JP3705564B2 - プロセスチーズ及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融塩を添加することなく、加熱乳化して得られる滑らかな組織を有し、風味も良好で、加熱時に優れた糸曵き性を示すプロセスチーズ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロセスチーズは、原料となるナチュラルチーズを粉砕し、これにリン酸ナトリウム等の溶融塩を添加し、加熱乳化して均質な乳化物を調製し、冷却することにより得られる。乳化時に添加する溶融塩のナトリウムイオンがナチュラルチーズのカゼイン凝固に介在したカルシウムイオンと交換され、カゼインのつながりを分断する。ここで適度な加温と攪拌を与えることにより、蛋白質と脂肪が均一に混合される。このように、従来からプロセスチーズの製造では、粉砕したナチュラルチーズを加熱乳化する際に、脂肪と蛋白質の乳化を促進させると共に乳化状態を安定化させる目的で、溶融塩を添加している。溶融塩を添加せずにプロセスチーズを製造する方法も報告されている (巽清、Snow Brand R&D Report 96, 225 (1992)) が、溶融塩を添加せずに製造したプロセスチーズは、食べたときの食感が滑らかさに欠け、もろくて硬い組織となりやすく、製造の際にも乳化状態が不安定となり、脂肪分離や離水が生じやすい。そのため、従来からプロセスチーズの製造では、溶融塩を添加することが必須である。
【0003】
一方で、栄養学上、カルシウムの吸収は、カルシウム:リンのバランスがある一定の範囲で良好であるが、リンの摂取量が増えることにより、カルシウム:リンのバランスが崩れると、カルシウムの吸収が妨げられるという報告(H. H. Draper and C. A. Scythes, Fed. Proc., 40, 2434 ('81))もある。従って、溶融塩、特にリン酸塩の使用量を抑えることが栄養学的にも望まれている。
【0004】
また、プロセスチーズは滑らかな組織と良好な風味、さらに加熱調理した際の良好な溶融性や糸曵き性等の機能特性を有することから、その需要も堅調に伸びている。プロセスチーズに加熱時の良好な糸曵き性等の機能特性を付与するには、原料チーズとして熟度の低いチーズを用いるか、乳化の際に添加する溶融塩の添加量を少なくすればよい。チーズの糸曵き性は、チーズ中に存在するカゼインの構造の強さに依存しており、熟成の進行や溶融塩の添加によってカゼインの構造が壊れると、糸曵き性も低下する。従って、熟度の低い原料チーズを用いてプロセスチーズを製造すると、良好な糸曵き性は付与できる。しかしながら、このようにして得られるプロセスチーズは、風味の乏しいチーズとなる。一方で、熟度の高い原料チーズを用いてプロセスチーズを製造すると、風味の豊かなチーズは得られるが、糸曵き性は低下する。さらに、溶融塩の添加量を少なくすれば、良好な糸曵き性は付与できるが、乳化時に脂肪分離や離水が生じやすくなる。
【0005】
また、近年、国民一人当たりの脂肪摂取量の増加にともなって、成人病(生活習慣病ともいわれている)の発症率が増加している。このことから、脂肪の摂り過ぎは好ましくなく、プロセスチーズにおいても脂肪含量の低いものが市販されているが、これら低脂肪タイプのプロセスチーズは組織が脆く、硬くなり滑らかさに欠ける傾向がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状において、プロセスチーズには(1) 加熱調理時に良好な糸曵き性を示すこと、(2) 溶融塩を使用しないこと、(3) 風味、組織が良好であること、さらに (4)低脂肪であることが求められているが、そのようなプロセスチーズは未だ提供されていない。
従って、本発明は溶融塩を添加することなく、加熱乳化して調製したプロセスチーズであって、加熱時に良好な糸曵き性、良好な風味及び組織を有するプロセスチーズ及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は溶融塩を添加することなく、加熱乳化して調製した低脂肪のプロセスチーズであって、上記と同様な特性を有する低脂肪のプロセスチーズ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、プロセスチーズ製造の際に使用する原料チーズに着目した。すなわち、原料チーズとして多糖を産生する乳酸菌を用いて調製したナチュラルチーズを用いることにより、溶融塩を添加しなくとも乳化が良好に行なわれ、しかも得られたプロセスチーズが加熱時に良好な糸曵き性を示し、風味、組織の良好なプロセスチーズとなることを見いだした。さらに、低脂肪乳を用いて上記乳酸菌を添加して、調製されるナチュラルチーズを用いても、溶融塩を添加しなくとも乳化が良好であり、糸曵き性、風味、組織の良好な低脂肪プロセスチーズが得られることを見いだした。
【0008】
本発明は、多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することを特徴とする加熱時に優れた糸曳き性を示すプロセスチーズの製造方法に関する。
本発明は、また低脂肪乳に、多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下、脂肪率が10〜30%のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することを特徴とする加熱時に優れた糸曳き性を示す低脂肪プロセスチーズの製造方法に関する。
本発明はまた、多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することにより得られる加熱時に優れた糸曳き性を示すプロセスチーズに関する。
本発明は、また低脂肪乳に、多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下、脂肪率が10〜30%のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することにより得られる加熱時に優れた糸曳き性を示す低脂肪プロセスチーズに関する。
【0009】
本発明では、原料チーズを製造する際に乳酸菌として、多糖を産生する乳酸菌を用いることにより、乳酸菌により産生される多糖がチーズ製造過程で生成されるチーズカードの表面及びカード中に粘着物としてマトリックスを形成し、多糖類と水との相互作用により結合してチーズカード中の水分を抱き込むため、ホエー排除時の加熱により排出される水分が少なくなり、水分を多く含んだ組織の軟らかいチーズカードが得られる。また、多糖はチーズカード形成過程においてカゼイン同志の結着を阻害するため、チーズカードのシネリシスを遅延させる。このような多糖類の作用によりチーズカードの保水性が上がり、構造がゆるやかなものとなる。従って、このチーズカードを熟成させたチーズは、水分を多く含有し、組織も軟らかいため、溶融塩を添加しなくとも乳化が良好に行なわれ、得られるプロセスチーズも組織の滑らかなものとなる。このような効果をもたらすためには、チーズカード中に多糖を0.01%以上含有することが必要であり、それ以下では、効果は得られない。
【0010】
また、前述のように、加熱時の糸曵き性はチーズ中のカゼインの構造の強さに依存しており、カゼインの構造が強固であるほど、糸曵き性は良好になる。しかしながら、このようにカゼインの構造が強固なチーズを用いた場合、乳化時に添加する溶融塩の量を増加させるか、又は水分を多く含有させる必要が生じるが、溶融塩を多く添加すると、糸曳き性を低下させることになる。
一方、多糖を産生する乳酸菌を用いて製造したナチュラルチーズは、水分を多く含有し、組織が軟らかいため、このチーズを用いるとカゼインの構造が強固であっても溶融塩を添加することなく、十分に乳化が可能であり、糸曳き性の良好なものが得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で使用する原料チーズは、以下のようにして調製することができる。まず、乳の乳脂肪を 0.5〜4%に調整し、63〜75℃で殺菌し、その後静置して30℃まで冷却して原料乳を調製する。ここで、「乳」としては、チーズ製造に通常用いられている乳であればいずれの乳を使用してもよく、例えば全乳、脂肪調節乳、還元乳、濃縮乳、バターミルク、クリーム又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0012】
この原料乳に、乳酸菌スターターを約0.05〜4重量%と凝乳酵素を 0.001〜0.01重量%添加し、29〜34℃の温度において、乳を凝固させ、チーズカードを得る。なお、乳酸菌スターターは、殺菌する前の乳に添加してもよく、又はレンネット添加時、ホエー排除の際の加温時、加塩時、型詰め時等適宜に行うことができる。ここで、「乳酸菌」としては、多糖を産生する乳酸菌であれば、いずれの乳酸菌を使用してもよく、例えば、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus) 、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ・クレモリス (Lactococcus lactis subsp. cremoris )等を使用することができる。このような乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・ヘルベティカスSBT2171(受託番号FERM P-10053)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ・クレモリスSBT0495(受託番号FERM P-14381)等を例示することができる。このほか市販の乳酸菌も多糖を産生する乳酸菌であれば使用可能である。また、通常チーズの製造に使用されている乳酸菌を併用することもでき、このような乳酸菌には、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ・ラクチス (Lactococcus subsp. lactis) 、ラクトコッカス・ラクチスサブスピーシーズ・クレモリス (Lactococcus lactis subsp. cremoris) 、ロイコノストック・シトロボルム (Leuconostoc citrovorum) 等を挙げることができる。「凝乳酵素」としては、チーズの製造に通常用いられる凝乳酵素であればいずれの凝乳酵素を使用してもよく、レンネットの他、動物、例えば豚、微生物又は植物から得られた代用レンネットや遺伝子組み換えレンネット等を使用することもできる。
【0013】
次いで、得られたチーズカードを、例えば、幅約10〜40mmの立方体になるようにカッティングし、穏やかな攪拌を加えて、チーズカードのシネリシス(凝縮)を促進させる。チーズカードをカッティングした際に生じたホエーの一部を排除し、さらに攪拌を続けながら、チーズカードを30〜38℃で加温し、残りのホエーの全量を排除する。次いで加塩を行なう。加塩は、チーズカードの重量に対して、1〜2%とするのが好ましく、加塩方法は直接加塩、ブライン加塩のいずれでもよい。加塩後、チーズカードを成形機に充填して、圧搾する。圧搾は、チーズの製造において通常用いられる加圧型、自重型または真空型のプレス機を用いて行なうことができる。次いで、チーズカードを5℃まで冷却し、熟成させる。熟成は温度5〜15℃で1〜6カ月間、通常のナチュラルチーズと同様の方法で行なうことができる。
【0014】
なお、前述のようにして本発明の原料チーズを製造することができるが、本発明では、熟度指標30%以下のチーズを30%以上用いる。ここで「熟度」とは、( 可溶性窒素(STN)/全窒素(TN)) ×100 で示されるいわゆる熟度指標(%)のことである。熟度指標は、チーズ中に含有される全窒素及び可溶性窒素の量を以下の方法に従って測定し、上記の計算式に基づいて算出すればよい。全窒素の測定は、例えばチーズ10g を採取し、それに0.5Nクエン酸ナトリウム40mlを加え、ホモブレンダーで5分間磨砕後、メスフラスコに移し、蒸留水を加えて 200mlに定容し、これを試料液とする。試料液10mlを採取し、ケルダール法で測定することができる。可溶性窒素の測定は、試料液10mlに1.41N の塩酸を10ml加えた後、蒸留水で 125mlに定容し、生成した蛋白沈殿物を濾過し、濾液10mlを採取しケルダール法で可溶性窒素を測定することができる。なお原料チーズの熟度指標が30%を越えると、カゼインの構造が崩れ、得られるプロセスチーズに十分な糸曵き性を付与することができないばかりか、乳化時にオイルオフを生じるため、好ましくない。
また、本発明では、原料チーズを製造する際の原料乳を低脂肪乳とすることで低脂肪のプロセスチーズを得ることができる。原料乳の脂肪率は、 0.5〜1.4 %に調整するのが好ましく、このような低脂肪乳を用いて調製されるチーズの脂肪率は10〜30%となる。
【0015】
次いで、得られたナチュラルチーズを原料チーズとして、プロセスチーズを製造する。プロセスチーズの製造は、溶融塩を添加しないこと以外、公知の方法に従って行なえばよい。例えば、前述のように多糖を産生する乳酸菌を用いて製造した原料チーズを乳化機に投入し、70〜100 ℃に加熱しながら、30〜3000回転/分で混練して加熱乳化する。このとき乳化機は、ケトル型、ステファン型、サーモシリンダー型等の公知の乳化機を用いることができる。次いで、得られた乳化物を適宜容器に充填し、冷却成形することにより本発明のプロセスチーズを得ることができる。成形は、板状、ブロック状、棒状等、特に限定はない。
【0016】
【実施例】
【実施例1】
(1)原料チーズの製造(通常脂肪率のチーズ)
多糖を産生する乳酸菌のうち、次の3菌種から2株ずつ6株を選定し、これらの株それぞれを乳酸菌スターターとして6種の原料チーズを製造した。用いた菌株はラクトバチルス・ヘルベティカス (Lactobacillus helveticus)(SBT2171)(SBT23670) 、ラクトバチルス・デルブルッキー サブスピーシーズ・ブルガリカス (Lactobacillus delbrukii subsp. bulgaricus)(SBT30089),(SBT30110)、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス (Lactoccus lactis subsp. cremoris)(SBT25066),(SBT45226) である。
常法に従い、上記乳酸菌6株を数代継代培養した後、スターターとして単菌培養した。
75℃で15秒間殺菌した脂肪調節乳(脂肪含有率 3.0重量%)を30℃に冷却し、通常のチーズ製造に用いている乳酸菌スターターとしてラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ・ラクチス (Lactococcus lactis subsp. lactis) を 0.5%及び上記乳酸菌スターターを 0.5%づつ添加し、さらにレンネット (クリチャン ハンセン社製; HA LA RENNET POWDER)を添加して緩やかに攪拌、静置してチーズカードを得た。チーズカードを刃幅10mmのカードナイフでサイコロ状に細断し、品温が38℃となるまで緩やかに加熱攪拌しながら、ホエーを排除した。その後、得られたチーズカードをプレス後、20%濃度の食塩中で浸漬し、10℃で3カ月間熟成させた。得られたチーズの熟度を確認したところ、それぞれの熟度指標は15%であった。
【0017】
(2)プロセスチーズの製造
(1) で製造した6種のナチュラルチーズをそれぞれ0、10、20、30、40、50重量%の割合で配合し、残りは熟度指標20%のチェダーチーズを用い、全量1000kgとし、原料チーズを得た。これをケトル型乳化機に投入し、200 回転/分で攪拌しながら、約10分間、85℃に到達させるように加熱乳化を行ない、乳化物を得、カートンに充填し、冷蔵庫内で冷却してプロセスチーズを得た。
【0018】
【比較例1】
乳酸菌として、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ・ラクチス (Lactococcus lactis subsp. lactis) を 0.5%及びレンネットを添加し、実施例1に従ってチーズを調製した。なお、チーズの熟度指標は15%となるように3カ月間熟成させた。
得られたチーズを30%用い、残りを熟度指標20%のチエダーチーズとして、プロセスチーズを製造した。この時、溶融塩は添加しなかった。
【0019】
【試験例1】
実施例1及び比較例1で製造したプロセスチーズについて、乳化適性及び糸曵き性の評価と官能評価(組織の滑らかさと風味)を行なった。評価の方法は以下に示す。なお、比較例1は溶融塩を添加しなかったため、乳化が良好に行われなかった。
【0020】
乳化適性;チーズを乳化したときのオイルオフの状態を目視で観察した。乳化状態の良好なものを(○)、オイルオフを生じたものを(×)とした。
糸曵き性;糸曵き性は、次に示す2通りの方法で行なった。
(I) サンドイッチ用にスライスした食パン(5cm×5cm)にピザ用ソースを薄く塗り、実施例1のチーズを 0.5cm×1.5cm ×0.2cm にシュレッドしたものを10g のせ、240 ℃のオーブン内で2分30秒間加熱した。オーブンから取り出し30秒間静置した後、これを半分に切って互いに引っ張り、その時のチーズの状態を観察した。その評価は下記の基準で行った。
評価A:細かく何本もの糸を曵き、良く伸びる。評価B:良好な糸曵きを示すが、細かく何本もの糸を曵かない、評価C:糸曵きは多少認められるが不十分、評価D:糸曵きなし。
【0021】
(II)チーズ20g をシャーレに採取し、これを電磁加熱器 (90℃) で1分間加熱し、溶融させた。その後、直ちにシャーレを取り出し30秒放置後、引っ張り測定機を用いて毎秒10cmの速度で引き上げ、糸が切れるまでの長さを測定した。この試験を5回繰り返し、これらの測定値の最大値を代表値とした。
上記(I) 、(II)の測定結果から、(I) で、評価A又はBであり、かつ(II)では糸が切れるまでの長さが30cm以上のものを合格(○)、この条件を満たさないものを不合格(×)とした。
【0022】
官能評価;プロセスチーズを30名のパネラーにチーズ10g ずつ食してもらい、組織の滑らかさ及び風味について、5点:大変好ましい、4点:好ましい、3点:どちらでもない、2点:好ましくない、1点:大変好ましくないの5段階 で評価し、その平均点で表した。なお、小数点第2位を四捨五入した。
以上の結果を表1から表6に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003705564
【0024】
【表2】
Figure 0003705564
【0025】
【表3】
Figure 0003705564
【0026】
【表4】
Figure 0003705564
【0027】
【表5】
Figure 0003705564
【0028】
【表6】
Figure 0003705564
【0029】
【実施例2】
(1)原料チーズの製造(低脂肪のチーズ)
生乳をセパレーターに通し、乳脂肪率が 1.0%となるように調製した。これを原料乳として、実施例1に従って脂肪分が10%の原料チーズを製造した。なお、使用した乳酸菌はラクトバチルス・ヘルベティカス (Lactobacillus helveticus (SBT 2171)) を用い、3カ月熟成させた。得られたチーズの熟度指標は15%であった。
【0030】
(2)プロセスチーズの製造
(1) で製造した低脂肪ナチュラルチーズ(脂肪率10%)を50%及びチェダーチーズ(脂肪率32%)を50%添加し、全量1000kgの原料チーズとした。実施例1の(2) と同様の方法でプロセスチーズを製造した。
【0031】
【試験例2】
乳化適性、糸曵き性、組織の滑らかさ、風味について試験例1と同様の評価方法で評価した。結果を表7に示す。
【0032】
【表7】
Figure 0003705564
【0033】
【実施例3】
(1)原料チーズの製造
実施例1と同様の方法で原料とするナチュラルチーズを調製した。使用した乳酸菌はラクトバチルス・ヘルベティカス (Lactobacillus helveticus (SBT 2171)) を用いた。この時、チーズの熟度指標が20%、25%、30%、35%となるように熟成させた。
【0034】
(2)プロセスチーズの製造
得られたナチュラルチーズを30%配合して、残りはチェダーチーズを用い、全量1000kgの原料チーズを得た。実施例1と同様の方法で加熱乳化し、プロセスチーズを製造した。
【0035】
【試験例3】
乳化適性、糸曵き性、組織の滑らかさ、風味について試験例1と同様の評価方法で評価した。以上の結果を表8に示す。
【0036】
【表8】
Figure 0003705564
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、加熱乳化時に溶融塩を添加しなくとも乳化が良好に行われ、加熱調理時に良好な糸曵き性を示し、組織、風味の良好なプロセスチーズを得ることができる。
また、原料乳に低脂肪乳を用いても、溶融塩を使用しないで加熱乳化した加熱調理時に良好な糸曵き性し、風味、組織の良好な低脂肪のプロセスチーズを提供することができる。
本発明のチーズは乳化時に溶融塩を添加しないので、リンの過剰摂取の傾向も抑制することができ、カルシウム:リンのバランスを一定の範囲に保つことが可能となる。

Claims (4)

  1. 多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することを特徴とする加熱時に優れた糸曳き性を示すプロセスチーズの製造方法。
  2. 低脂肪乳に、多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下、脂肪率が10〜30%のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することを特徴とする加熱時に優れた糸曳き性を示す低脂肪プロセスチーズの製造方法。
  3. 多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することにより得られる加熱時に優れた糸曳き性を示すプロセスチーズ。
  4. 低脂肪乳に、多糖を産生する乳酸菌を用いて調製した熟度指標30%以下、脂肪率が10〜30%のナチュラルチーズを30%以上配合し、溶融塩を添加することなく、加熱乳化することにより得られる加熱時に優れた糸曳き性を示す低脂肪プロセスチーズ。
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