JP4431292B2 - プロセスチーズ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にプロセスチーズは、原料ナチュラルチーズに、溶融塩、必要に応じて乳化剤、水を加え、乳化機を用いて加熱乳化して得られる乳化物を容器に充填して冷却することにより製造され、ナチュラルチーズに比べて癖がなく、食べやすいことから多くの人に好まれ、その需要は年々増加している。
プロセスチーズは形態として、スライス状のもの、スティック状のもの、アルミホイールで個包装したもの、カートン充填したもの等がある。また、スライスタイプやプレカットタイプのものであれば、剥離性が良好であることが望まれ、加熱調理用のものであれば、熱溶融性、糸曵き性が良好であることが望まれるなど、用途に合わせた機能性が要求されている。最近では、スープ、シチュー、おでん等の煮込み料理やオムレツ、ハンバーグ、チャーハン等の加熱調理にチーズが用いられることがあり、プロセスチーズの機能性として加熱によって溶融しない耐熱性や耐水性が求められることもある。また、このような用途に用いる場合は、具材の大きさに合わせてプロセスチーズをカットする必要があるため、ダイス状やスライス状等、予め適当な形状や大きさにカットされているものを利用することが好ましい。しかしながら、カットしたチーズは、切断面で結着しやすいため、使用時に結着したチーズを手でほぐしたり、剥がさなくてはならなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
剥離性の良好なプロセスチーズとして、熟成を抑制したチーズを用いて製造されるプロセスチーズ(特開平4-179442号公報、特開平5-76282号公報)、カルボン酸塩、ジリン酸塩、トリポリリン酸塩、ポリリン酸塩又はこれらの混合物からなる溶融塩を添加して製造されるプロセスチーズ(特開平8-196209号公報)、全タンパク質中ホエータンパク質を0.15重量%以上含有するプロセスチーズ(特開平8-256686号公報)等があるが、これらのプロセスチーズは耐熱耐水性を有するものではない。
そこで、本発明は、耐熱耐水性を有し、剥離性の良好なプロセスチーズを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは先の出願(特願 2000-292908号)において、乳タンパク質濃縮物粉末を水、生乳又は脱脂乳で乳タンパク質濃度が6〜20重量%となるように溶解し、均質処理を行った後、凝乳酵素を添加し、次いで乳酸菌スターター及び/又は酸性化剤を添加し、原料乳のpHを 5.0〜6.0 に調整し、40℃以上の温湯中でカードを形成させることにより、耐熱性及び耐水性を有するナチュラルチーズが得られることを見出した。この知見をもとにさらに検討を進めたところ、この耐熱性及び耐水性を有するナチュラルチーズを用いてプロセスチーズを製造することにより、耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
本発明は、耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズに関する。また、本発明は、乳タンパク質濃縮物を、乳タンパク質濃度が6〜20重量%になるように調製した原料乳に、凝乳酵素を添加するか又は添加することなく、乳酸菌スターター又は酸性化剤を添加して原料乳のpHを 5.0〜6.0 に調整し、40℃以上の温湯中でカードを形成させ、ナチュラルチーズを調製し、これを原料としてプロセスチーズを製造することよりなる耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズの製造方法に関する。
【0006】
本発明において耐熱耐水性が良好とは、プロセスチーズの立方体を水中に入れ、100 ℃、10分間レトルト処理したときに、チーズがもとの高さの80%以上の高さを維持するものである。具体的には、例えば20mm×20mm×20mmの立方体に切り出したプロセスチーズをオートクレーブで 100℃、10分間加熱する。加熱後に、プロセスチーズがもとの高さの80%以上の高さ(16mm以上)を維持しているとき、良好な耐熱耐水性を有するものである。また、形態がスライス状の場合は、プロセスチーズを例えば10cm×10cm×2mmのスライス状に切り出し、スライスチーズ同士が密着するように10枚重ねてラップで包み、5℃で冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後、ラップを剥がし、20mm×20mm×20mmの立方体にカットしたプロセスチーズをオートクレーブで 100℃、10分間加熱する。加熱後に、プロセスチーズがもとの高さの80%以上の高さ(16mm以上)を維持しているとき、良好な耐熱耐水性を有するものである。
【0007】
また良好な剥離性とは、プロセスチーズを例えば50mm×30mm×5mmに切り出し、チーズ同士が密着するように11枚重ねてラップで包み、5℃で冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後、ラップを剥がし、積層スライスチーズを1枚ずつ剥がす操作を繰り返し、10枚剥がしたうち、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数を数える。同様の操作を10回繰り返し、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数の平均値が9枚以上であるとき、剥離性が良好であるとする。これは、次の方法で評価される剥離性と同様のものである。プロセスチーズを1枚10±0.1g(50mm×30mm×5mm)に切り出し、プロセスチーズ同士が密着するように2枚重ねてラップに包み、5℃で冷却した後、25℃で2時間保持する。その後、図1及び図2a〜cに示すように、2枚重なったチーズをレオナー(RE-3305 、山電社製)に置き、下側のチーズをレオナーの移動テーブルにチーズの固定具で固定する。次いで、上側のチーズの30mm×5mm 面(側面)中央に、幅15mm、厚さ2mmの板状フックを5mm貫入し、ワイヤを介してリフトでフックを1mm/秒の速さで引き上げる。フックを引き上げた後、剥がれたチーズの重量を測定する。これを50回繰り返し、フックを引き上げて剥がれた上側のチーズの重量が10±0.1gの範囲内に収まるチーズの個数の割合(%)を剥離性の指標とする。本発明においては、綺麗に剥離され、重量が10±0.1gの範囲内に収まるチーズの個数の割合が90%以上であるとき剥離性が良好であるとする。
形態がスライス状の場合、プロセスチーズを例えば、10cm×10cm×2mmのスライス状に切り出し、スライスチーズ同士が密着するように、11枚重ねてラップで包み5℃で冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後、ラップを剥がし、積層スライスチーズを1枚ずつ剥がす操作を繰り返し、10枚剥がしたうち、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数を数える。同様の操作を10回繰り返し、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数の平均値が9枚以上であるとき、剥離性が良好であるとする。
【0008】
また立方体の場合、プロセスチーズを例えば、5mm×5mm×5mmの立方体(ダイス状)に切り出し、ダイス状チーズ同士が密着するように11個重ねてラップで包み、5℃で冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後ラップを剥がし、積層ダイス状チーズを1個ずつ剥がす操作を繰り返し、10個剥がしたうち、ちぎれがなく剥がれたチーズの個数を数える。同様の操作を10回繰り返し、ちぎれがなく剥がれたチーズの個数の平均値が9個以上であるとき、剥離性が良好であるとする。
【0009】
直方体の場合、プロセスチーズを例えば、5 mm×15mm×2mmの直方体(シュレッド状)に切り出し、シュレッド状チーズ同士が密着するように11枚重ねてラップで包み、5℃まで冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後ラップを剥がし、積層シュレッド状チーズを1枚ずつ剥がす操作を繰り返し、10枚剥がしたのち、ちぎれがなく剥がれたチーズの枚数を数える。同様の操作を10回繰り返し、ちぎれがなく剥がれたチーズの枚数の平均値が9枚以上であるとき剥離性が良好であるとする。
【0010】
乳タンパク質濃縮物(Milk Protein Concentrate、以下、MPCともいう)は、脱脂乳を除菌した後、透析濾過膜や限外濾過膜により膜処理して、脱塩されたものを加熱、濃縮することにより得られるタンパク質を固形分にあたり40重量%以上含有する溶液、または該溶液を乾燥させて得られるタンパク質40重量%以上を含有する乳タンパク質の粉末であり、脱脂乳が脱塩された状態で、加熱殺菌されているので、含有されているタンパク質の変性度が低い。このため、MPCの溶液、または粉末の溶解液は、主要タンパク質であるカゼインの大部分が、カゼインミセルの構造を保持したまま存在し、また、カゼインの一部が、ホエータンパク質の一つであるβ−ラクトグロブリンと結合しているため、MPCを主原料乳として調製されるナチュラルチーズは、チーズ中のタンパク質の構造がより強固なものとなっており、耐熱耐水性が良好なものとなる。また、このようにカゼインの一部がβ−ラクトグロブリンと結合することにより、タンパク質の構造がより強固となるだけでなく、カゼインミセルの見かけの疎水性度が低減されるため、剥離性が発現する。このようなナチュラルチーズを用いてプロセスチーズを製造することにより、耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズが得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において原料ナチュラルチーズの製造は、特願 2000-292908号に記載の方法に従って行うことができる。
すなわち、MPCの粉末を、水、生乳、脱脂乳で溶解し、原料乳の乳タンパク質濃度が6〜20重量%となるように MPCの溶解液を調製する。なお、次の工程で乳脂肪としてバター、クリーム等を添加する場合には乳脂肪源に含有される乳タンパク質の量を考慮して MPCの溶解液を調製する必要がある。原料乳の乳タンパク質濃度が6重量%未満では得られるナチュラルチーズに耐熱耐水性が付与されず、20重量%を超えると MPCの粉末を溶解できないため好ましくない。また、MPCの濃縮液を用いる際も、乳タンパク質濃度が6〜20重量%となるように調整する。
この MPCの溶解液に、バター、クリーム、ハイファットクリームチーズ(HFC) 等の乳脂肪を添加して、乳脂肪含量が原料乳中の乳タンパク質に対して約50〜80重量%となるように調整し、ホモゲナイザー等の均質機を用いて均質処理を行い原料乳を調製する。このとき、乳脂肪球の平均粒子径は 1.5〜3μmに調整することが好ましい。
【0012】
次いで、均質処理を行った原料乳を63℃で30分間から75℃で15分間程度の条件で加熱殺菌を行い、その後10〜30℃まで冷却する。また、原料乳を調製する際に、レンネット反応を促進するためにカルシウムを添加してもよい。このように調製した原料乳に、場合によっては子牛レンネット、微生物レンネット、遺伝子組み換えレンネット等の凝乳酵素を原料乳に対して、 0.00001〜 0.01重量%添加し、乳酸菌スターターを原料乳に対して、 0.5〜3重量%、乳酸、グルコノデルタラクトン(glucono-δ-lactone、以下 GDLと略す)等の酸性化剤を添加し、原料乳のpHが 5.0〜6.0 となるように調整し、40℃以上の温湯中で瞬時に昇温させてカードを形成させ、生じたホエーの全量を排除してカードを調製する。このとき、原料乳のpHが5.0 未満では、ナチュラルチーズに耐熱耐水性を付与することができず、pH6.0 を超えると原料乳が凝固しないため好ましくない。なお、本発明においては、乳酸菌スターター及び/又は酸性化剤を添加することで、pHを 5.0〜6.0 に調整することができれば、40℃以上の温湯中でカードが形成されるため、凝乳酵素を添加しなくてもよい。その後、得られたチーズカードをモールドに移し、荷重をかけて圧搾し、モールドを外してブライン加塩を行い、プラスチック製の袋に入れて真空包装し、10℃で熟度が5〜20%となるように熟成させる。
【0013】
このようにして得られたナチュラルチーズを20重量%以上配合してプロセスチーズを製造することにより耐熱耐水性及び剥離性が良好なプロセスチーズが得られる。なお、原料ナチュラルチーズとして、MPCから調製されるナチュラルチーズとともに、チェダーチーズ、ゴーダチーズ、エダムチーズ、エメンタールチーズ、パルメザンチーズ、クリームチーズ、カマンベールチーズ、ブルーチーズ等を配合してもよい。このとき、原料チーズの熟度は2〜50%となるように調整することが好ましい。
【0014】
本発明において、プロセスチーズの製造は、公知の方法に従って行えばよく、例えば、原料ナチュラルチーズにクエン酸ナトリウム、モノリン酸ナトリウム、ジリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等の溶融塩を 0.1〜3重量%添加し、水分含量が35〜55重量%となるように水を添加し、さらに必要に応じて、pHを調整する目的で重曹、乳酸等のpH調整剤、乳化を良好にする目的でショ糖脂肪酸エステル、レシチン、グリセライド等の乳化剤、食感や物性を改良する目的で寒天、ローカストビーンガム、カラギーナン、グアガム、キサンタンガム等の増粘剤を添加し、ケトル型、2軸スクリューを持つクッカー型、サーモシリンダー型等の乳化機を用い、100〜1500rpmで乳化し、品温が80〜100℃に達した時点で乳化を終了させ、得られた乳化物を樹脂でコーティングされたアルミ箔、ポリエチレンテレフタレート、パラコート等からなる適当な大きさの容器に充填して冷却する。また、ブロック状に製造されたプロセスチーズを、例えば、スライサーを用いて厚さ2mm〜5mm程度に切り出してスライスチーズとしてもよく、5mm〜30mm程度の立方体(ダイス状)、又は直方体(シュレッド状)としてもよい。これらのチーズはこのまま袋に入れて保存しても結着しづらく、結着しても容易に剥離し、剥離性の良好なプロセスチーズである。また、茹でる、煮込むといった加熱調理によっても溶融することがなく耐熱耐水性の良好なプロセスチーズである。
【0015】
なお、本発明において熟度とは、次式で求められる値である。
熟度(%)=(可溶性窒素/全窒素)×100
上式において、可溶性窒素及び全窒素は、次のようにして求めた値を使用する。 (1) 試料液:チーズ10g を採取し、それに0.5Nクエン酸ナトリウム40mlを加え、ホモブレンダーで5分間研摩後、メスフラスコに移し、蒸留水を加えて 200ml定容とする。
(2) 全窒素:試料液10mlを採取し、ケルダール法で測定する。
(3) 可溶性窒素:試料液100mlに1.41N塩酸10ml及び蒸留水15mlを加える。生成した沈殿物を濾過し、濾液20mlを採取し、ケルダール法で測定する。
【0016】
【参考例1】
(1) ナチュラルチーズ(1) 及び(2)の調製
MPC(乳タンパク質含量81重量%、ALAPRO4850、ニュージーランドデイリーインダストリー社製)を水で溶解し、20重量%濃度のMPC溶液を調製した。これに乳脂肪含量が原料乳中の乳タンパク質に対して12重量%となるように無塩バターを添加し、乳脂肪球を分散させる目的で、ホモゲナイザー(三和機械工業社製)を用い、均質圧20kg/cm2の条件で均質処理を行った。次いで、加熱殺菌機を用いて70℃達温で殺菌した後、15℃まで冷却し、乳タンパク質含量が17.6重量%の原料乳5kgを得た。この原料乳に乳酸菌スターター(CH-N19、DVSタイプ、クリスチャンハンセン社製)1重量%及びレンネット(HRレンネット、クリスチャンハンセン社製)0.001 重量%を添加し、穏やかに撹拌した後、15℃に保持しながら15分間静置した。この原料乳に乳酸を添加して、pHが5.6となるように調整し、60℃の温湯に添加してカードを調製した。得られたチーズカードをモールドに移して0.06kg/cm2の圧力で2時間圧搾した。圧搾後チーズカードをモールドから外してブライン加塩を行い、約500gの未熟成チーズを6個得た。これらをプラスチック製の袋に入れて真空包装した。3個のチーズは熟成させずナチュラルチーズ(1)として熟度を測定し、3個は4カ月間熟成させナチュラルチーズ(2)として熟度を測定した。ナチュラルチーズ(1)の熟度の平均は5.2%、ナチュラルチーズ(2)の熟度の平均は16.5%であった。
【0017】
(2) ナチュラルチーズ(3)及び(4)の調製
脱脂乳26.6重量%及び生乳73.4重量%を混合し、乳脂肪含量が原料乳中の乳タンパク質に対して2.8重量%である原料乳を調製した。この原料乳を用い通常のゴーダチーズの製造に従い、約500gの未熟成チーズを6個得た。これらをプラスチック製の袋に入れて真空包装した。3個のチーズは熟成させずナチュラルチーズ(3)として熟度を測定し、3個は4カ月間熟成させナチュラルチーズ(4)として熟度を測定した。ナチュラルチーズ(3)の熟度の平均は5.3%、ナチュラルチーズ(4)の熟度の平均は16.5%であった。
【0018】
(3) ナチュラルチーズ(5)の調製
MPC(乳タンパク質含量81重量%、ALAPRO4850、ニュージーランドデイリーインダストリー社製)を水で溶解し、20重量%濃度のMPC溶液を調製した。これに乳脂肪含量が原料乳中の乳タンパク質に対して12重量%となるように無塩バターを添加し、乳脂肪球を分散させる目的で、ホモゲナイザー(三和機械工業社製)を用い、均質圧20kg/cm2の条件で均質処理を行った。次いで、加熱殺菌機を用いて70℃達温で殺菌した後、15℃まで冷却し、乳タンパク質含量が17.6重量%の原料乳 5kgを得た。この原料乳に乳酸菌スターター(CH-N19、DVSタイプ、クリスチャンハンセン社製)1重量%を添加し、穏やかに撹拌した後、15℃に保持しながら15分間静置した。この原料乳に乳酸を添加して、pHが5.6となるように調整し、60℃の温湯に添加してカードを調製した。得られたチーズカードをモールドに移して0.06kg/cm2の圧力で2時間圧搾した。圧搾後チーズカードをモールドから外してブライン加塩を行い、約 500gの未熟成チーズを6個得た。これらをプラスチック製の袋に入れて真空包装し、4カ月間熟成させナチュラルチーズ(5)として熟度を測定した。ナチュラルチーズ(5)の熟度の平均は12.6%であった。
【0019】
(4) ナチュラルチーズ(6)、(7)、(8)及び(9)の調製
MPC(乳タンパク質含量80重量%、PROMILK852、イングレディア社製)を水で溶解し、3.0、6.0、15、20、25重量%濃度のMPC溶液を調製した。これに乳脂肪含量が原料乳中の乳タンパク質に対して45重量%となるように無塩バターを添加し、乳脂肪球を分散させる目的で、ホモゲナイザー(三和機械工業社製)を用い、均質圧20kg/cm2の条件で均質処理を行った。次いで、加熱殺菌機を用いて70℃達温で殺菌した後、20℃まで冷却し、乳タンパク質含量が 2.9、5.8、14、18、22重量%の原料乳をそれぞれ3kgずつ得た。この原料乳に乳酸菌スターター(CH-N19、DVS タイプ、クリスチャンハンセン社製)1重量%及びレンネット(HRレンネット、クリスチャンハンセン社製)0.0005重量%を添加し、穏やかに撹拌した後、20℃に保持しながら20分間静置した。この原料乳に乳酸を添加して、pHが 5.2となるように調整し、80℃の温湯に添加してカードを調製した。なお、タンパク質含量が25重量%の原料乳を用いたものは、カードを形成させる際に溶液の粘度が上昇しすぎて、カードが形成されなかった。形成されたチーズカードをモールドに移して0.06kg/cm2の圧力で2時間圧搾した。圧搾後チーズカードをモールドから外してブライン加塩を行い、約500gの未熟成チーズをそれぞれ3個得た。これらをプラスチック製の袋に入れて真空包装し、10℃で3カ月間熟成させた。乳タンパク質含量が3.0重量%の原料乳から得られたチーズをナチュラルチーズ(6)、6.0 重量%のものをナチュラルチーズ(7)、15重量%のものをナチュラルチーズ(8)、20重量%のものをナチュラルチーズ(9)とした。なお、ナチュラルチーズ(6)の熟度の平均は13.5%、ナチュラルチーズ(7)は、13.3%、ナチュラルチーズ(8)は13.2%、ナチュラルチーズ(9)は、13.2%であった。
【0020】
(5) ナチュラルチーズ(10)、(11)、(12)、(13)の調製
MPC(乳タンパク質含量80重量%、PROMILK852、イングレディア社製)を水で溶解し、20重量%濃度の MPC溶液を調製した。これに乳脂肪含量が原料乳中の乳タンパク質に対して12重量%となるようにハイファットクリームチーズを添加し、乳脂肪球を分散させる目的で、ホモゲナイザー(三和機械工業社製)を用い、均質圧20kg/cm2の条件で均質処理を行った。次いで、加熱殺菌機を用いて70℃達温で殺菌した後、15℃まで冷却し、乳タンパク含量が17.6重量%の原料乳1.2kgを得た。この原料乳を5等分し、乳酸菌スターター(CH-N19、DVS タイプ、クリスチャンハンセン社製)0.001 重量%を添加し、穏やかに撹拌した後、15℃に維持しながら15分間静置した。この原料乳に乳酸を添加して、pHが 4.8、5.0、5.5、6.0、6.2となるように調整し、70℃の温湯に添加してカードを調製した。なお、pHを6.2に調整したものは温湯中でチーズカードが形成されなかった。形成されたチーズカードをモールドに移して0.06kg/cm2の圧力で2時間圧搾した。圧搾後チーズカードをモールドから外してブライン加塩を行い、約500gの未熟成チーズを1個ずつ得た。これらをプラスチック製の袋に入れて真空包装し、10℃で3カ月間熟成させた。pHを4.8に調整して得られたチーズをナチュラルチーズ(10)、pHを5.0に調整したものをナチュラルチーズ(11)、pHを5.5に調整したものをナチュラルチーズ(12)、pHを6.0に調整したものをナチュラルチーズ(13)とした。なお、ナチュラルチーズ(10)の熟度の平均は13.2%、ナチュラルチーズ(11)は13.6%、ナチュラルチーズ(12)は13.7%、ナチュラルチーズ(13)は13.4%であった。
【0021】
【実施例1】
先に調製した MPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズ(1) 、脱脂乳及び生乳から調製されたナチュラルチーズ(3)及びチェダーチーズ(ニュージーランドデイリープロダクツ社製、熟成10ヶ月)を用い、表1に示すような割合でそれぞれのチーズを配合し、原料チーズ各5kgを調製した。この原料チーズに対して、溶融塩としてJOHA-SE(JOHA社製)を2重量%、水分含量が45重量%となるように水、pHが5.8となるように重曹、安定剤としてゲルアップ (三栄源社製) 1.0重量%をそれぞれ添加し、ケトル型乳化機を用い、ジャケットに蒸気を入れながら、100rpmで混練し、加熱乳化を行った。品温が90℃になった時点で乳化を終了し、得られた乳化物を容器(40mm×60mm×180mm)に充填して10℃で1晩冷却し、試料1〜10の10種のプロセスチーズを製造した。なお、冷却する前の乳化物(品温85℃)の粘度を粘度計(ビスコステッサー、リオン社製)を用いて測定し、また既に記した方法で、全窒素及び可溶性窒素を求めて熟度を算出した。
試料1〜10について、原料チーズの配合割合、熟度及び粘度を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0004431292
【0023】
試料1〜10のプロセスチーズを1週間10℃で保存し、以下に示す方法で、耐熱耐水性及び剥離性を評価し、さらに官能評価を行った。
(1) 耐熱耐水性は、20mm×20mm×20mmの立方体にカットしたプロセスチーズを水中に入れ、100℃で10分間レトルト処理した後に、プロセスチーズがもとの高さの80%以上の高さ(16cm以上)を維持しているとき、耐熱耐水性を有するものとした。
【0024】
(2) 剥離性は、次の方法で測定した。▲1▼プロセスチーズを1枚10±0.1g (50mm×30mm×5mm)に切り出し、プロセスチーズ同士が密着するように2枚重ねてラップに包み、5℃で1週間保存後、25℃で2時間保持する。その後、2枚重なったチーズを図1に示すようにレオナー(1)(RE-3305、山電社製)に置き、下側のチーズ(6b)をレオナーの移動テーブルにチーズの固定具で固定する。次いで、上側のチーズ(6a)の30mm×5mm面(側面)中央に、図2a及びbに示すように幅15mm、厚さ2mmの板状フック(5)を5mm貫入し、ワイヤ(4)を介してリフト(2)でフック(5)を1mm/秒の速さで引き上げる。フック(5)を引き上げた後、剥がれたチーズ(6a)の重量を測定する。これを50回繰り返し、フック(5)を引き上げて剥がれた上側のチーズ(6a)の重量が10±0.1gの範囲内に収まるチーズの個数の割合(%)を剥離性の指標とした。
なお、本発明においては、綺麗に剥離され、重量が10±0.1gの範囲内に収まるチーズの個数の割合が90%以上であるとき剥離性が良好であるとした。
▲2▼プロセスチーズを1枚50mm×30mm×5mm に切り出し、プロセスチーズ同士が密着するように11枚重ねてラップに包み、5℃まで冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後、ラップを剥がし、積層チーズを1枚ずつ剥がす。この操作を繰り返し、10枚剥がしたうち、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数を数える。同様の操作を10回繰り返し折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数の平均値が9枚以上であるものを剥離性が良好であるとした。
【0025】
(3) 官能評価は、10名の熟練パネラーにプロセスチーズ20g(品温10℃)を食してもらい、チーズ風味について次の5段階で採点し、その平均点で評価した(小数点第2位四捨五入)。5点:大変好ましい、4点:好ましい、3点:どちらともいえない、2点:好ましくない、1点:全く好ましくない。
以上の結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 0004431292
【0027】
表2より、MPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズ(1)を配合したプロセスチーズである試料1〜5の方が脱脂乳及び生乳を原料乳として調製されたナチュラルチーズ(3)を配合したプロセスチーズである試料6〜10よりも耐熱耐水性及び剥離性が良好であった。また、ナチュラルチーズ(1) を20〜80重量%配合することにより、耐熱耐水性及び剥離性が良好で風味の点でも問題のないものとなった。
【0028】
【実施例2】
先に調製したMPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズ(2)、脱脂乳及び生乳から調製されたナチュラルチーズ(4)及びチェダーチーズ(ニュージーランドデイリープロダクツ社製、熟成10ヶ月)を用い、表3に示すような割合でチーズを配合し、原料チーズ各5kgを調製した。この原料チーズに対して、溶融塩としてJOHA-SE(JOHA社製)を2重量%、水分含量が45重量%となるように水、pHが 5.8となるように重曹、安定剤としてゲルアップ(三栄源社製)1.5 重量%をそれぞれ添加し、ケトル型乳化機を用い、ジャケットに蒸気を入れながら、100rpm で混練し、加熱乳化を行った。品温が90℃になった時点で乳化を終了し、得られた乳化物を容器(300mm×300mm×300mm)に充填して10℃で1晩冷却し、試料11〜20の10種のプロセスチーズを製造した。なお、冷却する前の乳化物(品温85℃)の粘度を粘度計(ビスコステッサー、リオン社製)を用いて測定し、また前述の方法で、全窒素及び可溶性窒素を求めて熟度を算出した。
試料11〜20について、原料チーズの配合割合、熟度及び粘度を表3に示す。
【0029】
【表3】
Figure 0004431292
【0030】
試料11〜20のプロセスチーズを1週間10℃で保存し、以下に示す方法で耐熱耐水性及び剥離性を評価し、さらに官能評価を行った。
(1) 耐熱耐水性は、▲1▼プロセスチーズを1枚10cm×10cm×2mmのスライス状に切り出し、スライスチーズ同士が密着するように10枚重ねてラップで包み5℃で冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後、ラップを剥がし、20mm×20mm×20mmの立方体にカットしたプロセスチーズを水中に入れ、100℃で10分間レトルト処理した後に、プロセスチーズがもとの高さの80%以上の高さ(16mm以上)を維持しているとき、耐熱耐水性を有するものとした。
▲2▼プロセスチーズを5mm×5mm×5mmの立方体(ダイス状)に切り出し、このプロセスチーズを水中に入れ、100℃で10分間レトルト処理した後に、プロセスチーズがもとの高さの80%以上の高さ(4mm以上)を維持しているとき耐熱耐水性を有するものとした。
▲3▼プロセスチーズを5mm×15mm×2mmの直方体(シュレッド状)に切り出し、シュレッド状チーズを10枚重ねたものを2列×4列で8組並べ、密着させてラップで包み、5℃まで冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後ラップを剥がし、20mm×20mm×20mmの立方体にカットしたプロセスチーズを水中に入れ、100℃で10分間レトルト処理した後に、プロセスチーズがもとの高さの80%以上の高さ(16mm以上)を維持しているとき耐熱耐水性を有するものとした。
【0031】
(2) 剥離性は、▲1▼スライス状の場合、上記と同様にプロセスチーズを1枚10cm×10cm×2mmのスライス状に切り出し、スライスチーズ同士が密着するように11枚重ねてラップで包み、5℃まで冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後、ラップを剥がし、積層スライスチーズを1枚ずつ剥がす操作を繰り返し、10枚剥がしたうち、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数を数える。同様の操作を10回繰り返し、折れ又はちぎれがなく剥がれたチーズの枚数の平均値が9枚以上であるとき剥離性が良好であるとした。
【0032】
▲2▼立方体の場合、プロセスチーズを、5mm×5mm×5mmの立方体(ダイス状)に切り出し、ダイス状チーズ同士が密着するように11個重ねてラップで包み、5℃まで冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後ラップを剥がし、積層ダイス状チーズを1個ずつ剥がす操作を繰り返し、10個剥がしたうち、ちぎれがなく剥がれたチーズの個数を数える。同様の操作を10回繰り返し、ちぎれがなく剥がれたチーズの個数の平均値が9個以上であるとき、剥離性が良好であるとする。
【0033】
▲3▼直方体の場合、プロセスチーズを、5mm×15mm×2mmの直方体(シュレッド状)に切り出し、シュレッド状チーズ同士が密着するように11枚重ねてラップで包み、5℃まで冷却した後、インキュベーターに入れ、25℃で2時間保存し、その後ラップを剥がし、積層シュレッド状チーズを1枚ずつ剥がす操作を繰り返し、10枚剥がしたのち、ちぎれがなく剥がれたチーズの枚数を数える。同様の操作を10回繰り返し、ちぎれがなく剥がれたチーズの枚数の平均値が9枚以上であるとき剥離性が良好であるとする。
【0034】
(2) 官能評価は、実施例2の方法に従った。
結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
Figure 0004431292
【0036】
表4より、MPC を原料乳として調製されたナチュラルチーズ(2)を配合したプロセスチーズである試料11〜15の方が、脱脂乳及び生乳を原料乳として調製されたナチュラルチーズ(4)を配合したプロセスチーズである試料16〜20よりも耐熱耐水性及び剥離性が良好であった。また、ナチュラルチーズ(2)を20〜80重量%配合することにより、耐熱耐水性及び剥離性が良好で風味の点でも問題のないものとなった。
【0037】
【実施例3】
先に調製した MPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズ(5)及びチェダーチーズ(ニュージーランドデイリープロダクツ社製、熟成10ヶ月)をそれぞれ50:50の割合で配合し、原料チーズ各5kgを調製した。この原料チーズに対して、溶融塩としてJOHA-SE(JOHA社製)を2重量%、水分含量が45重量%となるように水、pHが5.8となるように重曹、安定剤としてゲルアップ (三栄源社製)0.5重量%をそれぞれ添加し、ケトル型乳化機を用い、ジャケットに蒸気を入れながら、100rpmで混練し、加熱乳化を行った。品温が90℃になった時点で乳化を終了し、得られた乳化物を容器(40mm×60mm×180mm)に充填して10℃で1晩冷却し、試料21のプロセスチーズを製造した。なお、冷却する前の乳化物(品温85℃)の粘度を粘度計(ビスコステッサー、リオン社製)を用いて測定し、また前述の方法で、全窒素及び可溶性窒素を求めて熟度を算出した。
試料21について、原料チーズの配合割合、熟度及び粘度を表5に示す。
【0038】
【表5】
Figure 0004431292
【0039】
実施例1と同様の方法で、耐熱耐水性及び剥離性を評価し、官能評価も行った。その結果を表6に示す。
【0040】
【表6】
Figure 0004431292
【0041】
表6より、MPCを原料乳とし、凝乳酵素を添加せずに調製されたナチュラルチーズ(5)を配合したプロセスチーズである試料21は、耐熱耐水性、剥離性及び風味が良好なものとなった。
【0042】
【実施例4】
先に調製したMPC を原料乳として調製されたナチュラルチーズ(6)、(7)、(8)、(9)、及びチェダーチーズ(ニュージーランドデイリープロダクツ社製、熟成10ヶ月)をそれぞれ50:50の割合で配合し、原料チーズ各5kgを調製した。この原料チーズに対して、溶融塩としてJOHA-SE(JOHA社製) を2重量%、水分含量が45重量%となるように水、pHが5.8となるように重曹、安定剤としてゲルアップ (三栄源社製)0.5重量%をそれぞれ添加し、ケトル型乳化機を用い、ジャケットに蒸気を入れながら、100rpmで混練し、加熱乳化を行った。品温が90℃になった時点で乳化を終了し、得られた乳化物を容器(40mm×60mm×180mm)に充填して10℃で1晩冷却し、試料22〜25の4種のプロセスチーズを製造した。なお、冷却する前の乳化物(品温85℃)の粘度を粘度計(ビスコステッサー、リオン社製)を用いて測定し、また前述の方法で、全窒素及び可溶性窒素を求めて熟度を算出した。
試料22〜25について、原料チーズの配合割合、熟度及び粘度を表7に示す。
【0043】
【表7】
Figure 0004431292
【0044】
実施例1と同様の方法で、耐熱耐水性及び剥離性を評価し、官能評価も行った。その結果を表8に示す。
【0045】
【表8】
Figure 0004431292
【0046】
表8より、MPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズのうちでも原料乳の MPC濃度が3重量%と低いナチュラルチーズ(6)を配合したプロセスチーズである試料22は、風味の点では問題なかったものの、耐熱耐水性及び剥離性が劣っていた。一方で、MPC濃度が6、15、20重量%に調整したナチュラルチーズ(7)、(8)、(9)を配合したプロセスチーズである試料23、24は、耐熱耐水性、剥離性及び風味が良好なものとなり、試料25は耐熱耐水性及び剥離性が良好で風味の点でも問題ないものとなった。
【0047】
【実施例5】
先に調製した MPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズ(10)、(11)、(12)、(13)、及びチェダーチーズ(ニュージーランドデイリープロダクツ社製、熟成10ヶ月)をそれぞれ50:50の割合で配合し、原料チーズ各5kgを調製した。この原料チーズに対して、溶融塩としてJOHA-SE(JOHA社製)を2重量%、水分含量が45重量%となるように水、pHが5.8 となるように重曹、安定剤としてゲルアップ(三栄源社製)0.5重量%をそれぞれ添加し、ケトル型乳化機を用い、ジャケットに蒸気を入れながら、100rpmで混練し、加熱乳化を行った。品温が90℃になった時点で乳化を終了し、得られた乳化物を容器(40mm×60mm×180mm)に充填して10℃で1晩冷却し、試料26〜29の4種のプロセスチーズを製造した。なお、冷却する前の乳化物(品温85℃)の粘度を粘度計(ビスコステッサー、リオン社製)を用いて測定し、また前述の方法で、全窒素及び可溶性窒素を求めて熟度を算出した。
試料26〜29について、原料チーズの配合割合、熟度及び粘度を表9に示す。
【0048】
【表9】
Figure 0004431292
【0049】
実施例1と同様の方法で、耐熱耐水性及び剥離性を評価し、官能評価も行った。その結果を表10に示す。
【0050】
【表10】
Figure 0004431292
【0051】
表10より、MPCを原料乳として調製されたナチュラルチーズのうちでもカード形成時のpHが低かったナチュラルチーズ(10)を配合したプロセスチーズである試料26は、風味の点では問題なかったものの、耐熱耐水性及び剥離性が劣っていた。一方で、カード形成時のpHが5.0、5.5、6.0に調整したナチュラルチーズ(11)、(12)、(13)を配合したプロセスチーズである試料27、28、29は、耐熱耐水性、剥離性及び風味が良好なものとなった。
【0052】
【実施例6】
実施例5で調製したプロセスチーズである試料25を15mm×15mm×15mmの立方体に切り出した。この立方体のチーズ10個をホワイトシチューに入れ、1時間煮込んだところ、チーズは溶融せず、もとの形状を維持していた。
ホワイトシチューを食したところ、チーズの食感はそのままで、風味も良好であった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な耐熱耐水性及び剥離性を有し、風味の良好なプロセスチーズを提供することができる。
本発明のプロセスチーズは耐熱耐水性及び剥離性が良好であるため、スープ、シチュー、おでん等の煮込み料理やオムレツ、ハンバーグ、チャーハン等の加熱調理に用いることができる。また、予めカットして流通又は保存しても結着しづらいため、チーズ片同士が結着してブロック状の塊になりづらく、結着しても剥離性が良好であるため、容易に手でほぐすことができるため、利用しやすいという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 剥離性を測定するために2枚を重ね合わせたプロセスチーズをセットした状態におけるレオナーの正面図を模式的に示す。
【図2a】 レオナーにプロセスチーズをセットした状態において、該チーズにフックをかけた部分の拡大正面図を模式的に示す。
【図2b】【図2a】のチーズ部分の平面図である。
【図2c】 フックを引き上げる途中におけるチーズの状態を模式的に示すチーズ部分の正面図である。
【符号の説明】
1 レオナー
2 リフト
3 リフトステム
4 ワイヤ
5 フック
6a 上側のチーズ
6b 下側のチーズ
7 レオナーの移動のテーブル
8 下側のチーズの固定装置

Claims (3)

  1. 脱塩工程、加熱・濃縮工程を経て得られる乳タンパク質濃縮物を乳タンパク質濃度が6〜20重量%になるように調製した原料乳に、乳酸菌スターター又は酸性化剤を添加して原料乳のpHを5.0〜6.0に調整し、40℃以上の温湯中でカードを形成させ、ナチュラルチーズを調製し、これを原料としてプロセスチーズを製造することを特徴とする耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズの製造方法。
  2. 脱塩工程、加熱・濃縮工程を経て得られる乳タンパク質濃縮物を乳タンパク質濃度が6〜20重量%になるように調製した原料乳に、凝乳酵素を添加し、次いで乳酸菌スターター又は酸性化剤を添加して原料乳のpHを5.0〜6.0に調整し、40℃以上の温湯中でカードを形成させ、ナチュラルチーズを調製し、これを原料としてプロセスチーズを製造することを特徴とする耐熱耐水性及び剥離性の良好なプロセスチーズの製造方法。
  3. 原料乳が、乳タンパク質濃縮物を水、生乳又は脱脂乳で乳タンパク質濃度が6〜20重量%となるように調製し、乳脂肪を添加後、均質処理を行ったものである請求項1又は2に記載のプロセスチーズの製造方法。
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