JP5520746B2 - スパッタリングターゲット用銅材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
TFT素子1において、ガラス基板2の上には、走査線3と、走査線3の一部がTFT素子1のON/OFF制御として機能を有するゲート電極4とがある。更に、窒化シリコンの絶縁膜5が、ゲート電極4を覆うように形成され、絶縁膜5の上には、順次、アモルファスシリコン(以下a−Siと記載)層6、P(リン)をドープしたa−Si層7、及びソース−ドレイン電極8、9が形成される。更に、それらを覆うように、窒化シリコンの保護膜10が形成される。また、画素領域には、保護膜10の上にスズドープ酸化インジウム(以下ITOと記載)膜11が配置される。
特許文献7には、表面に{110}面を向いた結晶の体積を80%以上にし、それらの結晶を表面から中心に向かって均一に分布させることにより、銅原子の飛び出しを表面から垂直にさせ、アスペクト比の大きな溝の深奥部まで製膜可能にすることが記載されている。
特許文献8には、99.999%以上の純度の銅において、平均結晶粒径を10〜30μmに制御し、{111}、{200}、{220}、及び{311}の各々の配向を有する粒子の量を50%よりも少なくして、ランダムな配向を有することで、配線膜の均一性及び最小の粒子発生を達成できることが記載されている。
本発明は、この知見に基づきなされたものである。
さらに、前記比Lt/Lgが、0.5≧Lt/Lg≧0.3を満たすことが好ましい。
さらに、スパッタリング面における平均結晶粒径が、100μm以上180μm以下であることが好ましい。
さらに、熱間圧延前の加熱温度を800〜950℃とすることが好ましい。
また、前記最終パスの後、60秒以内に、冷却速度70℃/秒以上となるように水冷をすることが好ましい。
また、前記冷間加工において、圧延率の総和が30%以下である冷間圧延を行ってもよい。
本発明者らは、鋭意研究の結果、スパッタリング面におけるミクロ組織の結晶粒界の平均長さと双晶境界の平均長さとの比を特定の範囲に抑えることにより、スパッタリング特性を向上させ良好な薄膜を得られることを見出した。
スパッタリングターゲット用の銅材料としては、99.99%以上の純度(質量ベース)を有することが必要である。純銅の鋳塊を製造する際の原料である電気銅にはある程度の不純物が含有されており、純銅の鋳塊にもそれらが現れる。不純物は、特に、B、Al、Si、P、As、Sb、及びBiの含有量を各々5ppm以下に抑制することが望ましい。これらの元素は、Si半導体のドーパントとして利用される元素であり、半導体特性に悪影響を及ぼす可能性があるためである。より好ましい純度は、99.995%以上である。
スパッタリングターゲット用の銅材料は、組織の均一さが求められるため、鋳造凝固による不均一な組織を熱間加工により破壊して再結晶組織を有することが望ましい。
さらに、前記比Lt/Lgが、0.5≧Lt/Lg≧0.3を満たすことが好ましい。比Lt/Lgをこの範囲にて制御することにより、より均一な膜が得やすい効果がある。また、スパッタリング後のスパッタリングターゲット表面を観察した結果、図3のSEM写真に示すように、双晶境界を境に粒子の飛び出す向きが異なる為に、スパッタリング後の表面凹凸が異なることが認められた。
再結晶組織の平均結晶粒径が小さい場合は、結晶粒界の総長さが長くなる。結晶粒界は、原子配列が乱れている部分であり、スパッタリング時の元素の飛び易さが粒内とは異なり、形成する膜が不均一になり易い。また、平均結晶粒径が大きい場合は、ターゲット物質を飛び立たせるために高いエネルギーが必要であり、ターゲット原子が多く固まって飛び出して粗大クラスタの形成が増え、形成する膜が不均一になり易い。本発明において平均結晶粒径は50〜200μmであり、好ましくは100〜180μmである。
すなわち、平均結晶粒径を50μm以上とすることにより、形成する膜が均一になり、さらに100μm以上とすることにより、膜の均一性も良く、前記比Lg/Ltの制御も良好となって好ましい。また、200μm以下とすることにより、粗大クラスタの形成を抑制することができ、さらに180μ以下とすることにより、より粗大クラスタ形成を抑制できる。
本発明のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、スパッタリング面及び内部において結晶粒界の平均長さ、双晶境界の平均長さ、及び平均結晶粒径を制御するためには、製造プロセスにおいて次に示すような点に留意することが好ましい。すなわち、本発明のスパッタリングターゲット用銅材料の好ましい製造方法では、溶解鋳造の後、熱間加工、冷間加工、及び熱処理を行う。また、熱間加工と冷間加工の間に面削の工程を含んでも良い。また、冷間加工と熱処理を繰り返してもよい。本明細書において、熱間加工は、熱間圧延、熱間押出等であり、溶解鋳造プロセスで得られた鋳塊を高温にて加工するプロセスを指す。
従って、熱間加工、冷間加工、及び熱処理の各プロセスにおいて、以下に示すことに留意して製造することにより、前述の金属組織の規定を満たす本発明のスパッタリングターゲット用銅材料が作製可能になる。さらに、得られた複数の短冊状のスパッタリングターゲット用銅材料を、大型のディスプレイ用として組み合わせて使用することにより、スパッタリング膜を均一に形成し易くなるという効果が得られる。
熱間加工では、加工中に動的再結晶が生じ、形成した再結晶粒は温度がまだ高温である間は粒成長する。スパッタリングターゲットとして使用する銅材料においては、結晶粒と双晶の関係はほぼ熱間圧延で決定するために、この工程を制御することが必要である。
さらに、熱間圧延前の加熱温度を800〜950℃とすることが好ましい。この範囲で実施することにより、動的再結晶粒の制御が容易となり、均一な結晶粒を得ることができる。
熱間加工後は、冷間圧延及び焼鈍を行って調質をしてもよい。冷間加工の圧延率の総和は30%以下にすることが望ましい。下限は0%であり、0%は圧延しないことを意味する。冷間加工の圧延率の総和が30%を超えると、内部の歪量が多くなり、スプラッシュ等を発生し易くなりスパッタリング特性を低下させる。
表1に示す純度(mass%)で、板厚150mm、幅220mm、長さ2100mmのサイズの鋳塊を作製した。得られた鋳塊を、920℃にて加熱した後、熱間圧延を行い、厚さ23mm、幅220mm、長さ約13mとした。熱間圧延においては、各パスの圧延率を5〜30%にし、かつ、最終パスの圧延率を20%として複数回のパスを行うことにより前述の厚さとなるように、パス回数と搬送ロールの搬送速度を変化させた。
熱間圧延の最終パス直後から30秒の後、シャワーが搭載された水冷ゾーンを通過させ、冷却速度を75℃/秒として水冷を行った。その後、表面の酸化膜を面削して厚さを22mmにした後、冷間圧延で厚さ20mm×幅220mmとし、さらにエッジ部分を切断除去することで厚さ20mm×幅200mm×長さ約12mの平板状に、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
熱間圧延前の加熱温度を870℃にしたことと、最終パスの圧延率を30%としたことと、熱間圧延の最終パス直後から20秒の後、冷却速度を80℃/秒として水冷を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
純度を表1に示した値としたことと、熱間圧延前の加熱温度を800℃にしたことと、熱間圧延の最終パス直後から30秒の後、冷却速度を100℃/秒として水冷を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
純度を表1に示した値としたことと、熱間圧延前の加熱温度を900℃にしたことと、熱間圧延において、各パスの圧延率を5〜15%としたことと、最終パスの圧延率を15%としたことと、熱間圧延の最終パス直後から50秒の後、冷却速度を60℃/秒として水冷を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
純度を表1に示した値としたことと、熱間圧延前の加熱温度を890℃にしたことと、熱間圧延において、各パスの圧延率を5〜20%としたことと、熱間圧延の最終パス直後から40秒の後、冷却速度を60℃/秒として水冷を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
純度を表1に示した値としたことと、熱間圧延前の加熱温度を720℃にしたことと、熱間圧延の最終パス直後から20秒の後、冷却速度を85℃/秒として水冷を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
熱間圧延前の加熱温度を950℃にしたことと、熱間圧延の最終パス直後から30秒の後、冷却速度を55℃/秒として水冷を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
純度を表1に示した値としたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
純度を表1に示した値としたことと、熱間圧延における最終パスの圧延率を35%にしたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
熱間圧延における最終パスの圧延率を7%にしたことと、冷却速度を40℃/秒としたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
水冷を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
熱間圧延において、圧延率が30%を超え40%のパスを含めることにより各パスの圧延率を5〜40%としたことと、最終パスの圧延率を15%としたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
熱間圧延前の加熱温度を600℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例のスパッタリングターゲット用銅材料を作製した。
得られたスパッタリングターゲット用銅材料の表面を研磨後、2mm2の試料面積に対して、1結晶粒当たり5点以上の方位測定が可能なようにスキャンステップを調整してEBSD測定を行った。各結晶粒の方位差を計算し、隣接する結晶の方位差が60°である双晶境界の平均長さLt、及び隣接する結晶の方位差が15°以上である結晶粒界の平均長さLgを測定した。3視野の測定を行い、それぞれの平均値から比Lt/Lgを算出した。
得られたスパッタリングターゲット用銅材料の表面にて、光学顕微鏡を使用してミクロ組織観察を行い、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。
得られたスパッタリングターゲット用銅材料から、直径15.24cm(φ6インチ)、厚さ6mmに切り出し、研磨を行ってスパッタリングターゲットを作製した。スパッタリング面の粗さの影響を除外するため、粗さは全て最大粗さRaを0.5μm〜0.8μmに研磨して揃えた。
得られたスパッタリングターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング装置を使用して、膜厚0.7mmのガラス基板(日本電気硝子社製、OA−10)にスパッタリングを実施し、膜厚0.3μmの銅配線膜を製膜した。スパッタリング条件は、Arガス圧力を0.4Pa、放電電力を300Wとした。その後、真空中にて300℃、30minの熱処理を行った。熱処理後の銅配線膜の膜厚を10点測定した。同じスパッタリングターゲット用銅材料から切り出したターゲット材9枚で得られた総データ90点において、最大膜厚及び最小膜厚のレンジが±7%になった場合を「良」とし、±7%よりも大きなバラつきが存在した場合を「不良」とした。
実施例1〜7及び比較例1〜6について、上記[1]〜[3]の結果を表1に示す。
これらに対して、比較例1では不純物量が多く、比較例2、3では比Lt/Lgの値が規定値より外れ、比較例4、5では平均結晶粒径が規定値から外れ、また、比較例6では未再結晶粒が混在する組織となったため、それぞれスパッタリング特性が不良となった。
2 ガラス基板
3 走査線
4 ゲート電極
5 絶縁膜
6 アモルファスシリコン(a−Si)層
7 リン(P)をドープしたアモルファスシリコン(a−Si)層
8、9 ソース−ドレイン電極
10 窒化シリコンの保護膜
11 スズドープ酸化インジウム(ITO)膜
12 バリア層
13 結晶粒
14 結晶粒界
15 双晶領域
16 双晶境界(Σ3粒界)
Claims (7)
- 純度が99.99%以上である高純度銅からなり、
スパッタリング面において、隣接する結晶の方位差が15°以上である結晶粒界の平均長さLgに対し、隣接する結晶の方位差が60°である双晶境界の平均長さLtの比Lt/Lgが、0.6≧Lt/Lg≧0.2を満たし、
スパッタリング面における平均結晶粒径が、50μm以上200μm以下であるスパッタリングターゲット用銅材料。 - 前記比Lt/Lgが、0.5≧Lt/Lg≧0.3を満たす請求項1に記載のスパッタリングターゲット用銅材料。
- スパッタリング面における平均結晶粒径が、100μm以上180μm以下である請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット用銅材料。
- 純度が99.99%以上である高純度銅を溶解鋳造の後、熱間加工、冷間加工、及び熱処理を行うことにより、請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット用銅材料を製造する方法であり、
前記熱間加工において熱間圧延前の加熱温度を700〜1000℃とし、各パスの圧延率を5〜30%とし、最終パスの圧延率を10〜25%とし、該最終パスの後、60秒以内に、冷却速度50℃/秒以上となるように水冷をするスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。 - 熱間圧延前の加熱温度を800〜950℃とする請求項4に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
- 前記最終パスの後、60秒以内に、冷却速度70℃/秒以上となるように水冷をする請求項4又は5に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
- 前記冷間加工において、圧延率の総和が30%以下である冷間圧延を行う請求項4から6のいずれか1項に記載のスパッタリングターゲット用銅材料の製造方法。
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