請求項1に記載の発明は、外箱と内箱と前記外箱と前記内箱との間に設けた断熱材とからなる断熱箱体と、前記断熱箱体の庫内の最下部に配置される野菜室とを備え、前記野菜室の底面部は手前側の第一底部と、奥側の第二底部とを有し、前記第一底部は前記第二底部より低く下がって段差部を形成し、前記段差部の後方において前記第二底部の下方に位置する前記断熱箱体の庫外に段差スペースを設け、前記段差スペースに冷却サイクルにより発生する凝縮水を貯留および蒸発させる蒸発皿を配置するとともに、前記野菜室は前記
野菜室内の下部に第一の収納容器と上奥部に第二の収納容器とを有し、前記第一の収納容器の手前側に形成された上下方向に長い第一の収納空間と、前記第二の収納容器により区画された第二の収納空間と、前記第二の収納容器の下方の前記第一の収納容器により区画された第三の収納空間と、前記第一の収納空間と前記第三の収納空間との間に仕切部とを備え、前記第一の収納空間の底部は前記第三の収納空間の底部よりも低く、前記第一底部の上部に前記第一の収納空間を、前記第二底部の上部に前記第三の収納空間を、前記段差部の上部に前記仕切部を配置し、前記蒸発皿の底面に凹陥状の取手を一体に備えたものであり、冷蔵庫の限られた高さ寸法を有効に利用でき、冷蔵庫の使い勝手向上と野菜室の収納量を効率よく確保することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記蒸発皿の近傍に前記蒸発皿に送風可能な送風装置を備え、前記蒸発皿は前記送風装置を取り付ける取付部を一体に備えるものである。
これにより、送風装置を取り付ける取付部が蒸発皿と一体に成形されるため、取付部に取り付けられた送風装置と蒸発皿との位置関係が安定する。従って、複数の冷蔵庫を製造した場合でも、冷蔵庫間で蒸発効率にばらつきの少ない安定した冷蔵庫を提供することができる。また、部品点数を削減でき、低コストかつ省資源化が可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記蒸発皿は、周縁に一体に立設される壁部と、上面に一体に突設され前記壁部よりも高さの低く、前記凝縮水を貯留するリブとを備えるものである。
これにより、リブにより蒸発皿の構造的強度が向上し、変形による蒸発皿の水漏れや局部溜まりによる蒸発能力低下を抑止するとともに、凝縮水を貯留する領域が確定されるため、効率よく凝縮水を蒸発させることができる位置(例えば送風装置からの風が効率よく当たる領域)に凝縮水をまず配置することが可能となる。また、当該領域から凝縮水が溢れた場合でも、蒸発皿全体を囲うように設けられる壁部により凝縮水を堰き止めるため、凝縮水が不本意に冷蔵庫の外部に漏れ出すことを防止することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記蒸発皿は内部に加熱装置を備え、底面を水平面に対し傾斜させ、前記加熱装置を前記蒸発皿の最低部近傍に配置するものである。
これにより、蒸発皿の底板部の最も低い部分に凝縮水を集めることができ、当該部分に加熱装置が配置されるため、効率よく凝縮水を蒸発させることが可能となる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却サイクルの圧縮機を収納する機械室は、前記野菜室より上方に設けたものである。
これにより、野菜室の奥部の機械室無効容積を収納容積として利用可能であり、野菜室の手前部の第一の収納空間の奥行きを拡大して、例えばペットボトル類を二列に収納可能とすることや、醤油などの調味料を追加して収納することや、米などを上部より中身だけ小口に取り出しやすく収納することや、白菜などの大物の野菜でも立てて収納することで、これまで以上に使いやすさを向上させることができるとともに、野菜室の奥部の第二及び第三の収納空間を十分に確保でき、根菜類や果実類などの用途にあわせた収納空間をも十分に確保することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記野菜室の上部に冷凍室を設け、前記冷凍室の背面に前記冷却サイクルの蒸発器を配置した冷却室を備えたものである。
これにより、野菜室背面に機械室や冷却室による無効容積が存在しないので、外形寸法最大の奥行きで収納容積を確保できるので、より一層、第一、第二、第三の収納空間を自由度高く配分することが可能である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記第二の収納容器を左右段違いの深浅形状とするものである。
これにより、第二底部の高さを更に上げて構成しても多様な高さの野菜や果実を収納することが可能である。
また、第一底部と第二底部の奥行き比率を変え第二底部の奥行きを小さくして蒸発皿の設置スペースが小さくなっても、蒸発皿の深さを確保することで、十分な蒸発皿保水量を確保することができる。また、蒸発皿の上下空間に凝縮器を配置して加熱手段として蒸発能力を増加させることも可能である。
請求項8に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記第二の収納容器を前後段違いの深浅形状とするものである。
これにより、第二の収納容器を後方にスライドさせても下部の第一の収納容器内の食品に引っかかることがない。
さらに、従来の一般的な奥行きである約700ミリの外形寸法で機械室が冷蔵庫の下部後方にある冷蔵庫は、機械室や冷却室などが背面に設けられていて、一つの収納空間当りの奥行きが短くなり、実用的な空間を確保することが困難で、引き出し室を奥行き方向に3段階に収納空間を変化させることは困難であるが、圧縮機等を配置する機械室を冷蔵庫の上部後方に配置した場合は、野菜室の背面に機械室を設けることがないので、奥行き方向に対して収納空間を最大限利用できるので、引き出し室を奥行き方向に3段階に実用的な収納空間を変化させることが可能となる。
また、第二底部の高さを更に上げて構成しても多様な高さの野菜や果実を収納することが可能である。
また、第一底部と第二底部の奥行き比率を変え第二底部の奥行きを小さくして蒸発皿の設置スペースが小さくなっても、蒸発皿の深さを確保することで、十分な蒸発皿保水量を確保することができる。また、蒸発皿の上下空間に凝縮器を配置して加熱手段として蒸発能力を増加させることも可能である。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の発明において、前記仕切部は、前記第一の収納空間の収納物の転倒を防止する転倒防止部を設けたものである。
これにより、第一の収納空間内に収納された収納物である背の高い飲料品のペットボトルやビン類や大物野菜の配置スペースを画定できることとなり、収納物の転倒を防止することができる。また、第一の収納空間内での収納物の移動も防止することができる。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記転倒防止部に鉛直方向に設けた凸部と、前記仕切部に鉛直方向に設けた凹部とを嵌めあわせることにより、前記転倒防止部を前記仕切部に固定したものである。
これにより、ペットボトルなどの比較的重量が大きい収納物に対して、幅方向に慣性力がかかって、収納物が転倒防止部に倒れかかった場合においても、転倒防止部は移動(スライド)することなく、所定の位置にしっかりと固定できる。また、転倒防止部と仕切部とに簡単な加工をすることで、転倒防止部を固定するための別部品を新たに設けることなく、転倒防止部を所定の位置に固定することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記仕切部に設けた凹部は、前記仕切部の幅方向に対して、所定の間隔を置いて複数設けたものである。
これにより、転倒防止部を固定する位置は、収納物の寸法や量によって、任意に決めることができ、第一の収納空間内の収納物の配置スペースを柔軟に変えることができるので自由度が高まることとなり、第一の収納空間内の使い勝手が向上する。
請求項12に記載の発明は、請求項9から11のいずれか一項に記載の発明において、前記転倒防止部は、前記仕切部に対して二個以上設けたものである。
これにより、第一の収納空間内は、配置スペースを細分化できることとなり、例えば、ペットボトルと、ビン類と、白菜などの大物野菜と、の三種類の収納物の配置スペースを種類毎に得られることとなり、第一の収納空間内の使い勝手がさらに向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における冷蔵庫について、その具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図である。図1に示すように、冷蔵庫100は観音開き式の扉を上部に備え、冷蔵庫100の内方と外方とを断熱状態に隔てる断熱箱体101内に複数に区画された貯蔵室を備えている。なお、以降の本発明の実施の形態において図1のように冷蔵庫を正面に見て、紙面の左右を幅方向、紙面を貫通する向きを奥行き方向、紙面の上下を高さ方向とする。
冷蔵庫100の内の複数に区画された貯蔵室は、その機能(冷却温度)によって冷蔵室102、製氷室105、庫内の温度が変更できる切換室106、野菜室103、および冷凍室104等と区別して称されることがある。
冷蔵庫100の最上部に位置する冷蔵室102の前面開口部には、例えばウレタンのような断熱材を発泡充填した回転式の断熱扉107が設けられ、庫内は棚状の収納空間となっている。
また、冷蔵室102の下方に配置される製氷室105、切換室106、野菜室103、および冷凍室104は引き出し式の収納空間となっている。そして、それぞれの引き出しには断熱扉108が設けられ、これにより冷気の漏れがないように貯蔵室を引き出し開閉自在に密閉している。
断熱箱体101は、金属製の外箱と樹脂製の内箱との間に例えば硬質発泡ウレタンなどの断熱材を充填して形成される、少なくとも一面が開口した略直方体の箱体である。断熱箱体101は、外方の雰囲気(大気)から断熱箱体101の内方に流入しようとする熱を遮断する機能を有している。
冷蔵室102は、冷蔵保存のために収納物が凍らない程度の低い温度に維持される貯蔵室である。具体的な冷蔵室102の温度の下限としては、通常1℃〜5℃の範囲に設定されている。
野菜室103は、断熱箱体101の最下部に配置され、主として野菜の冷蔵を目的とし、収納物が凍らない程度の低い温度に維持される。また野菜室103は、冷蔵室102と同等もしくは若干高い温度設定となされている。具体な野菜室103の温度の下限としては、2℃〜7℃の範囲に設定されている。なお、凍らない低温にするほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。
冷凍室104は、冷凍温度帯に設定される貯蔵室である。具体的には冷凍室104は、冷凍保存のために通常−22℃〜−18℃の範囲に設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30℃や−25℃の低温に設定されることもある。
製氷室105は、庫内に製氷機(図示せず)を設け製氷機により氷を作り、その氷を保存する貯蔵室である。製氷室105の設定温度は、冷凍室104とほぼ同等であるが省エネのために氷が融けない程度に温度を高く、例えば−12℃から−18℃の範囲で設定することもある。
切換室106は、冷蔵庫100に取り付けられた操作盤により、用途に応じ冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで切り換えることができる。
なお、冷蔵室102に備えられた観音開き扉は狭いキッチンスペースにおいて扉開閉に要するスペースを小さくすることができ、かつ左右どちらの方向からの動線においても、使い勝手を損なうことがない。そのため観音開き扉は、近年増加している形態であるが、一枚の扉に比べ扉棚の収納量が少ないというデメリットを有している。すなわち大型ペットボトルなどの飲料収納量において劣っており、収納性に対する不満があった。これを解決するために野菜室103の一部に、ペットボトルなどが縦収納可能となる空間を設けている。
また、冷蔵庫100の全高は通常約1800ミリと設定され、これより大きくなると冷蔵庫の設置、運搬に支障をきたす場合が多くなる。下部の引き出し室の最上部高さは、引き出し室の使いやすさ、冷蔵室102への食品の出し入れやすさ、および冷蔵室102の断熱扉107に設けられた扉棚の使いやすさの観点から、約920ミリとなっている。
また、野菜室103の引き出し上部高さは床上から約400ミリ、冷凍室104の引き出し上部高さは約750ミリとなり、冷凍室104と野菜室103との開口間口は各々約310ミリと約335ミリとに設定されている。
図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫を背面から示す斜視図である。図2に示すように、冷蔵庫100の天面部には冷蔵庫100の背面方向に向かって下りの階段状となるように凹部が形成され、その凹部内に機械室201が形成されている。なお通常、静音化や内部部品の保護のため機械室201は、カバー202により覆われている。
図3は、本発明の実施の形態1の冷蔵庫のカバーを開けた状態の上部背面を示す斜視図である。図3に示すように機械室201は、圧縮機203や圧縮機203を冷却するためのファン211の他、主として冷却サイクルの高圧側の構成部品が収納される空間である。機械室201は、断熱箱体101の外部の最上部後方領域に食い込んだ状態において形成されている。
ここで、機械室201が冷蔵庫100の最上方の後方に配置される態様は、従来一般的であった断熱箱体101の最下部の貯蔵室後方領域に圧縮機203が配置される冷蔵庫に比べ、野菜室103等の最下方の貯蔵室の容量を格段に向上させることができる。また、冷蔵室102の最上方の手の届きにくいデッドスペースが機械室201として使用できるため、使いやすさの観点から有効な配置となり、冷蔵庫100の実際の収納容積を向上させることができる。特に下部を引き出し式にて構成する場合は、奥行き方向の収納空間を前方に引き出して利用可能となるため、さらに有効な配置となる。
冷却サイクルは、圧縮機203、凝縮器(図示しない)、水分除去のためのドライヤ251、減圧器であるキャピラリー252、蒸発器(図示しない)、および吸入配管253を環状に配管接続してなり、配管内部に熱搬送を行う冷媒と、潤滑及び絶縁のための冷凍機油とが封入されている。吸入配管253とキャピラリー252とは、冷却サイクル効率化を目的として冷却サイクル内部において熱交換が可能になるよう、例えば半田付けなどして密着させてある。
また、凝縮器は圧縮機203と、断熱箱体101の外郭部に熱交換可能に貼り付けた放熱配管部とを吐出配管254により接続してあり、ファン211による強制冷却を行うよう凝縮器はファン211の風路内に設けられている。吐出配管254は、大きな螺旋状にしてファン211による熱交換長さを確保している。
また、冷媒には環境対応として温暖化係数が小さいR600aが用いられ、冷凍機油には相溶性の高い鉱油が用いられている。
圧縮機203は、冷媒を圧縮する装置であり、レシプロ式の圧縮方式をとり、さらに省エネのために負荷が小さい場合には、低能力運転が可能なインバータ制御が採用されている。圧縮機203の下部には、外方突出状に脚体231が4本(内1本は図示せず)設けられ、脚体231が床板204に一体に設けられるピンと係合するとともに、防振ゴム205の上に載置され、機械室201に取り付けられている。
また、防振ゴム205の周りには円筒状の支承壁244が、床板204から上方突出状一体に設けられている。これは、冷蔵庫100が倒されたときに圧縮機203からピンに伝わる衝撃を、分散させて受け止め、ピンの破損を防止するためである。
なお、ピンの先端には有頭ピン206が取り付けられており、脚体231がピンから抜け出すのを防止している。
また、ファン211は圧縮機203の吸入配管253側に配置され、吐出配管254側には構成部品を配置していないので比較的振動の大きい吐出配管254が他の部品などに干渉して異音を発生させることを根本的に解決できる。
また、吐出配管254を機械室201風路内に螺旋状に長く配置できるので、放熱能力を向上させることができる。
さらに、ファン211による風向は吸入配管253側からファン211、圧縮機203、吐出配管254と順に流れる方向にしてある。これにより、圧縮機203に比較的低温のフレッシュな空気を流して温度上昇を抑えて、信頼性を高めることができる。特に吐出配管254と反対側から空気を吸い込むことにより、吐出配管254自体の放熱や吐出配管254につながる外箱左側壁面255の温度影響により空気温度が上昇することを抑止できる。
図4は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫を下方から示す斜視図である。図4に示すように、冷蔵庫100の底部であって断熱箱体101の外部底面には、蒸発皿301が取り付けられている。また、蒸発皿301の裏面には、凹陥状の取手311が蒸発皿301と一体に設けられている。
取手311は、冷蔵庫100の背面を下方に倒した状態において運搬する際の手がかりとなる部分であり、蒸発皿301と一体に一対設けられている。従って蒸発皿301を冷蔵庫100に取り付ければ、冷蔵庫100は取手311を備えることとなり、断熱箱体101に直接取手を取り付ける場合に比べ部品点数が減少し、製造工程を簡略化でき冷蔵庫の製造を容易化することができる。
また取手311は断熱箱体101中に埋設して設けていないので、ウレタン発泡流動性を阻害することなく安定した断熱材充填が行える。
図5は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の下部のみを示す断面図である。図5に示すように断熱箱体101は、手前側の第一底部321と奥側の第二底部322とを備え、断熱箱体101の野菜室103庫内には第一の収納容器303と第二の収納容器304とが備えられている。
なお、第一の収納容器303と第二の収納容器304との材質は、ポリプロピレン(PP)である。
第一底部321およびは、冷蔵庫100の底部手前側を冷蔵庫100の幅方向全体に渡って水平面に沿って配置される断熱箱体101の一部である。
第二底部322は、冷蔵庫100の底部奥側を冷蔵庫100の幅方向全体に渡って水平面に沿って配置される断熱箱体101の一部である。第二底部322は、第一底部321よりも一段上がった状態に配置されている。つまり、第一底部321と第二底部322とにより構成される断熱箱体101の底部302は、奥側に向かって上昇する階段状に形成されている。
第一の収納容器303は、引出の断熱扉108に追随して引き出され、手前内方に大型のペットボトルなどの収容対象物が収容される上下方向に長い第一の収納空間305を設けている。第一の収納空間305の後方の第一の収納容器303上部には、第二の収納容器304を後方にスライド可能に設けてある。
また第一の収納容器303の底面は、断熱箱体101の第一底部321と第二底部322とに沿うように、奥側に向かって上昇する階段状に形成されている。第二の収納容器304の内方を第二の収納空間306とし、第二の収納容器304の下方の第一の収納容器303の内方を第三の収納空間307としている。
また、第一の収納空間305と第三の収納空間307との間には第一の収納容器303の底面より一体成型された仕切部308が形成され、収納物の移動や倒れを防止している。
また仕切部308は、第一底部321と第二底部322との段差をつなぐ傾斜面の上方に位置し、第一の収納容器303の底面と一体に成型することにより第一の収納容器303の底面の強度を向上させる。そして第一の収納容器303の底面の肉厚減や補強リブ高さ低減などにより、野菜室103の高さ方向の無効部を増加させることなく、食品収納時のたわみ変形を抑止して、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面とのクリアランスを最小限とすることができる。
なお、仕切部308は短くして成型時間を短縮させても良いし、第二の収納容器304に近づくよう長くして、収納物を転倒させにくくしても良い。
なお、図4に示す断熱箱体101から垂れ下がって配置される管は、ドレン323である。ドレン323は、冷却サイクルにより発生した凝縮水を、冷蔵庫100の底部に配置される蒸発皿301に導く。
なお、より詳細には図5に示すように断熱箱体101は、野菜室103内の底面部が手前側の第一底部321と、奥側の第二底部322とからなる。第一底部321は第二底部322より低く下がって段差部600を形成し、段差部600の後方の第二底部322の下方に位置する庫外に段差スペース601が設けられる。段差スペース601には、蒸発皿301が配置されている。蒸発皿301は、冷却サイクルにより発生する凝縮水を貯留、蒸発させ、冷蔵庫の庫外において用いられる機能部品である。
次に、第一の収納空間305内の収納物の倒れを防止するための転倒防止部について説明する。図6は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の第一の収納容器に転倒防止部を取り付けた状態を示す要部斜視図である。
図6に示すように仕切部308は、第一の収納空間305内の収納物の倒れを防止するための転倒防止部400を一つ備えている。転倒防止部400は、仕切部308とは別部品であって仕切部308に対して着脱可能となっている。転倒防止部400は、収納物を支えるための平面部401と、仕切部308に固定するための固定部402とが一体成形されている。
これにより、第一の収納空間305内に収納された収納物である背の高い飲料品のペットボトル、ビン類などの配置スペースを画定でき、収納物の転倒を防止することができる。また、第一の収納空間305内での収納物の移動も防止することができる。特に、白菜などの大物野菜で不安定なものでも転倒を防止でき、立てて収納することができることとなり、第一の収納空間305の使い勝手が向上する。
また図7は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の第一の収納容器の転倒防止部の斜視図である。図7に示すように、固定部402の内側には、鉛直方向に凸部403が連続的に設けられている。
さらに、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の第一の収納容器の要部斜視図である図8に示すように、第一の収納空間305と第三の収納空間307との間に成型された仕切部308の第一の収納空間305側には、鉛直方向に凹部350が連続的に設けられている。そして、図7の凸部403が凹部350と嵌めあわされて、転倒防止部400が仕切部308に固定される。
転倒防止部400と仕切部308とに、このような簡単な加工をすることにより、転倒防止部400を固定するための別部品を新たに設けることなく、転倒防止部400を所定の位置に固定することができる。
なお、凹部350と凸部403とは、それぞれ上方から下方に向かって幅が狭くなるようにテーパー状に形成されている。
また、凹部350は仕切部308の幅方向に対して、所定の間隔を置いて、四本形成されている。ここで所定の間隔とは、収納物の幅よりやや大きい長さであり、例えばペットボトルの幅よりやや大きい長さである。これにより、転倒防止部400を固定する位置は、収納物の寸法や量によって、任意に決めることができる。その結果、第一の収納空間305の収納物の配置スペースを柔軟に変えることができるので、配置スペースの自由度が高まることとなり、第一の収納空間305内の使い勝手が向上する。
次に、第一の収納容器303内の第一の収納空間305に収納物を収納した状態を説明する。
図9は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の第一の収納容器内の収納物の収納状態を示す上方から見た要部説明図である。図9は、転倒防止部400を右から一つ目の凹部350(図示せず)に固定した時である。
図9に示すように、第一の収納空間305内に設けられた転倒防止部400によって区画されたスペースには、2リットルペットボトル501と醤油の調味料ボトル502とが収納される。そして転倒防止部400により、2リットルペットボトル501や醤油の調味料ボトル502の転倒が防止される。
なお、図9では2リットルペットボトル501と醤油の調味料ボトル502とが収納されているが、醤油の調味料ボトル502の代わりに2リットルペットボトルを収納する、つまりこの区画されたスペースに2リットルペットボトルを2本置くこともできる。
図10は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の第一の収納容器内の他の収納物の収納状態を示す上方から見た要部説明図である。図10は、転倒防止部400を右から二つ目の凹部350(図示せず)に固定した時である。
図10に示すように、第一の収納空間305内に設けられた転倒防止部400によって区画されたスペースには、醤油の調味料ボトル502が4本収納され、転倒防止部400により醤油の調味料ボトル502の転倒が防止される。また、同一種類の収納物をひとつのスペースに配置できることとなり、第一の収納空間内305の使い勝手もよく、かつ見栄えもよくなる。
なお、本発明の実施の形態1では、図9や図10に示すように、転倒防止部400の平面部401の先端部は、第一の収納容器303に固定されていない自由端401aとなっている。そのため、平面部401の先端部は柔軟性があるので、ビンなどの収納物が倒れかかった場合でも、その衝撃力を緩和でき、衝撃音を低減できる。
なお本発明の実施の形態1では、転倒防止部401の材質はポリプロピレン(PP)を用いており比較的やわらかいので、ビンなどの収納物が倒れかかった場合でも、その衝撃力を緩和でき、衝撃音を低減できる。
なお、本発明の実施の形態1では図6に示すように、転倒防止部400は固定部402と平面部401との境界部近傍に補強部404を設けている。これにより、収納物が倒れた場合に、応力集中が起こりやすい転倒防止部400の根元部近傍の強度を向上できる。
これに対して、転倒防止部400の先端部ある自由端401aの近傍には、固定部402と平面部401との境界部近傍に設けたような補強部404は設けていない。これにより、平面部401の先端部は柔軟性があるので、ビンなどの収納物が倒れかかった場合でもその衝撃力を緩和でき、衝撃音を低減できる。すなわち転倒防止部400は、根元部近傍は補強部404を設けて強度向上を狙い、先端部近傍は根元部近傍に設けた補強部404は設けず柔軟性を持たせている。
なお、本発明の実施の形態1では図9に示すように転倒防止部400の奥行き長さである寸法Yは、第一の収納空間305の奥行き長さをZとした場合、Y≧(3/4)×Zとすることが好ましい。
これにより、第一の収納空間305にペットボトルなどを奥行き方向に二列置いた時でも、手前のペットボトルの中心線より手前側に自由端401aは位置するので、収納物をより安定して収納できる。
なお本発明の実施の形態1では、転倒防止部400は一つの仕切部308に対して一つとしたが、二個以上設けてもよい。
これにより、第一の収納空間305内は配置スペースを細分化でき、例えばペットボトル、ビン類、および白菜などの大物野菜の三種類の収納物の配置スペースを種類毎に得られることとなり、第一の収納空間305内の使い勝手をさらに向上できる。
なお、本発明の実施の形態1では転倒防止部400は仕切部308とは別部品とし、仕切部308に対して着脱可能としたが、例えば転倒防止部400は仕切部308に一体成形することにより、予め仕切部308に固定されてもよい。さらに、転倒防止部400の先端部は第一の収納容器303の手前側につなげることにより、仕切部308と第一の収納容器303の手前側とをブリッジ状にしてもよい。
これにより、第一の収納空間305に2リットルペットボトル、ビン類、白菜などの大物野菜、米などの比較的重量が大きい収納物を収納した時においても、第一の収納空間305の底面の強度を向上させる。そのため、食品収納時の第一の収納容器303のたわみ変形を抑止して、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを削減することができる。
また、予め幅方向に狭いスペースと広いスペースとに区画(ブロック化)することにより、例えば狭いスペースに米を、広いスペースに2リットルペットボトルなどをそれぞれ収納することができ、使用者は収納物をより区分して収納しやすくなる。
また、これにより転倒防止部400は仕切部308と一体成形されるので、転倒防止部400として部品点数を増加させることはない。
図11は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の蒸発皿を示す斜視図である。図11に示すように、蒸発皿301は冷却サイクル、特に蒸発器(図示しない)において発生する凝縮水を貯留し、強制的に凝縮水を蒸発させるための容器であり、取付部312と、壁部313と、リブ314と、底板部315とを備えている。また冷蔵庫100は、蒸発皿301関連部品として、送風装置であるファン324と、冷却サイクルの凝縮器配管の一部を用いた加熱装置325とを備えている。
また図5、図11に示すように、段差スペースの後方にさらにスペース327を設け、スペース327に蒸発皿301に風を強制的に対流させ蒸発皿301上の凝縮水の蒸発を促進させるファン324を配置している。ここで蒸発皿301は、ファン324を配置したスペース327まで延設されている。
取付部312は、ファン324を蒸発皿301に取り付ける枠状の部材であり、蒸発皿301と一体に成形されている。これにより、複数個製造された蒸発皿301のそれぞれに、ファン324を取り付けた場合でも、蒸発皿301とファン324との位置関係が安定し、いずれの蒸発皿301においても所望の位置に風を送ることが可能となる。
壁部313は、蒸発皿301の周縁に一体に立設される部分であり凝縮水を堰き止め、蒸発皿301から凝縮水があふれ出すのを防止する機能を有している。
リブ314は、凝縮水を貯留する役割をするものであり、蒸発皿301に一体に突設される薄板状の部材である。また、リブ314の高さは壁部313の高さよりも低く設定されている。
本発明の実施の形態1の場合、リブ314は奥側に配置される壁部313から、手前側に配置される壁部313に至るまで奥行き方向に延びた状態で設けられ、リブ314が蒸発皿301の幅方向の中間部に2本、平行に設けられている。また、蒸発皿301が冷蔵庫100に取り付けられた場合、図5のドレン323から吐出される凝縮水が2本のリブ314の間に導かれるように、リブ314が配置されている。
これにより蒸発対象の凝縮水は、2本のリブ314と壁部313とにより囲まれた領域に貯留される。当該領域は、ファン324からの風を最も強く受ける領域であり、また加熱装置325が配置される領域である。したがって、当該領域に貯留される凝縮水は効率よく蒸発させることが可能となる。
また、凝縮水がことのほか多く万が一、凝縮水がリブ314を越えてあふれ出した場合でも、リブ314の外方に配置される壁部313はリブ314よりも背が高いため、あふれ出した凝縮水を壁部313が堰き止めることができる。このように、凝縮水が蒸発皿301から冷蔵庫100の外部にあふれ出すことを防止している。
また、蒸発皿301に取手311が設けられているが、蒸発皿301にはリブ314が設けられ、蒸発皿301の構造的強度の強化が図られているため、取手311を手がかりにして冷蔵庫100が持ち上げられた場合でも、冷蔵庫100の荷重に十分抗することが可能となる。
底板部315は、蒸発皿301の底部の一部を形成する板状の部分であり、凝縮水を所定の位置に導くために、その所定の位置が最も低い最低部316となるように水平面に対し傾いた状態に配置されている。本発明の実施の形態1の場合、最低部316は蒸発皿301の奥側であって加熱装置325が配置される位置に設定されている。
ファン324は、蒸発皿301に風を強制的に対流させ、蒸発皿301上の凝縮水の蒸発を促進させる機能を備える送風装置である。つまり、蒸発皿301から蒸発し、蒸発皿301の上方に滞留している水分により蒸発効率が阻害されるが、その水分をファン324により強制的に排除し、蒸発皿301上方の湿度が低下して蒸発を促進させることが可能となる。またファン324は、図3の圧縮機203を冷却する必要がなく、蒸発促進専用として取り付けられているため、十分に上記効果が発揮できる位置に取り付けられることが可能となる。
またファン324は、図5の断熱箱体101の後方から空気を吸い込み蒸発皿301を経て手前、及び側面へと吐出する風路構成をとっている。そのため、蒸発により湿った空気が背面に流れ出て、背面近傍の周囲の温度が低い環境条件であった場合でも、結露を発生させる恐れがない。そして蒸発により湿った空気は、開放空間である冷蔵庫100前面に拡散される。従来では、圧縮機203の放熱を兼ねた風路設計であったので、冷蔵庫100前面部への空気吐出をすると、生暖かい空気が使用者の足元にかかって不快となっていた。
また、加熱装置325は、蒸発皿301の最低部316に載置されるように配置される配管であり、圧縮機203から圧送される高温の冷媒が通過するようになっている。
また加熱装置325は、蒸発皿301から上方へ突出状に一体に設けられる挟持板326に挟まれた状態において最低部316に取り付けられている。そして加熱装置325は、蒸発皿301の一方から最低部316に進入し、U字形状を描いて配管されている。これにより挟持板326を通じ、底板部315が熱伝導によりさらに加温される。
また、加熱装置325は冷却サイクルの一部を構成しているが、蒸発皿301に貯留される凝縮水中に浸漬され凝縮水と接触するため、防錆処理を施すことが望ましい。また、冷却サイクルの他の構成部品と異なり、加熱装置325のみ耐水性の高い材質、例えばステンレスなどの材料を採用してもよい。
上記構成を備えた冷蔵庫100は、比較的温度の高い野菜室103を断熱箱体101の最下部にレイアウトすることにより底部302の断熱材厚みを比較的薄くすることができる。そのため、断熱箱体101の手前側の第一底部321をできる限り低くすることができるので、冷蔵庫100の高さ方向の開口部を最大限に利用でき、引き出し室の高さ寸法と収納容積とを大きく確保することができる。
また、野菜室103の第一の収納容器303が、第一底部321と第二底部322とに沿う形状であるので収納に無効な容積を発生させることがない。さらに、第一の収納容器303は引き出し式で図示しない多段式の延長レール構造により前後に摺動する。そして第一の収納容器303は、断熱箱体101の間口より前方まで容器全体が引き出されるので格段に取り出しやすくなり、容器の最奥部まで有効に利用できる。
ところで、第一の収納容器303の後方底部は、野菜室103の底面に沿って前後に移動することになる。第一の収納容器303のたわみ、レールやケースの取り付け精度、ウレタン発泡のデフォームなどにより、第一の収納容器303と野菜室103の底面とが接触しないように、所定のクリアランスが設けられており、その分だけ高さ方向に収納無効部が発生する。
しかしながら、野菜室103の底面が奥行き方向に階段状になっていて、第一の収納容器303もこれに沿った形状としている。そのため、第一の収納容器303の後部である第三の収納空間下部に当たる底面は、手前方向に引き出されると、第二底部322に沿って移動した後、引き出し途中で第一底部321に沿った移動となる。したがって、従来よりも短い奥行き方向の移動距離だけクリアランスを確保すればよいので、余分な無効容積を増加させることのない設計が可能である。
次に、断熱箱体101の庫内底面部が奥行き方向に階段状になっており、第一の収納容器303もこれに沿った形状とすることにより、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを小さくすることができることについて、以下に詳細に説明する。
本発明の実施の形態1の冷蔵庫100は、断熱箱体101の庫内底面部が奥行き方向に階段状になっており、第一の収納容器303もこれに沿った形状としている。
このように、底部302の奥行き方向の平面部が手前側の第一底部321と、奥側の第二底部322とに分割されている(すなわち、底部302が奥行き方向に二分割されている)。そのため、底部302の奥行き方向の平面部を分割しない(すなわち、底部302を奥行き方向に階段状にせず平坦な面とする)場合と比べて、第一の収納容器303の底面の変形量を小さくできる。具体的には、第一の収納容器303自身を成形するときに、第一の収納容器303の底面のたわみ変形量を小さくできる。また、最下段の仕切り板である底部302を成形するときに、ウレタン発泡のデフォームによる内箱の変形量を小さくできる。そのため、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを小さくすることができ、その分第一の収納容器303を大きくでき、収納容積をより広く確保することができる。
また、上述のクリアランスを小さくできることにより第一の収納容器303内に食品を入れるスペースの高さを変えずに、高さ方向の下方の無効容積を削減できる。そのため、引き出し室区画の高さを最小化でき、冷蔵室102の底面を低い位置にできるので、冷蔵室102への食品の出し入れがしやすく、また冷蔵室102の断熱扉107に設けられた扉棚も使いやすくなり、使用者の使い勝手が向上する。
ところで、冷蔵庫100には各貯蔵室を区切るための断熱性を有する仕切り板を各貯蔵室間に設けている。この複数の仕切り板のうち、最下段の仕切り板である底部302は、発泡断熱材により一体成形されている。一体成形する際、発泡押さえ冶具を用いているので、内箱に発泡押さえ冶具を抜く為の抜き勾配を設ける必要がある。この抜き勾配が大きくなると、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスは、この抜き勾配分(傾斜分)だけ大きくなるので、無効容積が増えてしまう。
しかしながら、本発明の実施の形態1のように、断熱箱体101の底部302が奥行き方向に階段状になっていて、第一の収納容器303もこれに沿った形状としていることにより、発泡押さえ冶具を抜く深さ(すなわち、奥行き方向の長さ)が見かけ上、小さくなるため発泡押さえ冶具と内箱との接触面積が減る。その結果、内箱に設ける抜き勾配を小さくしても、発泡押さえ冶具の抜き取りができ、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを小さくすることができ、その分第一の収納容器303を大きくでき、収納容積をより広く確保することができる。
次に、第一の収納容器303の寸法関係について、図12を用いて説明する。
図12は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の第一の収納容器の寸法関係を示す断面図である。第一の収納容器303の第一の収納空間305の底部の寸法(A1)は、第一の収納容器303の奥行き寸法を(L1)とした場合、上記したように第一の収納容器303の底面の変形量を小さくする観点から、A1=(1/2)×L1とする。これにより、手前側の第一底部321と奥側の第二底部322との変形量をほぼ同じにできるので、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを最小限にすることができ、その分第一の収納容器303を大きくでき、収納容積をより広く確保することができる。
しかしながら、第一の収納容器303の底面の変形量を小さくし、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを小さくするとともに、冷蔵庫100の使い勝手をも向上させる点について発明者らは詳細な検討を行い、以下の知見を得た。以下に詳細に説明する。
発明者らは、冷蔵庫100の使い勝手をも向上させる点について検討した結果、好ましいのは、(1/3)×L1<A1<(1/2)×L1の範囲である。
具体的には、A1>(1/2)×L1になると、第一の収納容器303の第三の収納空間307の底面のたわみ変形量や、奥側の第二底部322のウレタン発泡のデフォームによる内箱の変形量は小さくなる。しかし、第一の収納容器303の第一の収納空間305の底面のたわみ変形量や、手前側の第一底部321のウレタン発泡のデフォームによる内箱の変形量は大きくなる。よって、冷蔵庫100の奥行き方向に関してトータルで見ると、第一の収納容器303の底面の変形量は大きくなり、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスは大きくなり、その分無効容積が増えてしまう。さらには、1.5リットルから2リットルのペットボトルなど背の高い飲料品や米などの比較的重い収納物を、多数第一の収納空間305に置くので、第一の収納空間305に収納物を収納した時に、第一の収納容器303の第一の収納空間305の底面のたわみ変形量は、より大きくなる可能性がある。そこで、収納物を第一の収納空間305に収納した時のたわみ変形量を想定すると設計上、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスは、より大きくとる必要があるので、無効容積がより増えてしまう。また、第2の収納空間306や第3の収納空間307のスペースが十分確保できなくなり、根菜類や果実類などの収納量が減り、野菜室103の使い勝手が低下する。
一方、A1<(1/3)×L1になると、第一の収納容器303の第一の収納空間305の底面のたわみ変形量や、手前側の第一底部321のウレタン発泡のデフォームによる内箱の変形量は小さくなる。しかし、第一の収納容器303の第三の収納空間307の底面のたわみ変形量や、奥側の第二底部322のウレタン発泡のデフォームによる内箱の変形量は大きくなる。よって、冷蔵庫100の奥行き方向に関してトータルで見ると、第一の収納容器303の底面の変形量は大きくなり、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスは大きくなり、その分無効容積が増えてしまう。また、第一の収納空間305に収納する1.5リットルから2リットルのペットボトルなど背の高い飲料品や米などの収納量が少なくなり、冷蔵庫100の使い勝手が低下してしまう。
すなわち、本発明の実施の形態1の好ましい第一の収納空間305の底部の寸法(A1)とは、
(1/3)×L1<A1<(1/2)×L1
の範囲である。第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを小さくできるので、無効容積を減らす。さらに1.5リットルから2リットルのペットボトルなど背の高い飲料品や米などの収納量が少なくならず、かつ第二の収納空間306や第三の収納空間307のスペースを十分確保し、根菜類や果実類などの収納量を確保でき、冷蔵庫100の使い勝手を低下させることがない。
なお、第一の収納容器303の奥行き寸法(L)を約500ミリとした場合、好ましい第一の収納空間305の底部の寸法(A1)は、167ミリ<A1<250ミリとなる。
また発明者らは、上記した好ましい第一の収納空間305の底部の寸法(A1)の範囲、(1/3)×L1<A1<(1/2)×L1、をより詳細に分析した結果、以下の知見を得た。
具体的には、175ミリ>A1にすることにより、近年一般によく使われる2リットルのペットボトルの寸法は、約110ミリ(幅方向)×約90ミリ(奥行き方向)×約310ミリ(高さ方向)であり、第一の収納空間305内において、2リットルのペットボトルを冷蔵庫100の奥行き方向に一列にしか収納できない。また、2リットルのペットボトルを一列置いた時に、第一の収納空間305内の冷蔵庫100の奥行き方向に無駄なスペースが生じてしまう。
また、195ミリ<A1にすることで、約90ミリ(奥行き方向)の辺を冷蔵庫100の奥行き方向に置くことにより、2リットルのペットボトルを二列置ける。しかし、この場合でも第一の収納空間305内の冷蔵庫100の奥行き方向に無駄なスペースが多く生じてしまう。
また、一般的には、2リットルのペットボトルを三列置く(すなわち、2リットルのペットボトルを、幅方向に4本×奥行き方向に3本の合計12本収納する)までには至らないことが多く、効率的なスペース配置とはいえない。
これに対して、第一の収納空間305の底部の寸法(A1)は、175ミリ<A1<195ミリにすることは、以下の点からより好ましい。
第一の収納空間305内において、2リットルのペットボトルの約90ミリ(奥行き方向)の辺を冷蔵庫100の奥行き方向に置くことにより、奥行き方向に対して無駄の少ないスペースとなり、2リットルのペットボトルを奥行き方向に二列に収納可能となる。
従来は、2リットルのペットボトルが奥行き方向に一列しか置けないスペースであったため、例えば収納容器の幅方向の長さは約530ミリとした場合、2リットルのペットボトルは合計4本しか置けなかった。
これに対して、第一の収納容器303の幅方向の長さは約530ミリとした場合、第一の収納空間305内に約90ミリ(奥行き方向)の辺を奥行き方向に置くことにより、この2リットルのペットボトルを合計8本(幅方向に4本×奥行き方向に2本)収納でき、使用者の野菜室103の使い勝手を向上できる。
よって、より好ましい第一の収納空間305の底部の寸法(A1)とは、175ミリ<A1<195ミリであり、第一の収納容器303の底面と野菜室103の底面との間に必要なクリアランスを小さくできるので、無効容積を減らすことができる。そして第一の収納空間305内において、奥行き方向に対して無駄の少ないスペースとなり、2リットルのペットボトルを前後方向に二列に収納可能となって、使用者の野菜室103の使い勝手を向上できる。
さらに、手前に設けた1.5リットルから2リットルのペットボトルなど背の高い飲料品を収納する第一の収納空間305を避けて、比較的高さ方向に裕度がある奥部の第三の収納空間307の庫外下方部に蒸発皿301を配置することにより、無駄のない空間配分が可能となる。
また、蒸発皿301は蒸発水面の表面積を大きくとることができる薄いトレー状としてあるので、比較的蒸発能力が高く小型化の対応が可能である。
さらに、ファン324や加熱装置325による蒸発能力の向上により蒸発皿301の小型化でき、冷蔵庫100の収納容積を拡大することが可能となる。
また、野菜室103の後部に機械室201や蒸発器(図示しない)を配置せずに最奥部まで収納空間として利用することにより、手前部の第一の収納空間305の奥行きを拡大できる。そのため、例えばペットボトル類を二列に収納可能とすること、醤油などの調味料を追加して収納すること、米などを上部より中身だけ小口に取り出しやすく収納すること、白菜などの大物の野菜でも立てて収納することができる。その結果、これまで以上に使いやすさを向上させることができる上に、奥部の第二の収納空間306、及び第三の収納空間307を十分に確保でき、根菜類や果実類などの用途にあわせた収納空間をも十分に確保することができる。
この時、圧縮機203などの機器に阻害されずに、蒸発皿301を断熱箱体101の背面から配置できるので、蒸発皿301の水面表面積を拡大し蒸発能力を向上させることができる。
本発明の実施の形態1では、ファン324として軸流ファンを用いたが、クロスフローファンやシロッコファンなどを用いてもかまわない。
また、加熱装置325は単なる円筒状の管として説明したが、凝縮水との熱交換効率を高めるため、加熱装置325の表面に放熱面積を増加させるためのフィンを設けてもかまわない。
なお、加熱装置325は蒸発皿301の底部に貼り付けた面ヒータであれば、冷却サイクルの運転状況や周囲環境条件によらず、安定した加熱量を蒸発皿301に提供できる。さらに、独立した加熱量の制御ができるので、幾日も続く扉の閉め忘れなど極端な使用条件下における万一の凝縮水の増加などにも対応した設計が可能である。
なお、本発明の実施の形態1では、圧縮機203を引き出し室より上方に配置した冷蔵庫100において説明したが、下部に機械室201があり圧縮機203を配置したレイアウトにおいても有効に収納空間を確保できることに変わりはない。
なお、本発明の実施の形態1では蒸発皿301を薄型のトレー状としたが、省エネルギー、低コストの条件下において蒸発能力を最大にするためには、水の蒸発面積を拡大することが有効である。
なお本発明の実施の形態1では、段差スペース601に冷蔵庫100の庫外で用いられる機能部品として蒸発皿301を配置したが、蒸発皿301の代わりに制御基板を配置しても無駄の少ない空間配分が可能となる。この制御基板は凝縮器、圧縮機、送風機、各種ヒーターなどの通電制御を行い通常、冷蔵庫100の庫外で用いられる機能部品である。その他、機能部品としては圧縮機、凝縮器、ドライヤ、キャピラリー、蒸発器等の冷却サイクルを構成する部品があげられる。
これら冷蔵庫100の庫外で用いられる機能部品は、通常は冷蔵庫100本体の外郭の一部に別途機械室や基板収納部などのスペースを設け、その分庫内側への容積圧迫要因となっていた。しかし、段差スペース601を効果的に活用することによって庫内の容積効率を高めることができる。
なお、段差スペース601に凝縮器を配置した場合には、底部302周辺の湿り空気滞留による結露防止にも一定の効果が見込め好都合である。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における冷蔵庫を、実施の形態1と異なる点を中心に図面に基づいて説明する。
図13は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の野菜室正面断面図である。図13に示すように本発明の実施の形態2の冷蔵庫は、野菜室503庫内に第二の収納容器504を左右段違いの深浅形状としてあり、第一の収納容器513の側面フランジ部上に前後方向にスライド可能に設けてある。
これにより、第二底部522の高さを更に上げても、野菜室503の奥部の高さに対して多様な高さの野菜や果実を収納することが可能となる。
また、第一底部521と第二底部522の奥行き比率を変え、第二底部522の奥行きを小さくして蒸発皿501の設置スペースをさらに小さくしても、蒸発皿501を深くして十分な蒸発皿保水量を確保できる。
これにより、第一の収納空間505をより大きくして、例えばペットボトル類を二列に収納可能、醤油などの調味料を追加して収納、米などを上部より中身だけ小口に取り出しやすく収納、白菜などの大物の野菜でも立てて収納することができる。そのため縦収納量の多い使用者に対しても、満足できる容量配分が可能となり、これまで以上に使用者の使いやすさを向上させることができる。すなわち、野菜室503の中の空間配分の設計自由度が高い構成をとることができる。
また、蒸発皿501の上下空間に凝縮器を配置して加熱装置として蒸発能力を増加させることも可能である。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における冷蔵庫を、実施の形態1と異なる点を中心に図面に基づいて説明する。
図14は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の野菜室側面断面図である。図14に示すように本発明の実施の形態3における冷蔵庫は、野菜室603の第二の収納容器604を奥部が深い前後段違いの深浅形状としてある。
これにより、第二の収納容器604を後方にスライドさせても下部の第一の収納容器603内の食品に引っかかることがない。
さらに、従来の一般的な外形寸法の奥行きが約700ミリの冷蔵庫は、機械室が下部後方にあり、機械室や冷却室などが背面に設けられている。そのため一つの収納空間当りの奥行きが短くなり、実用的な空間を確保することが困難であり、引き出し室を奥行き方向に3段階に収納空間を変化させることはできない。
しかし圧縮機等が配置される機械室を冷蔵庫の上部後方に配置した場合は、野菜室603の背面に機械室を設けることがないので、奥行き方向に対して収納空間を最大限利用でき、引き出し室を奥行き方向に3段階の実用的な収納空間に変化させることができる。
また、第二底部622の高さを更に上げて、多様な高さの野菜や果実を収納することも可能である。
また、第一底部621と第二底部622の奥行き比率を変え第二底部622の奥行きを小さくして蒸発皿601の設置スペースが小さくなっても、蒸発皿601を深くして、十分な蒸発皿保水量を確保することができる。
これにより、第一の収納空間605をより大きくして、例えばペットボトル類を二列に収納可能とする、醤油などの調味料を追加して収納する、米などを上部より中身だけ小口に取り出しやすく収納する、白菜などの大物の野菜でも立てて収納することができる。その結果、縦収納量の多い使用者に対しても満足できる容量配分が可能となり、これまで以上に使用者の使いやすさを向上させることができる。すなわち、野菜室603の中の空間配分の設計自由度が高い構成をとることができる。
また、蒸発皿601の上下空間に凝縮器を配置して加熱装置として蒸発能力を増加させることも可能である。
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4における冷蔵庫を、実施の形態1と異なる点を中心に図面に基づいて説明する。以下、野菜室のレール部材を用いた引き出し構造について説明する。
図15は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫の野菜室の収納容器を引き出した状態の斜視図である。図15に示すように、野菜室701の引出し扉702と冷蔵庫本体との間は、例えばフレーム等の支持部材を介してレール部材703により連結され、レール部材703上に載置される収納容器704が引き出される構造となっている。
収納容器704は、前方の第1の収納部705と、その後方の第2の収納部706とに、例えば仕切板707等を用いて区画されている。第1の収納部705の深さは、第2の収納部706の深さよりも深くなるよう第1の収納部705と第2の収納部706との間に段差部708が形成されている。
なお、第1の収納部705と第2の収納部706との区画は、特別な別部品の仕切板707を用いず、収納容器704と一体に仕切堰などを形成してもよい。また第1の収納部705が必要な深さを確保できるのであれば、段差部708を敢えて設けなくても構わない。
そして、第1の収納部705の奥行き方向の寸法は、従来の野菜室収納容器の奥行き方向の寸法よりも意図的に大きく形成されている。すなわち、第1の収納部705の奥行き方向の寸法は例えば2リットルのペットボトルを奥行き方向に2列並べられる寸法としている。また、ペットボトル以外にも醤油などの大容量の調味料の収納、白菜などの大物で重量の重い野菜を立てての収納を意図している。さらには近年、保存環境の温度上昇により酸化促進などの品質低下を避けて美味しい状態により食することが広がりつつある米などの食材を、適度な冷却環境に置きながら蓋付きの上部より中身だけ小口に取り出し、品質を保ちながら台所において日常的に使いやすく収納保存することなどを意図している。
次に、レール部材703の構成について説明する。
図16は本発明の実施の形態4における冷蔵庫のレール部材の斜視図、図17は同冷蔵庫のレール部材の分解図である。レール部材703は、固定レール709と、移動レール710と、固定レール709および移動レール710の間に備えられた中間レール711と、中間レール711と固定レール709および移動レール710との係合を支持する複数のベアリング712とから構成されている。
複数のベアリング712は、本発明の実施の形態4における冷蔵庫のレール部材の装着状態を示す図である図18に示すように、ボールゲージ713により回転可能に保持されている。
このような各構成部が組み合わされた状態のレール部材703は、予め固定レール709と移動レール710と中間レール711とが一体に組み合わされた状態において、固定レール709が冷蔵庫本体の内箱714の内側面に固定されることにより本体側に取り付けられる。
具体的には、レール部材703は内箱714の内側面の野菜室701の左右にあたる位置にそれぞれ1つずつ、左右を1組として取り付けられる。
なお、各固定レール709は図18に示すように、内箱714を挟んで固定部材715とビス716等により締結され、内箱714の内側面に取り付けられる。
そして、移動レール710が収納容器704の支持用のフレームなどを介して引出し扉702に連結されることにより、収納容器704は2つの移動レール710に左右を支持され、引出し扉702の奥行き方向の移動に同期して、移動レール710と共に奥行き方向に移動する。
さらに、少なくとも引出し扉702を全開にした時、つまり引出し扉702を最大引出し位置まで引き出した時には、収納容器704の上方開口面がほぼ全開に近い形に開放され、かつ収納容器704は上方向に容易に着脱できるようになっている。
以上のような構成により、レール部材703は、予め固定レール709と移動レール710と中間レール711とが一体に組み合わされた状態において、ベアリング712を介して各レールがガタツキのない状態でほとんど隙間なく、かつ滑らかに摺動する。そのため、従来のように組み立て構成上、レール内において上下左右にあそびを持たせる必要のあるローラー滑車を用いた一般的なレール機構を採用するものに比べ極めて高強度、高耐荷重型のレール部材となる。
このため、従来よりも引き出ししろを十分に大きくとって収納容器704内に収納した収納物の荷重が大きくレール部材703に加わっても、これに十分耐えて開口度の高いいわゆるフルオープン型の引き出し野菜室701が実現できる。
このことは、本発明の実施の形態4のように固定レール709と、移動レール710との間に中間レール711を設けて摺動距離をさらに長く、引き出ししろを大きくとるようにした場合は、一層効果的に作用する。
収納容器704は第1の収納部705の奥行きスペースが拡大され、例えば2リットルのペットボトルを奥行き方向に2列並べたり、醤油などの大容量の調味料や白菜などの大物野菜を収納したり、さらには近年食味上、温度管理が望まれる米などの食材の重量物を収納可能としている。そのため、収納容器704前方の第1の収納部705に掛かる荷重は大きくなっている。このような収納容器704の前方に深い第1の収納部705、その後方に第2の収納部706を有する構成には、本発明の実施の形態4の高強度かつ高耐荷重型のレール部材703が極めて有効に作用する。
すなわち、引き出ししろを極めて大きくして収納容器704の開口を全開に近い形として収納物の出し入れの使い勝手を良くし、かつ収納容器704を上方に容易に着脱可能とする。そのため収納容器704を容易に取り外して洗浄し、衛生的に保ちたいニーズに応えることができる。さらに、高強度かつ高耐荷重型のレール部材703を用いることにより、収納容器704の前方領域に高荷重となる重量の大きい収納物を収納できる。その結果、使い勝手や利便性を従来に比べて飛躍的に高めた引き出し式の野菜室701を実現できる。
(実施の形態5)
上記したように、本発明の実施の形態1から実施の形態4については、庫外の機能部品の配置と庫内側の収納容器との関係から、使い勝手を維持しながら野菜室を有効利用できることについて説明してきた。
しかしながら詳細に検討すると、庫内側の収納容器と庫外の機能部品の配置との関連性は必ずしも必要でなく、庫内側の収納容器だけに着目し使い勝手を維持しながら野菜室を有効利用できる方法について、以下説明する。
従来より2リットルのペットボトルや、調味料や米などを、より多く冷蔵庫に保管したいという要望が多い。そこで、従来の冷蔵庫は、冷蔵庫の本体上方に位置する冷蔵室のドアポケットに、2リットルのペットボトルなどを、収納していることが多い。
しかしながら従来の冷蔵庫では、冷蔵室は冷蔵庫の本体上方に位置し、比較的重量が大きい2リットルのペットボトルなどを冷蔵室に入れるときや、冷蔵室から取り出すときにおいて、高い位置での出し入れになるため腕にかかる負担など、使用者の負担が大きく必ずしも使い勝手がよいとはいえない。
また、冷蔵室のドアポケットに大型のペットボトルを多量に収納するスペースを設けると、庫内側の収納容積が阻害されドア荷重が大きくなってドアの傾きやドア開放時の本体の安定性を欠くなどの外観上、安定上の問題も生じる。
以下、本発明の実施の形態5における冷蔵庫を、実施の形態1と異なる点を中心に図面に基づいて説明する。図19は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の断面図である。図19に示すように、冷蔵庫800は上から順に冷蔵室801、野菜室811、冷凍室802により構成されている。庫内を冷却する冷却サイクルは、冷蔵庫800の背面底部に配置された機械室803内に設けられた圧縮機804と、凝縮器(図示しない)と、減圧器(図示しない)と、庫内背面に設けられた蒸発器(図示しない)とが環状に配管接続され、配管内部に冷媒や冷凍機油を封入してある。
本発明の実施の形態5が実施の形態4と異なる点は、第一の収納容器910が第一の収納空間901と第三の収納空間903との間に段差部が形成されておらず第一の収納容器910の底面は平らな形状(フラット)である点と、野菜室811が最下段に配置されているのではなく、最下段から二番目に配置されている点である。
そして、野菜室811のレール部材703にも本発明の実施の形態4において説明したレール部材を用いる。
図20は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の野菜室の第一の収納容器を引き出した状態の斜視図である。野菜室811の引出し扉702と冷蔵庫本体との間は、例えばフレーム等の支持部材を介してレール部材703により連結され、レール部材703上に載置される第一の収納容器910が引き出される構造となっている。
第一の収納容器910は、手前の第一の収納空間901と、その奥側の第三の収納空間903に、例えば仕切板707等を用いて区画されている。第一の収納空間901の深さと、第三の収納空間903の深さとは同一であって、第一の収納空間901と第三の収納空間903との間に段差部が形成されていない。第一の収納容器910の底面は、平らな形状としている。これにより第一の収納容器910は、より容易に成形できる。
なお、第一の収納空間901と第三の収納空間903との区画は特別な別部品の仕切板707を用いず、第一の収納容器910と一体に仕切堰などを形成してもよい。
そして、第一の収納空間901の奥行き方向の寸法は、意図的に大きく形成されている。すなわち、例えば2リットルのペットボトルを奥行き方向に2列並べられる寸法としている。また、ペットボトル以外にも醤油などの大容量の調味料の収納、白菜などの大物で重量の重い野菜を立てての収納を意図している。さらには近年、保存環境の温度上昇により酸化促進などの品質低下を避けて美味しい状態により食することが広がりつつある米などの食材を、適度な冷却環境に置きながら蓋付きの上部より中身だけ小口に取り出し、品質を保ちながら台所で日常的に使いやすく収納保存することなどを意図している。
従来よりも引き出ししろを十分に大きくとり、第一の収納容器910内に収納した収納物の荷重が大きく、その荷重がレール部材703に加わっても、これに十分耐えて開口度の高いいわゆるフルオープン型の引き出し野菜室811が実現できる。
ここで第一の収納容器910は、第一の収納空間901の奥行きスペースを拡大して例えば2リットルのペットボトルを奥行き方向に2列並べる、醤油などの大容量の調味料や白菜などの大物野菜を収納する、さらには近年食味上、温度管理が望まれる米などの食材の重量物を収納可能としている。そのため、第一の収納容器910前方の第一の収納空間901に掛かる荷重は大きくなっている。このような第一の収納容器910の手前側に深い第一の収納空間901、その奥側に第三の収納空間903を有する構成には、高強度かつ高耐荷重型のレール部材703が極めて有効に作用する。
すなわち、引き出ししろを極めて大きくして第一の収納容器910の開口を全開に近い形で収納物の出し入れの使い勝手を良くし、かつ、第一の収納容器910を上方に容易に着脱可能とする。そのため第一の収納容器910を容易に取り外して洗浄し、衛生的に保ちたいニーズに応えることができる。さらに、高強度かつ高耐荷重型のレール部材703を用いることにより、第一の収納容器910の手前側に高荷重となる重量の大きい収納物を収納できる。その結果、使い勝手や利便性を従来に比べて飛躍的に高めた引き出し式の野菜室811を実現できる。
また、本発明の実施の形態5では、圧縮機804が冷凍室802の背面(すなわち、冷蔵庫の最下部)に配置され、野菜室811の背面側には圧縮機804が配置されていない。そのため、野菜室811のスペースを充分とれることとなり、第一の収納容器910の前方の第一の収納空間901と、その後方の第三の収納空間903とはスペースを充分確保できる。
次に、野菜室811内の収納容器について説明する。
図19、20に示すように第一の収納容器910は、引出し扉702に追随して引き出され、手前内方に大型のペットボトルなどの収容対象物が収容される上下方向に長い第一の収納空間901を設け、第一の収納空間901の後方で第一の収納容器910上部に第二の収納容器911を後方にスライド可能に設けてある。そして第二の収納容器911の内方を第二の収納空間902とし、第二の収納容器911の下方の第一の収納容器910の内方を第三の収納空間903としている。
これにより、野菜室811を三つのスペースに区分している。具体的には、第一の収納空間901は主に1.5リットルから2リットルの大型ペットボトルや1リットル紙パックなどの飲料品が収納可能であり、縦置きに保存したい野菜を収納することも可能である。また第二の収納空間902は、主に果実類や小物野菜類を収納することが可能である。また第三の収納空間903には、白菜やキャベツなどの大物野菜類を収納することが可能である。すなわち、背の高い飲料品などと、果実類や小物野菜類と、大物野菜類とを効率よく収納することができる。
次に、第一の収納容器910の寸法関係について、図21を用いて説明する。
図21は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の第一の収納容器の寸法関係を示す断面図である。ここで、第一の収納空間901の底部の寸法をA2、第一の収納容器910の奥行き寸法をL2とする。近年一般によく使われる2リットルのペットボトルの寸法は、約110ミリ(幅方向)×約90ミリ(奥行き方向)×約310ミリ(高さ方向)であり、175ミリ>A2にすると、第一の収納空間901内において、2リットルのペットボトルを奥行き方向に一列にしか収納できない。また、2リットルのペットボトルを一列置いた時に、第一の収納空間901内の奥行き方向に無駄なスペースが生じてしまう。
また、195ミリ<A2にし、約90ミリ(奥行き方向)の辺を奥行き方向に置くことにより、2リットルのペットボトルを二列置けるが、この場合でも第一の収納空間901内の奥行き方向に無駄なスペースが多く生じてしまう。
また、一般的には2リットルのペットボトルを三列置く(すなわち、2リットルのペットボトルを、幅方向に4本×奥行き方向に3本の合計12本収納する)までには至らないことが多く、効率的なスペース配置とはいえない。
これに対して、第一の収納容器910の第一の収納空間901の底部の寸法(A2)は、175ミリ<A2<195ミリにすることにより、以下の点において、より好ましい。
第一の収納空間901内において、2リットルのペットボトルの約90ミリ(奥行き方向)の辺を奥行き方向に置くことにより、奥行き方向に対して無駄の少ないスペースとなり、2リットルのペットボトルを奥行き方向に二列に収納可能となる。
つまり、第一の収納容器910の幅方向の長さを約530ミリとした場合、第一の収納空間901内に約90ミリ(奥行き方向)の辺を奥行き方向に置くことにより、この2リットルのペットボトルを合計8本(幅方向に4本×奥行き方向に2本)収納できる。
図22は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の第一の収納容器内の収納物の収納状態を示す上方から見た説明図である。図22に示すように、仕切板707は第一の収納容器910の左側から右側まで直線状であって、この場合2リットルのペットボトル501を合計8本収納できる。
すなわち、本発明の実施の形態5の冷蔵庫800は、外箱と、内箱と、外箱と内箱との間に設けた断熱材からなる断熱箱体と、断熱箱体の最下部に配置された圧縮機804と、断熱箱体の庫内の最上部に配置された冷蔵室の直下方に配置された野菜室811とを備えている。そして野菜室811内に第一の収納容器910を備え、第一の収納容器910の手前側に形成された上下方向に長い第一の収納空間901と、第一の収納容器910により区画され第一の収納空間901の後方に第三の収納空間903とを備えている。さらに第一の収納容器910の第一の収納空間901の底部の寸法(A2)は、175ミリ<A2<195ミリとする。
これにより、野菜室811内において、奥行き方向に対して無駄の少ないスペースとなり、2リットルのペットボトル501を奥行き方向に二列に収納可能となり、使用者の野菜室811の使い勝手を向上できる。
また、冷蔵室801の庫内側の収納容積が阻害されることがなく、さらには冷蔵室801のドア荷重が大きくなってドアの傾きやドアの開放時の本体の安定性を欠くなどの外観上、安定上の問題も生じることはない。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6における冷蔵庫を、実施の形態1と異なる点を中心に図面に基づいて説明する。図23は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫の断面図である。図23に示すように冷蔵庫850は、上から順に冷蔵室801、切換室810、切換室810と並列に配置された製氷室(図示せず)、冷凍室802、野菜室701により構成されている。すなわち、野菜室701は、貯蔵室の最下部に配置されている。
庫内を冷却する冷却サイクルは冷蔵庫850の背面底部に配置された機械室803内に設けられた圧縮機804と、凝縮器(図示しない)と、減圧器(図示しない)と、庫内背面(冷凍室802の背面)に設けられた蒸発器820とが環状に配管接続され、配管内部に冷媒や冷凍機油を封入してある。
すなわち、野菜室701は蒸発器820の下方に配置されている。本発明の実施の形態6が、実施の形態5と異なるのは、野菜室701が最下段に配置されている点である。よって、この異なる点を中心に説明する。
図24A、図24Bは、本発明の実施の形態6における冷蔵庫の第一の収納容器内の収納物の収納状態を示す上方から見た説明図である。図24Aに示すように、左側半分は2リットルのペットボトル501が奥行き方向に二本収納でき、右側半分は2リットルのペットボトル501が奥行き方向に一本収納できるように、右側は左側と比較して前方に配置されるような仕切板717でもよい。この場合、図22に示す第一の収納容器910と比較して、2リットルのペットボトル501の収納本数は減るが、大物野菜などを右側スペースに収納することができる。
また図24Bに示すように、左側半分は2リットルのペットボトル501が前後方向に二本収納できるように、左側のみに仕切板727を設けてもよい。この場合、図22に示す第一の収納容器910と比較して、2リットルのペットボトル501の収納本数は減るが、より大きい大物野菜などを右側スペースに収納することができる。
すなわち、仕切板は必ずしも第一の収納容器910の左側から右側まで直線状でなくてもよく、少なくとも一部の領域において、2リットルのペットボトル501が奥行き方向に二本収納できるように区画するものであればよい。
本発明の実施の形態6では図24A、図24Bに示すように、圧縮機804が冷蔵庫850の背面底部の右側に配置されていることから、第一の収納容器910の右側後方のスペースが小さくなる。そのため図24A、図24Bにそれぞれ示す仕切板717、仕切板727の形態は、2リットルのペットボトル501と大物野菜などとの収納の両立が図れ、有効である。
なお、図22に示す仕切板707は、第一の収納容器910の左側から右側まで直線状であって、この場合2リットルのペットボトル501を合計8本収納できるものであってもよいことはいうまでもない。
なお、本発明の実施の形態6では図24A、図24Bに示すように、圧縮機804が冷蔵庫850の背面底部の右側に配置されているものを示した。しかし、圧縮機804が冷蔵庫の背面底部の中央や左側に配置された場合でも、圧縮機804の配置されているエリアの仕切板を手前によせ、2リットルのペットボトル501と大物野菜などとの収納の両立が図れ、有効である。
なお第一の収納空間901の奥行き方向の寸法は、意図的に大きく形成されていることから、第三の収納空間903の奥行き方向の寸法が所定の寸法より小さくなった場合、冷蔵庫850の奥行き寸法を大きくする。あるいは本発明の実施の形態5において示したように、野菜室811を最下部より二番目にし、圧縮機804が配置される高さと野菜室811の領域とを異ならせることにより、第三の収納空間903の奥行き方向の寸法は所定の寸法を得ることができる。
すなわち、本発明の実施の形態6の冷蔵庫850は、外箱と、内箱と、外箱と内箱との間に設けた断熱材からなる断熱箱体と、断熱箱体の最下部に配置された圧縮機804と、断熱箱体の庫内の最下部に配置された野菜室701とを備えている。そして野菜室701内に第一の収納容器910を備え、第一の収納容器910の手前側に形成された上下方向に長い第一の収納空間と、第一の収納容器910において区画され第一の収納空間の後方の第三の収納空間とを備えている。さらに第一の収納容器910の第一の収納空間の底部の寸法(A3)は、175ミリ<A3<195ミリとした冷蔵庫である。
これにより、野菜室701内において、奥行き方向に対して無駄の少ないスペースとなり、2リットルのペットボトル501を奥行き方向に二列に収納可能となり、使用者の野菜室701の使い勝手を向上できる。
また、冷蔵室801の庫内側の収納容積が阻害されることがなく、さらには冷蔵室801のドア荷重が大きくなってドアの傾きやドアの開放時の本体の安定性を欠くなどの外観上、安定上の問題も生じることはない。
なお、本発明の実施の形態6の冷蔵庫850では、上から順に冷蔵室801、切換室810、切換室810と並列に配置された製氷室(図示せず)、冷凍室802、野菜室701により構成されているものとした。しかし切換室810や、並列に配置された製氷室が設けられておらず、上から順に冷蔵室801、冷凍室802、野菜室701により構成された冷蔵庫850でもよい。
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7の冷蔵庫は、本発明の実施の形態1の冷蔵庫と野菜室の構成のみが異なるため、本発明の実施の形態7では野菜室の構成を中心に説明する。図25は本発明の実施の形態7における冷蔵庫の正面図、図26は図25におけるA−A線において切断した縦断面図である。
冷蔵庫950の野菜室953は、冷却サイクルの蒸発室200の下方に配置される下部貯蔵室の一つである。
また、冷蔵庫950は、送風機100aによる強制対流方式を利用して冷却する間冷式である。
図26に示すように、蒸発器200は断熱箱体101内方の後部、かつ野菜室953の上方に配置されている。この蒸発器200は、断熱箱体101内方の空気を冷却し、各貯蔵室を冷却するための冷気を生成する。具体的には、蒸発器200は冷凍室104の後方の領域に配置されている。
次に、野菜室953の内部を詳細に説明する。
図27は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の野菜室の内部を示す断面図である。図27に示すように、野菜室953内方には、断熱箱体101の手前側に配置される収容空間である第一の収納空間103aと、断熱箱体101の後部に配置される収容空間である第二の収納空間103bとが区画されて設けられている。そして、野菜室953の内方には容器410およびフルーツ・小物容器420が備えられている。
また、野菜室953は、上部に風路形成体450を備えている。
なお、野菜室953と冷凍室104とは、断熱性を有する仕切り板460により区画されている。
なお、第一の収納空間103aの上方には、開口面410bを有している。
第一の収納空間103aは、第二の収納空間103bよりも一段下がった状態において配置されている。つまり、第一の収納空間103aと第二の収納空間103bとにより構成される収容空間を備える野菜室953の底部は、奥側に向かって上昇する階段状に形成されている。
容器410は、引出の前板である断熱扉108に追随して引き出される箱体であり、内方に野菜やペットボトルなどが収容される。容器410の底部は、容器410を野菜室953内に配置した際、野菜室953底部の内方に沿うように、奥側に向かって上昇する階段状に形成されている。
つまり、第一の収納空間103aは容器410内方の前部に配置され、第二の収納空間103bは容器410内方の後部に配置される。そして、容器410の第一の収納空間103aに対応する部分には、大型のペットボトル(例えば、2リットルのペットボトル)などの高さが高い対象物が収容される。また、容器410の第二の収納空間103bには、野菜が収容される。
フルーツ・小物容器420は、フルーツ・小物野菜を収容するための容器であり、野菜室953の上部に配置されている。具体的には、フルーツ・小物容器420は、第二の収納空間103bの上部に配置されている。さらに具体的には、フルーツ・小物容器420は、容器410の上部後方に載置され、配置されている。
風路形成体450は、野菜室953内を冷却した冷気が蒸発器200に戻るための風路である。風路形成体450には、開口部450aおよび予備開口部450bが設けられている。つまり、風路形成体450は、開口部450aおよび予備開口部450bと、蒸発器200とを結ぶ風路を形成している。
ここで、この風路形成体450は熱伝導性を有する材料により形成され、例えば樹脂であるポリプロピレン(PP)により成型されている。なお、本発明の実施の形態7では、風路形成体450は樹脂であるポリプロピレン(PP)としたが、熱伝導性を有するものであればよく、例えば鉄などの金属としてもよい。
また、風路形成体450は、仕切り板460の下面に接するように配置され、仕切り板460の下面と風路形成体450とにより囲まれる空間によって風路が形成される。これにより、仕切り板460の下面を風路の一部として利用するので、風路形成体450は簡易な構成とすることができる。さらに、逆流してくる冷気(詳細は後述する)は、冷凍室104の影響を受けて低温に維持されることとなり、容器410の第一の収納空間103aに収容されるペットボトルを冷却する能力を確保できる。
図28は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の野菜室の内部を示す正面図である。なお、説明の便宜のため図28では、フルーツ・小物容器420を省略して図示している。
図28に示すように、風路形成体450の前面部451には、開口部450aが設けられている。この開口部450aは、野菜室953内を冷却した冷気が蒸発器200に戻るために通過する風路形成体450の入口となる開口である。なお、この開口部450aの横幅は、子供の指が入らない程度の大きさが望ましく、具体的には5mmである。
開口部450aは縦長の楕円形状の開口であり、風路形成体450の前面部451に、横方向に複数個設けられている。なお、開口部450aは、冷気が通過する開口であればどのような形状でもよく、また何個備えられていても構わない。
ここで、冷蔵室102、野菜室953への冷気の流れを説明する。
冷蔵室102へは蒸発器200により生成された冷気を、冷蔵室冷却用送風ダクト(図示せず)を介して、送風機により送風し、室内を所定の温度に冷却している。また、野菜室953へは冷蔵室102から野菜室953へ冷気を送る連通ダクト(図示せず)を介して、送風機により送風し、室内を所定の温度に冷却している。
この連通ダクトは、冷蔵室102の背部の下方部に設けた開口部(図示せず)と野菜室953の背部の上方部に設けた開口部とを上下に繋ぐ風路である。そして、野菜室953へは野菜室953の背部の下方部に設けた開口部470から冷気が流れでる。
なお、野菜室953の背部の上方部に設けた開口部と野菜室953の背部の下方部に設けた開口部470とは、野菜室吐出ダクト480により、上下に繋ぐ風路が形成されている。
なお、野菜室吐出ダクト480は図28に示すように、冷蔵庫の中心より右側に配置され、かつ野菜室953の背部の下方部に設けた開口部470も、冷蔵庫の中心より右側に配置されている。
また、図28に示すように風路形成体450は、冷蔵庫の左右方向の左側に配置されている。そして風路形成体450の幅方向(図28の左右方向)の寸法は、野菜室953の左右方向の略1/2となるように設定されている。
また、開口部450aは風路形成体450の幅方向のほぼ全域にわたって形成されている。これにより、図28に示す野菜室953の背部の下方部の右側に設けた開口部470と、野菜室953の前部の上方部の左側に設けた開口部450aとは、野菜室953内において対角線上の位置に配置されることとなる。そのため野菜室953の左右方向に、ほぼ均一に冷気がいきわたり、野菜室953の冷却能力を確保できる。
なお本発明の実施の形態7では、野菜室953へは冷蔵室102を通った冷気が送風されるので、蒸発器200から直接送風される冷気と比較した場合、より高い温度の冷気が送風される。しかし野菜室953の冷却は、容器410を冷気が接触して冷却する。そのため、開口部470と、開口部450aとは、野菜室内において対角線上の位置に配置されることにより、開口部470から送風される冷気が、容器410に接触する面積が大きくなり、野菜室953の冷却能力を確保できる。具体的には、冷気は図28の白抜き点線の矢印に示すように、開口部470から容器410の底面に吹き出し、容器410に接触するように流れ、野菜室953を冷却する。
また、図27に示すように開口部450aは、第一の収納空間103aの上方であり、かつフルーツ・小物容器420の前端面よりも前方に配置されている。
また、図27に示すように風路形成体450の側面部452には、予備開口部450bが設けられている。予備開口部450bは、開口部450aが閉塞された場合の予備の開口である。
また、図28に示すように予備開口部450bは、野菜室953の内方の容器410の側面よりも外方に配置されている。具体的には、予備開口部450bは、冷蔵庫を正面から見て風路形成体450の左側の側面部に形成されている。また予備開口部450bは横長の長方形状の開口であり、風路形成体450の側面部452に奥行き方向に複数個設けられている。
なお、予備開口部450bは、冷気が通過する開口であればどのような形状でもよく、また何個備えられていても構わない。
また、図28に示すように容器410は前面部451に備えられる前壁に、冷気を挿通しうる挿通孔である挿通孔部410aを備えている。挿通孔部410aは、冷気を挿通させ容器410の前部に配置されるペットボトルなどを冷却するための孔である。
具体的には、挿通孔部410aは縦長の楕円形状の孔であり、容器410の前壁に横方向に複数個備えられている。
なお、挿通孔部410aは冷気が挿通するものであればどのような形状でもよく、また何個備えられていても構わない。
次に、風路形成体450について詳細に説明する。
図29は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の風路形成体の斜視図である。図29に示すように風路形成体450は、前面部451と、平面部453と、側面部452と、後面部454とからなる。
なお、前面部451は前方に向かって傾斜している。これにより、リンゴなどの比較的固い収納品が、フルーツ・小物容器420から高さ方向に多少飛び出した状態(すなわち、フルーツ・小物容器420の高さより、高さが高い収納品を入れた状態)において、フルーツ・小物容器420が野菜室953の奥側に向かって移動した場合でも、前面部451が傾斜していない場合と比べて、よりスムーズにフルーツ・小物容器420を奥側に移動できる。そのため、リンゴなどの比較的固い収納品の損傷などを低減できる。
また図29に示すように風路形成体450は、平面部453の幅方向の中央部近傍に、平面部453に一体に成型された一本のリブ450cを設けている。具体的にはリブ450cは、冷気が蒸発器200に戻る流れ方向と平行に、すなわち冷蔵庫の奥行き方向に対して平行に設けられている。これにより、冷気の流れを大幅に阻害することなく、フルーツ・小物容器420の収納品であるリンゴなどの比較的固い収納品が、フルーツ・小物容器420から高さ方向に多少飛び出した状態において、フルーツ・小物容器420が野菜室953の奥側に向かって移動し、リンゴなどの比較的固い収納品が風路形成体450に接触した場合でも、風路形成体450の形状を変形させにくくなる。そして確実に冷気の流れる風路を確保できるので、冷気の循環が阻害されることはない。すなわち、リブ450cは風路形成体450の強度を向上できる。
このように本発明の実施の形態7では、風路形成体450は野菜室953の天井面(すなわち、仕切り板460の下面)に設けている。使用者は、風路形成体450が野菜室953の天井面から下方へ突出した状態に設けられていることが認識しにくいので、フルーツ・小物容器420の収納高さより高い収納品を入れてしまうことが多い。よって、風路形成体450は、前面部451が前方に向かって傾斜していること、平面部453にリブ450cを設けていることは、風路形成体450を野菜室953の天井面に設けている本発明の実施の形態7においては、非常に有用である。
なお、本発明の実施の形態7では、風路形成体453に設けたリブ450cは、平面部453に一体に成型されたものとしたが、平面部453と別体にしてもよい。
また、本発明の実施の形態7では、風路形成体453に設けたリブ450cは一本としたが、二本あるいは三本以上としてもよい。
図30は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の野菜室を冷却する冷気の流れを説明する図である。図30に示すように、蒸発器200により生成された冷気は、まず野菜室吐出ダクト480内を通り、開口部470から流れでて、野菜室953内方の容器410の奥側の風路491を通って、容器410の下方に流れる。そして冷気は、野菜室953内方の容器410の下方の奥側から手前側に流れる。さらに冷気は、野菜室953内方の容器410の手前側の下方から上方に流れる。このように冷気が流れることにより、容器410に収容されている野菜やペットボトルが冷却される。
そして、この容器410の前方の上方に流れてきた冷気は、風路491のように容器410前壁の挿通孔部410aを通って、第一の収納空間103aに流入する。これにより、流入した冷気が容器410の前部の第一の収納空間103aに収容されるペットボトル511を、さらに冷却する。
そしてこの冷気は、風路492のように第一の収納空間103aの上方に配置される風路形成体450の開口部450aに向かって流れる。このため、容器410の奥側の第二の収納空間103bに収容されている野菜へは、この冷気が流れにくい。つまり、収容されている野菜が冷却されすぎることがない。
そして冷気は、風路492のように開口部450aを通過し、風路形成体450を通って蒸発器200に戻る。
ここで、冷蔵庫950では野菜室953内の温度調節のために、冷気の流れを一時的に停止させることがある。つまり、野菜室953内が冷却されすぎている場合は、冷気の流れを一時的に停止させることにより、温度が低下しすぎるのを抑制する。そして、冷気の流れが一時的に停止された際に、冷気が風路493のように風路形成体450を通って逆流してくることがある。
このように、冷気が風路形成体450を通って逆流してきた場合、風路493のように第一の収納空間103aの上方の開口部450aから、開口面410bを通って、第一の収納空間103aに向けて冷気が流入する。このため、第一の収納空間103aが冷気によって冷却されるので、容器410の前部の第一の収納空間103aに収容されるペットボトル511がさらに冷却される。
すなわち本発明の実施の形態7において、容器410の第一の収納空間103aの上方には、第一の収納空間103aの上部を覆うような蓋はなく、容器410の第一の収納空間103aと開口部450aとは連通している。
また、風路形成体450から逆流してくる冷気は、容器410の前部の第一の収納空間103aに向けて流れるので、容器410の後部の第二の収納空間103bに収容される野菜が冷却されすぎることがない。
また、フルーツ・小物容器420には、フルーツ・小物野菜などの食品が収容されている。ここで、風路形成体450の開口部450aは、フルーツ・小物容器420の前端面よりも前方に配置されている。このため、フルーツ・小物容器420に収容されている小物野菜などによって、開口部450aが閉塞され、冷気の循環が阻害されることを防止することができる。
また、風路形成体450の側面部には、野菜室953の内方の容器410の側面よりも外方に配置された予備開口部450bが備えられている。このため、風路形成体450の開口部450aが閉塞された場合でも、予備開口部450bが閉塞されるのを防ぐことができる。したがって、予備開口部450bから最小限の風量の冷気を流入させることができるため、冷気の循環が阻害されることがない。
また、予備開口部450bは容器410の側面よりも外方に配置されているので、冷気が逆流してきても容器410の奥側の第二の収納空間103bに収容されている野菜が冷却されすぎることがない。
また、この風路形成体450は、以下の特徴がある。
風路形成体450は、野菜室953と冷凍室104とを区画する仕切り板460の直下に配置されている。そのため、風路形成体450を通って逆流してくる冷気は、冷凍室104の影響を受けて低温に維持されることとなり、容器410の第一の収納空間103aに収容されるペットボトル511を冷却する能力を確保できる。
一方、風路形成体450は樹脂であるポリプロピレンなど熱伝導性を有するものにより構成されている。そのため、風路形成体450を通って送風機100aの運転時に蒸発器200へ戻る冷気、送風機100aの停止時に蒸発器200から逆流してくる冷気は、風路形成体450を介して輻射作用により、第二の収納空間103bに収容される野菜や、フルーツ・小物容器420に収容されるフルーツ・小物野菜に対して、冷却し過ぎない程度に、所定の冷却をすることができる。
すなわち、風路形成体450はペットボトル511が収容される容器410の第一の収納空間103aに対して、通過する冷気によって積極的に冷却する能力を確保できる。一方、野菜が収容される容器410の第二の収納空間103bや、フルーツ・小物野菜が収容されるフルーツ・小物容器420に対しては、通過する冷気によって、輻射作用を利用して、冷却し過ぎない程度に、所定の冷却をすることができる。
つまり風路形成体450は、通過する冷気によって野菜室953における主として冷却エリア(第一の収納空間103a)と、主として保鮮エリア(第二の収納空間103bやフルーツ・小物容器420)との冷却を同時に実現できる。
なお、本発明の実施の形態7においては上記のように風路形成体450という具体的な形態に言及して説明したが、上記作用を発揮して効果を奏する概念的な構成について言及すれば、以下のようになる。
すなわち、本発明の実施の形態7の冷蔵庫950の野菜室953は、前方にペットボトル511等を収納して上方が開口された第一の収納空間103aと、後方の上段にフルーツ・小物野菜が収容されるフルーツ・小物容器420、後方の下段に野菜等が収納される第二の収納空間103bとが配置されている。そして小物容器420、もしくは第二の収納空間103bの上方位置となる開口部450a付近に、蒸発器200からの冷気を冷却源として作用する輻射冷却板(風路形成体450)を備えている。そのため送風機100aの運転時、蒸発器200に戻る経路において、輻射冷却板の輻射面の裏面を通過する冷気によって輻射冷却板が冷却される。また送風機100aの停止時、蒸発器200から野菜室953に逆流する経路において、輻射冷却板の裏面を通過する冷気によって輻射冷却板が冷却される。その結果、野菜が収容される容器410の第二の収納空間103b、フルーツ・小物野菜が収容されるフルーツ・小物容器420に対し、輻射冷却板が冷却作用を発揮する。
加えて、逆流冷気が輻射冷却板の裏面を通過して容器410の第一の収納空間103aに流入する位置関係に輻射冷却板の前端面が配置されることによって、第一の収納空間103aのペットボトル511などの収納物が冷却促進される効果を併せ持つことができる。
このように、輻射冷却板の裏面を介する冷気の通過を、送風機100aの停止時の逆流現象も利用して活用することにより、極めて合理的な冷却効率の高い野菜室953の冷却構成を提供できる。
なお、このように送風機100aの停止時における蒸発器200からの逆流現象をうまく活用するためには、本発明の実施の形態7の場合のように、野菜室953より上部に蒸発器200を配置すると実現し易い。具体的には、輻射冷却板(風路形成体450)の輻射面の配置高さよりも高い位置に、少なくとも蒸発器200の一部が位置するように蒸発器200を配置する。その結果、冷却された空気すなわち冷気の比重は相対的に大きいので、送風機100aの停止時にも自然対流により冷気の対流が生じ、これが逆流現象となって輻射冷却板を介して野菜室953内に流入する。
そして、輻射面を野菜室953内に向けた輻射冷却板を、冷凍室104と野菜室953とを区画する仕切り板460の下部に配置し、輻射冷却板の輻射面と仕切り板460との間に冷気が流通する程度の空間を形成すれば輻射作用が発揮できる。
このような構成を本発明の実施の形態7においては、いわゆるダクトにより風路形成体450として具体的な形態を提示している。このため、本発明の趣旨に則れば、本発明の実施の形態7の冷蔵庫の風路形成体450のような実施形態に拘わらず、実施形態を変えた輻射面を有する輻射冷却板の概念が有効な構成となる。
以上のように、本発明によれば、冷却したいペットボトルと、冷却しすぎを抑制したい野菜とを、両立して冷やすことができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態7では、予備開口部450bは、野菜室953の内方の容器410の側面よりも外方に配置されていることとした。しかし、予備開口部450bは、さらに野菜室953の内方のフルーツ・小物容器420の側面よりも外方に配置されていることにしてもよい。これにより、予備開口部450bの食品による閉塞をさらに防ぐことができる。
また、本発明の実施の形態7では図28に示すように、風路形成体450は冷蔵庫の左右方向の左側に配置され、かつ風路形成体450の幅方向の寸法は、野菜室953の左右方向の略1/2となるように設定されているものとした。しかし、風路形成体450の幅方向の寸法は、フルーツ・小物容器420の幅方向と略同一とし、風路形成体450の側面部に下方方向にフランジを設けて、フルーツ・小物容器420の上面の開口を塞いでもよい。これにより、フルーツ・小物容器420のエリアに冷気がより流れにくくなることとなり、フルーツ・小物容器420内の食品の乾燥をより防ぐことができる。
なお、この場合野菜室953を均一に冷却する点からいえば、風路形成体450の幅方向の右側半分には、開口部450aを設けないことが望ましい。
また、フルーツ・小物容器420の上端部を風路形成体450の近傍まで伸ばすことにより、フルーツ・小物容器420の上面の開口を塞いでもよい。これにより、フルーツ・小物容器420のエリアに冷気がより流れにくくなることとなり、フルーツ・小物容器420内の食品の乾燥をより防ぐことができる。
なお、本発明の実施の形態1、5、および6において説明したそれぞれの第1の収納空間の底部の寸法A1、A2、およびA3の範囲内において、風路形成体450を設けてもよい。このようにすることにより、野菜室953にペットボトルをより多く収納できるようになるとともに、野菜室953の中を冷却したい領域と、冷却を抑制したい領域とに分けることができる。
このように収納するペットボトルの本数が増えた場合であっても、風路形成体を用いた逆流現象を利用し冷却する本発明の実施の形態7の構成は、効果がある。