JP3591298B2 - 田植機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、田植機に用いるものである。
【0002】
【従来の技術】
走行車体の後に苗植装置が装着されて田植機となっている。その田植機は、耕起して代掻をした水田に苗を移植する作業(耕起移植)と、耕起していない水田に苗を移植する作業(不耕起移植)との両用に用い得るものが実用化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前者は、耕起して代掻をした水田の耕盤上で車輪が回転して前進するので、その前進中に車転がスリップして前進速度が低下する。後者は、耕起していない水田の表面で車輪が回転して前進するので、車輪のスリップ率が前者よりも低く、前進速度の低下率が低い。すなわち、前者を基準に作った田植機を後者に用いると、上記の車速の差により、後者は坪(3.3m2)当りの苗の植込株数が不足して減収につながるおそれがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明は、車輪7,8の回転で前進する走行車体1に苗植装置3が装着され、その苗植装置3は耕起して代掻をした水田と耕起していない水田とに苗が移植できるように設けられ、車輪7,8が耕起して代掻をした水田で回転するときのスリップ率と耕起していない水田で回転するときのスリップ率を調整して苗植装置3による植付苗の株間を均一化する株間調整変速機73が苗植装置3又は車輪7,8に達する動力伝達経路に設けられている田植機とした。
【0005】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の実施例を説明する。
走行車体1の後に、前に耕起装置2を備えた苗植装置3が装着されて田植機となっている(図1,図2)。
走行車体1がつぎのように構成されている。フレーム4の前後に主歯車箱5と後輪歯車箱6が取付けられ、それぞれの歯車箱5,6の外側に前輪7と後輪8が配置されている。エンジン9がフレーム4に取付けられ、その動力が無段変速機10と主クラッチ11を経由して主歯車箱5内に達し(図3)、その中の主変速機12で作業速(低速)、路上走行速(高速)及び後進のどれかに選択されたのち、前輪差動装置13および後輪差動装置14を経てそれぞれ前輪7と後輪8に達するようになっている(図4)。
【0006】
座席15がエンジン9の上に設けられ、その前にハンドルフレーム16が配置されている。変速レバー17がハンドルフレーム16の左(正面から見て)設けられ、その操作で無段変速機10が作動し、主クラッチ11に達するエンジン9の回転が無段階に変更されるようになっている。主クラッチペタル18がハンドルフレーム16の右後に設けられ、これを踏み込むと、主クラッチ11が「切り」になって、主歯車箱5内に達するエンジン9の動力が断たれ、その足を離すと、「入り」になって断たれた上記の動力が接続するようになっている。主変速レバー19がハンドルフレーム16の右に設けられ、その操作で主変速機12の前記のそれぞれの速度が選択できるようになっている。ステアリングホイル20がハンドルフレーム16の上に配置され、その操作で前輪7が操縦されるように出来ている。
【0007】
支柱21がフレーム4の後部から上に伸び、これとその後のヒッチ22が平行リンク23で連結されている。昇降シリンダ24の前部がフレーム4に取付けられ、これから斜後上に突出したピストンロッドの突端が平行リンク23と一体のアーム26の下端に接続し、ポンプ(図示していない)が吐出した油を昇降シリンダ24に供給すると、ピストンロッドが突出してヒッチ22が同じ姿勢で上昇し、その油をタンクに戻すと、ヒッチ22が下降するように出来ている。
【0008】
苗植装置3がつぎのように構成されている。横から見て鈎形の取付枠26がヒッチ22の後に着脱自在に設けられている。歯車箱27がその後に取付けられ、これとその左右のスリーブ28から3本の植込フレーム29が等間隔に後に伸びている。小判形の回転ケース30がそれぞれの植込フレーム29の後部の両横に配置され、エンジン9の動力(伝動経路は後記)で、右(図1,図5)から見て反時計方向に回転するようになっている。一対の植込杆31がそれぞれの回転ケース30に取付けられ、その中の変形した遊星歯車により、上記の回転中に同じような姿勢を保つようになっている。6個の苗取口32を有する苗受板33が横込フレーム29に横長に固定され、上記の一対の植込杆31の先端がそれぞれの苗取口32を旋回の下降の初期に交互に通過するように出来ている。
【0009】
支柱34が左右の植込フレーム29の前部から斜前上に伸び、それぞれの上端と苗受板33の前部で苗載台35が左右に移動するように支持されている。苗載台35は、前上りに傾斜し、左右の側壁の間が5本の壁で6個の区画に区分され、マット状の集団苗が後端部を苗受板33上に突出させてそれぞれの区画に載る。苗載台35は、エンジン9の動力で左右に往復駆動される。そのため、その移動で集団苗の後端部が苗取口32の上に来ると、旋回している植込杆31の先端部で一株分の苗が欠ぎ取られる。欠ぎ取られた苗は、植込杆31とともに下降し、旋回の下端で圃場に差し込むようにして移植される。ベルトコンベア式の苗送装置36がそれぞれの区画に設けられ、上記の苗の欠ぎ取りが進んでその横端の欠ぎ取りが終わると、上の集団苗を後に繰り出すようになっている。苗載台35は、その後逆向きに移動する。フロート37が植込フレーム29の下に配置され、走行車体1の前進で圃場の表面を滑走するように出来ている。
【0010】
エンジン9の動力の一部が主変速機12の後(又は前)から分かれ(図4)、クラッチケース38(図3)内の植付クラッチ39を経由して、上記の回転ケース30(植込杆31)と苗載台37に達している。
昇降(植付)レバー40が座席15の右に設けられ、図1の位置で「下げ」となって、昇降シリンダ24内の油がタンクに戻って苗植装置3が下降するとともに、植付クラッチ39が「入り」になって植込杆31と苗載台35が作動するようになっている。昇降(植付)レバー40をこの位置から時計方向に回すと、「上げ」となって、昇降シリンダ24に油が供給されて苗植装置3が上昇するとともに、植付クラッチ39が「切り」になって植込杆31と苗載台35の作動が停止する。
【0011】
耕起装置2がつぎのように構成されている。横長の支持パイプ41の両端から支持杆42が下に伸びている。上下に長い耕起ケース43が支持パイプ41の右寄りに固定され、その下端から左右に突出した耕起軸44がそれぞれの支持杆42の下部で支えられている。6組の植込杆31の前で耕起爪45を有する円板46が耕起軸44に固定され、前進しながら回転すると、上記の植込杆31の前で圃場を筋に耕起するようになっている(図5,図6)。
【0012】
複数の円筒47が耕起軸44に回転自在に取付けられ、耕起爪45の上がカバー48で被われている。
その昇降装置Aがつぎのように出来ている。支柱49がそれぞれのスリーブ28から上に伸び、支持パイプ41から突出した支柱50がそれぞれの前に配置され、前後の支柱49,50が上下で平行なリンク51で連結されて、耕起装置2が苗植装置3に対して同じ姿勢を保って上下に移動し得るようになっている(図5,図7)。支持枠52が支持杆53で歯車箱27に固定されている。昇降モータ54が支持杆52に取付けられ、これが作動すると、中間歯車55を介して扇形歯車56が昇降軸57を揺動させるようになっている。一対の三角形の昇降板58の一角が昇降軸57に固定され、他の一角と支持パイプ41がリンク59で連結され、残りの一角とスリーブ28の間にダンパー60が設けられている。そして、座席15の左の制御ボックスBに設けた昇降スイッチ61(図11)を「上げ」又は「下げ」に操作すると、昇降モータ54が扇形歯車56および昇降軸57を、図5で時計方向又は反時計方向に回動して耕起装置2が上昇又は下降し、その昇降スイッチ61を「切り」にすると、ダンパー60によって耕起装置2がその高さにとどまるようになっている(耕起装置3の昇降の上限と下限では昇降スイッチ61が自動的に「切り」に戻る)。なお、片方のリンク59は、ターンバックルで構成されている。
【0013】
耕起装置2に対する動力伝達装置がつぎのように出来ている。
エンジン9の動力がベルト62でカウンタケース63内に導入されている(図3)。耕起ソレノイド64a(図11)で昇降するローラ64b(図1)とベルト62で耕起クラッチ64が構成され、ベルト62が張られると耕起クラッチ64が「入り」になり、これが緩むと「切り」になるように出来ている。カウンタケース63内の動力が伝動軸65で耕起ケース43の上部に達し(図3,図6)、その中の伝動装置で耕起軸44に伝わり、これが図5で反時計方向に回転するようになっている。耕起クラッチペタル66がハンドルフレーム16の後に設けられ、上昇している耕起クラッチペタル66を踏み込んで足を離してもその下降と耕起クラッチ64の「切り」が保たれ、下降している耕起クラッチペタル66を踏み込んで足を離すと、その耕起クラッチペタル66が上昇して耕起クラッチ64が「入り」になるように出来ている。
【0014】
この田植機は、つぎのように用いる。耕起移植に当っては、耕起して代掻をした水田の所定の位置に田植機を入れる。
昇降(植付)レバー40を「下げ」にする。すると、苗植装置3が下降し、植付クラッチ39が「入り」になる。
昇降スイッチ61を「上げ」にして耕起装置2を上昇させ、耕起クラッチペタル66を踏み込んで耕起クラッチ64を「切り」にする。主クラッチペタル18を踏んで主クラッチ11を「切り」にし、主変速レバー19で主変速機12の「作業速」を選択したのち、主クラッチペタル18から足を離す。すると、主クラッチ11が「入り」になって、エンジン9の動力が車輪7,8と苗植装置3に伝わる。すなわち、前輪7と後輪8が水田の耕盤上で回転して走行車体1が前進し、その泥面に苗植装置3が苗を移植する。変速レバー17を操作して無段変速機10による所望の速度を選択し、上記の作業を能率良く行う。
【0015】
不耕起移植に当っては、耕起しないで水を浅く張った田圃の所定の位置に田植機を入れる。昇降(植付)レバー40を「下げ」にして、苗植装置3を下降させ、植付クラッチ39を「入り」にする。昇降スイッチ61を「下げ」にして耕起装置2を下降させ、耕起クラッチペタル66で耕起クラッチ64を「入り」にする。つぎに、前記と同様に、主クラッチ11を「切り」にして主変速機12の「作業速」を選択し、「切り」になっている主クラッチ11を「入り」にする。すると、前輪7と後輪8が田圃の表面で回転して走行車体1が前進し、その前進にともなって耕起装置2が地表を6本の筋に耕起し、苗植装置3がそれぞれの筋に苗を移植する。変速レバー17を操作し、所望の車速で作業を行う。
【0016】
主変速機12の後(又は前)から苗植装置3の間の動力伝達経路に株間変速装置67がつぎのように設けられている(図4,図8)。第一軸68に大歯車69−17と小歯車69−15が固定されている。大歯車70−17と小歯車70−15が一体に出来た変速歯車70が株間変速ハンドル71で移動するように第二軸72に取付けられている。また、それぞれの大歯車69−17と小歯車67−15および大歯車70−17と小歯車70−15は、ピッチサークルが同径で歯数が17枚と15枚の転位歯車で構成されている。そして、変速歯車70が移動してその小歯車70−15が小歯車69−15に咬むと、苗植装置3が「中速」で作動し、上記の耕起移植において、坪(3.3m2)当りほぼ80株の苗の植込株数が得られるようになっている。変速歯車70がこれから図8で左に移動して小歯車70−15が大歯車69−17に咬む(図8の位置)と、苗植装置3が「高速」で作動して、上記の植込株数がほぼ90株となり、変速歯車70がさらに左に移動すると、大歯車70−15が小歯車69−15に咬んでその植込株数がほぼ70株となるように出来ている。
【0017】
その田植機を不耕起移植に用いると、前輪7と後輪8のスリップ率の減少により、走行車体1の前進速度が上昇し、苗の株間が広がってその植込株数が低下する。その低下を復元させるための株間調整変速機73がつぎのように出来ている。
第三軸74に大歯車75aと小歯車75bが固定されている。大歯車76aと小歯車76bが一体に出来た変速歯車76が株間調整ソレノイド77で移動するように第二軸72に取付けられている。第三軸74の回転が、傘歯車78および79を経由して植込クラッチ39に伝わっている(図8)。そして、耕起移植に当っては、小歯車76b、大歯車75aに咬ませて「低速」で用い、不耕起移植に当っては、大歯車76aを小歯車75bに咬ませて「高速」で用いる。すると、耕起移植に比較して不耕起移植では苗植装置3の作動が増速され、低下した上記の苗の植込株数がほぼ同数に増加する。
【0018】
なお、車輪7,8に対する動力伝達経路内に株間調整変速機73を設け、不耕起移植に当って車輪7,8の回転を減速させることができる。
パネルその他にランプを設け、株間調整変速機73が耕起移植用の速度を選択していること、又は、不耕起移植用の速度を選択していることを表示することができる。
【0019】
つぎのように構成すると、自動化等が行われて好都合である(図11)。
昇降(植付)レバーセンサ40aが昇降(植付)レバー40の回動部に設けられ、その「上げ」「下げ」の位置を制御装置78に入力している。
主変速レバーセンサ19aが主変速レバー19の作動部に設けられ、主変速機12が「作業速」か否かを制御装置78に入力している。
【0020】
主クラッチセンサ18aが主クラッチペタル18の作動部に設けられ、主クラッチ11の「入り」「切り」を制御装置78に入力している。
昇降スイッチ61の作動が制御装置78に入力されている。
耕起クラッチセンサ66aが耕起クラッチペタル66の作動部に設けられ、耕起クラッチペタル66の上下の位置を制御装置78に入力している。
【0021】
耕起昇降センサ(ポテンショメータ)57aが支持枠52に取付られ、昇降軸57の揺動角、すなわち、苗植装置3に対する耕起装置2の高さを制御装置78に入力している。
植込フレーム29の下腹部からレバー79が斜後下に伸び、その後端にフロート37が取付けられている。そして、レバー79を回動させると植込フレーム29の泥面からの高さが変化して苗の植込深が調節出来るようになっている。深さセンサ79aがレバー79の基部に取付けられ、苗の植込深さを制御装置78に入力するようになっている。
【0022】
上記の入力で制御装置78が耕起ソレノイド64a、株間調整ソレノイド77、昇降モータ54および警報器80などをつぎのように作動する。
▲1▼昇降スイッチ61からの入力が「上げ」であると、昇降モータ54に出力して耕起装置2を上昇させるとともに、株間調整ソレノイド77に出力して株間調整変速機73を「低速」にする。昇降スイッチ61からの入力が「下げ」で、耕起クラッチセンサ66aからの入力が「下げ」であると、昇降モータ54に出力して耕起装置2を下降させ、耕起ソレノイド64aに出力して耕起クラッチ64を「入り」にし、株間調整ソレノイド77に出力して株間調整変速機73を「高速」にする。
【0023】
▲2▼主クラッチセンサ18aからの入力が「入り」で主変速レバーセンサ19aからの入力が「作業速」で昇降(植付)レバーセンサ40aからの入力が「下げ」のとき、昇降スイッチ61からの入力が「下げ」で耕起クラッチセンサ66aからの入力が「上げ」であると、警報器80に出力して警報を発する。また、上記のとき、昇降スイッチ61からの入力が「上げ」で耕起クラッチセンサ66aからの入力が「下げ」であると、警報器80に出力して警報を発する(図12,図13)。
【0024】
▲3▼尚、図14のフローチャートのように、耕起クラッチセンサ66aが「下げ」、昇降スイッチ61が「下げ」主変速レバーセンサ19aが「作業速」及び主クラッチセンサ18aが「入り」のとき、耕起クラッチ64を強制的に「入り」にさせて、耕起クラッチペダルによる耕起クラッチ「入」の操作忘れを補うことができる。
【0025】
▲4▼レバー79の後端を昇降させると、フロート37が昇降して苗の植込深さが変化する。深さセンサ79aによるその深さに応じて昇降モータ54に出力し、耕起装置2を昇降させる。なお、苗の植込深さに対応した耕起装置2の高さを実験その他で求めて制御装置78に記憶させ、耕起昇降センサ57aからの入力がその高さになると昇降モータ54を停止させる。
【0026】
耕起爪45は、それぞれの植込杆31の前のものが同時に圃場に打ち込まないように、少しづつずらせて設けると、負荷が軽減される。また、その爪45は、中央を中心にして左右対称にずらせて設けると、振動も軽減される。
【0027】
【効果】
この発明によると、同一の田植機を耕起移植と不耕起移植に用いても、坪(3.3m2)当りの苗の植込株数が同じ(ほぼ同じ)になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を施した田植機の側面図
【図2】その平面図
【図3】その一部の拡大した平面図
【図4】その伝動機構図
【図5】その一部の拡大した側面図
【図6】その一部の拡大した平面図
【図7】その一部の拡大した平面図
【図8】その一部の伝動機構図
【図9】その一部の平面図
【図10】その一部の背面図
【図11】その一部のブロック回路図
【図12】その一部の説明図
【図13】その一部のフローチャート
【図14】その一部のフローチャート
【符号の説明】
1 走行車体
3 苗植装置
7 車輪(前輪)
8 車輪(後輪)
73 株間調整変速機
Claims (1)
- 車輪7,8の回転で前進する走行車体1に苗植装置3が装着され、その苗植装置3は耕起して代掻をした水田と耕起していない水田とに苗が移植できるように設けられ、車輪7,8が耕起して代掻をした水田で回転するときのスリップ率と耕起していない水田で回転するときのスリップ率を調整して苗植装置3による植付苗の株間を均一化する株間調整変速機73が苗植装置3又は車輪7,8に達する動力伝達経路に設けられている田植機。
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JP11218498A JP3591298B2 (ja) | 1998-04-22 | 1998-04-22 | 田植機 |
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