以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る乗用型田植機の全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係る乗用型田植機の全体平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係る乗用型田植機は、左右一対の操向操作および駆動自在な前車輪1,1と、左右一対の駆動自在な後車輪2,2と、車体後部に設けた運転座席3およびこの運転座席3の前方に設けたステアリングハンドル4が装備された運転部5と、車体前端部に設けたエンジン6が装備された原動部7とを有した自走車を備え、この自走車の車体フレーム8の後部にリンク機構9を介して連結された苗植付け装置10を備えている。前記自走車は、前記運転座席4の後側に設けた肥料タンク21が装備された施肥装置20を備えている。
本実施例の乗用型田植機は、複数条の苗植え作業と施肥作業とを行う。
すなわち、前記自走車は、前記エンジン6の出力を前記前車輪1と前記後車輪2とに伝達する他、回転軸11を介して苗植付け装置10に伝達する。
前記リンク機構9は、油圧シリンダ9aによって車体フレーム8に対して上下に揺動操作され、これによって苗植付け装置10を、植え付け機体の下部に設けてある接地フロート12が田面に接地した下降作業状態と、前記接地フロート12が田面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。
苗植付け装置10を下降作業状態にして自走車を走行させると、苗植付け装置10は、植え付け機体の後端部に植え付け機体横方向に並べて設けてある苗植付け機構13によって苗植え付けを行う。すなわち、植付け機体の前部に設けてある苗載せ台14が、苗植付け機構13の苗植え運動に連動させて植付け機体横方向に往復移送され、各苗植付け機構13が、苗載せ台14に載置されたマット状苗からブロック苗を切断して取り出し、取り出したブロック苗を下降搬送して前記接地フロート12によって整地された田面に植付ける。
前記施肥装置20は、前記肥料タンク21の下部に設けた肥料繰り出し機構(図示せず)によって肥料タンク20から粒状の肥料を繰り出し、この繰り出し肥料を、電動ブロワ22によって供給される搬送風によって複数本の施肥ホース23に分配供給する。各施肥ホース23は、苗植え付け装置10に植え付け機体横方向に並べて設けてある複数の施肥器24に各別に連通している。各施肥器24は、前記接地フロート12に支持されており、対応する苗植付け機構13による植え付け苗の横側で田面に溝を形成し、形成した溝に施肥ホース23からの肥料を供給する。
図1,2,3に示すように、前記自走車は、車体前部の両横側方に設けた予備苗収容装置A,Bを備えている。各予備苗収容装置A,Bは、原動部7の横側方に位置している。
図4は、車体左横側方に位置する予備苗収容装置Aの側面図である。この図と図3とに示すように、車体左横側方に位置する予備苗収容装置Aは、前後一対の苗載せ台支柱31,34を有した支持体30と、この支持体30に支持された上下二段の予備苗載せ台49,50とを備えて構成してある。
前記上下二段の予備苗載せ台49,50のうちの下段予備苗載せ台50は、前記支持体30に車体前後向きの揺動軸芯P(図3参照)まわりに起伏揺動操作自在に支持され、かつ支持体30が備える一対のガイドレール38,38(図10参照)に沿わせて車体前後方向にスライド操作自在に支持されている。
すなわち、図4に示すように、前記支持体30は、前記前後一対の苗載せ台支柱31,34を有した支柱枠体32を備え、前記前後一対の苗載せ台支柱31,34のうちの前側に位置する苗載せ台支柱31(以下、前苗載せ台支柱31と呼称する。)の下支柱部90と前記前後一対の苗載せ台支柱31,34のうちの後側の苗載せ台支柱34(以下、後苗載せ台支柱34と呼称する。)とに支持された揺動枠体35を備えて構成してある。
前記支柱枠体32は、前記前後一対の苗載せ台支柱31,34を備える他、前記前苗載せ台支柱31の前記下支柱部90における上端部と、前記後苗載せ台支柱34の上端部とを連結する車体前後向きの連結杆33を備えている。
図3,4に示すように、前記前苗載せ台支柱31の前記下支柱部90は、車体フレーム8を構成するエンジン搭載フレーム8aから車体横外向きに延出した車体横向きの連結部分90aと、この連結部分90aの延出端部から車体上方向きに延出し、延出端側に前記連結杆33が連結している車体上下向き部分90bとを備えている。前記後苗載せ台支柱34は、畦と運転部5との間を移動する通路を原動部7の横側に形成している乗降ステップSの裏面側に連結されている。
前記支持体30は、前記支柱枠体32と前記揺動枠体35とが自走車の前端箇所F(起立格納状態での畦超えアーム87の前端箇所)よりも後方で位置するよう配置されており、支持体30の車体前方への突出を無くしている。この支持体30は、前記支柱枠体32と前記揺動枠体35とが運転座席3の前端3aよりも前方に位置するよう配置されており、運転部5に対する乗り降りを支持体30による障害が無い状態で行わせる。
図10,11,12に示すように、前記揺動枠体35は、前記前苗載せ台支柱31の前記下支柱部90における上端部と、前記後苗載せ台支柱34の上端部とに一本の連結軸36を介して枢支された屈曲円形鋼管材で成る揺動枠本体37を備えており、前記連結軸36が備える前記揺動軸芯Pまわりに支柱枠体32に対して上下揺動する。
前記揺動枠体35は、前記揺動枠本体37を備える他、この揺動枠本体37の前後一対の横向き枠部を連結する連結杆に兼用した前記一対の車体前後向きのガイドレール38,38と、前記支持枠本体37の前後向き枠部37aと前記ガイドレール38とにわたって取り付けた前後一対の連結板39,39とを備えて構成してある。前記連結軸36は、前記前後一対の連結板39,39に支持されている。
図9,10,11に示すように、前記揺動枠体35は、前記揺動枠本体37の前側の横向き枠部に予備苗載せ台横方向に並べて設けた二個の支持ローラ40,40と、前記揺動枠本体37の後側の横向き枠部に予備苗載せ台横方向に並べて設けた二個の支持ローラ41,41とを、前記下段予備苗載せ台50の裏面側のレール部50bに当接させることにより、下段予備苗載せ台50の裏面側に下段予備苗載せ台前後方向での中間部で予備苗載せ台横方向に並べて設けた二個の案内ローラ42を前記ガイドレール38の案内面に当接させることにより、下段予備苗載せ台50を受け止め支持する。
揺動枠体35が備える前記各支持ローラ40,41は、ローラ支軸43の苗載せ台横向きの軸芯まわりに転動して予備苗載せ台50を前記ガイドレール38に沿わせてスライド移動させる。予備苗載せ台50が備える前記案内ローラ42は、ローラ支軸44の苗載せ台横向きの軸芯まわりに転動して予備苗載せ台50を前記ガイドレール38に沿わせてスライド移動させる。
つまり、揺動枠体35は、揺動枠体35が備える四個の支持ローラ40,41と下段予備苗載せ台50が備える二個の案内ローラ42,42とを介して下段予備苗載せ台50を摺動自在に支持しており、下段予備苗載せ台50の全体が、下段予備苗載せ台50の荷重を四個の支持ローラ40,41と二個の案内ローラ42とを介して揺動枠体35に支持させながら、ガイドレール38と案内ローラ42とによって案内されて揺動枠体35に対して車体前後方向に摺動する。
揺動枠体35がこれの前側で下段予備苗載せ台50に支持作用する支持ローラ40と、後側で下段予備苗載せ台50に支持作用する支持ローラ41とを備え、下段予備苗載せ台50が前記前側の支持ローラ40と前記後側の支持ローラ41との間で下段予備苗載せ台50と共に移動する案内ローラ42を備えている。これにより、下段予備苗載せ台50に長い摺動ストロークを備えさせても、下段予備苗載せ台50は、摺動ストロークが長いにもかかわらず、上下にガタ付きにくいよう支持された状態で摺動する。
前記揺動枠体35は、前記揺動枠本体37の前後向き枠部37aに予備苗載せ台前後方向に並べて設けた二個の外れ止めローラ45,45を下段予備苗載せ台50の横側壁部51の上面52に当接させることにより、予備苗載せ台50が揺動枠体35から上方に外れることを防止する。図9,10に示すように、予備苗載せ台50は、予備苗載せ台50の裏面側に設けた外れ止めレール46が揺動枠体35の後側の支持ローラ41に係合していることによっても、揺動枠体35から上方に外れることも前後に外れることも防止された状態になっている。
図4に示すように、下段予備苗載せ台50は、下段予備苗載せ台50の前側半分を構成する一つの分割予備苗載せ台53と、下段予備苗載せ台50の後側半分を構成する一つの分割予備苗載せ台54とを備えて構成してある。
図17は、分割予備苗載せ台連結構造の平面図である。図18は、分割予備苗載せ台53,54の平面図である。図19は、分割予備苗載せ台53,54の裏面図である。図20は、分割予備苗載せ台53,54の側面図である。図21は、分割予備苗載せ台53,54の正面図である。図22は、分割予備苗載せ台53,54の後面図である。図24は、図19のXXIV−XXIV断面矢視図である。これらの図に示すように、前記二つの分割予備苗載せ台53,54は、樹脂材の成型によって作製してある。前記二つの分割予備苗載せ台53,54は、同じ構造を備えている。二つの分割予備苗載せ台53,54は、取っ手57が位置する側とは反対側の端部の裏面側に分割予備苗載せ台横幅方向に並べて設けた板金製の連結体55,56を備えている。
上段予備苗載せ台50は、二つの分割予備苗載せ台53,54がそれぞれの連結体55,56を対向させ合う状態で車体前後方向に並び、分割予備苗載せ台53,54の両横側で対応する連結体55,56が連結ピン57を介して連結されることによって構成されている。連結ピン57は、上段予備苗載せ台50の前端側に位置する分割予備苗載せ台53(以下、前分割予備苗載せ台53と呼称する。)の連結体55と、上段予備苗載せ台50の後端側に位置する分割予備苗載せ台54(以下、後分割予備苗載せ台54と呼称する。)の連結体56とを相対回転自在に連結しており、上段予備苗載せ台50は、前分割予備苗載せ台53が連結ピン57が備える予備苗載せ台横向きの屈伸軸芯Xまわりに揺動操作されることにより、図7に二点鎖線で示す如く前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが車体前後方向に並んだ伸展状態と、図7に実線で示す如く前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが重なり合った短縮状態とに伸縮する。
図3は、前記予備苗収容装置Aの使用状態での正面図である。図4は、前記予備苗収容装置Aの使用状態(苗積み込み状態)での側面図である。図5は、前記予備苗収容装置Aの使用状態(作業走行状態)での側面図である。図6は、前記予備苗収容装置Aの使用状態(苗植付け装置に対する苗補給状態)での側面図である。図11は、前記揺動枠体35の下降使用状態での正面図である。これらの図に示すように、支持体30の揺動枠体35を前記揺動軸芯Pまわりに下降揺動操作し、揺動枠本体37の前後向き枠部37aが前苗載せ台支柱31と後苗載せ台支柱34との上端部に当接すると、揺動枠体35が支柱枠体32から車体横外側向きに延出した下降使用姿勢になる。揺動枠体35が揺動枠本体37と前苗載せ台支柱31および後苗載せ台支柱34との当接によって下降使用姿勢に保持された状態になると、下段予備苗載せ台50の前分割予備苗載せ台53を前記屈伸軸芯Xまわりに車体前方側に揺動操作し、前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが車体前後方向に並んだ状態になると、下段予備苗載せ台50が倒伏使用状態になる。
すなわち、下段予備苗載せ台50は、前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが前記揺動軸芯Pまわりに倒伏し、前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54との苗載置面53a,54aが車体横方向に沿った車体横向き姿勢で、車体前後方向に並んで連なった伸展使用状態になる。伸展使用状態の予備苗載せ台50は、前分割予備苗載せ台53の苗載置面53aと後分割予備苗載せ台54の苗載置面54aとによって苗載置面を形成する。
つまり、下段予備苗載せ台50は、二枚の予備マット状苗を各予備マット状苗の縦方向(長手方向)が車体前後向きになる載置姿勢で車体前後方向に並べて載置して収容する。
図4に示すように、伸展使用状態での下段予備苗載せ台50の前端部に下向きに突出した状態で備えさせるよう前分割予備苗載せ台53の前端部に一体成形した樹脂製の前記取っ手57、あるいは伸展使用状態での下段予備苗載せ台50の後端部に下向きに突出した状態で備えさせるよう後分割予備苗載せ台54の後端部に一体形成した樹脂製の前記取っ手57を使用して下段予備苗載せ台50を車体前方側にスライド操作する。揺動枠体35の後端側に設けたステー60に揺動アーム61を介して揺動自在に支持された位置決めローラ62(図10,15参照)が、前記揺動アーム61に連結された位置決めバネ63による位置決めローラ62の揺動付勢により、後分割予備苗載せ台54に予備苗載せ台前後方向に並べて設けある三つの位置決め凹部64,65,66のうちの前位置決め凹部64に係入すると、下段予備苗載せ台が苗補給状態になる。
すなわち、下段予備苗載せ台50は、下段予備苗載せ台50の前端側が自走車の前記前端箇所Fから車体前方に大突出長さL1で突出した前スライド位置になり、自走車を前記前端箇所Fが畦に対向する状態で畦際に駐車されることにより、下段予備苗載せ台50の前端側を畦に近づけて畦から下段予備苗載せ台50への苗補給を容易に行わせる。下段予備苗載せ台50は、この前スライド位置において、下段予備苗載せ台50の後端が運転座席3の前端3aよりも車体前方側に位置した状態になり、下段予備苗載せ台50の後側に運転部5に対する乗降用通路を確保して運転部50に対する乗り降りを行いやすくする。
この場合、前分割予備苗載せ台53が、揺動枠体35の前端側に位置する前記支持ローラ40による押し上げ操作によって屈伸軸芯Xまわりに上昇揺動する。これにより、下段予備苗載せ台50は、前端側部分(前分割予備苗載せ台53によって構成される部分)が後端側部分(後分割予備苗載せ台54によって構成される部分)に対して前上がり傾斜した状態になる。
図5に示すように、下段予備苗載せ台50を車体前後方向にスライド操作し、前記位置決めローラ62が前記三つの位置決め凹部64,65,66のうちの中位置決め凹部65に係入すると、下段予備苗載せ台50が作業走行状態になる。
すなわち、下段予備苗載せ台50は、下段予備苗載せ台50の前端側が自走車の前記前端箇所Fから車体前方に小突出長さL2で突出し、下段予備苗載せ台50の後端が運転座席3の横側方に位置した中スライド位置になる。これにより、予備苗収容装置Aは、下段予備苗載せ台50の車体前方への突出長さを下段予備苗載せ台50が前スライド位置にされた場合のそれよりも短くしながら、下段予備苗載せ台50および予備マット状苗の重量が極力車体前方側に掛かる状態で走行させる。
図6に示すように、下段予備苗載せ台50を車体後方側にスライド操作し、前記位置決めローラ62が前記三つの位置決め凹部64,65,66のうちの後位置決め凹部66に係入すると、下段予備苗載せ台50は、作業走行と、苗植え付け装置10に対する苗補給との状態になる。
すなわち、下段予備苗載せ台50は、下段予備苗載せ台50の前端50a(前分割予備苗載せ台53の前端)が車体側面視で自走車の前記前端箇所Fと合致する箇所に位置し、下段予備苗載せ台50の後端が上昇非作業状態に上昇操作された苗植え付け装置10の苗載せ台14に寄った後スライド位置になる。これにより、予備苗収容装置Aは、下段予備苗載せ台50を前方視界や走行の障害になりにくいように車体前方に突出させず、かつ下段予備苗載せ台50と苗載せ台14との間隔を小にして下段予備苗載せ台50から苗載せ台14へのマット状苗の持ち運びを容易にする。
下段予備苗載せ台50を前スライド位置と中スライド位置と後スライド位置とに位置させた場合、揺動枠体35の後端側に設けたロックレバー80(図10参照)により、下段予備苗載せ台50を走行時や制動時に振動や慣性などによって前スライド位置、中スライド位置、後スライド位置からずれ動かないように各位置に固定する。
すなわち、図10,14に示すように、前記ロックレバー80は、揺動枠本体37の後端側に設けたステー81に支軸82を介して支持されており、前記支軸82の軸芯まわりに下降ロック位置ONと上昇解除位置OFFとに揺動操作できる。
図14(b)は、ロックレバー80のロック状態での後面図である。この図に示すように、ロックレバー80は、下降ロック位置ONに操作されると、下段予備苗載せ台50を前スライド位置あるいは中スライド位置あるいは後スライド位置にロックする。すなわち、ロックレバー80の先端部80aが後分割予備苗載せ台54に設けてあるロック凹部83に入り込んで後分割予備苗載せ台50に係合する。ロックレバー80に連結されているスプリング84が、ロックレバー80の下降揺動によってロックレバー80を下降ロック位置ONに付勢する状態に切り換わって前記先端部80aをロック凹部83に入り込んだ状態に保持する。
図14(a)は、ロックレバー80のロック解除状態での後面図である。この図に示すように、ロックレバー80は、上昇解除位置OFFに操作されると、前記先端部80aがロック凹部83から抜け外れて下段予備苗載せ台50のロックを解除する。このとき、スプリング84がロックレバー80の上昇揺動によってロックレバー80を上昇解除位置OFFに付勢する状態に切り換わって先端部80aをロック凹部83から外れた位置に保持する。
図7は、予備苗収容装置Aの下段予備苗載せ台短縮状態での側面図である。図8は、前記予備苗収容装置Aの格納状態での正面図である。この図に示すように、下段予備苗載せ台50の前分割予備苗載せ台53を前記屈伸軸芯Xまわりに車体後方側に揺動操作する。このとき、前分割予備苗載せ台53が前記外れ止めローラ45から車体前方側に外れて屈伸軸芯Xまわりに揺動するように下段予備苗載せ台50を車体前方側にスライド操作しておく。前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが重なり合った状態になると、支持体30の揺動枠体35を前記揺動軸芯Pまわりに上昇揺動操作する。前記後苗載せ台支柱34に揺動自在に支持されているロックアーム70(図13参照)が、ロックスプリング71によるロックアーム70の上昇付勢により、前記連結板39に設けてある位置決め凹部72に係入すると、揺動枠体32が支柱枠体32から車体上方向きに延出した上昇格納姿勢になる。揺動枠体32が前記ロックアーム70による突っ張り支持によって上昇格納姿勢に保持された状態になると、下段予備苗載せ台50が起立格納状態になる。
すなわち、予備苗載せ台50は、前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが、両分割予備苗載せ台53,54の苗載置面53a,54aどうしを対向させた状態で揺動軸芯Pまわりに起立して、下段予備苗載せ台50の車体前後方向での長さが下段予備苗載せ台50の伸展使用状態でのそれよりも短縮し、かつ両分割予備苗載せ台53,54の苗載置面53a,54aに直交する方向に重なり合って並んだ短縮格納状態になる。下段予備苗載せ台50は、さらに、前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが、両分割予備苗載せ台53,54の苗載置面53a,54aを車体上方側ほど車体横外側に位置する傾斜面にした車体上下向き姿勢になって使用状態での車体横向き姿勢の場合よりも車体内側に位置し、かつ前分割予備苗載せ台53と後分割予備苗載せ台54とが自走車の前記前端箇所Fよりも車体後方側で、かつ運転座席3の前端3aよりも車体前方側に位置した起立格納状態になる。これにより、予備苗収容装置Aは、下段予備苗載せ台50の車体横外側への突出が使用状態でのそれよりも小になり、下段予備苗載せ台50の車体前方への突出が無くなり、運転部5に対する乗り降りが下段予備苗載せ台50による障害を受けないで行えるようにして下段予備苗載せ台50を格納する。
下段予備苗載せ台50を短縮格納状態に切り換えた場合、揺動枠体35の後端側に設けた閉じ固定体86(図14,15参照)により、前分割予備苗載せ台53を走行時や制動時に振動や慣性などによって開かないように重ね状態に固定する。
すなわち、図14に示すように、閉じ固定体86は、前記ステー81に前記支軸82を介して支持されている。
図14(b)は、閉じ固定体86の作用状態での後面図である。この図に示すように、閉じ固体体86は、支軸82の軸芯まわりに上昇揺動操作されて閉じ固定体86の遊端側に位置するフック部86aを前分割予備苗載せ台53の横端部53bに係止操作されることにより、前分割予備苗載せ台53を後分割予備苗載せ台54に引き寄せ固定するよう作用状態になる。
図14(a)は、閉じ固定体86の解除状態での後面図である。この図に示すように、閉じ固定体86は、前記フック部86aを前記横端部53bから外し操作されることにより、解除状態になる。
図4,8に示すように、前記上下二段の予備苗載せ台49,50のうちの上段予備苗載せ台49は、前記前苗載せ台支柱31の上端側に車体前後向きの揺動軸芯Yまわりに起伏揺動操作自在に支持されている。
すなわち、図4,9,25に示すように、前記前苗載せ台支柱31は、前記下支柱部90を備える他、この下支柱部90の前記車体上下向き部分90bにおける上端側に連結部材91(図28参照)を介して下端部が連結された上支柱部92とを備えている。前苗載せ台支柱31は、前記上支柱部92の上端側に位置する車体前後向きの支持部分92aにより、この支持部分92aに設けた前後一対の支持板93,93と、前後一対の支持板93,93を挿通した連結軸94とを介して上段予備苗載せ台49の横一端側を回転自在に支持している。
つまり、上段予備苗載せ台49は、前記連結軸94が備える前記揺動軸芯Yまわりに揺動操作されることにより、下降使用状態と上昇格納状態と下降退避状態とに切り換わる。
図3は、上段予備苗載せ台49の下降使用状態での正面図である。この図に示すように、上段予備苗載せ台49を揺動軸芯Yまわりに車体横外側に揺動操作し、図26に示す如く上段予備苗載せ台49の横端部49aが前記支持板93の車体横外側端に当接すると、上段予備苗載せ台49は、上支柱部92の支持部92aから車体横外側向きに延出した倒伏状態の取り付け姿勢になり、車体上方向きになった苗載置面49bに一枚の予備マット状苗を苗縦方向(長手方向)が車体前後向きになる載置向きで載置して収容するよう下降使用状態になる。このとき、上段予備苗載せ台49は、前記上支柱部92が前記支持板93によって横端部49aに当接して支持作用することによって下降使用状態に保持される。
図8に実線で示す上段予備苗載せ台49は、上昇格納状態での上段予備苗載せ台49である。この図に示すように、上段予備苗載せ台49を揺動軸芯Yまわりに上昇揺動操作し、上段予備苗載せ台49の前記横端部49aが上支柱部92の支持部分92aの上方に位置すると、上段予備苗載せ台49は、上支柱部92から車体上方向きに延出した起立状態の取り付け姿勢になり、苗載置面49bが車体上下方向に沿った状態になることにより、下降使用状態の場合よりも車体内側に入り込んで収容されるよう上昇格納状態になる。このとき、上段予備苗載せ台49は、上支柱部92と上段予備苗載せ台49とにわたって設けたロック機構(図示せず)によって上昇格納状態に保持される。
図8に二点鎖線で示す上段予備苗載せ台49は、下降退避状態での上段予備苗載せ台49である。この図に示すように、上段予備苗載せ台49を揺動軸芯Yまわりに車体内側に下降揺動操作し、上段予備苗載せ台49の前記横端部49aが前記支持板93の車体内側端に当接すると、上段予備苗載せ台49は、上支柱部92の支持部92aから車体内側向きに延出した倒伏状態で、苗載置面49bがステアリングハンドル4の上方に位置した取り付け姿勢になり、下段予備苗載せ台50の揺動軸芯Pまわりの揺動に対する障害にならないよう車体内側に引退した下降退避状態なる。このとき、上段予備苗載せ台49は、前記上支柱部92の前記支持板93が横端部49aに当接して支持作用することによって下降退避状態に保持される。
図8,9に示すように、前記前苗載せ台支柱31の前記上支柱部92は、前記支持部分92aを備える他、前記下支柱部90の前記車体上下向き部分90bに前記連結部材91を介して連結している基部部分92bと、この基部部分92bと前記支持部分92aとを連結している車体上下向き部分92cとを備えて構成してある。
前記上支柱部92の前記車体上下向き部分92cは、この車体上下向き部分92cの全体が前記下支柱部90の前記車体上下向き部分90bよりも車体前方側に位置し、前記車体上下向き部分92cの下端部が下段予備苗載せ台50よりも低い配置高さに位置し、前記車体上下向き部分92cの上端部が下段予備苗載せ台50よりも高い配置高さに位置した構成を備えており、運転部5からの下段予備苗載せ台50の苗取り出しを容易にする。
すなわち、下段予備苗載せ台50に収容された予備マット状苗を運転部5から取り出す場合、下段予備苗載せ台50を構成する後分割予備苗載せ台54から行われる。このため、上支柱部92の車体上下向き部分92cは、倒伏使用状態にある下段予備苗載せ台50の後分割予備苗載せ台54が位置する部位と、上段予備苗載せ台49との間の空間を下段予備苗載せ台50の横方向内側と斜め後方内側とに向かって開口させている。
前記上支柱部92の前記車体上下向き部分92cは、前記下支柱部90の前記車体上下向き部分90bおよび、倒伏使用状態にある下段予備苗載せ台50よりも車体内側に位置する配置を備えており、下段予備苗載せ台50の車体内側部分が下支柱部90の車体上下向き部分90bよりも車体内側に入り込むことを可能し、かつ下段予備苗載せ台50のスライド移動を可能にする。
前記上支柱部92の前記車体上下向き部分92cは、図8に示す如く下段予備苗載せ台50の起立格納状態において、車体上下向き部分92cと、下段予備苗載せ台50の前分割予備苗載せ台53および後分割予備苗載せ台54とが車体前後方向に重合し合う配置を備えており、下段予備苗載せ台50を上支柱部92と纏まったコンパクトな状態にして格納させる。
図1に示すように、前記自走車は、後輪フェンダー75の後端部の上面側に設けた作業ステップ76を備えている。この作業ステップ76は、苗植え付け装置10の苗載せ台14に対する苗補給を行う際、足置き場に使用されることによって苗補給作業を行いやすくする。
図13に示すように、前記支持体30の前記揺動軸芯Pは、各分割予備苗載せ台53,54の車体横向き姿勢において、分割予備苗載せ台53,54の下方に、分割予備苗載せ台53,54の車体内側端58から車体横外側に離れて位置するよう配置されている。
これにより、下段予備苗載せ台50の起立格納の際、下段予備苗載せ台50の車体内側への入り込み量が大になり、起立格納状態での下段予備苗載せ台50の車体横外側への突出が少なくなる。また、各分割予備苗載せ台53,54において、分割予備苗載せ台53,54の車体内側部分が揺動軸芯Pよりも車体内側に向かって下降し、分割予備苗載せ台53,54の車体外側部分が車体内側部分による引き上げ操作を受けて上昇揺動する。これにより、下段予備苗載せ台50の車体内側部分は、下段予備苗載せ台50の起立格納操作を軽くする。
図2,3に示すように、前記車体左横側方に位置する予備苗収容装置Aの下段予備苗載せ台50は、後分割予備苗載せ台54の横端部に設けた苗すくい板ホルダー77を備えている。
図16に示すように、前記苗すくい板ホルダー77は、下段予備苗載せ台50の使用状態において下段予備苗載せ台50の車体横外側に位置する端部に位置するよう配置されており、運転部5において下段予備苗載せ台50から苗載せ台14への苗補給を行われる際、苗取扱いの障害にならない状態で行わせる。
前記苗すくい板ホルダー77は、苗すくい板ホルダー77の基端側に設けた連結軸部77aを備え、後分割予備苗載せ台54に固定された支持体78に前記連結軸部77aによって連結されている。
苗すくい板ホルダー77は、前記連結軸部77aの軸芯まわりに下降揺動操作され、後分割予備苗載せ台54の苗載置面54aに倒れ込んだ倒伏姿勢になると、スプリング79によって倒伏付勢されて苗すくい板を後分割予備苗載せ台54に押し付けるよう使用状態になる。
苗すくい板ホルダー77は、前記連結軸部77aの軸芯まわりに上昇揺動操作され、苗すくい板ホルダー77の端部77bが前記支持体79に当接すると、起立姿勢になるとともに前記スプリング79によって起立姿勢に保持されて苗載置面54aの上方を開放するよう非使用状態になる。
図18,19,23に示すように、前記下段予備苗載せ台50は、前記後分割予備苗載せ台54の裏面側に環状突条を設けて形成した予備取っ手59を備えている。前記予備取っ手59は、下段予備苗載せ台50の後端部に位置する前記後側の取っ手57よりも苗載せ台前端側に位置している。
つまり、下段予備苗載せ台50をスライド操作するのに、前記後側の取っ手57が後方側に移動して使用しにくい場合、前記予備取っ手59を使用することにより、下段予備苗載せ台50の後側の取っ手57よりも前端側に位置する部位に手を作用させることができてスライド操作が行いやすくなる。
図27に示すように、前記エンジン搭載フレーム8aに前記前苗載せ台支柱31を連結するよう設けた支持部材96と、前記乗降ステップSに前記後苗載せ台支柱34を連結するよう設けた支持部材97とに、複数の連結ボルト孔98,99を車体横方向に並べて設けてある。
図27(a)は、支持体30の使用取り付け状態での正面図である。この図に示すように、前苗載せ台支柱31が前記複数の連結ボルト孔98のうちの使用時用の連結ボルト孔98によって前記支持部材96に連結され、前記後苗載せ台支柱34が前記複数の連結ボルト孔99のうちの使用時用の連結ボルト孔99によって前記支持部材97に連結されることにより、支持体30は、車体横外側に位置変更して連結された使用取り付け状態となり、上段予備苗載せ台49と下段予備苗載せ台50とを作業用に車体横外側に張り出した状態で支持する。上段予備苗載せ台49および下段予備苗載せ台50を、これらと原動部7との間に乗降用通路を確保した状態で支持する。
図27(b)は、支持体30の搬送用取り付け状態での正面図である。この図に示すように、前苗載せ台支柱31が前記複数の連結ボルト孔98のうちの搬送時用の連結ボルト孔98によって前記支持部材96に連結され、前記後苗載せ台支柱34が前記複数の連結ボルト孔99のうちの搬送時用の連結ボルト孔99によって前記支持部材97に連結されることにより、支持体30は、車体内側に位置変更して連結された搬送用取り付け状態となり、上段予備苗載せ台49と下段予備苗載せ台50とを田植機搬送のために車体内側に寄せた状態で支持する。
図29は、別の実施形態を備えた予備苗収容装置Aの側面図である。この図に示すように、この予備苗収容装置Aでは、上下二段の予備苗載せ台49,50のうちの上段予備苗載せ台49が、前後一対の苗載せ台支柱31,34のうちの後側に位置する苗載せ台支柱34(以下、後苗載せ台支柱34と呼称する。)の上端側に位置する車体前後向きの支持部分101aに揺動操作自在に支持されている。
前記後苗載せ台支柱34は、車体に下端側が連結された下支柱部100と、この下支柱部100の上端側に下端側が連結され、上端側に前記支持部分101aを有した上支柱部101とを備えている。
前記上支柱部101は、前記支持部分101aを備える他、前記下支柱部100の車体上下向き部分100aに連結している基部部分101bと、この基部部分101bと前記支持部分101aとを連結している車体上下向き部分101cとを備えて構成してある。
前記上支柱部101の前記車体上下向き部分101cは、この車体上下向き部分101cの全体が前記下支柱部100の前記車体上下向き部分100aよりも車体後方側に位置し、前記車体上下向き部分101cの下端部が下段予備苗載せ台50よりも低い配置高さに位置し、前記車体上下向き部分101cの上端部が下段予備苗載せ台50よりも高い配置高さに位置した構成を備えており、車体前部からの下段予備苗載せ台50における後分割予備苗載せ台54への苗積み込みを容易にする。
すなわち、上支柱部101の車体上下向き部分101cは、倒伏使用状態にある下段予備苗載せ台50の後分割予備苗載せ台54が位置する部位と、上段予備苗載せ台49との間の空間を下段予備苗載せ台50の横方向内側と斜め前方内側とに向かって開口させている。
前記上支柱部101の前記車体上下向き部分101cは、前記下支柱部100の前記車体上下向き部分100aおよび、倒伏使用状態にある下段予備苗載せ台50よりも車体内側に位置する配置を備えており、下段予備苗載せ台50の車体内側部分が下支柱部100の車体上下向き部分100aよりも車体内側に入り込むことを可能し、かつ下段予備苗載せ台50のスライド移動を可能にする。
前記上支柱部101の前記車体上下向き部分101cは、下段予備苗載せ台50の起立格納状態において、車体上下向き部分101cと、下段予備苗載せ台50の前分割予備苗載せ台53および後分割予備苗載せ台54とが車体前後方向に重合し合う配置を備えており、下段予備苗載せ台50を上支柱部101と纏まったコンパクトな状態にして格納させる。
図30は、第二実施形態を備えた乗用型田植機の全体側面図である。図31は第二実施形態を備えた乗用型田植機の自走車の正面図である。これらの図に示すように、この乗用型田植機では、自走車の車体フレーム8の後部にリンク機構9を介して昇降操作自在に連結された苗植え付け装置10と、自走車の車体前部の両横側方に設けた予備苗収容装置A,Bとを備える他、苗植え付け装置10に設けたペースト施肥装置110と、自走車の車体前部の横一側方に設けた肥料タンク111とを備えている。
この第二実施例に係る乗用型田植機が備える苗植え付け装置10と予備苗収容装置Aとは、第一実施例に係る乗用型田植機が備える苗植え付け装置10、予備苗収容装置Aと同じ構成を備えている。
前記肥料タンク111は、前記予備苗収容装置Aの下段予備苗載せ台50の下方に設けてある。この肥料タンク111は、前記支持体30が備える支持フレームに支持されている。
前記ペースト施肥装置110は、前記肥料タンク111に肥料取り出しチューブ112を介して接続された施肥ポンプと、この施肥ポンプに施肥チューブを介して接続された施肥ノズル113とを備え、肥料タンク111に貯留されたペースト肥料を施肥ポンプによって肥料タンク111から取り出すとともに施肥ノズル112に供給し、施肥ノズル112を圃場の泥土部に挿入し、この泥土部の苗植え付け機構13による植え付け苗の近くにペースト肥料を供給する。