく、かつ電圧波形の位相が90度ずれている。つまり、M座の巻線電流IMsとT座の巻線電流Itsは平衡化された正弦波電流に制御されている。
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態を示す電気鉄道交流き電システムの構成図である。
図中、SUP1は3相交流電源、TRはスコット結線変圧器、Faは単相交流き電線、Loadは電車負荷、TRm,TRtは単相変圧器、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、Cdは直流平滑コンデンサ、Lf,CfはLCフィルタを構成するリアクトルとコンデンサ、CONTは前記電力変換器CNV1,CNV2から出力する補償電流IMc,ITcの制御手段を示す。
スコット結線変圧器TRは、3相交流電圧Vu,Vv,Vwを2相交流電圧VM,VTに変換するもので、当該2相電圧VMとVTは90°の位相差がある。
M座出力は単相交流き電線Faに接続し、T座はオープン(無負荷)とする。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の単相出力端子はM座端子に接続し、第2の電圧形自励式電力変換器CNV2の単相出力端子はT座端子に接続する。LCフィルタ(Lf,Cf)は、交流き電線の周波数(60Hz)の2倍の周波数に共振するようにリアクトルLfと、コンデンサCfの値を決める。
補償電流制御手段CONTは、直流電圧制御回路Vd-Cont、補償電流指令回路Ic-Ref、電流制御回路IMc-Cont,ITc-Contおよびパルス幅変調制御回路PWM1,PWM2で構成されている。
直流電圧制御回路Vd-Contは、前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、指令値Vd*と比較して、その偏差を増幅することにより、入力電流の波高値指令Ism*とする。
補償電流指令回路Ic-Refは、当該波高値指令Ism*に前記2相電圧VM,VTに同期した単位正弦波sinωt,cosωtを乗ずることにより、入力電流指令値IMs*とIts*を作る。
IMs*=Ism*×sinωt
ITs*=Ism*×cosωt
次に、2相負荷電流IML,ITLを検出し、当該負荷電流検出値IML,ITLからそれぞれ前記入力電流指令値IMs*,ITs*を差し引くことにより、電力変換器CNV1およびCNV2から発生する補償電流の指令値IMc*,ITc*を作る。
IMc*=IML−IMs*
ITc*=ITL−ITs*
ただし、この場合、T座の負荷電流ITL=0なので、ITc*=−ITs*となる。
電流制御回路IMc-Contは、補償電流検出値IMcと前記指令値IMc*を比較し、その偏差を増幅して電圧指令値e1*を作り、電力変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。電力変換器CNV1は、前記電圧指令値e1*に比例した電圧VMcを出力し、補償電流IMcがその指令値IMc*に一致するように制御する。その結果、M座の入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IMs*に制御される。
T座の電流制御回路ITc-Contも同様に制御され、ITc=ITc*となり、T座の入力電流ITsは、やはり、ITs=ITs*となる。
すなわち、スコット結線変圧器TRのM座およびT座の電流IMs,ITsは、波高値が同じIsm*で、それぞれの電圧VM,VTに同相の正弦波電流に制御されることとなる。その結果、3相平衡化された力率=1の正弦波電流のみが前記交流電源SUP1から供給されることになり、電源系統にやさしいシステムを構築できる。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、前記波高値指令Ism*が増加し、交流電源SUP1からの供給電力Psが増加し、負荷電力PLより大きくなり、Ps−PLの分が前記直流平滑コンデンサCdにエネルギーとして蓄えられる。その結果、Vdが増加し、Vd=Vd*となるように制御される。逆に、Vd>Vd*となった場合、波高値指令Ism*が減少し、Ps<PLとなって、直流平滑コンデンサCdの蓄積エネルギーを減らし、やはり、Vd=Vd*となるように制御される。
図11に、単相交流き電線Faにつながれた例えば新幹線負荷Loadの電圧VM、電流IML、電力PLおよび直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdの波形例を示す。
M座電圧VMに対し、負荷電流IMLは位相角θだけ遅れている。単相負荷電力PLは交流き電線の周波数f1=60Hzに対し、その2倍の周波数(120Hz)で変動する。
すなわち、M座電圧VM=Vsm×sinωt、負荷電流IML=ILm×sin(ωt−θ)とした場合、電力PLは、
PL=Vsm×sinωt×ILm×sin(ωt−θ)
=(Vsm×ILm/2){cosθ−cos(2・ωt−θ)}
となる。第1項は一定値で、前記交流電源SUP1からスコット結線変圧器TRを介して供給される電力Psに一致する。第2項が電力変動分ΔPLで、電源周波数の2倍の周波数で変動する。
この単相負荷に伴う電力変動分ΔPLを直流平滑コンデンサCdで吸収する場合、当該直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdの変動分ΔVdは、負荷電力PLに比例し、直流平滑コンデンサCdの容量に反比例する。
すなわち、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapは、直流電圧の平均値をVdoとした場合、
Icap≒ΔPL/Vdo
=−{Vsm×ILm/(2・Vdo)}・cos(2・ωt−θ)
となる。ゆえに、直流電圧Vdの変動分ΔVdは、
ΔVd=(1/Cd)∫Icap・dt
≒−{Vsm×ILm/(4・Vdo・ω・Cd)}×sin(2・ωt−θ)
となる。例えば、電源周波数f1=60Hz、負荷電力PL=20MW(力率=0.95)、直流電圧Vdo=8kV、 Cd=10mFとした場合、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapのピーク値は、Icap(peak)=20MW/0.95/8kV≒2,632A となり、そのときの電圧変動ΔVdはピーク値で、ΔVd(peak)≒349V となる。
直流電圧の変動ΔVdは、第1および第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2の補償電流制御に影響を与え、補償電流の歪みをもたらす。直流電圧変動ΔVdを小さく抑えるには、コンデンサCdの容量を大きくする必要があり、Cd容量を大きくしすぎると、不経済なシステムとなる。
図10の実施形態では、前記単相交流き電線の周波数の2倍付近に共振周波数をあわせたLCフィルタを前記直流平滑コンデンサCdに並列接続している。
例えば、電源周波数f1=60Hzとした場合、2・f1=120Hzに共振周波数を合わせたLCフィルタが用意される。すなわち、Cf=4mFとした場合、Lf=0.44mHとなる。このLCフィルタ回路に前記Icapが吸収され、前記直流電圧の変動ΔVdが抑制される。また、直流平滑コンデンサCdは、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2のPWM制御に伴う高調波電流を吸収するために無くすことはできないが、Cdの容量を大幅に減らすことができ、装置の小型軽量化とコスト低減が図れる。
以上のように、交流き電線の周波数の2倍で変動する単相負荷に伴う電力変動分ΔPLをLCフィルタで吸収することにより、前記直流電圧の変動ΔVdを抑制する。この結果、直流平滑コンデンサCdの容量を小さくでき、かつ、直流電圧の変動ΔVdを大幅に低減できる。負荷急変などで過渡時にLCフィルタによる電気振動現象が懸念されるが、前記第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2により直流電圧制御を行っているため、電気振動を減衰させるダンパー作用が働き、安定なシステムを提供できる。
(第3の実施形態)
図12は、本発明の交流き電システムの前記第1および第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2から出力する補償電流IMc,ITcの制御手段の第3の実施形態を示す構成図である。
図中、Kffは比例要素、C1〜C3は比較器、Gv(S)は電圧制御補償回路、M1,M2は乗算器、AD1〜AD5は加減算器、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、PWM1,PWM2はパルス幅変調制御回路を表す。
単相負荷Loadの電力PLは、交流き電線の周波数f1の2倍の周波数で変動する。当該負荷電力PLの検出値を時間平均化し、負荷電力の平均値PL(av)を求める。次に、比例要素Kffを介して、前記負荷電力平均値PL(av)に比例した前向き補償の有効電流波高値指令Ismff*を作る。
負荷電力PLの半分ずつをスコット結線変圧器TRのM座およびT座巻線から供給する場合、前記波高値指令Ismffは、電圧VMおよびVTの波高値をVsmとし、次のようになる。
すなわち、
PL(av)=VM×IMs+VT×ITs
=Vsm・sinωt×Ismff・sinωt+Vsm・cosωt×Ismff・cosωt
=Vsm・Ismff
となり、
Ismff*=PL(av)/Vsm
が求められる。ゆえに、Kff=1/Vsm となる。
一方、比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、別の有効電流波高値指令Ismo*を作る。
さらに、加減算器AD5により、電圧制御補償回路Gv(S)からの出力信号Ismo*と前記比例要素Kffの出力信号Ismff*を加えて、新たな有効電流波高値指令Ism*=Ismo*+Ismff*を作る。
乗算器M1は、スコット結線変圧器TRのM座電圧VMに同期した単位正弦波sinωtを求め、前記入力電流波高値指令Ism*を乗じ、入力電流指令IMs*=Ism*×sinωtを出力する。また、乗算器M2は、スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、前記入力電流波高値指令Ism*を乗じ、入力電流指令ITs*=Ism*×cosωtを出力する。
加減算器AD1により、M座負荷電流IMLの検出値から前記M座入力電流指令値IMs*を引き算し、M座補償電流指令値IMc*=IML−IMs*を求める。
同様に、加減算器AD3により、T座負荷電流ITLの検出値から前記T座入力電流指令値ITs*を引き算し、T座補償電流指令値ITc*=ITL−ITs*を求める。
比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加減算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IML−(IML−IMs*)=IMs*となるように制御される。この入力電流IMsは、M座電圧VMと同相(力率=1)の正弦波電流となる。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、上記補償電流指令値ITc*を比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを、次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流IMcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=ITL−ITc*=ITL−(ITL−ITs*)=ITs*となるように制御される。この入力電流ITsは、T座電圧VTと同相(力率=1)の正弦波電流となる。ただし、T座負荷電流ITL=0となっている。
上記スコット結線変圧器TRのM座,T座の電流IMsとITsは、同じ振幅値Ism*で、位相が90°ずれた2相平衡化電流となる。この結果、3相交流電源SUP1から供給される電流も3相平衡化された力率=1の正弦波電流となる。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、前記波高値指令Ismo*が増加し、交流電源SUP1からの供給電力Psが増加し、負荷電力PLより大きくなり、Ps−PLの分が前記直流平滑コンデンサCdにエネルギーとして蓄えられる。その結果、Vdが増加し、Vd=Vd*となるように制御される。逆に、Vd>Vd*となった場合、波高値指令Ismo*が減少し、Ps<PLとなって、直流平滑コンデンサCdの蓄積エネルギーを減らし、やはり、Vd=Vd*となるように制御される。
負荷電力PLが急変した場合、当該負荷電力平均値PL(av)に比例した前向き補償の有効電流波高値指令Ismff*も変化し、いち早く、負荷電力平均値PL(av)に見合った2相平衡化有効電流指令値IMs*,ITs*を与えることができ、過渡時の直流電圧Vdの変動を抑えることができる。
(第4の実施形態)
図13は、本発明の交流き電システム補償電流の制御手段の第4の実施形態を示す構成図である。図中、C1〜C3は比較器、Gv(S)は電圧制御補償回路、INVは反転回路、M2は乗算器、Kmは比例要素、AD2,AD4は加算器、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、PWM1,PWM2はパルス幅変調制御回路を表す。
比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、反転回路INV を介して、T座の有効電流波高値指令ITcm*を作る。
スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、次の乗算器M2により、前記入力電流波高値指令ITcm*の反転値を乗じ、T座補償電流指令ITc*=ITcm*×cosωtを出力する。
一方、M座負荷電流IMLの検出値を比例要素Kmを介して、M座補償電流指令値IMc*を求める。比例定数Kmは0〜1で選択できるが、例えば、Km=0.5とする。すなわち、M座補償電流指令値は、IMc*=IML/2 となる。
比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IML−IML/2=IML/2となるように制御される。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、上記補償電流指令値ITc*を比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを、次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流ITcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、T座負荷電流ITL=0なので、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=−ITc*=−ITcm*×cosωtとなるように制御される。この入力電流ITsは、T座電圧VTと同相(力率=1)の正弦波電流となる。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、偏差εvは正の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償電流の波高値指令ITcm*は負の値で増加し、第2の電圧形自励式電力変換器CNV2の補償電流ITc=−ITsは、T座電圧VTと逆相に流れる。この結果。スコット結線変圧器TRのT座巻線から第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を介して、直流平滑コンデンサCdに有効電力PTs=VT×ITsが供給され、直流電圧Vdを上昇させる。
逆に、Vd>Vd*となった場合は、偏差εvは負の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償電流の波高値指令ITcm*は正の値で増加し、補償電流ITc=−ITsは、T座電圧VTと同相で増加し、直流平滑コンデンサCdから有効電力PTsがT座巻線へもどされる。結果的に、Vd=Vd*となるように制御される。
図14は、図13の制御手段によって制御した場合の力行負荷時の電圧・電流ベクトル図を示す。 M座負荷電流IMLは、M座電圧VMより位相角θだけ遅れて流れている。Km=0.5とした場合、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1からの補償電流IMcは、IMc=IML/2に制御される。これにより、直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが低下し、Vd*>Vdとなる。T座の補償電流の波高値指令ITcm*は負の値で増加し、電圧VTに対し、逆相の補償電流ITcを流す。T座巻線の電流ITsは補償電流ITcの反転値なので、電力PTsがT座巻線から第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を介して直流平滑コンデンサCdに供給され、Vd*=Vdとなるように制御される。
M座巻線から供給される電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML/2となる。T座入力電流ITsに対し、M座入力電流IMsの位相は(90°+θ)となり、若干の電流不平衡が残るが、補償電流IMcは、負荷電流IMLの無効分の半分を負担すればよく、電力変換器CNV1の容量を抑えることができる。
図15は、本発明の補償電流制御手段のさらに別の第4の実施形態を示す構成図である。図中、C1〜C3は比較器、Gv(S)は電圧制御補償回路、INVは反転回路、M2,M3は乗算器、Km,Kqは比例要素、AD2,AD4,AD5は加算器、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、PWM1,PWM2はパルス幅変調制御回路を表す。
比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、反転回路INV を介して、T座の有効電流波高値指令ITpm*を作る。
スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、次の乗算器M2により、前記有効電流波高値指令ITpm*を乗じ、T座有効補償電流指令ITcp*=ITpm*×cosωtを出力する。
また、負荷の無効電力QLを検出し、その時間平均値QL(av)に比例したT座の無効電流波高値指令ITqm*を作る。Kqはそのときの比例定数で、例えば、負荷無効電力QL(av)の半分を負担するように比例定数Kqを与える。スコット結線変圧器TRのM座電圧VMに同期した単位正弦波sinωtを求め、次の乗算器M3により、前記無効電流波高値指令ITqm*を乗じ、T座無効補償電流指令ITcq*=ITqm*×sinωtを出力する。
次に、加算器AD5により、上記T座有効補償電流指令ITcp*とT座無効補償電流指令ITcq*を加え、T座の補償電流指令値ITc*を求める。
一方、M座負荷電流IMLの検出値を比例要素Kmを介して、M座補償電流指令値IMc*を求める。比例定数Kmは0〜1で選択できるが、ここでは、Km=0.5とする。ゆえに、M座補償電流指令値は、IMc*=IML/2 となる。
比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IML−IML/2=IML/2となるように制御される。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、前記T座補償電流指令値ITc*を比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを、次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流ITcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、T座負荷電流ITL=0なので、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=−ITc*=−(ITpm*×cosωt+Itqm*×sinωt)となるように制御される。当該T座入力電流ITsはT座電圧VTに対し、負荷力率角θだけ遅れる。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、偏差εvは正の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償有効電流の波高値指令ITpm*は負の値で増加し、T座入力電流ITs=−ITcの有効分が増加して、スコット結線変圧器TRのT座巻線から第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を介して、直流平滑コンデンサCdに有効電力PTsが供給され、直流電圧Vdを上昇させる。
逆に、Vd>Vd*となった場合は、偏差εvは負の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償有効電流の波高値指令ITpm*は正の値で増加し、入力電流ITs=−ITcの有効分が負となり、直流平滑コンデンサCdから有効電力PTsがT座巻線へもどされる。結果的に、Vd=Vd*となるように制御される。
図16は、図15の制御手段によって制御した場合の力行負荷時の電圧・電流ベクトル図を示す。 M座負荷電流IMLは、M座電圧VMより位相角θだけ遅れて流れている。Km=0.5とした場合、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1からの補償電流IMcは、IMc=IML/2に制御される。M座巻線から供給される電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML/2となる。
IMc=IMsは、M座電圧VMに対し、負荷力率角θだけ遅れる。
一方、T座補償電流ITcの有効分は、直流電圧Vdが指令値Vd*に一致するように与えられ、Vd=Vd*の定常状態では、前記M座補償電流IMcの有効分の反転値に等しくなる。さらに、T座補償電流ITcの無効分を前述のように負荷電流IMLの無効分の1/2に設定すると、T座補償電流ITcは、M座補償電流IMcに対し、振幅が同じで、位相角90°遅れとなる。
T座入力電流ITsは、ITs=ITcなので、M座入力電流IMsに対し、振幅が同じで、位相角90°進みとなり、T座電圧に対しては、位相角θだけ遅れる。
この結果、スコット結線変圧器TRのM座およびT座巻線の電流は、平衡化され、3相交流電源SUP1から供給される電流も3相平衡化された電流となる。
本制御法によれば、M座およびT座巻線の電流IMs,ITsは、負荷力率角θだけ遅れ位相となるが、2相平衡化された電流となる。また、補償電流IMc,ITcの振幅は一致し、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を同じ容量に設計することができる。
(第5の実施形態)
図17は、本発明の交流き電システムにおける補償電流制御手段の第5の実施形態を示す構成図である。図中、C1〜C3は比較器、Gv(S)は電圧制御補償回路、INVは反転回路、M1,M2は乗算器、KLは比例要素、AD2〜AD4は加算器、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、PWM1,PWM2はパルス幅変調制御回路を表す。
比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、T座入力電流の波高値指令ITsm*を作る。
スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、次の乗算器M2により、前記波高値指令ITsm*を乗じ、T座入力電流指令ITs*=ITsm*×cosωtを求める。加減算器AD3により、M座補償電流指令値ITc*=ITL−ITs*を作る。ただし、T座負荷電流ITL=0となっているので、ITc*=−ITs*となる。
一方、負荷電力PL=VM×IML×cosθ を検出し、その時間平均値PL(av)を求める。比例要素KLを介して、例えばKL=0.5とした場合、当該負荷電力平均値PL(av)の1/2相当分をM座補償有効電流の波高値指令IMcm*とし、乗算器M1により、M座電圧VMに同期した単位正弦波sinωtと掛け算して、M座補償電流指令値IMc*=IMcm*×sinωtを求める。
比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*となるように制御される。補償電流IMcには無効分を含まないので、M座入力電流IMsは、負荷電流IMLの有効分の半分とIMLの無効分の全てを含むことになる。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、前記T座補償電流指令値ITc*を比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流ITcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、T座負荷電流ITL=0なので、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=−ITc*=−ITcm*×cosωtとなるように制御される。当該T座入力電流ITsはT座電圧VTに対し、同相の正弦波に制御される。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、偏差εvは正の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償有効電流の波高値指令ITpm*は負の値で増加する。故に、T座入力電流ITs=−ITcが増加して、スコット結線変圧器TRのT座巻線から第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を介して直流平滑コンデンサCdに有効電力PTsが供給され、直流電圧Vdを上昇させる。
逆に、Vd>Vd*となった場合は、偏差εvは負の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償有効電流の波高値指令ITcm*は正の値で増加し、入力電流ITs=−ITcの有効分が負となり、直流平滑コンデンサCdから有効電力PTsがT座巻線へもどされる。結果的に、Vd=Vd*となるように制御される。
図18は、図17の制御手段によって制御した場合の力行負荷時の電圧・電流ベクトル図を示す。M座負荷電流IMLは、M座電圧VMより位相角θだけ遅れて流れている。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1からの補償電流IMcは、M座電圧と同相に制御される。M座巻線から供給される電流IMsは、IMs=IML−IMcとなり、負荷電流IMLの有効分の半分と、IMLの無効分の全てを含むように制御される。
一方、T座補償電流ITcの有効分は、直流電圧Vdが指令値Vd*に一致するように与えられ、Vd=Vd*の定常状態では、前記M座補償電流IMcに対し、振幅が同じで、位相が90°遅れたベクトルとなる。T座入力電流ITsは、ITs=−ITcなので、T座電圧VMに対し同相の正弦波に制御される。
本制御法によれば、M座およびT座の補償電流IMc,ITcは、負荷電流IMLの有効分のKL=0.5倍となり、2台の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を同じ容量に設計することができ、負荷の無効電力QLを補償する必要が無くなる。この結果、自励式電力変換器CNV1,CNV2の容量低減を図ることが可能となる。
図19は、本発明の交流き電システムにおける補償電流制御手段のさらに別の第5の実施形態を示す構成図である。図中、C1〜C3は比較器、Gv(S)は電圧制御補償回路、INVは反転回路、M1,M2は乗算器、KLは比例要素、AD1〜AD4は加減算器、Gi1(S),Gi2(S)は電流制御補償回路、PWM1,PWM2はパルス幅変調制御回路を表す。
比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、T座入力電流の波高値指令ITsm*を作る。
スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、次の乗算器M2により、前記波高値指令ITsm*を乗じ、T座入力電流指令ITs*=ITsm*×cosωtを求める。加減算器AD3により、M座補償電流指令値ITc*=ITL−ITs*を作る。ただし、T座負荷電流ITL=0となっているので、ITc*=−ITs*となる。
一方、負荷電力PL=VM×IML×cosθ を検出し、その時間平均値PL(av)を求める。比例要素KLを介して、例えばKL=0.5とした場合、当該負荷電力平均値PL(av)の1/2相当分をM座入力電流の波高値指令IMsm*とし、乗算器M1により、M座電圧VMに同期した単位正弦波sinωtと掛け算して、M座入力電流指令値IMs*=IMsm*×sinωtを求める。
加減算器AD1により、負荷電流IMLの検出値から上記入力電流指令値IMs*を引き算し、M座補償電流指令値IMc*=IML−IMs*を作る。比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IML−(IML−IMs*)=IMs*となるように制御される。すなわち、M座入力電流IMsは、M座電圧VMと同相の正弦波に制御される。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、前記T座補償電流指令値ITc*と比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流ITcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、T座負荷電流ITL=0なので、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=−ITc*=−ITcm*×cosωtとなるように制御される。当該T座入力電流ITsはT座電圧VTに対し、同相の正弦波に制御される。
直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdが指令値Vd*より低くなった場合、偏差εvは正の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償有効電流の波高値指令ITcm*は負の値で増加する。故に、T座入力電流ITs=−ITcが増加して、スコット結線変圧器TRのT座巻線から第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を介して直流平滑コンデンサCdに有効電力PTsが供給され、直流電圧Vdを上昇させる。
逆に、Vd>Vd*となった場合は、偏差εvは負の値となり、それを増幅・反転した前記T座補償有効電流の波高値指令ITcm*は正の値で増加し、入力電流ITs=−ITcの有効分が負となり、直流平滑コンデンサCdから有効電力PTsがT座巻線へもどされる。結果的に、直流電圧Vdが減少し、Vd=Vd*となるように制御される。
図20は、図19の制御手段によって制御した場合の力行負荷時の電圧・電流ベクトル図を示す。M座巻線の電流IMsおよびT座巻線の電流ITsは、それぞれM座電圧VMおよびT座電圧VTと同相に制御される。直流電圧Vd=Vd*となる定常状態では、その振幅値も一致し、2相平衡化された正弦波電流となり、3相交流電源SUP1から供給される3相電流も平衡化された正弦波電流となる。
(第6の実施形態)
図21は、本発明の第6の実施形態を示す電気鉄道交流き電システムの構成図である。
図中、SUP1は3相交流電源、TRはスコット結線変圧器、Faは単相交流き電線、Loadは電車負荷、TRm,TRtは単相変圧器、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、Cdは直流平滑コンデンサ、ESSはエネルギー蓄積装置を示す。
スコット結線変圧器TRは、3相交流電圧Vu,Vv,Vwを2相交流電圧VM,VTに変換するもので、当該2相電圧VMとVTは90°の位相差がある。この他、3相電圧を2相電圧に変換する変圧器の結線法として、変形ウッドブリッジ結線変圧器等がある。
M座出力は単相交流き電線Faに接続し、T座はオープン(無負荷)とする。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の単相出力端子はM座端子に接続し、第2の電圧形自励式電力変換器CNV2の単相出力端子はT座端子に接続する。当該第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流側端子には直流平滑コンデンサCdが接続され、さらに当該直流平滑コンデンサCdとエネルギーの授受を行うエネルギー蓄積装置ESSが並列接続されている。
第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、図3および図4で説明したものと同様に構成される。大容量化と高調波低減のため、出力変圧器TRm,TRtを使って直列(又は並列)多重運転を行う。
エネルギー蓄積装置ESSは、例えば、双方向チョッパCHOと、直流リアクトルLdおよび電気二重層キャパシタEDLCで構成される。
図22は、そのエネルギー蓄積装置ESSの主回路構成の実施形態を示す。図中、Cdは直流平滑コンデンサ、CHOは双方向チョッパ、Ldは直流リアクトル、EDLCは電気二重層キャパシタをそれぞれ示す。
双方向チョッパは、自己消弧素子Sx,Syと、高速ダイオードDx,Dyで構成され、PWM制御により出力電圧Vchoを制御する。すなわち、直流平滑コンデンサCdの印加電圧をVdとした場合、
Sxがオン(Syはオフ)のとき、Vcho=+Vd
Syがオン(Sxはオフ)のとき、Vcho=0
となる。当該出力電圧Vchoの平均値Vcho(av)は、チョッパのスイッチング周期Tに対し、自己消弧素子Sxのオン期間をTon(Syのオン期間はT−Tonとなる)とした場合、
Vcho(av)=(Ton/T)×Vd
となる。
電気二重層キャパシタEDLCは大容量のコンデンサで、急速充放電ができ、寿命が永いなどの特徴を持っている。当該電気二重層キャパシタEDLCに印加される電圧Vedは、前記直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdより低くなる。
直流リアクトルLdには、双方向チョッパCHOの出力電圧Vchoと電気二重層キャパシタEDLCの電圧Vedとの差電圧が印加され、当該差電圧(Vcho−Ved)を調整することにより、直流リアクトルLdの電流Iedを制御することができる。
図23は、図21の装置の制御回路の実施形態を示す。第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2を制御する補償電流制御回路PPC-Contと、双方向チョッパ装置CHOを制御する充放電電流制御回路ESS-Contからなる。
図中、C1〜C5は比較器、Gv(S),H(S)は電圧制御補償回路、M1,M2は乗算器、Fe(x)は電力指令発生器、DVは割り算器、AD1〜AD4,AD6〜AD8は加減算器、Gi1(S),Gi2(S),Gi3(S)は電流制御補償回路、PWM1〜PWM3はパルス幅変調制御回路を表す。
第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から出力される補償電流IMc,ITcは次のように制御される。
比較器C1により、直流電圧指令値Vd*と直流平滑コンデンサCdの印加電圧検出値Vdを比較し、その偏差εv=Vd*−Vdを次の電圧制御補償回路Gv(S)で、比例または積分増幅し、入力電流の波高値指令Ism*を作る。
乗算器M1は、スコット結線変圧器TRのM座電圧VMに同期した単位正弦波sinωtを求め、前記入力電流波高値指令Ism*を乗じ、入力電流指令IMs*=Ism*×sinωtを出力する。
乗算器M2は、スコット結線変圧器TRのT座電圧VTに同期した単位正弦波cosωtを求め、前記入力電流波高値指令Ism*を乗じ、入力電流指令ITs*=Ism*×cosωtを出力する。
加減算器AD1により、M座負荷電流IMLの検出値から前記M座入力電流指令値IMs*を引き算し、M座補償電流指令値IMc*=IML−IMs*を求める。
同様に、加減算器AD3により、T座負荷電流ITLの検出値から前記T座入力電流指令値ITs*を引き算し、T座補償電流指令値ITc*=ITL−ITs*を求める。
比較器C2により、M座補償電流検出値IMcと、上記補償電流指令値IMc*を比較し、その偏差εm=IMc*−IMcを、次の電流制御補償回路Gi1(S)により増幅し、加減算器AD2に入力する。加減算器AD2では、M座電圧VMに比例した補償信号EM*を上記電流制御補償回路Gi1(S)の出力信号に加算し、その信号em*を変換器CNV1のパルス幅変調制御回路PWM1に入力する。第1の電圧形自励式電力変換器CNV1は、当該入力信号em*に比例した電圧VMcを発生する。
当該出力電圧VMcとM座電源電圧VMの差(VMc−VM)が単相変圧器TRmのもれインダクタンスLsmに印加され、補償電流IMcが流れる。当然のことながら、前記単相変圧器TRmの漏れインダクタンスが小さい場合には、当該変圧器TRmの1次または2次巻線に直列にリアクトルLsmoを挿入する場合もある。
IMc*>IMcとなった場合には、偏差εmが正となり、信号em*を増加させ、補償電流IMcを増やして、IMc*=IMcとなるように制御する。逆に、IMc*<IMcとなった場合には、偏差εmが負となり、信号em*を減少させ、補償電流IMcを減らして、やはり、IMc*=IMcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるM座入力電流IMsは、IMs=IML−IMc=IML−IMc*=IML−(IML−IMs*)=IMs*となるように制御される。この入力電流IMsは、M座電圧VMと同相(力率=1)の正弦波電流となる。
同様に、比較器C3により、T座補償電流検出値ITcと、上記補償電流指令値ITc*を比較し、その偏差εt=ITc*−ITcを、次の電流制御補償回路Gi2(S)により増幅し、加減算器AD4に入力する。加減算器AD4では、T座電圧VTに比例した補償信号ET*を上記電流制御補償回路Gi2(S)の出力信号に加算し、その信号et*を変換器CNV2のパルス幅変調制御回路PWM2に入力する。第2の電圧形自励式電力変換器CNV2は、当該入力信号et*に比例した電圧VTcを発生する。
当該出力電圧VTcとT座電源電圧VTの差(VTc−VT)が単相変圧器TRtのもれインダクタンスLstに印加され、補償電流IMcが流れる。
ITc*>ITcとなった場合には、偏差εtが正となり、信号et*を増加させ、補償電流ITcを増やして、ITc*=ITcとなるように制御する。逆に、ITc*<ITcとなった場合には、偏差εtが負となり、信号et*を減少させ、補償電流ITcを減らして、やはり、ITc*=ITcとなるように制御する。
この結果、スコット結線変圧器TRから供給されるT座入力電流ITsは、ITs=ITL−ITc=ITL−ITc*=ITL−(ITL−ITs*)=ITs*となるように制御される。この入力電流ITsは、T座電圧VTと同相(力率=1)の正弦波電流となる。ただし、T座負荷電流ITL=0となっている。
上記スコット結線変圧器TRのM座,T座の電流IMsとITsは、同じ振幅値Ism*で、位相が90°ずれた2相平衡化電流となる。この結果、3相交流電源SUP1から供給される電流も3相平衡化された力率=1の正弦波電流となる。
一方、エネルギー蓄積装置ESSの双方向チョッパCHOは、次のように制御される。
まず、負荷電力PLを検出し、その時間平均値PL(av)を求め、電力指令発生器Fe(x)に入力する。電力指令発生器Fe(x)は、当該負荷電力PL(av)に応じて、交流電源SUP1から供給する有効電力指令Pso*を与える。
また、電気二重層キャパシタEDLCの印加電圧Vedを検出し、比較器C4により、指令値Ved*との偏差εed=Ved*−Vedを求める。当該偏差εedを積分することにより、補償電力指令ΔPs*を求め、加算器AD6に入力する。
加算器AD6では、前記電力指令発生器Fe(x)からの出力信号Pso*と上記補償電力指令ΔPs*を加算し、前記交流電源SUP1から供給される有効電力の指令Ps*=Pso*+ΔPs*を作る。
さらに、次の加減算器AD7により、負荷電力検出値PL(av)と上記有効電力指令値Ps*との差をとり、電気二重層キャパシタEDLCから出力する有効電力指令値Ped*=PL(av)−Ps*を作る。割り算器DVは、上記有効電力指令値Ped*をEDLCの印加電圧Vedで割り算し、直流リアクトルLdに流れる電流の指令値Ied*を求める。
比較器C5により、当該電流指令値Ied*と前記直流リアクトルLdに流れる電流Iedの検出値との偏差εied=Ied*−Iedを作り、次の電流制御補償回路Gi3(S)により、当該偏差εiedを反転増幅し、その出力信号e3*を加算器AD8に入力する。加算器AD8では、電気二重層キャパシタEDLCの電圧Vedに相当する信号Eed*を上記信号e3*に加え、制御信号echo*をチョッパ装置CHOのパルス幅変調制御回路PWM3に入力する。
パルス幅変調制御回路PWM3は、チョッパ装置の自己消弧素子Sx,Syにゲート信号を送り、前記入力信号echo*に比例した電圧Vchoをチョッパ装置CHOから発生させる。
Ied*>Iedとなった場合、前記偏差 εiedは正の値となり、それを反転増幅した信号e3*は負の値となり、前記PWM制御回路PWM3への制御信号echo*を減少させる。その結果、チョッパ装置CHOの出力電圧Vchoは減少し、直流リアクトルLdの印加電圧Ved−Vchoが増加し、電流Iedを増加させる。
逆に、Ied*<Iedとなった場合、前記偏差 εiedは負の値となり、それを反転増幅した信号e3*は正の値となり、前記PWM制御回路PWM3への制御信号echo*を増加させる。その結果、チョッパ装置CHOの出力電圧Vchoが増加し、直流リアクトルLdの印加電圧Ved−Vchoが減少し、電流Iedを減少させる。
このようにして、直流リアクトルLdに流れる電流Iedは、その指令値Ied*に一致するように制御される。
例えば、電力指令発生器Fe(x)からの出力信号Pso*を一定とし、補償信号ΔPs*=0とした場合、交流電源SUP1から供給する有効電力の指令値Ps*=Pso*+ΔPs*は一定となり、力行負荷電力PL(av)が増えると、エネルギー蓄積装置ESSから供給する電力指令値Ped*=PL(av)−Ps*が増加し、直流リアクトルLdの電流Ied=Ied*を図21の矢印方向(放電方向)に増やす。その結果、電気二重層キャパシタEDLCの蓄積エネルギーが減少し、その印加電圧Vedも下がってくる。
その結果、Ved*>Vedとなり、その偏差εedは正の値となって、電圧制御補償回路H(S)の出力信号ΔPs*を徐々に増加させ、交流電源SUP1から供給する有効電力の指令値Ps*を増やす。従って、エネルギー蓄積装置ESSから供給する電力指令値Ped*=PL(av)−Ps*は減少し、さらには負の値となる。Ped*<0ということは、Ied=Ied*も負となり、電流の向きが図の矢印と反対となる。すなわち、充電電流が電気二重層キャパシタEDLCに供給され、電圧Vedを徐々に高くしていく。ついには、Ved=Ved*となるように制御される。電気二重層キャパシタEDLCの容量が大きい場合、上記充放電に伴う印加電圧Vedの変化は小さく、大略、Ved≒Ved*となっている。
図24は、図23の電力指令発生器Fe(x)の特性例を示すもので、力行負荷電力PL(av)がPLaに達するまでは、電力指令値Pso*は、Pso*=k・PL(av) として与える。ただし、kは比例定数で、k=0〜1の範囲で選ばれる。k=1として与えると、Pso*=PL(av)となり、負荷電力PL(av)の全ての有効電力を交流電源SUP1から与えることになる。
PL(av)が設定値PLaを越えると、有効電力指令値Pso*=Psa*で一定とする。このとき、負荷電力PL(av)と交流電源SUP1から供給される電力Psoとの差分の電力Ped=PL(av)−Psoは、エネルギー蓄積装置ESSから供給することになる。
また、回生運転で、負荷電力PL(av)が−PLbに達するまでは、電力指令値Pso*は、Pso*=k・PL(av) として与える。k=1とした場合、Pso*=PL(av)となり、回生負荷電力PL(av)の全ての有効電力を交流電源SUP1に回生するように制御される。
回生電力PL(av)が設定値−PLbを越えると、有効電力指令値Pso*=−Psb*で一定とする。このとき、Ped=PL(av)−Psoの電力は、エネルギー蓄積装置ESSへ回生されることになる。
一般的に、電気鉄道では、力行負荷の時間が長く、回生負荷の時間は短くなる。図24の電力指令発生器Fe(x)の特性では、力行側の上限値Psa*を大きくし、回生側の下限値Psb*を小さく設定している。これにより、エネルギー蓄積装置ESSへの充放電エネルギーW=Ped×tが平均的にゼロとなり、電気二重層キャパシタEDLCの印加電圧をVed≒Ved*とすることができる。EDLCの印加電圧Vedが指令値Ved*からずれた場合には、前述のように補正電力指令ΔPs*が働き、徐々にVed=Ved*となるように制御される。
また、上記のように、比例定数k=1とすることにより、負荷電力が、−PLb*<PL(av)<PLa* の範囲で運転する時には、Ps=PL(av)となり、エネルギー蓄積装置ESSから電力Pedを供給する必要がなくなる。すなわち、上記設定値を超えた場合にのみ、電気二重層キャパシタEDLCへのエネルギーの授受が発生するが、時間的には短時間であるため、当該電気二重層キャパシタEDLCの容量も小さく抑えることができる利点がある。
図25は、図23の制御回路で制御した場合の力行運転時のM座,T座の電圧・電流ベクトル図を示す。T座負荷電流ITL=0で、M座負荷電流IMLは、電圧VMに対し若干の遅れ位相θとなっている。負荷電力PL=VM×IML×cosθで、交流電源SUP1からの供給電力Psとエネルギー蓄積装置ESSからの供給電力Pedの和に等しくなる。
交流電源SUP1からの供給される電流IMsおよびITsは、それぞれM座電圧VMおよびT座電圧VTと同相の正弦波に制御され、入力電力Psは、Ps=IMs×VM+ITs×VTとなる。また、第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2から供給する補償電流IMcおよびITcは、それぞれ、
IMc=IML−IMs
ITc=ITL−ITs=−ITs
となる。M座の補償電流IMcには、エネルギー蓄積装置ESSから供給される有効電力Pedが含まれており、交流電源SUP1からは、Ps=PL−Pedが供給されることになる。
M座の有効電力PMsとT座の有効電力PTsは等しくなり、Ps=PL−Pedの半分をスコット結線変圧器のM座巻線から供給し、あとの半分をT座巻線から供給するようになる。
T座巻線から供給される電力PTs=Ps/2は、第2の電圧形自励式電力変換器CNV2によって回生され、直流平滑コンデンサCdに供給される。すなわち、ITc=−ITsとなる。
さらに、その電力Ps/2は、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1を介して単相交流き電線Faに供給される。そのとき、エネルギー蓄積装置ESSから供給される有効電力Pedと負荷の無効電力QL=VM×ILM×sinθも含めて前記第1の電圧形自励式電力変換器CNV1から供給され、スコット結線変圧器TRのM座巻線からは有効電力PMs=Ps/2だけが供給されることになる。
第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2は、M座/T座間で電力融通を行うが、その電力容量は同じになる。しかし、エネルギー蓄積装置ESSを設置した場合、当該エネルギー蓄積装置ESSと単相交流き電線との間で授受される電力は、単相交流き電線側(M座)に交流出力端子が接続された第1の電圧形自励式電力変換器CNV1を介して授受される。
前記第1の電圧形自励式電力変換器CNV1の出力容量を、前記第2の電圧形自励式電力変換器CNV2の出力容量より大きくすることにより、エネルギー蓄積装置ESSとの間で授受される電力を大きくすることが可能となり、ピーク負荷電力に対する補償量を増やすことができ、3相交流電源の負荷分担を減らすことができる。言い換えると、変電所設備容量の低減が図れる。
以上のように、本発明の交流き電システムでは、電車負荷の回生エネルギーを蓄積し、力行負荷のときにそのエネルギーを放出することにより、エネルギーの有効利用と、3相交流電源SUP1からの供給電力Psのピークカットが可能となる。すなわち、単相引き通し交流き電システムの実現と、変電所設備容量の低減および節電を図ることができる。
(第7の実施形態)
図26は、本発明の第7の実施形態を示す電気鉄道交流き電システムの構成図である。
図中、SUP1は3相交流電源、TRはスコット結線変圧器、Faは単相交流き電線、Loadは電車負荷、TRm,TRtは単相変圧器、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、Cdは直流平滑コンデンサ、Lf,CfはLCフィルタを構成するリアクトルとコンデンサ、ESSはエネルギー蓄積装置を示す。
図21の実施形態と異なるところは、直流平滑コンデンサCdに並列にLCフィルタが接続されている点である。制御法は、図21の装置で説明したものと同じである。M座電圧VMに対し、負荷電流IMLは位相角θだけ遅れている。単相負荷電力PLは交流き電線の周波数f1=60Hzに対し、その2倍の周波数(120Hz)で変動する。
すなわち、M座電圧VM=Vsm×sinωt、負荷電流IML=ILm×sin(ωt−θ)とした場合、電力PLは、
PL=Vsm×sinωt×ILm×sin(ωt−θ)
=(Vsm×ILm/2){cosθ−cos(2・ωt−θ)}
となる。第1項は一定値で、前記交流電源SUP1からスコット結線変圧器TRを介して供給される電力Psに一致する。第2項が変動分ΔPLで、電源周波数の2倍の周波数で変動する。
この単相負荷に伴う電力変動分ΔPLを直流平滑コンデンサCdで吸収する場合、当該直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdの変動分ΔVdは、負荷電力PLに比例し、直流平滑コンデンサCdの容量に反比例する。
すなわち、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapは、直流電圧の平均値をVdoとした場合、
Icap≒ΔPL/Vdo
=−{Vsm×ILm/(2・Vdo)}・cos(2・ωt−θ)
となる。ゆえに、直流電圧Vdの変動分ΔVdは、
ΔVd=(1/Cd)∫Icap・dt
≒−{Vsm×ILm/(4・Vdo・ω・Cd)}×sin(2・ωt−θ)
となる。例えば、電源周波数f1=60Hz、負荷電力PL=20MW(力率=0.95)、直流電圧Vdo=8kV、 Cd=10mFとした場合、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapのピーク値は、Icap(peak)=20MW/0.95/8kV≒2,632A となり、そのときの電圧変動ΔVdはピーク値で、ΔVd(peak)≒349V となる。
直流電圧の変動ΔVdは、第1および第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2の補償電流制御に影響を与え、補償電流の歪みをもたらす。直流電圧変動ΔVdを小さく抑えるには、コンデンサCdの容量を大きくする必要があり、不経済なシステムとなる。
図26の実施形態では、前記単相交流き電線の周波数の2倍付近に共振周波数をあわせたLCフィルタを前記直流平滑コンデンサCdに並列接続している。
例えば、電源周波数f1=60Hzとした場合、2・f1=120Hzに共振周波数を合わせたLCフィルタが用意される。すなわち、Cf=4mFとした場合、Lf=0.44mHとなる。このLCフィルタ回路に前記Icapが吸収され、前記直流電圧の変動ΔVdが抑制される。また、直流平滑コンデンサCdは、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2のPWM制御に伴う高調波電流を吸収するために無くすことはできないが、Cdの容量を大幅に減らすことができ、装置の小型軽量化とコスト低減が図れる。
以上のように、交流き電線の周波数の2倍で変動する単相負荷に伴う電力変動分ΔPLをLCフィルタで吸収することにより、前記直流電圧の変動ΔVdを抑制する。この結果、直流平滑コンデンサCdの容量を小さくでき、かつ、直流電圧の変動ΔVdを大幅に低減できる。負荷急変などで過渡時にLCフィルタによる電気振動現象が懸念されるが、前記第1および第2の電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2により直流電圧制御を行っているため、電気振動を減衰させるダンパー作用が働き、安定なシステムを提供できる。
(変形例)
前述の実施形態では、直流平滑コンデンサCdを、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1と第2の電圧形自励式電力変換器CNV2の接続点間に直流平滑コンデンサCdを接続した例について説明したが、本発明の目的を達成するためには必ずしも必要とするものではない。
また、前述の実施形態では、二相電力融通装置を構成する電力変換器として、第1の電圧形自励式電力変換器CNV1と第2の電圧形自励式電力変換器CNV2を使用した場合について説明したが、これに限らず何でもよい。
さらに、前述の実施形態では、エネルギー蓄積装置の構成の一つである、エネルギー蓄積手段として、電気二重層キャパシタを例にあげたが、これに限らず急速に充放電が可能な二次電池等を使用してもよい。
前述の実施形態では、三相電力を二相電力に変換する変圧器としてスコット結線変圧器を例にあげたが、かならずしもこれに限るものではない。
SUP1…第1の3相交流電源、SS1〜SS3…変電所、CB1〜CB3…3相交流開閉器、CBm1〜CBm6…単相交流開閉器、S-TR1〜S-TR3…スコット結線変圧器、PPC1〜PPC3…二相電力融通装置、Fa,Fb…単相引き通し交流き電線、KS1〜KS4はセクションスイッチ、Train…列車負荷、
TR…スコット結線変圧器、TRm,TRt…単相変圧器、CNV1,CNV2…電圧形自励式電力変換器、Cd…直流平滑コンデンサ、Fa…単相交流き電線、Lf,Cf…LCフィルタのリアクトルとコンデンサ、Load…電車負荷、ESS…エネルギー蓄積装置、CHO…双方向チョッパ装置、Ld…直流リアクトル、EDLC…電気二重層キャパシタ、Vd-Cont…直流電圧制御回路、Ic-Ref…補償電流指令回路、IMc-Cont,ITc-Cont…電流制御回路、C1〜C5…比較器、Gv(S),H(S)…電圧制御補償回路、M1〜M3…乗算器、DV…割り算器、AD1〜AD8…加減算器、Kff,Km,KL…比例要素、INV…反転回路、Gi1(S)〜Gi3(S)…電流制御補償回路、Fe(x)…電力指令発生器、PWM1〜PWM3…パルス幅変調制御回路。