JP4974197B2 - スパッタリングターゲット用銅材料およびその製造方法 - Google Patents

スパッタリングターゲット用銅材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、スパッタリングターゲットとして用いられる銅材料及びその製造方法に関するものである。
近年、モバイルPC、携帯電話端末などの小型電子機器から大型のテレビまで、種々のサイズにおいてフラットパネルディスプレイが使用されている。フラットパネルディスプレイに分類される、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにおいては、高画質・動画の高速描画への要求を満たすために、画素のドットに薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下TFTと記載)素子を組み込んだものが開発され、現在主流となっている。
図1に液晶ディスプレイにおけるTFT素子の構造一例を断面で図示した。TFT素子1は、ガラス基板2の上に走査線3および走査線の一部がTFTのON/OFF制御として機能を有するゲート電極4がある。ゲート電極を窒化シリコンの絶縁膜5で覆う形で形成され、順次、絶縁膜5の上に、アモルファスシリコン(以下a−Siと記載)層6、P(リン)をドープしたa−Si層7、ソース−ドレイン電極8および9が形成される。それらを覆う様に窒化シリコンの保護膜10が形成される。画素領域にはスズドープ酸化インジウム(以下ITOと記載)膜11が配置されている。
従来、走査線、ゲート電極、ソース−ドレイン電極にはMo、Crのような高融点金属やアルミニウムとその合金などが用いられてきた。しかしながら、液晶ディスプレイの大型化や高画素化に伴い配線長が増大され、信号遅延、電力損失等による、画像表示むら等の問題が顕在化した。そこで電気抵抗率の低い銅配線が着目されるようになった。
TFT素子の配線に銅配線膜を用いることでの課題は、ガラス基板上に直接Cu膜を形成すると、Cu/ガラス界面における密着性が悪いためにCu配線膜がガラスから剥離するということが挙げられる。
その剥離の問題を解消するための発明として、特許文献1〜3等に記載された技術が提案されている。
特許文献1には、銅配線とガラス基板の間にモリブデンなどの高融点金属を介在させ、ガラス基板との密着性に優れるバリア層を形成することで、剥離を抑制している。
特許文献2および3には、銅を合金化したターゲットを用いることで、酸化物を銅配線とガラス基板界面に形成させる、合金元素を銅配線とガラス基板界面に濃化させるなどの手法により、剥離を抑制している。
特許文献2および3の発明の様に銅合金化などの手法も開発されているが、現在工業的には、特許文献1に記載発明の様に、ガラスと密着性のよいMoやTiなどを図1の記載のバリア層12として銅配線の下に形成することで剥離を改善し、スパッタリングにより純銅の配線を形成している。
TFT素子のゲート電極の形成工程において要求される重要な特性の一つに、配線膜の基板面内均一性が挙げられる。膜の均一性、すなわち膜厚の違いや凹凸などの存在により、TFT内での電気容量が不均一になるため、表示に悪影響が与えられる。また、TFT素子製造工程において、膜厚の違いや、粗大なクラスタ(パーティクル、スプラッシュ等)が存在すると、エッチングにて配線電極を作成した際に、断線および短絡などの配線不良を引き起こすことが懸念される。
半導体配線等となる純銅膜をスパッタリング工程にて形成する場合に、均一な配線膜が作成でき、粗大クラスタの抑制および断線不良を抑制できるスパッタリングターゲットの発明としては、特許文献4〜8等に記載された技術が提案されている。
特許文献4には、酸素、窒素、炭素および水素のガス成分を除いた純度99.9999%以上の銅を基体として、酸素濃度0.1ppm以下で溶解、凝固させて製造することで、不良断線率の少ない、超LSI用の配線を得ることが可能なスパッタリングターゲットを記載している。銅材料中の不純物量を低減させることで、断線不良などを低減させる。
特許文献5には、純度99.995%以上の銅において、再結晶組織の平均結晶粒径を80ミクロン以下にして、且つ、ビッカース硬さを100以下にしたスパッタリングターゲットを用いることで、スパッタ粒子の飛び出しの拡がりと粗大クラスタ発生を抑制することが記載されている。
特許文献6には、ガス成分を除いた純度99.999%以上の銅において、スパッタ面内における{111}面のX線回折ピーク強度I{111}を高め、平均粒径を250μm以下にして、場所による粒径のばらつきを20%以内にすることで、膜厚均一性を良好にすることが記載されている。
特許文献7には、表面に{110}面を向いた結晶の体積を80%以上にし、それらの結晶が表面から中心に均一に分布させることにより、銅原子の飛び出しを表面から垂直にさせ、アスペクト比の大きな溝の深奥部まで製膜可能にすることが記載されている。
特許文献8には、99.999%以上の純度の銅において、平均結晶粒径を10〜30μmに制御し、{111}、{200}、{220}及び{311}の各々の配向を有する粒子の量を50%よりも少なくして、ランダムな配向を有することで、均一性及び最小の粒子発生を達成できることが記載されている。
成分、結晶粒径、歪および結晶配向の制御により、スパッタ粒子の飛び出しを制御し、均一な膜生成および粗大クラスタを抑制することが、従来の発明において可能になった。しかしながら、大型テレビ用の液晶ディスプレイなど基板サイズの大型化が進行し、第7世代などでは1870mm×2200mmなど、2mを超える基板サイズとなった。それに伴い配線を作成するスパッタリング工程においても大型の基板に製膜する必要が出てきており、上述の特許文献に記載の方法を用いても、生成される配線膜の膜厚が基板の部位毎に不均一になる、粗大クラスタの発生がより多くなるなどの課題が顕在化した。また、使用するスパッタリングターゲット自身も大型化するため、スパッタリングターゲット材の部位毎に金属組織が不均一になり易く、膜厚精度および粗大クラスタ形成に及ぼす影響が大きくなった。
特開平7−66423号公報 特許第4065959号公報 特開2008−166742号公報 特許第3727115号公報 特許第3975414号公報 特許第3403918号公報 特許第3997375号公報 特許第3971171号公報
本発明は、上述の従来の問題点に鑑みて、TFT液晶パネルなどに使用される大型の基板に対してスパッタリング工程で配線を作成する際に、従来以上に均一に粒子を発生し、且つ、使用中においてもその粒子の発生頻度の変化が起こりにくいスパッタリングターゲット用銅材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上述の課題に対し鋭意研究することによって、結晶の配向および結晶粒を所定の範囲に制御し、また、製造方法をより均一に組織制御が可能である熱間押出法を適用することにより、均一な配線膜を作製可能なスパッタリングターゲットに好適な銅材料を提供することができることを見出した。
本発明は、この知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明は、
(1)スパッタリングターゲット用銅材料を製造する方法であって、純度が99.99%以上である高純度銅の鋳塊を700〜1050℃で熱間押出し、押し出された材料を熱間押出直後に50℃/秒以上の冷却速度で冷却する工程を含み、
前記の高純度銅からなり、スパッタリングを行う面における{111}面、{200}面、{220}面、および{311}面の各々のX線回折のピーク強度、I{111}、I{200}、I{220}、およびI{311}が下記式(1)を満たし、結晶粒の粒径が100〜200μmであるスパッタリングターゲット用銅材料を得ることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料の製造方法
Figure 0004974197
(2)前記冷却の後に、加工率30%以下で冷間圧延すること特徴とする、(1)項記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法、
(3)純度が99.99%以上である高純度銅の鋳塊に700〜1050℃で熱間押出を施し、該熱間押出の直後に50℃/秒以上の冷却速度で冷却して得られた、純度が99.99%以上で、スパッタリングを行う面における{111}面、{200}面、{220}面、および{311}面の各々のX線回折のピーク強度、I{111}、I{200}、I{220}、およびI{311}が下記式(1)を満たし、結晶粒の粒径が100〜200μmであり、硬さが51〜100Hvであることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料、
Figure 0004974197
(4)前記冷却の後に、加工率30%以下で冷間圧延して得られたこと特徴とする、(3)項記載のスパッタリングターゲット用銅材
提供するものである。
本発明により、均一な配線膜を作製可能なスパッタリングターゲットに好適な銅材料を提供することができる。本発明のスパッタリングターゲット用銅材料は、TFT液晶パネルなどに使用される大型の基板に対してスパッタリング工程で配線を作成する際に、従来以上に均一に粒子を発生し、且つ、使用中においてもその粒子の発生頻度の変化が起こりにくい。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
液晶ディスプレイにおけるTFT素子の構造一例を示す概略断面図である。 実施例における結晶方位分布、結晶粒径、および硬さの測定試験のサンプリングの説明図である。 実施例におけるスパッタリング特性試験のサンプリングの説明図である。
本発明のスパッタリングターゲット用銅材料は、前記特定の製造工程を経て得られたものであり、純度が99.99%以上である高純度銅(以下、単に「純銅」という)からなる銅材料において、材料表面のミクロ組織の結晶配向および結晶粒径を特定の範囲のものとしたものである。
純銅は、焼鈍により再結晶が行われると、{111}面、{200}面、{220}面、{311}面が生じやすい。通常これらはランダムに配向しているが、本発明者らはこれらの中で{200}面のスパッタリング特性が特に優れ、{111}面、{200}面、{220}面、{311}面の各々のX線回折のピーク強度をI{111}、I{200}、I{220}、I{311}とした時、I{200}の割合が40%以上、すなわち、下記式(1)を満たす場合、スパッタリング特性、例えば成膜時の膜厚の均一性と膜質の均質性が優れたものとなることを見い出した。
Figure 0004974197
式(1)の左辺である
Figure 0004974197
の値(以下、結晶配向度と定義する)は、0.4より小さい場合はI{200}の効果が十分に発揮されないため、0.4以上であり、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7〜0.9である。
本発明において、上記の各面のX線回折のピーク強度は、銅材料のターゲットとして使用される表面からX線を入射させ、測定した各回折面の強度のピークである。
結晶粒径も結晶配向と同じくスパッタリング特性に影響を与える。本発明のスパッタリングターゲット用銅材料の結晶粒の粒径は100〜200μm、好ましくは110〜190μm、さらに好ましくは120〜180μmである。
結晶粒径が小さい場合は、相対的に結晶粒界が多くなるが、結晶粒界は原子配列が乱れておりスパッタリング時の元素の飛び易さが粒内とは異なるため、形成する膜が不均一になり易い。また結晶粒径が大きい場合は、ターゲット物質を飛び立たせるために高いエネルギーが必要であり、同時に複数のターゲット原子が飛び出すなど粗大クラスタの形成が増え、形成する膜が不均一になり易い。
また、本発明において、結晶粒の粒径は、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した平均粒径(粒度)を意味する。
なお、{200}面のスパッタリング特性が優れる要因は、FCC金属における各面での原子密度を考慮した場合、{111}面が最も多く、次いで{200}面が多いが、{111}面は最密であるがゆえに、原子1個を飛び立たせるために必要なエネルギーが大きく、最もバランスが良いのが{200}面であるためと推察される。
本発明のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、{200}面の配向を高める製造プロセスとして、熱間押出を用いる。熱間押出では材料の加熱温度を700℃以上1050℃以下とする。700℃より低い場合は押出中に動的再結晶が十分に生じず、(1)式の関係が得られにくい。なお加熱温度の上限は特に限定されるものではないが、純銅の融点が約1080℃であることから、あまり高くするとビレットが部分的に溶解し押出が行えない。熱間押出の温度は750〜900℃であることがさらに好ましい。熱間押出は、通常の押出機を用い、任意の圧力で行うことができる。
熱間押出された材料は非常に高温であり、通常、短時間で結晶粒が粗大化・成長し、200μm以上となる。これを防ぎ、結晶の粒径を100〜200μmとするために、押出直後(通常、ダイスより押し出されてから5秒以内に)に水冷等により材料を50℃/秒以上の冷却速度で冷却する。冷却速度は100℃/秒以上がさらに好ましい。この冷却速度の上限値には特に制限はないが、実際上、通常300℃/秒程度以下である。また、冷却は材料が200℃以下になるまで行うことが好ましい。
結晶の配向、つまり前記式(1)で表される結晶配向度は、熱間加工時の加工の向き(鍛造、圧延、押出によってメタルフローが異なるのでそれぞれ向きが変わる)、加工率(量)、温度などにより種々変化する。熱間押出で行なうことで、本発明で規定する前記式(1)で表される条件を満たすように制御しやすい。また、前述の動的再結晶から粒成長への段階で、結晶配向は概ね決まる。加えて、熱間押し出し組織を固定する為に前述の押出直後に冷却することが好ましい。これらの2点を達成することにより、本発明の銅材料を得ることができる。
また熱間鍛造では近年のターゲットの大型化要請に対応するサイズでは、鍛造後の冷却の不均一を解消することは難しく、均一な結晶粒組織を得ることができない。
また、前述の結晶配向や結晶粒径を得るには、純銅の純度が重要となる。純銅の鋳塊を製造する際の原料である電気銅にはある程度の不純物が含有されており、純銅の鋳塊にもそれらが現れる。不純物が多いと材料の耐熱性は向上し、再結晶が生じにくくなり、結晶配向が得られにくくなる。本発明においては、純銅の純度は99.99%以上が必要であり、好ましくは99.995%以上である。なお、上記の熱間押出およびその直後の冷却の前後において、純銅の純度に実質的に変化はない。
熱間押出の優れている点として、前記の結晶配向や冷却速度による結晶粒径制御が、押出材の先端〜後端および幅方向において小さいばらつきで行えることが挙げられる。
これまで銅ターゲット材は熱間圧延で製造されているが、熱間圧延は加熱されたケークを数パス〜10数パス掛けて徐々に薄くするため圧延中に温度低下が生じ、その温度低下は材料の先後端で差が生じ易い。また、幅方向の両サイド側は放熱により温度が低下しやすい。さらに最後に実施する水冷は、一般には水冷帯に圧延材の片側から徐々に進入するため、ここでも先後端の差が生じ易い。
一方、熱間押出は、押し出された材料がすぐに冷却されて押出材を形成するため、冷却過程の温度差は長手方向および幅方向で生じない。生じる温度差は押し始めと押し終わりのビレットの温度低下であるが、熱間圧延に比べて加工時間が短時間であるため低下量は少なく、加工発熱の蓄積も生じるため、温度差はほとんど問題とならない。この様に熱間押出で製造した材料は、長手方向、幅方向で特性ばらつきが小さいことから、ターゲット製造を短冊状の板を組み合わせて行う様な大型のディスプレイ用のターゲット材として使用する時、スパッタリング膜を均一に形成しやすくする効果がある。
また、熱間押出して得られた押出材を、該熱間押出直後に材料を冷却する工程の後に、冷間圧延を行うことがさらに好ましい。冷間圧延は従来と同様の条件により行うことができる。
また、銅材料に内在するひずみは、ターゲット物質の飛び出しに影響を及ぼすため、制御しておくことが好ましい。銅材料内部のひずみは、硬さ測定を行うことにより評価することができる。本発明において、硬さは51〜100Hv(ビッカース硬さ)の範囲が好ましい。ひずみが多すぎると、ターゲット原子が多く固まって飛び出して粗大クラスタの形成が増え形成する膜が不均一になり易く、硬さを100Hv以下にすることが望ましい。なお、一般に、無酸素銅(C1020)において、完全に再結晶又は焼きなましをして、引張強度が最も低くなる熱処理を行った場合(O材)の硬さは51〜59Hvであることが知られており(「伸銅品データブック(第2版)」日本伸銅協会編 平成21年3月31日第2版発行 61頁)、硬さの好ましい範囲の下限値は、その値に基づくものである。
なお、硬さの調節は、圧延などの冷間加工により行い、冷間加工の加工率は30%以下程度に抑えることで、硬さの好ましい範囲の上限値を100Hv以下とすることができ、硬さが51〜100Hvの銅材料が簡便に得られる。
前述の通り、冷間加工は硬さの調節のために実施する。加工率0%、すなわち完全に焼きなまされた状態(O材)での硬さが51〜59Hvであり、加工率を高くすると徐々に硬さが向上して、加工率30%で100Hvに到達する。加工率が高すぎると100Hvを超え、前述の問題が生じる。
熱間押出直後に冷却され、必要に応じて冷間圧延を行い製造された材料、好ましくは平板状の材料は、旋盤加工等の任意の機械加工等によりターゲット形状まで加工され、スパッタリングに用いられる。
以下に、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す純度を有する材料No.1〜8の直径300mm×長さ800mmの鋳塊を作製し、熱間押出用のビレットとした。前記ビレットを約1000℃に加熱した後押出を行い、続いて押出材を直ちに冷却速度約100℃/秒で20秒間水冷して厚さ22mm×幅200mmの素板を得た。次いで前記素板を冷間にて圧延し、厚さ20mm×幅200mm×長さ約12mの平板(押出)のスパッタリングターゲット用銅材料No.1−1〜1−8を製造した。なお、No.1−1〜1−5は本発明例、No.1−6〜1−8は銅の純度が本発明例より低い比較例である。
また、従来例として、製造プロセスに熱間圧延を用いて平板のスパッタリングターゲット用銅材料No.1−9〜1−11を作製した。すなわち、材料No.1、3、5の純度の厚さ150mm×幅220mm×長さ1800mmの鋳塊を作製し、熱間圧延用のケークとした。前記ケークを約1000℃に加熱後に熱間圧延を行って厚さ23mm×幅220mmの素板を作製した。熱間圧延時の材料冷却は最終パス後に、材料を水冷ゾーンを通過させることで行った。次いで得られた素板の表面を面削した後、冷間圧延で厚さ20mm×幅220mmとし、さらにエッジ部分を切断除去することで厚さ20mm×幅200mm×長さ約12mの平板(圧延)のスパッタリングターゲット用銅材料No.1−9〜1−11を製造した。
このようにして得られたNo.1−1〜1−11の平板の銅材料21について、図2の模式的な斜視図に基づいた説明図に示す押出時の長手方向先端部(長手先端)における幅方向の中央部(22)および両サイド部(端1(23)、端2(24))、押出時の長手方向中央部(長手中央)における幅方向の中央部(25)および両サイド部(端1(26)、端2(27))、押出時の長手方向後端部(長手後端)における幅方向の中央部(28)および両サイド部(端1(29)、端2(30))の合計9箇所について、結晶方位分布、結晶粒径、硬さを下記方法により調べた。また、図3の模式的な斜視図に基づいた説明図に示す押出時の長手方向先端部(長手先端)31、押出時の長手方向中央部(長手中央)32、押出時の長手方向後端部(長手後端)33の3箇所より直径6インチの円形の板を切り出し、下記の方法でスパッタリング特性を調査した。
[1]結晶方位分布
銅材料板における結晶方位は上述の各部位において、ターゲットとして使用される表面からX線を入射させ、各回折面からの強度を測定した。その中から主要の{111}、{200}、{220}及び{311}面各々の回折強度を比較し、上記式(1)の強度比(結晶配向度)を算出した。なお、X線照射の条件は、X線の種類CuKα1、管電圧40kV、管電流20mAとした。
[2]結晶粒径
銅材料板における結晶粒径は上述の各部位において、ターゲットとして使用される表面にてミクロ組織観察を行い、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。
[3]硬さ
銅材料板における硬さは、ターゲットとして使用される表面にてJIS Z 2244に準拠してマイクロビッカース硬さ試験機にて測定を行った。
[4]スパッタリング特性
得られた銅材料板から、図3に示す位置31、32、33にて直径φ6インチ(15.24cm)、厚さ8mmに切り出し、研磨を行ってスパッタリングターゲットを作成した。ターゲット面の粗さの影響を除外するため、粗さは全て最大粗さRaを0.5〜0.8μmに研磨して揃えた。上述のように作成したスパッタリングターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング装置にて、膜厚0.7mmの日本電気硝子社製OA−10ガラス基板にスパッタリングを実施し0.3μm膜厚の銅配線を作成した。スパッタリング条件はArガス圧力を0.4Pa、放電電力を12W/cmとした。その後真空中にて300℃、30minの熱処理を行った。熱処理後の銅配線の膜厚を10点測定して、最大膜厚および最小膜厚のレンジが±7%になったものを「良」、それ以上のバラつきが存在したものを「不良」とした。
結果を表2、3に示す。本発明例のNo.1−1〜1−5は何れの特性も満足している。比較例のNo.1−6〜1−8は、結晶配向度、結晶粒径が、材料の全域あるいは部分的に本発明の規定の範囲を外れており、スパッタリング特性はほとんどが「不良」となっている。従来例のNo.1−9〜1−11は熱間圧延での製造であり、結晶配向度は全ての例の全域において本発明の規定の範囲外となっている。また、結晶粒径は本発明の規定の範囲内であるが、材料幅方向では両端の結晶粒径は中央部に比べ小さめであり、また、長手方向において後端の方が結晶粒径が大きい傾向が見られるなど不均一である。硬さも、本発明例に比べて材料幅方向、長手方向に不均一となっている。これらにより従来例のスパッタリング特性は、ほとんどが「不良」となっている。
Figure 0004974197
Figure 0004974197
Figure 0004974197
(実施例2)
実施例1における純銅No.1からなるビレットを作製し、表4に示す熱間押出条件A〜Iで押出を行った。条件A〜Fは本発明例、条件G〜Iは比較例である。なお、加熱温度の調整は加熱炉の炉温設定により行った。また冷却速度は、水冷帯のシャワー量の変更により行った。得られた熱間押出材は、実施例1と同様に冷間圧延を行って厚さ20mm×幅200mm×長さ約12mの平板のスパッタリングターゲット用銅材料を製造した。また実施例1と同様、結晶方位分布、結晶粒径、硬さおよびスパッタリング特性を調査した。
結果を表5、6に示す。本発明例で製造された銅材料は何れも特性を満足している。比較例Gで製造された銅材料は、結晶配向度は本発明の規定の範囲内にあるが、結晶粒径は100μmを下回り、スパッタリング特性は部分的に不良となった。比較例Hで製造された銅材料は、結晶配向度は本発明の規定の範囲内にあるが、結晶粒径は200μmを上回り、スパッタリング特性は部分的に不良となった。比較例Iは加熱温度が高く加熱炉内で局部的な溶解が生じ押出を行えなかった。
Figure 0004974197
Figure 0004974197
Figure 0004974197
1 TFT素子
2 ガラス基板
3 走査線
4 ゲート電極
5 絶縁膜
6 アモルファスシリコン層
7 リンをドープしたアモルファスシリコン層
8、9 ソース−ドレイン電極
10 窒化シリコンの保護膜
11 スズドープ酸化インジウム膜
12 バリア層
21 平板の銅材料
22 長手先端の幅方向の中央部
23、24 長手先端の幅方向の両サイド部
25 長手中央の幅方向の中央部
26、27 長手中央の幅方向の両サイド部
28 長手後端の幅方向の中央部
29、30 長手後端の幅方向の両サイド部
31 長手先端部
32 長手中央部
33 長手後端部
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2009年8月28日に日本国で特許出願された特願2009−198982に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。

Claims (4)

  1. スパッタリングターゲット用銅材料を製造する方法であって、純度が99.99%以上である高純度銅の鋳塊を700〜1050℃で熱間押出し、押し出された材料を熱間押出直後に50℃/秒以上の冷却速度で冷却する工程を含み、
    前記の高純度銅からなり、スパッタリングを行う面における{111}面、{200}面、{220}面、および{311}面の各々のX線回折のピーク強度、I{111}、I{200}、I{220}、およびI{311}が下記式(1)を満たし、結晶粒の粒径が100〜200μmであるスパッタリングターゲット用銅材料を得ることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
    Figure 0004974197
  2. 前記冷却の後に、加工率30%以下で冷間圧延すること特徴とする、請求項1記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
  3. 純度が99.99%以上である高純度銅の鋳塊に700〜1050℃で熱間押出を施し、該熱間押出の直後に50℃/秒以上の冷却速度で冷却して得られた、純度が99.99%以上で、スパッタリングを行う面における{111}面、{200}面、{220}面、および{311}面の各々のX線回折のピーク強度、I{111}、I{200}、I{220}、およびI{311}が下記式(1)を満たし、結晶粒の粒径が100〜200μmであり、硬さが51〜100Hvであることを特徴とする、スパッタリングターゲット用銅材料。
    Figure 0004974197
  4. 前記冷却の後に、加工率30%以下で冷間圧延して得られたこと特徴とする、請求項3記載のスパッタリングターゲット用銅材料。
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