請求項1に記載の発明は、冷蔵庫本体を形成する断熱箱体と扉と、冷凍サイクルの圧縮機と蒸発器と凝縮器と、前記蒸発器の除霜水を貯留する蒸発皿と前記凝縮器の一部となる蒸発皿配管とを有する除霜水蒸発装置と、前記除霜水蒸発装置の蒸発を促進する強制対流用の送風機とを備え、前記蒸発器を前記断熱箱体内部の後方に形成した冷却室内に配置し、前記圧縮機を前記蒸発器より上方の前記断熱箱体外部の天部後方に形成した第1の凹部内に配置し、前記除霜水蒸発装置と前記送風機とを前記蒸発器より下方の前記断熱箱体外部の底部後方に形成され圧縮機が配置されない第2の凹部内に少なくとも配置して、前記第1の凹部と前記冷却室と前記第2の凹部とを前記断熱箱体後方の上下方向に略一直線上に配置し、かつ前記第2の凹部を前記冷却室の前端面より後方に収まるように配置したものであり、圧縮機を収容する異形で複雑な形状の機械室部分を樹脂成形で別途一体に形成することができ、機械室の組み立て工程において簡素化による作業性の向上と組み立て精度の向上が図れ、製造コストを抑えて、圧縮機上部配置型の冷蔵庫を高い品質で合理的に提供することができる。
また、圧縮機を断熱箱体の下部後方からなくして、使用者が手を伸ばしても届きにくく使いにくい天部の後背部を有効利用することができ、また、圧縮機と除霜水蒸発装置を分散して収容することで庫内側へ無効スペースの実質的影響を低減し、庫内スペースをさらに有効活用することができる。
また、断熱箱体の奥部の上下方向に冷凍サイクルの主要な関連機器を集約することができ、前部庫内スペースへの影響を抑えて実質的有効スペースを拡大し、使い勝手を高めることができる。
また、下部庫内空間において形状的にもシンプルな庫内空間を提供することができるので使い勝手をより高めることができる。
また、冷蔵庫本体の左右方向の幅を生かして通風抵抗の少ない放熱ダクトが形成でき、除霜水蒸発装置の蒸発皿に貯留された除霜水の蒸発を促進し、凝縮器の放熱をも促進することができるので、除霜水蒸発装置や凝縮器をより小型化して庫内側に影響する無効スペースを抑えることができる。また、放熱効果を高めることによって、冷凍サイクルの効率向上や信頼性の向上および庫内側への熱影響の低減を図ることができる。
さらに、断熱箱体底部周辺においては、圧縮機が分離配置されれば庫内との温度差が小さくなることにより断熱箱体の表面温度低下による結露が発生するが、強制対流のダクトを有することによって湿気を含んだ空気の澱みを排除し、表面熱伝達を高めて表面温度を引き上げることによって結露発生の問題を抑えることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記凝縮器を前記蒸発器より下方の前記断熱箱体外部に設けて、前記除霜水蒸発装置の加熱源としたものであり、圧縮機が分離配置されても圧縮機からの放熱に頼らず凝縮器の一部からの凝縮熱を利用して除霜水の蒸発促進を図ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記凝縮器を前記断熱箱体外部の底部に配置したものであり、もともと冷蔵庫を移動させるためのキャスター等の設置により、冷蔵庫と床面との間に隙間があるが、この隙間に凝縮器を設けることができ、無効スペースを有効活用し庫内スペースを拡大できる。
また、前方の凝縮器で放熱された熱気を後方の第2の凹部内に設けた蒸発皿の上面を通過するよう自然対流させることか可能となり、蒸発皿内に滞留した水の温度を上昇させたり、蒸発する能力を向上することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記凝縮器を前記第2の凹部内に配置したものであり、断熱箱体の奥部の上下方向に冷凍サイクルの関連機器を集約することができ、庫内スペースへの影響を最小限に留めて実質的有効スペースを拡大し、使い勝手を高めることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の凹部内に強制対流用の送風機を設けて左右方向に空気が対流する第1のダクトを形成したものであり、冷蔵庫本体の左右方向の幅を生かして通風抵抗の少ない放熱ダクトが形成でき、圧縮機等の放熱効果を高めることによって、冷凍サイクルの効率向上や信頼性の向上および庫内側への熱影響の低減を図ることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の凹部の外郭を樹脂成形で形成したものであり、圧縮機を収容する異形で複雑な形状の機械室部分を樹脂成形で別途一体に形成することができ、機械室の組み立て工程において簡素化による作業性の向上と組み立て精度の向上が図れ、製造コストを抑えて、圧縮機上部配置型の冷蔵庫を高い品質で合理的に提供することができる。
また、機械室外郭の樹脂成形における補強構造や外箱との接合構造を適切なものとすることにより剛性が高くなり、かつ鋼板に代表される金属板製の外箱と材質の異なる樹脂成形の機械室外郭を接合することによって振動伝播が減衰し、圧縮機の騒音,振動が冷蔵庫本体への伝播することが抑制され、庫内部品の共振音の発生等も防止できて、人の耳障りになりやすい配置となる圧縮機上部配置型の冷蔵庫においても使用者や居住者の不快感を拭うことができる。
また、機械室外郭を別途樹脂で一体成型して冷蔵庫本体の外箱と接合する構成を採用することによって、製造工程においては冷蔵庫の外形の異なる製品間でも機械室部分の共用化や標準化を図れる可能性を有するものである。
また、製造工程の工夫によっては、樹脂成形された機械室外郭に圧縮機をはじめとした各部品を予め装着して予備的に組み立てておき、この機械室の予備組み立て品を冷蔵庫本体の外箱に装着して接合させ、冷媒配管等を連結するなどの方法も考えられ、製造工程の一層の合理化による生産性の向上や予備組み立て品としての共用化、標準化を取り入れることによる製造コストの低減が図れる。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記断熱箱体内を上下に区画して複数の貯蔵室を形成し、前記貯蔵室のうち最上部の貯蔵室を冷蔵室として前記第1の凹部を上部後方の室外に設け、最下部の貯蔵室を冷凍室として前記第2の凹部を下部後方の室外に設け、前記最下部の貯蔵室内の後方に前記冷却室を設けたものであり、庫内への温度影響が最も大きい圧縮機を庫内温度が高いために比較的にその影響が少ない冷蔵室に対面でき、かつ使用者の手が届きにくくて最も使いにくく温度分布的にも高いため普段積極的には使用されない庫内最上段部の後方を上手く有効活用して最も無効スペースをとる圧縮機を配置できる。
また、蒸発器を収容した冷却室を少なくとも最下部の冷凍室に対面させるので、最も低温に維持される冷凍室に対して蒸発器の冷却効果を直接的に最大限に供与することができるので、圧縮機の上部配置と併せてスペース面と冷却面で実質的な庫内側への影響を与えない合理的な冷凍サイクル関連機器のレイアウトが実現できる。
また、少なくとも最下部の冷凍室の後方に蒸発器を有する冷却室を配置するので、圧縮機上部配置によって高くなった冷蔵庫本体の重心を下げることができ、冷蔵庫の転倒安定性を高めてより安全な圧縮機上部配置型の冷蔵庫を提供できる。また、凝縮器が下部配置されるものにあってはさらに重心を引き下げることができて一層安定性が高められる。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記最上部の貯蔵室の扉を回転式扉とし、前記最上部の貯蔵室より下部の貯蔵室の扉を引出し式扉としたものであり、下部の貯蔵室の扉を引出し式の扉とすることによって、扉を引き出した際に冷蔵庫の重心が前方に移動して、特に収納物の重量が重い場合には冷蔵庫本体が手前に傾きやすい傾向となるが、これに対して、圧縮機は上部配置であっても重量の比較的重い冷凍サイクル関連機器を冷蔵庫本体の下部にも分散配置し、また圧縮機を含めて冷凍サイクルの関連機器を冷蔵庫本体の後方に集約配置することによって重心を下部方向および後部方向に設定することができ、圧縮機上部配置型の冷蔵庫での安定性を高めて、転倒に対する安全性を確保することができる。
以下、本発明による冷蔵庫の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、先の実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図、図2は同実施の形態における冷蔵庫の扉を開けた状態の断熱箱体の正面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は同実施の形態における冷蔵庫の断熱箱体の天面後方部の要部斜視図、図5は同実施の形態における冷蔵庫の断熱箱体の底面後方部の要部分解斜視図である。
図1から図5において、例えば硬質発泡ウレタンなどの断熱材で周囲と断熱して構成されている断熱箱体50は複数の区画に区分されて貯蔵室を形成しており、最上部の貯蔵室を冷蔵室51、冷蔵室の直下には断熱された仕切壁によって区画された製氷室52と第1の冷凍室53を横並びで配置している。最下段の貯蔵室は第2の冷凍室54、そして製氷室52及び第1の冷凍室53と第2の冷凍室54との間において第2の冷凍室54の直上部に野菜室55が配置される構成となっている。第2の冷凍室54及び野菜室55はともに引き出し式貯蔵室の形態をしている。各貯蔵室の前面開口部はそれぞれ断熱扉である回転式の冷蔵室扉51a、引き出し式の製氷室扉52a、第1の冷凍室扉53a、第2の冷凍室扉54a、野菜室扉55aが備えられている。
冷蔵室51は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃で設定され、野菜室55は冷蔵室51と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃とすることが多く、低温、高湿にするほど葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。
冷凍温度帯の貯蔵室である第1の冷凍室53と第2の冷凍室54は冷凍食品を凍結、保存するために充分な約−18℃に設定されているが、冷凍保存状態向上のために、例えば−30℃程度の低温で設定されることもある。
断熱箱体51の天面部は、背面方向に向かって階段状に凹みを設けて、第1の天面部60と、第2の天面部61で構成されており、この階段状の第1の凹部62内に圧縮機63、冷媒を循環するための配管63a、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側の構成部品が収納され、第1の凹部62内の空気を排熱するための強制対流用の送風機である機械室ファン79も収納されて、冷蔵庫本体の左右方向に空気が流れる第1のダクトを形成している。
一般的に階段状の第1の凹部62は、断熱箱体50の外郭である金属鋼板等で形成された外箱64の第1の天面部60に圧縮機63を載置するスペース分の切欠部65をつくり、その切欠部65に前壁と左右両側壁と圧縮機63を載せるための第2の天面部61とを一体で形成した樹脂部品66を外郭として嵌め込むような形にして第1の凹部62を形成している。第1の凹部62は上方及び背方が開口されており凹部カバー62aにより圧縮機63を覆っている。なお、第2の天面部61に設けた圧縮機63の固定部にゴムや樹脂などの弾性体67を中間にかませて設置することで振動伝播を防止できる。庫内側は断熱箱体50内を形成する内箱68を樹脂部品66の形状に沿った形で湾曲させ、冷蔵室51の最上段付近は内箱68が庫内側に突出するような形になっている。また外箱64と内箱68の間には発泡断熱材69を注入し、冷蔵室51と第1の凹部62を断熱するよう構成されている。なお、外箱64の第1の天面部60に切欠部65を入れ、圧縮機63を載置する第1の凹部62の強度を向上するため、一般的に切欠部65周辺に補強部材(図示せず)を設けて補強することが望ましい。したがって、従来一般的であった断熱箱体51の最下部の貯蔵室の後方領域に圧縮機63は配置されないことになる。
また、第2の冷凍室54と野菜室55の両室の背面にまたがって冷却室70が設けられ、冷却室70は仕切壁としての断熱性を有する第1の仕切壁71で第2の冷凍室54および野菜室55から仕切られている。
また、第2の冷凍室54と野菜室55は断熱仕切壁としての断熱性を有する第2の仕切壁72で仕切られている。また、冷蔵室51と製氷室52及び第1の冷凍室52とは断熱性を有する第3の仕切壁73、製氷室52及び第1の冷凍室53と野菜室55とは同じく断熱性を有する第4の仕切壁74で仕切られている。これらの仕切壁は、断熱箱体50の発泡後組み立てられる部品であるため、通常断熱材として発泡ポリスチレンが使われるが、断熱性能や剛性を向上させるために硬質ウレタンを用いても良く、さらには、より高断熱性の真空断熱材を挿入して、仕切壁構造の薄型化を図ってもよい。また、第3の仕切壁73のように冷蔵室扉51aを回転させるためのヒンジ(図示せず)を表面に設けるなど、強度と剛性が必要な場合は、発泡断熱材の発泡前に取り付けておき、断熱箱体50と一体で構成するとよい。
また、製氷室52と第1の冷凍室53とは第5の仕切壁75で区画されている。第5の仕切壁75は必要に応じて、例えば第1の冷凍室53を温度調節できる部屋に設定し、製氷室との温度差が生じる場合などには断熱材を用いた断熱仕切壁としてもよい。
冷却室70には、代表的なものとしてフィンアンドチューブ式の蒸発器76が第1の仕切壁71の後方領域を含めて第2の冷凍室54と野菜室55とにまたがって上下方向に縦長に配設されており、第2の冷凍室54の領域の配置比率が野菜室55の領域の配置比率よりも大きくなるように配置されている。蒸発器76の上部空間には強制対流方式により各貯蔵室へ冷気を送るために蒸発器76で冷却した冷気を送風する冷却ファン77が配置され、冷蔵室51へ冷気を送るための冷蔵室用送風路(図示せず)と製氷室52、第1の冷凍室53へ冷気を送るための製氷室用送風路(図示せず)、第2の冷凍室54へ冷気を送るための冷凍室用送風路(図示せず)を備えている。蒸発器76の下部空間には冷却時に蒸発器76や冷却ファン77に付着した霜や氷を溶かす除霜装置としてのガラス管製のラジアントヒータ78が設けられている。
断熱箱体50の底面後方は、背面方向に向かって一段上がった凹みを設けて、第1の底面部80と第2の底面部81で階段状に構成された第2の凹部82を設けている。この第2の凹部82は金属鋼板をプレスすることによって両底面部80、81を形成し、外箱64のほぼ下端付近の内側左右両面と背板64aとのあわせ面に設置することで形成することが一般的であるが、鋼板と樹脂の組み合わせや成形加工した樹脂などで構成することもできる。
また、第1の底面部80から第2の凹部82にかけては、通常冷蔵庫を前後方向に動かすことができる複数のローラ88が断熱箱体50の前後に取り付けられ、冷蔵庫が設置されている床面との間に空間を設けている。その空間の断熱箱体50前方に冷凍サイクルの凝縮器83、後方に蒸発器76で除霜された水を貯留するための蒸発皿84及び第1の底面部80から第2の凹部82の空間内を強制対流させるための送風機である放熱ファン86を配置構成し、冷蔵庫本体の左右方向に第2のダクトを形成している。
なお、第2のダクトの排気口は第1の凹部62内に形成した第1のダクトの排気口と同一の側面方向にして第2のダクトの排熱空気が直接、第1のダクトの吸気口に再度吸い込まれないように構成している。
またラジアントヒータ78で除霜された水を蒸発皿84まで送るための排水管89が第2の底面部81から第2の凹部82内に延びるように設置されており、後方の開口は凹部カバー82aにより覆われている。
凝縮器83は代表的なものとしてスパイラルフィンチューブ式で、樹脂成形された凝縮器ダクト85にはめ込まれ第1の底面部80にビス等で取り付けられている。一方蒸発皿84は第1の底面80から第2の底面81にかけて断熱箱体50の略全幅の大きさで構成されていて、凝縮器ダクト85に載置するよう配置されている。なお蒸発皿84は凝縮器ダクト85と一体成形してもよい。
なお、本実施の形態において凝縮器83は第2の凹部82内にまで延出しない配置構成としているが、放熱能力の確保や除霜水蒸発のための加熱能力の確保のため第2の凹部82内に一部が跨って配設される構成としても構わない。
また、本実施の形態において蒸発皿84は第2の凹部82内にその一部が跨って配置される構成としているが、除霜水の蒸発能力が確保できるのであれば第2の凹部82内のみに収容してよりコンパクトに配設しても構わない。
また、蒸発皿84内には圧縮機63で圧縮された高温高圧の冷媒を循環させる凝縮器配管の一部となる蒸発皿配管87を加熱手段として設けている。この蒸発皿配管87は、蒸発皿84内に直接配置して貯留する除霜水に直接浸漬させる構造でもよいし、蒸発皿の底部などから熱伝導的に間接加熱する構造としてもよい。
そして、この蒸発皿84と蒸発皿配管87とで除霜水蒸発装置を構成するものである。なお、除霜水蒸発装置は蒸発皿配管87のような加熱手段が必ずしもなくても、例えば吸水性のある部材を用いて除霜水を気化促進するものでも、強制対流用の送風機などを設けて蒸発を促進する構成を用いるものでもよい。加熱手段を併用すれば一層効果的である。
また、庫内については断熱箱体50内を形成する内箱68を階段状の第2の凹部82とほぼ同様の形状に湾曲させることで庫内の底面後背部が階段状に突出した庫内底面部を形成している。
冷蔵室51には、庫内の後方に冷却室70で冷却された冷気を通すための冷蔵室ダクト90を備え、複数の吐出孔(図示せず)から庫内全体に冷気を行き渡らせるようにしている。その冷気風路と庫内側とは発泡ポリスチレンなどで簡易的に断熱され、庫内側と断熱区画している。一方庫内は、収納物を重ならず整理して保存するための複数の収納棚91を設け、一部上下に可動できるよう構成されている。なお最上段の収納棚91は第1の凹部62の内箱68の天井部分と略面一にすることが望ましい。最下段には、生鮮類の肉や魚をおいしく保存できるようにした特定低温室を設け、約−1℃〜1℃程度に設定されている。また特定低温室の隣に氷をつくるための水を貯留する給水タンク93を設け前後方向で引き出せるよう構成されている。また、冷蔵室扉51aの庫内側にはペットボトルや牛乳パックといった飲料、調味量などの中ビン類を効率的に収納保存できる複数のポケット94を設けている。
製氷室52には、上部空間に冷蔵室51の給水タンク93から水を汲み取り、氷を生成するための製氷機構95を設け、下部空間には生成した氷を貯留するための貯氷容器96を配置構成している。製氷室扉52aを前後方向に移動させることで貯氷容器96も一緒に移動するよう庫内のレールにより支持されている。
第1の冷凍室53には、食品を整理して収納するための容器が設けられていて上面が開口されている。容器は前方の第1の冷凍室扉53aを前後方向へ移動させることで容器も一緒に移動するように庫内のレールにより支持されている。背面には冷却室80で冷却された冷気を通すための第1の冷凍室ダクト100を備え、複数の吐出孔(図示せず)から庫内全体に冷気を行き渡らせるようにしていて、その冷気風路は簡易的に断熱され、庫内側と断熱区画している。なお、第1の冷凍室53は冷凍温度以外にも、約5℃の冷蔵温度帯から約−18℃の冷凍温度帯まで温度切替可能な室としても構成できる。その場合第1の冷凍室ダクト100には第1の冷凍室53の庫内温度を管理するセンサー機構(図示せず)と温度切替のための冷気量調節機構としてのダンパー101を組み込んだ形で収納する。
第2の冷凍室54には、食品を整理して収納するための冷凍室収納容器105が設けられていて上面が開口されている。冷凍室収納容器105は前方の第2の冷凍室扉54aを前後方向へ移動させることで冷凍室収納容器105も一緒に移動するように庫内のレールにより支持されている。
野菜室55には葉野菜や根菜、果物などの野菜類を主に整理して収納するための野菜室収納容器106が設けられていて上面が開口されている。野菜室収納容器106は前方の野菜室扉55aを前後方向へ移動させることで野菜室収納容器106も一緒に移動するよう庫内に設置したレールにより支持されている。特に、野菜室収納容器106内の手前側には簡易的な仕切りなどを設けて区画形成し、ペットボトルや野菜を縦置きで収納できるように野菜室収納容器106の高さ寸法を設定して、野菜室扉55aを少し開けるだけで取り出せるように配慮されるとよい。
上述のように冷凍サイクルの圧縮機63が第2の冷凍室54の後方領域に存在せず、冷蔵室51の庫内は冷蔵室ダクト90までの奥行き、製氷室52及び第1の冷凍室53の庫内は第1の冷凍室ダクト100までの奥行き、また第2の冷凍室54及び野菜室55庫内は第1の仕切壁71までの奥行きがそれぞれ確保でき、圧縮機63収容する第1の凹部62の冷蔵室51の最上段が最も突出していて、冷却室70は極力奥行き方向の厚みを大きくしないように配慮されて、ほぼ同様の厚みで上下方向に略一直線上に配置されている。これにより、第2の仕切壁72の下方貯蔵室である製氷室52、第1の冷凍室53、第2の冷凍室54、野菜室55の奥行きはほぼ同等で形成される。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
まず、冷凍サイクル動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御基板(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行なわれる。圧縮機63の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器83にて放熱して凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって蒸発器76に至る。
冷却ファン77の動作により、各貯蔵室内の空気と熱交換されて冷却器76内の冷媒は蒸発気化し、低温の冷気をダンパー装置などで供給制御することで、各貯蔵室の設定された所定の温度を維持できるよう冷却を行う。蒸発器76を出た冷媒は吸入管を経て圧縮機63へと吸い込まれる。
圧縮機63を断熱箱体50の第2の天面部61に載置して第2の冷凍室54の後方領域には配置せず、冷却室70を第2の冷凍室54と野菜室55の背面に配置し、蒸発器76と冷却ファン77を概ね第2の冷凍室54と野菜室55の高さ範囲内で設け、蒸発器76を高さ方向に延長させ奥行き寸法を短縮することにより、冷却室70の厚みを薄くして庫内容積として寄与しない無効スペースを減少できる。
また、凝縮器83を断熱箱体50の底面前方の庫外側ほぼ全幅に高さ寸法を小さく、かつ蒸発皿84を第2の凹部82付近に高さ寸法を小さくして取り付けることにより、設置された床面と第1の底面部80との空間及び第2の底面部81までの空間である第2の凹部82の高さを低くして庫内容積として寄与しない無効スペースを減少できる。
上記のように、断熱箱体50の天面後方及び底面後方という使用者の手が最も届きにくい、いわば無効スペース近い空間の断熱箱体50の上下に第1の凹部62、第2の凹部82を設けて、庫内容積には寄与しない圧縮機63、凝縮器83や蒸発皿84といった冷凍サイクルに必要な部品をコンパクトに収容することで、使用者が使いやすい高さ位置の収納容積を増大し、収納性を高めることが可能となる。
そして、これにより、断熱箱体50の奥部の上下方向の略一直線上に冷凍サイクルの主要な関連機器である圧縮機63、蒸発器76、凝縮器83(凝縮器配管となる蒸発皿配管87でも可)と蒸発皿84を集約することができ、前部庫内スペースへの影響を抑えて実質的有効スペースを拡大し、使い勝手を高めることができる。
また、第2の凹部82を冷却室70の前端面より後方に収まるように配置したので、形状的にもシンプルな庫内空間を提供することができるので使い勝手をより高めることができる。
なお、断熱箱体50の奥部の上下方向の略一直線上に冷凍サイクルの主要な関連機器や蒸発皿84を配置する場合について、これら機器や部品の全ての部位が第1の凹部62と第2の凹部82とを結ぶ直線上に収容されていれば最も好ましいが、本願発明の趣旨においては必ずしもそのような形態を要求しない。
第1の凹部62と第2の凹部82とを結ぶ直線上にこれら機器や部品が少なくとも存在し、これら第1の凹部62と第2の凹部82のいわゆる庫内側に影響しないスペースを有効に活用して、実質的に有効な庫内スペースを拡大またはシンプル化して使い勝手を向上できるものであればよい。すなわち、たとえば凝縮器83や蒸発皿84の全体が第2の凹部82内に収容されておらず、他の場所に跨って配置されたり分散して配置されたりしても、従来の冷蔵庫に比して十分に一定の効果が得られるものであり、使い勝手や収納性の向上と凝縮器83や蒸発皿84の能力を確保する目的とを両立する観点では、むしろ実用的で合理的な手段となり得る。
本実施の形態の貯蔵室配置では、断熱箱体50の上部を冷蔵室51、最下段の直上の貯蔵室を野菜室55、冷蔵室51と野菜室55に挟まれた貯蔵室をそれぞれ製氷室52、第1の冷凍室53としているので、冷蔵庫の基本機能である冷蔵、冷凍、野菜の全ての温度帯を前述した使用者の使いやすい位置に集結することができる。
特に、近年、使用者の使用頻度や鮮度管理のしやすさ、人間工学的な使い勝手の観点などから使用頻度の最も高い冷蔵室51を使用者の前面で見開いて出し入れできる腰よりも上の上段位置に、重量物の出し入れや健康志向の野菜室55を使いやすい中段に、そして、長期間出し入れしないストック品などもありかつ取扱時の落下などへの配慮も必要な冷凍室54を最下段にレイアウトした冷蔵庫が主流になっているが、このレイアウトにおいて、圧縮機63を含めた機械室の配置で最下段の冷凍室54の収納容量を充分に確保できないのが欠点であったが、本実施の形態によると最下段の第2の冷凍室54の奥行きを野菜室55と同様に拡大することができて、しかも夏場に使用頻度が高く、ニオイ移りが心配な製氷室52を独立した部屋にして冷蔵庫のほぼ中間に設けることで、さらに使い勝手がよく収納効率を高めた冷蔵庫を提供できる。
断熱箱体50の天面後方に設けた第1の凹部62の庫内側への突出高さを、冷蔵室の複数の棚のうち、最も高い位置にある棚より下方へ突出しないよう構成することにより、最も使用頻度の低い最上段のみ収納するための奥行きが小さくなるものの、最上段下方の収納容積は大きく、冷蔵室扉31aを開けたときの見た目の圧迫感もないスッキリしたデザインに仕上げることができる。
断熱箱体50の底面部庫外の配置で、凝縮器83を断熱箱体50の前方へ蒸発皿84を後方である第2の凹部82周辺に配置することにより凝縮器83で熱交換した暖気が上昇気流を起こすため蒸発皿84の上方空間内に対流が起こり貯留している水の蒸発能力を向上することができる。なお、蒸発皿84が前方で凝縮器83が後方の配置であっても放熱による空間内の対流は起こるため蒸発能力は同様に効果を得ることができる。さらに第2の凹部82に冷蔵庫の背面方向に向かって対流させる放熱ファン86の設置により、周辺に配置された凝縮器83の放熱能力を向上し、蒸発皿84に滞留した水を蒸発させる能力を向上することができ、両者をより小型化することが可能となる。
また、蒸発皿84内に圧縮機63で圧縮された高温高圧の冷媒を循環させる凝縮器の一部である凝縮器配管としての蒸発皿配管87を設けることで除霜水を蒸発させる能力を向上することができ蒸発皿84をさらに小型化できる。なお上下第1の凹部62、82に設けた凹部カバー62a、82aには、放熱、排熱用の開口を設けるとそれぞれの効果を高めることができる。
また断熱箱体50の底面の第2の凹部82は、蒸発皿84や凝縮器83を収納することの他にラジアントヒータ78で除霜された水を蒸発皿84まで送るための排水管89としての空間や凝縮器83の取り付ける作業性を高めたり、蒸発皿84の取り出す作業性を高める役目としてもある。
冷蔵室51は冷蔵庫の中でも使用頻度が非常に高いことから、回転式の冷蔵室扉31aにより庫内を見開いた状態で使用者が目線の位置に収納物を見渡すことができるため出し入れ性に優れる。
製氷室52は、断熱箱体50の高さ方向の中央付近に配置することで腰を屈めず簡単に氷を取り出しできるとともに、独立した室にすることで他室からのにおい移りを防止し、さらには製氷室扉52aを個別に設けているため扉開閉による外気の侵入を抑制し省エネにも繋がる。また使用頻度が高く夏場に多量の氷を必要とされることから、製氷室52の背面にある第1の冷凍室ダクト100を構成する風路(図示せず)やダンパーを小型化することによって冷却室70の奥行きよりも小さくすることが可能であり、その場合は氷を貯留する製氷室容器96の奥行きを更に延長し、貯氷量を増大することができる。
第1の冷凍室53は製氷室52と横並びで配置し、フリージング、短期保存用として食品をより早く凍結させるために収納する食品の形態を薄くする必要があるため第2の冷凍室54の高さ寸法よりも小さくし、逆に第2の冷凍室の高さを大きくすることで、冷凍食品等のストックを大容量でできるメリットがある。さらに、第1の冷凍室53を冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで切替可能な機能を有する貯蔵室にすることで、使用者のライフスタイルの変化にも対応できる機能をつけることで価値を向上することができる。また製氷室52と同様に第1の冷凍室ダクト100を構成する風路(図示せず)やダンパーを小型化することによって冷却室70の奥行きよりも小さくすることが可能であり、その場合は使いやすい高さ位置の第1の冷凍室容器(図示せず)の奥行きを更に延長し、収納容積を増大することができる。
野菜室55は、断熱箱体50の高さ方向の中央付近で、かつ製氷室52と第1の冷凍室53より下部に配置しているので、重量物である白菜などの野菜類やペットボトルなどの飲料品の持ち上げ代が少なくて出し入れ性が大きく向上する。
また、第2の冷凍室54、野菜室55が引出し式の貯蔵室でなくても享受できるものであるが、引き出し式の貯蔵室であればさらにその効用は大きい。すなわち、第2の冷凍室54、野菜室55の奥行きがともに拡大する分、レールの選定によっては冷凍室収納容器105、野菜室収納容器106の引き出し代も拡大でき、使用者は収納容器内を広々と見渡しながら収納物の出し入れを効率良く行うことができ、使い忘れなどが減って衛生的に管理することもできる。レールの選定にあたっては、摺動性の高い高品位なベアリング式レールや、中間レールを有して庫外側への引出し代を大きくできるタイプのレールを採用すればその効果を一層享受することができる。
また、第2の凹部82の庫内底面部とほぼ同等の面積で高さ方向の投影面上に冷却室70を設置しているので、冷却室70の幅と第2の凹部82の庫内への突出代がほぼ同等になり、冷凍室収納容器を直方体形状にできるとともに、奥行きを拡大することができ収納効率が上がる。また、庫内底面部の直上に蒸発器76を設けているため、蒸発器76の霜を蒸発皿84へ送るときの経路の一部として使うことができ、さらに庫内底面部を蒸発器76の霜受けとして形成すれば、一般的に使用している露受けの部品を削減できるためコストメリットも大きい。
なお、本実施の形態では引き出し式の野菜室55を上部に、第2の冷凍室54を最下部としたが、これとは逆の配置で引き出し式の第2の冷凍室54を上部に、野菜室55を最下部としても同様の効果を得ることができる。
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の断面図である。
図6において、断熱箱体201の下部後方で、冷却室202の下方の庫外に形成した第2の凹部203内に凝縮器204が収容されている。凝縮器204以外に他の凝縮器が他の場所にあってもよいが、すくなくとも凝縮器204は第2の凹部203内に収容されるものである。
除霜水蒸発装置を構成する蒸発皿205は、第2の凹部202内の底部にあって、同じく除霜水蒸発装置を構成する凝縮器204の一部となる蒸発皿配管87からの熱伝導による加熱作用と、強制対流用の送風機86による蒸発促進作用を受けるように配置構成されている。蒸発皿205は、そのすべてが第2の凹部203内に収容されていなくてもよく、貯留された除霜水の表面の一部が送風機86の対流経路中にあればよい。
以上のような構成において、凝縮器204が第2の凹部203内に収められるので冷凍サイクルの関連機器である圧縮機63,蒸発器76,凝縮器204,除霜水蒸発装置が冷蔵庫本体の後方において上下方向の略一直線上に集約配置され、庫内スペースへの影響を最小限に留めて実質的有効スペースを拡大し、使い勝手を高めることができる。
また、冷蔵庫本体の底部空間への冷凍サイクル機器の配置がなくなるので断熱箱体201の底部をさらに下げることができて庫内側のスペースをより拡大することができる。
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3における冷蔵庫の断面図である。
図7において、例えば硬質発泡ウレタンなどの断熱材で周囲と断熱して構成されている断熱箱体301は複数の区画に区分されて貯蔵室を形成しており、最上部の貯蔵室を冷蔵室302、最下部の貯蔵室を冷凍室303、そして冷蔵室302と冷凍室303との間の貯蔵室を野菜室304とする構成となっている。冷蔵室302は回転式の扉305を備え、冷凍室303及び野菜室304はともに引出し式の扉306,307を備えた貯蔵室の形態をしている。
なお、冷凍サイクル関連機器の配置構成については、実施の形態1と同様である。
以上のような構成において、実施の形態1と比べて上下方向に貯蔵室数が少ないシンプルな形態の冷蔵庫においても実施の形態1と同様の効果を享受することができ、また、シンプルなレイアウトの冷蔵庫であれば、冷蔵庫の全高が低いケースが多いが、この場合には圧縮機上部配置型の冷蔵庫として設置安定性や実用時の安定性が一層高まり、安全で、使う勝手の優れた冷蔵庫を提供できる。
(実施の形態4)
図8は本発明の実施の形態4における冷蔵庫の断面図である。
図8において、例えば硬質発泡ウレタンなどの断熱材で周囲と断熱して構成されている断熱箱体401は複数の区画に区分されて貯蔵室を形成しており、上部の貯蔵室を冷蔵室402、下部の貯蔵室を冷凍室403としている。冷蔵室402,冷凍室403はともに回転式の扉404,405を備えた貯蔵室の形態をしている。
なお、冷凍サイクル関連機器の配置構成については、実施の形態1と同様である。
以上のような構成において、実施の形態1,2と比べて上下方向に貯蔵室数がより少ないシンプルな形態の冷蔵庫においても実施の形態1と同様の効果を享受することができ、また、本実施の形態のような冷蔵庫は、全高がより低いケースが多いが、下部の冷凍室の扉405が回転式の扉で開放時に引出し式扉に比べて重心の前方への移動が少ないことも相まって、圧縮機上部配置型の冷蔵庫として設置安定性や実用時の安定性がさらに高まり、安全で、使う勝手の優れた冷蔵庫を提供できる。