JP4958299B2 - チーズ類の製造法 - Google Patents
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また、オーブンなどの熱による溶解・変形を抑える方法として、(3)クリームチーズなどのチーズ原料にカードランを安定剤及び/又はガム質と共に添加して耐熱保形性を有するチーズの製造法(特許文献3:特許公報 第2908522号)が報告されている。
また、(2)の方法で製造されるチーズは、カット適性を有しているが、耐熱性の評価は焦げ具合を目視しているだけであり、保形性を評価していなかった。更にゲル特有の食感を有しており、高水分軟質チーズ本来の風味を損なっていた。
そして(3)の方法については、充填に適した組織及び耐熱保形性に関する記述がなされているが、充填したチーズがカット適性を有するという知見は得られていなかった。
[1] 高水分軟質チーズを1種類又は2種類以上含有する混合物、ゼラチンを1.0w/w%〜5.0w/w%、および乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜5.0w/w%含有し、かつカット適性および耐熱保形性を有するチーズ類、
[2] 前記ゼラチンの濃度が1.0w/w%〜3.0w/w%であり、かつ前記乳タンパク濃縮物の濃度が1.4w/w%〜4.8w/w%であることを特徴とする、前記[1]に記載のチーズ類、
[3] 前記チーズ類が、高水分軟質チーズの良好な風味を有しているものであり、10℃での硬度が110g以上、および耐熱保形性が80%以上であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載のチーズ類、
[4] 前記高水分軟質チーズを原材料中75w/w%以上含有していることを特徴とする、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のチーズ類、
[5] 前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のチーズ類をカットしてなる、スライス状、サイノメ状、タンザク状またはシュレッド状のチーズ類、
[6] カット適性及び耐熱保形性を有するチーズ類の製造方法であって、高水分軟質チーズを1種類又は2種類以上含有する混合物、ゼラチンを1.0w/w%〜5.0w/w%、および乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜5.0w/w%含有せしめることを特徴とする、チーズ類の製造方法、
[7] 前記ゼラチンを1.0w/w%〜3.0w/w%含有せしめ、かつ前記乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜4.8w/w%含有せしめることを特徴とする、前記[6]に記載のチーズ類の製造方法、
[8] 前記チーズ類が、高水分軟質チーズの良好な風味を有しているものであり、10℃での硬度が110g以上、および耐熱保形性が80%以上であることを特徴とする、前記[6]又は[7]に記載のチーズ類の製造方法、
[9] 前記高水分軟質チーズを原材料中75w/w%以上使用することを特徴とする、前記[6]〜[8]のいずれか1つに記載のチーズ類の製造方法、
[10] 前記[6]〜[9]のいずれか1つに記載の製造方法で得られたチーズ類をカットすることを特徴とする、スライス状、サイノメ状、タンザク状またはシュレッド状のチーズ類の製造方法、
からなる。
さらに好ましくは、ゼラチンを1.0w/w%〜3.0w/w%、および乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜4.8w/w%含有することが好ましい。また、ローカストビーンガム、グアーガム、寒天、カラギナン、HM−ペクチン、LM−ペクチン、タラガム、ジェランガム、カードラン、澱粉、卵白等、他の安定剤やゲル化剤を高水分軟質チーズの良好な風味を損なわない範囲内で併用してもかまわない。
(1)加熱乳化:上記の原材料をプロセスチーズ、チーズフードまたは乳等を主要原料とする食品の製造における一般的な条件(温度等)で加熱乳化する。また、加熱乳化は攪拌混合しながら行うことが好ましい。加熱乳化に使用する乳化機としては、特に限定されないが、通常チーズ類の乳化に使用しているクッカー型乳化機、ケトル型乳化機、ステファン型乳化機、表面掻き取り式乳化機等を例示することができる。
(2)原材料混合:安定剤及びゲル化剤、また必要に応じてチーズ以外の原料を水又はバターミルクなどに溶解・分散してミックス液を調製することができる。これを高水分軟質チーズのチーズカードと混合し、プロセスチーズ、チーズフードまたは乳等を主要原料とする食品の製造における一般的な条件(温度等)で加熱攪拌する。
耐熱保形性の測定法は、例えば、実施例1に示すように(1)A.ダイス状のチーズ類:厚さ8mm×長さ8mm×幅8mmに切った試作品をそのまま金属板に乗せ、また、B.スライス状のチーズ類:厚さ2mmにスライスしたチーズ類を4枚重ねにしたのちに厚さ8mm×長さ8mm×幅8mmに切った状態で金属板に乗せた後、(2)オーブンの中で200℃5分間の加熱を行い、(3)加熱後のチーズ類の高さ(mm)を測定し、(4)これを加熱前のチーズ類の高さ(8mm)で除して耐熱保形性(%)を算出することができる。
本発明のチーズ類は耐熱保形性を有するので、例えば、製菓や製パン用に使用した場合、オーブンなどの加熱によってもチーズ類が溶解・変形しないため、パンのトッピングや食感のアクセント等として使用することが可能となる。
高水分軟質チーズとしてクリームチーズを用い、バター等と共にゼラチン、乳タンパク濃縮物を各濃度で添加して製造したチーズ類の比較を行った。
加熱攪拌直後の溶解物の外観を観察した。このとき、加熱によりチーズ類の組織から油脂が遊離し表面に油膜が形成される状態を、乳化安定性が悪い状態(オイルオフ)として評価した。一方、オイルオフのないものを乳化安定性が良好な状態として評価した。
加熱攪拌直後の溶解物の粘度測定は、高粘度用粘度計ビスコテスター VT−04(リオン(RION)社製)を用いて行った。単位はパスカル秒(Pa・s又はPsともいう)である。
硬度の測定は、レオメーター(不動工業(株)製)を用いて行った。測定方法は、実施例1で製造したブロック状のチーズ類のパラフィルムを剥いだ後、厚さ15mm×長さ50mm×幅40mmに切って試料台に乗せ、直径3mmのプランジャーに向けて試料台を15cm/分で上昇させ、プランジャーがチーズ類の表面に接してから、チーズ類の表面を突き破って突き刺さる時にかかる力(g)を測定した。硬度測定時のチーズ類の温度は10℃とした。
耐熱保形性の測定法は、(1)A.ダイス状のチーズ類:厚さ8mm×長さ8mm×幅8mmに切った試作品をそのまま金属板に乗せ、また、B.スライス状のチーズ類:厚さ2mmにスライスしたチーズ類を4枚重ねにしたのち、厚さ8mm×長さ8mm×幅8mmに切った状態で金属板に乗せた後、(2)オーブンの中で200℃5分間の加熱を行い、(3)加熱後のチーズ類の高さ(mm)を測定し、(4)これを加熱前のチーズ類の高さ(8mm)で除して耐熱保形性(%)算出した。
○:糊感がなく、高水分軟質チーズ特有の爽やかな風味を有する
△:少し糊感を有するが、高水分軟質チーズ特有の爽やかな風味は多少感じられる
×:糊感が強く、高水分軟質チーズ特有の爽やかな風味を損なっている
○:ノズル先端でのチーズ類の切れが良く、パラフィルム全体にチーズ類が広がる
△:ノズル先端でのチーズ類の切れが少し悪く、パラフィルム全体にチーズ類が広がりにくいが許容範囲内である
×:ノズル先端でのチーズ類の切れが悪く、パラフィルム全体にチーズ類が広がらない
○:正常にカットでき、良好な形状および目的とする形態が得られる
△:カットはでき目的とする形態が得られるが、角の部分が欠けるなど良好な形状を得られない
× :カットできず、カット後のチーズ類が目的とする形態になっていない
結果を表1に示す。ゼラチン、乳タンパク濃縮物をそれぞれ単独で使用した場合(試作品1−1〜1−6)、良好な形状が得られないまでもカットできた時のゼラチン含量は少なくとも3.1w/w%(試作品1−2)、乳タンパク濃縮物含量は少なくとも4.9w/w%(試作品1−5)となった。しかし、これらの試作品の耐熱保形性は80%未満であり、単独のままゼラチン、乳タンパク濃縮物の含量を増加させても、目標とする物性は得られなかった(試作品1−3、1−6)。また、乳タンパク濃縮物含量を6w/w%とする試作品(1−6)は粘度が460パスカル秒(ps)となり、著しく流動性を損ねていた。また、充填適性も不良であった。
次に、ゼラチンと乳タンパク濃縮物を併用する組み合わせ(試作品1−7〜1−10)では、ゼラチン含量が1.1w/w%、乳タンパク濃縮物が1.5w/w%とした場合に、硬度が114gとなり、各種形状に正常にカットすることができた(試作品1−8)。また、このときの耐熱保形性も80%以上であり、風味についても糊感のない良好な高水分軟質チーズの風味を有していた。また、ゼラチン含量が4.6w/w%、乳タンパク濃縮物が4.6w/w%とした場合、良好な形状は得られないまでもカットはできており、目的とする形態が得られた。耐熱保形性も80%以上を有していた(試作品1−10)。
Claims (10)
- 高水分軟質チーズを1種類又は2種類以上含有する混合物、ゼラチンを1.0w/w%〜5.0w/w%、および乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜5.0w/w%含有し、かつカット適性および耐熱保形性を有するチーズ類。
- 前記ゼラチンの濃度が1.0w/w%〜3.0w/w%であり、かつ前記乳タンパク濃縮物の濃度が1.4w/w%〜4.8w/w%であることを特徴とする、請求項1に記載のチーズ類。
- 前記チーズ類が、高水分軟質チーズの良好な風味を有しているものであり、10℃での硬度が110g以上、および耐熱保形性が80%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のチーズ類。
- 前記高水分軟質チーズを原材料中75w/w%以上含有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチーズ類。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のチーズ類をカットしてなる、スライス状、サイノメ状、タンザク状またはシュレッド状のチーズ類。
- カット適性及び耐熱保形性を有するチーズ類の製造方法であって、高水分軟質チーズを1種類又は2種類以上含有する混合物、ゼラチンを1.0w/w%〜5.0w/w%、および乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜5.0w/w%含有せしめることを特徴とする、チーズ類の製造方法。
- 前記ゼラチンを1.0w/w%〜3.0w/w%含有せしめ、かつ前記乳タンパク濃縮物を1.4w/w%〜4.8w/w%含有せしめることを特徴とする、請求項6に記載のチーズ類の製造方法。
- 前記チーズ類が、高水分軟質チーズの良好な風味を有しているものであり、10℃での硬度が110g以上、および耐熱保形性が80%以上であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のチーズ類の製造方法。
- 前記高水分軟質チーズを原材料中75w/w%以上使用することを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載のチーズ類の製造方法。
- 請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られたチーズ類をカットすることを特徴とする、スライス状、サイノメ状、タンザク状またはシュレッド状のチーズ類の製造方法。
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