本発明は、上記のような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能で、変換器効率が高く、経済的な電力変換装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルを介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段と、前記自励式電力変換器の直流電流又は交流電流の過電流を検知する過電流検知手段と、当該過電流検知手段からの信号に基づいて前記自励式電力変換器を構成する自己消弧素子を全てオフする手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
請求項1の発明の電力変換装置では、電圧形自励式電力変換器CNVは、一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、変圧器TRのもれインダクタンスLsに印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Is=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力が増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力が交流電源SUPに回生される。ちなみに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Isの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2又は、π−φ/2となり、入力力率は、cos(φ/2)となる。また、入力電流Isと自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2又は、π+φ/2となり、変換器力率は、cos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Isと変圧器TRのもれインダクタンスLsの値に依存する。位相角は、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
自励式電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Isの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めるが、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Isのゼロ点付近でスイッチングが行われ、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流は小さくて済む。これにより、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を実現できる。
リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。
電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように前記交流電源SUPから供給される入力電流Isを制御する。通常電圧指令値Vd*は一定値を与えるが、負荷電流ILに応じてレギュレーションをつける場合もある。負荷装置Load(電車など)は、この直流平滑コンデンサCdを電圧源として電力の授受を行う。
通常の力行運転のときには大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れ、わずかな電流が自励式電力変換器CNVの自己消弧素子に流れる。電気鉄道などでは過負荷300%で1分間の運転が要求され、電力変換装置全体の交流電流又は直流電流で過電流検知する方式では、過負荷300%以上の電流で過電流レベルを設定しなければならず、実際に自励式電力変換器CNVにそのような大電流が流れた場合に備えて、それを遮断するだけの自己消弧素子を用意するのは不経済である。
請求項1の発明の電力変換装置では、電圧形自励式電力変換器CNVの直流電流又は交流電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子を全てオフするように制御することにより、実用的な電流レベルで自己消弧素子の過電流保護がかかり、装置を確実に保護することが可能となる。
請求項2の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルを介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段と、故障時に前記自励式電力変換器の交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離す切離し手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
電気鉄道では、まず、列車の運行を優先させることが不可欠となる。そこで請求項2の発明の電力変換装置では、電力用ダイオード整流器RECと電圧形自励式電力変換器CNVを組み合わせることで、電力回生ができ、入力力率が高く、入力電流高調波の少ない高効率の電力変換装置を実現する。
電力用ダイオード整流器RECと、電圧形自励式電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離せるように構成することにより、一旦運転停止はするものの、再び電力用ダイオード整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能となる。これにより、より冗長性の高いシステムを提供できる。
請求項3の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルを介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段と、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置への経路上において前記直流平滑コンデンサと当該負荷装置との間に相当する位置に設置された直流リアクトル及び高速遮断器とを備えたものである。
請求項3の発明の電力変換装置では、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φを制御することによって入力電流Isを制御することで、常に入力力率=1付近で運転する。このように自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることで、素子のしゃ断電流を小さくできる。その結果、スイッチング損失を大幅に軽減し、しゃ断電流の小さい自己消弧素子で自励式電力変換器CNVを構成できるようになり、経済的な装置を実現できる。
電気鉄道などでは、変電所に設置された電力変換装置から直流き電線を介して電車負荷等に電力を供給する。高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。
しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能である。
請求項4の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルを介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと抵抗器の直列回路と、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
電気鉄道では直流き電線を介して電車負荷が接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために請求項4の発明の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは上記振動現象を減衰させる役目を果たし、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能である。
請求項5の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルを介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと抵抗器の直列回路と、当該抵抗器の片方向電流をバイパスさせるダイオードと、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
抵抗器Rdは、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。請求項5の発明の電力変換装置では、ダイオードDdによって抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせ、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
請求項6の発明は、請求項4又は5の電力変換装置において、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子と前記負荷装置との間に相当する位置に設置された直流リアクトル及び高速遮断器を備えたことを特徴とするものである。
電気鉄道などでは、変電所に設置された電力変換装置から直流き電線を介して電車負荷等に電力を供給する。高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。しかしながら請求項6の発明の電力変換装置では、直流リアクトルDCLによって事故電流の立ち上がりを抑制し、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させ、回路を確実に保護することができる。
請求項7の発明は、請求項3〜6の電力変換装置において、前記自励式電力変換器に対してその故障時に交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離す切離し手段を備えたことを特徴とするものである。
電気鉄道では、まず列車の運行を優先させることが不可欠となる。請求項7の発明の電力変換装置では、電力用ダイオード整流器RECと電圧形自励式電力変換器CNVを組み合わせることで、電力回生ができ、入力力率が高く、入力電流高調波の少ない高効率の電力変換装置を実現できる。
また電力用ダイオード整流器RECと、電圧形自励式電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。そこで請求項7の発明の電力変換装置では、自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離す構成にすることにより、一旦運転停止はするものの、再び電力用ダイオード整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能であり、これにより、より冗長性の高いシステムを提供できる。
請求項8の発明は、請求項1〜7の電力変換装置において、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧が指令値に一致するように前記自励式電力変換器の入力電流の有効分を制御する有効分電流制御手段を備えたことを特徴とするものである。
請求項8の発明の電力変換装置では、電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように交流電源SUPから供給される入力電流Isの有効分を制御する。例えば、Vd<Vd*となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを遅らせ、入力電流Isの有効成分を増加させる。この結果、有効電力Psが電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給され、直流電圧Vdが上昇し、Vd=Vd*となるように制御する。逆に、Vd>Vd*となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを進ませ、入力電流Isの有効成分を負の値にする。この結果、直流平滑コンデンサCdから電源SUPへ有効電力Psが回生され、直流電圧Vdが下降し、Vd=Vd*となるように制御される。
このように直流電圧Vdを指令値Vd*にしたがって制御することにより、電気鉄道での隣接変電所の電力変換装置との負荷分担や協調運転が可能である。また、直流電圧Vdを一定に制御することもでき、直流き電電圧が安定化され、負荷装置Loadに対する理想的な電圧源とすることができる。
請求項9の発明は、請求項8の電力変換装置において、前記有効分電流制御手段は、前記負荷装置に供給される電流又は有効電力に応じて、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧の指令値を変える制御をすることを特徴とするものである。
自励式電力変換器CNVは一定のパルスパターンで制御されるので、自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの大きさは直流電圧Vdによって決まる。負荷電流ILの増加により直流電圧Vdが下がれば、交流電圧Vcの波高値も下がる。
自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの波高値が電源電圧Vsの波高値より小さくなると、入力電流Isのベクトルは、電圧Vcの方に近づく。電源電圧Vsに対しては電流Isの遅れ位相角θが大きくなり、力率は少し低下する。しかし、電圧Vcと電流Isの位相差(φ−θ)が小さくなるため、自励式電力変換器CNVのスイッチングが入力電流Isのゼロ付近で行われるようになり、自己消弧素子の遮断電流を小さくできる。特に、負荷電流ILが大きいところで前記位相差(φ−θ)がゼロ近くになるように直流電圧Vdを調整すれば、その効果が大きい。
電気鉄道などでは、力行側の過負荷容量が大きいものが要求される。請求項9の発明の電力変換装置では、負荷電流IL(又は有効電力PL)に応じて直流電圧Vdを調整することにより、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくでき、変換器損失を低減できるだけでなく、遮断電流容量の小さい素子を使うことが可能となり、より経済的な電力変換装置を実現できる。
請求項10の発明は、請求項8の電力変換装置において、前記有効分電流制御手段は、回生運転時の直流電圧指令を力行運転時の直流電圧指令より大きくすることを特徴とするものである。
電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、直流電圧指令をVd1*>Vd2*とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。請求項10の発明の電力変換装置では、回生運転時の直流電圧指令を力行運転時の直流電圧指令より大きくすることにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐ。
請求項11の発明は、請求項2〜10の電力変換装置において、前記自励式電力変換器の直流電流又は交流電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器を構成する自己消弧素子を全てオフするように制御する過電流保護手段を備えたことを特徴とするものである。
電気鉄道などでは力行過負荷300%で1分間の運転が要求され、電力変換装置全体の交流電流又は直流電流で過電流検知する方式では、過負荷300%以上の電流で過電流レベルを設定しなければならず、実際に自励式電力変換器CNVにそのような大電流が流れた場合に備えて、それを遮断するだけの自己消弧素子を用意するのは不経済である。
通常の力行運転では、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れ、わずかな電流が自励式電力変換器CNVの自己消弧素子に流れる。そこで請求項11の発明の電力変換装置では、電圧形自励式電力変換器CNVの直流電流又は交流電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子を全てオフするように制御することにより、実用的な電流レベルで自己消弧素子の過電流保護をかけ、装置を確実に保護する。
請求項12の発明は、請求項8〜11の電力変換装置において、前記交流電源の電圧の実効値が変化した場合、その変化分に応じて前記直流電圧指令値を変えて制御する手段を備えたことを特徴とするものである。
電源電圧Vsが定格値Vsoより高くなった場合、直流電圧Vdを一定に制御していると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|<|Vs|となる。この結果、電源SUPから進み無効電流が流れ込み、その分、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。反対に、電源電圧Vsが定格値Vsoより低くなった場合、直流電圧Vdを一定に制御していると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|>|Vs|となる。この結果、電源SUPから進み無効電流が流れ込み、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。特に、時間的には短時間であるが電圧低下が大きい、瞬低(瞬時電圧低下)が発生した場合、上記無効電流値が大きくなるため、その過電流により装置を運転停止することがある。
そこで請求項12の発明の電力変換装置では、電源電圧Vsが変化した場合、その変化分ΔVsに比例させて直流電圧指令値Vd*を変える制御をする。すなわち、電源電圧Vsが上昇したときはその上昇分に比例させて直流電圧Vdを高くすることによって遅れ無効電流の増加を抑える。また、電源電圧Vsが低下した場合、その低下分に比例させて直流電圧Vdを下げることによって電源SUPから進み無効電流が流れ込むのを抑える。これにより、電源電圧変動による素子電流の増大を防止することが可能であり、かつ、瞬低が発生しても装置を停止させるとなく、運転継続ができる。
請求項13の発明は、請求項1〜12の電力変換装置において、前記自励式電力変換器をゲートブロックする場合に、まず前記交流電源の電圧に対する変換器の交流電圧の位相角をゼロに近づけ、次に、当該自励式電力変換器を構成する自己消弧素子を全てオフするように制御する保護手段を備えたことを特徴とするものである。
電圧形自励式電力変換器CNVをゲートブロックし、電力変換装置の運転を停止する場合、特に、大部分の電流が自己消弧素子に流れている回生運転時に、いきなり自励式電力変換器CNVをゲートブロックすると、最悪の場合には入力電流のピーク値を自己消弧素子が遮断することにもなり、電磁ノイズの増大やスイッチング損失の増加を招く。そのため、請求項13の発明の電力変換装置では、力行/回生の運転状態にかかわらず、まず、交流電源SUPの電圧Vsに対する自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φをゼロに近づけ、入力電流Isを小さくし、その後で、当該自励式電力変換器CNVをゲートブロックする。これにより、当該自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができ、電磁ノイズの発生を抑えることができる。
請求項14の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルと抵抗器の直列回路を介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
電圧形自励式電力変換器CNVは、一定のパルスパターンで、交流電源の電圧Vsに同期したスイッチングを行う。直流電圧Vdが一定ならば、電圧Vcの振幅値は一定になる。この状態で、電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを変えることにより、変圧器TRのもれインダクタンスLsに印加される電圧(Vs−Vc)が変化し、入力電流Is=(Vs−Vc)/(jω・Ls)を調整することができる。
電源電圧Vsに対する自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φを遅れ方向に増加させることにより、交流電源SUPから供給される有効電力が増加する。逆に位相角φを進み方向に増やすと、有効電力が交流電源SUPに回生される。ちなみに、位相角φ=0では、有効電力の授受はない。入力電流Isの位相角は、電源電圧Vsに対し、φ/2又はπ−φ/2となり、入力力率はcos(φ/2)となる。また、入力電流Isと自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcとの位相差は、−φ/2又はπ+φ/2となり、変換器力率はcos(φ/2)となる。位相角φは、入力電流Isと変圧器TRのもれインダクタンスLsの値に依存する。位相角は、過負荷運転時でも高々φ=30°程度で、力率はcos15°=0.966となる。
そこで請求項14の発明の電力変換装置では、自励式電力変換器CNVを一定のパルスパターンで制御する場合、入力電流Isの高調波成分が小さくなるようにスイッチングパターンを決めることで、上記のように変換器力率が1に近いため、電流Isのゼロ点付近でスイッチングを行わせ、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくする。これにより、電力回生が可能で、高力率・高効率で、低コストの電力変換装置を実現できる。
また、当該電圧形自励式電力変換器CNVは、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdがその指令値Vd*に一致するように前記交流電源SUPから供給される入力電流Isを制御する。例えば、Vd<Vd*となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを遅らせ、入力電流Isの有効成分を増加させる。この結果、有効電力Psが電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給され、直流電圧Vdが上昇し、Vd=Vd*となるように制御される。逆に、Vd>Vd*となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを進ませ、入力電流Isの有効成分を負の値にする。この結果、直流平滑コンデンサCdから電源SUPへ有効電力Psが回生され、直流電圧Vdが下降し、Vd=Vd*となるように制御される。
リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。例えば、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子(下アーム素子S4)をオフすると、リアクトルLaに流れていた電流は、まず、上アーム素子S1に逆並列接続されている高速ダイオードD1を介して流れる。
一般に、高速ダイオードD1の順方向電圧降下VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向電圧降下VFbの方が小さいので、その差電圧(VFa−VFb)によって、高速ダイオードD1に流れていた電流は徐々に電力用ダイオードPD1に移っていく。差電圧(VFa−VFb)が大きいほど高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に転流する時間は短くなり、高速ダイオードD1の負担が軽くなる。しかし、VFaとVFbの差があまりない場合には、なかなか電力用ダイオードPD1に電流が移らず、高速ダイオードD1の負担が重くなってしまう。
ところが請求項14の発明の電力変換装置では、リアクトルLaに直列接続された抵抗器Raが下アーム素子S4がオフしたとき、リアクトルLaに流れていた電流を時定数La/Raで減衰させ、高速ダイオードD1に流れていた電流を速やかに減少させる制御をし、この結果、電力用ダイオードPD1に電流を移し、高速ダイオードD1の負担を軽減させる。
請求項15の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にリアクトルと抵抗器の直列回路を介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと抵抗器の直列回路と、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御するもので、常に入力力率=1付近で運転される。このため、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることにより、素子のしゃ断電流を小さくできる。
リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。リアクトルLaに直列接続された抵抗器Raは、下アーム素子S4がオフしたとき、リアクトルLaに流れていた電流を時定数La/Raで減衰させ、高速ダイオードD1に流れていた電流を減少させる。この結果、電力用ダイオードPD1に電流が移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。
電気鉄道では、直流き電線を介して電車負荷が接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために請求項15の発明の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは上記振動現象を減衰させる役目を果たし、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能である。
請求項16の発明の電力変換装置は、交流電源に変圧器を介して交流端子が接続された電力用ダイオード整流器と、当該電力用ダイオード整流器の交流端子にアクトルと抵抗器の直列回路を介して交流端子が接続された自励式電力変換器と、当該自励式電力変換器の直流端子間に接続された直流平滑コンデンサと抵抗器の直列回路と、当該抵抗器の片方向電流をバイパスさせるダイオードと、前記自励式電力変換器を一定のパルスパターンで動作させ、前記交流電源の電圧に対する前記自励式電力変換器の交流側端子電圧の位相角を調整することにより前記交流電源からの入力電流を制御する入力電流制御手段とを備え、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子間に接続される負荷装置との間で電力の授受を行うことを特徴とするものである。
リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。リアクトルLaに直列接続された抵抗器Raは、下アーム素子S4がオフしたときにリアクトルLaに流れていた電流を時定数La/Raで減衰させ、高速ダイオードD1に流れていた電流を減少させる。これにより、電力用ダイオードPD1に電流が移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。
電気鉄道では、直流き電線を介して電車負荷が接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために請求項16の発明の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。ダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせるもので、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
請求項17の発明は、請求項14〜16の電力変換装置において、前記自励式電力変換器及び前記電力用ダイオード整流器の直流共通端子と前記負荷装置との間の経路上に設置された直流リアクトル及び高速遮断器を備えたことを特徴とするものである。
リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。リアクトルLaに直列接続された抵抗器Raは、下アーム素子S4がオフしたとき、リアクトルLaに流れていた電流を時定数La/Raで減衰させ、高速ダイオードD1に流れていた電流を減少させる。これにより、電力用ダイオードPD1に電流が移り、高速ダイオードD1の負担を軽減させることができる。
高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。そこで請求項17の発明の電力変換装置では、直流リアクトルDCLを高速度遮断器HSCBと共に備えることで事故電流の立ち上がりを抑制し、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることができる。
請求項18の発明は、請求項14〜17の電力変換装置において、前記自励式電力変換器の故障時に交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離す切離し手段を備えたことを特徴とするものである。
電気鉄道では、まず、列車の運行を優先させることが不可欠となる。そこで電力用ダイオード整流器RECと電圧形自励式電力変換器CNVを組み合わせることによって電力回生ができ、入力力率が高く、入力電流高調波の少ない高効率の電力変換装置を実現できる。
電力用ダイオード整流器RECと、電圧形自励式電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。そこで請求項18の実施の形態の電力変換装置では、自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離す構成にすることにより、一旦運転停止はするものの、再び電力用ダイオード整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能である。これにより、より冗長性の高いシステムを実現できる。
請求項19の発明は、請求項14〜18の電力変換装置において、前記自励式電力変換器の直流電流又は交流電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器を構成する自己消弧素子を全てオフする制御をする過電流保護手段を備えたことを特徴とするものである。
電気鉄道などでは過負荷300%で1分間の運転が要求され、電力変換装置全体の交流電流又は直流電流で過電流検知する方式では、過負荷300%以上の電流で過電流レベルを設定しなければならず、実際に自励式電力変換器CNVにそのような大電流が流れた場合に備えて、それを遮断するだけの自己消弧素子を用意するのは不経済である。
通常の力行運転では、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れ、わずかな電流が自励式電力変換器CNVの自己消弧素子に流れる。
そこで請求項19の発明の電力変換装置では、電圧形自励式電力変換器CNVの直流電流又は交流電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子を全てオフするように制御することにより、実用的な電流レベルで自己消弧素子の過電流保護をかけ、装置を確実に保護することが可能である。
請求項20の発明は、請求項14〜19の電力変換装置において、前記自励式電力変換器は、前記直流平滑コンデンサに印加される電圧が指令値に一致するように前記入力電流の有効分を制御する有効分電流制御手段を備えたことを特徴とするものである。
請求項20の発明の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように交流電源SUPから供給される入力電流Isを制御する。例えば、Vd<Vd*となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを遅らせ、入力電流Isの有効成分を増加させる。この結果、有効電力Psが電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給され、直流電圧Vdが上昇し、Vd=Vd*となるように制御される。逆に、Vd>Vd*となった場合、電源電圧Vsに対する電力変換器CNVの出力電圧Vcの位相角φを進ませ、入力電流Isの有効成分を負の値にする。この結果、直流平滑コンデンサCdから電源SUPへ有効電力Psが回生され、直流電圧Vdが下降し、Vd=Vd*となるように制御される。
電気鉄道などでは、既設の電力用ダイオード整流装置と本発明の電力変換装置とを並列運転することが考えられ、その場合には、力行運転時に最適な負荷分担となるような直流電圧Vdになるように制御することが可能となる。また、直流電圧Vdを一定に制御することもでき、直流き電電圧が安定化され、負荷装置Loadに対する理想的な電圧源として機能する。
請求項21の発明は、請求項20の電力変換装置において、前記有効分電流制御手段は、前記負荷装置に供給される電流又は有効電力に応じて前記直流平滑コンデンサに印加される電圧の指令値を変える制御をすることを特徴とするものである。
自励式電力変換器CNVは一定のパルスパターンで制御されるので、自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの大きさは直流電圧Vdによって決まる。負荷電流ILの増加により直流電圧Vdが下がれば、交流電圧Vcの波高値も下がる。
Vcの波高値が電源電圧Vsの波高値より小さくなると、入力電流Isのベクトルは電圧Vcの方に近づく。電源電圧Vsに対してはIsの遅れ位相角θが大きくなり、力率は少し低下する。しかし、電圧Vcと電流Isの位相差(φ−θ)が小さくなるため、自励式電力変換器CNVのスイッチングが入力電流Isのゼロ付近で行われるようになり、自己消弧素子の遮断電流を小さくできる。特に、負荷電流ILが大きいところで前記位相差(φ−θ)がゼロ近くになるように直流電圧Vdを調整すれば、その効果が大きい。
電気鉄道などでは、力行側の過負荷容量が大きいものが要求され、請求項21の発明の電力変換装置では、負荷電流IL(又は有効電力PL)に応じて直流電圧Vdを調整することにより、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくでき、変換器損失を低減できるだけでなく、遮断電流容量の小さい素子を使うことが可能となり、より経済的な電力変換装置を実現できる。
請求項22の発明は、請求項20の電力変換装置において、前記有効分電流制御手段は、前記交流電源の電圧の実効値が変化した場合にその変化分に応じて前記直流電圧指令値を変える制御をすることを特徴とするものである。
電源電圧Vsが定格値Vsoより高くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|<|Vs|となる。この結果、電源SUPから進み無効電流が流れ込み、その分、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。反対に、電源電圧Vsが定格値Vsoより低くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|>|Vs|となる。この結果、電源SUPから進み無効電流が流れ込み、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。特に、時間的には短時間であるが電圧低下が大きい、瞬低(瞬時電圧低下)が発生した場合、上記無効電流値が大きいため、過電流により装置の運転停止に至ることがある。
請求項22の発明の電力変換装置では、電源電圧Vsが変化した場合、その変化分ΔVsに比例させて直流電圧指令値Vd*を変える制御をする。すなわち、電源電圧Vsが上昇したときはその上昇分に比例させて直流電圧Vdを高くすることにより、遅れ無効電流の増加を抑える。また、電源電圧Vsが低下した場合、その低下分に比例させて直流電圧Vdを下げることにより、電源SUPから進み無効電流が流れ込むのを抑える。これにより、電源電圧変動による素子電流の増大を防止することが可能となり、かつ、瞬低が発生しても装置を停止させるとなく運転継続できる。
請求項23の発明は、請求項14〜22の電力変換装置において、前記自励式電力変換器をゲートブロックする場合に、まず前記交流電源の電圧に対する変換器の交流電圧の位相角をゼロに近づけ、次に、当該自励式電力変換器を構成する自己消弧素子を全てオフするように制御する保護手段を備えたことを特徴とするものである。
電圧形自励式電力変換器CNVをゲートブロックし、電力変換装置の運転を停止する場合、特に、大部分の電流が自己消弧素子に流れている回生運転時に、いきなり自励式電力変換器CNVをゲートブロックすると、最悪、入力電流のピーク値を自己消弧素子が遮断することにもなり、電磁ノイズの増大やスイッチング損失の増加を招く。
請求項23の発明の電力変換装置では、力行/回生の運転状態にかかわらず、まず、交流電源SUPの電圧Vsに対する自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φをゼロに近づけ、入力電流Isを小さくし、その後で、当該自励式電力変換器CNVをゲートブロックする。これにより、当該自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができ、電磁ノイズの発生を抑えることができる。
本発明によれば、過負荷耐量に優れ、電力回生が可能で、変換器効率が高く、電気鉄道等の分野へ経済的な電力変換装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
(第1の実施の形態)図1は、本発明の電力変換装置の第1の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、ACCTは交流電流検出器、DCCTは直流電流検出器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
リカバリー電流抑制リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。通常Laは数10μHのインダクタンス値で、交流リアクトルLs(トランスTRのもれインダクタンス)と比べると、2桁ぐらい小さいものでよい。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHC、過電流検出器OCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流を制御する。
図2は、本実施の形態の制御動作を説明するための交流側等価回路を示す。また、図3はその電圧・電流ベクトル図を示す。図中、Vsは電源電圧、Vcは自励式電力変換器CNVの交流出力電圧、Isは入力電流、jωLs・Isは交流リアクトルLsによる電圧降下分(ただし、リアクトルLsの抵抗分は十分小さいものとして無視した)を表わす。ベクトル的に、Vs=Vc+jωLs・Isの関係がある。
電源電圧Vsの波高値と自励式電力変換器CNVの交流出力電圧Vcの基本波波高値は大略一致するように合わせる。直流電圧Vdは負荷側からの要求で決まる場合が多く、パルスパターンを決めると、交流出力電圧Vcの基本波波高値は決まってしまう。そこで、電源側に変圧器を設置し、その2次電圧をVsとして、波高値を合わせる。
入力電流Isは、電源電圧Vsに対する自励式電力変換器の交流出力電圧Vcの位相角φを調整することにより制御できる。すなわち、位相角φ=0とすると、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Isはゼロとなり、入力電流Isもゼロとなる。位相角(遅れ)φを増やしていくと、jωLs・Isの電圧が増加し、入力電流Isもその値に比例して増加する。入力電流ベクトルIsは、電圧jωLs・Isに対し90°遅れており、電源電圧Vsに対しては、φ/2だけ遅れたベクトルとなる。したがって、電源側から見た入力力率は、cos(φ/2)となる。
一方、自励式電力変換器CNVの交流出力電圧をVc’のように位相角φを進み方向に増やしていくと、交流リアクトルLsに印加される電圧jωLs・Isも負となり、入力電流はIs’のように、電源電圧Vsに対し(π−φ/2)の位相角となる。すなわち、電力Ps=Vs・Isは負となり、電力を電源に回生することができる。電源電圧Vsを基準にして、交流出力電圧Vcを図の破線に沿ってVc’の方向に回していくと、入力電流ベクトルIsは破線に沿ってIs’の方向に変化する。
図1において、有効電流Iqは次のように制御される。Iq*>Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が増加し、入力電流Isを増加させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが増加し、やがてIq*=Iqとなって落ち着く。逆に、Iq*<Iqとなった場合、電流制御補償回路Gi(S)の出力φ*が減少し又は負の値になり、入力電流Isを減少させる。入力力率≒1なので、有効電流Iqが減少し、やはりIq*=Iqとなって落ち着く。
また、直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは次のように制御される。Vd*>Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq*が増加し、上記のようにIq*=Iqに制御されるので、有効電力が交流電源SUPから直流平滑コンデンサCdに供給される。その結果、直流電圧Vdが増加し、Vd*=Vdとなるように制御される。逆に、Vd*<Vdとなった場合、電圧制御補償回路Gv(S)の出力Iq*が減少し又は負の値となり、有効電力が直流平滑コンデンサCdから交流電源SUP側に回生される。その結果、直流電圧Vdが減少し、やはりVd*=Vdとなるように制御される。
図1の装置では、負荷Loadに供給される電流ILを検知し、その量に見合った有効電流を供給するようにフィードフォワード補償器FFで補償量IqFF=kFF・ILを演算し、加算器ADに入力している。これにより、負荷が急変した場合、それに見合った入力電流(有効電流)Iqがすぐに供給され、直流平滑コンデンサCdの印加電圧Vdの変動を抑えている。
図4は、図1の装置の位相制御回路PHCの具体的な内部構成を示す。図中、ADr,ADs,ADtは加減算器、PTN1〜PTN3はパルスパターン発生器を示す。加減算器ADr〜ADtは、位相信号θr,θs,θtから位相角指令値φ*を引き算し、新たな位相信号θcr,θcs,θctを作る。当該新たな位相信号θcr,θcs,θctは、0〜2πの周期関数で、電源周波数に同期して変化する。パルスパターン発生器PT1〜PT3は、新たな位相信号θcr,θcs,θctに対して、一定のパルスパターンとなるようにゲート信号g1〜g6を発生する。
パルスパターン発生器PT1は、位相信号θcrに対するR相素子S1,S4のパルスパターンをテーブル関数として記憶したもので、図5に1パルス動作時の波形を示す。図中、VrはR相電源電圧、θrは電源電圧Vrに同期した位相信号で、0〜2πの間で変化する周期関数となる。新たな位相信号θcr=θr−φ*は、0〜2πの間で変化する周期関数で、θrの信号に対しφ*だけ遅れた信号で与えられる。すなわち、入力θcrに対し、次のようなゲート信号g1(又はg4)を出力する。
0≦θcr<πの範囲で、g1=1,g4=0(S1:オン,S4:オフ)
π≦θcr<2πの範囲で、g1=0,g4=1(S1:オフ,S4:オン)
自励式電力変換器CNVの交流側出力電圧(R相)Vcrは、
となる。直流電圧Vdが一定ならば、交流出力電圧Vcrの振幅値は一定となる。Vcrの基本波Vcr*の位相は、電源電圧Vrに対し位相角φ*だけ遅れている。S相、T相も同様に与えられる。
図6は、図5のパルスパターンで自励式電力変換器CNVを動作させた場合の力行運転時のR相各部動作波形を示す。なお、説明の便宜上、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。図6において、変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ遅れている。また、入力電流Irは電源電圧Vrに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、また、IPD1,IPD4は電力用ダイオードの電流波形をそれぞれ表わしている。以下に、そのときの動作を図1を用いて説明する。
入力電流Irが負から正に変るまでは電力用ダイオードPD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irはリカバリー電流抑制用リアクトルLaと素子S4を介して流れるようになる。次に、素子S4をオフすると、リカバリー電流抑制用リアクトルLaの作用により、電流Irはまず高速ダイオードD1を介して流れる。高速ダイオードD1の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向降下電圧VFbの方が低いため、その電圧差により、リカバリー電流抑制用リアクトルLaに流れている電流が徐々に小さくなり、入力電流Irは、高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に移っていく。その転流時間はリカバリー電流抑制用リアクトルLaのインダクタンス値に反比例する。Laを過飽和リアクトルにすることにより、流れる電流の大きいところでインダクタンス値が小さくなり、高速ダイオードに流れていた電流がより速く電力用ダイオードに移り、損失が低減される。
入力電流Irが再び反転するまでその電流は電力用ダイオードPD1に流れる。入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4及び電力用ダイオードPD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
力行運転時の入力電流Irの大部分は電力用ダイオードPD1,PD4に流れるので、損失が小さく、過負荷耐量の大きな電力変換装置を実現できる。自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIsmとした場合、Imax=Ism×sin(φ/2)となる。例えば、φ=20°の場合、Imax=0.174×Ismとなる。すなわち、自己消弧素子のしゃ断電流が小さいものを用意すればよく、コストの安い電力変換装置を実現できる。
図7は、回生運転時の動作波形を示すもので、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、また、IPD1,IPD4は電力用ダイオードの電流波形をそれぞれ表わしている。変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vrに対し、位相角φだけ進んでいる。また、入力電流Irは電源電圧の反転値−Vrに対し、位相角(φ/2)だけ進んで流れる。
入力電流Irが負で、素子S1がオン(S4はオフ)のときは、入力電流Irは素子S1とリカバリー電流抑制用リアクトルLaを介して流れる。素子S1をオフ(S4をオン)すると、リカバリー電流抑制用リアクトルLaの作用により、電流Irはまず高速ダイオードD4を介して流れる。高速ダイオードD4の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD4の順方向降下電圧VFbの方が低いため、その電圧差により、リカバリー電流抑制用リアクトルLaに流れている電流が徐々に小さくなり、入力電流Irは、高速ダイオードD4から電力用ダイオードPD4に移っていく。入力電流Irが反転すると、素子S4に電流が流れ、上記と同様に素子S4をオフすることにより、まず高速ダイオードD1に電流が移り、やがて電力ダイオードPD1に電流が移る。
回生運転時、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIsmとした場合、Imax=Ism×sin(φ/2)となる。例えば、φ=20°の場合、Imax=0.174×Ismとなる。S相、T相も同様に制御される。
以上のように、回生運転時の入力電流Irの大部分は自己消弧素子に流れるが、当該素子S1〜S6のしゃ断電流は小さくてすみ、コストの安い電力変換装置を実現できる。
図8は、自励式電力変換器CNVを3パルス動作させた場合の力行運転時のR相各部動作波形を示す。なお、説明を簡略化するため、入力電流Irは正弦波としてリプル分を省略して描いている。図8において、変換器の交流出力電圧Vcrの基本波は電源電圧Vsに対し、位相角φだけ遅れる。また、入力電流Isは電源電圧Vsに対し、位相角(φ/2)だけ遅れて流れる。このとき、IS1,IS4はR相の自己消弧素子S1とS4の電流を、ID1,ID4は高速ダイオードD1とD4の電流を、また、IPD1,IPD4は電力用ダイオードの電流波形をそれぞれ表わしている。そのときの動作を以下に説明する。
入力電流Irが負から正に変るまでは電力用ダイオードPD4を介して電流が流れている。この状態から電流Irの向きが変ると素子S4がオン状態にあるので、入力電流Irはリカバリー電流抑制用リアクトルLaと素子S4を介して流れるようになる。
次に、素子S4をオフすると、リカバリー電流抑制用リアクトルLaの作用により、電流Irはまず高速ダイオードD1を介して流れる。高速ダイオードD1の順方向降下電圧VFaに対し、電力用ダイオードPD1の順方向降下電圧VFbの方が低いため、その電圧差により、リカバリー電流抑制用リアクトルLaに流れている電流が徐々に小さくなり、入力電流Irは、高速ダイオードD1から電力用ダイオードPD1に移っていく。その転流時間はリカバリー電流抑制用リアクトルLaのインダクタンス値に反比例する。
次に、素子S4を再びオンすると、入力電流Irはリカバリー電流抑制用リアクトルLaと素子S4を介して流れ、電力用ダイオードPD1及び高速ダイオードD1の電流はゼロとなる。さらに、図8のθ1で、素子S4をオフすると、上記と同じように、まず高速ダイオードD1に電流が流れ、次に電力用ダイオードPD1に電流が移っていき、入力電流Irが再び反転するまでその電流は電力用ダイオードPD1に流れる。
入力電流Irが反転した後は、素子S1と高速ダイオードD4及び電力用ダイオードPD4の間で、上記と同様の動作が行われる。
3パルス動作の場合、自己消弧素子S1〜S6がしゃ断する最大電流Imaxは、入力電流の波高値をIsmとした場合、
となる。例えば、φ=20°,θ1=10°とした場合、Imax=0.342×Ismとなる。
このように、本実施の形態によれば、力行運転時には大部分の電流が、オン電圧の小さい電力用ダイオードPD1〜PD6を通って流れ、高速ダイオードD1〜D6に流れる電流はわずかとなり、高効率の変換装置を達成できる。また、自己消弧素子S1〜S6のしゃ断電流を小さくでき、装置全体のコストを大幅に低減できる。
図1の装置において、過電流が発生した場合、自励式電力変換器CNVの過電流を検知し、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。すなわち、自励式電力変換器CNVの交流側入力電流Iaを交流電流検出器ACCTで検出し、それを整流して過電流検出器OCに入力する。電流Iaが設定値Iaoを超えた場合には、位相制御回路PHCにゲートブロック信号GBを与え、自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。なお、自励式電力変換器CNVの交流入力電流Iaを検出する代わりに直流電流検出器DCCTにより直流電流Idcを検出しても同様に過電流検知ができる。
電気鉄道では、1つの変電所から複数の車両に電力供給を行うため、一般に力行運転時の負荷が重く、回生電力は小さくなる。例えば、力行運転時の過負荷耐量として定格出力の300%が要求されるが、回生電力は100%定格を持てばよい。本実施の形態の電力変換装置は、このような力行運転時の過負荷耐量として大きなものに適している。
例えば、定格3,000kWとした場合、力行運転では1分間の過負荷9,000kWが要求される。このとき、大部分の電流は電力用ダイオード整流器RECに流れ、当該電力用ダイオードPD1〜PD6に流れる電流の最大値Ismは、トランスTRの2次電圧をV2=1.2kVとした場合、
となる。このとき、自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6は、前述のように上記最大電流Ismの約1/3の電流(2,041A)を遮断することになる。
一方、回生運転では3,000kWが最大であり、そのとき大部分の電流は自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6を介して流れ、その最大値はIsm’は、
となる。通常の回生運転では、回生3,000kW時の最大値の約1/3の電流(680A)を自己消弧素子S1〜S6が遮断することになる。
この装置に流れる入力電流の最大値は、上記のようにIsm=6,124Aとなり、従来のように、装置全体の入力電流又は直流出力電流を基準にして過電流レベルを決めると、自己消弧素子S1〜S6の最大遮断電流として、例えば、1.2×6,124A=7,350Aの素子を用意しなければならない。
これに対し、本実施の形態では、自励式電力変換器CNV自体の交流又は直流電流により過電流検知を行うことにより、過電流設定値Iaoとして、上記力行9,000kW運転及び回生3,000kW運転時に自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6に流れる電流の最大値(この場合、約2,041A)より少し大きな値、例えば1.2×2,041A=2,450Aに選ぶことが可能となる。すなわち、力行側過負荷耐量が大きく、回生側容量が小さくて済む電気鉄道応用等では、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の最大遮断電流容量を大幅に低減することができ、経済的な電力変換装置を実現できる。
(第2の実施の形態)図9は、本実施の形態の第2の実施の形態の電力変換装置の主回路構成を示す。図中、SUPは3相交流電源、MCBは交流主遮断器、TRは3相トランス、REC1,REC2は電力用ダイオード整流器、La1,La2はリカバリー電流抑制用リアクトル、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、ACCT1,ACCT2は交流電流検出器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
3相トランスTRは、Δ結線された1次巻線と、Δ結線された第1の2次巻線及びY結線された第2の2次巻線を持っている。すなわち、第1の2次巻線の3相電圧に対し、第2の2次巻線の電圧は、波高値は同じで、位相角が30°だけずれた3相電圧となる。
第1の電力用ダイオード整流器REC1の交流端子は、3相トランスTRの第1の2次巻線に接続されている。また、第1の自励式電力変換器CNV1の交流端子は、第1のリカバリー電流抑制リアクトルLa1を介して第1の電力用ダイオード整流器REC1の交流端子に接続されている。また、第2の電力用ダイオード整流器REC2の交流端子は、3相トランスTRの第2の2次巻線に接続されている。また、第2の自励式電力変換器CNV2の交流端子は、第2のリカバリー電流抑制リアクトルLa2を介して第2の電力用ダイオード整流器REC2の交流端子に接続されている。第1及び第2の電力用ダイオード整流器REC1,REC2、及び第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流端子は並列接続され、直流平滑コンデンサCdに接続されている。また、負荷装置Loadは、当該直流平滑コンデンサCdを電圧源として電力の授受を行う。
第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2は一定のパルスパターンで位相制御を行い、入力電流Isを制御する。すなわち、第1の自励式電力変換器CNV1は、3相トランスTRの第1の2次巻線(Δ結線)の電圧Vs1を基準にして位相制御するもので、当該電源電圧Vs1に対する第1の自励式電力変換器CNV1の交流電圧Vc1の位相角φ1を調整することにより、入力電流Ic1を制御する。また、第2の自励式電力変換器CNV2は、3相トランスTRの第2の2次巻線(Y結線)の電圧Vs2を基準にして位相制御するもので、当該電源電圧Vs2に対する第2の自励式電力変換器CNV2の交流電圧Vc2の位相角φ2を調整することにより、入力電流Ic2を制御する。交流電源SUPから供給される電流Isは上記入力電流Ic1とIc2の和となる。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように入力電流Isの有効分を制御する。負荷電流ILが増加し、直流電圧Vdが下がった場合、入力電流Isの有効分を増やすことにより、Vd=Vd*となるように制御される。また、回生運転(IL<0)で、直流電圧Vdが上昇した場合には、入力電流Isの有効分を負にすることにより、電力を電源SUPに回生し、直流電圧Vdが下がり、やはり、Vd=Vd*となるように制御される。
本実施の形態では、2台の変換器をトランスTRを介して並列2多重運転を行っている。これにより、変換装置の容量を増加でき、かつ、入力電流Isの高調波が低減することが可能となる。この場合でも、変換装置の過電流は、交流電流検出器ACCT1,ACCT2により、それぞれの自励式電力変換器CNV1,CNV2の交流電流Ia1及びIa2を検出し、その電流Ia1,Ia2が過電流レベルを超えた場合に、自励式電力変換器CNV1,CNV2をゲートブロックする。
電気鉄道などでは過負荷300%で1分間の運転が要求され、従来のように電力変換装置全体の過電流を検知する方式では、過負荷300%以上の電流で過電流レベルを設定しなければならず、実際に自励式電力変換器CNV1,CNV2にそのような大電流が流れた場合に備えて、それを遮断するだけの自己消弧素子を用意するのは不経済である。
通常の力行運転では、大部分の電流が電力用ダイオード整流器REC1,REC2に流れ、わずかな電流が自励式電力変換器CNV1,CNV2の自己消弧素子に流れる。図9の実施の形態では、交流電流検出器ACCT1及びACCT2により、電圧形自励式電力変換器CNV1,CNV2の3相入力電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器CNV1,CNV2を構成する自己消弧素子をオフするように制御することにより、実用的な電流レベルで自己消弧素子の過電流保護がかかり、装置を確実に保護することが可能となる。なお、電圧形自励式電力変換器CNV1及びCNV2の直流電流を検知して、過電流保護をかけても同様に目的を達成できる。
(第3の実施の形態)図10は、本発明の電力変換装置の第3の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、ACSWは交流側開閉器(3相)、DCSWは直流側開閉器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。当該制御回路CNTLは、図1の装置で説明したものと同様に動作する。
図10において、自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側開閉器ACSW(3相)と直流側開閉器DCSWを開放するように構成している。これにより、一旦装置の運転を停止するが、短時間で自励式電力変換器CNVを電気的に切り離し、引き続いて電力用ダイオード整流器RECのみで、力行負荷車両Loadに電力を供給することができる。この場合、回生車両の回生電力が力行車両の負荷電力より大きくなり、回生失効に至ることが考えられるが、従来の運転と同様に機械ブレーキにより列車を減速させ、列車の運転ダイヤを確保する。
電気鉄道では、まず、列車の運行を優先させることが不可欠となる。本発明の電力変換装置は、前に述べたように、電力用ダイオード整流器RECと電圧形自励式電力変換器CNVを組み合わせたもので、電力回生ができ、入力力率が高く、入力電流高調波の少ない高効率の電力変換装置を実現できる利点がある。
電力用ダイオード整流器RECと、電圧形自励式電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離せるように構成することにより、一旦運転停止はするものの、再び電力用ダイオード整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能となる。これにより、より冗長性の高いシステムを提供できるようになる。
(第4の実施の形態)図11は、本実施の形態の第4の実施の形態の電力変換装置の主回路構成を示す。図中、SUPは3相交流電源、MCBは交流主遮断器、TRは3相トランス、REC1,REC2は電力用ダイオード整流器、La1,La2はリカバリー電流抑制用リアクトル、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、ACSW1,ACSW2は交流側開閉器、DCSW1,DCSW2は直流側開閉器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
3相トランスTRは、Δ結線された1次巻線と、Δ結線された第1の2次巻線及びY結線された第2の2次巻線を持っている。すなわち、第1の2次巻線の3相電圧に対し、第2の2次巻線の電圧は、波高値は同じで位相角が30°だけずれた3相電圧となる。
第1の電力用ダイオード整流器REC1の交流端子は、3相トランスTRの第1の2次巻線に接続されている。また、第1の自励式電力変換器CNV1の交流端子は、第1の交流側開閉器ACSW1及び第1のリカバリー電流抑制リアクトルLa1を介して第1の電力用ダイオード整流器REC1の交流端子に接続されている。また、第2の電力用ダイオード整流器REC2の交流端子は、3相トランスTRの第2の2次巻線に接続されている。また、第2の自励式電力変換器CNV2の交流端子は、第2の交流側開閉器ACSW2及び第2のリカバリー電流抑制リアクトルLa2を介して第2の電力用ダイオード整流器REC2の交流端子に接続されている。第1及び第2の電力用ダイオード整流器REC1,REC2の直流端子は並列接続され、第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流端子はそれぞれ直流側開閉器DCSW1及びDCSW2を介して並列接続されている。当該共通の直流端子には直流平滑コンデンサCdに接続されている。また、負荷装置Loadは、当該直流平滑コンデンサCdを電圧源として電力の授受を行う。
第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2は一定のパルスパターンで位相制御を行い、入力電流Isを制御する。すなわち、第1の自励式電力変換器CNV1は、3相トランスTRの第1の2次巻線(Δ結線)の電圧Vs1を基準にして位相制御するもので、当該電源電圧Vs1に対する第1の自励式電力変換器CNV1の交流電圧Vc1の位相角φ1を調整することにより、入力電流Ic1を制御する。また、第2の自励式電力変換器CNV2は、3相トランスTRの第2の2次巻線(Y結線)の電圧Vs2を基準にして位相制御するもので、当該電源電圧Vs2に対する第2の自励式電力変換器CNV2の交流電圧Vc2の位相角φ2を調整することにより、入力電流Ic2を制御する。交流電源SUPから供給される入力電流Isは上記入力電流Ic1とIc2の和となる。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように入力電流Isの有効分を制御する。負荷電流ILが増加し、直流電圧Vdが下がった場合、入力電流Isの有効分を増やすことにより、Vd=Vd*となるように制御される。また、回生運転(IL<0)で、直流電圧Vdが上昇した場合には、入力電流Isの有効分を負にすることにより、電力を電源SUPに回生し、直流電圧Vdが下がり、やはり、Vd=Vd*となるように制御される。
本実施の形態の実施の形態では、2台の変換器をトランスTRを介して並列2多重運転を行っている。これにより、変換装置の容量を増加でき、かつ、入力電流Isの高調波が低減することが可能となる。また、自励式電力変換器CNV1又はCNV2のいずれかが故障した場合、当該故障変換器を電気的に切り離し、残った整流器REC1,REC2を用いて運転を継続させることが可能となる。
例えば、第1の自励式電力変換器が故障した場合、装置の運転を一旦停止し、開閉器ACSW1及びDCSW1を開放し、第1の電力用ダイオード整流器REC1と第2の電力用ダイオード整流器REC2及び第2の自励式電力変換器CNV2を使って運転を再開する。これにより、回生側の出力容量は半分になるが、力行側の出力容量は故障前とほとんど同じくらいの電力を出すことが可能となる。第2の自励式電力変換器CNV2が故障した場合も同様である。
第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2がともに故障した場合には、開閉器ACSW1,ACSW2及びDCSW1,DCSW2を全て開放し、第1及び第2の電力用ダイオード整流器REC1,RRC2の並列運転を行う。これにより、回生側の運転はできなくなるが、力行側の運転は引き続き継続でき、電車用電源装置として、信頼性の高いシステムを提供できる。
(第5の実施の形態)図12は、本発明の電力変換装置の第5の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、DCLは直流リアクトル、HSCBは直流高速遮断器、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
本実施の形態の電力変換装置によれば、力行運転時は、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れるように制御され、電圧形自励式電力変換器CNVのしゃ断電流を小さく抑えることができる。すなわち、当該電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流を制御するもので、常に入力力率=1付近で運転される。故に、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを、入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることにより、素子のしゃ断電流を小さくできる。
リカバリー電流抑制リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。
高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは、事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能となる。
(第6の実施の形態)図13は、本発明の電力変換装置の第6の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Rdは抵抗器、Ddはバイパスダイオード、Lfは直流き電線のインダクタンス、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
本実施の形態の電力変換装置によれば、力行運転時は、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れるように制御することにより、電圧形自励式電力変換器CNVのしゃ断電流を小さく抑える。すなわち、当該電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御するもので、常に入力力率=1付近で運転される。故に、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを、入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることにより、素子のしゃ断電流を小さくできる。リカバリー電流抑制リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。
電気鉄道では、直流き電線を介して電車負荷Loadが接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために本実施の形態の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは上記振動現象を減衰させる役目を果たし、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能となる。
抵抗器Rdは、前述のように直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。またダイオードDdを設けることで、このダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせ、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
(第7の実施の形態)図14は、本発明の電力変換装置の第7の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、ACSWは交流側開閉器、DCSWは直流側開閉器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Rdは抵抗器、Ddはバイパスダイオード、DCLは直流リアクトル、HSCBは直流高速遮断器、Lfは直流き電線のインダクタンス、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
本実施の形態の電力変換装置によれば、力行運転時は、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れるように制御され、電圧形自励式電力変換器CNVのしゃ断電流を小さく抑えることができる。すなわち、当該電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御するもので、常に入力力率=1付近で運転される。故に、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを、入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることにより、素子のしゃ断電流を小さくできる。リカバリー電流抑制リアクトルLaは、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。
電気鉄道では、直流き電線を介して電車負荷Loadが接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために本実施の形態の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは上記振動現象を減衰させる役目を果たし、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能となる。
抵抗器Rdは、前述のように直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。ダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせるもので、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
直流高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。
しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは、事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能となる。
なお、図14において、自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側開閉器ACSW(3相)と直流側開閉器DCSWを開放するように構成している。これにより、一旦装置の運転を停止するが、短時間で自励式電力変換器CNVを電気的に切り離し、引き続いて電力用ダイオード整流器RECのみで、力行負荷車両Loadに電力を供給することができる。この場合、回生車両の回生電力が力行車両の負荷電力より大きくなり、回生失効に至ることが考えられるが、従来の運転と同様に機械ブレーキにより列車を減速させ、列車の運転ダイヤを確保する。
電気鉄道では、まず、列車の運行を優先させることが不可欠となる。電力用ダイオード整流器RECと、電圧形自励式電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離せるように構成することにより、一旦運転停止はするものの、再び電力用ダイオード整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能となる。これにより、より冗長性の高いシステムを提供できるようになる。
(第8の実施の形態)図15は、本発明の別の実施の形態における制御回路CNTLのブロック図を示す。図中、CAL1は電圧指令演算回路、C1,C2は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi(S)は電流制御補償回路、FFはフィードフォワード補償器、Zは座標変換回路、PLL電源同期位相検出回路、PHC位相制御回路を示す。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
電圧指令演算回路CAL1は、負荷電流ILに応じて直流電圧指令値Vd*を変えている。図16は、電圧指令演算回路CAL1の特性例を示すもので、回生運転時の直流電圧指令は、Vd*=Vdo*=一定とし、力行運転時の直流電圧指令Vd*を次式のように与えている。
ただし、Vdo*は無負荷時の直流電圧指令、ILは負荷電流、k1は比例定数である。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは上記指令値Vd*に一致するように制御され、負荷電流ILが増加するに従い、直流電圧Vdは低下する。自励式電力変換器CNVは一定のパルスパターンで制御されるので、自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの大きさは直流電圧Vdによって決まる。負荷電流ILの増加により直流電圧Vdが下がれば、交流電圧Vcの波高値も下がる。
図17は、直流電圧Vdを下げた場合の自励式電力変換器CNVの交流側電圧・電流ベクトル図を示すもので、Vsは電源電圧、Vcは自励式電力変換器CNVの交流電圧、Isは入力電流、jωLs・Isは交流リアクトルLs(又はトランスTRのもれインダクタンス)による電圧降下を表す。
Vcの波高値が電源電圧Vsの波高値より小さくなると、入力電流Isのベクトルは、電圧Vcの方に近づく。電源電圧Vsに対してはIsの遅れ位相角θが大きくなり、力率は少し低下する。しかし、電圧Vcと電流Isの位相差(φ−θ)が小さくなるため、自励式電力変換器CNVのスイッチングが入力電流Isのゼロ付近で行われるようになり、自己消弧素子の遮断電流を小さくできる。特に、負荷電流ILが大きいところで位相差(φ−θ)がゼロ近くになるように直流電圧Vdを調整すれば、その効果が大きい。
電気鉄道などでは、力行側の過負荷容量が大きいものが要求され、上記のように負荷電流ILに応じて直流電圧Vdを調整することにより、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくでき、変換器損失を低減できるだけでなく、遮断電流容量の小さい素子を使うことが可能となり、より経済的な電力変換装置を実現できる。
図18は、電圧指令演算回路CAL1の別の特性例を示す。負荷電流ILによって、直流電圧指令Vd*を次のように与えることができる。
ただし、k1は比例定数、ILoは定格負荷電流である。
すなわち、回生運転及び力行定格負荷までは、直流電圧Vdを一定値Vdo*に制御し、力行過負荷運転領域では、負荷電流ILの増加に応じて直流電圧Vdを徐々に下げるように制御している。これにより、回生及び力行定格運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行過負荷運転では自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。
図19は、電圧指令演算回路CAL1のさらに別の特性例を示す。負荷電流ILによって、直流電圧指令Vd*を次のように与えることができる。
ただし、Vdo*は無負荷時の直流電圧指令、k1は比例定数である。
これによって、回生運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行運転では特に過負荷領域で自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、上記直流電圧指令を、Vd1*>Vd2*とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
図20は、電圧指令演算回路CAL1のさらに別の特性例を示す。負荷電流ILによって、直流電圧指令Vd*を次のように与えることができる。
ただし、k1は比例定数、ILoは定格負荷電流である。
すなわち、力行定格負荷までは、直流電圧Vdを一定値Vdo*に制御し、力行過負荷運転領域では、負荷電流ILの増加に応じて直流電圧Vdを徐々に下げるように制御している。これにより、力行定格以下の運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行過負荷運転では自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。
また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、回生運転時の直流電圧指令を、Vd1*>Vdo*とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
図21は、電圧指令演算回路CAL1のさらに別の特性例を示す。負荷電流ILによって、直流電圧指令Vd*を次のように与えることができる。
ただし、Vdo*は無負荷時の直流電圧指令、k1,kvは比例定数である。
ここでは、Vd2*からVd1*に移行するとき、ステップ的に指令値を変化させるのではなく、傾斜を付けて徐々に変えるようにしている。これにより、負荷電流IL=0付近で、直流電圧指令Vd*がハンチングすることを防止できる。
回生運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行運転では特に過負荷領域で自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、上記直流電圧指令を、Vd1*>Vd2*とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
(第9の実施の形態)図22は、本発明の電力変換装置の第9の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、ACCTは交流電流検出器、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Rdは抵抗器、Ddはバイパスダイオード、DCLは直流リアクトル、HSCBは直流高速遮断器、Lfは直流き電線のインダクタンス、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHC、過電流検出器OCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
抵抗器Rdは、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。ダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせるもので、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは、事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能となる。
図22の装置において、過電流が発生した場合、自励式電力変換器CNVの過電流を優先して検知し、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。すなわち、自励式電力変換器CNVの3相入力電流Iaを交流電流検出器ACCTで検出し、それを整流して過電流検出器OCに入力する。電流Iaが設定値Iaoを超えた場合には、位相制御回路PHCにゲートブロック信号GBを与え、自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。
電気鉄道などでは力行過負荷300%で1分間の運転が要求され、従来のように電力変換装置全体の過電流を検知する方式では、過負荷300%以上の電流で過電流レベルを設定しなければならず、実際に自励式電力変換器CNVにそのような大電流が流れた場合に備えて、それを遮断するだけの自己消弧素子を用意するのは不経済である。通常の力行運転では、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れ、わずかな電流が自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6に流れる。
図22の実施の形態では、交流電流検出器ACCTにより、電圧形自励式電力変換器CNVの3相入力電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子をオフするように制御することにより、実用的な電流レベルで自己消弧素子の過電流保護がかかり、装置を確実に保護することが可能となる。なお、電圧形自励式電力変換器CNVの直流電流を検知して、過電流保護をかけても同様に達成できる。
(第10の実施の形態)図23は、本発明の別の実施の形態の制御回路CNTLを示すブロック図である。図中、CAL2は直流電圧指令演算器、C1,C2は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi(S)は電流制御補償回路、FFはフィードフォワード補償器、Zは座標変換回路、SFは位相シフト回路、DL遅延回路、PLL電源同期位相検出回路、PHC位相制御回路を示す。
また、図24は、上記直流電圧指令演算器CAL2の入出力特性例を表すもので、電源電圧の大きさ|Vs|に対する直流電圧指令Vd*の特性を示す。すなわち、電源電圧の定格値Vsoに対し、Vsa>Vso>Vsb,ΔVs=|Vs|−Vsoとし、kを比例定数とした場合、
としている。
直流電圧指令値Vd*を電源電圧Vsの変動に関係なくVdo*一定として運転した場合、次のような問題がある。すなわち、電源電圧Vsが定格値Vsoより高くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|<|Vs|となる。この結果、電源SUPから遅れ無効電流が流れ込み、その分、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。
反対に、電源電圧Vsが定格値Vsoより低くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|>|Vs|となる。この結果、電源SUPから進み無効電流が流れ込み、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。特に、時間的には短時間であるが電圧低下が大きい、瞬低(瞬時電圧低下)が発生した場合、上記無効電流値が大きいため、過電流により装置の運転停止に至ることがある。
本実施の形態では、Vsb<|Vs|<Vsaの範囲でVd*=Vdo*+k・ΔVsとして、電源電圧Vsが変化した場合、その変化分ΔVs=|Vs|−Vsoに比例させて、直流電圧指令値Vd*を変えている。すなわち、電源電圧Vsが上昇したときはその上昇分に比例させて直流電圧Vdを高くすることにより、遅れ無効電流の増加を抑えている。また、電源電圧Vsが低下した場合、その低下分に比例させて直流電圧Vdを下げることにより、電源SUPから進み無効電流が流れ込むのを抑えている。これにより、電源電圧変動による素子電流の増大を防止することが可能となり、かつ、瞬低が発生しても装置を停止させるとなく、運転継続ができるようになる。
本実施の形態では、電源電圧が|Vs|≧Vsaとなった場合、Vd*=Vdmax*として、それ以上直流電圧Vdを上げないようにしている。一般には、電源電圧Vsの変動は高々±5%程度であるが、雷サージなどによりそれ以上電源電圧が上昇した場合には、Vd*=Vdmax*として直流電圧Vdをむやみに上げることなく装置全体の整合性を保っている。これにより、負荷装置Loadへ過大な電圧が印加されるのを防いでいる。
逆に、|Vs|≦Vsbとなった場合、Vd*=Vdmin*として、それ以下に直流電圧Vdを下げないようにしている。ただし、瞬低時の運転継続を考えて、設定値Vsbは、定格値Vsoの0.9〜0.6倍程度にするのが適当である。
このように、本実施の形態によれば、電源電圧Vsが変動した場合でも無駄な無効電流が増加することを防止でき、しいては装置を構成する素子の電流容量が低減され、経済的な電力変換装置を実現できる。また、瞬時電圧低下が発生しても装置を停止させることなく信頼性の高いシステムを実現できる。
図23の制御回路CNTLにおいて、装置の運転停止信号STOPが入った場合、まず、位相シフト回路SFを動作させ、位相指令値φ*をゼロに移行させる。次に、遅延回路DLを介してゲートブロック信号GBを与え、全ての自己消弧素子をオフさせるようにしている。電圧形自励式電力変換器CNVをゲートブロックし、電力変換装置の運転を停止する場合、特に、大部分の電流が自己消弧素子に流れている回生運転時に、いきなり自励式電力変換器CNVをゲートブロックすると、最悪、入力電流のピーク値を自己消弧素子が遮断することにもなり、電磁ノイズの増大やスイッチング損失の増加を招く。
本実施の形態では、力行/回生の運転状態にかかわらず、まず交流電源SUPの電圧Vsに対する自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φをゼロに近づけ、入力電流Isを小さくし、その後で、当該自励式電力変換器CNVをゲートブロックする。これにより、当該自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができ、電磁ノイズの発生を抑えることができる。
(第11の実施の形態)図25は、本発明の電力変換装置の第11の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、Raは抵抗器、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
図26は、図25の装置の動作を説明するための1相分の主回路構成を示すもので、PD1,PD4は電力用ダイオード、S1,S4は自己消弧素子、D1,D4は高速ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、Raは直列抵抗器、Vdは直流平滑コンデンサCdの印加電圧を表す。端子Uは3相トランスTRの2次巻線のr相端子に接続される。
図26のモード(i)は、電力用ダイオードPD1を介して入力電流Irが流れていたとき、下アームの自己消弧素子S4をオンした場合の電流の流れを示すもので、素子S4をオンすることにより、リカバリー電流が、Vd(+)→PD1→La→Ra→S4→Vd(−)の経路で流れる。このとき、リアクトルLa及び抵抗Raは当該リカバリー電流を抑制する役目を果たす。やがて、電力用ダイオードPD1がオフし、入力電流IrはリアクトルLaに流れる電流Iaと等しくなる。次にモード(ii)において、自己消弧素子S4がオフすると、リアクトルLaに流れていた電流Iaは、まず、上アームの高速ダイオードD1を介して流れる。
さらにモード(iii)に移り、電力用ダイオードPD1にも入力電流Irの一部が流れるようになるが、当該電力用ダイオードPD1の順方向電圧降下VFbが高速ダイオードD1の順方向電圧降下VFaより小さい場合には、その差電圧(VFa−VFb)により、リアクトルLaに流れていた電流Iaが徐々に減衰し、やがて、モード(iv)のように、全ての入力電流Irが電力用ダイオードPD1を介して流れるようになる。
しかし、差電圧(VFa−VFb)が小さい場合には、リアクトルLaに流れていた電流がなかなか減衰せず、長い時間高速ダイオードD1に大電流が流れ続け、損失の増加を招くことになる。
直列抵抗Raは、差電圧(VFa−VFb)が小さい場合でも、時定数T=La/Raで、リアクトルLaの電流Iaを減衰させる役目を果たす。例えば、La=20μH,Ra=0.01Ωとした場合、時定数T=2msecとなり、50Hz電源の1サイクル周期=20msecに対し、十分速く電流Iaを減衰させることができる。これにより、高速ダイオードD1に流れる電流を小さくすることが可能となり、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
(第12の実施の形態)図27は、本発明の第12の実施の形態の電力変換装置の主回路構成である。図中、SUPは3相交流電源、MCBは交流主遮断器、TRは3相トランス、REC1,REC2は電力用ダイオード整流器、La1,La2はリカバリー電流抑制用リアクトル、Ra1,Ra2は抵抗器、CNV1,CNV2は電圧形自励式電力変換器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
3相トランスTRは、Δ結線された1次巻線と、Δ結線された第1の2次巻線及びY結線された第2の2次巻線を持っている。すなわち、第1の2次巻線の3相電圧に対し、第2の2次巻線の電圧は、波高値は同じで、位相角が30°だけずれた3相電圧となる。
第1の電力用ダイオード整流器REC1の交流端子は、3相トランスTRの第1の2次巻線に接続されている。また、第1の自励式電力変換器CNV1の交流端子は、第1のリカバリー電流抑制リアクトルLa1(3相)及び第1の抵抗器Ra1(3相)を介して第1の電力用ダイオード整流器REC1の交流端子に接続されている。
第1のリカバリー電流抑制リアクトルLa1は、第1の自励式電力変換器CNV1を構成する自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオードに流れるリカバリー電流を抑制する役目を果たす。また、第1の直列抵抗器Ra1は、自己消弧素子がオフしたとき、リカバリー電流抑制リアクトルLa1に流れている電流をいち早く減衰させ、第1の自励式電力変換器CNV1を構成する高速ダイオードから第1の電力用ダイオード整流器REC1への転流を早める役目を果たす。
また、第2の電力用ダイオード整流器REC2の交流端子は、3相トランスTRの第2の2次巻線に接続されている。また、第2の自励式電力変換器CNV2の交流端子は、第2のリカバリー電流抑制リアクトルLa2(3相)及び第2の抵抗器Ra2(3相)を介して第2の電力用ダイオード整流器REC2の交流端子に接続されている。
第2のリカバリー電流抑制リアクトルLa2は、第2の自励式電力変換器CNV2を構成する自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオードに流れるリカバリー電流を抑制する役目を果たす。また、第2の直列抵抗器Ra2は、自己消弧素子がオフしたとき、リカバリー電流抑制リアクトルLa2に流れている電流をいち早く減衰させ、第2の自励式電力変換器CNV2を構成する高速ダイオードから第2の電力用ダイオード整流器REC2への転流を早める役目を果たす。
第1及び第2の電力用ダイオード整流器REC1,REC2、及び第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2の直流端子は並列接続され、直流平滑コンデンサCdに接続されている。また、負荷装置Loadは、当該直流平滑コンデンサCdを電圧源として電力の授受を行う。
第1及び第2の自励式電力変換器CNV1,CNV2は一定のパルスパターンで位相制御を行い、入力電流Isを制御する。すなわち、第1の自励式電力変換器CNV1は、3相トランスTRの第1の2次巻線(Δ結線)の電圧Vs1を基準にして位相制御するもので、当該電源電圧Vs1に対する第1の自励式電力変換器CNV1の交流電圧Vc1の位相角φ1を調整することにより、入力電流Ic1を制御する。また、第2の自励式電力変換器CNV2は、3相トランスTRの第2の2次巻線(Y結線)の電圧Vs2を基準にして位相制御するもので、当該電源電圧Vs2に対する第2の自励式電力変換器CNV2の交流出力電圧Vc2の位相角φ2を調整することにより、入力電流Ic2を制御する。交流電源SUPから供給される電流Isは上記入力電流Ic1とIc2の和となる。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdが指令値Vd*に一致するように入力電流Isの有効分を制御する。負荷電流ILが増加し、直流電圧Vdが下がった場合、入力電流Isの有効分を増やすことにより、Vd=Vd*となるように制御される。また、回生運転(IL<0)で、直流電圧Vdが上昇した場合には、入力電流Isの有効分を負にすることにより、電力を電源SUPに回生し、直流電圧Vdが下がり、やはり、Vd=Vd*となるように制御される。
本実施の形態では、2台の変換器をトランスTRを介して並列2多重運転を行っている。これにより、変換装置の容量を増加でき、かつ、入力電流Isの高調波が低減することが可能となる。この場合でも、直列抵抗Ra1,Ra2は、リアクトルLa1及びLa2に流れている電流をいち早く減衰させ、高速ダイオードから電力用ダイオードへの転流を速める役目を果たす。例えば、La1=20μH,Ra2=0.01Ωとした場合、時定数T1=2msecとなり、50Hz電源の1サイクル周期=20msecに対し、十分速く電流Ia1を減衰させることができる。リアクトルLa2に流れる電流Ia2についても同様である。
これにより、自励式電力変換器CNV1及びCNV2を構成する高速ダイオードに流れる電流を小さくすることが可能となり、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
(第13の実施の形態)図28は、本発明の電力変換装置の第13の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、Raは抵抗器、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Rdは直列抵抗器、Ddはバイパス用ダイオード、DCLは直流リアクトル、HSCBは直流高速遮断器、Lfは直流き電線のインダクタンス、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。
電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
リカバリー電流抑制リアクトルLa(3相)は、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子S1〜S6がオンしたときに電力用ダイオードPD1〜PD6に流れるリカバリー電流を抑制する役目を果たす。また、直列抵抗器Ra(3相)は、自己消弧素子S1〜S6がオフしたとき、リカバリー電流抑制リアクトルLaに流れている電流をいち早く減衰させ、自励式電力変換器CNVを構成する高速ダイオードD1〜D6から電力用ダイオードPD1〜PD6への転流を早める役目を果たす。これにより、自励式電力変換器CNVを構成する高速ダイオードD1〜D6に流れる電流を小さくすることが可能となり、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
電気鉄道では、直流き電線を介して電車負荷Loadが接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために本実施の形態の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは上記振動現象を減衰させる役目を果たし、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能となる。
抵抗器Rdは、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。ダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせるもので、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは、事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能となる。
(第14の実施の形態)図29は、本発明の電力変換装置の第14の実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、Raは抵抗器、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、ACSWは交流側開閉器、DCSWは直流側開閉器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Loadは負荷装置を示している。
一方、制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHCを用意している。直流電圧制御及び入力電流制御については、図28で説明したものと同様である。
本実施の形態の電力変換装置によれば、力行運転時は、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れるように制御することにより、電圧形自励式電力変換器CNVのしゃ断電流を小さく抑える。すなわち、当該電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧に対する位相角φを制御することにより、入力電流を制御するもので、常に入力力率=1付近で運転される。故に、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを、入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることにより、素子のしゃ断電流を小さくできる。
リカバリー電流抑制リアクトルLa(3相)は、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。また、直列抵抗器Ra(3相)は、自己消弧素子S1〜S6がオフしたとき、リカバリー電流抑制リアクトルLaに流れている電流をいち早く減衰させ、自励式電力変換器CNVを構成する高速ダイオードD1〜D6から電力用ダイオードPD1〜PD6への転流を早める役目を果たす。これにより、自励式電力変換器CNVを構成する高速ダイオードD1〜D6に流れる電流を小さくすることが可能となり、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
図29において、自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側開閉器ACSW(3相)と直流側開閉器DCSWを開放するように構成している。これにより、一旦装置の運転を停止するが、短時間で自励式電力変換器CNVを電気的に切り離し、引き続いて電力用ダイオード整流器RECのみで、力行負荷車両Loadに電力を供給することができる。この場合、回生車両の回生電力が力行車両の負荷電力より大きくなり、回生失効に至ることが考えられるが、従来の運転と同様に機械ブレーキにより列車を減速させ、列車の運転ダイヤを確保する。
電気鉄道では、まず、列車の運行を優先させることが不可欠となる。電力用ダイオード整流器RECと、電圧形自励式電力変換器CNVを比べた場合、故障する確立は後者の方が高いのは否めない。自励式電力変換器CNVが故障した場合、交流側端子及び直流側端子を電気的に切り離せるように構成することにより、一旦運転停止はするものの、再び電力用ダイオード整流器RECのみを運転させ、列車を走らせることが可能となる。これにより、より冗長性の高いシステムを提供できるようになる。
(第15の実施の形態)図30は、本発明の電力変換装置の第15のの実施の形態を示すブロック図である。図中、SUPは3相交流電源、TRは3相トランス、RECは電力用ダイオード整流器で、PD1〜PD6は電力用ダイオード、Laはリカバリー電流抑制用リアクトル、Raは抵抗器、CNVは電圧形自励式電力変換器で、S1〜S6は自己消弧素子、D1〜D6は高速ダイオード、ACCTは交流電流検出器、DCCTは直流電流検出器、Cdは直流平滑コンデンサ、VDTは直流平滑コンデンサCdの電圧を検出する電圧検出器、DCDTは直流負荷電流を検出する直流負荷電流検出器、Rdは直列抵抗器、Ddはバイパスダイオード、DCLは直流リアクトル、HSCBは直流高速遮断器、Lfは直流き電線のインダクタンス、Loadは負荷装置を示している。
また制御回路CNTLとして、比較器C1,C2、加算器AD、電圧制御補償回路Gv(S)、電流制御補償回路Gi(S)、フィードフォワード補償器FF、座標変換回路Z、電源同期位相検出回路PLL、位相制御回路PHC、過電流検出器OCを用意している。直流電圧制御及び入力電流制御については、図28の装置で説明したものと同様である。
本実施の形態の電力変換装置によれば、力行運転時は、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れるように制御することにより、電圧形自励式電力変換器CNVのしゃ断電流を小さく抑える。すなわち、当該電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御するもので、常に入力力率=1付近で運転される。故に、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子のスイッチングを、入力電流Isのゼロ点付近で行うようにすることにより、素子のしゃ断電流を小さくできる。
リカバリー電流抑制リアクトルLa(3相)は、電圧形自励式電力変換器CNVの自己消弧素子がオンしたときに電力用ダイオード整流器RECの各ダイオードに過大なリカバリー電流が流れ込むのを抑える役目をする。また、直列抵抗器Ra(3相)は、自己消弧素子S1〜S6がオフしたとき、リカバリー電流抑制リアクトルLaに流れている電流をいち早く減衰させ、自励式電力変換器CNVを構成する高速ダイオードD1〜D6から電力用ダイオードPD1〜PD6への転流を早める役目を果たす。これにより、自励式電力変換器CNVを構成する高速ダイオードD1〜D6に流れる電流を小さくすることが可能となり、当該ダイオードは電流容量の小さいもので構成でき、かつ、装置の損失低減を図ることができるようになる。
電気鉄道では、直流き電線を介して電車負荷Loadが接続され、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLfにより共振現象が発生し、直流電圧制御が不安定になる場合がある。これを防ぐために本実施の形態の電力変換装置では、直流平滑コンデンサCdに直列に抵抗器Rdを接続している。抵抗器Rdは上記振動現象を減衰させる役目を果たし、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させることが可能となる。
抵抗器Rdは、直流平滑コンデンサCdと直流き電線のインダクタンスLf等により発生する振動現象を減衰させ、自励式電力変換器CNVによる直流電圧制御を安定化させる役目を果たすが、直流平滑コンデンサCdに流れる電流Icapにより、Icap2×Rdの損失が発生する。ダイオードDdは抵抗器Rdに流れる電流の片方向の電流をバイパスさせるもので、上記損失を半分に減らすことができる。バイパスダイオードDdが入っても、共振現象を抑制する効果はほぼ同じである。
高速遮断器HSCBは、直流き電線の地絡事故などにより、過大な電流が流れた場合、いち早く回路を切り離す役目を果たし、事故が拡大するのを防止する。しかし、直流平滑コンデンサCdが電圧源となっており、至近端で地絡事故などが発生した場合には、事故電流の立ち上がりが速く高速遮断器HSCBでも切り離せないことがある。直流リアクトルDCLは、事故電流の立ち上がりを抑制するもので、事故時に高速遮断器HSCBを確実に動作させることが可能となる。
図30の装置において、過電流が発生した場合、自励式電力変換器CNVの過電流を優先して検知し、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。すなわち、自励式電力変換器CNVの3相入力電流Iaを交流電流検出器ACCTで検出し、それを整流して過電流検出器OCに入力する。電流Iaが設定値Iaoを超えた場合には、位相制御回路PHCにゲートブロック信号GBを与え、自己消弧素子S1〜S6をオフさせる。
通常の力行運転では、大部分の電流が電力用ダイオード整流器RECに流れ、わずかな電流が自励式電力変換器CNV自己消弧素子に流れる。電気鉄道などでは力行過負荷300%で1分間の運転が要求され、従来のように電力変換装置全体の過電流を検知する方式では、過負荷300%以上の電流で過電流レベルを設定しなければならず、実際に自励式電力変換器CNVにそのような大電流が流れた場合に備えて、それを遮断するだけの自己消弧素子を用意するのは不経済である。
図30の実施の形態では、交流電流検出器ACCTにより、電圧形自励式電力変換器CNVの3相入力電流の過電流を検知して、当該自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子をオフするように制御することにより、実用的な電流レベルで自己消弧素子の過電流保護がかかり、装置を確実に保護することが可能となる。なお、直流電流検出器DCCTで電圧形自励式電力変換器CNVの直流電流を検知して、過電流保護をかけても同様に目的を達成できる。
(第16の実施の形態)図31は、本発明の第16の実施の形態の制御回路を示すブロック図である。図中、CAL3は直流電圧指令演算器、C1,C2は比較器、ADは加算器、Gv(S)は電圧制御補償回路、Gi(S)は電流制御補償回路、FFはフィードフォワード補償器、Zは座標変換回路、SFは位相シフト回路、DL遅延回路、PLL電源同期位相検出回路、PHC位相制御回路を示す。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdを検出し、比較器C1により、電圧指令値Vd*と比較する。その偏差εvを電圧制御補償回路Gv(S)により、積分又は比例増幅し、加算器ADに入力する。一方、負荷装置Loadに供給される電流ILを検知し、フィードフォワード補償器FFを介して、加算器ADに入力する。加算器ADの出力Iq*が電源SUPから供給される有効電流の指令値となる。座標変換器Zは、電源SUPから供給される3相入力電流Ir,Is,Itの検出値をdq軸(直流量)に変換する。座標変換されたq軸電流Iqは有効電流検出値を、d軸電流Idは無効電流検出値を表わす。
比較器C2により、有効電流指令値Iq*と有効電流検出値Iqを比較し、その偏差εiを電流制御補償回路Gi(S)により増幅して、位相角指令値φ*とする。電源同期位相検出回路PLLは3相交流電源電圧に同期した位相信号θr,θs,θtを作り、位相制御回路PHCに入力する。位相制御回路PHCは、位相角指令値φ*と位相信号θr,θs,θtを用いて自励式電力変換器CNVの自己消弧素子S1〜S6のゲート信号g1〜g6を発生する。電圧形自励式電力変換器CNVは、電源電圧に同期した一定のパルスパターン(1パルス,3パルス,5パルス等)で電源電圧Vsに対する交流出力電圧Vcの位相角φを制御することにより、入力電流Isを制御する。
図31の制御回路CNTLにおいて、直流電圧指令演算器CAL3では、負荷電流ILに対し、力行運転時の直流電圧指令値Vd*を次のように与えている。
ただし、k1は比例定数、Vdo*は無負荷時の直流電圧指令値である。
直流平滑コンデンサCdに印加される電圧Vdは上記指令値Vd*に一致するように制御され、負荷電流ILが増加するに従い、直流電圧Vdは低下する。自励式電力変換器CNVは一定のパルスパターンで制御されるので、自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの大きさは直流電圧Vdによって決まる。負荷電流ILの増加により直流電圧Vdが下がれば、交流電圧Vcの波高値も下がる。
Vcの波高値が電源電圧Vsの波高値より小さくなると、図17で説明したように、入力電流Isのベクトルは、電圧Vcの方に近づく。電源電圧Vsに対してはIsの遅れ位相角θが大きくなり、力率は少し低下する。しかし、電圧Vcと電流Isの位相差(φ−θ)が小さくなるため、自励式電力変換器CNVのスイッチングが入力電流Isのゼロ付近で行われるようになり、自己消弧素子の遮断電流を小さくできる。特に、負荷電流ILが大きいところで位相差(φ−θ)がゼロ近くになるように直流電圧Vdを調整すれば、その効果が大きい。
電気鉄道などでは、力行側の過負荷容量が大きいものが要求され、上記のように負荷電流ILに応じて直流電圧Vdを調整することにより、自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を小さくでき、変換器損失を低減できるだけでなく、遮断電流容量の小さい素子を使うことが可能となり、より経済的な電力変換装置を実現できる。
また、回生運転時の直流電圧指令値Vd*は、Vd*=Vd1*=一定とし、このとき、指令値Vd1*は無負荷運転時の電圧指令Vdo*より少し高めに設定する。
回生運転では直流電圧Vdが一定に保持され、直流き電電圧の安定化を図ることができ、かつ、力行運転では特に過負荷領域で自励式電力変換器CNVを構成する自己消弧素子の遮断電流を下げることができる。
また、電気鉄道における隣接変電所間で同じような変換装置が設置された場合、上記直流電圧指令を、Vd1*>Vdo*とすることにより、片方の変電所が力行運転しているとき、もう一方の変電所が回生運転することを防止できる。これにより、隣接変電所間で無駄な横流が流れるのを防ぐことができる。
一方、無負荷時の直流電圧指令値Vdo*は、電源電圧の波高値|Vs|によって、次式のように与える。ただし、k2は比例定数とする。
直流電圧指令値Vd*を電源電圧Vsの変動に関係なくVdo*一定として運転した場合、次のような問題がある。すなわち、電源電圧Vsが定格値Vsoより高くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|<|Vs|となる。この結果、電源SUPから遅れ無効電流が流れ込み、その分、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。
反対に、電源電圧Vsが定格値Vsoより低くなった場合、直流電圧Vdが一定に制御されていると、自励式電力変換器CNVの交流側電圧Vcは一定値となり、|Vc|>|Vs|となる。この結果、電源SUPから進み無効電流が流れ込み、自励式電力変換器CNVの入力電流が増大し、素子の損失の増大と素子遮断電流の増大を招くことになる。特に、時間的には短時間であるが電圧低下が大きい、瞬低(瞬時電圧低下)が発生した場合、上記無効電流値が大きいため、過電流により装置の運転停止に至ることがある。
本実施の形態の電力変換装置では、電源電圧Vsの大きさが変化した場合、Vdo*=k2×|Vs|として、直流電圧指令値Vd*を変えている。すなわち、電源電圧Vsが上昇したときはその上昇分に比例させて直流電圧Vdを高くすることにより、遅れ無効電流の増加を抑えている。また、電源電圧Vsが低下した場合、その低下分に比例させて直流電圧Vdを下げることにより、電源SUPから進み無効電流が流れ込むのを抑えている。これにより、電源電圧変動による素子電流の増大を防止することが可能となり、かつ、瞬低が発生しても装置を停止させるとなく、運転継続ができるようになる。
このように、本実施の形態の電力変換装置によれば、電源電圧Vsが変動した場合でも無駄な無効電流が増加することを防止でき、しいては装置を構成する素子の電流容量が低減され、経済的な電力変換装置を実現できる。また、瞬時電圧低下が発生しても装置を停止させることなく信頼性の高いシステムを提供できる。
図31の制御回路CNTLにおいて、装置の運転停止信号STOPが入った場合、まず、位相シフト回路SFを動作させ、位相指令値φ*をゼロに移行させる。次に、遅延回路DLを介してゲートブロック信号GBを与え、全ての自己消弧素子をオフさせるようにしている。
電圧形自励式電力変換器CNVをゲートブロックし、電力変換装置の運転を停止する場合、特に、大部分の電流が自己消弧素子に流れている回生運転時に、いきなり自励式電力変換器CNVをゲートブロックすると、最悪、入力電流のピーク値を自己消弧素子が遮断することにもなり、電磁ノイズの増大やスイッチング損失の増加を招く。
本実施の形態の電力変換装置では、力行/回生の運転状態にかかわらず、まず、交流電源電圧Vsに対する自励式電力変換器CNVの交流電圧Vcの位相角φをゼロに近づけ、入力電流Isを小さくし、その後で、当該自励式電力変換器CNVをゲートブロックする。これにより、当該自己消弧素子の遮断電流を小さく抑えることができ、電磁ノイズの発生を抑えることができる。