JP4961644B2 - 乗用型田植機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、駆動することにより地面に作業を施す対地作業装置を備える乗用型田植機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平11−89316号公報に示されるように、接地した状態で駆動して地面に作業を施す対地作業装置を設け、該対地作業装置とは異なる作業を行う苗植付部を走行車体に対して上下動可能に設ける一方、苗植付部から左右の上下動機構を介して対地作業装置が上下動する構成とし、左右の上下動機構を対地作業装置の左右中央に対して互いに左右に振り分けて配置すると共に、上下動する対地作業装置側に伝動部を該対地作業装置の左右中央に対して左右一方側(左側)に偏位させて設け、対地作業装置を上下動させる上下動駆動手段を左右の上下動機構のうち前記伝動部が偏位する側とは反対側(右側)の上下動機構に近づけて配置した農作業機がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の農作業機は、対地作業装置の伝動部が該対地作業装置の左右中央に対して左右一方側に偏位している分、対地作業装置全体の重心が左右一方側に偏位するため、左右の上下動機構に作用する負荷が異なり、前記左右の上下動機構が共に円滑に作動しにくく、対地作業装置全体の重心が偏位する側に上下動駆動手段がないと、対地作業装置が地面に対して適正に作業を施すことができなくなるおそれがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の点を解消しようとするもので、本発明における構成は次のようにする。
すなわち、請求項1に係る発明は、苗植付部(3)を走行車体(2)に対して上下動可能に設け、駆動して地面に作業を施す対地作業装置(4)を、苗植付部(3)から左右の上下動機構(7,7)を介して苗植付部(3)に対して上下動可能に設け、植付部(3)の左右両側には線引きマーカ(57,57)を設けた乗用型田植機において、苗植付部(3)を上昇させると左右の線引きマーカ(57,57)が起立状態となり、苗植付部(3)を下降させると前工程とは左右反対側の線引きマーカ(57)が下降して線引き状態になる構成とし、苗植付部(3)は苗載置台(41)と植付伝動部(42)と苗植付装置(43)を備え、植付伝動部(42)には支持フレーム(45)を取り付け、該支持フレーム(45)には別のフレーム(47)を固着し、左右の上下動機構(7,7)を対地作業装置(4)の左右中央に対して互いに左右に振り分けて配置すると共に、上下動する対地作業装置(4)に対する伝動部(73)を該対地作業装置(4)の左右中央に対して左右一方側に偏位させて設け、対地作業装置(4)を上下動させる正逆転可能な上下動用モータ(82)を、前記別のフレーム(47)に取り付けて前記伝動部(73)が偏位する側に配置し、上下動用モータ(82)から上下動用回動軸(86)及び左右各々の上下動用プレート(87,87)並びに上下方向のリンク(88,88)を介して左右の上下動機構(7,7)を作動させる構成とし、苗植付部(3)又は対地作業装置(4)を上昇させると対地作業装置(4)への伝動を断つ構成とし、伝動部(73)が偏位する側とは左右反対側の上下動用プレート(87)を上側へ付勢するエアダンパー(81)を、前記左右反対側に偏位させて配置した乗用型田植機とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、苗植付部(3)を走行車体(2)に対して上下動可能に設け、駆動して地面に作業を施す対地作業装置(4)を、苗植付部(3)から左右の上下動機構(7,7)を介して苗植付部(3)に対して上下動可能に設け、植付部(3)の左右両側には線引きマーカ(57,57)を設けた乗用型田植機において、苗植付部(3)を上昇させると左右の線引きマーカ(57,57)が起立状態となり、苗植付部(3)を下降させると前工程とは左右反対側の線引きマーカ(57)が下降して線引き状態になる構成とし、苗植付部(3)は苗載置台(41)と植付伝動部(42)と苗植付装置(43)を備え、植付伝動部(42)には支持フレーム(45)を取り付け、該支持フレーム(45)には別のフレーム(47)を固着し、左右の上下動機構(7,7)を対地作業装置(4)の左右中央に対して互いに左右に振り分けて配置すると共に、上下動する対地作業装置(4)に対する伝動部(73)を該対地作業装置(4)の左右中央に対して左右一方側に偏位させて設け、対地作業装置(4)を上下動させる正逆転可能な上下動用モータ(82)を、前記別のフレーム(47)に取り付けて前記伝動部(73)が偏位する側に配置し、上下動用モータ(82)から上下動用回動軸(86)及び左右各々の上下動用プレート(87,87)並びに上下方向のリンク(88,88)を介して左右の上下動機構(7,7)を作動させる構成とし、線引きマーカ(57,57)を下降しないように係止するフック(66,66)を支持フレーム(45,45)に設け、対地作業装置(4)を上昇させ且つ苗植付部(3)を下降させたにも拘らず線引きマーカ(57)が下降しないときに音声警報を発する音声警報装置(68)を設けた乗用型田植機とする
【0007】
従って、苗植付部を走行車体に対して上下動させて所望の対地高さに設定すると共に、上下動用モータにより左右の上下動機構を作動させて対地作業装置を所望の対地高さに設定し、走行車体により機体を走行させながら伝動部を介して伝動して対地作業装置を駆動し、対地作業装置及び苗植付部により地面に作業を施していく。そして、左右の上下動機構を作動させることにより、苗植付部に対して対地作業装置の対地高さを変更して対地作業装置の地面への作業状態を変更することができる。上下動用モータが左右方向において対地作業装置の伝動部側すなわち対地作業装置の重心が偏位する側で駆動し、その駆動力を対地作業装置の重心の偏位に対応して左右の上下動機構へバランス良く伝達し、左右の上下動機構を共に円滑に作動させることができ、対地作業装置と苗植付部との相対的な上下位置関係を良好に維持できる。また、苗植付部を走行車体に対して上下動させることにより、対地作業装置と苗植付部との相対的な上下位置関係を変えずに両者を適正な対地高さにすることができる。
【0008】
【発明の効果】
よって上下動用モータが左右方向において対地作業装置の伝動部側すなわち対地作業装置の重心が偏位する側で駆動し、その駆動力を対地作業装置の重心の偏位に対応して左右の上下動機構へバランス良く伝達でき、左右の上下動機構を共に円滑に作動させることができるので、対地作業装置により地面に適正に作業を施すことができる。更に、対地作業装置と苗植付部との相対的な上下位置関係を良好に維持できるので、複数の対地作業を同時に且つ適正に施すことができる。また、対地作業装置と苗植付部との相対的な上下位置関係を変えずに両者を適正な対地高さにすることができるので、複数の対地作業の更なる適正化を図ることができる。
【0009】
また、請求項1に係る発明は上下動機構により対地作業装置のみを非接地状態とし苗植付部のみを作動させて慣行の苗植付作業を行うとき、対地作業装置が作動しないので、対地作業装置の駆動による泥流又は水流が発生することがなく、前記泥流又は水流により植え付けた苗を倒伏させたり所望の苗の植付深さにならなかったりする悪影響を防止することができる。しかも、エアダンパーにより、左右の上下動機構の上動力をつり合わせるようにすることができ、左右の上下動機構を共に円滑に作動させることができる。
また、請求項2に係る発明は圃場の畦際で植付作業するときや耕起作業が施されていない土壌の硬い圃場で植付作業をするために線引きマーカにより線引きができないとき等には、フックに線引きマーカを係止させることにより線引きマーカの下降を規制できる。そして、耕起されていない圃場で対地作業装置を下降させて対地作業をしながら植付作業を行うべく、フックに線引きマーカを係止させて線引きを行わないようにするときは、線引きマーカに関する不要な警報を出さないようにできる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、農作業機の一種である乗用型の田植機1を示したものである。この乗用型の田植機1は、主として走行車体2と6条植えの苗植付部3と該苗植付部3の前方に設けられた対地作業装置の一種である耕起装置4とで構成される。この乗用型の田植機1は、油圧昇降シリンダ5により走行車体2の後部に設けられた昇降リンク機構6を介して苗植付部3が昇降自在可能に装着され、該苗植付部3の前側に平行リンク機構7,7を介して前記耕起装置4が取り付けられた構成となっている。尚、前記昇降リンク機構6は1本の上リンク6aと左右2本の下リンク6b,6bとにより構成され、これらの上リンク6a及び下リンク6b,6bは走行車体2及び苗植付部3の基部フレーム8に枢着された構成となっている。前記上リンク6aと走行車体側の回動軸6c回りに一体回転するアーム6dに前記油圧昇降シリンダ5のロッド部が取り付けられた構成となっている。
【0011】
走行車体2の略中央に駆動源であるエンジン9が備えられ、該エンジン9の左側の2連の出力プーリ10の一方から伝動ベルト11を介して副変速装置12に伝動され、該副変速装置12から伝動を断つことができる主クラッチが備えられたミッションケース13内へ伝動され、前記ミッションケース13からの伝動で左右一対の前輪14,14が駆動されると共に、前記ミッションケース13からの伝動で左右の後輪伝動軸15,15と左右の後輪伝動ケース16,16とを介して左右一対の後輪17,17が駆動される。尚、前記副変速装置12は、ベルト式の無断変速装置である。また、前記ミッションケース13からの動力により駆動される植付伝動軸18を介して前記苗植付部3が駆動される構成となっている。尚、この植付伝動軸18はエンジン9の右側方を通過するように設けられ、前記植付伝動軸18の中途部には苗植付部3の駆動の入切を可能にした植付クラッチケース(図示せず)が設けられている。
【0012】
また、前記エンジン9の2連の出力プーリ10の他方から伝動ベルト20を介して耕起駆動カウンタケース21内に動力が伝動され、該耕起駆動カウンタケース21からの動力により耕起伝動軸22を介して前記耕起装置4が駆動される構成となっている。前記伝動ベルト20にはテンションプーリ23が設けられており、このテンションプーリ23の作用、非作用により耕起装置4の駆動の入切が行えるようになっている。尚、前記テンションプーリ23は、回動軸23a回りに回動するテンションプーリアーム23bに取り付けられると共に該アーム23bに掛けられたテンションプーリスプリング23cにより前記伝動ベルト20側に付勢された構成となっている。
【0013】
前記走行車体2の前後左右略中央には操縦席24が設けられている。操縦席24の前方のボンネット部25にはステアリングハンドル26が設けられ、該ステアリングハンドル26の左側には前記ミッションケース13内の伝動を切り替えて前後進の切替を含む変速操作が行える主変速レバー28が設けられている。操縦席24の右側には、前記副変速装置12の変速操作が行える副変速レバー27、及び前記油圧昇降シリンダ5を作動させることによる苗植付部3の昇降や前記植付クラッチケース内を操作することによる苗植付部3の駆動の入切が行える植付・昇降レバー29が設けられている。
【0014】
前記ボンネット部25の左方には、前記ミッションケース13内の主クラッチを操作することができる主クラッチペダル30と耕起装置4の駆動の入切が行える前記テンションプーリ23を操作する耕起クラッチペダル31とが設けられている。この耕起クラッチペダル31を踏み込むと耕起クラッチペダル連繋用ワイヤ31aが引かれて、前記テンションプーリアーム23bをテンションプーリ23が伝動ベルト20から退避する方向(下方向)に回動させてテンションプーリ23を退避させ、伝動ベルト20による伝動が断たれるようになっている。尚、この耕起クラッチペダル31は、踏み込まれた状態で固定できるようになっている。
【0015】
前記ボンネット部25の右方には、左右それぞれの後輪17,17を制動する左右のブレーキペダル32,32が設けられている。
苗植付部3は、主として苗載置台41と植付伝動部42及び各条の苗植付装置43…とから構成され、前記植付伝動軸18を介して植付伝動部42に入力され作動するようになっている。各条の苗植付装置43,…は、前記植付伝動部42からの動力により作動し、苗載置台41の苗を一株づつ圃場へ植え付けていく構成となっている。尚、昇降リンク機構6の後端に取り付けられた苗植付部3の基部フレーム8に固着した左右ローリング軸44が前記植付伝動部42の植付伝動ケース42aに嵌合し、走行車体2に対して苗植付部3が左右方向にローリングが可能な構成となっている。尚、植付伝動部42の植付伝動ケース42aに取り付けられた左右の支持フレーム45,45と前記基部フレーム8との間には適当な荷重に設定された左右のバランススプリング46,46が設けられ、苗植付部3が走行車体2に対して左右ローリングして圃場面に追従できるようになっている。また、昇降リンク機構6の右の下リンク6b,6bと前記左右の支持フレーム45,45にそれぞれ固着された左右のフレーム47,47との間には前記バランススプリング46,46よりも荷重の大きいローリングロックスプリング48,48が設けられ、このローリングロックスプリング48,48により苗植付部3が最上げ位置になるように昇降リンク機構6を作動させた状態で走行車体2に対する苗植付部3の左右ローリングが規制されるようになっている。
【0016】
また、苗植付部3の下部には、中央部に2枚のセンターフロート49,49及び両側部にサイドフロート50,50を設けており、これらのフロート49,49,50,50が圃場面を滑走する構成である。これらのフロート49,49,50,50は、該フロート49,49,50,50の後部に設けられた左右方向の枢支軸51…回りに上下方向に回動自在に設けられている。前記2枚のセンターフロート49,49は、該フロート49,49の前部を連結フレーム52により連結され、圃場面に対して上下の迎い角(上下方向の回動角)が同一になるように構成されている。尚、センターフロート49,49の前部の上側には、該フロート49,49の前記迎い角を検出する迎い角センサ49aを設けている。苗植付部3を下降させての植付状態で、前記迎い角センサ49aの検出に基づいて前記油圧昇降シリンダ5を作動させ、苗植付部3が圃場面に対して所定の高さに維持されるようになっている。
【0017】
前記フロート49,49,50,50の左右方向の枢支軸51…は前記苗植付装置43…の近傍に設けられ、且つこれらの枢支軸51…は側面視において略同位置に設けられている。この枢支軸51…は、苗載置台41の前方に設けられた植付深さ調節レバー(図示せず)の操作により上下調節可能に設けられている。
【0018】
また、前記苗植付装置43…は、植付伝動部42の後部に取り付けられ、該植付伝動部42からの動力により作動する構成となっている。前記苗載置台41は、上部を左右の苗載置台支持ローラ53,53、下部を左右移動ガイド板54により左右移動可能に支持されると共に、植付伝動部42からの動力で苗載置台左右移動棒55を左右移動させることにより左右移動する。尚、前記左右の苗載置台支持ローラ53,53は、植付伝動部42の植付伝動ケース42aに固着された左右それぞれの支持フレーム45,45の上部に取り付けられた構成となっている。苗載置台41の左右移動により、マット状の苗を苗植付装置43…により一株づつ掻き取る構成となっている。尚、前記左右移動ガイド板54には、苗植付装置43…が苗を取り出す苗取出部となっている苗掻き取り口54a…が設けられている。また、前記苗載置台41は、左右移動終端においてマット状の苗を各条の苗送りベルト56…により苗載置台41に沿って苗植付装置側に順次移送する周知の構成である。
【0019】
苗植付部3の左右両側には、左右それぞれの線引きマーカ57、57を設けている。この線引きマーカ57、57は、植付作業における次行程の機体の進行路の左右中央となる位置の土壌を掻いて線引きし、次行程の機体の進行の指標を土壌につけるものであり、前後方向の回動軸58、58回りに回動するマーカアーム59、59と該マーカアーム59、59の先端の線引き作用部60、60とを備えている。前記左右それぞれのマーカアーム59、59は、油圧昇降シリンダ5のロッド部5aとマーカ作動用ワイヤ61、61により連結されており、油圧昇降シリンダ5により苗植付部3を上昇させると前記ワイヤ61、61が引かれて線引き作用部60、60が地面から離れて上昇すべく回動して起立状態となり、逆に油圧昇降シリンダ5により苗植付部3を下降させて接地させると前記ワイヤ61、61が戻されて線引き作用部60、60が下降して接地する方向に回動付勢するスプリング62、62により回動して倒れた状態となる。また、ワイヤ61、61の中途部には該ワイヤ61、61が戻されるのを規制する電磁ソレノイドピン63、63を左右それぞれ設けており、左右どちらか一方の電磁ソレノイドピン63が作用するように制御部64により制御されると共に、昇降リンク機構6の上昇側への回動を検出する昇降リンクセンサ65により苗植付部3の上昇作動を検出すると、制御部64により作用する電磁ソレノイドピン63、63を左右で切り替える構成となっている。従って、苗植付部3を接地させた状態で未植付側のみの線引きマーカ57を下降回動させて線引き作用部60を下降させ線引き状態とし、圃場の畦際での機体の旋回時に苗植付部3を上昇させることにより作用する電磁ソレノイドピン63、63が左右で切り替わり、旋回することにより前行程に対して機体の左右反対側となる未植付側のみの線引きマーカ57を下降回動させて線引き状態とする構成である。尚、苗植付部3の支持フレーム45、45には線引きマーカ57、57を係止するためのフック66、66を設けており、圃場の畦際で植付作業するときや耕起作業が施されていない土壌の硬い圃場で植付作業をするために線引きマーカ57、57により線引きができないとき等、線引きマーカ57、57による線引きが不要なときには、作業者がこのフック66、66に線引きマーカ57、57を係止させることによりワイヤ61、61の作動に拘らず線引きマーカ57、57を下降回動させないようにすることができる。前記フック66、66に線引きマーカ57、57を係止させたとき等、苗植付部3を下降させたにも拘らず線引きマーカ57、57が下降回動しないときには、昇降リンクセンサ65による苗植付部3の下降作動の検出時に線引きマーカ57、57の回動部に設けたマーカセンサ67、67により線引きマーカ57、57が下降回動しないのを検出し、制御部64により音声警報装置68に出力して「線引きマーカが出ていません」という音声警報を発するようになっている。
【0020】
ところで、走行車体2の前部には予備苗載置台69が設けられている。この予備苗載置台69に載置された苗をオペレータが苗載置台41に供給するようになっている。
耕起装置4は、苗植付部3の前方に設けられ、左右に延設する支持パイプ71と該支持パイプ71の両端から下側に延びる支持杆72とを備えている。支持パイプ71の機体の左右中央より左側の位置には耕起伝動軸22から伝動される上下に長い耕起伝動ケース73を取り付けて固定しており、該耕起伝動ケース73の下部から左右に延びる耕起駆動軸74を左右それぞれに設け、該左右の耕起駆動軸74は耕起伝動ケース73とは反対側をそれぞれの支持杆72の下部で支持された構成となっている。全体で6条分となる各条の苗植付装置43,…の前方には耕起駆動軸74に固定された円板76を介して耕起爪75が取り付けられており、機体を前進しながら耕起駆動軸74すなわち耕起爪75を回転駆動することにより、各条の苗植付装置43,…の前方位置で圃場を耕起するようになっている。従って、耕起装置4は、苗植付装置43…の苗植付位置PL1〜PL6の前方を全体で6列分筋状に耕起する部分耕起装置となっている。尚、この部分耕起装置4は、耕起されていない圃場で植付作業を行うときすなわち不耕起移植法により植付作業を行うときに作動させるようになっている。また、各条の耕起爪75の互いの間には、それぞれ耕起駆動軸74と一体回転する遊転ローラ支持ディスク77の外側に遊転ローラ78を耕起駆動軸74に対して遊転するように設けている。また、耕起爪75の上側及び後側には、該耕起爪75が掻き起こす土壌が耕起位置の外方へ飛散するのを防止する全条分で一体のカバー79を設けている。
【0021】
また、耕起装置4は、苗植付部3の植付伝動部42の植付伝動ケース42aから前側へ延びるそれぞれ1本の上リンク7a及び下リンク7bで構成される平行リンク機構7,7の前端部に支持パイプ71が連結され、苗植付部3に支持された構成となっている。尚、前記平行リンク機構7,7は、機体の左右中央に対して左右対称に左右それぞれ側面視で同じ位置に設けられている。従って、平行リンク機構7、7の上下回動により、耕起装置4が苗植付部3に対して同じ姿勢を保って上下に移動するようになっている。苗植付部3の苗載置台41の左右それぞれの支持フレーム45の近くには、上下動支持フレーム47,47を植付伝動ケース42aから前側へ向けて固定しており、左側の上下動支持フレーム47の前部に耕起装置上下動用モータ82を取り付けている。耕起装置上下動用モータ82の出力軸と一体回転するピニオンギヤ83には中間ギヤ84が噛み合い、該中間ギヤ84には扇形ギヤ85が噛み合っている。左右の上下動支持フレーム47,47間には該フレーム47,47に回動可能に軸支される上下動用回動軸86を左右方向に延設しており、該上下動用回動軸86は、前記扇形ギヤ85の回動により該ギヤ85と一体回転するようになっている。そして、左右それぞれの上下動支持フレーム47,47と平行リンク機構7、7との左右方向における間には、三角形状の上下動用プレート87、87を前記上下動用回動軸86に一体回転するように設けている。前記上下動用プレート87、87は、耕起装置4の支持パイプ71と左右それぞれ上下方向のリンク88、88で連結されている。尚、右側の前記リンク88は、ターンバックル89を備えており、リンク長を変更可能に構成されている。また、右側の上下動用プレート87と苗植付部3の植付伝動ケース42aとの間には該右側の上下動用プレート87を上側へ回動付勢するエアダンパー81を設けており、このエアダンパー81により耕起装置上下動用モータ82で上下動する左側の平行リンク機構7と右側の平行リンク機構7との上動力をつり合わせて、耕起装置4を苗植付部3に対して左右平行に維持するようにしている。操縦席24の前方のボンネット部25の上部に備えるモニター部90には耕起装置上下動スイッチ91を設けており、該スイッチ91を「上げ」に操作すると耕起装置上下動用モータ82が耕起装置4を上昇させるべく駆動し、該スイッチ91を「下げ」に操作すると耕起装置上下動用モータ82が耕起装置4を下降させるべく駆動するようになっている。尚、耕起装置上下動用モータ82は、正逆転可能なモータである。
【0022】
従って、平行リンク機構7,7のリンク角度は耕起装置上下動スイッチ91の操作により調節できるようになっており、前記耕起装置上下動スイッチ91により苗植付部3に対する耕起装置4の高さを調節できるようになっている。そして、この乗用型の田植機1は、耕起装置上下動スイッチ91の操作により耕起装置4を上昇させ非接地状態とすることによって部分耕起作業を同時に行わずに田植作業をすることができる。
【0023】
尚、耕起装置上下動スイッチ91を「下げ」操作して耕起装置4を下降させた状態では、マーカセンサ67、67により線引きマーカ57、57が下降回動しないのを検出しても、制御部64により「線引きマーカが出ていません」という音声警報を出さないようになっている。これにより、耕起されていない圃場で耕起装置4を下降させて部分耕起作業をしながら植付作業を行うとき、フック66、66に線引きマーカ57、57を係止させて線引きを行わないようにするが、線引きマーカ57、57に関する不要な警報を出さないようにして不要な警報により喧しくなくなり作業者にとって煩わしくないようにしている。この不要な警報が発せられると、苗植付部3を下降させる度に該警報を発することとなり、植付作業において煩わしいものとなる。
【0024】
ところで、苗植付部3を昇降させる前記昇降リンク機構6の左側の下リンク6bには、該下リンク6bのリンク角度と略垂直に昇降リンク連繋用ワイヤ101を取り付けている。この昇降リンク連繋用ワイヤ101の他端は、前記テンションプーリアーム23bに取り付けられている。従って、昇降リンク機構6により苗植付部3が接地状態から非接地状態になるべく上昇すると、前記昇降リンク連繋用ワイヤ101が引かれてテンションプーリアーム23bをテンションプーリ23が伝動ベルト20から退避する方向(下方向)に回動させてテンションプーリ23を退避させ、伝動ベルト20による耕起装置4への伝動が断たれるようになっている。
【0025】
同様に、耕起装置4の上下動に連動する左側の上下動用プレート87には該プレート87の回動方向と略同じ方向に上下動用プレート連繋用ワイヤ102を取り付けており、この上下動用プレート連繋用ワイヤ102の他端がテンションプーリアーム23bに取り付けられている。従って、平行リンク機構7、7により耕起装置4が接地状態から非接地状態になるべく上動すると、前記上下動用プレート連繋用ワイヤ102が引かれてテンションプーリアーム23bをテンションプーリ23が伝動ベルト20から退避する方向(下方向)に回動させてテンションプーリ23を退避させ、伝動ベルト20による耕起装置4への伝動が断たれるようになっている。
【0026】
よって、苗植付部3及び耕起装置4のいずれかが非接地状態となる位置まで上昇すると、耕起装置4への伝動が断たれるのである。
以上により、この乗用型の田植機1である農作業機は、耕起装置4である対地作業装置を平行リンク機構7、7となる上下動機構により苗植付部3に対して昇降可能に構成すると共に非接地状態まで上昇可能に構成し、前記対地作業装置4及び苗植付部3である第二対地作業装置を昇降リンク機構6により走行車体2に対して昇降可能に構成すると共に非接地状態まで上昇可能に構成し、平行リンク機構7、7又は昇降リンク機構6により耕起装置4を非接地状態となるまで上昇させたとき、対地作業装置すなわち耕起装置4の駆動が停止されて非駆動となる。言い替えると、対地作業装置4が接地状態でないと駆動しないのである。また、主クラッチペダル30あるいは耕起クラッチペダル31を踏み込み操作しない限り、耕起装置4は接地状態であれば確実に駆動する。
【0027】
また、左右の上下動機構となる平行リンク機構7、7を耕起装置4の左右中央に対して互いに左右に振り分けて配置すると共に、耕起装置4側に伝動部となる耕起伝動ケース73を該耕起装置4の左右中央に対して左側に偏位させて設け、耕起装置4を上下動させる上下動駆動手段となる耕起装置上下動用モータ82を左右の平行リンク機構7、7のうち前記耕起伝動ケース73が偏位する側すなわち左側に配置し、耕起装置4とは異なる作業を行う第二対地作業装置となる苗植付部3を走行車体2に対して上下動可能に設け、苗植付部3から平行リンク機構7、7を介して耕起装置4が上下動する構成となっている。
【0028】
従って、第一対地作業装置である耕起装置4を平行リンク機構7、7により第二対地作業装置である苗植付部3に対して昇降させることにより、苗植付部3と耕起装置4との相対的な上下位置関係を変更することができ、耕起装置4が圃場に筋状に耕起して得られる耕起溝内の適正な深さに苗植付部3の苗植付装置により苗を植え付けるようにできて植付後の苗の成育を良好に行うことができ、苗植付部3と耕起装置4との上下位置関係を適正にして、複数の対地作業を良好に行うことができる。また、昇降リンク機構6により苗植付部3及び耕起装置4の複数の対地作業装置を走行車体に対して同時に昇降させることにより、圃場面の凹凸や傾斜に伴う高さ変化や走行車体2の姿勢の変化があっても、苗植付部3と耕起装置4との相対的な上下位置関係を変えずに両者を圃場面に対して適正な対地高さにすることができ、苗植付部3と耕起装置4との上下位置関係を適正に維持しながら適正な対地高さで複数の対地作業を行うことができる。しかも、平行リンク機構7、7及び昇降リンク機構6のいずれを作動させて耕起装置4を宙に浮かせて非接地状態としても耕起装置4の駆動が停止されるので、昇降リンク機構6により苗植付部3及び耕起装置4を上昇させた状態での機体の路上走行時に苗植付部3及び耕起装置4が走行車体2に対して左右方向にローリングすることにより耕起装置4の耕起爪75…が駆動状態で走行車体2の後輪17,17等の他の障害物と干渉したり、苗植付部3及び耕起装置4を上昇させた状態での耕起装置4の近傍で苗植付部3の植付伝動部42等のメンテナンスを行う作業者に耕起装置4の耕起爪75…が駆動することによって危害を与えたりするようなことを防止できる。更に、平行リンク機構7、7により耕起装置4のみを非接地状態として苗植付部3のみを作動させて慣行の苗植付作業を行うときすなわち第二対地作業装置による対地作業のみを行うとき、耕起装置4が作動しないので、耕起装置4の駆動により耕起装置4の周辺に空気流が発生することがない。従って、この空気流により圃場に泥流又は水流が発生することがなく、前記泥流又は水流により植え付けた苗を倒伏させたりセンターフロート49、49が上下に頻繁に作動する等不適切に作動して該フロート49、49の迎い角センサ49aの検出値が不適正となり苗植付部3により所望の苗の植付深さにならなかったりして、苗植付作業に悪影響を与えるのを防止することができる。
【0029】
従来、特開平10−127109号公報に示されるように、苗植付部の前方に代かき装置等の対地作業装置を備える農作業機において、苗植付部及び前記対地作業装置を共に昇降させる昇降機構により対地作業装置を非接地状態にすると対地作業装置が非駆動となるものがあるが、該対地作業装置のみを上昇させて非接地状態にしたときにはこれに連動して非駆動とならず、作業者が対地作業装置を停止する操作を忘れると該対地作業装置が不必要に駆動し、動力のロスを生じたり苗植付作業に悪影響を与えたりするおそれがある。
【0030】
尚、この実施例は対地作業装置の一種として苗植付位置の前方を筋状に耕起する耕起爪75…を備えて構成される部分耕起装置4を設けた不耕起田植機について詳述したが、対地作業装置として苗植付位置の前側を代かきする代かきロ−タを備えて構成される代かき装置を設けた代かき同時田植機であってもよい。また、この実施例の苗植付部3の代わりに直播装置を設けた不耕起播種機や、直播装置の播種位置の前側を代かきする代かき装置を設けた代かき同時播種機であってもよい。
【0031】
図8には、耕起装置4の代わりにセンターフロート49の前方を整地する整地装置110を設けた構成を示している。尚、このセンターフロート49は、単一のフロートである。整地装置110は、左右方向の駆動軸111と一体回転する整地ドラム112の外周面に螺旋状に配置した複数の砕土プレート113…を設けており、複数の砕土プレート113…により砕土しながら土壌を左右方向に送り、センターフロート49へ泥又は水が送られるのを抑えると共に該フロート49の前方の土壌を良好に整地してセンターフロート49による該フロート49の迎い角の検出の安定化を図り、苗植付部3の昇降の安定化を図っている。尚、前記砕土プレート113…は、整地ドラム112から突出する円弧状の突起となっている。整地ドラム112の左右一側には該ドラム112を駆動するための伝動ケース114を設け、他側には駆動軸111の軸受部115を設けている。尚、整地ドラム112とセンターフロート49との間には、整地ドラム112から発生する泥流又は水流がセンターフロート49に送られないようにする規制板116を設けている。従来、螺旋状の突起を備えた整地ドラムにより整地する整地装置があるが、硬い土塊があると砕土効果が不充分となり整地を良好に行えないおそれがある。ところが、図8に示す整地装置により、泥又は水を左右方向へ送る構成としながら砕土効果を高めることができるので、良好な整地作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用型の田植機の側面図。
【図2】乗用型の田植機の平面図。
【図3】耕起装置と苗植付部とを示す要部簡略平面図。
【図4】耕起装置と苗植付部とを示す側面図。
【図5】線引きマーカの作動構成を示す図。
【図6】平行リンク機構を示す平面図。
【図7】耕起装置の駆動の入切の構成を示す側面図。
【図8】整地装置と苗植付部とを示す要部簡略平面図。
【符号の説明】
1…乗用型の田植機(農作業機)、2…走行車体、3…苗植付部、4…耕起装置(対地作業装置)、6…昇降リンク機構、7…平行リンク機構(上下動機構)、73…耕起伝動ケース(伝動部)、82…耕起装置上下動用モータ(上下動駆動手段)

Claims (2)

  1. 苗植付部(3)を走行車体(2)に対して上下動可能に設け、駆動して地面に作業を施す対地作業装置(4)を、苗植付部(3)から左右の上下動機構(7,7)を介して苗植付部(3)に対して上下動可能に設け、植付部(3)の左右両側には線引きマーカ(57,57)を設けた乗用型田植機において、苗植付部(3)を上昇させると左右の線引きマーカ(57,57)が起立状態となり、苗植付部(3)を下降させると前工程とは左右反対側の線引きマーカ(57)が下降して線引き状態になる構成とし、苗植付部(3)は苗載置台(41)と植付伝動部(42)と苗植付装置(43)を備え、植付伝動部(42)には支持フレーム(45)を取り付け、該支持フレーム(45)には別のフレーム(47)を固着し、左右の上下動機構(7,7)を対地作業装置(4)の左右中央に対して互いに左右に振り分けて配置すると共に、上下動する対地作業装置(4)に対する伝動部(73)を該対地作業装置(4)の左右中央に対して左右一方側に偏位させて設け、対地作業装置(4)を上下動させる正逆転可能な上下動用モータ(82)を、前記別のフレーム(47)に取り付けて前記伝動部(73)が偏位する側に配置し、上下動用モータ(82)から上下動用回動軸(86)及び左右各々の上下動用プレート(87,87)並びに上下方向のリンク(88,88)を介して左右の上下動機構(7,7)を作動させる構成とし、苗植付部(3)又は対地作業装置(4)を上昇させると対地作業装置(4)への伝動を断つ構成とし、伝動部(73)が偏位する側とは左右反対側の上下動用プレート(87)を上側へ付勢するエアダンパー(81)を、前記左右反対側に偏位させて配置した乗用型田植機。
  2. 苗植付部(3)を走行車体(2)に対して上下動可能に設け、駆動して地面に作業を施す対地作業装置(4)を、苗植付部(3)から左右の上下動機構(7,7)を介して苗植付部(3)に対して上下動可能に設け、植付部(3)の左右両側には線引きマーカ(57,57)を設けた乗用型田植機において、苗植付部(3)を上昇させると左右の線引きマーカ(57,57)が起立状態となり、苗植付部(3)を下降させると前工程とは左右反対側の線引きマーカ(57)が下降して線引き状態になる構成とし、苗植付部(3)は苗載置台(41)と植付伝動部(42)と苗植付装置(43)を備え、植付伝動部(42)には支持フレーム(45)を取り付け、該支持フレーム(45)には別のフレーム(47)を固着し、左右の上下動機構(7,7)を対地作業装置(4)の左右中央に対して互いに左右に振り分けて配置すると共に、上下動する対地作業装置(4)に対する伝動部(73)を該対地作業装置(4)の左右中央に対して左右一方側に偏位させて設け、対地作業装置(4)を上下動させる正逆転可能な上下動用モータ(82)を、前記別のフレーム(47)に取り付けて前記伝動部(73)が偏位する側に配置し、上下動用モータ(82)から上下動用回動軸(86)及び左右各々の上下動用プレート(87,87)並びに上下方向のリンク(88,88)を介して左右の上下動機構(7,7)を作動させる構成とし、線引きマーカ(57,57)を下降しないように係止するフック(66,66)を支持フレーム(45,45)に設け、対地作業装置(4)を上昇させ且つ苗植付部(3)を下降させたにも拘らず線引きマーカ(57)が下降しないときに音声警報を発する音声警報装置(68)を設けた乗用型田植機
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